特許第5762826号(P5762826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一工業製薬株式会社の特許一覧

特許5762826ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体を分散剤として用いてなる固体粒子分散体及び固体粒子含有樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762826
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体を分散剤として用いてなる固体粒子分散体及び固体粒子含有樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20150723BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20150723BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20150723BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20150723BHJP
   C09D 187/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C08G81/00
   B01F17/52
   C09B67/20 L
   C09D11/00
   C09D187/00
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-125386(P2011-125386)
(22)【出願日】2011年6月3日
(65)【公開番号】特開2012-46727(P2012-46727A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2012年5月30日
【審判番号】不服2014-8008(P2014-8008/J1)
【審判請求日】2014年4月30日
(31)【優先権主張番号】特願2010-167937(P2010-167937)
(32)【優先日】2010年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】浅井 千穂
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賀之
(72)【発明者】
【氏名】齊内 直文
【合議体】
【審判長】 田口 昌浩
【審判官】 小野寺 務
【審判官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−81547(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/067889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00- 81/02
C09B 67/20
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)〜(3)で表される構成単位をそれぞれ1個以上有し、重量平均分子量が100〜100,000であるポリビニルアセタールと、重量平均分子量が1,000〜50,000であるポリエステルとを反応させて得られ、前記ポリビニルアセタールが有する水酸基の1〜95モル%が、前記ポリエステルとのエステル交換反応により結合を形成したポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体を含有する分散剤により固体粒子を非水系液体に分散させてなり、塗料組成物又はインキ組成物であることを特徴とする固体粒子分散体。
【化1】

(但し、R1は水素原子あるいは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。)
【化2】

【化3】

(但し、R2は水素原子あるいは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
下記一般式(1)〜(3)で表される構成単位をそれぞれ1個以上有し、重量平均分子量が100〜100,000であるポリビニルアセタールと、重量平均分子量が1,000〜50,000であるポリエステルとを反応させて得られ、前記ポリビニルアセタールが有する水酸基の1〜95モル%が、前記ポリエステルとのエステル交換反応により結合を形成したポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体を含有する分散剤と、樹脂及び固体粒子とを含有してなる固体粒子含有樹脂組成物。
【化4】

(但し、R1は水素原子あるいは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。)
【化5】

【化6】

(但し、R2は水素原子あるいは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体、これを用いた分散剤、並びにこの分散剤を用いた分散体等に関する。
【背景技術】
【0002】
非水系液体に固体粒子を分散する技術は様々な産業分野で利用されている。例えば、塗料、印刷インキ、複写用トナー、プラスチック、顔料捺染剤、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキ等の分野での顔料の分散は重要な基礎技術である。このような分散組成物を製造する際、固体粒子が凝集しやすいという問題点がある。凝集が起こると安定性の低下、最終製品の光沢、着色力、グロスの低下、色分かれなど好ましくない現象を生じることが知られている。従って、このような凝集を防止し、分散性を向上させるため、分散剤が使用される。
【0003】
従来の非水系分散剤としては、例えば、ポリエステルとポリアミンの反応生成物等が知られている(特許文献1〜3)。具体的には、ヒドロキシステアリン酸縮合物とポリエチレンイミンとの反応生成物や、ポリカプロラクトン系ポリエステル化合物とポリアリルアミンとの反応生成物などが開示されている。それらの分散剤の多くは吸着基としてポリアミンを有するが、アミン骨格を持つと、高温下で黄変を起こすという問題があった。この問題を解決するため、アミン骨格を有しない分散剤の検討がされているが、十分満足できる性能を有するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−176511号公報
【特許文献2】特開平7−207012号公報
【特許文献3】特開平9−169821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、各種の非水系液体中に固体粒子を分散させる際、分散液中における固体粒子の凝集を防ぎ、安定な分散液を形成するのに極めて有効であり、かつ耐熱性に優れた分散剤、及びこれを用いた分散性等に優れた分散体等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の固体粒子分散体は、上記の課題を解決するために、下記一般式(1)〜(3)で表される構成単位をそれぞれ1個以上有し、重量平均分子量が1,000〜100,000であるポリビニルアセタールと、重量平均分子量が100〜50,000であるポリエステルとを反応させて得られ、上記ポリビニルアセタールが有する水酸基の1〜95モル%が、上記ポリエステルとのエステル交換反応により結合を形成したポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体を含有する分散剤により固体粒子を非水系液体に分散させてなる、塗料組成物又はインキ組成物であるものとする。
