(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された歯車装置では、インプットギヤを歯車装置のキャリアの内部に配置して、更に2枚の外歯歯車間に配置することで軸方向を規制する構造であるため、複雑な構造になる。
【0007】
しかも、このような歯車装置では、減速比の変更などのためにインプットギヤを交換する場合、歯車装置の機構部分が集中するキャリアを分解してキャリア内部のインプットギヤを交換するなどの作業が必要になる。そのため、煩雑な作業工程が生じることになり、製造コストやメンテナンスのコスト等が増大するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でインプットギヤを軸方向に規制することができ、インプットギヤの交換が容易な歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明の
請求項1に係る歯車装置は、一対の相手側部材間で所定の減速比で回転力を伝達するための歯車装置であって、一方の相手側部材に固定可能な外筒と、複数のクランク軸と、他方の相手側部材に固定可能に構成される一方で、前記外筒内部に回転自在に収容され、前記複数のクランク軸を回転自在に支持し、前記複数のクランク軸の回転に連動して前記外筒に対して相対回転するキャリアと、前記クランク軸において前記キャリアの外側に延設された部位に同軸状に固定された複数のスパーギヤと、前記複数のスパーギヤに噛み合うギヤ部を有し、当該複数のスパーギヤのそれぞれに回転駆動力を伝達するインプットギヤと、前記キャリアの外部に配置された複数のワッシャからなるワッシャ手段とを備えており、前記インプットギヤは、前記キャリアの軸方向の外側の位置において、前記複数のスパーギヤと噛み合うことで径方向に規制され、かつ、前記ワッシャ手段により軸方向に規制され
、前記ワッシャ手段は、前記インプットギヤに固定されたインプットギヤ側ワッシャと、前記クランク軸の軸方向に沿って前記スパーギヤと並ぶように当該クランク軸に固定されたスパーギヤ側ワッシャとからなり、前記インプットギヤ側ワッシャを前記スパーギヤと前記スパーギヤ側ワッシャとで挟むことにより、前記インプットギヤが軸方向に規制されている、ことを特徴としている。
【0010】
かかる構成によれば、インプットギヤが、歯車装置のキャリアの軸方向外側の位置で、複数のスパーギヤと噛み合うことで径方向に規制され、かつ、キャリアの外部に配置された複数のワッシャからなるワッシャ手段により軸方向を規制されているので、簡易な構造でインプットギヤを軸方向に規制することができる。また、キャリアの外側に配置された各ワッシャを外すことにより、インプットギヤの軸方向の規制を解除して、インプットギヤを容易に交換することが可能であり、減速比の変更が容易である。
【0018】
具体的には、インプットギヤに固定されたインプットギヤ側ワッシャを、スパーギヤと当該スパーギヤに並ぶスパーギヤ側ワッシャとで挟むことで、インプットギヤを軸方向に規制するので、簡易な構造でインプットギヤを軸方向に規制することができる。また、インプットギヤ側ワッシャおよびスパーギヤ側ワッシャを外すだけでインプットギヤやスパーギヤを交換でき、減速比の変更が容易である。
【0019】
本発明の請求項2に係る歯車装置は、一対の相手側部材間で所定の減速比で回転力を伝達するための歯車装置であって、一方の相手側部材に固定可能な外筒と、複数のクランク軸と、他方の相手側部材に固定可能に構成される一方で、前記外筒内部に回転自在に収容され、前記複数のクランク軸を回転自在に支持し、前記複数のクランク軸の回転に連動して前記外筒に対して相対回転するキャリアと、前記クランク軸において前記キャリアの外側に延設された部位に同軸状に固定された複数のスパーギヤと、前記複数のスパーギヤに噛み合うギヤ部を有し、当該複数のスパーギヤのそれぞれに回転駆動力を伝達するインプットギヤと、前記キャリアの外部に配置された複数のワッシャからなるワッシャ手段と
を備えており、前記インプットギヤは、前記キャリアの軸方向の外側の位置において、前記複数のスパーギヤと噛み合うことで径方向に規制され、かつ、前記ワッシャ手段により軸方向に規制され、前記ワッシャ手段は、前記インプットギヤに固定されたインプットギヤ側ワッシャと、前記キャリアの軸方向に沿って外側において当該キャリアに固定され、当該キャリアの軸方向に沿って互いに離間して配置された一対のキャリア側ワッシャと
からなり、前記インプットギヤ側ワッシャが前記一対のキャリア側ワッシャで挟まれることにより、前記インプットギヤが軸方向に規制されている
