(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の車室内における床面に二重に敷かれる第1マット及び第2マットにおいて、上側に配置される前記第2マットを前記床面に対して固定するために、前記第1マット及び前記第2マットの後縁近傍に配置される合成樹脂製のマット用フックであって、
前記第1マットと前記床面との間に介在されるとともに、固定手段を用いて前記床面に固定される固定片部と、
該固定片部の後端側から反転しつつ前記固定片部と略平行に前方に延びて、前記固定片部との間の隙間に、前記第1マットの後縁を挿入させるようにして、前記第1マットの上面側に配置される押え片部と、
該押え片部側に配置されて、前記第2マットを係止するフック本体と、
を備える構成とされ、
該フック本体が、
前記押え片部から上方に突出して、前記第2マットに形成される係止孔に挿通可能な係止軸部と、
該係止軸部の上端から後方に向かって延びて、前記係止孔周縁に係止される係止片と、
を備える構成とされ、
前記固定片部と前記押え片部との境界部位付近に、前記押え片部の前端側を前記固定片部から上方へ離隔可能とするインテグラルヒンジからなるヒンジ部が、配置され、
前記フック本体が、前記押え片部と別体として構成されるとともに、前記押え片部に対して、前後方向側でスライド可能で、かつ、スライド移動後に、少なくとも前方側への移動を規制して前記押え片部に係止可能に、構成されていることを特徴とするマット用フック。
前記固定片部が、前記固定手段としてねじを使用可能に、該ねじを挿通可能な挿通孔を備えるとともに、前記固定手段として、裏面側にフック側の面状ファスナーを結合させていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマット用フック。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の固定クリップは、固定板部とクリップ部とを別体として構成し、さらにクリップ部を、押え板と挟持部材との2部材から構成していることから、部品点数が多く、構成が複雑であり、また、第2マットを取り外す際にも、クリップ部を固定板部側から取り外し、さらに、挟持部材の取り外し作業が必要となって、第2マットの取り付け時には逆の手順の作業が必要となり、作業が煩雑となっていた。また、上記特許文献2に記載の固定クリップは、クリップ部を固定板部に対して回動させることにより、クリップ部の固定板部からの離隔距離を変更することが可能であるが、クリップ部は、支柱の上下両端側の2つの軸で固定板部に対して回動可能とされていることから、先端側を固定板部に対して大きく離隔させるように、回動させ難く、第2マットの取付時、予め床面に固定させてある第1マットの後縁を、固定板部とクリップ部との間に挟む際に、固定板部とクリップ部との間の隙間に進入させがたく、取付作業を良好にする点に改善の余地があった。
【0007】
また、上記特許文献1及び2に記載の固定クリップは、いずれも、クリップ部の押え板によって第2マットの後縁を挟む構成であることから、長期間の使用により挟持力が低下すれば、第2マットが使用時に前方への力を受けた際に、前方へのずれ移動を防止し難く、使用時に前方への力を受けた際にも、前方へのずれ移動を的確に抑制する点に、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成で、使用時の第2マットのずれ移動を的確に防止でき、かつ、床面への取り付けも容易なマット用フックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマット用フックは、車両の車室内における床面に二重に敷かれる第1マット及び第2マットにおいて、上側に配置される第2マットを床面に対して固定するために、第1マット及び第2マットの後縁近傍に配置される合成樹脂製のマット用フックであって、
第1マットと床面との間に介在されるとともに、固定手段を用いて床面に固定される固定片部と、
固定片部の後端側から反転しつつ固定片部と略平行に前方に延びて、固定片部との間の隙間に、第1マットの後縁を挿入させるようにして、第1マットの上面側に配置される押え片部と、
