(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1記載の構造では、メンテナンス作業の際に、境界部分付近の断熱材を部分的に取り外す必要があるので、ユニットバスなどの床下空間が狭くて作業者が床下空間に入り込むことが困難な箇所では、断熱材を取り外す作業が難しく、メンテナンス作業を行うことが難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、床下空間に入り込みにくい場所でも、境界部分に防蟻用薬液を容易かつ確実に与えることが可能な防蟻断熱床下構造および防蟻方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の防蟻断熱床下構造は、建築物の基礎で囲まれるとともに土間コンクリートが配置された床下部分に断熱部を配置した断熱床下構造であって、前記断熱部は、前記基礎の内側面と前記土間コンクリートの上面との境界部分から第1の間隔をあけて前記基礎の内側面を被覆する基礎側断熱材と、前記境界部分から第2の間隔をあけて前記土間コンクリートの上面を被覆する土間側断熱材と、前記境界部分から前記基礎の内側面に沿う前記第1の間隔の範囲内で、かつ、当該境界部分から前記土間コンクリートの上面に沿う前記第2の間隔の範囲内を塞ぐように配置され、防蟻用薬液が浸透可能な繊維性材料からなる薬液流通部材とを備えており、前記第1の間隔は、前記土間側断熱材の厚さより大きく、前記第2の間隔は、前記基礎側断熱材の厚さより大きく、前記薬液流通部材
は、前記土間側断熱材の上面よりも上側に突出するとともに前記基礎側断熱材の床下側を向く面よりも床下側に突出することにより当該床下側に露出
する部分と、前記基礎と前記土間コンクリートとの境界部分に沿う部分とを有し、前記薬液流通部材は、その内部において前記床下側に露出する部分から前記境界部分に沿う部分への前記防蟻用薬液の流通を許容する、ことを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、基礎の内側面と土間コンクリートとの境界部分に設置した薬液流通部材は、
前記土間側断熱材の上面よりも上側に突出するとともに前記基礎側断熱材の床下側を向く面よりも床下側に突出することにより当該床下側に露出
する部分を有している。この部分は、境界部分と基礎側断熱材との第1の間隔および境界部分と土間側断熱材との第2の間隔によって形成された隙間を通して、床下側に露出している。この薬液流通部材
における床下側に露出している部分に対して、薬液流通部材から離れた位置からスプレーや長尺のディスペンサなどを用いて防蟻用薬液を容易に付与することが可能である。薬液流通部材に
おける床下側に露出している部分に付与された薬液は
、薬液流通部材の内部を浸透して、
当該薬液流通部材における境界部分に沿う部分まで流通し、境界部分に到達することが可能である。これにより、床下が狭い場所でも境界部分に容易かつ確実に薬液を付与することが可能になる。
【0011】
また、前記薬液流通部材には、防蟻用薬液が含浸されているのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、薬液流通部材に含浸された防蟻用薬液が当該薬液流通部材の内部を浸透して境界部分に容易かつ確実に付与することが可能である。また、薬液流通部材に含浸された薬液は薬液流通部材の内部を通って徐々に境界部分に到達するので、薬液が乾燥しにくく、薬効を長持ちさせることができる。
【0013】
また、前記薬液流通部材は、グラスウールおよびロックウールのうちの少なくとも1種からなるのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、薬液流通部材として、グラスウールおよびロックウールのうちの少なくとも1種を用いることにより、薬液の浸透性が良く、かつ、断熱性能を保持することが可能である。
【0015】
また、前記薬液流通部材における前記床下側に露出する部分には、斜め上方を向く斜面が形成されている、のが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、作業者が境界部分に設置された薬液流通部材に防蟻用薬液を付与する際に、斜め上方を向く斜面に向けて薬液を付与しやすいという利点がある。
【0017】
さらに、前記薬液流通部材の内部には、前記防蟻用薬液を前記境界部分へ案内する流路が形成されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、薬液が薬液流通部材の内部に形成された流路を通って境界部分に案内されることによって、薬液を境界部分に円滑に供給できる。
【0019】
