(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0005】
しかし、このような技術開発は、農業機械の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用の芝刈機の分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状である。したがって、電動による乗用ローンモアを開発することは重要な意義を持っている。
【0006】
電動乗用ローンモアを実現させるためには、車体重量の軽量化という課題がある。2つのモアブレードを回転させるためにそれぞれモアモータを使用し、さらに、走行のために両後輪にそれぞれ走行モータを使用する。これら2つのモアモータと2つの走行モータに電力を供給するバッテリーは、72V程度の電圧と、一日中芝刈り作業を継続して行える程度の蓄電量が必要であり、これを実現するためは、リチウムイオン電池を適用したとしても、非常に重量の重いバッテリーとなってしまう。したがって、4つのモータとバッテリーを支持するための車体フレームは高い剛性が求められる。
【0007】
一方、電動ローンモアのような作業車両の場合、不整地を走行することが多く、走行中に前後輪の4輪がそれぞれ異なる高さの走行面となる場合がある。このようなとき、車体フレームにねじれ力が生じる。高剛性の車体フレームを適用すると、このようなねじれ力に対する抗力が強いため、前後輪のいずれかが走行面から浮き上がってしまい、芝刈り高さが適切に保持できない恐れがある。そこでこの発明は、適切な剛性を保持しながら走行面に追随することが可能な車体フレームを有する作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため請求項1に記載の発明は、
一対の前輪と、
一対の後輪と、
前記一対の前輪の間および、前記一対の後輪の間に備える車体フレームと、
作業をするための作業部とを備える作業車両において、
前記車体フレームの前端の両側に連結された一対のフロント連結部と、
該一対のフロント連結部と固設され、前記一対の前輪を支持するためのフロントフレームと、
運転席を載置するために前記車体フレームの中央部および後部に取り付けられた運転席支持フレームとを備え、
前記車体フレームが、
前記フロント連結部および前記フロントフレームによって補強される前補強部と、
前記運転席支持フレームによって補強される後補強部と、
前記前補強部と前記後補強部との間に配置された非補強部とで構成され、
前記車体フレームが、
断面視が門型形状で左右に一対備えられた側部と、
該一対の側部の間に連続して一体に形成される板状の中央部とで構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
一対の前輪と、
一対の後輪と、
前記一対の前輪の間および、前記一対の後輪の間に備える車体フレームと、
作業をするための作業部とを備える作業車両において、
前記車体フレームの前端の両側に連結された一対のフロント連結部と、
該一対のフロント連結部と固設され、前記一対の前輪を支持するためのフロントフレームと、
運転席を載置するために前記車体フレームの中央部および後部に取り付けられた運転席支持フレームとを備え、
前記車体フレームが、
前記フロント連結部および前記フロントフレームによって補強される前補強部と、
前記運転席支持フレームによって補強される後補強部と、
前記前補強部と前記後補強部との間に配置された非補強部とで構成され、
駆動輪を備え、
前記作業部と前記駆動輪とがモータによって駆動する作業車両であって、
前記運転席支持フレームが前記車体フレームを底面とする箱状に形成され、
前記運転席支持フレーム内に前記モータを制御するためのモータドライバを備え、
該モータドライバが自らが発した熱を放出するための放熱部を備え、
該放熱部を下方に突出させるための切り欠きを前記車体フレームに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1
および請求項2に記載の発明によれば、一対の前輪と、一対の後輪と、前記一対の前輪の間および、前記一対の後輪の間に備える車体フレームと、作業をするための作業部とを備える作業車両において、前記車体フレームの前端の両側に連結された一対のフロント連結部と、該一対のフロント連結部と固設され、前記一対の前輪を支持するためのフロントフレームと、運転席を載置するために前記車体フレームの中央部および後部に取り付けられた運転席支持フレームとを備え、前記車体フレームが、前記フロント連結部および前記フロントフレームによって補強される前補強部と、前記運転席支持フレームによって補強される後補強部と、前記前補強部と前記後補強部との間に配置された非補強部とで構成される。
