特許第5762942号(P5762942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイガースポリマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000003
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000004
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000005
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000006
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000007
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000008
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000009
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000010
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000011
  • 特許5762942-電池冷却構造 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5762942
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】電池冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6566 20140101AFI20150723BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20150723BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20150723BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20150723BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20150723BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20150723BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20150723BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   H01M10/6566
   H01M10/613
   H01M10/617
   H01M10/625
   H01M10/643
   H01M10/651
   H01M10/6563
   H01M2/10 F
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-282850(P2011-282850)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-134827(P2013-134827A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 克己
【審査官】 土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−185103(JP,A)
【文献】 特開2001−319697(JP,A)
【文献】 特開2001−283940(JP,A)
【文献】 特開2005−038678(JP,A)
【文献】 特開2005−183343(JP,A)
【文献】 特開2006−156211(JP,A)
【文献】 特開2006−278140(JP,A)
【文献】 特開2008−135358(JP,A)
【文献】 特開2008−034297(JP,A)
【文献】 特開2004−087218(JP,A)
【文献】 特開2009−205979(JP,A)
【文献】 特開2010−277875(JP,A)
【文献】 特開2012−028207(JP,A)
【文献】 特開2012−043591(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0093901(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0124620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60−10/667
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の円柱状の電池モジュールが配列されてなる組電池を電池ケース内に収蔵し、
電池ケースに設けられた冷却風導入口から電池ケース内に冷却風を導入し、電池モジュールを冷却風により冷却し、電池ケースに設けられた冷却風導出口から電池ケース外に冷却風を排出する電池冷却構造であって、
電池ケース内部には、配列された電池モジュールの少なくとも一部よりも下流となる領域に、電池ケース内部を下流側と上流側に区画するような流れ制御板が設けられており、
流れ制御板には流れ上流側と下流側とを互いに連通する貫通穴が設けられると共に、
流れ制御板の上流に隣接して位置する電池モジュールの間の空間に達するように、流れ制御板からは、仕切り板が立設されており、
仕切り板と電池モジュールの間の隙間h3が、電池モジュールの直径Dに対し、0.04≦h3/D≦0.10 とされ、
前記貫通穴は、隣接する電池モジュールの中央付近となる位置に設けられたことを特徴とする電池冷却構造。
【請求項2】
前記仕切り板は、流れ制御板の上流側に隣接して配列された電池モジュールの中心軸を結ぶ面に達するもしくは当該面を超えるように設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の電池冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池(特に組電池)の冷却構造に関する。特に電池を冷却風によって冷却する空冷式の電池冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などには、動力源として二次電池を集合させた組電池が用いられている。充電や放電の過程において、電池が過熱したり電池間の温度差が大きくなったりすると、電池の性能が低下したり、電池が損傷することが起こるため、通常、これら組電池を電池ケースに収納して、冷却風を電池ケース内に送り込んで組電池を冷却することが行われる。
【0003】
冷却にあたっては、組電池を構成する複数の電池の温度を極力均一化し、かつ、効率的に電池を冷却することが必要であり、そのために、さまざまな電池冷却構造が提案されるに至っている。組電池が上流側から下流側へと多段配置されていると、上流側電池を冷却した冷却風が暖まってしまい、下流側電池の冷却性が低下しやすいので、特に下流側電池に対する冷却性向上の技術が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、対向する壁の間に電池モジュールを配置し、電池モジュールの間の位置に対向壁を突出した部分を設け、この突出部の高さを風下側で高くした電池冷却構造が開示されている。引用文献1記載の技術によれば、下流側に配置された電池の冷却性が高められ、電池温度の均一化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−66771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1記載の技術は、複雑な形状の対向壁(流れ制御板)を電池モジュールの間を縫うように配置する必要がある。しかも、電池温度の均一化を図るためには、電池モジュールと対向壁の間隔(隙間)を適正に管理する必要があるため、対向壁の製造精度及び取付精度を高めなければならない。
【0007】
すなわち、引用文献1に技術においては対向壁(冷却風ガイド)が略円筒状のガイド面を備えるように構成されるが、ガイド面と電池モジュールの間の隙間が一部で狭くなっていると、その部分の冷却が不十分となり、電池寿命などに悪影響を及ぼすおそれがある。これを防止するには、ガイド面全面にわたって電池との隙間を適正に管理しなければならず、その負担は大きかった。そのため、より簡単な構造で、下流側電池の冷却性を高めうる技術手段が求められるに至った。
【0008】