押え片部側に配置されて、第2マットを係止するフック本体と、
を備える構成とされ、
フック本体が、
押え片部から上方に突出して、第2マットに形成される係止孔に挿通可能な係止軸部と、
係止軸部の上端から後方に向かって延びて、係止孔周縁に係止される係止片と、
を備える構成とされ、
固定片部と押え片部との境界部位付近に、押え片部の前端側を固定片部から上方へ離隔可能とするインテグラルヒンジからなるヒンジ部が、配置され
、
フック本体が、押え片部と別体として構成されるとともに、押え片部に対して、前後方向側でスライド可能で、かつ、スライド移動後に、少なくとも前方側への移動を規制して前記押え片部に係止可能に、構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のマット用フックでは、床面への取付時に、第1マットを上下で挟むように配置される固定片部と押え片部とが、固定片部と押え片部との境界部位付近に配置されるヒンジ部により相互に連結されており、このヒンジ部は、インテグラルヒンジとして、押え片部の前端側を固定片部から離隔可能とするように、構成されている。すなわち、本発明のマット用フックでは、押え片部を、固定片部に対して、一点を中心として回動可能に構成していることから、押え片部を、固定片部から大きく離隔させるように回動させやすく、使用時において、押え片部と固定片部との間に第1マットの後縁を挟み込む際に、第1マットが別位置であって、かつ、マット用フックの配置位置近傍で、床面に固定されている状態であっても、容易に挟み込み可能であり、第1マットを固定させた状態の床面への取り付け作業が容易である。
【0011】
また、本発明のマット用フックでは、押え片部側に配置されるフック本体の係止軸部を、第2マットに形成される係止孔に挿通させ、係止軸部の上端側に形成される係止片を、係止孔の周縁に係止させて、第2マットを係止する構成であることから、使用時において、係止孔からフック本体が抜け難く、第2マットが前方への力を受けた際にも、第2マットの前方へのずれ移動を的確に抑制することができる。
【0012】
したがって、本発明のマット用フックでは、簡便な構成で、使用時の第2マットのずれ移動を的確に防止でき、かつ、床面への取り付けも容易である。
また、本発明のマット用フックでは、フック本体を、押え片部と別体として構成するとともに、押え片部に対して、前後方向側でスライド可能で、かつ、スライド移動後に、少なくとも前方側への移動を規制して押え片部に係止可能に、構成していることから、フック本体の位置を、市販の第2マットの係止孔の位置に合わせて微調整することができ、第2マットを、部分的に弛ませることなく、適切な位置で、第1マットの上に載置させることができる。
【0013】
また、本発明のマット用フックにおいて、押え片部の後端と固定片部の後端とを、断面形状を略U字形状とした連結部により、連結させ、
ヒンジ部を、少なくとも、押え片部の後端側から連結部の後端にかけての領域を前後の略全域にわたって薄肉として構成するとともに、押え片部及び固定片部との境界にかけて、肉厚をそれぞれ徐変させるように、構成することが、好ましい。
【0014】
上記構成のマット用フックでは、使用時において、ヒンジ部の部位に応力集中が生じ難く、耐久性を向上させることができると同時に、押え片部を固定片部から離隔させるような移動の可動域を大きく確保することができ、第1マットの後縁を挟み込む作業が一層容易となる。
【0015】
さらに、上記構成のマット用フックにおいて、固定片部を、固定手段としてねじを使用可能に、ねじを挿通可能な挿通孔を備えるとともに、固定手段として、裏面側にフック側の面状ファスナーを結合させる構成とすれば、床面が、フック側の面状ファスナーを係止可能な材料から形成されている場合に、固定片部を床面に載せるだけで、固定片部を床面に固定させることができて、床面への取付作業性が一層良好となり、また、床面が面状ファスナーを係止不能な材料から形成されている場合には、挿通孔に挿通させたねじを締結させることにより、固定片部を床面に固定させることができることから、床面の材質に限らず、固定片部を床面に容易に固定させることができて、好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態のマット用フック(以下、単に「フック」と省略する)9について説明すると、フック9は、
