(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明による新規な多核ポリ(フェノール)類は、下記一般式(1)で表される。
【化1】
(式中、R
1 は各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又は芳香族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の飽和炭化水素基を示し、nは0又は1〜3の整数を示し、Xは下記一般式(2)で表されるヒドロキシフェニル基を示し、Aは4価の炭素原子基又は炭素原子数2以上の4価の飽和炭化水素基を示し、但し、Aが炭素原子数2以上の4価の飽和炭化水素基である場合は、A基中の2つの炭素原子が、それぞれ2つのフェニル基と結合している。)
【化2】
(式中、R
2は,炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又は芳香族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の飽和炭化水素基を示し、aは1〜3の整数を、bは0又は1〜4の整数を示し、但し1≦a+b≦5であり、bが2以上の場合、R
2は同一でも異なっていてもよい。)
また、前記一般式(2)が、下記一般式(3)で示される多核ポリ(フェノール)類は本発明の好ましい態様である。
【化3】
(式中、R
3、R
4、R
5は各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基又は芳香族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の飽和炭化水素基を示す。)
【0008】
上記一般式(1)において、水酸基のベンゼン環への結合位置は、Aとベンゼン環との結合位置に対してo−位及び/又はp−位であることが好ましく、p−位であることがより好ましい。
また、一般式(1)において、式中、R
1で示される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、3−メチルペンチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。また炭素原子数1〜8のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、3−メチルシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2,4−ジメチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルコキシル基が挙げられる。これらの中でも炭素原子数1〜4の直鎖状、分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシル基、炭素原子数5〜8の環状アルキル基又は環状アルコキシル基が好ましく、なかでも炭素原子数1〜4の直鎖状、分枝鎖状のアルキル基が特に好ましい。また、nは1が好ましい。
また、R
1で示される芳香族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の飽和炭化水素基において、芳香族炭化水素基としては、メチル基やメトキシ基のようなアルキル基又は/及びアルコキシル基が置換していてもいなくてもよく、具体的には、フェニル基や4−メチルフェニル基等があげられ、置換アルキル基の合計炭素数は1〜4が好ましい。
芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の飽和炭化水素基としては、芳香族炭化水素基が炭素原子数1〜8のアルキル基の側鎖または主鎖に置換したものであり、具体的にはベンジル基、1−フェニルエチル基、(4−メチルフェニル)メチル基が挙げられる。また、R
1は水酸基のo−位又はp−位の少なくとも一つに置換していることが、工業的に実施容易である点で好ましい。特に、n=1で、メチン基及びR
1がそれぞれ水酸基のo−位に置換していることが好ましい。
【0009】
また、一般式(1)において、Aは4価の炭素原子基又は炭素原子数2以上の4価の飽和炭化水素基を示し、但し、Aが炭素原子数2以上の4価の飽和炭化水素基である場合は、A基中の2つの炭素原子が、それぞれ2つのフェニル基と結合している。ここで4価の飽和炭化水素基としては、炭素原子数2〜50、好ましくは、炭素原子数2〜30であり、例えば、置換基を有していてもよい直鎖状乃至分枝鎖状の飽和炭化水素基、単環式脂環飽和炭化水素基、乃至多環式脂環飽和炭化水素基、架橋環式脂環飽和炭化水素基又はテルペン飽和炭化水素及びこれらの鎖状と環状の両方を含む飽和炭化水素基等を挙げることができる。4価の炭素原子基又は炭素原子数2以上の4価の飽和炭化水素基としては、具体的には、好ましいものとして例えば、下記のものが例示できる。
【化4】
【化5】
(式中、R
6、R
7は各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を示し、c、dは各々独立して0又は1〜4の整数を示し、Bは単結合または炭素原子数1〜10の2価の飽和炭化水素基を示し、mは0または1を示す。2価の飽和炭化水素基としては、炭素原子数1〜10の直鎖状アルキレン基又は炭素原子数3〜10の分枝鎖状乃至環状アルキレン基である。)
【0010】
また、上記一般式(4)で示される飽和炭化水素基において、好ましい4価の飽和炭化水素基としては下記のものが例示できる。
【化6】
【化7】
(式中、R
6、R
7、c、d、は、一般式(4)のそれと同じであり、R
8、R
9は各々独立して、水素原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基を示す。但し、R
8+R