即ち、本発明の目的は、冷却風流れの下流側に位置する電池モジュールの冷却性を高め、組電池の電池温度の均一化に貢献できるような、簡単な構造の電池冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、冷却性を高めたい電池モジュールの下流側に、仕切り板が立設された特定の構造の流れ制御板を設けると、驚くべきことに、冷却風が当該電池モジュールの表面に沿うように流れることを発見し、この流れによって電池モジュールの冷却性が高められ、電池温度が均一化できることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、複数本の円柱状の電池モジュールが配列されてなる組電池を電池ケース内に収蔵し、電池ケースに設けられた冷却風導入口から電池ケース内に冷却風を導入し、電池モジュールを冷却風により冷却し、電池ケースに設けられた冷却風導出口から電池ケース外に冷却風を排出する電池冷却構造であって、電池ケース内部には、配列された電池モジュールの少なくとも一部よりも下流となる領域に、電池ケース内部を下流側と上流側に区画するような流れ制御板が設けられており、流れ制御板には流れ上流側と下流側とを互いに連通する貫通穴が設けられると共に、流れ制御板の上流に隣接して位置する電池モジュールの間の空間に達するように、流れ制御板からは、仕切り板が立設されており、仕切り板と電池モジュールの間の隙間h3が、電池モジュールの直径Dに対し、0.04≦h3/D≦0.10 とされ、前記貫通穴は、隣接する電池モジュールの中央付近となる位置に設けられたことを特徴とする電池冷却構造である(第1発明)。
【0011】
本発明においては、前記仕切り板は、流れ制御板の上流側に隣接して配列された電池モジュールの中心軸を結ぶ面に達するもしくは当該面を超えるように設けられることが好ましい(第2発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、仕切板を有する特定の流れ制御板を用いることにより、流れ制御板の上流側に隣接して位置する電池モジュール周りの流れが整流される。即ち、電池モジュールが円筒状であり、仕切り板が電池モジュールの間の空間に達し、仕切り板と電池モジュールの間の隙間h3が、電池モジュールの直径Dに対し、0.04≦h3/D≦0.10 とされ、貫通穴は、隣接する電池モジュールの中央付近となる位置に設けられているため、仕切り板と電池モジュールの間の隙間を通過した冷却風流れが、当該電池モジュールに巻きつくように、電池モジュールの表面に沿って流れるようになる。そして、この冷却風流れにより、当該電池モジュールを効果的に冷却でき、組電池を構成する電池の温度を均一化できるという効果が得られる。
【0013】
また、本発明において、第2発明のように、さらに前記仕切り板を、流れ制御板の上流側に隣接して配列された電池モジュールの中心軸を結ぶ面に達するもしくは当該面を超えるように設けた場合には、仕切り板と電池モジュールの間の冷却風流れの整流効果が高められて上記効果がより確実に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の電池冷却構造を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態における流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
図3】本発明の実施形態における電池モジュール周りの流れを示す模式図である。
図4】本発明実施例1における電池モジュール周りの冷却風流れのシミュレーション結果を示す図である。
図5】従来例1における電池モジュール周りの冷却風流れのシミュレーション結果を示す図である。
図6】従来例2における電池モジュール周りの冷却風流れのシミュレーション結果を示す図である。
図7】電池モジュールの表面温度のシミュレーション結果のグラフである。
図8】冷却風の圧力損失のシミュレーション結果のグラフである。
図9】本発明の第2実施形態における電池冷却構造を示す断面図である。
図10】本発明の第2実施形態における電池モジュール周りの流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて、本発明の電池冷却構造の実施形態について、ハイブリッド自動車用の組電池を収容する電池ケースを例にして説明する。図1は本発明の電池冷却構造の実施形態の冷却風の流れ方向に沿った断面図である。また、図2は本実施形態の電池冷却構造にかかる流れ制御板付近を拡大して示す断面図である。
【0016】
箱状の電池ケース1の内部空間には、棒状の電池モジュール2,2が所定の間隔で平行に配置されている。電池モジュール2,2は直列あるいは並列に電気的に接続されて組電池を構成する。本実施形態においては、電池モジュールを構成する電池はニッケル水素バッテリーであり、電池を直列に接続した電池モジュール2は円柱状の棒状の形状となっている。本発明においては特に円柱状の電池モジュールが好ましく使用される。なお、電池モジュールは1つの電池で構成されるものであっても良い。
【0017】