【0012】
これにより、不整地を走行して前後輪の4輪がそれぞれ異なる高さの走行面となる場合、車体フレームにかかるねじれ力は非補強部が歪むことで吸収することができる。これによって、すべての前後輪が走行面から浮き上がることを防止することができるとともに、前補強部と後補強部によって車体フレームを適切な剛性とすることができる。したがって、適切な剛性を保持しながら走行面に追随することが可能な車体フレームを有する作業車両を提供することができる。また、たとえば、作業部がモアブレードであるローンモアの場合、全ての前後輪が走行面から浮き上がることなく追随することで、どのような走行面であっても芝刈り高さを適切に保持することができる。
【0013】
また、請求項1に記載の発明によれば、前記車体フレームが、断面視が門型形状で左右に一対備えられた側部と、該一対の側部の間に連続して一体に形成される板状の中央部とで構成されるので、部品点数を低減させることができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、駆動輪を備え、前記作業部と前記駆動輪とがモータによって駆動する作業車両であって、前記運転席支持フレームが前記車体フレームを底面とする箱状に形成され、前記運転席支持フレーム内に前記モータを制御するためのモータドライバを備え、該モータドライバが自らが発した熱を放出するための放熱部を備え、該放熱部を下方に突出させるための切り欠きを前記車体フレームに備える。
【0015】
これによって、モータドライバからの発熱を運転席支持フレーム外に放出でき、電装品を熱による破損や故障から保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは作業車両の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ、前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ、作業車両の「上下」方向を意味するものとする。
図1には、この発明の作業車両の一例としての、電動ローンモア10の平面図を、
図2には、その側面図を示す。電動ローンモア(作業車両)10は、シャーシ(車体フレーム)11と、該シャーシ11の前側下方に一対の前タイヤ12、後側下方に一対の後タイヤ(後輪、駆動輪)13などを備える。また、前タイヤ12と後タイヤ13との間には、モアデッキ14を備える。モアデッキ14の後部の側面は刈った芝を後方に排出するために開放されている。モアデッキ14の内側には、不図示のモアブレード(作業部)を、左右に2つ並べて備える。このモアブレードの回転中心には、それぞれモアモータ(モータ)15,15を取り付ける(モアモータ15によってモアブレードを回転させて芝を刈る)。なお、右側のモアブレードの回転中心は、左側のそれと比べて、直進方向やや後方となる。
【0018】
シャーシ11の上には、本体カバー20を被せる。本体カバー20は、シャーシ11全体を覆うものである。後タイヤ13のやや前方で本体カバー20上には、運転席21を設ける。運転席21の左右側方には、電動ローンモア10の走行操作をするための走行操作レバー22,22をそれぞれ備える。右の走行操作レバー22のさらに外側には、モアデッキ14の地面からの高さを調節するためのモアデッキ調節ペダル24を備える。
【0019】
なお、電動ローンモア10は、草刈りに加えて、走行も電動モータによってまかなうものであり、一対の後タイヤ13,13の内側にそれぞれ走行モータ(モータ)16を備え、この走行モータ16によって後タイヤ13,13をそれぞれ単独で駆動させる(なお、後タイヤ13,13のホイール内にそれぞれホイールモータを備えてもよい)。
【0020】
前述の2つのモアモータ15および2つの走行モータ16の電力は、バッテリー25から供給される。バッテリー25は、機体の後部に備える。詳しくは、バッテリー25は、後タイヤ13,13のアクスル間で、かつ、シャーシ11の後端に着脱自在に配置される。このバッテリー25には4つの従動式車輪を備え、バッテリー25を取り外して作業者が押したり引いたりして移動させることができるように構成されている。なお、バッテリー25にはカバーを備え、カバーの蓋を開けると給電口が露出する。また、カバー内には、バッテリー25の微小な電圧の変動を補正するためのバッテリーコントローラを備える。
【0021】
