(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出射波長を時間的に変化させる波長可変光源と、前記波長可変光源から出射された光を被検者眼に導く導光光学系と、を有し、前記波長可変光源による眼からの反射光と参照光による干渉光のスペクトルを計測して断層像を得るスウィプトソース光コヒーレンスグラフィーを有し、
前記広深度撮影手段は、深さ方向の撮像範囲に角膜から眼底を含む眼全体が含まれるように、前記波長可変光源から出射する光の波長幅及び波長幅のサンプリングポイント数の少なくともいずれかを設定し、
前記第1〜第3断層撮影手段は、深さ方向の撮像範囲が各部位に対応するように、前記波長可変光源から出射する光の波長幅及び波長幅のサンプリングポイント数の少なくともいずれかを設定することを特徴とする請求項6記載の眼科観察システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る眼科観察システムの光学系及び制御系を示す図である。なお、本実施形態においては、被検者眼(眼E)の軸方向をZ方向(光軸L1方向)、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。
【0010】
<システム構成>
眼科観察システム10は、眼底断層撮影デバイス12、前眼部断層撮影デバイス14、及び眼軸長測定デバイス16を備え、これらは、プロセッサ(演算制御部)18に接続されている。プロセッサ18は、メモリ20、モニタ22、データベース(例えば、正常眼DB)24、操作部26に接続されている。操作部26には、種々のインターフェース(例えば、マウス、タッチパネルなど)が用いられる。
【0011】
眼底断層撮影デバイス12は、眼底Efの3次元断層像を取得し、前眼部断層撮影デバイス14は、前眼部Eaの3次元断層像を取得する。そして、取得された画像データは転送され、メモリ20に記憶される。デバイス12とデバイス14は、同一の筐体内に配置された構成であってもよいし、別装置として配置された構成であってもよい。もちろん眼底と前眼部が同時に撮影可能なデバイスであってもよい。
【0012】
好ましくは、眼科用光干渉断層計(OCT光学系200(
図2参照))が用いられる。なお、追加的には、眼底と前眼部の間に位置される中間透光部位(例えば、水晶体後面〜硝子体〜網膜)の3次元断層像を取得する中間部断層撮影デバイスが、デバイス12又はデバイス14の同一筐体内、又は別装置として配置される。
【0013】
眼距離測定デバイス16は、光又は超音波を眼Eに照射し、その反射信号を得て軸方向に関する眼Eの組織間の長さ(例えば、眼軸長、水晶体前面から網膜面までの距離、など)を測定する。デバイス16は、例えば、眼底断層撮影デバイス12、前眼部断層撮影デバイス14、と同一の筐体内に配置される。また、デバイス16は、別装置として配置され、測定結果が用いられるようにしてもよい。
【0014】
また、プロセッサ18には、光コヒーレンストモグラフィーとは異なる方式により眼Eの断層像を取得する他のデバイス28が接続されるかもしれない。例えば、超音波診断装置は、虹彩裏側の断層画像の撮影に適している(OCTでは、虹彩の裏に測定光が回らないため、撮影が通常困難)。また、カラー眼底像を得る眼底カメラ、眼底をスキャンするSLOは、眼底正面像の撮影に適している。また、角膜トポグラフィー測定装置は、OCTより短時間での3次元角膜形状分布の測定に適している。
【0015】
<眼球グラフィックの取得、表示>
プロセッサ18は、デバイス12、14、16によって取得された画像データ及び測定データに基づいて眼底、前眼部を含む眼全体の3次元位置情報(中間部が含まれても良い)を算出し、眼全体の立体形状を表す3次元グラフィック300(以下、眼球画像と省略する)を画像処理により構築する(
図3参照)。これにより、眼底断層像及び前眼部断層像が3次元的に合成される。この場合、コンピュータグラフィックス(CG)の技術が利用される。3次元グラフィックを構築する場合、眼E全体の画像データ(例えば、眼球の周辺部)及び光学データを全て得る必要はなく、既知の眼構造に基づいて作成された仮想グラフィックによって補間されてもよい。
【0016】
プロセッサ18は、モニタ22の表示を制御し、眼全体の立体像としての眼球画像30を出力する。眼球画像300を表示する場合、プロセッサ18は、ある断面で切断された眼球画像300であって、ある断面における前眼部組織と眼底組織の断層像が現れた眼球画像300を表示することが好ましい。これにより、前眼部及び眼底の内部組織の状態が視認される。