【化7】

【0007】
但し、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
【化2】
【化3】
【0008】
但し、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
【0012】
また、本発明の固体粒子含有樹脂組成物は、上記ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体を含有する分散剤、樹脂及び固体粒子を含有するものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体は、各種の非水系液体中に固体粒子を分散させる際、分散液中における固体粒子の凝集を防ぎ、安定な分散液を形成するのに極めて有効な分散剤となる。本分散剤は、分散性、流動性、保存安定性に優れ、また分散媒との相溶性に優れている。さらに、アミン骨格を有しないため、耐熱性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体
本発明のポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体は、ポリビニルアセタールとポリエステルとの反応生成物であり、ポリビニルアセタールが有する水酸基の1〜95モル%が、ポリエステルとのエステル交換反応により結合を形成しているものである。
【0016】
本発明で用いるポリビニルアセタールは、下記一般式(1)〜(3)で表される構成単位を有する。
【化4】
【0017】
但し、一般式(1)におけるRは水素原子あるいは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルコキシ基又はアリールオキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アクリル基、エポキシ基、リン酸エステル基等の窒素原子を含まない官能基が挙げられる。また、耐熱黄変性に影響のない含有量の範囲であれば、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、イミド基、アミド基等の窒素原子を含む官能基も有することができる。
【化5】
【化6】
【0018】
但し、一般式(2)におけるRは水素原子あるいは炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐のアルキル基又はアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。置換基の例としては、上記式(1)のRについて例示列挙したものと同様のものが挙げられる。
【0019】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することによって得られ、使用するアルデヒドの例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、イソブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、イソノナナール、デカナール、ベンズアルデヒドおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本発明で使用するポリビニルアセタールの重量平均分子量は100〜100,000であり、好ましくは1,000〜50,000である。その重量平均分子量が100未満であると分散性が低下する等の性能低下が見られ、100,000を超えると分散剤としての使用時に粘度が高くなり、扱いにくくなる。
【0021】
本発明で使用するポリエステルは、ラクトン化合物の開環重合反応、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合反応、ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応などによって得られる。
【0022】
上記ラクトン化合物の例としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、2−メチルカプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、ノナノラクトンおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
上記ラクトン化合物の開環重合反応は公知の方法で行うことができる。例えば、アルコール又はアミンを有する化合物を開始剤として使用し、ラクトン化合物を開環重合させることができる。
【0024】
上記開始剤に用いられるアルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチルペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナナール、イソノナナール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール等の脂肪族モノアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等の芳香族モノアルコール、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ヘキサン等の二価アルコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコールを挙げることができる。
【0025】
上記開始剤に用いるアミンの例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ピロリジン、モルホリン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジフェニルジアミノメタン、パラフェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、エタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ピペラジン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0026】
ラクトン化合物の開環重合反応は、ラクトン化合物に開始剤と触媒を加え加熱することで進行する。反応温度は100℃〜220℃、好ましくは140℃〜210℃の範囲で行う。触媒としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、ジオクチルスズネオデカネート等の有機スズ化合物、酸化第一スズ、塩化第一スズ、等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、その他公知のエステル化触媒が利用できる。触媒の使用量は通常0.1ppm〜1000ppmであり、好ましくは1ppm〜100ppmである。また、着色を防ぐため窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0027】
