特許第5762772号(P5762772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社高見沢サイバネティックスの特許一覧

<>
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000002
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000003
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000004
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000005
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000006
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000007
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000008
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000009
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000010
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000011
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000012
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000013
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000014
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000015
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000016
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000017
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000018
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000019
  • 特許5762772-ホームドア装置 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762772
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ホームドア装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20150723BHJP
   E06B 11/02 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B61B1/02
   E06B11/02 N
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-40099(P2011-40099)
(22)【出願日】2011年2月25日
(65)【公開番号】特開2012-176655(P2012-176655A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正博
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−254251(JP,A)
【文献】 特開平11−280329(JP,A)
【文献】 実開昭55−044927(JP,U)
【文献】 特開2007−100372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E06B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームにおける車両の乗降口に対応する位置に設けられたホームドアと、前記ホームドアを収納可能なホームドア用戸袋と、前記乗降口とは異なる位置に設けられた非常用脱出ドアと、前記非常用脱出ドアを収納可能な非常用脱出ドア用戸袋とを備えるホームドア装置であって、
前記非常用脱出ドアは、前記非常用脱出ドア用戸袋に収納されて脱出口を形成する収納位置と、前記非常用脱出ドア用戸袋から引き出されて前記脱出口を塞ぐ閉鎖位置との間を往復動し、
