(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762632
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】構造化された焼結結合層の製造方法及び構造化された焼結結合層を備えている半導体素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20150723BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H01L23/36 D
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-516395(P2014-516395)
(86)(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公表番号】特表2014-517546(P2014-517546A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012062304
(87)【国際公開番号】WO2013004543
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2013年12月19日
(31)【優先権主張番号】102011078582.5
(32)【優先日】2011年7月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ギュエノ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヘアボート
【審査官】
小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−054893(JP,A)
【文献】
特開2008−010703(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02075835(EP,A1)
【文献】
特開2004−253703(JP,A)
【文献】
特開2006−237429(JP,A)
【文献】
特開平06−302628(JP,A)
【文献】
特開2011−071301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結層(12)の製造方法において、
前記焼結層(12)を形成する出発材料から成る複数の焼結要素(22a,22b,22c)を構造化して、基板(11)の主表面(11a)のコンタクト面(21)上に被着させるステップと、
前記基板(11)と接続すべきチップ(13)を前記焼結要素(22a,22b,22c)の上に配置するステップと、
前記基板(11)と前記チップ(13)を接続し、且つ前記コンタクト面(21)の内側に延在する、構造化された焼結層(12)を形成するために前記焼結要素(22a,22b,22c)を加熱及び圧縮するステップとを備えており、
前記コンタクト面(21)の中心領域(21a)における、前記基板(11)上の焼結要素(22a,22b,22c)の面占有率は、前記コンタクト面(21)の縁部領域(21c)における焼結要素(22a,22b,22c)の面占有率よりも大きく、
各焼結要素(22a,22b,22c)からは、前記基板(11)の前記主表面(11a)に対して水平方向に延在している少なくとも一つの通路(23)が前記コンタクト面(21)の縁部まで形成されていることを特徴とする、焼結層(12)の製造方法。
【請求項2】
前記出発材料は、マイクロ粒子及び/又はナノ粒子から成るものであり、且つ、主成分として銀を含有している焼結ペーストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンタクト面(21)の前記縁部領域(21c)における焼結要素(22a,22b,22c)の数は、前記コンタクト面(21)の中心領域(21a)における焼結要素(22a,22b,22c)の数よりも多い、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記中心領域(21a)と前記縁部領域(21c)との間の前記コンタクト面(21)の領域(21b)における、前記基板(11)上の焼結要素(22a,22b,22c)の面占有率は、前記コンタクト面(21)の前記中心領域(21a)における面占有率と、前記縁部領域(21c)における面占有率との間にある、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コンタクト面(21)の縁部は、水平方向において、前記基板(11)の前記主表面(11a)に沿って、前記チップ(13)のエッジから所定の長さだけ離隔されて設けられている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
