【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図10を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の浮体式フラップゲートの概略構成を示した図である。
【0018】
図1において、11は例えば防波堤の、開口部の路面rsに設置される本発明の浮体式フラップゲートである。この浮体式フラップゲート11は、海洋(或いは河川)から生活空間や地下空間に水wが流入しようとする際、流入する水wの水圧を利用して、基端側12aを支点として扉体12の先端側12bを起立揺動させて開口部を水密状態に遮断するものである。
【0019】
この浮体式フラップゲート11を構成する扉体12は、遮断する開口部の幅が広い場合は、複数の扉体12を開口部の幅方向に連結した構成とされ、各扉体12間は扉間水密ゴムによって連結されている。また、両側の扉体12の、防波堤の開口部に設けた戸当りと相対する側には水密ゴムが設けられている。
【0020】
図1に示す本発明の浮体式フラップゲート11は、例えば扉体12の先端部の幅方向全域に1本のロッド13が取付けられ、水圧荷重の支持とワイヤロープ14の一端を取付ける機能を有している。
【0021】
前記ワイヤロープ14の他端は、倒伏時の扉体12の先端上方の戸当り15に設置された第1の定滑車16、及び扉体12の基端側の前記第1の定滑車16と同一高さ位置に設置された第2の定滑車17を介してカウンタウエイト20に取付けられている。従って、このカウンタウエイト20の重量が扉体12に作用するようになっている。
【0022】
本発明例では、起立完了時の扉体12の傾斜角θが90度であるため、上記第1の定滑車16の設置位置は、扉体12が起立揺動したときの水平面に対する傾斜角θ(図
3参照)が例えば45度になった時に前記カウンタウエイト20が最下点となるように設置している。なお、発明者らの調査結果によれば、前記傾斜角θは10度〜80度の範囲であれば問題がないことが分かっている。
【0023】
上記構成の本発明の浮体式フラップゲート11では、扉体12の起立時、及び扉体12の倒伏時は、以下に説明するような機能を奏する。
【0024】
(扉体12の起立時)
流入初期は、カウンタウエイト20が降下し、扉体12は起立方向に引っ張られて起立を補助される(
図2(a)参照)。そして、水平面に対する扉体12の傾斜角θが45度になると、扉体12とワイヤロープ14が一直線になり(
図2(b)参照)、カウンタウエイト20は最下端の位置となる。水平面に対する扉体12の傾斜角θが45度を超えると、扉体12の起立揺動により、カウンタウエイト20が上昇するので、カウンタウエイト20が抵抗となって扉体12の起立速度を減速し、起立完了時の衝撃力を緩和する(
図2(c)参照)。
【0025】
(起立状態の扉体12の倒伏時)
倒伏初期は、カウンタウエイト20が下降し、扉体12は倒伏方向に引っ張られて水位の低下に追従して倒伏する(
図2(d)参照)。そして、水平面に対する扉体12の傾斜角θが45度になると、扉体12とワイヤロープ14が一直線になり(
図2(b)参照)、カウンタウエイト20は最下端の位置となる。水平面に対する扉体12の傾斜角が45度より小さくなると、扉体12の倒伏により、カウンタウエイト20が上昇するので、カウンタウエイト20が抵抗となって扉体12の倒伏速度を減速し、倒伏完了時の衝撃力を緩和する(
図2(e)参照)。
【0026】
本発明の浮体式フラップゲート11における上記の扉体12の傾斜角度θとカウンタウエイト20による扉体起立方向の旋回力の関係を
図3に示す。
【0027】
上記のように、本発明の浮体式フラップゲート11では、カウンタウエイト20を有する起立・倒伏機構を使って複数の機能を働かせることで、扉体12の起立補助、衝撃緩和、水位追従が可能となる。
【0028】
本発明の浮体式フラップゲート11は、
図4に示すように、第2の定滑車17のあとに動滑車18を配置し、この動滑車18にカウンタウエイト20を取り付ける一方、ワイヤロープ14の他端は、動滑車18を介して戸当り15に設置した固定部材19に固定するようにしても良い。
【0029】