図1,2に示すように、車両の車室内において、運転席Sの前方における床面F1に二重に敷かれる第1マット3及び第2マット6の後縁3a,6a近傍に配置される。なお、実施形態における前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両の前後・左右・上下の方向として、説明する。
【0019】
第1実施形態のフック9を使用する車両の床面F1は、板金製のフロアパネルに遮音材等を介在させ、表面側に、ニードルパンチ不織布等からなる表皮層1Aを配置させており、この表皮層1Aに、フック9の固定片部10を固定させる構成である。また、床面F1に直接載置される第1マット3は、
図1に示すように、後縁3a近傍の一箇所に、床面F1から延びるように配置されるフック4を周縁で係止可能に、ハトメリングを周縁に配置させた係止孔3bを、備えており、この係止孔3b周縁にフック4を係止させることによって、床面F1に対して固定されている。また、第1マット3は、実施形態の場合、詳細な図示を省略するが、ゴム製の裏地とタフトカーペットからなる表地とを積層させた厚肉の二層構造からなるものであり、第1マット3の端縁には、表地の起毛状態を潰すようにしてかがり縫いが施されている。また、第1実施形態のフック9を使用して床面F1側に固定される第2マット6は、タフトカーペットからなる表地とゴム製の裏地とを積層させた二層構造とされるもので、後縁6a近傍における左右の中央付近に、フック9における後述する係止片22を周縁で係止可能に、ハトメリングを周縁に配置させた係止孔6bを、有している。この第2マット6に形成される係止孔6bは、第1マット3と第2マット6を上下で重ねた際に、第1マット3を係止するフック4近傍となる位置に、形成されている。
【0020】
第1実施形態のフック9は、
図3〜7に示すように、ポリプロピレン等の合成樹脂製とされるもので、固定片部10と、押え片部13と、固定片部10と押え片部13とを連結する連結部17と、ヒンジ部18と、押え片部13側に配置されるフック本体20と、を備えている。
【0021】
固定片部10は、実施形態の場合、長手方向を前後方向に略沿わせた略長方形板状とされるもので、前後の中央よりやや後方となる位置の左右両縁側を、部分的に突出させ、これらの突出した左右の取付座10aに、固定手段としてねじを用いる際にねじを挿通可能な挿通孔10b,10bを、それぞれ、配置させている(
図4参照)。また、固定片部10の裏面側には、取付座10aの領域を除いた略全面にわたって、固定手段としてのフック側の面状ファスナー11が貼着(結合)されている(
図6参照)。面状ファスナー11としては、多数のフックを表面に配置させたフック側(雄側)のものが使用されている。なお、第1実施形態では、車両の床面F1の表面側には、ニードルパンチ不織布からなる表皮層1Aが配置されていることから、フック側の面状ファスナー11を表皮層1Aに係止させることができ、固定片部10は、ねじを用いなくとも、床面F1に載せて、固定片部10を上方から軽く押圧するだけで、床面F1に固定することができる。
【0022】
固定片部10と押え片部13を連結する連結部17は、固定片部10の後端10cから押え片部13の後端13aにかけて、断面形状を略U字形状とするように、湾曲して形成されている。そして、押え片部13は、固定片部10と略平行に前後方向に延びるように、形成されている。すなわち、押え片部13は、連結部17を介して、固定片部10の後端10c側から反転しつつ固定片部10と略平行に、前方に延びるように、形成されている。詳細には、実施形態の場合、固定片部10の後端10cは、押え片部13の後端13aよりも後方に位置するように、構成されており、連結部17は、固定片部10の後端10cから前上方に向かって突出するように、略1/4円弧状に湾曲して、形成されている。また、連結部17は、上方(押え片部13側)にかけて左右方向の幅寸法を狭められるような略テーパ状として、形成されている。
【0023】
押え片部13は、連結部17から連なるように、固定片部10の前後の中央付近まで延びるもので、