図3の眼球画像300には、眼底部のグラフィック画像302、前眼部画のグラフィック画像304、中間部のグラフィック画像306が3次元的に表示されている。
【0017】
そして、プロセッサ18は、検者によって操作される操作部26からの操作信号に基づいて眼球画像300の表示位置、表示方向、表示倍率を変更する。これにより、眼球画像300は、任意に回転され、又は見る方向(網膜、正面方向、斜め方向など)が任意に調整される。
【0018】
プロセッサ18は、眼全体の3次元位置情報に基づいて眼全体のある横断方向における断層像320を表示するようにしてもよい(
図4参照)。眼球画像300と断層像320は、同時に表示されてもよい。また、眼球画像300上における断層像320に対応する断層位置において、断層位置を示すグラフィック表示310を眼球画像300に重ねて合成表示してもよい(例えば、)。そして、プロセッサ18は、操作部26からの操作信号に基づいて3次元位置情報から取得する断層像302の横断方向を変更する。
【0019】
また、眼球画像300の任意の領域が操作部26により指定されると、任意の部位が切り取られたり、透過率が変更される。また、特定の部位(例えば、眼底断層像)を観察したい場合、例えば、部位毎の適切な表示モードにて特定部位の画像が表示される(
図5の眼底立体像330、眼底切断像331参照)。
【0020】
例えば、モニタ22上において、眼球画像300における特定の部位が指定されると、指定された部位に対応する断層像(2D画像/3D画像)がモニタ22上に表示される。また、断層像の表示と共に、その部位における計測結果(計測マップなど)、解析結果が表示される。例えば、眼球画像300における眼底部が指定されると、眼球画像300と共に眼底断層像がモニタ22上に表示される。このとき、眼底断層像と共に、網膜のある層における厚みマップ、正常眼と測定眼との厚みに関する差分マップ、病変の進行を示すパラメータなどが表示される。
【0021】
特定部位に対応する画像がモニタ22上に表示されているとき、眼球画像300における特定部位に対応する部分に強調表示(例えば、色が変わる、マークが付されるなど)がなされることにより、眼球画像300とある部位の断層像との対応付けがなされる。
【0022】
例えば、ある特定部位の3次元断層像が表示される場合、眼球画像300における対応部分が強調表示される。また、ある横断方向に関する2次元断層像が表示される場合、眼球画像300における対応部分において横断位置を示す表示がなされる。また、特定の部位の画像と共に、眼球画像300が小さく表示され、眼球画像300の特定の部位がハイライト表示されてもよい。
【0023】
<他のデバイスを用いた画像追加>
この場合、プロセッサ18は、デバイス28によって取得される画像データ又は測定データに基づいてOCT以外の情報を取り込み、眼球画像300又は断層像302中に合成して表示するようにしてもよい。また、デバイス12、14、16によって取得された画像データのいずれかとデバイス28によって取得されるデータが合成されるようにしてもよい。
【0024】
例えば、眼球画像300における虹彩の裏側領域において、超音波診断装置による超音波エコー画像が合成表示されることにより、虹彩裏側の画像情報(水晶体周辺部の形状、など)が追加される(例えば、
図3、
図4の画像C参照)。なお、超音波エコー画像とOCT画像が重複する領域については、高画質の画像(通常,OCT画像)が優先される。なお、光を用いて前眼部像を得る場合、光が通過できる領域(瞳孔内)の画像を得るには適しているが、虹彩裏の画像を得ることは困難である。したがって、上記超音波画像が合成されることにより、眼球画像300の有用性が高まる。また、角膜トポグラフィーの測定結果によるグラフィックマップを眼球画像300の角膜に対応する部分に合成するようにしてもよい。
【0025】
<画像解析、及び解析結果の眼球グラフィックへの反映>
プロセッサ18は、前眼部、中間部、眼底部の画像情報の組み合わせにより、眼全体の詳細な形状、状態、疾患、異常を画像処理によって解析し、解析結果をモニタ22に表示する。例えば、プロセッサ18は、取得された撮影画像を解析し、解析結果を3次元グラフィックと同時に表示する(
