【実施例】
【0046】
実施例1〜53はスラリー重合反応で行った。実施例54〜74は気相流動層反応器中で行った。
【0047】
一般的な触媒の調製
特に断らない限り、以下の実施例で用いた触媒はすべて下記の手順で作製した。
【0048】
一般的調製A
酸化クロム触媒の活性化:クロムが担体に既に含浸された状態で供給業者から触媒を受領した。触媒の物理的性質は表2に記載してある。活性化は乾燥空気中で所定温度で4時間かけて触媒にガスを通すことにより行う。これは通常はチューブ炉内で実施する。触媒はその後使用するまで窒素雰囲気下に貯蔵する。
【0049】
一般的調製B
酸化クロム触媒の還元:典型的な調製法では、先に活性化した触媒3gを不活性雰囲気で攪拌子の付いた50mLのエアレスウェアのフラスコに入れる。35mLの乾燥脱気ヘキサンを加え、該混合物を50℃に加熱する。次いで還元剤をシリンジを通して加える(試薬全体としてヘキサン中20〜25重量%である。)。記述される当量は常に試薬対クロムの比率である。30分後、乾燥を開始する。これは高真空又は窒素パージの下で行うことができる。触媒は使用するまで窒素雰囲気下に貯蔵する。
【0050】
一般的調製C(SC型触媒の調製)
使用前にすべてのシリカを脱水する。シリカの脱水は乾燥空気又は窒素中で所定温度で4時間かけて触媒にガスを通すことにより行う。典型的な調製法では、先に脱水したシリカ3gを不活性雰囲気で攪拌子の付いた50mLのエアレスウェア(airless ware)のフラスコに入れる。35mLの乾燥脱気ヘキサンを加え、該混合物を50℃に加熱する。有機クロム源(トリフェニルシリルクロメート(TPSC))を、希釈剤の添加前、添加時又は添加後に加えることができる。該混合物は典型的には2時間攪拌する(断りのある場合、攪拌は10時間続けることができる。)。次いで還元剤をシリンジを通して加える(試薬全体としてヘキサン中20〜25重量%である。)。記述される当量は常に試薬対クロムの比率である。30分後、乾燥を開始する。これは高真空又は窒素パージの下で行うことができる。触媒は使用するまで窒素雰囲気下に貯蔵する。還元剤が添加されないときは、乾燥はクロム源及びシリカを上述のように混合した後に開始する。
【0051】
触媒の説明
使用されるときは、添加される還元剤対クロムの比を実施例中に見出すことができる。“反応器中”とは該試薬が触媒とは別個に添加されることを意味する。“触媒中”とは該試薬が触媒の調製工程で添加されることを意味する。クロムについて記載した重量%の値は近似値であり、実際の値は±50%の範囲に及び得る。このことは酸化クロム及びシリルクロメート触媒の両方に当てはまる。
【0052】
実施例1
(比較例):触媒はダビソンケミカル(Davison Chemical)社から供給されたものを用いた。触媒はDavison955シリカ(商品名)に0.5重量%のクロムが担持されて構成されており、825℃で活性化した(一般的調整法A)。表2のシリカの諸元を参照されたい。
【0053】
実施例2〜6
(比較例):触媒は、還元剤が一般的調整法Bにあるように触媒の調製工程中に添加されることを除いて、実施例1で用いたものと同一である。還元剤の混合物が使用されるときは、各々のモル比は1:1である。
【0054】
実施例7
(比較例):触媒は、Davison955シリカ(商品名)(200℃で脱水)に0.5重量%のCrが担持されて構成されており、活性化前にチタンテトライソプロポキシドで処理した。活性化後に3.8重量%のTiが残るように充分なTTIPを添加した(TTIPの具体的な添加手順については米国特許第4,011,382号参照)。
【0055】
実施例8〜9
(比較例):触媒は、還元剤が一般的調整法Bにあるように触媒の調製工程中に添加されることを除いて、実施例7で用いたものと同一である。
【0056】
実施例10
(比較例)、実施例11(参考例)、実施例12(比較例):MS35100はPQ社から入手した表2に載せた諸元をもつ酸化クロム触媒である。この触媒は0.5重量%のCrを含有する。この触媒は700℃で活性化される(一般的調製法A)。使用するときは、還元剤は一般的調整法Bにあるように触媒の調製工程中に添加される。
【0057】
実施例13
(比較例)、実施例14(参考例)、実施例15(比較例):触媒は実施例1で用いるものと同一であるが、一般的調整法Bを使用して還元剤としてDEALEを添加する。
【0058】
実施例16
(比較例)、実施例17(参考例)、実施例18(比較例):EP352はイネオス(Ineos)社から入手した表2に載せた諸元をもつ酸化クロム触媒である。この触媒は0.5重量%のCrを含有する。この触媒は700℃で活性化される(一般的調製法A)。使用するときは、還元剤は一般的調整法Bにあるように触媒の調製工程中に添加される。
【0059】
実施例19〜21
(比較例):一般的調製法Cにあるように、トリフェニルシリルクロメートを(事前に700℃で脱水した)MS3050(商品名)担体に添加する。最終的な乾燥組成物が0.5重量%のCrを含有するように充分なトリフェニルシリルクロメートを添加する。使用するときは、還元剤は一般的調整法Cにあるように触媒の調製工程中に添加される。
【0060】
実施例22〜25及び27
(比較例):一般的調製法Cにあるように、トリフェニルシリルクロメートを(事前に600℃で脱水した)Davison955(商品名)担体に添加する。最終的な乾燥組成物が0.24〜0.25重量%のCrを含有するように充分なトリフェニルシリルクロメートを添加する。使用するときは、DEALE還元剤は一般的調整法Cにあるように触媒の調製工程中に添加される。
