【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、課題の解決手段として、
天板とガス排出口が形成された上部周壁板を有するディフューザシェルと、底板と下部周壁板を有するクロージャシェルが、前記上部周壁板と下部周壁板のみが接合一体化されてなるハウジングで外殻が形成されており、
前記ハウジング内には、
カップ状容器内に点火手段が収容された点火手段室と、
前記点火手段室の周囲に形成されたガス発生剤が充填された燃焼室と、
前記天板に面するようにして、かつ前記上部周壁板と間隔をおいて配置された環状又は平板状のフィルタが配置されており、
前記環状又は平板状のフィルタが、
フィルタ上面側が第1支持部材で当接支持され、フィルタ下面側が第2支持部材で当接支持されており、
前記第1支持部材が、
円板部を有し、前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側がフィルタ上面に当接され、さらに前記環状壁部がフィルタ外周面の一部に当接されるように配置されており、
前記第2支持部材が、
略筒状壁部と、略筒状壁部の一端側周縁に形成された環状平面部を有しているものであり、
前記略筒状壁部がハウジングに対して固定され、前記環状平面部が前記フィルタ下面に当接されており、
作動時において、ガス発生剤が燃焼して発生した燃焼ガスにより燃焼室内の圧力が増大し、前記ディフューザシェル天板が変形したとき、前記天板及び前記上部周壁板と前記第1支持部材との間において空間が形成されるものである、ガス発生器を提供する。
【0010】
本発明のガス発生器は、作動時にハウジング天板(ディフューザシェル天板)と第1支持部材との間に空間(伝熱抑制空間)を形成することで、フィルタや燃焼残渣に蓄積された熱がハウジング天板側に伝わること(伝熱すること)を抑制して、ハウジング天板の温度上昇を抑制するものである。
【0011】
フィルタは環状又は平板状のものであり、一面側がディフューザシェルの天板側に向き、他面側がクロージャシェルの底板側に向き、外周面側が上部周壁板側に向くように配置されている。
フィルタは、上面側が第1支持部材で当接支持され、下面側が第2支持部材で当接支持されている。
【0012】
第1支持部材は、円板部を有し、前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有している。
そして、ガス発生器の作動前には前記円板部の一面側が天板に当接され、前記円板部の他面側がフィルタ上面に当接されるように配置されている。
第1支持部材の円板部及びフィルタの外径は、正対するディフューザシェルの上部周壁板の内径よりも小さくなっており、フィルタと上部周壁板の間に間隙が形成されるように調整されている。
【0013】
第2支持部材は、略筒状壁部と、略筒状壁部の一端側周縁に形成された環状平面部を有している。
作動後にフィルタやその周囲に蓄積された燃焼残渣に蓄積された熱が、ディフューザシェル天板に流れないようにするための手段の1つとして、その熱を第2支持部材経由でハウジング周壁板及びクロージャシェル側に流すこともできる。その場合フィルタや燃焼残渣の熱を第2支持部材に流すため、環状平面はフィルタ下面の断面積の半分以上に接するように配置することができる。
そして、前記略筒状壁部がハウジング(上部周壁板及び下部周壁板からなる周壁板)に対して固定され、前記環状平面部が前記フィルタ下面に当接されるように配置されている。
前記略筒状壁部は、その外径と前記周壁板の内径の大きさを調整することで、前記周壁板に対して圧入できるようにすることが好ましい。
また略筒状壁部の周壁板に対する固定位置は、フィルタやその周りの燃焼残渣からの第2支持部材と周壁板を経た天板への伝熱をできるだけ抑制するため、底板から天板までの高さ(H)を基準とすると、底板から0.2〜0.9Hの範囲であることが好ましく、0.3〜0.8Hの範囲であることがより好ましい。
【0014】
本発明のガス発生器は、作動時には天板と第1支持部材との間に伝熱抑制空間が形成されるようになっている。
このとき、伝熱抑制の観点からは、天板と第1支持部材との間が完全に離れていることが望ましいが、乗員に対して悪影響を及ぼさない程度の伝熱を許容するときには、天板と第1支持部材が一部で接触した状態であってもよい。
なお、本発明のガス発生器は、作動前には伝熱抑制空間は形成されておらず、天板に第1支持部材が接した状態(圧接状態である必要はない)となっている。このため、ハウジングの容積を小さく抑えることができ、ガス発生器の取り付けスペースが嵩張ることなく、コンパクトに設計できる利点がある。