図1では、図の紙面奥行き方向に電池モジュール2、2が延在するように配置されており、21本の電池モジュール(もしくはダミーモジュール)が3列×7本の格子状に配置されている。各電池モジュール2,2は、電池ケース1の内面や隣接する電池モジュールとの間に所定の間隔(隙間)を有し、その隙間に冷却風が流れるように、スペーサや支持部材によって、箱状の電池ケース内部に収容、支持されている。本実施形態においては、電池モジュール付近で全体として図の上側から下側に向かって冷却風が流れるようにされており、その意味で、格子状に配列された3列の電池モジュールを、以下、上流側(あるいは上段)電池モジュール、中流(あるいは中段)電池モジュール、下流側(あるいは下段)電池モジュールと呼ぶことがある。
【0018】
電池ケース1は金属や合成樹脂により成形された中空の箱状の部材であり、電池ケース1には冷却風導入口11と冷却風導出口12が設けられて、電池ケース1の内部空間が冷却風通路となる。そして電池ケース1は、冷却風導入口11や冷却風導出口12がダクトや送風ファンなどの周辺部材と接続されて一連の冷却風通路となって、組電池の冷却に使用される。
【0019】
本実施形態では、冷却風導出口12の下流側に送風ファン(図示せず)が設けられて、図の左上の冷却風導入口11の上流側に接続される冷却風ダクト(図示せず)から、冷却風が電池ケース1の内部に流れ込み、電池モジュール2,2と電池ケース1との間の隙間を通りながら電池を冷却して、冷却風導出口12から図の右下側へと暖められた冷却風が流れ出ていく。
【0020】
本発明においては、電池ケース1の内部に、電池ケースの内部空間を冷却風導入口側と冷却風導出口側とに仕切り、冷却風の流れをさえぎるように、流れ制御板14が設けられている。流れ制御板14は、電池モジュールよりも下流に配置されている。なお、本実施形態においては、電池モジュールの上流側にも上流側流れ制御板13が配置されているが、本発明において、上流側流れ制御板13は必須ではない。上流側流れ制御板を設ける場合には、公知の構造や、図1に模式的に示した構造などが適用できる。
【0021】
本実施形態における下流側流れ制御板14(以下、単に「流れ制御板」と言う)の構造や配置を詳細に説明する。
本発明においては、流れ制御板14は、冷却性を高めたい電池モジュールの下流側に隣接するように設けられる。本実施形態においては、流れ制御板14は、下流側(下段)の電池モジュール2dよりも下流側となる位置に、即ち全ての電池モジュール(組電池)よりも下流側となる位置に、電池ケース1に対して一体に取り付けられている。
【0022】
流れ制御板14は、図2にその詳細な断面形状を示すように、略平板状の制御板本体141に、複数の貫通穴(開口穴)142、142が、電池モジュールの長さ方向に沿って(図2では紙面奥行き方向に)設けられるとともに、電池モジュールの長さ方向に沿う複数の仕切板143が制御板本体141から立設されて構成されている。
流れ制御板14によって上流側と下流側に分け隔てられた電池ケース1の内部空間は、これら貫通穴142,142を介して上流側と下流側が連通するようにされており、組電池(特に下段電池モジュール2d、2d)を冷却した冷却風は、これら貫通穴を通じて下流側の冷却風導出口12へと流れていく。
【0023】
制御板本体141に設けられる貫通穴142,142は、それぞれの貫通穴が、電池モジュールの長さ方向に延在するような長穴もしくはスリット状となるように形成されている。これら貫通穴は、それぞれの電池モジュール2dの全長にわたって設けられる。そして、本実施形態においては、下段の電池モジュール2dのそれぞれに対して、貫通穴142は、制御板本体141の仕切り板と仕切り板の間の部分に、制御板本体141の上流側に隣接配置された電池モジュール2dの中央付近となる位置に設けられる。なお、「中央付近」とは、図2のように電池モジュールの長さ方向に沿って見た際に、略平板状の制御板本体141が延在する方向(図中の左右方向)において、貫通穴142が、仕切り板143から隔たって、電池モジュール2dの中心付近に設けられることを意味する。
【0024】
貫通穴142は電池モジュール2dの中心と一致する位置、もしくは、貫通穴と電池中心の互いのオフセット量αが、電池モジュールの直径をDとして、α/Dが0.25以下となるようにされることが好ましく、α/Dが0.15以下となるようにされることが特に好ましい。
【0025】
制御板本体141に立設される仕切板143,143について詳細に説明する。仕切板143,143は、制御板本体141から、流れ制御板の上流側に隣接配置された下段電池モジュール2d,2dの間の空間に向かって、電池モジュールの長さ方向に沿うようなリブ状(平板状)に立設されている。仕切板143,143は、下段の電池モジュールの間の空間のそれぞれに対して、その先端部が下段の電池モジュールの間の空間Cに達する程度の長さに設けられる。ここで、空間Cとは、下段の互いに隣接する電池モジュールの間の空間のことであり、図2にその領域を点線で囲って示す。本実施形態においては、仕切板143,143は、下段の電池モジュールの間の全てに対して設けられると共に、仕切板143,143は、下段の電池モジュールの中心軸を結ぶ面m付近に達するような長さに設けられている。なお、仕切り板の先端部は必ずしも面mに達していなくても良い。