また、本発明の浮体式フラップゲート11は、
図5に示すように、カウンタウエイト20の代わりに、圧縮コイルばね22を取り付けても良い。図示省略したが、引張りコイルばねを取り付けても良い。なお、
図5中の23は動滑車18と固定部材19間に設置された第3の定滑車である。この圧縮コイルばね22或いは引張りコイルばねは、
図5のように動滑車18を介さず、
図1、
図2のように直接ワイヤロープ14の他端と接続しても良い。
【0030】
圧縮コイルばね22を使用する場合、起立完了時の扉体12の傾斜角θが90度のフラップゲートでは、扉体12の傾斜角θが45度の時に、
図6(a)に示すようにばねが自然長となるようにして、
図6(c)に示すようにばねによる扉体起立方向の旋回力が最小となるように設置する。そして、扉体12の傾斜角θが0度及び90度で、
図6(b)に示すようにばねが圧縮されて、
図6(c)に示すようにばねによる扉体起立方向の旋回力が最大となるように設置する。
【0031】
一方、引張りコイルばね24を使用する場合は、扉体12の傾斜角θが45度で、
図7(a)に示すようにばねが自然長となるようにし、扉体12の傾斜角θが0度及び90度で、
図7(b)に示すようにばねが伸ばされるようにする。
【0032】
前記圧縮コイルばね22或いは引張りコイルばね24は、
図6や
図7に示したような線形のコイルばねに限らず、テーパコイルばね、円錐形コイルばね、鼓形コイルばね、樽形コイルばね、不等ピッチコイルばねのような非線形特性を有するばねを使用しても良い。
【0033】
また、
図8に示すような、軸中心側から順番に、例えば大径で長さの短い第1の圧縮ばね25a、中径で長さが中間の第2の圧縮ばね25b、小径で長さの長い第3の圧縮ばね25cからなる組合せコイルばね25を用いて引張力を非線形とするものでも良い。
【0034】
この
図8に示す組合せコイルばね25では、扉体12の傾斜角θが0度の場合は、3つの圧縮ばね25a〜25cが全て縮んでいる状態である。そして、扉体12の傾斜角θが10〜30度位の起立初期から起立前期までは、3つの圧縮ばね25a〜25cがそれぞれ伸び始め、起立前期になると第1の圧縮ばね25aが元の性質に戻る。
【0035】
次に、起立前期から扉体12の傾斜角θが45度の起立中期までは、第2の圧縮ばね25bと第3の圧縮ばね25cが順次元の性質に戻り、3つの圧縮ばね25a〜25c全てが自然長に戻る。
【0036】
起立中期から扉体12の傾斜角θが90度の起立完了までは、第3の圧縮ばね25c、第2の圧縮ばね25b、第1の圧縮ばね25aが順次縮んでいき、起立完了時には3つの圧縮ばね25a〜25cが全て縮んだ状態になる。
なお、倒伏時は前記起立時と逆になる。
【0037】
このような非線形の組合せコイルばね25による扉体起立方向の旋回力と扉体12の傾斜角度θの関係を
図9に示す。
【0038】
また、
図1、
図2、
図4、
図5に示した例では、扉体12の先端部の幅方向全域に1本のロッド13を取り付けたものを示したが、
図10に示すように、扉体12の両側にのみロッド13を取り付けても良い。
【0039】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0040】
例えば、前記実施例では、ワイヤロープ14を使用しているが、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、アラミド系、ポリアリレート系、超高密度ポリエチレンなどの繊維ロープを使用しても良い。
【0041】
また、
図1、
図2、
図4、
図5では扉体12が単一の浮体で構成された浮体式フラップゲートを示したが、複数の浮体を高さ方向に連結した浮体連結式フラップゲートに適用しても良い。
【0042】
また、動滑車18やカウンタウエイト20、ばね22,24,25を取り付ける位置は戸当り15の外部でも良いが、これらカウンタウエイト20の重量、定滑車及び動滑車18の個数、ばね22,24,25の特性は、扉体12の規模に応じて適宜最適に設定することは言うまでもない。
【0043】
また、ロッド13の代わりに、扉体12の先端部に吊りピースを取付け、その吊りピースにワイヤロープ14の一端を取付けても良い。