さらに、前記薬液流通部材を構成する繊維の少なくとも一部は、略水平方向へ向くように配列されているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、薬液が薬液流通部材の内部の繊維に沿って水平方向へ円滑に流れて基礎の内側面に達し、さらに基礎の内側面に沿って境界部分に円滑に流れることが可能である。
【0021】
本発明の防蟻方法は、上記の防蟻断熱床下構造を用いた防蟻方法であって、前記境界部分から前記基礎の内側面に沿う前記第1の間隔の範囲内で、かつ、当該境界部分から前記土間コンクリートの上面に沿う前記第2の間隔の範囲内において、前記薬液流通部材を、前記薬液流通部材の一部が床下側に露出するように、前記境界部分に配設する薬液流通部材配設工程と、前記薬液流通部材に対して、前記防蟻用薬液を当該薬液流通部材の床下側に露出している部分から付与する防蟻用薬液付与工程とを含むことを特徴とする。
【0022】
かかる特徴によれば、基礎の内側面と土間コンクリートとの境界部分において、境界部分と基礎側断熱材との第1の間隔および境界部分と土間側断熱材との第2の間隔の範囲内に、防蟻用薬液を浸透することが可能な繊維性材料からなる薬液流通部材を床下側に露出するように配設し、この薬液流通部材の露出している部分に対して、薬液流通部材から離れた位置からスプレーや長尺のディスペンサなどを用いて防蟻用薬液を容易に付与することが可能である。薬液流通部材に付与された薬液は薬液流通部材の内部を浸透して境界部分に到達することが可能である。これにより、床下が狭い場所でも境界部分に容易かつ確実に薬液を付与することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の防蟻断熱床下構造および防蟻方法によれば、床下空間に入り込みにくい場所でも、境界部分に防蟻用薬液を容易かつ確実に与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本実施形態における構造の概要図を示すものである。本図において、地盤Eに基礎100が設置され、その上に建築物Tが設置されている。
【0026】
基礎100は、図例では、フーチング101と、フーチング101の上に配置された立直部102とを備えた布基礎であり、前記建築物Tの床下部分(本図においては基礎100の右側部分。
図2以降においても同様とする。)を取り囲むようにして地盤Eに設置されている。
【0027】
床下部分に該当する地盤Eの表面、すなわち土間110の上面には、土間コンクリート120が床下部分の略全面を覆うように配置され、この土間コンクリート120の端面は、前記フーチング101の内側面102a(基礎の内側面に相当。以下、基礎100の内側面102aと称す。)に沿った状態で配置されている。
【0028】
また、本実施形態では、土間コンクリート120と地盤Eとの間には、ポリエチレンなどの基材に防蟻材が含有された防蟻シート150が介在している。防蟻シート150の端部150aは、基礎100と土間コンクリート120との隙間140に延びている。
【0029】
なお、本実施形態の説明で以下に記載される「内側」とは、基礎100を基準にして床下側(
図1においては、基礎100を基準として右方向に向けての方向)を意味する。
【0030】
さらに、基礎の内側面102aのうち土間コンクリート120の上面より上側に位置する部分から、土間コンクリート120の上面に至る領域を被覆するように断熱部130が配置されている。
【0031】
この断熱部130は、基礎側断熱パネル131と、土間側断熱パネル132と、境界部断熱体135を備えている。
【0032】
基礎側断熱パネル131は、本発明の基礎側断熱材に対応するものであり、基礎100の内側面102aに固着されている。具体的には、基礎側断熱パネル131は、基礎100の内側面102aと土間コンクリート120の上面120aとの境界部分141から第1の間隔S1(
図2参照)をあけて基礎100の内側面102aを被覆する。基礎側断熱パネル131は、薬液を浸透しにくく、かつ、断熱性の高い材料、例えば、押出ポリスチレン(XPS)が用いられる。
【0033】
土間側断熱パネル132は、本発明の土間側断熱材に対応するものであり、境界部分141から第2の間隔S2(
図2参照)をあけて土間コンクリート120の上面120aを被覆する。土間側断熱パネル132も、基礎側断熱パネル131と同様に、薬液を浸透しにくく、かつ、断熱性の高い材料、例えば、押出ポリスチレン(XPS)が用いられる。
【0034】
本実施形態の土間側断熱パネル132は、