【0026】
仕切板143の先端部と下段の電池モジュールの中心軸を結ぶ面mとの関係は、仕切板143先端と面mとの間の距離d3が、電池モジュールの半径をrとして、d3<r、より好ましくは、d3<0.5*r、さらに好ましくは、d3<0.2*rとなるようにすると良い。本実施形態では、d3=0とされている。即ち、本実施形態では、仕切板143の先端部が下段の電池モジュールの中心軸を結ぶ面mと一致している。
【0027】
ここで、仕切板143の先端部が、下段の電池モジュールの中心を結ぶ面mよりも上流側(図上側)に延在して設けられることもまた好ましい実施の形態である。この場合の突き出し量も、前記d3と同様の数値範囲とすることが好ましい。
【0028】
そして、本発明(本実施形態)においては、仕切り板143と(下段の)電池モジュール2dとの間の隙間h3が、電池モジュールの直径Dに対し、0.04≦h3/D≦0.10となるように、隙間h3が設定される。本実施形態においては、h3/D=0.057とされている。
【0029】
そして、本実施形態においては、電池モジュールの左右で、仕切板と電池モジュールとの間の隙間の大きさが等しくなるように、仕切板143が設けられている。なお、仕切り板と電池モジュールの間の隙間の大きさは、h3/Dがそれぞれ上記範囲に入る限りにおいて、電池モジュールの左右で異なるようにされていても良い。
【0030】
下段電池モジュール2dと仕切り板143、制御板本体141とで囲まれる拡張チャンバー状の拡張空間について説明する。空間の上流側では、下段電池モジュール2dと仕切り板の間の隙間部分が、流路の絞られた冷却風入り口部分となる。そして、仕切り板143、制御板本体141とで囲まれる空間は、前記冷却風入り口部分よりも拡幅(拡張)した空間に形成されている。そして、より下流側では、下段電池モジュール2dと制御板本体141との間で、再び流路が絞られ、貫通穴142に向かう冷却風出口部分が形成されている。
【0031】
制御板本体141に立設される仕切り板143の具体的形状に特に制限はないが、製造の容易さの観点から、仕切り板143は平板状に、制御板本体141に対しほぼ垂直に立設されることが好ましい。また、同じ観点から仕切り板143は、制御板本体との接続部から仕切り板先端部にかけて、実質的に同じ厚みに設けられることが好ましい。仕切り板143は中空形状に設けられても良い。
【0032】
本実施形態における電池モジュールの配列や流れ制御板14の主要な具体的寸法は以下のとおりである。電池モジュール2,2は3列x7本の格子状に配列され、電池モジュール2の直径は32.3mmであり、電池モジュールの中心間の左右の間隔は42mmとなるように配置されている。
【0033】
流れ制御板13は、最下流(下段)の電池モジュール表面から下流側に3mm隔てた位置に制御板本体141が位置するように設けられている。流れ制御板の制御板本体141に設けられる貫通穴142の幅(図2で左右方向)は4mmで設けられている。そして、仕切板143は、厚さ6mmで立設されて、下段電池モジュールの中心軸を結ぶ面mに達する位置まで延在している。また、電池モジュールと仕切板の間隔h3は1.85mmとされている。
【0034】
上記電池冷却構造を構成する電池ケースの製造方法は、公知の製造方法により行うことができ、例えば、電池ケース1は開口状の箱と蓋に分けたケース部材を合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができる。流れ制御板14も合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができ、可能であれば、電池ケース1のケース部材と一体成形してもよい。もちろん、流れ制御板14を金属板や合成樹脂の射出成形などによりケースとは別体に作成して、電池ケース組み立て時に所定位置に取り付けるようにしてもよい。
【0035】
電池ケース1内の所定位置に電池モジュールを並べて、電池モジュール間の配線を確立し、流れ制御板を組み込んだ状態で電池ケースの蓋を閉じて、上記実施形態の組電池が収蔵された電池ケースおよび電池冷却構造が完成される。
【0036】
本発明の電池冷却構造による作用と効果を説明する。
本発明の電池冷却構造においては、流れ制御板14の立設された仕切板143,143と円柱状の電池モジュール2,2の相互作用によって、流れ制御板14と電池モジュール2の間の流れが改善され、仕切り板143と電池モジュール2の間を通過した冷却風が、電池モジュールに巻きつくように、電池モジュール2の表面に沿って流れるようになる。