9の炭素原子数の和は9以下である。また、炭素原子数1〜9のアルキル基としては、炭素原子数1〜9の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3〜9の分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数5〜9の環状のアルキル基である。)
上記式において、c、dは0、1又は2が好ましい。R
6とR
7で示される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、具体的にはR
1のアルキル基と同じであり、メチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましい。また、R
8及びR
9としては両方又は少なくとも一方が水素原子、1級アルキル基又は2級アルキル基であることが好ましく、R
8、R
9がアルキル基の場合、アルキル基の炭素原子数としては1〜4が好ましい。
【0011】
このような一般式(5)で示される飽和炭化水素基において、特に好ましい4価の飽和炭化水素基としては、
【化8】
等が挙げられる。
また、前記一般式(1)において、Xは下記一般式(2)で表されるヒドロキシフェニル基を示す。
【化9】
式中、R
2は,炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又は芳香族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の飽和炭化水素基を示し、aは1〜3の整数を、bは0又は1〜4の整数を示し、但し1≦a+b≦5であり、bが2以上の場合、R
2は同一でも異なっていてもよい。また、一般式(2)において、b≦3即ちR
2が3置換以下の場合、水酸基に対しp−位でメチン基と結合しうるフェニル基が好ましい。また、b=4即ちR
2が4置換の場合もしくは水酸基の置換数aが1で水酸基に対して2つのm−位に置換基を有する場合、水酸基の置換位置は、メチン基との結合位置に対しo−位であることが、合成上好ましい。
【0012】
また、前記一般式(2)は、好ましくは下記一般式(3)で示される。
【化10】
式中、R
3、R
4、R
5は各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基又は芳香族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の飽和炭化水素基を示す。R
4は、水素原子またはメチル基等のアルキル基が好ましい。
R
2、R
3、R
4、R
5で示される炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基としては、具体的にはR
1のアルキル基又はアルコキシル基と同じであり、炭素原子数1〜4の直鎖状、分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシル基、炭素原子数5〜8の環状アルキル基又は環状アルコキシル基が好ましく、なかでも炭素原子数1〜4の直鎖状、分枝鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
また、R
2、R
3、R
4、R
5で示される芳香族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の飽和炭化水素基としては、具体的にはR
1の芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有する飽和炭化水素基と同じであり、芳香族炭化水素基としては、メチル基やメトキシ基のようなアルキル基又は/及びアルコキシル基が置換していてもいなくてもよく、具体的には、フェニル基や4−メチルフェニル基等があげられ、置換アルキル基の合計炭素数は1〜4が好ましい。
一般式(2)または一般式(3)のヒドロキシフェニル基において、芳香族炭化水素基の置換数としては0または1が好ましく、芳香族炭化水素基の置換位置としては、水酸基のo−位が好ましい。
【0013】
従って、上記、一般式(2)乃至一般式(3)で表される置換フェニル基としては、具体的には例えば、水酸基が一つ(aが1)のものとして、4−ヒドロキシフェニル基、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、2−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル基、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−エチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル基、3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、2−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル基、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル基、2−シクロヘキシル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、2−メチル−5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル基、3−シクロペンチル−4−ヒドロキシフェニル基、5−メチル−2-ヒドロキシフェニル基、4,6-ジメチル−2−ヒドロキシフェニル基、3,4,6−トリメチル−2−ヒドロキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル基、5−t−オクチル−2−ヒドロキシフェニル基、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル基、3−n−ヘキシルオキシ−4−ヒドロキシフェニル基、3−n−オクチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル基、5−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル基、3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル基、5−メチル−3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル基、3−(4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシニフェニル基、5−フェニル−2−ヒドロキシフェニル基、5−(α−クミル)−2−ヒドロキシフェニル基、3−(1−フェニルエチル)−4−ヒドロキシフェニル基、3−ベンジル−4−ヒドロキシフェニル基、3−(4−メチルフェニル)メチル−4−ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