図1に示されるように、複数の部分、例えば、第1部分132aと第2部分132bとに分割されている。第1部分132aは、土間コンクリート120の上面に取り外し自在に設けられている。第2部分132bは、土間コンクリート120の上面に固着されている。このように、土間側断熱パネル132の一部が土間コンクリート120から取り外しすることが可能であるので、土間コンクリート120のひび割れの補修や点検を容易に行うことが可能である。
【0035】
境界部断熱体135は、本発明の薬液流通部材に対応するものであり、
図2に示されるように、境界部分141から基礎100の内側面102aに沿う第1の間隔S1の範囲内で、かつ、当該境界部分141から土間コンクリート120の上面120aに沿う第2の間隔S2の範囲内を塞ぐように配置されている。境界部断熱体135は、防蟻用薬液が浸透可能な繊維性材料からなり、本実施形態ではグラスウールおよびロックウールのうちの少なくとも1種からなる。
【0036】
境界部断熱体135に用いられるグラスウールの密度は、薬液の浸透性および断熱性能を両方維持できるように10〜32kg/m
3であるのが好ましい。密度が32kg/m
3を超えると薬液の浸透性が大幅に低下し、また、10kg/m
3未満であれば、断熱性能が低下する(すなわち、熱伝導率が高くなる)ので、グラスウールの密度が上記の範囲内にあれば薬液の浸透性および断熱性能の両方を実用上満足できる程度に維持できるので好ましい。より好ましくは、境界部断熱体135に用いられるグラスウールは、基礎100の断熱に用いるため充分な強度が要求されるので、密度が32kg/m
3またはそれより若干下回る程度のグラスウールを用いるのが好ましい。
【0037】
また、境界部断熱体135としてロックウールを用いた場合、ロックウールの密度は、薬液の浸透性および断熱性能を両方維持できるように10〜50kg/m
3であるのが好ましい。密度が50kg/m
3を超えると薬液の浸透性が大幅に低下し、また、10kg/m
3未満であれば、断熱性能が低下する(すなわち、熱伝導率が高くなる)ので、ロックウールの密度が上記の範囲内にあれば薬液の浸透性および断熱性能の両方を実用上満足できる程度に維持できるので好ましい。より好ましくは、境界部断熱体135に用いられるロックウールは、基礎100の断熱に用いるため充分な強度が要求されるので、密度が50kg/m
3またはそれより若干下回る程度のロックウールを用いるのが好ましい。
【0038】
本実施形態では、第1の間隔S1は、土間側断熱パネル132の厚さD2より大きくなるように設定されている。また、第2の間隔S2は、基礎側断熱パネル131の厚さD1より大きくなるように設定されている。したがって、第1の間隔S1および第2の間隔S2の範囲内を塞ぐように配置された境界部断熱体135は、基礎側断熱パネル131の厚さD1および土間側断熱パネル132の厚さD2よりも大きい寸法を有しているので、断熱性能を確保することが可能である。それとともに、防蟻用薬剤の吹き付け箇所として、境界部断熱体135の内側角部135a(
図2参照)を確保することが可能である。この内側角部135aの垂直面135bおよび水平面135cは、床下側(床下空間U)に露出している。
【0039】
図3に示されるように、本実施形態の境界部断熱体135は、グラスウールおよびロックウールのうちの少なくとも1種からなる矩形断面の棒状体からなる。境界部断熱体135の寸法については、本発明ではとくに限定されるものではないが、例えば、境界部断熱体135の幅Xは、基礎側断熱パネル131の厚さD1+10mm程度、高さHは土間側断熱パネル132の厚さD2+20mm程度、長さLは910mmまたは1820mm程度に設定される。境界部断熱体135を構成する繊維の少なくとも一部、好ましくは全部は、略水平方向へ向くように配列されている。
【0040】
境界部断熱体135には、防蟻用薬液が含浸されている。防蟻用薬液は、後述するように、境界部断熱体135から離れた場所から当該境界部断熱体135へ防蟻用薬液がスプレーによる吹き付けや散布、または長尺のディスペンサによる注入などによって付与される。
【0041】
防蟻用薬液は、例えば、防蟻薬剤と樹脂製バインダとが混合したものが用いられる。
【0042】
防蟻薬剤としては、例えばピレスロイド様薬剤(シラフルオフェン、エトフェンプロックス等)、ピレスロイド系薬剤(ビフェントリン、サイパーメストン、デルタメスリン、パーメスリン、ペルメスリン、アレスリン、トラロメスリン等)、カーバメント系薬剤(プロボクスル、フェノブカルブ、セビン等)、クロルニコチル系薬剤(イミダクロプリド、アセタプリド、クロチアニシン等)、ニトロガニリン系薬剤(ジノテフラン等)、有機リン系殺虫剤(ホキシム、テトラクロクピンホス、フェニトロチオン、プロベタンホス等)、ピラゾール系薬剤(フィブロニル等)、クロルフェノール系薬剤(4−プロモ−2,5−ジクロルフェノール(BDCP)等)、フェニルピロール系(クロルフェナビル等)、ヒバ油、ウコン、カプリン酸、ヤシ油、パーム油等が挙げられる。