図3のマーク360参照)。例えば、プロセッサ18は、解析処理によって疾患、異常が検出された場合、その異常部位について、眼球画像300上の対応部位を注目部位として表示する(例えば、マーク追加、ハイライト表示、色分け、点滅表示など)。プロセッサ18は、各デバイスによって取得された各画像データを個別に解析してもよいし、各データを統合した後の統合画像データを解析するようにしてもよい。
【0026】
各部位の解析結果としては、例えば、角膜形状、角膜厚、前房深度、水晶体形状、網膜厚、眼軸長、正常眼データベースとの比較結果など(数値表示、カラーマップ表示であってもよい)が考えられる。
【0027】
眼底断層像を解析する場合、プロセッサ18は、例えば、取得された3次元断層像における網膜各層を画像処理により検出し、所定の判定条件(判定基準)を基に各層の検出結果を解析し、撮影部位が正常か否かを判定する。判定手法としては、各層の層厚判定、形状判定、所定部位のサイズ判定等が考えられ、正常眼における各層の間隔、所定部位の形状、所定部位のサイズ、等が記憶されたデータベースが画像判定条件のベースとして利用できる。例えば、眼Eの神経線維層の厚みが正常眼のデータに収まるか否かが判定される。
【0028】
前眼部断層像を解析する場合、プロセッサ18は、例えば、取得された3次元断層像における前眼部組織の位置情報/輝度情報を算出する。そして、プロセッサ18は、その位置情報に基づいて、角膜表面/裏面曲率分布、角膜厚分布、水晶体前面/後面曲率分布、水晶体厚分布、前房深度分布、隅角の傾斜角度などを測定する。例えば、眼Eの隅角の傾斜角度が所定の許容範囲を超えているか否かが判定される。また、水晶体部分の画像の輝度分布に基づいて水晶体の混濁具合が算出され、白内障の進行度合が解析される。
【0029】
中間部断層像を解析する場合、プロセッサ18は、例えば、取得された3次元断層像における中間部組織の輝度情報を算出する。そして、硝子体部分の画像の輝度分布に基づいて硝子体の透光具合が算出され、硝子体剥離、硝子体への出血の状態などが解析される。
【0030】
<統合解析>
さらに、プロセッサ18は、各断層像の解析結果を統合した解析を行う。例えば、プロセッサ18は、前眼部像での隅角の傾斜角度と、眼底像での網膜のある層の厚み(例えば、神経線維層)とに基づいて緑内障の進行度合を判定するようにしてもよい。ここで、隅角の傾斜角度が許容範囲内であり、網膜の層厚が許容範囲を超えている場合、低眼圧緑内障の疑いがあると判定され、判定結果がモニタ22上に表示される。
【0031】
さらに、プロセッサ18は、取得された眼全体の3次元位置情報に基づいて眼球組織の測定を行うようにしてもよい。例えば、プロセッサ18は、3次元位置情報における角膜頂点位置と、眼底の黄斑位置とを画像処理により抽出し、角膜頂点から黄斑までの距離を算出することにより眼軸長を測定する。このようにすれば、眼球の傾きに関わらず、眼Eの正確な眼軸長値が得られる。なお、より正確な値を得るためには、前眼部画像と眼底像が同時に取得されることが好ましい。
【0032】
また、プロセッサ18は、デバイス28によって得られた画像情報/測定情報に基づいて、眼Eを解析し、その解析結果をモニタ22に表示する。例えば、超音波診断装置の解析において虹彩の裏側に病変、浮腫、混濁などが発見された場合、プロセッサ18は、眼球画像300における虹彩の裏側に対応する部分を注目部位として表示する。また、角膜トポグラフィーの解析において円錐角膜が発見された場合、プロセッサ18は、眼球画像300の角膜に対応する部分を注目部位として表示する。
【0033】
また、プロセッサ18は、デバイス12、14によって得られた画像情報と、デバイス28によって得られた画像情報とに基づいて眼Eを解析し、解析結果を表示する。例えば、前眼部OCTによって得られた水晶体の中央部分の画像と、超音波診断装置によって得られた水晶体の周辺部分の画像と、に基づいて水晶体全体の混濁度合を判定し、白内障の進行度合を判定結果として表示するようにしてもよい(例えば、グラフィック表示、パラメータ表示)。
【0034】
上記のようにOCTによる解析結果とOCT以外の装置による解析結果とに基づいて統合的な解析が行われることにより、より詳細な解析が可能となる。この場合、例えば、眼底カメラ画像、超音波画像、屈折マップデータなどが利用される。また、X線画像、MRI、テラヘルツ波レーダ、ミリ波レーダによる解析結果とOCTの解析結果に基づいて統合解析が行われるようにしてもよい。
【0035】