【0014】
上記の対応する原料フェノール類としては、置換数(b)が最大で4までのフェノール類で、b=4の場合は水酸基のo−位が未置換であるものが好ましい。好ましいフェノール類は、p−位が未置換のフェノール類で置換基数(b)≦3であり、特に一般式(3)に対応するフェノール類が好ましい。
また、上記、一般式(2)乃至一般式(3)で表される置換フェニル基として水酸基が2つ乃至3つ(aが2又は3)のものとして、2,4−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2−メチル−4,5−ジヒドロキシフェニル基、3−メチル−4 ,5−ジヒドロキシフェニル基、5−メチル−2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,3,4−トリヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
【0015】
従って、一般式(1)で表される多核ポリ(フェノール)としては、具体的には例えば、
2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパン、
【化11】
さらに、
1,1,4,4−テトラキス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキサン、
4,4,4’,4’−テトラキス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}−1,1’−ビシクロヘキサン、
ビス[4,4−ビス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]メタン、
1,1,2,2−テトラキス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}エタン、
2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(4,5−ジヒドロキシ−2−メチルフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパン、
さらに、
2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパン、
等が挙げられる。
【0016】
このような上記一般式(1)で表される新規な多核ポリ(フェノール)類は、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、WO2007/142353号公報に記載の方法と類似の方法により製造することができる。
具体的には、下記一般式(6)で表されるテトラキス(ホルミルフェノール)類と下記一般式(7)で表されるフェノール類を酸触媒の存在下に反応させることにより製造することができる。
(式中、R
1、A、nは一般式(1)のそれと同じである。)
(式中、R
2、a、bは一般式(2)のそれと同じである。)
【0017】
一般式(6)において、式中、R
1、A、nは一般式(1)のそれと同じであり、従って、上記一般式(6)で表されるテトラキス(ホルミルフェノール)類としては、具体的には、好ましくは、例えば
2,2−ビス{4,4−ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパン、
1,1,4,4−テトラキス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキサン、
4,4,4’,4’−テトラキス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン、
ビス{4,4−ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}メタン、
等が挙げられる。
【0018】
このような上記一般式(6)で表される直接原料のテトラキス(ホルミルフェノール)類は、対応するテトラキス(フェノール)類を原料として公知のホルミル化方法に準じて容易に製造することができる。例えば、直接原料のテトラキス(ホルミルフェノール)類として2,2−ビス{4,4−ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパンを得る場合について、下記反応式(2)で例示すると、2,2−ビス{4,4−ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパンに対応する、テトラキス(メチルフェノール)をメチロール化した後、これをトリフルオロ酢酸等の酸の存在下にヘキサメチレンテトラミンと反応させ、次いで反応生成物を加水分解させることにより容易に得ることが出来る。或いは、公知のDuff反応に準じて、テトラキス(メチルフェノール)をトリフルオロ酢酸等の酸の存在下にヘキサメチレンテトラミンと反応させ、次いで反応生成物を加水分解させることによっても得ることが出来る。
【0019】
また、上記一般式(1)で表される新規な多核ポリ(フェノール)類の製造に係る今ひとつの原料である一般式(7)で表されるフェノール類において、式中、R