図5に詳細に示すように、前側を上方に位置させるように前後方向に対して僅かに傾斜して配置される後側部位14と、後側部位14の前側において前後方向に略沿うように配置される前側部位15と、を備えている。後側部位14は、平面形状を、前方にかけて左右方向の幅寸法を狭められるような略テーパ状として、構成されている。前側部位15は、左右方向の幅寸法を略一定として、前縁側を半円弧状に湾曲させて構成されている。この押え片部13は、固定片部10との間の隙間に第1マット3の後縁3aを挿入させるようにして、第1マット3の上面側に配置されるもので、前側部位15と固定片部10との間の隙間の開口幅寸法を、第1マット3の後縁3aを支障なく挿入可能な寸法に、設定されている。
【0024】
そして、固定片部10と押え片部13との境界部位付近には、押え片部13の前端13b側を固定片部10から上方へ離隔可能とするインテグラルヒンジからなるヒンジ部18が、形成されている。詳細には、ヒンジ部18は、連結部17において、押え片部13の後端13a側から連結部17の後端17a側にかけての領域を、前後の略全域にわたって薄肉として、構成されるとともに、押え片部13及び固定片部10との境界にかけて、それぞれ、肉厚を徐変されるように、構成されている。さらに詳細には、ヒンジ部18は、連結部17の略全域となる略1/4円弧状の領域において、前後の中央付近となる後上側の領域の肉厚を最も薄くして、前後両側にかけて徐々に肉厚を厚くするように、形成されている。そして、このヒンジ部18は、
図5の二点鎖線に示すように、押え片部13の前端13b側を固定片部10から上方へ離隔させるように、押え片部13を回動可能である。なお、押え片部13は、固定片部10(水平方向)に対して、少なくとも90°の角度で開き可能である。また、第1マット3を、押え片部13と固定片部10との間の隙間に挿入させた状態では、第1マット3の後縁3aは、連結部17の前側に近接して配置されることとなる。
【0025】
フック本体20は、押え片部13における前側部位15の前後左右の中央付近に配置されるもので、押え片部13の前側部位15から上方に突出する係止軸部21と、係止軸部21の上端から後方に向かって延びる係止片22と、を備えている。また、フック本体20は、固定片部10における前後の略中央の上方となる位置に、配置されている。係止軸部21は、第2マット6に形成される係止孔6bに挿通可能とされるもので、実施形態の場合、前後方向側の幅寸法を大きくした略長円状の断面を有した棒状として、構成されている(
図4参照)。係止軸部21は、上端側を後方に位置させるように、上下方向に対してわずかに傾斜して、形成されている。係止片22は、係止軸部21の上端から水平面に略沿って膨出する略板状とされるとともに、後方に向かって大きく突出するように、形成されている。この係止片22は、
図4に示すように、上方から見た外形形状を、後方にかけて先細りとした略楕円形の板状とされている。また、係止片22は、係止軸部21の前後の中央よりやや後側となる位置から、後端にかけて、後端側を上方に向けるように水平方向に対して傾斜して構成されて、第2マット6に形成される係止孔6b周縁への着脱時の作業性を良好としている。
【0026】
そして、第1実施形態のフック9は、以下のようにして使用することができる。まず、第1マット3が敷かれた状態の床面F1において、第2マット6の係止孔6bに対応するような位置に、フック9の固定片部10を固定させる。このとき、第1マット3は、フック4によって後縁3a側を床面F1に固定されており、フック9は、押え片部13の前端13b側を固定片部10に対して拡開させるようにして、押え片部13と固定片部10との間の隙間に、第1マット3の後縁3aを挿入させる。そして、押え片部13と固定片部10との間に第1マット3の後縁3aを挟んだ状態のフック9の固定片部10を、床面F1に載置させる。このとき、固定片部10を、床面F1に対して上方から軽く押圧すれば、固定片部10の裏面側に貼着される固定手段としてのフック側の面状ファスナー11が、床面F1の表皮層1Aに対して係止されることとなって、固定片部10が床面F1に固定されることとなる。その後、第2マット6を、第1マット3の上面側に載置させ、押え片部13から上方に突出しているフック本体20の係止軸部21を、第2マット6の係止孔6bに挿通させるようにして、係止片22を係止孔6b周縁に係止させれば、フック9により、第2マット6を床面F1に対して固定させることができる。