半導体素子(10)において、
該半導体素子(10)は、
主表面(11a)を備えている基板(11)と、
前記基板(11)の前記主表面(11a)上に配置されている半導体チップ(13)と、
前記基板(11)と前記半導体チップ(13)との間において前記主表面(11a)のコンタクト面(21)上に配置されており、且つ、前記半導体チップ(13)を前記基板(11)に接続させる、構造化された焼結層(12)とを有しており、
前記焼結層(12)は複数の焼結要素(22a,22b,22c)を含んでおり、前記コンタクト面(21)の中心領域(21a)における、前記基板(11)上の焼結要素(22a,22b,22c)の面占有率は、前記コンタクト面(21)の縁部領域(21c)における焼結要素(22a,22b,22c)の面占有率よりも大きく、
各焼結要素(22a,22b,22c)からは、前記基板(11)の前記主表面(11a)に対して水平方向に延在している少なくとも一つの通路(23)が、前記基板(11)と前記半導体チップ(13)との間において前記コンタクト面(21)の縁部まで形成されている、ことを特徴とする半導体素子(10)。
【請求項7】
前記コンタクト面(21)の前記縁部領域(21c)における焼結要素(22a,22b,22c)の数は、前記コンタクト面(21)の中心領域(21a)における焼結要素(22a,22b,22c)の数よりも多い、請求項6に記載の半導体素子(10)。
【請求項8】
前記中心領域(21a)と前記縁部領域(21c)との間の前記コンタクト面(21)の領域(21b)における、前記基板(11)上の焼結要素(22a,22b,22c)の面占有率は、前記コンタクト面(21)の前記中心領域(21a)における面占有率と、前記縁部領域(21c)における面占有率との間にある、請求項6又は7に記載の半導体素子(10)。
【請求項9】
前記半導体チップ(13)にはパワートランジスタ又はパワーダイオード又はサイリスタが含まれ、
前記基板(11)にはDBC基板、IMS(Insulated Metal Substrate)基板、PCB(Printed Circuit Board)基板、AMB(Active Metal Brazing)基板又はセラミック性の単層又は多層の基板が含まれる、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の半導体素子(10)。
【請求項10】
前記コンタクト面(21)の前記中心領域(21a)における焼結要素(22a)の水平方向の寸法は、前記コンタクト面(21)の前記縁部領域(21c)における焼結要素(22c)の水平方向の寸法よりも大きい、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の半導体素子(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化された焼結層の製造方法及び構造化された焼結層を備えている半導体素子、特にパワーエレクトロニクス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーダイオード、(バーティカル)パワートランジスタ又は他の素子のようなパワーエレクトロニクス素子は基板上に実装する必要がある。その種の素子には大電流が流れることから、素子と基板との間において良好な電気的及び熱的な結合を保証することが重要である。
【0003】
半導体と金属層、例えば銅層とを機械的に結合させるために、銀をベースとする焼結結合(「銀焼結」)、例えば、パワーエレクトロニクスの低温結合技術(Fortschritt-Berichte des VDI,シリーズ21,第365号,VDI出版社)及び類似の方法を使用することができる。銀焼結では、銀をベースとするマイクロ粒子又はナノ粒子を含むペーストが高温高圧下で圧縮され、その際に個々の粒子が一緒に堆積されて機械的に安定した一つの焼結層と成り、その焼結層に接する二つのコンポーネント間の安定した機械的な結合部として機能する。
【0004】
半導体の熱膨張係数と金属層の熱膨張係数が異なることから、焼結層内に機械的な張力が生じる可能性があり、この張力によって焼結層の安定性及び信頼性が損なわれる虞がある。
【0005】
刊行物EP 2 075 835 A2には、半導体チップと基板との間に焼結層を形成するための方法が開示されており、この方法では、半導体チップのエッジから距離を置いて焼結層を設けることによって、また個々の焼結部分間に隙間を形成することによって、機械的な安定性が改善されている。