ことを特徴としている。
【0020】
かかる構成によれば、
インプットギヤが、歯車装置のキャリアの軸方向外側の位置で、複数のスパーギヤと噛み合うことで径方向に規制され、かつ、キャリアの外部に配置された複数のワッシャからなるワッシャ手段により軸方向を規制されているので、 簡易な構造でインプットギヤを軸方向に規制することができる。また、キャリアの外側に配置された各ワッシャを外すことにより、インプットギヤの軸方向の規制を解除して、インプットギヤを容易に交換することが可能であり、減速比の変更が容易である。
具体的には、インプットギヤに固定されたインプットギヤ側ワッシャを、スパーギヤと当該スパーギヤに並ぶスパーギヤ側ワッシャとで挟むことで、インプットギヤを軸方向に規制するので、簡易な構造でインプットギヤを軸方向に規制することができる。また、インプットギヤ側ワッシャおよびスパーギヤ側ワッシャを外すだけでインプットギヤやスパーギヤを交換でき、減速比の変更が容易である。
【0021】
また、前記インプットギヤは、前記ギヤ部と同心状に並んで配置され、当該インプットギヤの軸方向に沿って延びるスプライン溝を有する連結部をさらに備えており、前記スプライン溝は、モータの回転駆動力を伝達する軸に径方向に規制されながら嵌合することが可能な形状を有するのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、インプットギヤのギヤ部と同心状に並んで配置された連結部のスプライン溝がモータの回転駆動力を伝達する軸に径方向に規制されながら嵌合することが可能であるので、モータからの駆動を歯車装置に伝達しやすく、しかも、インプットギヤを軸に取り付けやすい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構造でインプットギヤを軸方向に規制することができる。また、ワッシャを外すだけでインプットギヤを容易に交換することができ、減速比の変更が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
本実施形態に係る歯車装置は、例えばロボットの旋回胴や腕関節等の旋回部または各種工作機械の旋回部に減速機として適用される歯車装置である。以下の本実施形態の説明では、ロボットのアームなどの旋回体に歯車装置を適用した例について説明する。
【0027】
(第1実施形態)
第1実施形態に係わる歯車装置1は、
図1に示すように、ロボットの肩関節の部分において、旋回体50とベース52との間で所定の減速比で回転力を伝達する装置である。歯車装置1は、円筒状の第1ドライブシャフトDS1を介して伝達されたモータの回転駆動力を減速させることにより、旋回体50をベース52に対して相対的に回転駆動させる。また、本実施形態では、ロボットの肩関節よりも先の部分(例えば、手や腕などの部分)の回転駆動のための第2ドライブシャフトDS2および第3ドライブシャフトDS3が、第1ドライブシャフトDS1の内部に当該第1ドライブシャフトDS1およびキャリア4と同軸状に配置され、かつ、歯車装置1の中央部分を貫通している。
【0028】
本実施形態の歯車装置1は、
図1〜4に示されるように、外筒2と、内歯ピン3と、キャリア4と、主軸受6と、複数のクランク軸20と、クランク軸受22と、揺動歯車24と、インプットギヤ16と、複数のクランク軸20にそれぞれ固定された複数のスパーギヤ18と、各スパーギヤ18の両側に設けられたワッシャ41、42からなるワッシャ手段とを備えている。歯車装置1の機構部分(すなわち、外筒2から内側の部分)は、旋回体50、ベース52および外筒2が合体されることにより形成された外部から閉鎖された空間に隔離されており、その空間内部には、潤滑油が封入されている。
【0029】
外筒2は、一方の相手側部材(本実施形態では、ベース52)に固定可能な形状をしており、歯車装置1のケースとして機能する。この外筒2は、略円筒状に形成されている。外筒2は、例えばロボットのベース52にボルトB1によって締結される。外筒2の内面には、多数の内歯ピン3が周方向に等間隔で配設されている。内歯ピン3は、外歯歯車からなる揺動歯車24が噛み合う内歯として機能する。揺動歯車24の歯数は、内歯ピン3の数よりも若干少なくなっている。本実施形態では揺動歯車24を2個(複数)使用している。
【0030】