【0015】
本発明のガス発生器の作動時において、燃焼室で発生した燃焼ガスはフィルタを通過した後でガス排出口から排出される。
このとき、天板と第1支持部材との間に伝熱抑制空間が形成されるが、燃焼ガスの一部は、第1支持部材の円板部がフィルタ上面と接する部分のみ形成された連通孔を通って前記伝熱抑制空間に流入した後で、ガス排出口から排出される。
このように第1支持部材の連通孔を通過して空間に流入したガスは、必ずフィルタを通過していることから、燃焼ガス中の高温の残渣が直接天板の裏側に付着し、作動後に天板の温度を徐々に上昇させるような事態が生じることがない。
【0016】
本発明のガス発生器では、第1支持部材が有している連通孔の総開口面積(A1)と、第1支持部材と第2支持部材との間で形成される通路の断面積(A2)、及びガス排出口の総開口面積(A3)を関連づけるようにすることもできる。
本発明のガス発生器ではA1+A2>A3とすることが好ましく、この場合、作動時に燃焼室の圧力が増大したときには、第1支持部材が有する連通孔を通って、燃焼ガスが速やかに燃焼室外部(第1支持部材とハウジング天板との隙間であり、まだ伝熱抑制空間にはなっていない状態)に流れ、その圧力を受けて天板が外側方向に変形する。そして天板と第1支持部材との間に伝熱抑制空間が形成される。なお、できるだけ第1支持部材と第2支持部材で形成される通路の方へ燃焼ガスが流れることが好ましいため、A1<A2とすることができる(例えばA2/A1=50)。
しかし、第1支持部材の複数の連通孔の作用により燃焼室と伝熱抑制空間との圧力差は小さいため、第1支持部材は殆ど変形しない。
またハウジング天板は変形した後には元の形状には戻らないため、伝熱抑制空間は維持された状態となる。
そのため作動後に燃焼残渣が付着し高温になったフィルタは、その上面が第1支持部材に当接した状態を維持し、フィルタの熱が第1支持部材には伝熱する。しかし、伝熱抑制空間が存在するため、第1支持部材の熱は伝熱抑制空間によって断熱されており、ハウジング天板に移動し難くなっている。ことから、ハウジング天板の温度上昇を抑制することができる。
A1とA2、及びA3の比率は、上記した作用を発現させる観点から、(A1+A2)/A3が3〜100の範囲にすることが好ましく、4〜80の範囲にすることがより好ましい。
【0017】
またハウジングは、ディフューザシェルとクロージャシェルを組み合わせるときに、少なくとも上部周壁板と下部周壁板が接触した状態で接合されていればよく、それぞれの上部周壁板と下部周壁板の長さの比率は制限されるものではない。
【0018】
請求項2の発明は、課題の解決手段として、
前記上部周壁板と前記下部周壁板からなる周壁板において周壁段差部が形成されており、
前記第2支持部材が、略筒状壁部と環状平面部の間に環状段差部を有しており、
前記周壁段差部の段差面に対して、前記環状段差部の段差面が当接される形状になっており、
作動前は、前記周壁段差部の段差面と前記環状段差部の段差面の間には間隙が存在しており、
作動時は、前記周壁段差部の段差面に対して前記環状段差部の段差面が当接される、請求項1記載のガス発生器を提供する。
【0019】
請求項2の発明は、作動時において伝熱抑制空間がより形成され易くするための手段を提供するものである。
作動時、ハウジングの周壁段差部の段差面に対して第2支持部材の環状段差部の段差面が当接されることで、第2支持部材がハウジング天板に向かって移動することが阻止される。このため、十分な伝熱抑制空間が確保される。またガス排出口が、第2支持部材で閉塞されることもない。
【0020】
請求項3の発明は、課題の解決手段として、
前記第2支持部材が、さらに環状平面部の周縁部において前記ディフューザ天板側に突出した突出部を有しており、
前記フィルタが、前記環状平面部と当接された下面側において、前記突出部を嵌め込むための凹部を有しており、
前記第2支持部材が、前記略筒状部がハウジングに対して固定され、前記環状平面部が前記フィルタ下面に当接され、さらに前記突出部がフィルタ下面の凹部に嵌め込まれている、請求項1又は2記載のガス発生器を提供する。
【0021】
第2支持部材が有している突出部は、環状の突出部でもよいし、独立した複数の突出部でもよい。
フィルタが有している凹部は、突出部を嵌め込むことができる形状及び大きさのものであればよい。
このような構成にすることで、ガス発生器を組み立てるときにフィルタの位置決めが容易にできることと、組み立てた後にフィルタの位置がずれることを防止することができる。