【0006】
一つの実施の形態によれば、本発明は、焼結層を形成する出発材料から成る複数の焼結要素を構造化して、基板の主表面のコンタクト面上に被着させるステップと、基板と接続すべきチップを焼結要素の上に配置するステップと、基板とチップを接続し、且つコンタクト面の内側に延在する、構造化された焼結層を形成するために焼結要素を加熱及び圧縮するステップとを備えており、但し、コンタクト面の中心領域における基板上の焼結要素の面占有率は、コンタクト面の縁部領域における焼結要素の面占有率よりも大きく、また、各焼結要素からは、基板の主表面に対して水平方向に延在している少なくとも一つの通路がコンタクト面の縁部まで形成されている、焼結層の製造方法を提供する。
【0007】
別の実施の形態によれば、本発明は、半導体素子、特にパワーエレクトロニクス半導体素子を提供し、この半導体素子は、主表面を備えている基板と、この基板の主表面上に配置されている半導体チップと、基板と半導体チップとの間において主表面のコンタクト面上に配置されており、且つ、チップを基板に接続させる、構造化された焼結層とを有しており、焼結層は複数の焼結要素を含んでおり、コンタクト面の中心領域における、基板上の焼結要素の面占有率は、コンタクト面の縁部領域における焼結要素の面占有率よりも大きく、また、各焼結要素からは、基板の主表面に対して水平方向に延在している少なくとも一つの通路が基板とチップとの間においてコンタクト面の縁部まで形成されている。
【0008】
発明の利点
本発明が基礎とする着想は、基板とチップとの間に良好な電気的及び熱的な結合を確立し、更にはチップ内の機械的な応力も低減する焼結結合部を基板とチップとの間に形成することである。このことは、基板とチップとの間においてコンタクト面上に構造化されて位置決めされる複数の焼結要素から成る焼結層によって解決される。コンタクト面の中心における焼結要素の面占有率が高くなっていることによって、チップの動作時に一般的に高い温度が発生する領域において、良好な熱伝性及び導電性を保証することができる。コンタクト面の縁部においては、焼結要素の面占有率が中心における面占有率よりも低いので、それにより縁部領域では焼結時に各焼結要素に作用する圧縮圧力が中心領域よりも著しく高くなっており、それによって縁部領域における焼結結合部の信頼性が高められている。
【0009】
各焼結要素に関して、チップと基板との間において基板の主表面に沿って通路が形成され、それにより、焼結過程中の各焼結要素へのガス供給及び各焼結要素からのガス排出が保証されている。特に各焼結要素に関して、焼結中においては、焼結に必要とされる十分な酸素供給をその通路を介して保証することができる。それと同時に、焼結時に焼結要素から発生するガスをそれらの通路を介して排出することができ、それにより有利には、均一で予測可能な焼結層の形成をコンタクト面の全ての領域において実現することができる。
【0010】
有利には、特に縁部領域に多数の焼結要素を形成することができ、それにより、焼結中又は焼結後に個々の焼結結合部が破損した場合でも、即ち、個々の焼結要素を介する熱伝性又は導電性が欠如した場合でも、縁部領域における他の焼結要素が破損した焼結要素の機能を担うことができるので、焼結層の全体としての熱伝性又は導電性に影響が及ぼされることはない。
【0011】
中心領域と縁部領域との間のコンタクト面の領域における、基板上の焼結要素の面占有率が、コンタクト面の縁部領域における面占有率からコンタクト面の中心領域における面占有率へと段階的に高まっていく場合には有利である。
【0012】
有利には、コンタクト面の縁部を、水平方向において、基板の主表面に沿って、チップのエッジから所定の長さだけ離隔させて設けることができる。このことは有利には、機械的な応力による破損の危険に曝されているチップエッジの負荷を軽減することを保証することができる。
【0013】
更に有利には、コンタクト面の中心領域内の焼結要素の水平方向の寸法を、コンタクト面の縁部領域内の焼結要素の水平方向の寸法に比べて大きく選定することができる。これによって一方では、機械的な負荷が比較的弱いコンタクト面の中心領域においては高い面占有率が達成され、従って焼結層とチップとの熱的及び電気的な接触接続を改善することができる。他方では、縁部領域における面占有率が比較的低いことによって、縁部領域内の比較的小さい各焼結要素に作用する実効焼結圧力が高められ、また機械的に強い負荷が掛かるコンタクト面の縁部領域内の焼結結合部の安定性が高められる。
【0014】
有利な発展形態は従属請求項に記載されている。
【0015】