前記閉鎖位置においては前記非常用脱出ドアをロックし、前記非常用脱出ドアのロックが解除されたときに、当該非常用脱出ドアを前記往復動方向において開く方向に移動させて隙間を形成する開施錠装置を備え
前記開施錠装置は、前記閉鎖位置において前記非常用脱出ドアのロック状態を保持するロック機構を備え、
前記ロック機構は、
前記非常用脱出ドア用戸袋の前記プラットホーム側に設けられ、前記非常用脱出ドアのロックを解除するときに操作される第1ロック解除部と、
前記非常用脱出ドア用戸袋の軌道側に設けられ、前記非常用脱出ドアのロックを解除するときに操作される第2ロック解除部と、
前記非常用脱出ドア用戸袋に設けられる係止部材と、
前記非常用脱出ドアに設けられ、前記第1ロック解除部又は前記第2ロック解除部の操作に連動して前記係止部材との係止が解除されるロック解除部材と、を有していることを特徴とするホームドア装置。
【請求項2】
前記非常用脱出ドア及び前記非常用脱出ドア用戸袋は複数設けられており、
前記プラットホーム側から見たときに、一の前記非常用脱出ドアは前記往復動方向において右側に開き、他の前記非常用脱出ドアは前記往復動方向において左側に開くことを特徴とする請求項1記載のホームドア装置。
【請求項3】
前記開施錠装置は、前記ロック機構において前記非常用脱出ドアのロックが解除されたときに、前記非常用脱出ドアを前記開く方向に移動させる移動手段をし、
前記移動手段は、前記非常用脱出ドア用戸袋内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記第1ロック解除部及び前記第2ロック解除部は、前記非常用脱出ドア用戸袋の高さ方向において同一直線上に配置されていると共に、その高さ位置が異なっており、
前記ロック解除部材は、前記第1ロック解除部及び前記第2ロック解除部の配置方向に延在していることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のホームドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホームに設置されるホームドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、駅のホームに設置されるホームドア装置には、ホームドアが設置された位置と鉄道車両の乗降口とが一致する位置に鉄道車両が停車しなかった場合に、車両からプラットホーム側に脱出するための非常用脱出ドアが設けられている。例えば、特許文献1に記載のホームドア装置は、プラットホームに設けられる戸袋と、戸袋内より進退移動して乗降口を開閉する扉体とを有しており、戸袋は、乗降口と反対側の部分が軸部を中心として回動自在に設けられている。これにより、鉄道車両が緊急停止した際、戸袋のロックが解除されることにより、戸袋がプラットホーム側に回動して非常用脱出ドアとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3604558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の戸袋は、開状態においてプラットホーム側に張り出す構成となっている。そのため、プラットホームが狭い場合には、その取り付けに制限があり、また、プラットホームに人が溢れた場合、プラットホーム側に張り出した戸袋が乗客の通行を妨げるおそれがある。そこで、ホームドアとは異なる位置に設けられると共に、戸袋に収納されるスライド式の非常用脱出ドアが提案されている。スライド式の非常用脱出ドアは、プラットホーム側に張り出さないため、狭いホームにも取り付けが可能であり、且つ、通行の妨げになるといった問題を解消できる。
【0005】
ところで、非常用脱出ドアが使用される状況下においては、乗客が動揺していることが予測される。そのため、非常用脱出ドアは、その操作が容易であることが望ましい。しかしながら、従来の非常用脱出ドアは、ロックを解除する操作は容易であっても、ロックを解除した際にロックが解除されているか否かが分かり難く、また、その後の操作方法が分かり難かった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、操作性の向上を図ることができるホームドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るホームドア装置は、プラットホームにおける車両の乗降口に対応する位置に設けられたホームドアと、ホームドアを収納可能なホームドア用戸袋と、乗降口とは異なる位置に設けられた非常用脱出ドアと、非常用脱出ドアを収納可能な非常用脱出ドア用戸袋とを備えるホームドア装置であって、非常用脱出ドアは、非常用脱出ドア用戸袋に収納されて脱出口を形成する収納位置と、非常用脱出ドア用戸袋から引き出されて脱出口を塞ぐ閉鎖位置との間を往復動し、閉鎖位置においては非常用脱出ドアをロックし、非常用脱出ドアのロックが解除されたときに、当該非常用脱出ドアを往復動方向において開く方向に移動させて隙間を形成する開施錠装置を備えることを特徴とする。