また、プロセッサ18は、眼Eの手術を補助するための情報を表示するようにしてもよい。例えば、プロセッサ18は、眼Eの光学情報(角膜曲率、眼屈折力、眼軸長、収差情報、等)と眼内レンズの光学情報を取得し、これらに基づいて眼内レンズ手術を想定したシミュレーションを行う。この場合、屈折データなど眼内レンズ計算に必要な情報が、他の装置(例えば、角膜トポグラフィー、眼屈折力測定装置)によって取得され、統合的に解析される(もちろん一体型の装置であってもよい)。
【0036】
そして、プロセッサ18は、眼球画像300の前眼部部分において眼内レンズを模したレンズグラフィック330を合成表示すると共に、レンズの配置位置に応じた予想術後結果335(残余屈折度数、残余収差、見え方シミュレーションなど)を表示する(
図6参照)。そして、操作部26の操作を元に眼球画像300上でレンズグラフィック330の位置が変更されると、その眼内レンズによる予想術後結果335が随時変更される。これにより、眼内レンズのシミュレーションが可能となる。
【0037】
この他、前眼部、眼底、中間部、眼全体の断層像を得る場合、超音波診断装置、スリット光を用いた前眼部断面像撮影装置(例えば、スリット投影系とシャインプルーフカメラ)、X線撮影装置、核磁気共鳴画像法による撮影装置(MRI:magnetic resonance imaging)、テラヘルツ波レーダ又はミリ波レーダを用いた撮影装置、などが用いられるようにしてもよい。なお、これらは、OCTとの複合装置であってもよい。もちろんデバイス12とデバイス14において、異なる撮影原理のデバイスが用いられてもよい。
【0038】
<OCT光学系を用いた眼球画像の取得>
図2はOCT光学系200を備える眼科撮影装置の一例を示す図である。以下の説明においては、眼Eの奥行き方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。
【0039】
本光学系は、眼Eの断層像を得るOCT光学系(干渉光学系)200と、眼底Efの正面像を得る正面撮像光学系300と、前眼部Eaの正面像を得る前眼部撮像光学系400とを備える。これらの光学系は、ある筐体に内蔵され、周知のアライメント用移動機構(手動又は電動)により、眼Eに対して三次元的に移動される。
【0040】
ダイクロイックミラー500は、OCT光学系200の光源202から発せられる測定光を反射し、正面撮像光学系300の光源から発せられる光を透過する特性を有する。ダイクロイックミラー502は、図示なき前眼部照明によって照明された前眼部反射光を反射し、撮像光学系400に入射させる。導光光学系(例えば、対物レンズ)504は、光を眼Eに導光すると共に、眼Eからの光を各光学系に導光する。
【0041】
OCT光学系200は、光源202から出射された光束をカップラー204によって測定光束と参照光束に分割し、測定光束を眼Eの所定部位(前眼部Ea又は眼底Ef)に導き,参照光束を参照光学系208に導いた後、眼Eの所定部位で反射した測定光束と参照光束との合成により得られる干渉光を検出器(受光素子)210に受光させる。
【0042】
本光学系は、SS−OCT(スウィプト・ソース・OCT)であり、光源202について、出射波長が時間的に変化される波長走査型光源(波長可変光源)が用いられる。光源202は、例えば、光源、ファイバーリング共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたものが挙げられる。また、検出器210において、例えば、単一の受光素子が設けられる。平衡検出、偏光検出のために複数の受光素子が用いられるようにしてもよい。
【0043】
光源202の出射波長について、眼底断層像の撮影には、λ=800〜1100nmの間に中心波長に持つ光を発生する光源が用いられることが好ましい。また、前眼部断層像の撮影(特に、隅角撮影)には、λ=1200〜1600nmの間に中心波長を持つ光を発生する光源が用いられることが好ましい。また、一つの光源にて、眼底と前眼部を両方撮影するのではあれば、λ=800〜1100nmの間に中心波長に持つ光を発生する光源が用いられることが好ましい。眼底OCTと前眼部OCTの複合装置の場合、光源202には、眼底用の第1の光源と前眼部用の第2の光源とが設けられ、撮影部位に応じて使用光源が切り換えられるようにしてもよい。
【0044】
また、光源202から出射する光の波長幅(波長帯域)および波長幅のサンプリングポイント数の少なくともいずれかの変更によって、深さ方向における撮像範囲と解像度が変更される。例えば、撮像範囲を広くするには、波長幅の大きい光源(広帯域光源)を用い、波長幅のサンプリング時間を短くしサンプリングポイント数を増やすことが方法として挙げられる。