上述の実施の形態及び発展形態を、有用な範囲において、相互に任意に組み合わせることができる。本発明の考えられる別の実施の形態及び発展形態及び実現形態は、本発明の上述の特徴並びに以下において実施例に関連させて説明する特徴の明示していない組み合わせも含むものである。
【0016】
本発明の実施の形態の更なる特徴及び利点は、添付の図面と関連させた以下の記述より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1a】本発明の一つの実施の形態による、基板上に構造化された焼結層を製造するための方法における一つの段階の概略図を示す。
【
図1b】本発明の一つの実施の形態による、基板上に構造化された焼結層を製造するための方法における一つの段階の概略図を示す。
【
図1c】本発明の一つの実施の形態による、基板上に構造化された焼結層を製造するための方法における一つの段階の概略図を示す。
【
図2】本発明の別の実施の形態による、構造化された焼結層を備えている素子の概略図を示す。
【
図3】本発明の別の実施の形態による、構造化された焼結層を備えている素子の概略図を示す。
【
図4】本発明の別の実施の形態による、焼結層を備えている素子の表面構造化部の概略図を示す。
【
図5】本発明の別の実施の形態による、焼結層を備えている素子の表面構造化部の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面の個々の図において、同一及び機能が等しい構成要素、特徴部及びコンポーネントには、別個の記載が無い限りは、それぞれ同一の参照番号を付している。図面におけるコンポーネント及び構成要素は、見易くするため、また理解しやすいように、必ずしも縮尺通りには描かれていないことを言及しておく。
【0019】
図1aから
図1cには、基板11上に構造化された焼結層12を製造するための方法の種々の段階が示されている。
図1aには、第1の主表面11aと、この第1の主表面11aとは反対側の第2の主表面11bとを備えている基板11が概略的に示されている。基板11として、例えば金属基板、特に銅基板、又は金属コーティングされた基板が考えられる。例えば銅基板におけるニッケルと金のメタライジングにより得られる貴金属表面は、焼結層の基板への良好な付着を保証することができる。主表面11a上には、焼結層12を形成するための焼結要
素を被着させることができる。焼結要素を例えば構造化させて被着させることができる。即ち、基板11の主表面11aにおける特定の領域を、焼結層12を形成する材料、例えば焼結ペーストで覆うことができるが、その他の領域はその材料によって覆われていないように焼結要素を被着させることができる。例えば、これに関して
図1aには焼結層12の四つの領域が示されており、それらの四つの領域は露出された領域によって隔てられている。
【0020】
焼結層12を、コンタクト層21の内側において基板11の主表面11a上に被着される複数の焼結要素から構成することができる。焼結要素を例えばシルクスクリーン法、孔板印刷法、マスク印刷法、インク印刷法、スプレーコーティング法又は類似の構造化技術によって、構造化された形態で被着させることができる。それらの焼結要素を、焼結層12のための出発材料から、例えば銀マイクロ粒子を含む銀ペーストから製造することができる。銀ペーストは溶媒の他に、熱処理時に揮発する一つ又は複数の成分、特に安定剤を有することができる。この成分としてワックス、特に粉体ワックス、有利にはステアリン酸が考えられる。この成分は、焼結過程を進行させる熱処理の際に少なくとも部分的に放出され、それによって銀ペーストがまとまり層を成すことができる。
【0021】
焼結層12を、プリント層厚と区別することができる5μmから100μmの間、特に15μmから100μmの間、特に約25μmの焼結層厚でもって製造することができる。焼結層12の焼結要素を、本来の焼結過程の前に乾燥法によって乾燥させることができるので、焼結要素に含まれる材料から溶剤が十分に除去され、それによって、所期のような圧縮強さが達成され、また本来の焼結過程の間の溶剤の事後的なガス発生を回避することができるか、又は低減することができる。
【0022】
図1bには、本方法の第2段階が概略的に示されている。チップ13、例えば半導体チップがその主表面13bを用いて焼結要素上に載置される。チップ13として例えばパワートランジスタ、パワーダイオード又は他のパワーエレクトロニクス素子が考えられる。有利には、チップ13にはMOSFET、IGBT、JFET、BJT、スイッチングサイリスタ又は類似の素子が含まれる。
【0023】