【0008】
このホームドア装置では、非常用脱出ドアのロックが解除されたときに、当該非常用脱出ドアを往復動方向において開く方向に移動させて隙間を形成する。このように、乗客等によって非常用脱出ドアのロックが解除されたときに、非常用脱出ドアが自動で開いて隙間を形成するため、ロックが確実に解除されていることを目視で確認できる。また、ロックを解除した後の操作として、非常用脱出ドアが開いた方向にスライドさせて移動させればよいことを乗客等が容易に認識できる。したがって、操作性の向上を図ることができる。
【0009】
非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋は複数設けられており、プラットホーム側から見たときに、一の非常用脱出ドアは往復動方向において右側に開き、他の非常用脱出ドアは往復動方向において左側に開くことが好ましい。車両が緊急停止した際、非常用脱出ドアが一方向にのみ開く構成である場合には、車両の停車位置によっては非常用脱出ドアの脱出口の位置と乗降口とが一致しないことがある。そこで、右側と左側に開く非常用脱出ドアを設けることにより、例えば一方の非常用脱出ドアから脱出することができなくとも、他方の非常用脱出ドアから脱出することが可能となる。
【0010】
開施錠装置は、閉鎖位置において非常用脱出ドアのロック状態を保持するロック機構と、ロック機構において非常用脱出ドアのロックが解除されたときに、非常用脱出ドアを開く方向に移動させる移動手段とを有することが好ましい。このような構成によれば、非常用脱出ドアのロックが解除されたときに、非常用脱出ドアを開く方向に移動させて隙間を確実に形成することができる。
【0011】
ロック機構は、非常用脱出ドア用戸袋のプラットホーム側に設けられ、非常用脱出ドアのロックを解除するときに操作される第1ロック解除部と、非常用脱出ドア用戸袋の軌道側に設けられ、非常用脱出ドアのロックを解除するときに操作される第2ロック解除部と、非常用脱出ドア用戸袋に設けられる係止部材と、非常用脱出ドアに設けられ、第1ロック解除部又は第2ロック解除部の操作に連動して係止部材との係止が解除されるロック解除部材とを有し、第1ロック解除部及び第2ロック解除部は、非常用脱出ドア用戸袋の高さ方向において同一直線上に配置されていると共に、その高さ位置が異なっており、ロック解除部材は、第1ロック解除部及び第2ロック解除部の配置方向に延在していることが好ましい。
【0012】
このように、第1及び第2ロック解除部を非常用脱出ドア用戸袋の高さ方向において同一直線上に配置し、この配置方向に延在するロック解除部材とすることにより、ロック機構の幅を小さくすることができる。このように、ロック機構をコンパクトにすることによって、非常用脱出ドアが開く量を増大させることができ、脱出口の幅をより確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作性の向上を図ることができる。これにより、車両が緊急停車した際、乗客が迅速且つ安全に車両から脱出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るホームドア装置の構成を概略的に示す平断面図である。
図2図1に示すホームドア装置の構成を概略的に示す正面図である。
図3】ホームドア装置をプラットホーム側から示す斜視図である。
図4】ホームドア装置を軌道側から示す斜視図である。
図5】非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋の構成をプラットホーム側から示す斜視図である。
図6】非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋の構成を軌道側から示す正面図である。
図7】ホームドアがホームドア用戸袋及び非常用脱出ドアに収納された状態を示す斜視図である。
図8】非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋の内部構成を示す正面図である。
図9】非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋を往復動方向から見た図である。
図10】ロック機構の構成を示す図である。
図11】ロック機構の構成部材を示す斜視図である。
図12】ダンパーを示す図である。
図13】ロック状態のときのダンパーを示す図である。
図14】ロックが解除されたときのダンパーを示す図である。
図15】非常用脱出ドアの一部を拡大して示す斜視図である。
図16】ホームドア用戸袋の一部を拡大して示す斜視図である。