【0037】
上記実施形態に基づいて説明すると、図3において、図の上方から上段及び中段の電池モジュールを冷却して流れ込んでくる冷却風は、下段電池モジュール2d上流の周辺部に流れ込んだ後に、仕切り板143と下段電池モジュール2dの間の隙間を通過し、流れ制御板143と下段電池モジュール2dで囲われた空間に流入し、さらに、貫通穴142を通過して、下流側へと流れていく。
【0038】
ここで、流れ制御板14に設けられた仕切板143,143が下段の電池モジュール間の空間Cに達するように設けられており、さらに、仕切り板143と下段電池モジュール2dとの間の隙間h3が、電池モジュールの直径Dに対し、0.04≦h3/D≦0.10となるようにされているため、電池モジュール2dと仕切板143,143との間の隙間で絞られて下流側へと吹き出す冷却風の流れは、下段電池モジュール2dに巻きつくような、電池表面に沿った流れとなる。
【0039】
電池モジュール2dの左右の隙間から電池モジュールに巻きつくように流れてきた流れは、電池表面を効果的に冷却し、電池モジュールの中央下部で合流して、貫通穴142から下流側へと排出される。このように、本発明によれば、冷却風を下段電池モジュールの表面に沿って流すことができ、下段電池を効果的に冷却でき、組電池の電池温度の均一化に貢献する。
【0040】
冷却風流れが下段電池モジュールに巻きつくように沿って流れるメカニズムは、以下に説明するように、コアンダ効果の影響が支配的であろうと推察される。即ち、気流を物体表面に沿って流すと、気流が物体の表面形状に沿って曲がろうとする、いわゆるコアンダ効果が生ずる。この効果は下段電池モジュールの側部を通過する気流においても生ずる効果であって、0.04≦h3/D≦0.10とされていると、顕著にコアンダ効果が生じて、下段電池モジュール2u周りに巻きつくように冷却風が流れるようになる。
【0041】
即ち、電池の直径Dに応じて、仕切り板143と電池モジュール2dの間の隙間h3の大きさを決定してやれば、上記効果が得られる。
【0042】
そして、仕切り板143の先端部が、下段電池モジュールの中心軸を結ぶ面mに達するように、あるいは面mを越えて上流側に延在して設けられていると、電池モジュール2dの側部を通過する冷却風の整流効果が高められて、仕切り板143と電池モジュールの間を通過した冷却風が、よりしっかりと電池モジュールに巻きつくように流れるようになり、下段電池モジュールの冷却性がより高められる。
【0043】
上記実施形態における流れ場の様子を、数値流体シミュレーションにより求めた流速分布図として、図4に示す。図4は、図1に示した第1実施形態の電池冷却構造で行った数値シミュレーションの結果の、図1に破線で囲って示した領域の速度分布である。図中、色の濃い部分が流速の高い領域を、色の薄い部分が流速の低い領域を示している
【0044】
シミュレーション結果に示すように、下段電池モジュール付近に流れてきた冷却風は、下段電池モジュールと仕切り板の間から吹き出すように流れ、下段電池モジュールに巻きつくように流れて、下段電池モジュールの下側で反対側からの流れと合流して、貫通穴から出て行く流れとなっている。
【0045】
一方、下段電池モジュールの中央部に貫通穴が配置されるが、仕切板が存在しない従来公知の冷却風制御板を用いた従来例(従来例1)の数値シミュレーションを行うと、図5に示すような解が得られた。図5の従来例1の解析結果においては、上流側の電池モジュールから流れてくる冷却風流れは、あまり流速が高まることなく下段電池モジュール周りを流れ、冷却風流れの速い部分と下段電池モジュールの間には、流速が低いよどみ領域が存在してしまっていることがわかる。このような冷却風流れでは、下段電池モジュールを効果的に冷却することはできない。
【0046】
また、図6には、下段電池モジュールの下流側に、電池表面と所定間隔(1.85mm)隔てて設けられた円筒面状の冷却風ガイドを備えさせた従来例(従来例2)の流れシミュレーションの結果を示す。従来例2は、引用文献1記載の公知技術に対応させたシミュレーション例である。従来例2での流れにおいては、冷却風ガイドのある部分で、冷却風が電池モジュールの表面に沿うように集中して流れている様子が見て取れる。
【0047】
図4図6を対比すると、本発明によれば、従来例2のような円筒面形状の形状の冷却風ガイドを用いなくても、簡単な仕切り板を流れ制御板に設けるだけで、従来例2と同様の冷却風流れが実現できることがわかる。
そして、本発明の仕切り板や流れ制御板の形状はごく簡単なものであって、その製造もたやすいものであると共に、電池モジュールとの間の寸法管理を必要とする部位が、仕切り板の先端部付近だけでよいため、電池冷却構造の製造精度を保つ上で、引用文献1に記載された技術と比べ有利である。引用文献1記載の技術においては、面状のガイド部材の全体において、電池モジュールとの間の隙間寸法の精度を保つ必要がある。