キャリア4は、他方の相手側部材(本実施形態では旋回体50)に固定可能な形状をしており、例えばロボットの旋回体50に締結され、外筒2に対して相対的に回転可能であり、外筒2と同軸上に配置された状態でその外筒2内に収容されている。本実施形態では、キャリア4は、外筒2に対して同じ軸回りに相対回転する。このキャリア4は、複数のボルトB2によって旋回体50に締結される。キャリア4が外筒2に対して相対回転すると、旋回体50は、ベース52に対して旋回する。
【0031】
なお、本実施形態ではキャリア4を旋回体50に締結して旋回するようにし、外筒2をベース52に固定して不動にしているが、外筒2を旋回体50に締結し、キャリア4をベース52に締結して使用することも勿論可能である。
【0032】
キャリア4は、軸方向に離間して一対に設けられた主軸受6により外筒2に対して相対回転可能に支持されている。そして、キャリア4は、基部32と端板部34とを備えており、それらの間には、外筒2とキャリア4との間における回転力の伝達をする伝達部材である揺動歯車24を収納する収容空間33が形成されている。
【0033】
基部32は、外筒2内においてその外筒2の端部近傍に配置される基板部32aと、その基板部32aから端板部34に向かって軸方向に延びる複数のシャフト部32bとを有する。シャフト部32bは、ボルト5によって端板部34に締結されている。それによって、基部32と端板部34とが一体化されている。また、キャリア4の径方向中央部には、軸方向に貫通する貫通孔4aが設けられている。収容空間33は、貫通孔4aを通してキャリア4の外部に連通している。この貫通孔4aを通して、前述の第2ドライブシャフトDS2および第3ドライブシャフトDS3がキャリア4の中央を貫通している。
【0034】
クランク軸20は、複数(本実施形態では、3本)設けられており、各クランク軸20はキャリア4において貫通孔4aおよびインプットギヤ16の周囲に周方向に等間隔に120度ごとに配置されている。各クランク軸20は、一対のクランク軸受22を介してキャリア4に回転自在に支持されている。
【0035】
クランク軸20は、複数(本実施形態では2つ)の偏心部20aを有している。この複数の偏心部20aは、一対のクランク軸受22の間の位置で軸方向に並ぶように配置されている。各偏心部20aは、それぞれクランク軸20の軸心から所定の偏心量で偏心した円柱状に形成されている。そして、各偏心部20aは、互いに所定角度の位相差を有するようにクランク軸20に形成されている。
【0036】
2個の揺動歯車24は、クランク軸20の各偏心部20aにそれぞれころ軸受28aを介して取り付けられている。揺動歯車24は、外筒2の内径よりも少し小さく形成されており、クランク軸20が回転するときに偏心部20aの偏心回転に連動して外筒2内面の内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0037】
揺動歯車24は、中央部貫通孔24bと、複数の偏心部挿通孔24cと、複数のシャフト部挿通孔24dとを有する。
【0038】
偏心部挿通孔24cは、揺動歯車24において中央部貫通孔24bの周囲に周方向に等間隔で設けられている。各偏心部挿通孔24cには、ころ軸受28aを介装した状態で各クランク軸20の偏心部20aがそれぞれ挿通されている。
【0039】
シャフト部挿通孔24dは、揺動歯車24において中央部貫通孔24bの周囲に周方向に等間隔で設けられている。各シャフト部挿通孔24dは、周方向において偏心部挿通孔24c間の位置にそれぞれ配設されている。各シャフト部挿通孔24dには、キャリア4の各シャフト部32bが遊びを有した状態で挿通されている。
【0040】
各クランク軸20の端部は、キャリア4の軸方向に沿って当該キャリア4から外部に突出している。それぞれのクランク軸20においてキャリア4の外側に延設された端部には、スパーギヤ18が、一対のワッシャ41および42に挟まれた状態で、止め輪43、44によって着脱自在に取り付けられている。
【0041】
止め輪43、44は、
図2に示されるように、クランク軸20の端部の外周面に形成された溝に嵌りこむことによって、スパーギヤ18および一対のワッシャ41、42を当該クランク軸20の軸方向への移動を規制する。止め輪43、44は、C字状の金属製リングなどからなる。
【0042】
各スパーギヤ18は、後述するインプットギヤ16のギヤ部16aとそれぞれ噛み合っている。この各スパーギヤ18は、インプットギヤ16の回転をそのスパーギヤ18が取り付けられたクランク軸20に伝達する。
【0043】