【0022】
請求項4の発明は、課題の解決手段として、
前記ディフューザシェルの天板又は前記ディフューザシェルの天板と上部周壁板の境界部には、前記ハウジング内部に窪んだ複数の凹部が間隔をおいて形成されており、
前記第1支持部材が、前記円盤部の周縁部に環状壁部を有しており、
前記複数の凹部の先端部が、前記第1支持部材の円板部及び環状壁部の境界部を含む部分に当接されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のガス発生器を提供する。
【0023】
第1支持部材は、円板部の周縁部に環状壁部を有しており、フィルタは、環状壁部に対して圧入されるものであってもよい。なお、環状壁部は、第1支持部材とフィルタとの位置合わせと、ガス発生器へ組み付けた後に位置ずれを抑制するのが目的であるため、その目的が達成できる長さであれば、適宜寸法を調整することができる。
【0024】
請求項4のガス発生器では、ディフューザシェルの天板又はディフューザシェルの天板と上部周壁板の境界部に複数の凹部が円周方向に間隔をおいて形成されており、ハウジングの内側から見たとき、前記複数の凹部は内側方向への複数の凸部であり、前記複数の凸部の間は複数の凹部となっている。
本発明では、作動前の状態において、複数の凹部(内側方向への凸部)の先端部が第1支持部材の円板部及び環状壁部の境界部を含む部分に当接されており、作動時においてもこの状態が維持される。
よって、第1支持部材は内側方向への凸部とのみ接触しており、第1支持部材と凸部間の凹部とで隙間が存在している。
このため、第1支持部材とディフューザシェルの天板との接触面積を小さくすることで、前記天板への伝熱を抑制すると共に、前記隙間がフィルタを通過した燃焼ガスの排出経路となる。
また作動後においても第1支持部材と内側方向への凸部が当接されているため、第1支持部材、フィルタ及び第2支持部材ががたついて異音が発生することも防止できる。
なお、同じ効果を得るため、ディフューザシェルの前記境界部に複数の凹部(凹凸)を形成する代わりに、第1支持部材の円板部及び環状壁部の境界部に凹凸を形成してディフューザシェルの前記境界部との間に隙間を形成することもできる。
【0025】
本発明では、第2支持部材が、第1支持部材よりも熱伝導性のよい金属で形成されているものにすることができる。
このようにすると、フィルタやその周囲の燃焼残渣の熱が第2支持部材側に移動し易くなるため、ハウジング天板側への伝熱抑制効果が高められる。
【0026】
請求項6の発明は、課題の解決手段として、
天板とガス排出口が形成された上部周壁板を有するディフューザシェルと、底板と下部周壁板を有するクロージャシェルが、前記上部周壁板と下部周壁板のみが接合一体化されてなるハウジングで外殻が形成されており、
前記ハウジング内には、
カップ状容器内に点火手段が収容された点火手段室と、
前記点火手段室の周囲に形成されたガス発生剤が充填された燃焼室と、
前記天板に面するようにして、かつ前記上部周壁板と間隔をおいて配置された環状又は平板状のフィルタが配置されており、
前記環状又は平板状のフィルタが、
少なくともフィルタ上面側に当接される1つのカップ状支持部材で支持されており、
前記カップ状支持部材が、円板部とその周縁部に形成された連通孔を有する筒状壁部を有しており、さらに前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側が前記フィルタ上面に当接され、
前記筒状壁部の少なくとも一部面がフィルタ外周面に当接されるように配置され、前記筒状壁部の開口端部がハウジングに対して固定されており、
作動時において、前記ディフューザシェル天板側が変形したとき、前記天板及び前記上部周壁板と前記カップ状支持部材との間に空間が形成されるものである、ガス発生器を提供する。
【0027】
請求項6の発明は、請求項1の発明において使用している第1支持部材と第2支持部材の2つの部材に代えて、1つのカップ状支持部材を使用したものである。
カップ状支持部材の円板部が、請求項1の発明における第1支持部材の円板部に相当するものである。
さらにカップ状支持部材の開口端部側の筒状壁部が、第2支持部材の略筒状壁部に相当するものである。筒状壁部は、請求項1における円板部と略筒状壁部を接続する働きをし、フィルタの外周面に相当する部分に複数のガス連通孔を形成している。