【0061】
実施例26
(比較例):一般的調製法Cにあるように、トリフェニルシリルクロメートを(事前に600℃で脱水した)Davison955(商品名)担体に添加する。最終的な乾燥組成物が0.25重量%のCrを含有するように充分なトリフェニルシリルクロメートを添加する。トリイソブチルアルミニウム還元剤は一般的調整法Cにあるように触媒の調製工程中に添加される。
【0062】
実施例28〜34
(比較例):この触媒は工業規模で製造した。一般的調製法Cにあるように、トリフェニルシリルクロメートを(事前に600℃で脱水した)Davison955(商品名)担体に添加する。最終的な乾燥組成物が0.24重量%のCrを含有するように充分なトリフェニルシリルクロメートを添加する。DEALEを添加する前に10時間かけてTPSCをシリカと混合した。DEALE/Crは5:1の比とした。
【0063】
実施例35〜38
(比較例):DEALE/Crの比を1.5としたことを除いて、実施例28で用いたものと同一の触媒を使用した。
【0064】
実施例39〜45、50〜53
(比較例):実施例7で用いたものと同一の触媒を使用した。「添加」欄に載せた助触媒は反応器に別個に添加した。
【0065】
実施例46〜49
(比較例)、実施例73(参考例):実施例1で用いたものと同一の触媒を使用した。「添加」欄に載せた助触媒は反応器に別個に添加する。
【0066】
実施例54、55、60〜68及び72
(比較例):この触媒は工業規模で製造した(但し、実施例55はラボパイロットプラント規模で製造した。)。一般的調製法Cにあるように、トリフェニルシリルクロメートを(事前に600℃で脱水した)Davison955(商品名)担体に添加する。最終的な乾燥組成物が0.24重量%のCrを含有するように充分なトリフェニルシリルクロメートを添加する。DEALEを添加する前に10時間かけてTPSCをシリカと混合した。DEALE/Crは5:1の比とした。「反応器中へ」と記載した助触媒は反応器へ別個に添加した。
【0067】
実施例69、70、71、74
(比較例):この触媒は工業規模で製造した。一般的調製法Cにあるように、ビストリフェニルシリルクロメートを(事前に600℃で脱水した)Davison955(商品名)担体に添加する。最終的な乾燥組成物が0.25重量%のCrを含有するように充分なトリフェニルシリルクロメートを添加する。DEALEを添加する前に10時間かけてTPSCをシリカと混合した。DEALE/Crは1.5:1の比とした。「反応器中へ」と記載した助触媒は反応器へ別個に添加した。
【0068】
実施例56
(比較例):この触媒は実施例19で用いたものと同一であるが、パイロットプラント規模で製造した。DEALE/Crは5:1の比とした。
【0069】
実施例57
〜58
(比較例):この触媒は実施例13で用いたものと同一であり、還元剤としてDEALEを5:1のDEALE/Cr比で用いてパイロットプラント規模で製造した。
【0070】
実施例59
(比較例):この触媒は実施例10で用いたものと同一であり、還元剤としてDEALEを5:1のDEALE/Cr比で用いてパイロットプラント規模で製造した。
【0071】
これら特定の実施例では特定量のシリルクロメートがシリカ担体に担持されているが、約0.2〜1.0重量%のクロムの担持量が有用であり、これらも本発明の一部であることを理解されたい。
【0072】
ラボスラリー手順
1リットルの攪拌反応器を重合反応に使用した。反応器は、各実験前に窒素パージ下にて高温で完全に乾燥した。500mLの乾燥脱気ヘキサンを60℃で反応器へ供給した。使用するときは、ヘキセンはこの時点で添加する。特に断りのない限り、各実験において10mLの1−ヘキセンを使用する。次に、600℃で脱水し、0.6mmol/gのTEALで処理した少量(0.1〜0.25g)のDavison955(商品名)シリカを反応器へ添加して如何なる不純物も不動態化させる。試薬が触媒とは別個に反応器に添加される場合は、何れの実験においてもTEALで処理したシリカは加えなかった。15分間の攪拌の後に触媒を入れ、続いて追加の添加剤を入れた。助触媒は他の箇所で述べるように希釈溶液として反応器に直接添加する。反応器を密封し、水素はこの時点で入れる。水素は表に示す場合にのみ使用する。反応器はエチレンを加えて200psiとした。エチレンは反応器圧力が200psiを維持するように流す。エチレンの供給量は電子流量計で測定する。共重合はすべて85℃で行い、単独重合は90℃で行った。重合は最大160gのPEが製造されるまで行ったか又はそれより早く停止した。除圧及び温度低下の後に反応器を開けた。ポリマーの重量は希釈剤を蒸発させた後に測定した。次いでポリマーに多くの試験を行って特性を決定した。
【0073】
試験
密度:ASTM D−1505
メルトインデックス:(I
2)ASTM D−2338 条件E(190℃で測定、10分当たりのグラム数で報告)
フローインデックス:(I
21)ASTM D−1238 条件F(上記メルトインデックスで用いた重量の10倍で測定)
MFR:メルトフローレシオはフローインデックス/メルトインデックスである。
SEC:ポリマーラボラトリーズ(Polymer Laboratories)社;型式:HT−GPC−220,カラム:Shodex,実験温度:140℃,検定標準:NISTトレーサブル,溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
BBF:
13C−NMRで計測したブチル分枝頻度(この数値は炭素原子1000個当たりのブチル分枝の数である。)