チップ13は表面13bを有しており、その水平方向の寸法はコンタクト面21の水平方向の寸法よりも大きい。特に、コンタクト面21が、チップ13の側縁から所定の間隔dを空けて設けられていることが考えられる。この間隔dはコンタクト面21の周囲にわたり延びていると考えられ、いわゆる「アンダープリント」を形成することができる。つまり、焼結層12を介してチップ13の表面全体13bが完全に結合されることはない。このことは、有利には破損の危険のあるチップエッジの負荷軽減を保証することができる。
【0024】
焼結要素間には通路23を形成することができる。それらの通路23は、例えば基板11とチップ13との間において、基板11の主表面11aに対して水平方向に延在することができる。特に、各焼結要素をそれらの通路23を介して、コンタクト面の縁部と接続させることができる。これに関して、焼結過程中にプロセスガスを焼結要素へと案内するため、またプロセスガスを焼結要素から案内するために通路32を使用することができる。例えば、それらの通路を介して、酸素を各焼結要素に向かって案内することができ、それにより焼結ペーストの十分な焼結を行うことができる。焼結要素の焼結の際に焼結材料から発生するガスを、通路23を介して半導体素子から排出することもできる。その種の通路23が存在しなければ、それらのガスが予期せぬ経路を介して半導体素子から流出することが考えられ、したがって、焼結層12の特性に悪影響を及ぼす可能性がある再現性のないガス放出チャネルが形成される可能性が生じる。
【0025】
図1cに示されている、本方法の第3段階においては、温度経過設定に応じた200℃から400℃の間の所定の焼結温度への加熱、並びに圧力経過設定に応じたチップ13及び基板11の圧縮によって、焼結層12を形成することができる。このために、30MPaよりも低い圧力p、特に10MPaよりも低い圧力を、基板の主表面11aに対して垂直な方向においてチップ13又は基板11に掛けることができ、これは
図1cにおいて矢印によって概略的に示されている。この圧縮によって、焼結要素の厚みを低減することができる。これによって、基板11と、半導体チップ13と、それら基板11及び半導体チップ13を結合する焼結層12とを備えている半導体素子10を製造することができる。
【0026】
図2には、構造化された焼結層12,14を備えている素子10’の概略図が示されている。この素子10’は
図1cに示した素子10とは異なり、チップ13がその二つの主表面上において焼結層12又は14を用いて基板11又は15とそれぞれ結合されている。基板15は基板11と同様のものであって良い。
【0027】
図3には、構造化された焼結層12を備えている素子10''の概略図が示されている。この素子10''は
図1cに示した素子10とは異なり、チップ13が焼結層12を介して基板11と結合されているバーティカルパワーMOSFET又はパワーIGBTである。基板11としてDBC(directly bonded copper)基板が考えられ、このDBC基板は例えば熱膨張係数の低いセラミックを有しており、また二つの主表面には銅層16が設けられている。基板にはIMS(Insulated Metal Substrate)基板、PCB(Printed Circuit Board)基板、AMB(Active Metal Brazing)基板又はセラミック性の単層又は多層の基板が含まれる。基板11を完全に金属から、例えば銅から製造されたヒートシンク17の上に配置することができ、このヒートシンク17を介してパワーMOSFETにおいて発生した熱を排出することができる。
【0028】
図4及び
図5には、複数の焼結要素22a,22b,22cの種々の形状及び分布を介する焼結層12の構造化に関する実施例が示されている。
図4及び
図5には、
図1aに示した切断線x−xに沿った断面図が示されている。
【0029】
図4及び
図5にはそれぞれ、図面の平面に向けられている主表面11aを備えている基板11が示されており、その主表面11a上にはコンタクト面21が形成されており、そのコンタクト面21の内側には複数の焼結要素22a,22b,22cがそれぞれ形成されている。コンタクト面の縁部、即ち、コンタクト面の中心に関して最も外側に位置する焼結要素22cはそれぞれ、有利には、少なくとも基板11の縁部から所定の間隔dを空けて設けられている。
【0030】
図4及び
図5には、基板11の1/4の部分が示されており、右下の角はそれぞれ基板11の中心に位置している。換言すれば、基板11を四つのカドラントに区分することができ、各カドラントは、焼結要素22a,22b,22cの配置構成に応じた鏡面対称の配置構成を備えている。このようにして、コンタクト面21を備えている基板11がそれぞれ得られ、このコンタクト面21は基板11の中心に位置する中心領域21aと、コンタクト面21の縁部に位置する縁部領域21cと、中心領域21aと縁部領域21cとの間に位置する中間領域21bとを有している。