【0045】
そこで、例えば、角膜から眼底を含む眼全体の断層像を得る(広深度撮影)には、深さ方向の撮像範囲が眼全体に設定され、角膜から眼底までが撮像範囲に含まれるように比較的波長幅の広い波長可変光源(例えば、100nm程度の変化量)が用いられる。
【0046】
一方、各部位(前眼部、中間部、眼底部)の断層像を高解像度にて得る(高解像度撮影)には、深さ方向の撮像範囲が各部位(前眼部、中間部、眼底部)に合わせて設定され、各部位における解像度の高い断層像が得られるように比較的波長幅が狭い波長可変光源(例えば、50nm)が用いられる。この場合、例えば、広深度撮影での撮像範囲より狭く、かつ、ある撮像部位の少なくとも一部に含まれるような撮像範囲が設定される。
【0047】
広深度撮影と高解像度撮影の両方が可能な装置の場合、光源202には、広深度用の第1の光源と高解像度用の第2の光源とが設けられ、撮像目的に合わせて使用光源が切り換えられるようにしてもよい。この場合、受光信号の1回のサンプリング時間が変更されるようにしても良いし、波長幅とサンプリング時間の少なくともいずれかが撮影目的に合わせて変更されるようにしてもよい。
【0048】
測定光の光路には、X−Y方向に測定光を走査させるために測定光束の進行方向を変える(偏向させる)光スキャナ(光走査部)206が配置されている。光スキャナ206としては、光の反射方向を変化させる反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)、光の進行方向を変化させる音響光学素子(AOM)、マイクロミラーデバイス、等が用いられる。
【0049】
導光光学系504について、眼底断層像の撮影には、測定光束が眼底上で集光されるように光学系が設定される。一方、前眼部断層像の撮影には、測定光束が前眼部上で集光されるように光学系が設定される。なお、眼底と前眼部の間で焦点位置を変更する手法としては、検査窓へのレンズアタッチメントの取り付け、光路中におけるレンズの挿脱などが挙げられる。また、前眼部と眼底とを同時に撮影しようとする場合には、眼底に測定光束が集光されるように光学系が設定されるのが好ましい。
【0050】
参照光学系208は、
図2のような反射型の参照光学系であってもよいし、もちろん透過型の参照光学系であってもよい。また、参照光路若しくは測定光路には、測定光の光路長と参照光の光路長との光路差を変更させる光路差調整部209が設けられる。例えば、参照光学系208に設けられる反射ミラーがモータにより光軸方向に移動される。また、測定光路に配置されたファイバーが光スキャナ206に対して光軸方向に移動される。これにより、撮影部位に対する光路長調整が可能となる。
【0051】
光路差調整部206について、眼底断層像の撮影には、眼底に照射された測定光の光路長と、参照光の光路長とが一致されるように光路差が調整される。前眼部断層像の撮影には、前眼部に照射された測定光の光路長と、参照光の光路長とが一致されるように光路差が調整される。眼球全体を同時に撮影する場合、眼球全体の断層像が得られるように光路差が調整される。
【0052】
制御部70は、光スキャナ206の駆動を制御すると共に、検出器210から出力される受光信号に基づいて画像処理により断層像を形成させる。取得された断層像は、モニタ75に静止画又は動画として出力される他(
図7の正面画像Gf、断層画像Gt参照)、メモリ74に記憶される。
【0053】
光源202から出射された光は、カップラー204、光スキャナ206、ダイクロイックミラー500、ダイクロイックミラー502、導光光学系504を介して眼Eに投光される。そして、前述のように生成される参照光と測定光による眼底反射光は、カップラー204にて合成され干渉光とされた後、検出器210によって検出される。
【0054】
光源202から出射される光の波長が時間的に変化されると、検出器210によって受光される干渉光の波長光が変化される。そして、検出器210によって検出された干渉光のスペクトルデータが制御部70へと入力され、フーリエ変換を用いて周波数が解析されることで、眼Eの深さ方向における情報(Aスキャン信号)が計測可能となる。そして、光源202の出射波長の変化がある周期で繰り返されると、逐次Aスキャン信号が得られる。
【0055】
制御部70は、光スキャナ206により測定光を眼E上で所定の横断方向に走査することにより断層画像を取得できる。さらに、制御部70は、測定光をXY方向に2次元的に走査することにより、眼Eの3次元画像を取得できる。なお、取得された断層像は、モニタ22上において動画像又は静止画像として表示される。