【0074】
本発明者は、還元されたシリカ担持酸化クロム触媒を用いる系が所望の生産性を示しつつも、シリカ担持シリルクロメートを用いて得られるポリエチレンに類似する分子量及び分子量分布をもつポリエチレンを製造することを見出した。トリエチルアルミニウム(TEAL)のようなアルキルアルミニウム化合物を、1)反応導入前に触媒に直接添加すること、又は2)反応器に(現場で)直接添加することによって生成するポリエチレンの分子量及び分子量分布が大きくなる。一般には、トリアルキルアルミニウムのアルキル基は同一の又は異なるものとすることができ、約1〜約12個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子を有するべきである。限定的ではないが、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、及びトリメチルアルミニウムが挙げられる。実施例ではもっぱらTEALを使用しているが、本発明はそれに限定されるものではないことを理解すべきである。しかしながら、TEALはポリマーに未制御の側鎖の枝分かれをある程度生じさせる。斯かる側鎖の枝分かれが望ましい用途の場合にはそれを維持するのが有益であろうが、それが望ましくない用途の場合にはそれを除去することが有益であろう。これは、ジエチルアルミニウムエトキシド(DEALE)のようなアルキルアルミニウムアルコキシドを添加することで斯かる側鎖の枝分かれは排除される。ジエチルアルミニウムエトキシド(DEALE)のようなアルキルアルミニウムアルコキシドの使用はこの側鎖の枝分かれを排除する。一般に、一般式R
2−Al−OR(式中、アルキル基は同一の又は異なるものとする。)をもつアルキルアルミニウムアルコキシドは約1〜約12個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子を有するべきである。限定的ではないが、例えばジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジ−イソプロピルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムプロポキシド、ジ−イソブチルアルミニウムエトキシド、及びメチルエチルアルミニウムエトキシドが挙げられる。実施例ではもっぱらDEALEを使用しているが、本発明はそれに限定されるものではないことを理解すべきである。表1のデータは反応条件と、CrOx触媒(シリカ担持酸化クロム)と共にTEAL及びDEALEを用いるときに生成するポリマーの特性を示す。各事例においてアルミニウムアルキルの前に記載した数値はアルミニウム対クロムのモル比を表す。表1では、CrOx触媒はGrace955シリカ(商品名)に酸化クロムを含浸し、その後に空気流動化及び約825℃に加熱することにより製造した。Ti−CrOx触媒は流動化及び活性化の前にチタンテトライソプロポキシドも添加したことを除いて、同様の方法で製造した。還元剤は付加的な触媒の調製工程として添加した。
【0075】
【表1】
【0076】
CrOx触媒
表1の実施例を参照すると、記載された重合条件下にて、炭素原子1000個当たり3.8個のブチル分枝がNMR分析により観察されたことが分かる。これはポリマーへコモノマーが組み込まれた程度を示す。実施例2は触媒がTEALで処理されると、同一条件で組み込まれるヘキセンの量が僅かに減少し、一方でポリマーのフローインデックスが低下することを示している。実施例3は、触媒がTEALで処理されるとコモノマーが存在しなくても相当数の分枝が認められることを示している。この事例では、ブチル(2.4)及びエチル(1.0)分枝の両方が検出された。触媒がDEALEで処理されるとより少ないポリマー側鎖の枝分かれが検出されたが、このことはコモノマーの組み込みの低下が生じたことを示している(実施例4)。触媒還元剤がTEALとDEALEの組み合わせのときは、コモノマーの組み込み率はどちらか一方の還元剤を用いたときに認められるものの間であることが分かった(実施例5)。触媒還元剤を組合せて使用して触媒を作製して単独重合に該触媒を用いるときは、側鎖の枝分かれは検出されなかったことが実施例6から分かる。このことはDEALEがコモノマーの不在下で側鎖の枝分かれの生成を抑制したことを示す。ヘキセンの存在及び不在の両方において、DEALEの添加は生成するエチレンポリマーにおける側鎖の枝分かれを有意に減少させ、ときには排除した。
【0077】
生産性(gポリエチレン/g触媒)又は活性(gポリエチレン/g触媒−時間)を用いて比較すると、ヘキセンの存在は有益であり、生産性及び活性を向上させた。生成したポリマーの分子量における傾向はフローインデックス(FI)の結果を検討することで探り出すことができる。CrOx触媒を用いてTEALの存在下に生成したポリマーのFI値に対してTEALの不在下に生成したポリマーのFI値を比較すると、フローインデックスの減少が指し示すように分子量が増加したことが分かる。従って、触媒調整中にTEAL及びDEALEを賢明に適用することで分子量及び分子量分布を変化させ、同時に側鎖の枝分かれを制御する能力を上記酸化クロムベースの触媒に与えることが可能となる。この技術はより高い密度のポリマーを作るときに有用となろう。
【0078】
結論として、DEALEの添加はCrOxによって生成されるポリマーの枝分かれを減少させ、分子量を増加させる。TEALの添加は生成されるポリマーの分子量を増加させ、コモノマーが存在しないときに側鎖の枝分かれの発生を増加させる。
【0079】