図17】突出部が挿入部に挿入された状態を示す図である。
図18】乗降口と非常用脱出ドアとの位置関係を説明する図である。
図19】乗降口と非常用脱出ドアとの位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係るホームドア装置を説明する。本実施形態に係るホームドア装置の構成を概略的に示す平断面図であり、図2は、図1に示すホームドア装置の構成を概略的に示す正面図であり、車両がプラットホームに停車した状態を示している。
【0017】
図1及び図2に示すように、ホームドア装置1は、プラットホームPにおける車両Cの乗客用の乗降口E1に対応する位置に設けられたホームドア3と、ホームドア3を収納可能なホームドア用戸袋5とを備えている。ホームドア3は、駆動機構(不図示)により、ホームドア用戸袋5に収納された位置とホームドア用戸袋5から引き出された位置との間を往復動する。ホームドア3は、一つの乗客用の乗降口E1に対して一対設けられている。一対のホームドア3は、互いに対向する方向に移動して引き出されることにより乗客の乗降通路が閉じられることとなり、互いに反対方向に移動してホームドア用戸袋5に収納されることにより上記乗降通路が開かれることとなる。
【0018】
ホームドア装置1は、乗務員ドア7と、乗務員ドア用戸袋9とを備えている。乗務員ドア7は、乗客用の乗降口E1(ホームドア3)とは異なる位置に設けられている。乗務員ドア7及び乗務員ドア用戸袋9は車両Cの乗務員室に乗り降りする乗務員が通る乗降通路を開閉するための乗務員ドア及び乗務員ドア用戸袋であり、乗務員室(乗務員用の乗降口E2)に対して設けられている。
【0019】
また、ホームドア装置1は、非常用脱出ドア10と、非常用脱出ドア用戸袋12とを備えている。非常用脱出ドア10及び非常用脱出ドア用戸袋12について、図1図9を参照して説明する。
【0020】
図3は、ホームドア装置をプラットホーム側から示す斜視図であり、図4は、ホームドア装置を軌道側から示す斜視図である。図5は、非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋の構成をプラットホーム側から示す斜視図であり、図6は、非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋の構成を軌道側から示す正面図である。図7は、ホームドアがホームドア用戸袋及び非常用脱出ドアに収納された状態を示す斜視図であり、図8は、非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋の内部構成を示す正面図である。また、図9は、非常用脱出ドア及び非常用脱出ドア用戸袋を往復動方向から見た図である。
【0021】
非常用脱出ドア10は、ホームドア3(ホームドア用戸袋5)の間に設けられている。非常用脱出ドア10及び非常用脱出ドア用戸袋12は、ホームドア3の設置位置と車両Cの乗降口E1とが一致しない位置において車両Cが停止(災害、電源OFF、停電、事故等による緊急停止)したときに、乗客が車両Cから脱出するために設けられている。すなわち、非常用脱出ドア10は、車両Cの乗降口E1とは異なる位置に設けられている。図1図4では、非常用脱出ドア10は閉状態とされている。
【0022】
非常用脱出ドア用戸袋12は、非常用脱出ドア10を収納可能であり、ホームドア用戸袋5に隣接して設けられている。図8に示すように、非常用脱出ドア10には、レールGが設けられている。レールGは、非常用脱出ドア用戸袋12の下端部に配置されており、非常用脱出ドア10のスライド方向に直線状に伸びている。また、図9に示すように、非常用脱出ドア用戸袋12には、ガイド部材13,14が設けられている。ガイド部材13は、非常用脱出ドア用戸袋12内において、後述する非常用脱出ドア10におけるドア本体15の軌道T側の上部と当接するローラーであり、ガイド部材14は、ドア本体15のプラットホームP側の上部近辺と当接するローラーである。
【0023】
非常用脱出ドア10は、ドア本体15を有している。ドア本体15は、外形が矩形形状を呈しており、中空状の板金製である。ドア本体15の軌道T側の下部には、非常用脱出ドア用戸袋12に設けられたレールG上を摺動可能に設けられたスライダー16が設けられている。非常用脱出ドア10(ドア本体15)は、非常用脱出ドア用戸袋12のレールGに摺動可能に支持されており、スライダー16がレールGに案内されて往復動することにより、非常用脱出ドア用戸袋12と平行な状態で往復動することとなる。これにより、非常用脱出ドア10は、非常用脱出ドア用戸袋12に収納されて脱出口Dを形成する収納位置(図5に示す状態)と、非常用脱出ドア用戸袋12から引き出されて脱出口Dを塞ぐ閉鎖位置(図3に示す状態)との間を往復動する。ドア本体15の幅は、ホームドア3の幅(例えば1000mm程度)よりも狭く設定されており、例えば800mm程度である。
