特許第5763000号(P5763000)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイセルの特許一覧

<>
  • 特許5763000-ガス発生器 図000002
  • 特許5763000-ガス発生器 図000003
  • 特許5763000-ガス発生器 図000004
  • 特許5763000-ガス発生器 図000005
  • 特許5763000-ガス発生器 図000006
  • 特許5763000-ガス発生器 図000007
  • 特許5763000-ガス発生器 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763000
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   B60R21/264
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-62163(P2012-62163)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-193550(P2013-193550A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 征幸
(72)【発明者】
【氏名】松田 直樹
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6290256(US,B1)
【文献】 特許第5139284(JP,B2)
【文献】 特開昭55−083639(JP,A)
【文献】 特開2011−115787(JP,A)
【文献】 特開平5−155308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板とガス排出口が形成された上部周壁板を有するディフューザシェルと、底板と下部周壁板を有するクロージャシェルが、前記上部周壁板と下部周壁板のみが接合一体化されてなるハウジングで外殻が形成されており、
前記ハウジング内には、
カップ状容器内に点火手段が収容された点火手段室と、
前記点火手段室の周囲に形成されたガス発生剤が充填された燃焼室と、
前記天板に面するようにして、かつ前記上部周壁板と間隔をおいて配置された環状又は平板状のフィルタが配置されており、
前記環状又は平板状のフィルタが、
フィルタ上面側が第1支持部材で当接支持され、フィルタ下面側が第2支持部材で当接支持されており、
前記第1支持部材が、
円板部を有し、前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側がフィルタ上面に当接され、さらに前記環状壁部がフィルタ外周面の一部に当接されるように配置されており、
前記第2支持部材が、
略筒状壁部と、略筒状壁部の一端側周縁に形成された環状平面部を有しているものであり、
前記略筒状壁部がハウジングに対して固定され、前記環状平面部が前記フィルタ下面に当接されており、
作動時において、ガス発生剤が燃焼して発生した燃焼ガスにより燃焼室内の圧力が増大し、前記ディフューザシェル天板が変形したとき、前記天板及び前記上部周壁板と前記第1支持部材との間において空間が形成されるものである、ガス発生器。
【請求項2】
前記上部周壁板と前記下部周壁板からなる周壁板において周壁段差部が形成されており、
前記第2支持部材が、略筒状壁部と環状平面部の間に環状段差部を有しており、
前記周壁段差部の段差面に対して、前記環状段差部の段差面が当接される形状になっており、
作動前は、前記周壁段差部の段差面と前記環状段差部の段差面の間には間隙が存在しており、
作動時は、前記周壁段差部の段差面に対して前記環状段差部の段差面が当接される、請求項1記載のガス発生器。
【請求項3】
前記第2支持部材が、さらに環状平面部の周縁部において前記ディフューザ天板側に突出した突出部を有しており、
前記フィルタが、前記環状平面部と当接された下面側において、前記突出部を嵌め込むための凹部を有しており、
前記第2支持部材が、前記略筒状部がハウジングに対して固定され、前記環状平面部が前記フィルタ下面に当接され、さらに前記突出部がフィルタ下面の凹部に嵌め込まれている、請求項1又は2記載のガス発生器。
【請求項4】
前記ディフューザシェルの天板又は前記ディフューザシェルの天板と上部周壁板の境界部には、前記ハウジング内部に窪んだ複数の凹部が間隔をおいて形成されており、
前記第1支持部材が、前記円板部の周縁部に環状壁部を有しており、
前記複数の凹部の先端部が、前記第1支持部材の円板部及び環状壁部の境界部を含む部分に当接されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のガス発生器。
【請求項5】
前記第2支持部材が、前記第1支持部材よりも熱伝導性のよい金属で形成されている、請求項1〜4のいずれか1項記載のガス発生器。