【0027】
この第1実施形態のフック9では、床面F1への取付時に、第1マット3を上下で挟むように配置される固定片部10と押え片部13とが、固定片部10と押え片部13との境界部位付近に配置されるヒンジ部18により相互に連結されており、このヒンジ部18は、インテグラルヒンジとして、押え片部13の前端13b側を固定片部10から離隔可能とするように、構成されている。すなわち、第1実施形態のフック9では、押え片部13を、固定片部10に対して、一点を中心として回動可能に構成していることから、押え片部13を、固定片部10から大きく離隔させるように回動させやすく、使用時において、押え片部13と固定片部10との間に第1マット3の後縁3aを挟み込む際に、第1マット3が別位置であって、かつ、フック9の配置位置近傍に位置するフック4により、床面F1に固定されている状態であっても、容易に挟み込み可能であり、第1マット3を固定させた状態の床面F1への取り付け作業が容易である。
【0028】
また、第1実施形態のフック9では、押え片部13側に配置されるフック本体20の係止軸部21を、第2マット6に形成される係止孔6bに挿通させ、係止軸部21の上端側に形成される係止片22を、係止孔6bの周縁に係止させて、第2マット6を係止する構成であることから、使用時において、係止孔6bからフック本体20が抜け難く、第2マット6が前方への力を受けた際にも、第2マット6の前方へのずれ移動を的確に抑制することができる。
【0029】
したがって、第1実施形態のフック9では、簡便な構成で、使用時の第2マット6のずれ移動を的確に防止でき、かつ、床面F1への取り付けも容易である。
【0030】
また、第1実施形態のフック9では、押え片部13の後端13aと固定片部10の後端10cとが、断面形状を略U字形状とした連結部17により、連結され、ヒンジ部18が、少なくとも、押え片部13の後端13a側から連結部17の後端17aにかけての領域を前後の略全域にわたって薄肉として構成されるとともに、押え片部13及び固定片部10との境界にかけて、肉厚をそれぞれ徐変させるように、構成されている。そのため、第1実施形態のフック9では、使用時において、ヒンジ部18の部位に応力集中が生じ難く、耐久性を向上させることができると同時に、押え片部13を固定片部10から離隔させるような移動の可動域を大きく確保することができ、第1マット3の後縁3aを挟み込む作業が一層容易となる。勿論、このような点を考慮しなければ、押え片部と固定板部との間の境界の領域を、部分的に、例えば断面略楔状や断面略台形状等に切り欠いて、ヒンジ部を形成してもよい。
【0031】
さらに、第1実施形態のフック9では、固定片部10が、固定手段としてねじを使用可能に、ねじを挿通可能な挿通孔10bを備えるとともに、固定手段として、裏面側にフック側の面状ファスナー11を結合させる構成とされている。そのため、実施形態のごとく、床面F1の表皮層1Aが、フック側の面状ファスナー11を係止可能な材料から形成されている場合に、固定片部10を床面F1に載せるだけで、固定片部10を床面F1に固定させることができて、床面F1への取付作業性が一層良好である。また、後述する床面F2のごとく、表皮層1Bが面状ファスナーを係止不能な材料から形成される床面F2に使用する場合には、実施形態のフック9は、挿通孔10bに挿通させたねじを締結させることにより、固定片部10を床面に固定させることができることから、床面の材質に限らず、固定片部を床面に容易に固定させることができる。
【0032】
次に、第2実施形態のフック25について、説明をする。第2実施形態のフック25を使用する床面F2は、表面側に、
図11に示すように、タフトカーペットからなる表皮層1Bを配置させるとともに、表皮層1Bと図示しないフロアパネルとの間に、不織布層(図符号省略)を介在させて構成されている。第1マット3は、上述の第1マット3と同様の構成である。フック25により床面F2に固定される第2マット24は、