運転席21の下方には、不図示の制御部を備える。制御部は電装品類で構成され、モータドライバなどを備える。モータドライバは、電動ローンモア10の走行モータ16を制御し、走行操作レバー22の傾動量に応じて走行モータ16の回転方向および回転速度を制御する。また、別のモータドライバは、モアモータ15の回転制御をする。これらのモータドライバは、自らが発した熱を放出するための放熱板(放熱部)を下部に備える。放熱板はシャーシ11の下方に露出するように配置される(後述)。なお、モアモータ15の回転は、走行モータ16の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0022】
前タイヤ12,12はそれぞれ、シャフトを介して前タイヤブラケット17に回転自在に取り付けられている(すなわち、前タイヤ12は前タイヤブラケット17に対して従動回転する)。前タイヤブラケット17は門型形状に形成され、天面部の中央には貫通孔を設ける。貫通孔にはボルトを上向きに貫通させ、円筒状の前タイヤポスト18内にて固定する。これによって、前タイヤブラケット17は、前タイヤポスト18に対して回転自在となる。
【0023】
前タイヤポスト18の側面には、フロントフレーム19の一端を固定する。フロントフレーム19は円弧状に形成され、後述するようにシャーシ11に固設される。
【0024】
走行操作レバー22は傾動可能に設けられ、運転者がこれを前に倒すと走行モータ16が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー22が後に倒されると走行モータ16は後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー22の傾動度合いによって走行モータ16の回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー22を大きく前(後)に倒すと、走行モータ16が前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー22を小さく前(後)に倒すと、走行モータ16が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転者は、走行操作レバー22,22を前後に適宜操作することで、直後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0025】
そして、運転席21の右側のフェンダー20FRには、操作系のボタンなどを備え、例えば、モアデッキ14内の2つのモアブレードの回転をON、OFFする草刈スイッチや、モアデッキ14の高さ調節ボタンなどを設ける。草刈スイッチはリミット型のスイッチで、運転者が指で押下するとONとなり、再度押下するとOFFとなる。運転席21の左側のフェンダー20FLには、カップフォルダや小物を置くためのトレイなどを備える。なお、符号24は、モアデッキ14を昇降するためのデッキ昇降ペダルである。デッキ昇降ペダル24を右足で操作しながら、上述の高さ調節ボタンを押すことで、モアデッキ14の高さを調節することができる。
【0026】
図3にはこの例の主要部の斜視図を示す。シャーシ11上には運転席21を載置するための運転席支持フレーム40を取り付ける。この運転席支持フレーム40内には、制御部などの電装品類を収納する。シャーシ11の後端付近には、走行モータ16,16を取り付け、走行モータ16にはミッションケースを介してそれぞれ後タイヤ13を取り付ける。
【0027】
シャーシ11の左右前端にはボルトBT1によってブラケット(フロント連結部)31,31を固設する。ブラケット31の先端はフロントフレーム19と溶接などで連結される。
【0028】
ブラケット31は
図4(a),(b)に示すように、金属板を加工して形成される。外側の側面31Sには、貫通孔31Hを3箇所形成する。この貫通孔31Hには、ボルトBT1を通してシャーシ11に固定する。また、ブラケット31の前部には当接部31Tを設け、当接部31Tをフロントフレーム19の上面19Uに載せるように配置して、左右それぞれのブラケット31,31をフロントフレーム19に溶接などで固定する。
【0029】
シャーシ11は金属板を加工して形成され、
図5に示すように、両側部11S,11Sとその間に設けられた中央部11Mとを一体に形成してなる。中央部11Mの後部には切り欠き11Cを形成する。この切り欠き11Cは、モータドライバに備える放熱板(放熱部)を下方に向けて突出させるためのものである。それぞれの側部11Sの上面には、3つの貫通孔11H1と、2つの貫通孔11H2を設ける。また、それぞれの側部11Sの外側面には3つの貫通孔11H3を設ける。貫通孔11H3は、前述のブラケット31の貫通孔31Hと合わせてボルトBT1で固定するためのものである。
【0030】
側部11Sはその断面が略門型状に形成されている。このため、シャーシ11の側部の構造を軽量化することができる。また、側部11Sの中空部分に沿ってハーネスなどを配置することができる。