インプットギヤ16は、複数のスパーギヤ18に噛み合い、当該複数のスパーギヤ18のそれぞれに回転駆動力を伝達するギヤである。インプットギヤ16は、複数のスパーギヤ18に噛み合う外歯歯車からなるギヤ部16aと、当該ギヤ部16aと同心上に並んで一体形成された連結部16bとを備えている。連結部16bの外周面には、スプライン溝16cが形成されている。スプライン溝16cは、モータの回転駆動力を伝達する第1ドライブシャフトDS1に径方向に規制されながら嵌合することが可能な形状である。具体的には、スプライン溝16cは、インプットギヤ16の軸方向に沿って互いに平行に延び、円筒状の連結部16bの外周面に等間隔に形成されている。
【0044】
連結部16bが円筒状の第1ドライブシャフトDS1の内部に挿入されたとき、連結部16bの外周側のスプライン溝16cは、第1ドライブシャフトDS1の内周側のスプライン凸部DS1aと嵌合することが可能である。これにより、インプットギヤ16は、第1ドライブシャフトDS1に容易に連結することが可能である。
【0045】
インプットギヤ16の中央には、軸方向に貫通する貫通孔16dが設けられている。その貫通孔16dには、第2ドライブシャフトDS2および第3ドライブシャフトDS3が挿入されている。
【0046】
ワッシャ41、42は、それぞれ貫通孔41a、42aを有する薄い金属円板であり、スパーギヤ18の軸方向において当該スパーギヤ18の両側に分かれて配置されている。ワッシャ41、42とその間に挟まれるインプットギヤ16との間には、若干の遊びが確保されている。ワッシャ41、42の外径は、スパーギヤ18の外径よりも若干大きく、少なくともスパーギヤ18とインプットギヤ16の噛み合い部分45を隠す程度の大きさに設定される。
【0047】
各ワッシャ41、42は、複数のスパーギヤ18それぞれに個別に設けられている。各ワッシャ41、42は、インプットギヤ16のギヤ部16aの一部を含む部分、具体的には、各々のスパーギヤ18とインプットギヤ16との噛み合い部分45およびその周辺部分を、スパーギヤ18の軸方向に沿って当該スパーギヤ18の両側から挟んでいる。
【0048】
上記の構成では、キャリア4の軸方向におけるキャリア4の外側の位置において、インプットギヤ16のギヤ部16aが周方向に等間隔に配置された複数(本実施形態では3個)のスパーギヤ18と噛み合うことにより、インプットギヤ16は、径方向に移動できないように規制されている。
【0049】
それとともに、複数のスパーギヤ18それぞれに個別に設けられたワッシャ41、42がインプットギヤ16のギヤ部16a(具体的には、スパーギヤ18とインプットギヤ16との噛み合い部分45およびその周辺部分)をスパーギヤ18の軸方向に沿って当該スパーギヤ18の両側から挟んでいることにより、インプットギヤ16は、ワッシャ41、42によって軸方向に移動できないように規制される。
【0050】
図1に示されるように、第1ドライブシャフトDS1は、ベース52内部にベアリングR1を介して回転自在に支持されている。また、第1ドライブシャフトDS1の外周面とベース52の内周面との間には、ベース52および歯車装置1内部の潤滑油が外部に漏れないように、シールリングS1が設けられている。
【0051】
また、第2ドライブシャフトDS2は、第1ドライブシャフトDS1内部にベアリングR2を介して回転自在に支持され、第1ドライブシャフトDS1と第2ドライブシャフトDS1との間がシールリングS2によってシールされている。同様に、第3ドライブシャフトDS3は、第2ドライブシャフトDS2内部にベアリングR3を介して回転自在に支持され、第2ドライブシャフトDS2と第3ドライブシャフトDS3との間がシールリングS3によってシールされている。
【0052】
次に、本実施形態による歯車装置1の動作について説明する。
【0053】
インプットギヤ16が第1ドライブシャフトDS1を介してモータからの回転駆動力を受けたとき、当該インプットギヤ16のギヤ部16aを介して各スパーギヤ18に伝達される。これにより、各クランク軸20は、それぞれの軸回りに回転する。
【0054】
そして、各クランク軸20の回転に伴って、そのクランク軸20の偏心部20aが偏心回転する。これにより、揺動歯車24は、偏心部20aの偏心回転に連動して外筒2の内面の内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。揺動歯車24の揺動回転は、各クランク軸20を通じてキャリア4に伝達される。本実施形態では、外筒2はベース52に固定されて不動であるので、それによって、キャリア4および旋回体50は、入力された回転から減速された回転数で外筒2及びベース52に対して相対回転することができる。