【0056】
正面撮像光学系300には、例えば、走査型レーザ検眼装置(SLO)、眼底カメラが用いられる。SLOは、光源から発せられた光を眼底上で光スキャナによって走査させ、眼底と略共役な位置に配置された共焦点開口を介して眼底反射光を受光素子によって受光する。また、眼底カメラは、眼底全体を同時に照明し、その反射像を二次元撮像素子によって撮像する。なお、撮像光源には、可視光源、赤外光源の少なくともいずれかに用いられる。これにより、眼底正面像が取得され、動画像は眼底観察に用いられると共に、静止画像は、断層像と共に記憶される。
【0057】
撮像光学系400は、赤外光源506による前眼部反射像を導光光学系506を介して撮像する撮像素子(例えば、二次元撮像素子)を持つ。撮像素子の出力は、制御部70に送信され、モニタ22には撮像素子によって撮像された前眼部像Eaが表示される(
図8参照)。また、前眼部の静止画像は、断層像と共にメモリ74に記憶される。
【0058】
上記のような構成を備える眼科撮影装置において、その動作について説明する。以下の説明においては、前眼部撮影、眼底撮影、広深度撮影が可能な複合装置を例にとって説明する。ここで、本装置には、撮影モードとして、前眼部3次元断層像を得る前眼部撮影モード、眼底3次元断層像を得る眼底撮影モード、前眼部〜眼底までを撮影する広深度撮影モード、が設けられ、操作部26によりモードが適宜設定される。
【0059】
<眼底撮影モード>
まず、眼底撮影モードについて説明する。光学系は眼底撮影対応に設定される。検者は、図示なき固視灯を注視するように被験者に指示した後、眼底に対するアライメントを行う。この場合、制御部70は、検出器210から出力される受光信号に基づいて調整部209の駆動を制御し、眼底断層画像が取得されるように測定光と参照光との光路差を調整する。
【0060】
その後、所定のトリガ信号が出力されると、制御部70は、光スキャナ206の駆動を制御して、眼底Ef上のある矩形領域において測定光をラスタースキャンさせ各XY位置にて深さプロファイルを得る。これにより、高解像度にて眼底Efの3次元OCTデータが取得され、メモリ74に記憶される。
【0061】
<前眼部撮影モード>
次に、前眼部撮影モードについて説明する。光学系は前眼部撮影対応に設定される。検者は、前眼部に対するアライメントを行う。そして、所定のトリガ信号が出力されると、制御部70は、光スキャナ206の駆動を制御して、前眼部Ea上のある矩形領域において測定光をラスタースキャンさせ各XY位置にて深さプロファイルを得る。これにより、高解像度にて前眼部Eaの3次元OCTデータが取得され、メモリ74に記憶される。
【0062】
<広深度撮影モード>
次に、広深度撮影モードについて説明する。光学系は広深度撮影対応に設定される。検者は、眼Eに対するアライメントを行う。そして、所定のトリガ信号が出力されると、制御部70は、光スキャナ206の駆動を制御して、眼E全体のある矩形領域において測定光をそれぞれラスタースキャンさせ各XY位置にて深さプロファイルを得る。これにより、眼E全体の3次元OCTデータが取得され、メモリ74に記憶される。
【0063】
<詳細撮影モード>
なお、上記各撮影モードにおいて、必要に応じて各部位におけるより詳細なOCT撮影が行われる。制御部70は、設定された走査位置/パターンに基づいて断層画像を取得してメモリ72に記憶する。このとき、制御部70は、同一の走査位置に関して複数枚の断層画像を得ておき、これらの画像から加算平均画像を得ることにより、さらなる高画質の断層像が得られ、微細な解析が可能である。また、走査パターンとしては、ラインスキャン、クロススキャン、サークルスキャン、ラジアルスキャン、などが挙げられる。例えば、角膜に対するクロススキャン/ラジアルスキャン、隅角へのスキャン、眼底に対するクロススキャン/ラジアルスキャン/マルチスキャン、乳頭に対するサークルスキャン、などが考えられる。
【0064】
また、制御部70は、上記各撮影モードにおいて、撮像光学系300によって撮像された眼底正面像、撮像光学系400によって撮像された前眼部像は、3次元OCTデータの取得と略同時に取得され、メモリ74に記憶される。
【0065】
<各断層像データの統合処理>
上記のようにして各断層像の画像データが取得されると、制御部70は、広深度撮影にて得られた眼球データ600に対し、前眼部データ610と眼底データ620をそれぞれ対応付ける(