ラクトン化合物の開環重合物としては市販のポリラクトンポリオールを使用してもよい。例えば、ダイセル化学工業(株)製「プラクセル」シリーズを使用することができる。 本発明に使用するポリエステルは、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合反応によっても得ることができる。
【0028】
上記多価カルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0029】
上記多価アルコールの例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ヘキサン、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ヘキサンジオールグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0030】
上記多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応は、触媒を加えて加熱することで行うことができる。反応温度は通常100℃〜220℃、好ましくは140℃〜210℃の範囲である。触媒としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、ジオクチルスズネオデカネート等の有機スズ化合物、酸化第一スズ、塩化第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、その他公知のエステル化触媒が利用できる。触媒の使用量は通常0.1ppm〜1000ppm、好ましくは1ppm〜100ppmである。また、着色を防ぐため窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0031】
本発明に使用するポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応によっても得ることができる。
【0032】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族、芳香族、不飽和のヒドロキシカルボン酸を使用することができる。例としては、リシノレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ひまし油脂肪酸、水添ひまし油脂肪酸、δ−ヒドロキシ吉草酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシピバリン酸、4−ヒドロキシイソフタル酸サリチル酸、11−オキシヘキサドデカン酸、2−オキシドデカン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)酪酸、グルクロン酸、3−ヒドロキシブタン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
上記ヒドロキシカルボン酸の重縮合は、触媒を加えて加熱することで行うことができる。反応温度は、通常100℃〜220℃、好ましくは140℃〜210℃の範囲である。触媒としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、ジオクチルスズネオデカネート等の有機スズ化合物、酸化第一スズ、塩化第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、その他公知のエステル化触媒が利用できる。触媒の使用量は通常0.1ppm〜1000ppm、好ましくは1ppm〜100ppmである。また、着色を防ぐため、窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0034】
本発明で使用するポリエステルの重量平均分子量は100〜50,000であり、好ましくは1,000〜10,000の範囲である。その重量平均分子量が100未満であると分散性が低下する等の性能低下が見られ、50,000を超えると分散剤としての使用時に粘度が高くなり、扱いにくくなる。
【0035】
本発明のポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体は、上記ポリビニルアセタールと、上記ポリエステルとのエステル交換反応により得ることが出来る。
【0036】
上記エステル交換反応は公知の方法に従って行うことができる。反応温度は通常80℃〜280℃、好ましくは140℃〜250℃であり、通常0.5〜12時間、好ましくは4〜8時間反応を行い、触媒を使用してもよい。触媒の例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、ジオクチルスズネオデカネート等の有機スズ化合物、酸化第一スズ、塩化第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、リン酸、ホウ酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のプロトン酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属等が挙げられる。また、着色を防ぐため、窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0037】
上記ポリビニルアセタールとポリエステルとを反応させると、ポリビニルアセタールが有する水酸基の一部がポリエステルとエステル交換することによりグラフト結合を形成する。ポリビニルアセタールが有する水酸基は、1〜95モル%の範囲でポリエステルとグラフト結合を形成する。好ましくは、この水酸基の2〜50モル%がポリエステルとグラフト結合を形成したものとする。いずれの場合も未反応のポリエステルが残存していても良い。
【0038】
本発明のポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体は、分散剤としての使用を考慮すると、重量平均分子量が5,000〜500,000であることが好ましい。2.分散剤としての使用
上記した本発明のポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体は、分散剤として好適に使用することができ、無機および有機の双方の固体粒子に対して有効である。具体的には、塗料、印刷インキ、複写用トナー、プラスチック、顔料捺染剤、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキ等の各分野で通常用いられる分散媒体中に、高濃度かつ低粘度で安定に固体粒子を分散させることができる。
【0039】
本発明のポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体により分散される固体粒子は特に限定されないが、無機粒子の例としては、カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸マグネシウム、アスベスト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、三酸化アンチモン、酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、カーボンブラック、黒鉛、鉄粉、銀粉、アルミ粉、銅粉、ニッケル粉、金粉等が挙げられる。有機粒子の例としては、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾロン系、ペリレン系、フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系等の有機顔料、澱粉、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸、固体パラフィン等が挙げられる。