円板部に形成された連通孔の総開口面積(A1)と、筒状壁部のガス連通孔の総開口面積(A4)、ならびにディフューザのガス排出口の総開口面積(A3)は、A1+A4>A3とすることができる。また、できるだけ筒状壁部のガス連通孔(A4)のほうへ燃焼ガスが流れることが好ましいため、A1<A4とすることができる(例えばA4/A1=50)。
これらの数値の比率は、同様に(A1+A4)/A3が3〜100の範囲にすることが好ましく、4〜80の範囲にすることがより好ましい。
【0028】
カップ状支持部材は、円板部の一面側が天板に当接され、前記円板部の他面側がフィルタ上面に当接され、さらに前記筒状壁部の一部がフィルタ外周面に当接されるように配置されている。
カップ状支持部材の円板部及びフィルタの外径は、正対するディフューザシェルの上部周壁板の内径よりも小さくなっており、フィルタと上部周壁板の間に間隙が形成されるように調整されている。
【0029】
カップ状支持部材は、残部の筒状壁部がハウジング(上部周壁板及び下部周壁板からなる周壁板)に対して固定されている。
前記筒状壁部は、その外径と前記周壁板の内径の大きさを調整することで、前記周壁板に対して圧入できるようにすることが好ましい。
また筒状壁部の周壁板に対する固定位置は、フィルタからのカップ状支持部材と周壁板を経た天板への伝熱をできるだけ抑制するため、底板から天板までの高さ(H)を基準とすると、底板から0.2〜0.9Hの範囲であることが好ましく、0.3〜0.8Hの範囲であることがより好ましい。
【0030】
カップ状支持部材内にフィルタを配置するときは、カップ状支持部材の筒状壁部のフィルタ外周面に当接される部分の内径とフィルタ外径の大きさを調整することで、カップ状支持部材内にフィルタを圧入して固定することができる。
【0031】
またハウジングは、ディフューザシェルとクロージャシェルを組み合わせるときに、少なくとも上部周壁板と下部周壁板が接触した状態で接合されていればよく、それぞれの上部周壁板と下部周壁板の長さの比率は制限されるものではない。
【0032】
請求項7の発明は、課題の解決手段として、
前記カップ状支持部材が、
円板部とその周縁部に形成された筒状壁部と、前記筒状壁部の内周面側に形成された凸部を有しており、さらに前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側が前記フィルタ上面に当接され、
前記凸部が前記フィルタ下面の周縁に当接され、
前記筒状壁部の少なくとも一部面がフィルタ外周面に当接されるように配置されている、請求項6記載のガス発生器を提供する。
【0033】
請求項7の発明では、カップ状支持部材の円板部が、請求項1の発明における第1支持部材の円板部に相当し、さらにカップ状支持部材の筒状壁部と凸部の組み合わせが、請求項1の発明における第2支持部材の略筒状壁部と環状平面部の組み合わせに相当するものである。
カップ状支持部材内にフィルタを配置するときは、請求項6の発明と同様にしてカップ状支持部材内にフィルタを圧入して固定すると共に、凸部によりフィルタ外周面の側の下面を支持する。凹部は筒状壁部において円周方向に複数形成されていてもよい。また環状に形成されているものであってもよい。
【0034】
請求項8の発明は、課題の解決手段として、
前記上部周壁板と前記下部周壁板からなる周壁板において周壁段差部が形成されており、
前記カップ状支持部材が前記筒状壁部に環状段差部を有しており、
前記周壁段差部の段差面に対して、前記環状段差部の段差面が当接される形状になっており、
作動前は、前記周壁段差部の段差面と前記環状段差部の段差面の間には間隙が存在しており、
作動時は、前記周壁段差部の段差面に対して前記環状段差部の段差面が当接される、請求項6又は7記載のガス発生器を提供する。
【0035】
請求項8の発明は、作動時において伝熱抑制空間がより形成され易くするための手段を提供するものである。
作動時、ハウジングの周壁段差部の段差面に対して第2支持部材の環状段差部の段差面が当接されることで、第2支持部材がハウジング天板に向かって移動することが阻止される。このため、十分な伝熱抑制空間が確保される。
【0036】
請求項9の発明は、課題の解決手段として、
前記環状又は平板状のフィルタが、少なくともフィルタ上面側に当接される1つのカップ状支持部材と環状平面部と環状壁面部を有する環状部材で支持されており、
前記環状部材が、環状壁面部が前記カップ状支持部材の筒状壁部に対して当接され、環状平面部が前記環状又は平板状のフィルタの下面に当接されている、請求項6又は8記載のガス発生器を提供する。
【0037】
カップ状支持部材に加えて、さらに環状平面部と環状壁面部を有する環状部材を使用してフィルタを支持している。