図9参照)。さらに、詳細撮影モードにて得られた断層データが、各部位の断層データ(前眼部データ、眼底データ)を介して、又は直接的に眼球データに対応付けられる。
【0066】
例えば、制御部70は、眼球データにおける前眼部の画像情報602と前眼部データの画像情報610との3次元的な相関性を求め、相関性が高い状態でマッチングが行われる。この場合、3次元的な前眼部形状(例えば、角膜形状、虹彩形状、水晶体形状)、前眼部における特徴的な模様(例えば、虹彩模様など)などがマッチングの基準として利用される。
【0067】
また、同様に、制御部70は、眼球データにおける眼底の画像情報604と眼底データの画像情報620との3次元的な相関性を求め、相関性が高い状態でマッチングが行われる。この場合、3次元的な眼底形状(例えば、眼底表面形状、網膜各層の形状)、眼底部における特徴的な模様(例えば、眼底血管の走行パターンなど)などがマッチングの基準として利用される。
【0068】
これにより、眼球データは、前眼部データ(又は眼底データ)との間で座標位置が関連付けられる。よって、前眼部データ又は眼底データ上のある位置が指定されると、眼球データ上における対応位置が特定される。
【0069】
また、上記のように広深度撮影にて得られた眼球データをベースとして前眼部データと眼底データがそれぞれ関連付けされることにより、別タイミングにて取得された高解像度の前眼部像と高解像度の眼底像の間の位置関係が決定される。このようにすれば、前眼部撮影時と眼底撮影時において装置と眼Eとの相対位置にずれが生じても、良好な眼球データが得られる。これは、眼E全体のマクロ表示、マクロ解析において有用である。
【0070】
<角膜トポグラフィーを利用した眼球画像の位置ずれ補正>
3次元断層像は、画像取得時における眼Eの移動によって隣接する断層画像間でXYZ方向に関して位置ずれが生じる可能性がある。そこで、角膜表面の3次元的トポグラフィーを短時間で測定可能な角膜トポグラフィー測定装置で得られた測定結果を利用して、3次元断層像の画像ずれを画像処理により補正するようにしてもよい。
【0071】
角膜トポグラフィー測定装置は、例えば、眼Eの角膜表面形状分布を測定するための測定指標(例えば、多重リング指標、格子パターン指標等)を有し測定指標を角膜Ec表面に向けて投影する投影光学系と、角膜Ec上に投影された測定指標を正面方向から撮像素子により撮像する撮像光学系(例えば、前眼部正面撮像光学系)とを有し、撮像素子による測定指標の撮像結果に基づいて角膜表面の3次元形状を測定する(例えば、特開平11−276437号公報参照)。
【0072】
制御部70は、例えば、角膜トポグラフィー測定装置によって得られた角膜表面の3次元形状(
図10(a)参照)に対して眼球3次元断層像の角膜表面の3次元形状(
図10(b)参照)が一致するように3次元トポデータと3次元断層データとのマッチングを行う(
図10参照)。
【0073】
制御部70は、トポデータに対して眼球データを画像処理により移動、回転させ、トポデータにおける角膜表面の3次元形状と、眼球データにおける角膜表面の3次元形状との間で3次元的な相関性が高くなるように、マッチング処理を行う。
【0074】
そして、制御部70は、トポデータにおける角膜頂点と眼球データにおける角膜頂点との位置関係を合わせる。次に、制御部70は、トポデータの3次元形状に沿うように、眼球3次元データを形成する各横断方向の眼球断層像(Bスキャン画像、前眼部と眼底を含む)をZ方向にそれぞれ画像処理により移動させる。
【0075】
このようにすれば、眼球データを形成する各断層像間の位置ずれが補正され、正確な眼球の3次元データが得られる。なお、上記位置ずれ補正は、トポデータと3次元前眼部データとの間においても適用可能である。
【0076】
<位置ずれ補正後の眼球データを用いた各部位の断層データの位置ずれ補正>
位置ずれ補正が行われた眼球3次元データは、前眼部3次元データ又は眼底3次元データの少なくともいずれかの位置ずれ補正に用いられる。制御部70は、例えば、位置ずれ補正後の眼球断層像の3次元形状に対して眼底断層像の3次元形状が一致するように眼球データと眼底データとのマッチングを行う。以下に、眼底の位置ずれ補正を例にとって説明する。
【0077】
制御部70は、眼球データに対して眼底像を画像処理により移動、回転させ、眼球データにおける眼底の3次元形状と、眼底データにおける眼底の3次元形状との間で3次元的な相関性が高くなるように、マッチング処理を行う。例えば、眼底表面形状、網膜のある層がマッチングの基準となる。