【請求項6】
天板とガス排出口が形成された上部周壁板を有するディフューザシェルと、底板と下部周壁板を有するクロージャシェルが、前記上部周壁板と下部周壁板のみが接合一体化されてなるハウジングで外殻が形成されており、
前記ハウジング内には、
カップ状容器内に点火手段が収容された点火手段室と、
前記点火手段室の周囲に形成されたガス発生剤が充填された燃焼室と、
前記天板に面するようにして、かつ前記上部周壁板と間隔をおいて配置された環状又は平板状のフィルタが配置されており、
前記環状又は平板状のフィルタが、少なくともフィルタ上面側に当接される1つのカップ状支持部材で支持されており、
前記カップ状支持部材が、円板部とその周縁部に形成された連通孔を有する筒状壁部を有しており、さらに前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側が前記フィルタ上面に当接され、
前記筒状壁部の少なくとも一部面がフィルタ外周面に当接されるように配置され、前記筒状壁部の開口端部がハウジングに対して固定されており、
作動時において、ガス発生剤が燃焼して発生した燃焼ガスにより燃焼室内の圧力が増大し、前記ディフューザシェル天板が変形したとき、前記天板及び前記上部周壁板と前記カップ状支持部材との間において空間が形成されるものである、ガス発生器
【請求項7】
前記カップ状支持部材が、
円板部とその周縁部に形成された筒状壁部と、前記筒状壁部の内周面側に形成された凸部を有しており、さらに前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側が前記フィルタ上面に当接され、
前記凸部が前記フィルタ下面の周縁に当接され、
前記筒状壁部の少なくとも一部面がフィルタ外周面に当接されるように配置されている、請求項6記載のガス発生器。
【請求項8】
前記上部周壁板と前記下部周壁板からなる周壁板において周壁段差部が形成されており、
前記カップ状支持部材が前記筒状壁部に環状段差部を有しており、
前記周壁段差部の段差面に対して、前記環状段差部の段差面が当接される形状になっており、
作動前は、前記周壁段差部の段差面と前記環状段差部の段差面の間には間隙が存在しており、
作動時は、前記周壁段差部の段差面に対して前記環状段差部の段差面が当接される、請求項6又は7記載のガス発生器。
【請求項9】
前記環状又は平板状のフィルタが、少なくともフィルタ上面側に当接される1つのカップ状支持部材と環状平面部と環状壁面部を有する環状部材で支持されており、
前記環状部材が、環状壁面部が前記カップ状支持部材の筒状壁部に対して当接され、環状平面部が前記環状又は平板状のフィルタの下面に当接されている、請求項6又は8記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエアバッグシステムなど人員拘束装置用のガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
固形ガス発生剤を使用するパイロ式のガス発生器では、作動時に発生する燃焼残渣を捕捉するためにフィルタを使用している。
フィルタはハウジングから燃焼ガスを排出する前の段階で、ガス発生剤から発生した燃焼ガスを通過させたり衝突させたりすることで、燃焼ガスに含まれる残渣を付着させると共に、燃焼ガスの温度を降下させる働きを有する。
【0003】
そのため、ガス発生器の作動後は、残渣や燃焼ガスの熱がフィルタに移り、フィルタが高温になる。
フィルタは通常ハウジング内部において、ハウジングと直接に接触して、あるいは他の部材に保持されて間接的にハウジングと接触して配置されるが、作動後はフィルタや燃焼残渣からの熱が、徐々にハウジングへ伝わっていく。そして、それによってハウジングの温度が上昇する。
ガス発生器作動後に、フィルタや燃焼残渣からの伝熱によってハウジングの温度が上昇する現象は、ガス発生器の通常の作動時間(ミリ秒オーダ)に比べると、非常にゆっくりであるが、たとえば2分、3分するとハウジングが相当の温度になるため、展開後のエアバッグが萎んでハウジングに接触すると、エアバッグ生地が熱で溶融するおそれもある。またエアバッグ展開後に乗員がハンドルにもたれかかる状態となったとき、ハウジングの過剰な温度上昇で乗員に影響が及ぶことも考えられる。
【0004】
従ってパイロ式ガス発生器では、少なくとも作動後に乗員側に面するハウジングの過剰の温度上昇を抑制することが必要になる。
【0005】
特許文献1では、インフレータ12内部に配置されるリテーナ11が、フィルタ5やガス発生剤4を収容した燃焼室の上面を覆っており、中央部分においてはチューブ6の上端に嵌る係合部11aを有している。
またリテーナ11には孔11bが複数形成されており、このリテーナ11で囲まれた燃焼室内外との圧力差を低減させ、作動時のリテーナの変形を抑制して、フィルタ5とリテーナ11との当接面から燃焼ガスがショートパスしないようにしている。