【0024】
ドア本体15の軌道T側の上端部には、カバー17が幅方向(スライド方向)に沿って設けられている。カバー17は、プラットホームP側から乗客等の手がドア本体15の軌道T側に侵入することを防止するために設けられている。カバー17は、例えば300mm程度の高さを有している。また、ドア本体15の幅方向の一端側(ホームドア用戸袋5側)には、複数(ここでは2つ)の取っ手18a,18bが設けられている。取っ手18a,18bは、軌道T側から非常用脱出ドア10を開閉する際に使用される。
【0025】
図7に示すように、非常用脱出ドア10及び非常用脱出ドア用戸袋12は、ホームドア3を収納可能である。ホームドア3は、非常用脱出ドア10が閉鎖位置、つまり脱出口Dを塞いでホームドア用戸袋5に当接している状態において開かれると、その一部が非常用脱出ドア10及び非常用脱出ドア用戸袋12の中空の空間に収納される。なお、非常用脱出ドア10が収納位置の状態、つまり脱出口Dが形成されている状態においては、ホームドア3は、ホームドア3と車両Cの乗降口E1が一致する位置に車両Cが停止していないので、動作可能であるが動作はしない。
【0026】
図8に示すように、非常用脱出ドア10及び非常用脱出ドア用戸袋12には、開施錠装置21が設けられている。開施錠装置21について、図10図14を更に参照して説明する。図10は、ロック機構の構成を示す図、図11は、ロック機構の構成部材を示す斜視図、図12は、ダンパー機構を示す図である。また、図13は、ロック状態のときのダンパーを示す図であり、図14は、ロックが解除されたときのダンパーを示す図である。
【0027】
開施錠装置21は、ロック機構22と、ダンパー(移動手段)23とを備えている。ロック機構22は、第1ロック解除ボタン(第1ロック解除部)25と、第2ロック解除ボタン(第2ロック解除部)26と、ロックストッパー(係止部材)27と、ロック解除レバー(ロック解除部材)28と、ばね29とを有している。
【0028】
第1ロック解除ボタン25は、非常用脱出ドア10のロックを解除する際に駅員や乗務員によって操作されるものである。第1ロック解除ボタン25は、非常用脱出ドア用戸袋12のプラットホームP側に設けられている。第1ロック解除ボタン25は、非常用脱出ドア用戸袋12において、プラットホームP側の表面から軌道T側に入り込んでいる取付部材30に取り付けられている。第1ロック解除ボタン25は、駅員や乗務員に押されるボタン部25aと、ボタン部25aから延びる棒状の当接部25bとを有している。当接部25bは、ボタン部25aが押されたときに、ロック解除レバー28に当接する。当接部25bには、コイルばね25cが挿入されており、ボタン部25aの押圧方向とは逆の方向(プラットホームP側)に付勢力を与えている。
【0029】
また、取付部材30には、蓋部31が設けられている。蓋部31は、非常用脱出ドア用戸袋12と略面一に設けられており、鍵32が設けられている。これにより、第1ロック解除ボタン25は、蓋部31の鍵32が開錠された場合にのみ、操作可能となっている。すなわち、第1ロック解除ボタン25は、駅員や乗務員にのみ使用される。
【0030】
第2ロック解除ボタン26は、非常用脱出ドア10のロックを解除する際に乗務員や乗客によって操作されるものである。第2ロック解除ボタン26は、非常用脱出ドア用戸袋12の軌道T側に設けられている。第2ロック解除ボタン26は、非常用脱出ドア用戸袋12において、軌道T側の表面からプラットホームP側に入り込んでいる取付部材35に取り付けられている。第2ロック解除ボタン26は、乗務員や乗客に押されるボタン部26aと、ボタン部26aから延びる棒状の当接部26bとを有している。当接部26bは、ボタン部26aが押されたときに、ロック解除レバー28に当接する。当接部26bには、コイルばね26cが挿入されており、ボタン部26aの押圧方向とは逆の方向(軌道T側)に付勢力を与えている。
【0031】
第1ロック解除ボタン25及び第2ロック解除ボタン26は、非常用脱出ドア用戸袋12の高さ方向において同一直線上に配置されている。そして、第1ロック解除ボタン25は、第2ロック解除ボタン26よりも高い位置に配置されている。言い換えれば、第2ロック解除ボタン26は、軌道T側の低い位置に配置されている。このような構成により、プラットホームP側から手を伸ばしても届かない位置、例えば上端側から600mm程度の高さの奥まった位置に第2ロック解除ボタン26が位置するため、緊急時以外のときに、蓋部が設けられていない(露出している)第2ロック解除ボタン26がプラットホームP側から操作されることを防止できる。
【0032】