図10,11に示すように、ポリ塩化ビニル(PVC)からなるトレー状とされるもので、後縁24a側における左右両端側に、フック25の係止片22Aを周縁で係止可能な長穴状の係止孔24bを、配置させている。すなわち、第2実施形態のフック25は、第2マット24を固定させるために2個使用されることとなる。
【0033】
フック25は、上述のフック9と同様に、ポリプロピレン等の合成樹脂製とされるもので、フック9と同様に、固定片部10Aと、押え片部13Aと、固定片部10Aと押え片部13Aとを連結する連結部17Aと、ヒンジ部18Aと、押え片部13A側に配置されるフック本体20Aと、を備えている(
図7〜9参照)。フック25は、外形形状を若干異ならせている以外は、上述のフック9と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して詳細な説明を省略する。なお、フック25とフック9との差異を詳細に説明すると、フック25では、
図8,9に示すように、押え片部13Aの前後の長さ寸法が、フック9における押え片部13の前後の長さ寸法より小さく、フック本体20Aが、固定片部10Aにおける前後の中央より後方となる挿通孔10bの上方となる位置に配置されている。また、フック25では、フック本体20Aは、押え片部13Aの前端側から連なるように、板状体を屈曲させるようにして、形成されている。すなわち、フック本体20Aは、左右の幅寸法を、押え片部13Aにおける前側部位15Aと略一致させて、構成されている。フック25のフック本体20Aにおいても、
図9に示すように、係止軸部21Aは、上端側を後方に向けるように上下方向に対して僅かに傾斜しており、係止片22Aは、後端側を上方に向けるように水平方向に対して傾斜して構成されている。
【0034】
なお、この第2実施形態のフック25を固定させる床面F2は、タフトカーペットからなる表皮層1Bを有していることから、フック側の面状ファスナー11Aを表皮層1Bに係止させることができず、面状ファスナー11Aを固定手段として使用することができない。第2実施形態では、フック25の固定片部10Aは、固定手段として2本のねじ27,27を用い、各ねじ27を、面状ファスナー11Aを貫通させつつ、挿通孔10bを挿通させて、床面F2に締結させることにより、床面F2に固定されることとなる(
図12参照)。
【0035】
この第2実施形態のフック25においても、第1実施形態のフック9と同様の構成を有していることから、使用時に、第1実施形態のフック9と同等の作用効果を得ることができる。
【0036】
また、第2実施形態のフック25においても、固定片部10Aが、固定手段としてねじ27を使用可能に、ねじ27を挿通可能な挿通孔10bを備えるとともに、固定手段として、裏面側に面状ファスナー11Aを結合させる構成とされている。そのため、実施形態のごとく、面状ファスナー11Aを係止不能な表皮層1Bを備える床面F2に使用する場合、挿通孔10bに挿通させたねじ27を床面F2に締結させることにより、固定片部10Aを床面F2に固定させればよく、また、床面が、上述の床面F1のごとく、面状ファスナー11Aを係止可能な材料から形成されている場合には、固定片部10Aを床面に載せるだけで、固定片部10Aを床面に固定させることができることから、床面の材質に限らず、固定片部を床面に容易に固定させることができる。
【0037】
なお、実施形態では、第1実施形態のフック9は、1箇所のみに配置されているが、第2実施形態のごとく、左右の二箇所に配置される構成としてもよい。また、第1実施形態及び第2実施形態のフック9,25のいずれも、左右方向に沿って三箇所配置させる構成としてもよい。
【0038】
次に、第3実施形態のフック29について説明をする。第3実施形態のフック29は、
図13,14に示すように、ポリプロピレン等の合成樹脂製とされるもので、固定側部材30と、固定側部材30と別体とされるフック本体部34と、を備えて構成されるもので、固定側部材30は、固定片部10Bと、押え片部31と、固定片部10Bと押え片部31とを連結する連結部17Bと、ヒンジ部18Bと、を備えている。固定片部10B、連結部17B、及び、ヒンジ部18Bは、上述のフック9における固定片部10,連結部17,ヒンジ部18と同様の構成であることから、同一の図符号の末尾に「B」を付して詳細な説明を省略する。なお、第3実施形態では、フック29は、