【0055】
(第1実施形態の特徴)
(1)
本発明の第1実施形態に係る歯車装置11では、インプットギヤ16が、歯車装置1のキャリア4の軸方向外側の位置で、複数のスパーギヤ18と噛み合うことで径方向に規制され、かつ、キャリア4の外部に配置されたワッシャ41、42からなるワッシャ手段により軸方向を規制されているので、簡易な構造でインプットギヤ16を軸方向に規制することができる。また、キャリア4の外側に配置された各ワッシャ41、42を外すことにより、インプットギヤ16の軸方向の規制を解除して、インプットギヤ16を容易に交換することが可能であり、減速比の変更が容易である。
【0056】
(2)
また、第1実施形態に係る歯車装置11では、ワッシャ41、42がスパーギヤ18の軸方向の両側に分かれて配置されているので、当該ワッシャ41、42によってインプットギヤ16を挟むことが可能であり、インプットギヤ16の軸方向の移動を規制することができる。それにより、簡易な構成でインプットギヤ16の軸方向の移動を規制することができる。しかも、スパーギヤ18とともにワッシャ41、42を容易に取り外すことが可能であり、分解および組み立てが容易である。
【0057】
(3)
さらに、第1実施形態に係る歯車装置11では、複数のワッシャ41、42が複数のスパーギヤ18それぞれに個別に設けられ、各ワッシャ41、42は、インプットギヤ16のギヤ部16aの一部を含む部分、具体的には、各々の前記スパーギヤ18と前記インプットギヤ16との噛み合い部分45およびその周辺部分を、スパーギヤ18の軸方向に沿って当該スパーギヤ18の両側から挟んでいることにより、インプットギヤ16の軸方向の移動を確実に規制することが可能である。これにより、簡易な構成でインプットギヤ16の軸方向の移動を規制することができる。しかも、スパーギヤ18とともにワッシャ41、42を容易に取り外すことが可能であり、分解、組み立てが容易である。とくに、各ワッシャ41、42をスパーギヤ18とともにクランク軸20に着脱できるので、分解および組立作業が容易であるとともに作業工程の増加を抑えることができる。
【0058】
しかも、複数のスパーギヤ18それぞれにワッシャ41、42が個別に設けられているで、クランク軸20の配置やキャリア4の寸法などが異なる歯車装置1にも、ワッシャ41、42をそのまま適用することが可能であるので、汎用性が高い。
【0059】
(4)
また、本実施形態では、インプットギヤ16は、ギヤ部16aと、当該ギヤ部16aと同心上に並んで配置され、当該インプットギヤ16の軸方向に沿って延びるスプライン溝16cを有する連結部16bとを備えており、スプライン溝16cは、モータの回転駆動力を伝達する第1ドライブシャフトDS1に径方向に規制されながら嵌合することが可能な形状を有している。かかる構成によって、インプットギヤ16の連結部16bに形成されたスプライン溝16cがモータの回転駆動力を伝達する軸に径方向に規制されながら嵌合することが可能であるので、モータからの駆動を歯車装置1に伝達しやすく、しかも、インプットギヤ16を軸に取り付けやすくなっている。
【0060】
(第1実施形態の変形例)
なお、第1実施形態の歯車装置1では、貫通孔16dが形成された中空形状のインプットギヤ16が用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、インプットギヤ16は中実のものでもよい。
【0061】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、ワッシャ41、42が複数のスパーギヤ18のそれぞれの両側に個別に取り付けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図5〜6に示されるように、大型のワッシャを141、142を用いて、インプットギヤ16の軸方向の移動を規制するようにしてもよい。
【0062】
すなわち、
図5〜7に示される第2実施形態に係る歯車装置101は、一対の大型のワッシャ141、142からなるワッシャ手段を備えている。これらのワッシャ141、142は、複数のスパーギヤ18の軸方向の両側に分かれて位置するように固定され、インプットギヤのギヤ部16aおよび複数のスパーギヤ18を、スパーギヤ18の軸方向に沿って当該スパーギヤ18の両側から一括して挟んでいる。
【0063】