【0048】
以上のように、本発明によれば、流れ制御板の上流側に隣接する電池モジュール周りの冷却風流れを効果的に改善して、当該電池モジュールを効果的に冷却でき、電池温度を効果的に均一化することができる。
【0049】
本発明による電池温度の均一化の効果を例証するために、以下に示す実施例、参考例および従来例に対し、数値流体シミュレーションを行うと共に、各電池モジュールに所定の発熱量を設定して各電池モジュールの冷却温度シミュレーションを実施した。
【0050】
(実施例1)
シミュレーションは、図1及び図2に示した第1実施形態について行った(実施例1)。実施例1における電池モジュールの配列や流れ制御板14の主要な具体的寸法は上述したとおりである。
【0051】
(他の実施例及び比較例)
実施例2,3及び比較例1,2は、実施例1に対し、仕切り板14と下段電池モジュールとの間の寸法h3を変化させた例である(表1)。比較例1、実施例2、実施例1、実施例3、比較例2の順にh3(h3/D)が大きくなるようにされており、表1にはその順に記載している。なお、図5に対応する仕切り板がない流れ制御板を供えた従来例1、及び、図6に対応する円筒状の流れガイドを備えた従来例2に対しても、同様に各電池モジュールの冷却温度シミュレーションを実施した。
【0052】
【表1】
【0053】
それぞれの仕様に対する冷却温度シミュレーションにおいては、中段電池モジュール2mと下段電池モジュール2dの温度差を評価し、同じ冷却風風量・諸元(流れ制御板を除くケース形状、電池直径・配置、発熱量など)で、各仕様間の比較を行った。その結果は表1に示している。表1には、それぞれの仕様における、中段電池モジュールの電池平均温度と下段電池モジュールの電池平均温度の温度差を示している。また、それぞれの仕様において、所定の冷却風流量を流すために要した圧力損失も示している。
【0054】
電池の平均表面温度の評価は、図1に示す中段の電池モジュールや下段の電池モジュールに対し、それぞれ、電池モジュールの電池表面温度を電池周方向に平均して、各電池モジュール表面の平均温度を計算し、更に中段電池や下段電池でその平均を求めて、中段電池平均温度と下段電池平均温度を求めた。そして、中段と下段の電池平均温度の差でもって、中段電池と下段電池の温度差を評価している。
【0055】
図7のグラフに、仕切り板14と下段電池モジュール2dとの隙間h3(h3/D)と、中下段電池の温度差の関係を示す。また、図8のグラフに、仕切り板14と下段電池モジュール2dとの隙間h3(h3/D)と、圧力損失の関係を示す。
【0056】
電池の温度差について、実施例1,2,3及び比較例1,2を見ると、h3/Dが小さい方が、中下段電池の温度差が小さくなる傾向が見て取れる。これは、h3/Dが小さい方が、流れが絞られて流速が高まり、コアンダ効果がより顕著に生ずるためであると推察される。そして、h3/D≦0.10の範囲にある実施例1,2,3(及び比較例1)においては、従来例1と比べ、中下段電池の温度差が半減できるという顕著な効果が得られている。この効果は、円筒形状の冷却風ガイドを設けた従来例2に匹敵する効果である。一方で、h3/Dが0.10を超えると中下段電池の温度差が大きくなる。
【0057】
圧力損失について、実施例1,2,3及び比較例1,2を見ると(図8)、h3/Dが小さい方が、圧力損失が大きくなる傾向が見て取れる。そして、h3/D≧0.04の範囲にある実施例1,2,3(及び比較例2)においては、従来例1や従来例2並みの圧力損失である。h3/Dが0.04を大きく下回ると、圧力損失が急増する。
【0058】
従って、0.04≦h3/D≦0.10の範囲とすれば、簡単な構造の流れ制御板14を用いながら、複雑な円筒面形状の冷却風ガイドを有する従来例2並みの電池冷却性能と通気性能が得られることがわかる。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその説明を省略する。
【0060】
まず、流れ制御板に設けられる貫通穴の変更例を説明する。流れ制御板に設けられる貫通穴は、電池モジュールの長手方向に延在するようなものであれば特に限定されない。上記実施形態で説明したように、貫通穴が電池モジュールの中心付近に設けられていると、冷却風の巻きつきが効果的に発生すると共に、電池の両側部から表面に沿って流れてくる冷却風が、貫通穴の直上で合流して流れ出るようにできて好ましい。
【0061】