【0040】
分散媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ブチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジグライムなどのエーテル系溶媒、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、p−t−ブチルベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキレングリコールのモノエーテル系溶剤の他、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒等が挙げられ、これらを単独で、または2種以上を混合して適宜使用することができる。
【0041】
本発明のポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体を分散剤として使用する場合、その使用量は、通常は固体粒子に対して1〜300重量%程度である。
【0042】
分散方法は特に限定されず、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の粉砕機を用いる公知の方法で分散することができる。
【0043】
また、本発明の分散剤を用い、固体粒子、樹脂を含有し、さらに必要に応じて溶剤等を含有する、固体粒子含有樹脂組成物を調製することができる。この固体粒子含有樹脂組成物は、例えば塗料組成物又はインキ組成物等に使用することができる。固体粒子含有樹脂組成物に含有される樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン樹脂等、広範囲の樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
固体粒子含有樹脂組成物の製造方法としては、本発明の分散剤と固体粒子、樹脂、溶剤、その他添加剤などと混練して直接固体粒子含有樹脂組成物を調整することもできるが、分散剤、固体粒子、分散媒を混練して固体粒子分散体を作った後に、これに樹脂を添加して固体粒子含有樹脂組成物とすることもできる。
【0045】
また、本発明の分散剤と固体粒子、モノマー又は反応性基を有するオリゴマーを混練して分散させた後、これを重合して固体粒子含有樹脂組成物を作製することもできる。
【0046】
さらに、本発明の分散剤により固体粒子の表面処理を行うことができる。処理方法としてはヘンシェルミキサー、ボールミル、アトマイザーコロイドミル、バンバリミキサー等を用いて固体粒子を攪拌しながら分散剤を添加して混合する乾式法、溶剤中で処理した後溶剤を除去する湿式法を用いることができる。このように本発明の分散剤で表面処理を行うことにより、固体粒子の分散性を向上させ、凝集を防止することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載中、「部」は「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表す。
【0048】
1.ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体の製造及び評価
[製造例1:ポリエステルの合成]
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、メタノール10.0部、ε−カプロラクトン800.0部、テトラブチルチタネート0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は3100であった。
【0049】
[製造例2:ポリエステルの合成]
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、ジエチレングリコール50.0部、ε−カプロラクトン800.0部、テトラブチルチタネート0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は2000であった。
【0050】
[製造例3:ポリエステルの合成]
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、ジエチレングリコール10.0部、ε−カプロラクトン800.0部、テトラブチルチタネート0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は8,500であった。
【0051】
[製造例4:ポリエステルの合成]
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート100.0部、ε−カプロラクトン800.0部、テトラブチルチタネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は1,200であった。
【0052】
[製造例5:ポリエステルの合成]
窒素導入管、温度計、還流管、水分離器を取り付けた反応容器に、1,6−ヘキサンジオール400.0部、アジピン酸436.0部、テトラブチルチタネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、酸価が1mgKOH/gになるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は4,200であった。
【0053】
[製造例6:ポリエステルの合成]
窒素導入管、温度計、還流管、水分離器を取り付けた反応容器に、12−ヒドロキシステアリン酸800.0部、テトラブチルチタネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、酸価が 31mgKOH/gになるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は1,800であった。
【0054】
[製造例7:ポリエステルの合成]
窒素導入管、温度計、還流管、水分離器を取り付けた反応容器に、3−メチル−1,5−ペンタンジオール100.0部、アジピン酸109.0部、ε−カプロラクトン359.0部、テトラブチルチタネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃まで4時間かけて昇温し、酸価が1mgKOH/gになるまで160℃で加熱を行った。反応生成物は黄色固体で、重量平均分子量は12,500であった。
【0055】
[製造例8:ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体]
窒素導入管、温度計、還流管を取り付けた反応容器に、ポリビニルブチラール(商品名「エスレックBL−1」平均分子量約19,000、水酸基約36モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度63±3モル%、積水化学工業株式会社製)49.7部、製造例1で得られたポリエステル50.3部(4モル%/対水酸基)、テトラブチルチタネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で200℃まで昇温し、6時間加熱を行った。反応生成物は黄色粘調液体で、重量平均分子量は67,500、ポリエステルの導入率は65.2%であった。分子量の測定及びポリエステル導入率の測定は下記方法に従った。