2、a、bは一般式(2)のそれと同じであり、従って、上記一般式(7)で表されるフェノール類としては、水酸基に対してo−位またはp−位の少なくとも一つが未置換であるフェノール類である。また、置換基数bは3以下であることが好ましく、中でも水酸基に対してp−位が未置換でかつm−位の少なくとも一つが未置換であるフェノール類が合成上好ましく、そのようなフェノール類は、下記一般式(8)で表される。
(式中、R
3、R
4、R
5は一般式(3)のそれと同じである。)
【0020】
このようなフェノール類としては、具体的には、例えば、水酸基が一つのもの(一般式(7)でa=1の場合)として、フェノール、2,5−キシレノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2−t−ブチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール、2−シクロペンチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−フェニルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2−メトキシフェノール等が挙げられる。さらに水酸基が2以上のもの(一般式(7)でa=2又は3の場合)として、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、4−メチルカテコール、3−メチルカテコール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、ピロガロール等が挙げられる。
【0021】
例えば、多核ポリ(フェノール)類として2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパンを得る場合について、反応式で例示すると、下記反応式(1)に示すように、本発明の目的物の多核ポリ(フェノール)類に対応する、下記式で表されるテトラキス(ホルミル−ヒドロキシフェニル)を直接原料とし、酸触媒の存在下で、本発明の目的物の多核ポリ(フェノール)類に対応する下記式で表されるフェノールと反応させることにより得ることができる。
上記反応式(1)で例示したように、テトラキス(ホルミル−ヒドロキシフェニル)類とフェノール類との反応において、用いるフェノール類の量はテトラキス(ホルミル−ヒドロキシフェニル)1モル部に対し、使用するフェノール類により好ましい使用量範囲は異なるが、通常、8〜40モル部の範囲、好ましくは9〜20モル部の範囲で用いられる。
【0022】
また、反応溶媒は用いてもよく、又、用いなくてもよい。しかしながら、テトラキス(ホルミル−ヒドロキシフェニル)類に対するフェノール類のモル比が小さいか、又はフェノール類の融点が高く原料の混合が困難な場合には溶媒を用いることが好ましい。用いられる反応溶媒としては、例えば、メタノール、ブタノール等の低級脂肪族アルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類又はこれらの混合溶媒が挙げられる。好ましくは低級脂肪族アルコール類であり、また、カテコールやレゾルシン等の融点が高くかつ水への溶解度が大きいフェノール類を用いる場合は水を反応溶媒にすることができる。
このような溶媒は、特に制限はないが、通常、用いるフェノール類に対して0.1重量倍〜10重量倍の範囲、好ましくは0.5重量倍〜5重量倍の範囲で用いられる。
【0023】
上記反応式(1)において例示される製造方法において、酸触媒としては、反応混合液に溶解する酸が好ましく、従って、無機酸、有機スルホン酸やカルボン酸等の有機酸で、強酸から中程度の強さの酸が用いられる。具体的には、例えば、35%塩酸、塩化水素ガス、硫酸、リン酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。このような酸触媒の使用量について、その使用量は酸の強さ等により好ましい範囲は異なるが、通常、フェノール類に対して1重量%〜50重量%の範囲で用いられる。
反応は、通常、温度0℃〜100℃の範囲、好ましくは20〜60℃の範囲において、空気中、より好ましくは窒素等の不活性ガス雰囲気中、攪拌しながら、通常、1〜30時間程度行えばよい。
上記製造方法においては、公知の方法に従って、反応によって生成する多核フェノール化合物を必要に応じて分離精製することができる。
【0024】
そこで、反応終了後、得られた反応液に水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水を加えて、酸を中和し、次いで水層を分離除去するために必要に応じてトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン又はエーテル等の水と分離可能な溶媒を加え、その後、水層を分離すると共に油層を水洗し、得られた油層から、必要に応じて溶媒や未反応原料のフェノール類を留去した後、これに溶媒を添加し、晶析または沈析濾別することによって、結晶性或いは非結晶の固体を得る。必要に応じて、更に高純度物として取り出すために、同様の晶析または沈析操作を1回〜複数回行ってもよい。
反応生成物の目的とする多核ポリ(フェノール)化合物が上記晶析或いは沈析での取り出しが困難な場合は、カラム分離で取り出し及び精製を行うこともでき、或いはまた上記精製工程において化合物が溶解した油層から溶媒や原料フェノールを蒸留等で留去することにより、例えば樹脂状物又は樹脂状の組成物として取り出すこともできる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0026】
参考例1
2,2−ビス{4,4−ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパンの合成;
【0027】
工程1
2,2−ビス{4,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパンの合成;