図4及び
図5において、コンタクト面21の各領域21a,21b及び21cの境界はそれぞれ相応の境界線によって示唆されている。
【0031】
図4に示した実施例においては、中心領域21a内に一つの大面積の焼結要素22aが配置されている。この中心領域21aは例えば、コンタクト面の少なくとも10%、特に20%以上を占有することができる。焼結要素22aは、この中心領域において基板11とチップ13との間において良好な熱的及び/又は電気的な接触接続が確立されることを保証する。つまり、中心領域21aの面占有率、即ち、焼結要素によって覆われている主表面11aの面積単位当りの割合は非常に大きい。
【0032】
これに対し縁部領域21cにおいては、例えば円形の形状を有することができる複数の焼結要素22cが配置されている。焼結要素22cの水平方向の寸法、即ち、例えばその直径は焼結要素22aの水平方向の寸法よりも遙かに小さい。他方では、焼結要素22cの数は中心領域21aにおける焼結要素22aの数よりも遙かに多い。縁部領域21cにおける面占有率は中心領域21aにおける面占有率よりも低い。これによって、一方では、焼結過程の際に縁部領域21c内の個々の焼結要素22cに作用する圧力は、中心領域内の焼結要素22aに作用する圧力よりも高いことを達成することができる。これによって、縁部領域21cにおける焼結結合部の機械的な安定性は中心領域21に比べて高くなっている。他方では、各焼結要素22cは相互的に補償結合部を表している。換言すれば、縁部領域21c内の個々の焼結要素22cの内の一つの焼結結合部が破損しても、チップ13の電気的、熱的又は機械的な過負荷は生じない。何故ならば、機能している残りの多数の焼結要素22cがその破損を補償することができるからである。これによって、焼結層12全体の機能性を保証することができる。
【0033】
縁部領域21cと中心領域21aとの間に位置する中間領域21b内には、中心領域21a内の焼結要素22aの寸法と縁部領域21c内の焼結要素22cの寸法との間の大きさの水平方向の寸法を有している焼結要素22bを設けることができる。更には、中間領域21b内の焼結要素22bの面占有率は、中心領域21aにおける面占有率と縁部領域21cにおける面占有率との間の大きさを有することができる。
【0034】
焼結要素22a,22b,22cの総数は例えば6から300の間、特に12から240の間である。もっともこの数は、チップ13の水平方向の寸法に応じて変更することができる。縁部領域内の焼結要素22cは例えば、基板11の中心から測定された角度範囲Δ内に位置する。縁部領域21c内の各焼結要素22cは例えば、75°、特に30°を下回る角度範囲Δを取っていると考えられる。
【0035】
各焼結要素22a,22b,22cに関して通路23がコンタクト面21の縁部へと延びており、この通路23を介して焼結要素22a,22b,22cの焼結過程中にプロセスガスを排出又は供給することができる。
図4においては、中心領域21a内の焼結要素22aについての通路の内の一つが点線の双方向矢印によって例示的に示されている。
【0036】
図5に示されている実施例においては、中心領域21a内に大面積の焼結要素22aが配置されている。中間領域21b内の焼結要素22b又は縁部領域21c内の焼結要素22cは台形、多角形又はその他の適切な形状を有することができる。
図5に示された形状は単に例示的なものであると解するべきであり、焼結要素22b及び22cの他の形状及び大きさも同様に適していると考えられる。焼結要素22a,22b及び22cは付加的にノッチ24を有しており、それらのノッチ24によって焼結要素22a,22b,22cの内部領域へのより良好なアクセスが実現される。それらのノッチ又はアクセスチャネル24を介して、プロセスガスを焼結要素22a,22b及び22cの中心部へと一層容易に供給することができるか、又は焼結要素22a,22b及び22cから一層容易に排出することができる。これによって均一で安定した焼結プロセスが実現される。ここでもまた、各焼結要素22a,22b及び22cには少なくとも一つの通路23が案内されており、それらの通路23の内、中心領域21a内の焼結要素22aに案内されている通路が例示的に破線の双方向矢印で示されている。
【0037】
焼結層12に付加的に、半導体素子10,10’及び10''にそれぞれ、熱的及び/又は電気的な結合を改善するための別の材料を設けることができ、例えばアンダーフィル材料、導電性接着剤、はんだ、熱伝ペースト又は類似の材料を設けることができる。