【0078】
制御部70は、眼球データにおける黄斑中心と眼底データにおける黄斑中心との位置関係を合わせる。次に、制御部70は、眼球データの3次元形状に沿うように、眼底3次元データを形成する各横断方向の断層像(Bスキャン画像)をZ方向にそれぞれ画像処理に移動させる。このようにすれば、眼底データを形成する各断層像間の位置ずれが補正され、正確な眼底の3次元データが得られる。
【0079】
<変容例1>
また、断層画像(前眼部断層像、眼底断層像)に対応する正面像を利用して画像処理により各断層画像間の相対的な位置ずれが補正されるようにしてもよい。
【0080】
例えば、前眼部3次元断層像と略同時(もちろん同時でもよい)に取得された前眼部正面像と、眼底3次元断層像と略同時に取得された前眼部正面像と、の間の位置ずれ方向・位置ずれ量が画像処理により検出され、その位置ずれに基づいて前眼部断層像と眼底断層像との位置ずれが補正される。
【0081】
また、前眼部3次元断層像を形成するデータを用いて取得される前眼部正面像(例えば、断層画像の深さ方向への積算画像、XY各位置でのスペクトルデータの積算値など)と、眼底3次元断層像と略同時に取得された前眼部正面像と、の間で位置ずれが検出されるようにしてもよい。
【0082】
また、前眼部像と眼底像とのZ方向の位置関係については眼Eの眼軸長値が利用される。また、眼Eに対する装置のZ方向における相対位置を検出するセンサ(例えば、眼Eに斜めから光を入射し、反対方向から反射光を得てZ位置を検出する)を設け、断層像の取得と略同じタイミングにて検出結果を得ておく。このようにすれば、Z方向の位置ずれが補正される。
【0083】
なお、上記手法に限るものではなく、断層画像(前眼部断層像、眼底断層像)に対応する眼のある部位の正面像を利用して各断層画像間の位置ずれが補正されればよい。例えば、断層像に対応する眼底正面像が利用されてもよいし、断層像に対応する眼底正面像及び前眼部正面像の両方が利用されるものであってもよい。また、中間体正面像が利用されてもよい。
【0084】
<変容例2>
なお、制御部70は、測定光と参照光の光路差を所定のステップで変更させることにより断層像の撮像領域を深さ方向に関して変更し、眼Eの角膜から眼底にかけての3次元断層像を順次取得するようにしてもよい。順次取得された断層像は合成処理され、眼Eの全体像を示す3次元断層像が取得される。このようにすれば、角膜から網膜までの3次元形状情報(前房深度、眼軸長を含む)が得られる。また、前眼部と眼底との間に位置する中間透光体の断層像も得られる。この場合、撮像領域の変更に応じて、導光光学系504による測定光の焦点位置が変更されることが好ましい。
【0085】
<変容例3>
なお、上記説明においては、眼底3次元断層像と前眼部3次元断層像を得て眼球断層像を構築する場合を例にとって説明にしたが、これに限るものではない。すなわち、眼Eにおける第1の部位に測定光を照射し、光コヒーレンストモグラフィーによって第1の3次元断層像を取得する第1断層撮影手段と、眼Eにおける第2の部位に測定光を照射し、光コヒーレンストモグラフィーによって第2の3次元断層像を取得する第2断層撮影手段と、第1の3次元断層像と第2の3次元断層像に基づいて広範囲の3次元断層画像を画像処理により構築する画像処理手段と、画像処理手段によって構築された広範囲の3次元断層画像を出力する出力手段と、を備える構成であればよい。
【0086】
例えば、第1の部位が前眼部、第2の部位が中間部であってもよい。また、第1の部位が眼底中心部位、第2の部位が眼底周辺部位であってもよい。この場合、第1の3次元断層像と第2の3次元断層像との間の相対的な位置ずれが補正されることが好ましい。
【0087】
さらに、上記説明においては、深さ方向の撮像範囲が眼全体に設定され、光コヒーレンストモグラフィーによって角膜から眼底を含む眼全体の眼球断層像を取得可能な構成を示したが、これに限るものはない。深さ方向の撮像範囲が広深度に設定され、光コヒーレンストモグラフィーによって広深度の断層像を取得可能な広深度撮影手段を備える構成であればよい。そして、画像処理手段は、広深度撮影手段によって取得された広深度断層像に対し、第1断層撮影手段によって取得された第1の3次元断層像と、第2断層撮影手段によって取得された第2の3次元断層像をそれぞれ対応付ける。この場合、広深度撮影手段の撮像範囲は、第1の3次元断層像、第2の3次元断層像の撮像範囲より広く設定される。