ロックストッパー27は、非常用脱出ドア用戸袋12に設けられている。ロックストッパー27は、第1ロック解除ボタン25の上方に配置されている。図11に示すように、ロックストッパー27は、コ字状を呈しており、第1係止部27aと、第2係止部27bとを有している。ロックストッパー27が非常用脱出ドア用戸袋12に取り付けられた状態において、第1係止部27aは、プラットホームP側から見て非常用脱出ドア10の閉鎖位置側に位置しており、第2係止部27bは、プラットホームP側から見て非常用脱出ドア10の収容位置側に位置している。第2係止部27bには、図11において、プラットホームP側から軌道T側に上り勾配となるテーパー27cが形成されている。
【0033】
ロック解除レバー28は、その長手方向が第1ロック解除ボタン25及び第2ロック解除ボタン26の配置方向に沿うように配置されている。ロック解除レバー28は、支持部材34に軸支されており、第1及び第2ロック解除ボタン25,26の対向方向に回動可能に設けられている。ロック解除レバー28は、長尺状の本体部28aと、本体部28aの先端側に設けられた係合部28bとを有している。係合部28bの非常用脱出ドア10の閉鎖位置側には、図11において、軌道T側からプラットホームP側に上り勾配となるテーパー28cが形成されている。
【0034】
ロック解除レバー28において、第1ロック解除ボタン25の当接部25bは、本体部28aの幅方向の中央部に当接し、第2ロック解除ボタン26の当接部26bは、本体部28aの幅方向の中央部に当接する。なお、図10では、第1ロック解除ボタン25又は第2ロック解除ボタン26が押された状態のときのロック解除レバー28を実線で示しており、第1ロック解除ボタン25又は第2ロック解除ボタン26が押されていない状態のときのロック解除レバー28を二点鎖線で示している。
【0035】
ばね29は、ロック解除レバー28の本体部28aにかけられている。ばね29は、図10中、ロック解除レバー28に対しては、ロック解除レバー28を時計回りに回動させる方向に付勢力を与えている。なお、ロック機構22は、図示しないセンサを備えており、センサは、図11(b)に示すように、ロック解除レバー28の係合部28bがロックストッパー27の第1及び第2係止部27a,27bの間に位置するときに遮光されることによって、ロック状態を検知する。
【0036】
上述の構成により、ロック機構22は、非常用脱出ドア10が閉鎖位置に移動されると、ロック解除レバー28の係合部28bのテーパー28cとロックストッパー27の第2係止部27bのテーパー27cとが当接し、係合部28bが第2係止部27bを乗り上げて第1係止部27aと第2係止部27bとの間に位置する(図11(b))。これにより、ロック解除レバー28がロックストッパー27に係止され、非常用脱出ドア10がロックされる。そして、ロック状態において、第1ロック解除ボタン25又は第2ロック解除ボタン26が押されると、当接部25b又は当接部26bがロック解除レバー28の本体部28aに当接し、ロック解除レバー28が回動してロックストッパー27からロック解除レバー28が離間してロックが解除される。
【0037】
図12に示すように、ダンパー23は、レールG及びスライダー16の付近に配置されている。ダンパー23は、軸部材40と、コイルばね41とを有している。軸部材40は、支持部材43によって非常用脱出ドア用戸袋12内に取り付けられており、支持部材43に摺動可能に設けられている。コイルばね41は、軸部材40に挿入されており、支持部材43とストッパー44との間に配置されている。コイルばね41は、軸部材40を図13中右側に付勢力を与えている。
【0038】
図13に示すように、ドア本体15には、軸部材40の軸線上に、L字状の当接部材45が設けられている。非常用脱出ドア10がロック状態、つまり、図11(b)に示すように、ロック機構22においてロックストッパー27にロック解除レバー28が係止されている状態では、軸部材40は、当接部材45に当接して摺動が制限されている。そして、図14に示すように、軸部材40は、ロックストッパー27からロック解除レバー28が外れたときに、コイルばね41の付勢力によって摺動し、当接部材45を押してドア本体15を図示矢印方向に移動させる。これにより、軸部材40が移動した移動量に対応して、非常用脱出ドア10のドア本体15とホームドア用戸袋5との間に約100mm程度の隙間Sが形成される。なお、隙間Sの間隔は、非常用脱出ドア10が開いていることを乗客等が目視で確認できる程度であればよく、設計に応じて適宜設定される。
【0039】
また、図15に示すように、非常用脱出ドア10には、ドア本体15の端面15aから突出する第1突出部50及び第2突出部51が設けられている。第1突出部50は、ドア本体15の上端側に設けられており、第2突出部51は、ドア本体15の下端側に設けられている。
【0040】