Ti−CrOx触媒
Ti−CrOx触媒は、活性化前にチタンテトライソプロポキシドが酸化クロムと一緒にシリカに含浸されることを除いて、CrOxと同一である(表1の実施例7〜9)。還元剤不在のときと比べてTEALの存在下では、CrOx触媒について見られたのと同一の分子量の傾向がTi−CrOx触媒について観察された。
【0080】
DEALE添加の効果
また、クロムベース触媒の生産性は、DEALEのような活性剤を反応器に直接添加することにより、又は触媒の調製工程の一部として添加することにより増加させることができることも分かった。上での議論に整合することに、ポリマー分子量及び分子量分布の制御は本発明の別の一特徴である。
【0081】
酸化クロムベースの触媒は中程度の誘導時間をもち、高い活性を有する。該触媒は中程度の分子量分布をもつポリマーを生産する。該触媒と共に重合反応器へDEALEのような試薬を添加すると誘導時間が排除されて活性が上昇する(生産性の増大)。また、DEALEの存在は分子量分布を変化させる。シリカ担持型シリルクロメート触媒(SC)の場合、長い誘導時間のために還元剤の不在下では生産性がとりわけ乏しい。DEALEを現場で添加することにより、シリカ担持型シリルクロメート触媒系において誘導時間が効果的に排除されることが分かった。
【0082】
表2には市販されているシリカ担体のいくつかの例をそれらの物理的特性と共に載せてある。DEALEの存在及び用いる還元方法(重合前の触媒への直接添加vs反応器への(現場での)直接添加)の効果について検討した。これらのシリカ担体は説明のための例であり、本発明において使用することのできるシリカの種類のすべてではない。当業者に知られ、当分野で一般に用いられる他のシリカ担体もまた有用である。表2に、本検討に用いたシリカ担体のおよその孔隙量、表面積、平均孔径、平均粒度及びチタン含有量(%)を示す。商標は供給業者が担体を呼称するために使用していたものである。丸括弧外の番号はシリカ単独で供給される担体の名称である。丸括弧内の番号はクロム塩が既に担体に含浸されて供給されるときの担体の名称である。これらのシリカは供給業者から入手したが、以下の仕様に適合する如何なるシリカも同様な作用をもつことが期待される。本発明は如何なる特定の市販のシリカ担体にも限定されるものではなく、孔隙量が約1.1〜約1.8cm
3/gで表面積が約245〜約375m
2/g;又は孔隙量が約2.4〜約3.7cm
3/gで表面積が約410〜約620m
2/g;又は孔隙量が約0.9〜約1.4cm
3/gで表面積が約390〜約590m
2/gである如何なるシリカも使用することができる。
【0083】
【表2】
【0084】
MS35100(商品名)CrOx触媒(シリカ担持酸化クロム)を、1)DEALEの不在下、2)DEALEを触媒に直接添加したとき、及び3)DEALEを現場で反応器に添加したときの性能について調べた。反応は、500mLのヘキサンスラリー中で10mLの1−ヘキセンを加えて行った。反応は85℃及び全圧200psiで実施した。
図3はDEALEの不在下及び存在下で生成したポリマーの分子量分布を示す。DEALEの不在下(
図3(a))では、生成したポリマーの分子量分布は16.9であった。DEALEを現場で加えると(
図3(b))、分子量分布の拡大が観察され、ショルダーが明瞭になり、分子量分布は23.8であった。DEALEを重合前に触媒に添加したときは類似だがそれほどはっきりした結果は生じず(
図3(c))、高分子量側のショルダーの突出が僅かに減少した。DEALEを触媒に直接添加したときは、ポリマー分子量分布は32.4が得られた。DEALEを添加するとM
Z/M
Wの値においても同様の傾向が観察された。M
Z/M
Wは高分子量側のショルダーの指標であり、M
Z/M
Wが増加すると、望まれる高分子量のショルダーがより突出する。M
Z/M
WのデータはポリマーのSEC分析から得られた。DEALEの不在下では(
図3(a))、M
Z/M
Wは5.7が得られた。DEALEを現場で及び触媒に添加したときは(
図3(b)及び3(c))、M
Z/M
W値は約7.7及び9.6がそれぞれ得られた。
【0085】
表3にて明らかなように、触媒への直接添加(触媒中)及び現場添加(反応器中)の双方にてポリマー密度及び触媒活性の増加が実現された。枝分かれのパラメータ(BBF)が指し示すように、DEALEの不在下に比べて、DEALEの現場添加及びDEALEの触媒への添加の双方についてコモノマーの組み込み割合が減少した。DEALE使用時のフローインデックスの増加から明らかなように、分子量の小幅な低下があった。
図4が示
すように、重合前に現場で又は直接触媒にDEALEを添加することによって、誘導時間が実質的に排除された。DEALEの現場添加又は触媒への添加による誘導時間の排除はDEALEの不在下で同一の触媒系を用いて観察された長い誘導時間と対照的である。結論として、このCrOx触媒についてはDEALEの現場添加は重合前に触媒へ添加するDEALEと同等に作用した。
【0086】
【表3】
【0087】
957HS(商品名)酸化クロム触媒を用いて同一の実験を行った。反応は、500mLのヘキサンスラリー中で10mLの1−ヘキセンを加えて行った。反応は85℃及び全圧200psiで実施した。
図5はDEALEの不在下及び存在下で生成したポリマーの分子量分布を示す。DEALEの不在下(
図5(a))では、生成したポリマーの分子量分布は9.7であり、分子量は500,000をかなり下回った。DEALEを現場で加えると(
図5(b))、分子量分布の増加が観察されて約12.0となった。M
Z/M