図15に示すように、上述の第2マット24を、床面F1に固定させるために、使用されている。
【0039】
押え片部31は、前後方向に略沿って延びる略帯状として、固定片部10Bよりも前方まで延びるように、形成されている。押え片部31の上面31aには、フック本体部34のスライド移動時にも、フック本体部34を係止可能とされる係止突起32が、断面鋸刃状として、前後方向に沿って連続的に形成されている。この係止突起32は、押え片部31における左右の中央付近に配置されるもので、フック本体部34に形成される係止爪37に対応して、後方に配置されて略上下方向に沿った係止面32aと、係止面32aの前側に配置されて係止面32aの上端側からなだらかに下降するように傾斜する滑り面32bと、を、交互に、連続して配置させた構成とされている。また、押え片部31の前端31b側には、フック本体部34の抜けを防止するようなストッパ31cが、左右両側へ突出するように、形成されている。
【0040】
フック本体部34は、押え片部31に取り付けられる取付部35と、フック本体39と、を備えている。取付部35は、フック本体部34を押え片部31に対して前後方向側でスライド可能とするように、押え片部31の周囲を略全周にわたって略隙間なく囲むような扁平な略四角筒形状とされるもので、押え片部31の上面側を覆う部位において、押え片部31に形成される係止突起32に対応した位置に、後方へ延びる突出片部36を、有している。突出片部36は、取付部35の後縁よりも後方に突出するように形成されるとともに、左右両縁側を、取付部35から分離されて構成されている。そして、突出片部36の前端側には、係止突起32に係止可能な係止爪37が、下方に向かって突出するように形成されている。この係止爪37は、前側に、係止突起32の係止面32aに係止可能な係止面37aを、配設させ、後側に、係止面37aの下端側から前上側に向かって傾斜する滑り面37bを、有する構成とされている。
【0041】
フック本体39は、取付部35における上面側の領域の前縁側から連なるように、板状体を屈曲させるようにして、形成されるもので、取付部35の前縁側から上方に突出する係止軸部40と、係止軸部40の上端から後方に向かって延びる係止片41と、を備えている。
【0042】
そして、この第3実施形態のフック29では、フック本体39を強く前後に引っ張るようにすれば、
図14の二点鎖線に示すように、突出片部36が撓んで、係止爪37と係止突起32との係止状態を、解除することができ、フック本体部34を押え片部31に対して前後方向にスライド移動させることができる。そして、フック本体部34のスライド移動を停止させれば、前後方向に沿って連続的に形成される係止突起32に、再度、係止爪37が係止されて、フック本体部34が、前方側への移動を規制されて押え片部31に係止されることとなる。
【0043】
この第3実施形態のフック29においても、第1実施形態のフック9と同様の構成を有していることから、使用時に、第1実施形態のフック9と同等の作用効果を得ることができる。
【0044】
また、第3実施形態のフック29では、フック本体39(フック本体部34)を、押え片部31と別体として構成するとともに、押え片部31に対して、前後方向側でスライド可能で、かつ、スライド移動後に、少なくとも前方側への移動を規制して押え片部31に係止可能に、構成していることから、フック本体39(フック本体部34)の位置を、市販の第2マット24の係止孔の位置に合わせて微調整することができ、第2マット24を、部分的に弛ませることなく、適切な位置で、第1マット3の上に載置させることができる。
【0045】
また、フック本体39C(フック本体部50)を押え片部と別体として構成するフック44として、
図16,17に示す第4実施形態のフック44のごとく、構成してもよい。
【0046】
第4実施形態のフック44は、ポリプロピレン等の合成樹脂製とされるもので、