具体的には、ワッシャ141、142は、それぞれ複数のクランク軸20が挿入可能な貫通孔141a、142aが形成されている。また、ワッシャ141の中央には、インプットギヤ16の連結部16bが挿入される貫通孔141bが形成されている。本実施形態では、さらに、ワッシャ142の中央にも貫通孔142bが形成されている。貫通孔142bの内径は、インプットギヤ16のギヤ部16aの外径よりも小さいので、ギヤ部16aはワッシャ141とワッシャ142との間に挟持される。
【0064】
ワッシャ141、142およびスパーギヤ18は、止め輪143、144によって軸方向の両側から挟まれて軸方向に規制された状態で、クランク軸20に固定されている。
【0065】
ワッシャ141、142の外径は、キャリア4の外径と同じか、若干小さい。
【0066】
その他の構成については、本実施形態に係る歯車装置101は、上記第1実施形態に係る歯車装置1(
図1〜4参照)と共通している。
【0067】
上記のような構成では、一対の大型のワッシャ141、142が複数のスパーギヤ18の軸方向の両側に分かれて位置するように固定され、インプットギヤ16のギヤ部16aおよび複数のスパーギヤ18を一括して挟んでいることにより、複数のスパーギヤ18の各噛み合い部分145とともにインプットギヤ16のギヤ部16aの全周においてインプットギヤ16の軸方向の移動を確実に規制することが可能である。これにより、簡易な構成でインプットギヤ16の軸方向の移動を規制することができ、かつ、スパーギヤ18とともにワッシャ141、142を容易に取り外すことが可能であり、分解、組み立てが容易である。とくに、一対の大きなワッシャ141、142をスパーギヤ18の両側に取り付ければよいので、作業工程の増加を抑えることができる。
【0068】
(第3実施形態)
上記第1〜2実施形態では、複数のスパーギヤ18の両側にワッシャ41、42または141、142が取り付けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図7〜8に示されるように、インプットギヤ16側に取り付けられたワッシャ241と、スパーギヤ18の片側に取り付けられたワッシャ242とによって、インプットギヤ16の軸方向の移動を規制するようにしてもよい。
【0069】
すなわち、
図7〜8に示される第3実施形態に係る歯車装置201は、インプットギヤ16に固定されたインプットギヤ側のワッシャ241と、クランク軸20の軸方向に沿ってスパーギヤ18と並ぶように当該クランク軸20に固定されたスパーギヤ側のワッシャ242とからなるワッシャ手段を備えている。
【0070】
インプットギヤ側のワッシャ241の中央には、貫通孔241aが形成されている。貫通孔241aには、インプットギヤ16のギヤ部16aから連結部16bと反対側に突出した円筒状の突出部16eが挿入される。ワッシャ241の外径は、インプットギヤ16のギヤ部16aの外径よりも大きいので、ワッシャ241の外周部分は、インプットギヤ16のギヤ部16aの外周面から外方へ突出している。ワッシャ241は、その貫通孔241aにインプットギヤ16の突出部16eが挿入され、止め輪243によって軸方向に規制された状態でインプットギヤ16のギヤ部16aに当接して取り付けられる。
【0071】
スパーギヤ側のワッシャ242は、貫通孔242aを有する薄い金属円板であり、スパーギヤ18の軸方向に沿って当該スパーギヤ18の片側(本実施形態ではキャリア4に近い側)に並ぶようにクランク軸20に固定されている。具体的には、スパーギヤ18およびワッシャ242は、それらの間にインプットギヤ側のワッシャ241の外周部分が挟まった状態で、クランク軸20の端部に取り付けられ、止め輪244および245によって軸方向の移動が規制されている。ワッシャ242とスパーギヤ18との隙間は、インプットギヤ側のワッシャ241の回転を確保するために、ワッシャ241の厚さよりも広い間隔を有している。ワッシャ242の外径は、スパーギヤ18の外径よりも若干大きく、少なくともスパーギヤ18とインプットギヤ16の噛み合い部分に重なる程度の大きさに設定される。
【0072】
この歯車装置201では、インプットギヤ側ワッシャ241をスパーギヤ18とスパーギヤ側のワッシャ242とで挟むことにより、インプットギヤ16を軸方向に規制することが可能である。
【0073】
その他の構成については、本実施形態に係る歯車装置201は、上記第1実施形態に係る歯車装置1(
図1〜4参照)と共通している。
【0074】