【0043】
樹脂製バインダとしては、合成ゴム乳液に石油樹脂系粘着材、界面活性剤及び防蟻薬剤を混入したラテックスタイプ、合成ゴム乳液に水、増粘剤及び防蟻薬剤を混入した水性エマルジョンタイプ、2液硬化型弾性ポリウレタン接着剤、潤滑油に増ちょう剤及び防蟻薬剤を混入したオイルタイプ、瀝青乳剤に防蟻薬剤を混入したアスファルト系等の液状体のものが用いられる。
【0044】
また、防蟻用薬液の粘度は、当該薬液の注入および浸透の容易性を考慮すると低いことが好ましく、具体的には、30mPa・s以下(好ましくは、10mPa・s以下)の粘度であるのが好ましい。
【0045】
(防蟻断熱床下構造の施工方法)
つぎに、本実施形態の防蟻断熱構造の施工方法について説明する。
【0046】
まず、境界部断熱体135を配設する前の段階として、
図1〜2に示されるように、基礎100の内側面102aと土間コンクリート120の上面120aとの境界部分141から第1の間隔S1(
図2参照)をあけて、基礎側断熱パネル131を基礎100の内側面102aに貼り付ける。ついで、防蟻用コーキング剤136を境界部分141に塗布する。
【0047】
ついで、コーキング剤が硬化してから境界部分141から基礎100の内側面102aに沿う第1の間隔S1の範囲内で、かつ、当該境界部分141から土間コンクリート120の上面120aに沿う第2の間隔S2の範囲内において、境界部断熱体135を境界部分141に配設する。なお、新規に境界部断熱体135を設置する場合には、あらかじめ防蟻用薬液を含浸させた状態で境界部断熱体135を設置してもよい。
【0048】
その後、境界部分141から第2の間隔S2(
図2参照)をあけて土間側断熱パネル132を土間コンクリート120の上面120aに取り付ける。具体的には、
図1に示されるように、土間側断熱パネル132の第2部分132bを境界部断熱体135から離した位置に土間コンクリート120の上面120aに貼り付け、その後、取り外し可能な第1部分132aを第2部分132bと第2部分132bとの間に嵌め込む。このとき、第1部分132aが第2部分132bと第2部分132bとの間にぴったり嵌め込むように、第1部分132aの長さを微調整しながら嵌め込み作業を行えばよい。
【0049】
以上のようにして、防蟻処理が施された防蟻断熱床下構造の施工が完了する。
【0050】
(防蟻方法)
つぎに、上記のように施工された防蟻断熱床下構造が施工後に長期間経過(例えば、5〜10年程度経過)して、防蟻用コーキング剤136または境界部断熱体135に含浸された防蟻用薬液の薬効が低下したときに、以下のような防蟻方法によって防蟻用薬液を境界部分141へ充填する。
【0051】
具体的には、まず、上記のように、あらかじめ、境界部断熱体135を、境界部断熱体135の一部が床下側に露出するように、境界部分141に配設しておく(境界部断熱体配設工程)。
【0052】
その状態で、作業者は、床下空間Uにスプレーノズルを挿入し、境界部断熱体135に向けて、
図2に示されるように防蟻用薬液Nを当該境界部断熱体135から離間した場所から吹き付けまたは散布する(防蟻用薬液付与工程)。このとき、離れた場所から境界部断熱体135に付与された薬液Nは境界部断熱体135の内部を浸透して境界部分141に到達することが可能である。これにより、床下が狭い場所でも境界部分141に容易かつ確実に薬液を付与することが可能になる。
【0053】
また、薬液Nを境界部断熱体135に注入する際には、境界部断熱体135に隣接する土間側断熱パネル132は、薬液Nを境界部断熱体135の内部にせき止める働きをする。そのため、薬液Nが土間コンクリート120の上面120aに沿って境界部分141から離れた位置へ流れることを防止することができる。
【0054】
なお、防蟻用薬液の付与は、スプレーによる吹き付けや散布だけでなく、長尺のディスペンサなどで境界部断熱体135に注入してもよい。
【0055】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の防蟻断熱床下構造では、基礎100の内側面102aと土間コンクリート120との境界部分141に設置した境界部断熱体135は、防蟻用薬液が浸透可能な繊維性材料からなり、薬液流通部材として機能するものであり、境界部分141と基礎側断熱パネル131との第1の間隔S1および境界部分141と土間側断熱パネル132との第2の間隔S2によって形成された隙間を通して、床下側に露出している。この境界部断熱体135の露出している部分に対して、境界部断熱体135から離れた位置からスプレーや長尺のディスペンサなどを用いて防蟻用薬液を容易に付与することが可能である。境界部断熱体135に付与された薬液は境界部断熱体135の内部を浸透して境界部分141に到達することが可能である。これにより、床下が狭い場所でも境界部分141に容易かつ確実に薬液を付与することが可能になる。