Wの値はDEALEの添加により高分子量側のショルダーが現れたことを示している。DEALEの不在下ではM
Z/M
Wは約4.5であり、DEALEの現場での添加及び触媒への添加ではM
Z/M
W値は約8.6及び約8.3がそれぞれ得られた。表4にて明らかなように、触媒への直接添加及び現場添加(反応器中)の双方にて密度の増加及び側鎖の枝分かれの減少が実現された。フローインデックスの増加によって示されるように、分子量が小幅に低下した。MS35100CrOx触媒にて観察された効果と同様に、957HSCrOx触媒へのDEALEの添加は、現場での添加又は触媒への直接添加の何れによっても、誘導時間が実質的に排除され、これによって、触媒の活性が向上した(
図6)。結論として、このCrOx触媒系へのDEALEの現場での添加は、DEALEが重合前に触媒に直接添加される場合に比べてより高い活性、より低い分子量、同等の分子量分布、及び同等のコモノマー組み込みを生じた。現場添加及び直接添加によって、DEALEの不在下で観察された有限の誘導時間と比べると誘導時間は実質的に0となった。
【0088】
【表4】
【0089】
また、EP352(商品名)CrOx触媒を、1)DEALEの不在下、2)DEALEを触媒に直接添加したとき、及び3)DEALEを現場で反応器に添加したときの性能についても調べた。反応は、500mLのヘキサンスラリー中で10mLの1−ヘキセンを加えて行った。反応は85℃及び全圧200psiで実施した。
図7はDEALEの存在下で生成したポリマーの分子量分布を示す。DEALEを現場で加えると(
図7(a))、DEALEを触媒に直接添加したとき(
図7(b))に比べて幅広い分子量分布が観察され、双方の事例において高分子側にショルダーが存在し、これはDEALE無しとしたEP352CrOx触媒について観察されたものと類似していた。表5にて明らかなように、触媒への直接添加(触媒中)及び現場添加(反応器中)の双方にてポリマー密度の増加及び側鎖の枝分かれ減少が実現された。しかしながら、EP352CrOx触媒へのDEALEの現場での添加は、DEALE不在下で観察されたものと比較して活性にほとんど変化を生じなかった。これは、触媒活性の実質的な増加が観察された重合前に触媒へDEALEを直接添加するケースとは著しく対照的である。
図8はDEALEの存在下での誘導時間の改善を示し、これはDEALEが現場添加されたとき及び触媒へ添加されたときの双方で実現された。結論として、このCrOx触媒系へのDEALEの現場での添加は、DEALEが重合前に触媒に直接添加される場合に比べてより高い活性、幅広い分子量分布、及び同等のコモノマー組み込みを生じた。DEALEを添加する何れの方法においてもDEALE不在下と比べると誘導時間は改善された。
【0090】
【表5】
【0091】
MS3050シリカ担持SC触媒について同様のデータを
図9及び10と表6に示す。
図10から分かるように、DEALEの添加によって誘導時間が著しく向上し、実質的にSC触媒の誘導時間を排除した。表6に示すように、活性においても顕著な向上が見られた。誘導時間が長いことがシリカ担持シリルクロメート触媒の主たる弱点であったが、DEALE又はその他のアルミニウム化合物の現場添加は誘導時間の排除によって著しく活性を増加させた。生成したポリマーの分子量は、フローインデックスの顕著な増加によって明らかなように、低下した。生じたポリマーの分子量が減少した一方で、このことは高分子量のポリマーを製造する付加的な触媒を使用する二触媒系への応用性を高めた。
【0092】
【表6】
【0093】
Grace955(商品名)シリカ担持SC触媒も検討した。ここでもまた、DEALEを添加したときに誘導時間が顕著に改善した。誘導時間が長いことがシリカ担持型シリルクロメート触媒を用いるときの主要な欠点であったので、このことは重要である。
図11に示すように、分子量及び分子量分布の挙動はDEALEをこのSC触媒へ触媒中で添加することによっては大きく変化しなかった。表7のデータから、DEALEを現場で添加したときはこれが当てはまらないことが分かる。すべての事例において、DELAEを添加することで実質的に誘導時間が排除された(
図12)。現場での添加は著しく活性を増加させてポリマーの分子量を低下した。SC型触媒と共にTIBAを用いることで高生産性の触媒系を提供し、DEALEが還元剤として使用されるときよりも分子量の高いポリマーを作った。このことはより短い滞留時間でポリマーの分子量を維持するために特に重要である。トリエチルアルミニウム及びトリ−n−ヘキシルアルミニウムのようなその他のアルキルアルミニウム化合物も同様に作用することが期待される。
【0094】
【表7】
【0095】
結論として、シリルクロメート触媒と共にDEALE又はTIBAを使用するとポリマーの分子量特性(分子量、分子量分布、高分子量側のショルダー等)はDEALE又はTIBAを使用せずに得られるものと類似するが、これらのアルミニウム化合物が不在の場合よりも優れた生産性を示す。従って、シリルクロメートで製造するポリマーの肯定的な分子量特性を維持しながらDEALE又はTIBAの使用により活性が同時に増加する。CrOx触媒と共にTEAL及びDEALEを使用するとSC触媒を用いて製造するポリマーにより類似したポリマーが生じつつ、CrOxポリマーに内在する所望の活性が維持される。TEAL及びDEALEをCrOx及びSC触媒系において連続的に変化させることで、優れた活性を維持しつつも製造されたポリエチレンの特性を調製する仕組みを作り上げることが可能となる。このようにして、多種多数のポリエチレングレードに対するSTY(反応器単位体積当たり単位時間当たりのポリマーの重量)を最適化することができる。