第1突出部50及び第2突出部51に対応するように、ホームドア用戸袋5には、図16に示すように、第1挿入部52及び第2挿入部53が設けられている。第1挿入部52は、ホームドア用戸袋5の上端側に設けられており、第2挿入部53は、ホームドア用戸袋5の下端側に設けられている。第2挿入部53は、移動規制部材55に設けられている。移動規制部材55は、L字状を呈しており、ホームドア用戸袋5の端面5aから非常用脱出ドア10側に突出すると共に、ホームドア用戸袋5の厚み方向に延在する突出片55aを有している。また、移動規制部材55には、保護用ゴム取付部材56が取り付けられている。保護用ゴム取付部材56は、L字状を呈しており、非常用脱出ドア10側に突出すると共に、ホームドア用戸袋5の高さ方向に延在する突出片56aを有している。突出片56aの軌道T側には、ゴムBが取り付けられている。
【0041】
第1突出部50及び第2突出部51は、図17(a)及び(b)に示すように、非常用脱出ドア10が閉鎖位置に位置してロックされた際に第1挿入部52及び第2挿入部53に挿入されて、ドア本体15が上下方向に移動するのを規制する。また、移動規制部材55の突出片55aによって、ドア本体15の上下方向の移動が更に規制されている。
【0042】
上述の構成を有するホームドア装置1において、非常用脱出ドア10が開く方向は、それぞれ左方向と右方向の二方向となっている。具体的には、非常用脱出ドア10は、プラットホームP側から見て右側にスライドして脱出口Dを形成し、非常用脱出ドア10は、プラットホームP側から見て左側にスライドして脱出口Dを形成する。
【0043】
例えば、図18に示すように、非常用脱出ドア10において開く方向が一方向(図18では左方向)に設定されている場合、車両Cの停車位置によっては、ホームドア3及び非常用脱出ドア10のいずれの開口位置とも車両Cの乗降口E1が一致しないことがある。この場合、乗客は車両Cから脱出することが困難となる。
【0044】
これに対して、図19に示すように、非常用脱出ドア10において開く方向がそれぞれ右方向及び左方向に設定されている場合には、一方の非常用脱出ドア10の脱出口Dと車両Cの乗降口E1が一致しなかった場合であっても、もう一方(他方)の非常用脱出ドア10の脱出口Dと車両Cの乗降口E1とが一致する。そのため、少なくとも一つの非常用脱出ドア10から脱出することが可能となる。
【0045】
以上説明したように、ホームドア装置1では、非常用脱出ドア10のロック機構22が解除されたときに、この非常用脱出ドア10を往復動方向において開く方向にダンパー23が移動させて隙間Sを形成する。このように、乗務員や乗客によって非常用脱出ドア10のロックが解除されたときに、非常用脱出ドア10が自動で開いて隙間を形成するため、ロックが確実に解除されていることを目視で確認できる。また、ロックを解除した後の操作として、非常用脱出ドア10が開いた方向にスライドさせて移動させればよいことを乗客等が容易に認識できる。したがって、操作性の向上を図ることができる。その結果、車両Cが緊急停止する状況で動揺している場合であっても、非常用脱出ドア10を的確に操作することができる。
【0046】
また、ロック機構22において、ロック解除レバー28は、第1及び第2ロック解除ボタン25,26の配置方向、すなわち非常用脱出ドア10の高さ方向に延在する長尺状の部材であり、このロック解除レバー28がロックストッパー27に係止されて、非常用脱出ドア10がロックされている。このように、ロック解除レバー28の幅を小さくしてロック機構22をコンパクトにすることにより、例えばロック解除レバー28の長手方向が非常用脱出ドア10のスライド方向に沿うように設ける場合と比べて、非常用脱出ドア10が開く量を増大させることができ、脱出口Dの幅を十分に確保することができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ダンパー23における付勢部材としてコイルばね41を用いているが、付勢部材はこれに限定されない。
【0048】
また、上記実施形態では、第1及び第2ロック解除部を操作性の観点からボタンとしているが、第1及び第2ロック解除部はボタンに限定されず、ロック解除レバー28を回動させてロックストッパー27との係合を解除する構成であればよい。
【符号の説明】
【0049】
1…ホームドア装置、3…ホームドア、5…ホームドア用戸袋、10…非常用脱出ドア、12…非常用脱出ドア用戸袋、21…開施錠装置、22…ロック機構、23…ダンパー(移動手段)、25…第1ロック解除ボタン(第1ロック解除部)、26…第2ロック解除ボタン(第2ロック解除部)、27…ロックストッパー(係止部材)、28…ロック解除レバー(ロック解除部材)、C…車両、E1…乗降口、P…プラットホーム、S…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19