上記のような構成では、インプットギヤ16に固定されたインプットギヤ側のワッシャ241を、スパーギヤ18と当該スパーギヤ18に並ぶスパーギヤ側のワッシャ242とで挟むことで、インプットギヤ16を軸方向に規制するので、簡易な構造でインプットギヤ16を軸方向に規制することができる。また、インプットギヤ側のワッシャ241およびスパーギヤ側のワッシャ242を外すだけでインプットギヤ16やスパーギヤ18を交換でき、減速比の変更が容易である。また、スパーギヤ18と当該スパーギヤ18に並ぶスパーギヤ側のワッシャ242との間のクリアランスは、インプットギヤ16に固定されたインプットギヤ側ワッシャ241を挟むことによって確保される。
【0075】
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、
図7〜8に示されるインプットギヤ側のワッシャ241をスパーギヤ18とスパーギヤ側のワッシャ242とによって挟むことにより、インプットギヤ16の軸方向の移動を規制しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、インプットギヤ側のワッシャをキャリア4に固定された一対のワッシャで挟むようにしてもよい。
【0076】
すなわち、
図9〜11に示される第4実施形態に係る歯車装置301は、インプットギヤ16に固定されたインプットギヤ側のワッシャ341と、一対のキャリア側のワッシャ342、343とからなるワッシャ手段を備えている。キャリア側のワッシャ342、343は、キャリア4の軸方向に沿って外側において当該キャリア4に固定され、当該キャリア4の軸方向に沿って互いに離間して配置されている。
【0077】
インプットギヤ側のワッシャ341の中央には、貫通孔341aが形成されている。貫通孔341aには、インプットギヤ16のギヤ部16aから連結部16bと反対側に突出した円筒状の突出部16eが挿入される。ワッシャ341の外径は、インプットギヤ16のギヤ部16aの外径よりも大きいので、ワッシャ341の外周部分は、インプットギヤ16のギヤ部16aの外周面から外方へ突出している。ワッシャ341は、その貫通孔341aにインプットギヤ16の突出部16eが挿入され、止め輪243によって軸方向に規制された状態でインプットギヤ16のギヤ部16aに当接して取り付けられる。
【0078】
キャリア側のワッシャ342、343は、貫通孔342a、343aを有する薄い金属円板またはリング状の部材である。ワッシャ342、343は、それらの間の間隔をあけるためのリング状のカラー345が挟まった状態で、ネジ344によってキャリア4の端板部34の表面において、キャリア4の貫通孔4aの周囲に取り付けられている。キャリア側の一対のワッシャ342、343の間には、インプットギヤ側のワッシャ341が若干の遊びをもたせた状態で配置され、インプットギヤ16およびワッシャ341の軸方向の移動が規制されている。
【0079】
この歯車装置301では、各スパーギヤ18は、一対の止め輪346、347によって各クランク軸20に固定されている。
【0080】
その他の構成については、本実施形態に係る歯車装置301は、上記第1実施形態に係る歯車装置1(
図1〜4参照)と共通している。
【0081】
上記のような構成では、インプットギヤ16に固定されたインプットギヤ側ワッシャ341を、一対のキャリア側ワッシャ342、343で挟み込むようにしながらキャリア4に固定することで、インプットギヤ16を軸方向に規制するので、簡易な構造でインプットギヤ16を軸方向に規制することができる。また、インプットギヤ側ワッシャ341および一対のキャリア側ワッシャ342、343を外すだけでインプットギヤ16を交換でき、減速比の変更が容易である。とくに、一対のキャリア側ワッシャ342、343は、キャリア4に固定されるので、それらの間のクリアランス調整が容易であり、インプットギヤ16の取り付けの余裕度の調整を正確に行うことができる。クリアランスの調整は、厚さの異なるカラー345に交換することによって容易に行うことが可能である。
【0082】
なお、本発明は、前記第1〜第4実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、第4実施形態では、インプットギヤ16に固定されたインプットギヤ側ワッシャ341を、一対のキャリア側ワッシャ342、343で挟み込むようにしながらキャリア4に固定していたが、インプットギヤ側ワッシャ341を、キャリア側ワッシャ342とキャリア4(端板部34)の端面とによって挟み込むことで、キャリア4に固定してもよい。
【0083】
また、キャリア4がベース52に締結されるとともに、外筒2が旋回体50に固定される構成としてもよい。また、ドライブシャフトDS1〜DS3がキャリア4を貫通していない構成であってもよい。