【0096】
助触媒が性能へ与える効果
以下の助触媒:TEAL、TIBA(トリイソブチルアルミニウム)及びTNHAL(トリ−n−ヘキシルアルミニウム)を用いて、(5当量のDEALE/Crで処理した)SC触媒の性能に助触媒が与える効果を検討した。実施例では特定の助触媒に限定されているが、その他のアルキルアルミニウム化合物も適用でき本発明の一部であることを理解すべきである。表8及び
図13〜21は、助触媒を変化させたときのポリマーのフローインデックス、活性、密度、誘導時間、及び種々の分子量関連のデータを示している。表8及び
図13〜21のデータにおいて検討したベースとなる触媒系はCr1当量当たりDEALE5当量としたSC触媒である(ここではSC−500と表示する。)。表8におけるフローインデックスの傾向は助触媒の添加により分子量が増加したことを示している。また、表8は触媒活性が助触媒の添加によって増加したことも示している。TEB(トリエチルホウ素)もSC触媒用の助触媒として使えることに留意すべきである。助触媒は常に、“反応器中”(定義通り)に添加された。
【0097】
【表8】
【0098】
図13及び14は、触媒活性及び分子量が全体的に増加したことを示しており、Cr1当量当たり約1〜2当量のAlとしたときが最大の効果を示した。理論によって拘束されることを意図するものではないが、助触媒が高レベルに増加すると触媒毒となり始めることが疑われる。
図15〜17は誘導時間への助触媒の効果を示す。すべての事例で、助触媒が存在すると活性はより高いピークを有し、大方高い状態が維持されたことが分かる。SC−500触媒については助触媒の存在によって誘導時間が実質的に除去された。
【0099】
図18〜21は生成したポリマーの分子量分布へ与える助触媒の存在の効果を示す。助触媒によって分子量が増加したことを先に観察したが、分子量分布はおおむね変化しなかった。更に、助触媒の不在下でSC−500によって製造されたポリエチレンと比較してM
Z/M
wの値で示される高分子量側のショルダーの強度も変化しなかった。結論として、助触媒はSC−500触媒について触媒活性及びポリマーの分子量を増加させたが、ポリマーの分子量分布はおおむね変化しなかった。これらの特徴は短い滞留時間での操作には望ましいことである。
【0100】
同様の効果が1.5当量DEALE/1当量CrをもつSC触媒(ここではSC−150と表す。)でも見られた。表9及び
図22〜28は助触媒を変えたときに生成したポリマーに対する誘導時間、活性、及び種々の分子量関連データを示している。SC−500について先に観察された傾向がSC−150に対して明らかに示されている。これらの触媒系において誘導時間(
図22〜24参照)は助触媒の添加によって実質的に排除された。
図25〜28は分子量分布が助触媒によって大方影響を受けなかったことを示している。助触媒の不在下でSC−150によって製造されたポリエチレンと比較してM
Z/M
wの値で示される高分子量側のショルダーの強度も変化しなかった。結論として、助触媒はSC−150触媒について触媒活性を増加したが、ポリマーの分子量分布はおおむね変化しなかった。従って、助触媒を賢明に選択することで分子量を変化させ触媒活性を向上させることができる。
【0101】
【表9】
【0102】
また、助触媒の添加はCrOx触媒へも有利な効果を奏する。表10及び
図29〜34は(Grace955シリカ担持)Ti−CrOx触媒の性能への助触媒の効果を示すデータを提供している。表10は、フローインデックスがTEALの添加で減少し、従ってTi−CrOx触媒に対して5当量の助触媒を使用することでポリマーの分子量が増加したことを示している。上で議論したSC−500及びSC−150触媒と同様に、Ti−CrOx触媒の活性は助触媒に対して反応した。
【0103】
【表10】
【0104】
活性の向上は、特にCr1当量当たり1〜2当量のAlとしたときに見られた。
図31〜34に示すように、助触媒が存在すると分子量分布は広がり、はっきりした高分子量側のショルダーは現れなかった。ポリマーの分子量分布の拡大はポリマーの膨張を増加させずに物理的特性を向上させることになる。
更に、本発明者はアルミニウムベースではない種々の化合物も本発明に有用であることを発見した。例えば、TEB(トリエチルホウ素)は触媒の性能へ与える効果が好適であった。表11は、CrOx(Grace955シリカ担持酸化クロム)及びTi−CrOxの触媒系の性能に対するTEB助触媒の効果を示している。
【0105】
【表11】
【0106】
図35〜36は、Ti−CrOx触媒単独(
図35)及びTi−CrOxとTEB助触媒(
図36)から生成したポリエチレンに関する分子量関連のデータを示している。水素不在下ではCrOx及びTi−CrOx系の双方について、助触媒無しに比べてTEB使用時はフローインデックスが減少し、ポリマーの分子量が増加したことが分かる。双方の触媒系においてTEBの使用によって触媒活性は大方影響を受けなかったが、TEBは分子量分布を広げた。更に、助触媒としてDEALEを用いたときと同様に、TEBの使用によってもたらされたこの分子量分布の拡大は分子量ショルダーのほんの小幅な成長しか伴わなかったように思われる(
図36)。
【0107】