16%水酸化ナトリウム水溶液1020.0g(4.08mol)を容量5Lの四つ口フラスコに仕込み、反応容器を窒素置換した後、温度35℃程度において2,2−ビス{4,4−ビス(4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパン538.0g(0.85mol)を添加し、その後1時間攪拌した。次いで、攪拌下に35%ホルムアルデヒド水溶液947.1g(11.05mol)を25〜30℃で2時間かけて添加し反応を行った。その後、30℃で5時間、攪拌下に反応を行った。
反応終了後、10℃まで冷却し、メチルエチルケトン550.8gを20分かけて滴下し、メチルイソブチルケトン1280.0gを加えた。その後、17.5%塩酸水溶液661.8gを加えて中和を行い、30℃まで昇温後、10分間静置し、水層を抜き取った。その後、水640.0gを加えて撹拌後、水層を除去した。得られた油層から45℃、減圧下で溶媒1021.5gを留去し、トルエン1280.0gを加えて冷却して結晶を析出させた。析出した結晶をろ別し、粗結晶870.2gを得た。
その後、得られた粗結晶とメチルエチルケトン960.0g、メチルイソブチルケトン1700.0g、水800gを容量5Lの四つ口フラスコに仕込み、45℃まで昇温して結晶を溶解後、静置して水層を抜き取り、得られた油層から45℃、減圧下で溶媒1470.5gを留去し(途中で結晶が析出)、20℃まで冷却してろ過、乾燥し、目的物の白色粉末224.8g(高速液体クロマトグラフィーによる純度93.3%)を得た。白色粉末はプロトンNMR分析により目的化合物であることを確認した。原料のテトラキスフェノールに対する収率は35.1%であった。
1H−NMR測定(400MHz、溶媒:DMSO―d6)
【表1】
【0028】
工程2
2,2−ビス{4,4−ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパンの合成;
トリフルオロ酢酸461.7g(4.05mol)を容量3Lの四つ口フラスコに仕込み、反応容器を窒素置換した後、ヘキサメチレンテトラミン83.3g(0.594mol)を30℃程度で添加し、工程1で得られた、2,2−ビス{4,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパン(メチロール体)101.7g(0.135mol)を 60℃で1時間30分かけて、攪拌下に添加し反応を行った。その後、80℃で攪拌下に、さらに16時間反応を行った。
得られた反応終了液に水251.5gを加えて60℃で1時間加水分解反応を行った。加水分解中に粘性のある固体が析出した。この混合液にトルエン201.2g、メチルイソブチルケトン301.8gを加えて70℃まで昇温溶解後、静置して水層を抜き取った。その後、16%水酸化ナトリウム水溶液444.8gで中和を行い、冷却中に結晶が析出した。20℃まで冷却後に析出物をろ別し、粗結晶104.0gを得た。
その後、得られた粗結晶とテトラヒドロフラン1814.0gを容量3Lの四つ口フラスコに仕込み、60℃まで昇温して結晶を溶解後、常圧下で溶媒1449.0gを留去した。途中で結晶が析出した。残留液に水240.0g、アセトン144.0gを加え20℃まで冷却してろ過、乾燥し、目的物である黄色粉末71.2g(高速液体クロマトグラフィーによる純度96.2%)を得た。黄色粉末はプロトンNMR分析により目的化合物であることを確認した。原料のメチロール体に対する収率は70.8%であった。
1H−NMR測定(400MHz、溶媒:DMSO―d6)
【表2】
【0029】
実施例1
2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパンの合成;
2,5−キシレノール48.8g(0.4mol)、メタノール48.8gを容積1Lの四つ口フラスコに仕込み、反応容器を窒素置換した後、30℃で塩酸ガス24.7gを吹き込んだ。その後、2,5−キシレノール48.8 g(0.4mol)をメタノール97.6gに溶解させた溶液を滴下した後、2,2−ビス{4,4−ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパン59.6g(0.08mol)を30℃で1時間かけて撹拌下に添加し、反応を行った。その後、さらに40℃で20時間、撹拌下に反応を行った。
反応終了後、16%水酸化ナトリウム水溶液169.5gを加えて中和を行った後、メチルイソブチルケトン198.0gを加えて撹拌下に50℃に昇温した。次いで、静置して水層を抜き取り、さらに水120.0gを加え、撹拌して水洗を行い、静置して水層を分離した。得られた油層から常圧下で溶媒130.1gを蒸留により除去した後、水130.0g、トルエン195.0gを加えて冷却し、冷却過程で析出した固体をろ別して粗製物203.4gを得た。この粗製物とメチルイソブチルケトン266.2g、水100.0gを1リッター四つ口フラスコに仕込み、70℃まで昇温溶解後、静置して水層を抜き取った。その後、常圧下で蒸留により溶媒195.3gを留去した後、水100.0g、トルエン250.0gを添加し、再度常圧下で溶媒199.7gを留去した。(濃縮中に固体が析出した。)蒸留後に水60.0gを添加した後、25℃まで冷却し、析出した固体をろ別し、乾燥して目的物である淡黄色粉末状の2,2−ビス[4,4−ビス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}シクロヘキシル]プロパン78.7g(高速液体クロマトグラフィーによる純度93.9%)を得た。原料の2,2−ビス{4,4−ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)シクロヘキシル}プロパンに対する収率は、59.6%であった。
ガラス転移温度(示差走査熱量測定) 196.3℃(融点は認められない)
1H−NMR測定(400MHz、溶媒:DMSO―d6)
【表3】