【0056】
[製造例9〜28:ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体]
下記表1に示す配合および反応条件に従い、製造例8と同様にしてポリビニルブチラール・ポリエステルグラフトポリマーを製造し、分子量の測定及びポリエステル導入率の測定を行った。
【0057】
[比較製造例1:ポリエチレンイミン・ポリエステルグラフト共重合体]
窒素導入管、温度計、還流管、検水管を取り付けた反応容器に、ポリエチレンイミン(商品名「Lupasol PR8515」、重量平均分子量2000)8.1部、製造例1のポリエステル91.9部、テトラブチルチタネート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で200℃まで昇温し、6時間加熱を行った。
【0058】
反応生成物は茶褐色固体で、アミン価は45.5mgKOH/gであった。
【0059】
<ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体の分子量の測定>
ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体の平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒に用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0060】
<ポリエステル導入率の測定>
ポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体のポリエステル導入率はGPCの測定結果より、下記式により求めた。
【数1】
【0061】
【表1】
【0062】
なお、表1における製造例15で使用したポリビニルアセタール及び製造例24〜27で使用したポリエステルの詳細は以下の通りである。
【0063】
※1:商品名「エスレックBX−L」積水化学工業株式会社製、ポリビニルアセタール、平均分子量約20000、水酸基37±3モル%、アセチル基3モル%以下、アセタール化度約61モル%
※2:商品名「プラクセルH1P」ダイセル化学工業株式会社製、ポリカプロラクトン、分子量10,000
※3:商品名「プラクセル240」ダイセル化学工業株式会社製、ポリカプロラクトンジオール、分子量4,000
※4:商品名「プラクセル230」ダイセル化学工業株式会社製、ポリカプロラクトンジオール、分子量3,000
<耐熱性試験>
上記製造例8〜28で得られたポリビニルアセタール・ポリエステルグラフト共重合体、及び比較製造例1で得られたポリエチレンイミン・ポリエステルグラフト共重合体等の耐熱性試験を以下の通り行った。結果を表2に示す。
【0064】
色差:分散剤0.5mgを塩化メチレン20mLに溶解し、シリカゲル10gと混合し、室温で乾燥させた。得られたシリカゲルの半量を200℃で1時間加熱処理を行い、処理前後の色差を測定した。
【0065】
耐熱性:色差に基づき、以下の基準により判定した。
○:色差(ΔE)0〜5、△:色差(ΔE)5〜10、×:色差(ΔE)10以上
【0066】
【表2】
【0067】
なお、比較製造例1のもの以外で比較対象とした分散剤の詳細は以下の通りである。
【0068】
※1:商品名「アジスパーPB−822」、味の素ファインテクノ株式会社製、高分子系顔料分散剤、アミン価17mgKOH/g、酸価14mgKOH/g
※2:商品名「エスレックBL−1」、積水化学工業株式会社製、ポリビニルブチラール、重量平均分子量約19000、水酸基約36モル%、アセチル基3モル%以下、ブチラール化度63±3モル%
【0069】
2.分散体の調製及び評価
上記製造例により得られたポリビニルアセタール・ポリエステルグラフトポリマー、比較対象の分散剤を表3に示した分散媒に溶解し、表3に示した固体粒子、直径0.3mmのジルコニアビーズ(規格品)をそれぞれ加え、ペイントシェーカーを用いて4時間分散した。
【0070】
<分散性評価>
上記分散終了直後に、分散性を目視にて観察し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
◎:すべての粉末が液中に分散し、まったく底部に沈澱が発生していない。
○:ほとんどの粉末が液中に分散しているが、わずかに底部に沈澱が発生する。
△:半分程度の粉末が液中に沈澱する。
×:ほとんどの粉末が底部に沈澱する。
【0071】
<塗膜状態試験>
分散試験後の分散体10.0部にアクリル樹脂(商品名「アクリペットMD」、三菱レイヨン製)を0.4部添加し、攪拌して溶解させた。得られた混合液をガラス基板に平均膜厚が1.8μmになるようにスピンコートし、120℃のオーブンで1時間加熱した。得られた塗膜を目視にて観察し、以下の基準により評価した。結果を表3に示す。
○:得られた塗膜が透明である。
△:得られた塗膜に曇りが見られる。
×:粒子が凝集し、透明性がない。
【0072】
<塗膜の耐熱性試験>
塗膜状態試験で作製した試験板と、さらにそれを230℃で1時間加熱した試験板との色差を測定し、以下の基準により評価した。結果を表3に示す。
○:色差(ΔE)0〜1 △:色差(ΔE)1〜2.5 ×:色差(ΔE)2.5以上
【0073】
【表3】
【0074】
3.固体粒子含有樹脂組成物(感光性着色樹脂組成物)の製造及び評価
メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(25/75重量%比、重量平均分子量約30000)40.0部、ピグメントブルー15:6 23.0部、製造例7のポリビニルアセタール−ポリエステルのグラフト共重合物 7.0部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10.0部、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(2−エトキシスチリル)−s−トリアジン 3.0部、PGMEA 200部を混合し、0.3mmジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカーにより分散を行った。
【0075】
ガラス基板に上記感光性着色樹脂組成物をスピンコート塗布し、70℃のクリーンオーブン中で20分間プリベークを行い、乾燥塗布膜を作製した。次いで、この基板を室温に冷却した後、超高圧水銀ランプを用い、紫外線を露光した。その後、この基板を0.04%水酸化カリウム水溶液を用いてスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し、風乾した。その後、クリーンオーブン中で、230℃で30分間ポストベークを行った。乾燥塗膜は±0.5μm以内の均一で平滑な塗膜であり、光透過率(380〜780nmの平均)は98%であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の分散剤は、塗料、印刷インキ、複写用トナー、プラスチック、顔料捺染剤、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキ等の分野で非水系液体中に固体粒子を分散させる際、分散液中における固体粒子の凝集を防ぎ、安定な分散液を形成するのに極めて有効である。