本発明では、一般に助触媒、具体的にはアルミニウムアルキル助触媒の賢明な使用を通して、生じるポリエチレンの分子量、分子量分布、触媒活性、及びその他の特性を操作することが可能となる。ここで明示的に議論したアルミニウムアルキル化合物は非限定的な例としてのみ議論してきたのであり、その他のアルミニウムアルキルも適用でき、それらも本発明の一部である。同様に、DEALE以外のアルキルアルミニウムアルコキシドも本発明において適用できる。これらには、限定的ではないが、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジプロピルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムプロポキシド、及びメチルエチルアルミニウムエトキシドが包含される。助触媒の賢明な使用により上記特性を変化させて、生成するポリマーを特定用途のために仕立て上げることができる。重要なことであるが、本発明では、高活性で、その結果反応器滞留時間を短縮する能力のあるクロムベース触媒を用いて高分子量ポリエチレンの製造を提供する。これにより、クロムベース触媒を用いたポリエチレンの製造に関して高い反応温度を維持しつつSTYが向上する。
【0108】
気相流動層による実施例
以下、本発明の気相流動層による実施例を示す。公称直径14インチをもつUNIPOL
TM(登録商標)プロセス設計による気相流動層重合反応器を用いて高密度エチレン−ヘキセンのコポリマーを連続に製造した。ここでの事例においては、循環ガス排風機は、ガス再循環ループ内で循環ガス熱交換器の上流に位置させたが、これら二つを逆転させてガスが熱交換器に入るところでの温度を下げることもできた。循環パイプは直径が約2インチであり、流動層内の空塔ガス速度を所望の速度に制御する循環ライン中のボールバルブによって流量を操作した。モノマー及び気体状成分は排風機前段、排風機のインペラのところ又は排風機後段の冷却器上流で加えた。乾燥触媒を、窒素キャリアガス流を用いて、離散的に少しずつ一定量を1/8インチのチューブを通して分散板から約0.1〜2m上方、もっとも好ましくは約0.2〜1.2mの範囲の高さのところで反応器の直径の約15〜50%の位置に流動層へ直接的に連続的に加えた。ポリマー生成物は、流動層を所望の平均的な高さや重量にほぼ維持するために、約0.2〜5kgの一定量ずつを排出分離タンクを通して反応器から定期的に引き抜いた。ポリマーの分子量及び分子量分布を操作するために、いくつかの実験において窒素中の酸素の希釈流(200ppmv)を入手して使用した。これは、遊離アルミニウムアルキルが反応系に存在しないときは熱交換器前段の循環ガスに加えたが、遊離TEAL及びDEALEが存在するときは酸素の一部が循環ライン又は流動層に入る前の熱交換器内でこれらアルミニウムアルキルと反応する可能性を回避するために添加地点は流動層へと変更した。これは予防策であって循環ラインや熱交換器前段へ添加することを排除するものではない。
【0109】
時間的に離散させて様々な実験を実施し、各実験には比較例を入れた。供給流及び反応器中のバックグラウンド不純物は経時変化し、反応温度及び触媒生産性の小さな変化が各実験間で生ずる。比較例には工業的製造設備で調製した触媒及び実験室で調製した触媒が含まれる。この実験室で調製した触媒はより低温の反応温度が必要であり、同様に実験室で調製した試作触媒に対する比較例を提供した。
【0110】
表12の実施例54〜59は様々な担体及びクロム源を用いた結果を示している。すべての実施例において反応器はシーティングや塊なしにうまく動作した。実施例54及び55は比較用触媒(600℃で脱水し、5当量のDEALEで還元した955シリカ担持シリルクロメート)に対する結果を示す。試作触媒を実施例55と比較した。MS3050担体に担持したSC触媒(実施例56)は著しく高い触媒生産性を有し、高分子量側のショルダーをもつ広い分子量分布のポリマーを作った。実施例57及び58で使用した触媒は、825℃で活性化し、次いで5当量のDEALEで還元した955シリカ担持CrOxをベースとした。双方の事例において、より高い触媒活性が得られ、ポリマーを作るためにはより高い反応温度が必要であった。このことは、これらの触媒が内在的により高分子量のポリマーを作り、短い滞留時間での操作に有用となることを示している。実施例58では酸素の反応器へのアドバック(addback)も利用したが、これは所与の温度でポリマーの分子量を低下させ、ポリマーのメルトフローレシオ(MFR)値を増加させた(ポリマーの分子量分布が広がったことを示す。)。実施例59は、700℃で活性化し、次いで5当量のDEALEで還元したPQ社のCrOx触媒(MS3050担持CrOx)に対する結果を示す。ここでもまた、より高い触媒活性が得られ、ポリマーを作るにはより高い反応温度が必要であった。
【0111】
結論として、これら気相での結果は、先の実施例で見出した観察結果を支持するものである。シリルクロメート触媒の製造に代替的な担体を利用してより高い触媒生産性及びより高い分子量のポリマーが得られる。還元CrOx触媒を利用することでも同様の改善を与えることができる。すべての事例において、望ましい高分子量側のショルダーをもつ広い分子量のポリマーが得られた。
【0112】
【表12】
【0113】