また、流れ制御板を設ける位置は、最下流側の電池モジュールの下流には限定されず。他の電池モジュールの下流側に設けても良い。要するに、冷却性を高めたい電池モジュールの下流側に隣接するように流れ制御板を配置することができる。図9には、そのような実施形態を示す。
【0062】
図9に示した第2実施形態においては、本発明に係る流れ制御板が2枚設けられている。第2実施形態の電池冷却構造においては、図1に示した第1実施形態の電池冷却構造に加えて、中段の電池モジュール2m,2mの下流側にも、仕切り板153が立設された流れ制御板15が設けられている。流れ制御板15は、流れ制御板14と同様の構造をしている。仕切り板153と電池モジュール2mの間の隙間h4は、0.04≦h4/D≦0.10の範囲とされている。
このような構成の電池冷却構造とすれば、第1実施形態における作用効果と同様の機序によって、流れ制御板15によって中段電池モジュール2mの冷却性が高められ、流れ制御板14によって下段電池モジュール2dの冷却性が高められる。
【0063】
更に、第2実施形態によれば、中段電池モジュール2mを冷却した後に流れ制御板15の貫通穴152から下流側に流れ出す冷却風は、下段電池モジュール2dに直接吹付けるように流れるので、下段電池モジュールの冷却効率をより高めることができる。
【0064】
下段電池モジュール2dの冷却性をより高める観点からは、本実施形態においては、中段電池モジュール2mと仕切り板153との隙間が、下段電池モジュール2dと仕切り板143との隙間よりも大きくなるようにすることが好ましい。
【0065】
本発明にかかる流れ制御板を、例えば中段電池モジュールに対してのみ設け、他の段には、別の冷却性促進手段を設けるようにしても良い。要するに、冷却性を高めたい電池モジュールの下流側に本発明に係る流れ制御板を設けるようにすればよい。
【0066】
また、上記実施形態の説明においては、中空箱状の電池ケース1に組電池が収蔵される形態について説明したが、電池ケースの実施形態は、ケース専用に成形された中空箱状のものに限定されるものではなく、電池ケースは、パネル部材やブロック部材などの複数の部材を組み合わせて構成されるものであってもよい。例えば、車体のフロアパネル上に組電池を配置して、組電池を取り囲むように、断熱パネルや電極パネルを設けて、フロアパネルや断熱パネル、電極パネルの間を冷却風通路とした電池ケースを構成するようにすることもできる。このように、本発明における電池ケースには、専用の構成部材で構成された電池ケースのほか、組電池の周辺に配置される部材を利用・兼用して構成される電池ケースを含む。
【0067】
組電池を構成する電池の種類には、一次電池、二次電池(リチウムイオンバッテリー、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池など)、二重電気キャパシタなどが例示できる。電池モジュールは、上記実施形態においては、棒状で特に円柱状のものについて説明したが、完全な円柱状に限定さるものではなく、コアンダ効果により流れの偏向効果が生じうる形状であれば、楕円形状やおむすび形状のような円柱状であってもよい。
【0068】
また、組電池の電池モジュールが配列される形態は、上記実施形態においては電池モジュール周りの流れの上流から下流にかけて3段の格子状に電池モジュールが配置される例について説明したが、電池モジュールの配列は3段に限定されるものではなく、流れ方向に沿って2段もしくは4段以上の段数にわたるもの、更には、1段のみに電池が配列されたものであっても良い。本発明によれば、流れ制御板の上流側に位置する段の電池モジュールの冷却効率を効果的に高めることができる。
【0069】
また、本発明の電池冷却構造には、上記構成に加え、例えば、組電池の上流側の流れ制御板といった、他の流れ制御部材や構造を併用することもできる。
【0070】
組電池が使用される目的・用途も、自動車用に限定されるものではなく、例えば、風力発電装置や太陽電池発電装置などにおいて発電電力を平準化する目的で二次電池が使用される用途など、広い用途に使用される組電池の冷却に本発明は活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車、発電装置などに使用される大容量組電池の冷却に使用することができ、それら組電池を構成する電池を均一に冷却して、電池の性能を効果的に発揮させることができ、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0072】
1 電池ケース
11 冷却風導入口
12 冷却風導出口
13 上流側流れ制御板
14 流れ制御板
141 制御板本体
142 貫通穴
143 仕切板
15 流れ制御板
151 制御板本体
152 貫通穴
153 仕切板
2 電池モジュール
図1
図2
図3
図7
図8
図9
図10
図4
図5
図6