【0056】
(2)
本実施形態の防蟻断熱床下構造では、境界部断熱体135には防蟻用薬液が含浸されているので、境界部断熱体135に含浸された防蟻用薬液が当該境界部断熱体135の内部を浸透して境界部分141に容易かつ確実に付与することが可能である。また、境界部断熱体135に含浸された薬液は境界部断熱体135の内部を通って徐々に境界部分141に到達するので、薬液が乾燥しにくく、薬効を長持ちさせることができる。
【0057】
(3)
本実施形態の防蟻断熱床下構造では、境界部断熱体135として、グラスウールおよびロックウールのうちの少なくとも1種を用いているので、薬液の浸透性が良く、かつ、断熱性能を保持することが可能である。
【0058】
(4)
本実施形態の防蟻断熱床下構造では、境界部断熱体135を構成する繊維の少なくとも一部(より好ましくは全部)は、略水平方向(すなわち、土間コンクリート120の上面120aと平行に延びる方向)へ向くように配列されているので、薬液が境界部断熱体135の内部の繊維に沿って水平方向に円滑に流れて基礎100の内側面102aに達し、さらに基礎100の内側面102aに沿って境界部分141に円滑に流れることが可能である。
【0059】
(5)
また、本実施形態の防蟻断熱床下構造では、土間側断熱パネル132aを取り外すことが可能であるので、土間コンクリート120の点検を容易に行うことができる。さらに、当該土間側断熱パネル132aを取り外して、境界部断熱体135を大きく露出させることができるので、薬液を境界部断熱体135に含浸・浸透させる効率を向上させることが可能である。
【0060】
(6)
本実施形態の防蟻方法では、基礎100の内側面102aと土間コンクリート120との境界部分141において、境界部分141と基礎側断熱パネル131との第1の間隔S1および境界部分141と土間側断熱パネル132との第2の間隔S2の範囲内に、防蟻用薬液を浸透することが可能な繊維性材料からなる境界部断熱体135を床下側に露出するように配設し、この境界部断熱体135の露出している部分に対して、境界部断熱体135から離れた位置からスプレーや長尺のディスペンサなどを用いて防蟻用薬液を容易に付与することが可能である。離れた場所から境界部断熱体135に付与された薬液は境界部断熱体135の内部を浸透して境界部分141に到達することが可能である。これにより、床下が狭い場所でも境界部分141に容易かつ確実に薬液を付与することが可能になる。
【0061】
(他の実施形態)
(A)
上記実施形態では、矩形断面の境界部断熱体135の内側角部135aが床下側(床下空間U)に露出している例を挙げて説明したが、境界部断熱体135の床下側に露出している部分の形状を他の形状に変えてもよい。例えば、本発明の他の実施形態として、
図4に示されるように、境界部断熱体135における床下側に露出する部分には、斜め上方を向く斜面161が形成されていてもよい。この構成では、作業者が境界部分141に設置された境界部断熱体135に防蟻用薬液Nをスプレーによる吹き付けなどによって付与する際に、斜め上方を向く斜面161に向けて薬液Nを付与しやすい。また、作業者は、斜面161に薬液Nが当たっているか否か視認しやすくなる。
【0062】
(B)
さらに本発明のさらに他の実施形態として、
図5に示されるように、境界部断熱体135の内部には、防蟻用薬液Nを境界部分141へ案内するスリットからなる流路162が形成されていてもよい。この構成では、薬液Nが境界部断熱体135の内部に形成された流路162を通って境界部分141に案内されることによって、薬液を境界部分141に円滑に供給できる。
【0063】
境界部断熱体135の内部に形成される流路162は、スリットの他に、細孔からなるトンネルや、複数の空孔が連通することにより形成された非直線的な流路でもよい。
【0064】
(C)
上記実施形態では、境界部断熱体135としてグラスウールおよびロックウールのうちの少なくとも1種を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、防蟻用薬液が浸透可能な繊維性材料からなる薬液流通部材であれば種々の繊維性材料および形状を適宜選択することが可能である。
【0065】
(D)
上記実施形態では、土間側断熱パネル132として、
図1に示されるように、第1部分132aと第2部分132bとに分割されている例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2部分132bは無くても良い。