表13の実施例60〜64は表12と同様の反応器内で行った。実施例60は比較例である。実施例61〜64は標準的なシリルクロメート触媒(600℃で脱水して5当量のDEALEで還元した955シリカに担持したシリルクロメート)にTEALを添加したときの効果を示している。表13は、生産性、樹脂粒子の特性、反応温度の上昇及びMFRに基づいた、シリルクロメート触媒を用いた気相流動層重合へのTEALの添加量の最適条件を示す。特定の触媒及び反応条件に対しては、最適条件は概ねTEAL/Crが0.5〜3の範囲、より好ましくはTEAL/Crが1〜2の範囲であった。ここでの一連の実験において触媒は同一とした。生産性の値は触媒添加速度及び樹脂生産速度の物質収支を基礎とした。樹脂中に残っているクロムは生産性の傾向と類似する。添加したTEAL/Crのモル比はTEALの供給速度及びX線法による樹脂中のCr測定量に基づく。TEALは、窒素パージはないが触媒の注入と同じように設置した1/8インチのチューブを使用して層へ添加した。TEALを精製イソペンタン中の希釈溶液として供給した。用意した容器は、容器内の反応性不純物(例えば水)が少量のTEALを消費するおそれを少なくするために充填前にTEALに予め暴露した。TEALを添加する時間中、シート、チップ又は塊を生成することなく反応器はよく動作した。高抵抗−高静電容量の電子プローブによって測定した層内の静的電圧はTEALの存在すると低下した。静電圧は中性のままであったがバンドは狭まった。層内の分散板上方及び層上方の余裕高(フリーボード)内に様々な間隔で配置した壁面の熱電対はTEAL不在の事例において優れた結果を示したが、TEALの存在下の方が変動が少なく層の平均中心温度へ(下から)1〜2℃接近し、更に良好に思われた。
【0114】
結論として、助触媒(TEAL)の添加は触媒活性を高め、同一のポリマー分子量を得るのに反応器をより高温で運転することを可能にした。これらすべての実施例においてポリマーの分子量分布は不変のままであった。
【0115】
【表13】
【0116】
実施例65〜73(表14に纏めてある。)及び実施例74(以下に論ずる。)の実験をこれまでの実験と同様の気相重合反応器で行った。実施例65〜71では、2種類のDEALE/Cr触媒レベル(5当量のDEALE/Cr及び1.5当量のDEALE/Cr)で調製した触媒を用いて高STY及び低STYの好ましい範囲にあるTEAL助触媒の添加の効果を調べた。TEALは検討した各STYで触媒生産性を約35%増加させ、また、各STYで反応温度を約3〜5℃増加させた。TEALは、より低いSTYでTEAL無しのときの触媒生産性に匹敵する又はそれよりも高い触媒生産性でより高いSTYでの操作を可能とした。TEALの存在下ではそれが無いときに比べて高STYでの運転時には樹脂の粒径が増加し、微粉は減少した。MFRはSTYの増加と共に増加した。低DEALEの触媒及び高DEALEの触媒の性能はTEALの存在下では同様であったが、TEALが無いときは異なった。助触媒無しでは触媒生産性及び必要反応器温度が高STY(短滞留時間)の運転に不適切となることが分かる(実施例67及び70)。これら気相での結果は先の実施例を支持するものであり、シリルクロメート触媒と共に用いる助触媒の有用性を示している。
【0117】
実施例72は助触媒の添加と共に用いる酸素アドバック(add-back)の有用性を示している。酸素を反応器に添加することでポリマーのフローインデックスが増加した。酸素はポリマーの分子量及び分子量分布を制御するのに添加することができる。
【0118】
実施例73では高担持量の酸化クロム触媒(825℃で活性化した955シリカで担持:0.5重量%Cr)を使用してTEALの代わりにDEALEを反応器へ添加した。その結果、TEAL有り又は無しの標準的なシリルクロメートでの操作に比べて触媒生産性が増加し、反応温度が上昇した。
【0119】
実施例74:流動層中で低DEALE/Cr比のシリルクロメート触媒(1.5:1=DEALE/Cr)を使用した重合反応中にTEALを添加するとポリマーのシート及び凝集体が二度生成して樹脂排出ポートを閉塞させたので反応器を停止せざるを得なかった。
【0120】
実施例65〜72については反応器はよく作動した。DEALE/Cr=5:1のシリルクロメート触媒を使用してTEALをTEAL無しの系へとうまく導入した。DEALE/Cr=1.5:1の触媒を用いたTEALの実施例は、既にTEALが流動層反応器内に存在する状態で5:1から1.5:1の触媒へと移行することによりうまく行った。触媒の添加は、特により低いDEALE/Cr触媒に対しては、既に充分な量のTEALを含有する層へ開始するのが好ましい。
【0121】
TEAL及びDEALEの反応器への添加は予め計算した速度で行い、次いでAl/Cr比を実験終了時に計算した。触媒添加速度に基づいて事前に決めたAl/Cr比に制御すること、又はTEAL又はDEALEのほぼ一定の供給速度を規定することは可能であろう。また、これらの供給速度は樹脂の生産速度に比例し得るのでこれらの濃度をある特定のレベル、好ましくは試薬の最小限の使用で所望の結果を達成するレベルに制御することができるだろう。
【0122】
【表14-1】
【0123】
【表14-2】
【0124】
本発明及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲で規定した本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更、置換及び改変が可能であることを理解すべきである。更に、本出願の範囲は明細書中に記載した特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者であれば本発明の開示から容易に理解できるので、ここに記載した実施形態と実質的に同一の機能又は実質的に同一の結果を達成する、現存し又は後に開発されるプロセス、機械、製品、組成物、手段、方法、又は工程は本発明に従って利用することができる。従って、添付の特許請求の範囲はその範囲内にそのようなプロセス、機械、製品、組成物、手段、方法、又は工程を包含することが意図されている。