図16,17に示すように、それぞれ別体とされる固定側部材45と、押え片部48と、フック本体部50と、を備えている。固定側部材45は、固定片部10Cと、固定片部10Cに押え片部を連結させる連結フック46と、固定片部10Cと連結フック46とを連結する連結部17Cと、ヒンジ部18Cと、を備えている。固定片部10C、連結部17C、及び、ヒンジ部18Cは、上述のフック9における固定片部10,連結部17,ヒンジ部18と同様の構成であることから、同一の図符号の末尾に「C」を付して詳細な説明を省略する。なお、実施形態では、固定側部材45として、前述の第2実施形態のフック25が、使用されている。連結フック46は、連結部17C近傍において、上方に立ち上がりつつ、先端を後方に向けるように反転させて、構成されている。なお、第4実施形態においても、フック44は、
図18に示すように、上述の第2マット24を、床面F1に固定させるために、使用されている。
【0047】
押え片部48は、前後方向に沿った長尺の帯状とされるもので、後端側に、固定側部材の45の連結フック46に係止される係止孔48aを備えており、この係止孔48a周縁に連結フック46を係止させることにより、固定側部材45と連結される構成である。実施形態の場合、押え片部48は、固定側部材45と連結された状態で、固定片部10Cよりも前方まで延びるように、形成されている。また、押え片部48には、フック本体部50に形成される後述する嵌合突起52aを嵌合可能に、略円形に開口した嵌合穴48cが、前後方向に沿って断続的に形成されている。
【0048】
フック本体部50は、押え片部48に取り付けられる取付部51と、フック本体39Cと、を備えている。取付部51は、フック本体部50を押え片部48に対して前後方向側でスライド可能とするように、押え片部48の周囲を略全周にわたって囲むような扁平な略四角筒形状とされている。取付部51は、押え片部48の上面側を覆う領域に、フック本体39Cより前方に突出するように形成される突出片52を、有している。この突出片52の下面側には、押え片部48に形成される嵌合穴48cに嵌合可能に、略円柱状に下方に突出する嵌合突起52aが、形成されている。この嵌合突起52aの嵌合穴48cへの嵌合状態は、突出片52を上方移動させれば、解除させることができる。また、取付部51において、押え片部48の下方を覆う下壁部51aは、前方にかけて下降するように、前後方向に対して傾斜して、形成されている(
図17参照)。この下壁部51aは、フック本体部50のスライド移動時のガイドとなるもので、下壁部51aを押え片部48に当接させるまで、突出片52を持ち上げるようにフック本体部50を傾ければ、嵌合突起52aの嵌合穴48cへの嵌合状態を解除することができる。
【0049】
フック本体39Cは、取付部51における上面側の領域であって、突出片52の後側から上方に突出するように形成されるもので、前述のフック29におけるフック本体39と同様に、取付部51から上方に突出する係止軸部40Cと、係止軸部40Cの上端から後方に向かって延びる係止片41Cと、を備えている。
【0050】
そして、この第4実施形態のフック44では、
図17の二点鎖線に示すごとく、突出片52を持ち上げるように、フック本体部50を傾ければ、嵌合突起52aの嵌合穴48cへの嵌合状態を解除することができて、下壁部51aを押え片部48に対して摺接させるようにして、フック本体部50を押え片部48に対して前後方向にスライド移動させることができる。そして、フック本体部50のスライド移動を停止させ、嵌合穴48cに嵌合突起52aを挿入させるようにして、突出片52を下方へ押し下げれば、嵌合突起52aが、再度嵌合穴48cに嵌合されて、フック本体部50が、前方側への移動を規制されて押え片部48に係止されることとなる。
【0051】
この第4実施形態のフック44においても、第1実施形態のフック9と同様の構成を有していることから、使用時に、第1実施形態のフック9と同等の作用効果を得ることができる。
【0052】
また、第4実施形態のフック44においても、フック本体39C(フック本体部50)を、押え片部48と別体として構成するとともに、押え片部48に対して、前後方向側でスライド可能で、かつ、スライド移動後に、少なくとも前方側への移動を規制して押え片部48に係止可能に、構成していることから、フック本体39C(フック本体部50)の位置を、市販の第2マット24の係止孔の位置に合わせて微調整することができ、第2マット24を、部分的に弛ませることなく、適切な位置で、第1マット3の上に載置させることができる。