【0031】
運転席支持フレーム40は、
図6に示すように、一対の側部41,41、前部42、天部43で構成され、側部41と前部42とはボルトBT5にて連結され、側部41と天部43とはボルトBT4にて連結されている。
図7(a)に示すように、側部41は金属板を加工して形成され、本体部41M、取付部41A,41B,41Cからなる。本体部41Mの前側には貫通孔41MHを2つ形成する。また、取付部41Aには2つの貫通孔41AHを、取付部41Bには2つの貫通孔41BHを、取付部41Cの前側には2つの貫通孔41CH1を、取付部41Cの後側には3つの貫通孔41CH2を形成する。
【0032】
図7(b)に示すように、前部42は金属板を加工して形成され、本体部42M、取付部42A、42B,42B,42Cからなる。取付部42Aの両端にはそれぞれ1つずつの貫通孔42AHが形成されている。取付部42B、42Bにはそれぞれ2つの貫通孔42BHが形成されている。取付部42Cの両端にはそれぞれ2つずつの貫通孔42CHが形成されている。
【0033】
図7(c)に示すように、天部43は金属板を加工して形成され、本体部43A、段部43B、後部43Cからなる。本体部43Aの両端にはそれぞれ貫通孔43AHが2つずつ形成されている。後部43Cには左右それぞれに2つの貫通孔43CHが形成されている。
【0034】
左右それぞれの側部41の貫通孔41MHと前部42の貫通孔42BHとを合わせてボルトBT5で両者を連結する。次に、天部43を側部41の取付部41A上に載置し、本体部43Aの貫通孔43AHと取付部41Aの貫通孔41AHを合わせてボルトBT4にて両者を連結する。さらに、後部43Cの貫通孔43CHと取付部41Bの貫通孔41BHとを合わせてボルトBT4にて両者を連結する。このようにして運転席支持フレーム40が形成される。
【0035】
次に、運転席支持フレーム40をシャーシ11の側部11S上に載置し、取付部41Cの貫通孔41CH1と側部11Sの貫通孔11H2とを合わせてボルトにて両者を連結する。また、取付部41Cの貫通孔41CH2と側部11Sの貫通孔11H1とを合わせてボルトにて両者を連結する。このようにして、運転席支持フレーム40をシャーシ11に固定する。
【0036】
このように構成された電動ローンモア10では、
図8に示すように、シャーシ11を3つのゾーンに分けることができる。ゾーンA(前補強部)は、電動ローンモア10の前側部分であり、フロントフレーム19からブラケット31の後端までの間である。この間では、シャーシ11の補強(ねじれ、曲げなどに対する補強)のための部材(補強部材)として、フロントフレーム19、ブラケット31などがシャーシ11と連結されている。一方、ゾーンC(後補強部)は、電動ローンモア10の後側部分であり、運転席支持フレーム40を備える領域である。この部分は、運転席支持フレーム40を構成する複数の部材(
図7にて詳述)がシャーシ11を補強する部材(補強部材)として機能している。なお、ゾーンB(非補強部)にはシャーシ11を補強する部材は配置されていない。したがって、ゾーンBの部分が他の部分(ゾーンAおよびC)のシャーシ11に比べて強度が弱い。
【0037】
このような構成の電動ローンモア10が不整地などを走行する際、左右の前タイヤ12,12、左右の後タイヤ13,13がそれぞれ異なる高さの走行面となるような場合には、例えば、シャーシ11の中心線CLに対して、シャーシ11の前側が矢印a方向にねじり力が働き、シャーシ11の後側が矢印d方向にねじり力が働くような場合、シャーシ11の前後でねじれの方向が異なる。この歪みがゾーンBのシャーシ11がゆがむことで吸収される。これによって、電動ローンモア10の前タイヤ12、後タイヤ13は4輪とも走行面から浮き上がることがない。このため、不整地であっても芝刈り高さを適切に保持することができる。
【0038】
同様に、シャーシ11の中心線CLに対して、シャーシ11の前側が矢印b方向にねじり力が働き、シャーシ11の後側が矢印c方向にねじり力が働くような場合にも、シャーシ11の前後でねじれの方向が異なる。この歪みもゾーンBのシャーシ11がゆがむことで吸収される。
【0039】
なお、この発明の作業車両は、上述の例の電動ローンモアに限定されるものではない。作業車両はエンジン走行で電動の作業部を有するものであってもよいし、エンジン走行でエンジン駆動の作業部を有するものであってもよい。さらに、作業車両は駆動輪を持たず牽引車両であってもよい。
【0040】
この発明は上述の例に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内であらゆる形態を取ることができる。