【0006】
しかし、特許文献1では、リテーナに形成された孔11bはフィルタ5の上面が当接している部分以外にも形成されており、フィルタを通過せずにガス排出口2aaから排出される燃焼ガスが存在する。
このため十分に冷却されることなく、また十分に燃焼残渣が濾過されること無くハウジング外部に排出される燃焼ガスが含まれる点で、更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,891,703号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、作動後に乗員側に面するハウジングの過剰な温度上昇を抑制し、かつ、従来技術と同等以上のフィルタ機能を維持できるガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、課題の解決手段として、
天板とガス排出口が形成された上部周壁板を有するディフューザシェルと、底板と下部周壁板を有するクロージャシェルが、前記上部周壁板と下部周壁板のみが接合一体化されてなるハウジングで外殻が形成されており、
前記ハウジング内には、
カップ状容器内に点火手段が収容された点火手段室と、
前記点火手段室の周囲に形成されたガス発生剤が充填された燃焼室と、
前記天板に面するようにして、かつ前記上部周壁板と間隔をおいて配置された環状又は平板状のフィルタが配置されており、
前記環状又は平板状のフィルタが、
フィルタ上面側が第1支持部材で当接支持され、フィルタ下面側が第2支持部材で当接支持されており、
前記第1支持部材が、
円板部を有し、前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側がフィルタ上面に当接され、さらに前記環状壁部がフィルタ外周面の一部に当接されるように配置されており、
前記第2支持部材が、
略筒状壁部と、略筒状壁部の一端側周縁に形成された環状平面部を有しているものであり、
前記略筒状壁部がハウジングに対して固定され、前記環状平面部が前記フィルタ下面に当接されており、
作動時において、ガス発生剤が燃焼して発生した燃焼ガスにより燃焼室内の圧力が増大し、前記ディフューザシェル天板が変形したとき、前記天板及び前記上部周壁板と前記第1支持部材との間において空間が形成されるものである、ガス発生器を提供する。
【0010】
本発明のガス発生器は、作動時にハウジング天板(ディフューザシェル天板)と第1支持部材との間に空間(伝熱抑制空間)を形成することで、フィルタや燃焼残渣に蓄積された熱がハウジング天板側に伝わること(伝熱すること)を抑制して、ハウジング天板の温度上昇を抑制するものである。
【0011】
フィルタは環状又は平板状のものであり、一面側がディフューザシェルの天板側に向き、他面側がクロージャシェルの底板側に向き、外周面側が上部周壁板側に向くように配置されている。
フィルタは、上面側が第1支持部材で当接支持され、下面側が第2支持部材で当接支持されている。
【0012】
第1支持部材は、円板部を有し、前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有している。
そして、ガス発生器の作動前には前記円板部の一面側が天板に当接され、前記円板部の他面側がフィルタ上面に当接されるように配置されている。
第1支持部材の円板部及びフィルタの外径は、正対するディフューザシェルの上部周壁板の内径よりも小さくなっており、フィルタと上部周壁板の間に間隙が形成されるように調整されている。
【0013】
第2支持部材は、略筒状壁部と、略筒状壁部の一端側周縁に形成された環状平面部を有している。
作動後にフィルタやその周囲に蓄積された燃焼残渣に蓄積された熱が、ディフューザシェル天板に流れないようにするための手段の1つとして、その熱を第2支持部材経由でハウジング周壁板及びクロージャシェル側に流すこともできる。その場合フィルタや燃焼残渣の熱を第2支持部材に流すため、環状平面はフィルタ下面の断面積の半分以上に接するように配置することができる。
そして、前記略筒状壁部がハウジング(上部周壁板及び下部周壁板からなる周壁板)に対して固定され、前記環状平面部が前記フィルタ下面に当接されるように配置されている。
前記略筒状壁部は、その外径と前記周壁板の内径の大きさを調整することで、前記周壁板に対して圧入できるようにすることが好ましい。
また略筒状壁部の周壁板に対する固定位置は、フィルタやその周りの燃焼残渣からの第2支持部材と周壁板を経た天板への伝熱をできるだけ抑制するため、底板から天板までの高さ(H)を基準とすると、底板から0.2〜0.9Hの範囲であることが好ましく、0.3〜0.8Hの範囲であることがより好ましい。
【0014】
本発明のガス発生器は、作動時には天板と第1支持部材との間に伝熱抑制空間が形成されるようになっている。
このとき、伝熱抑制の観点からは、天板と第1支持部材との間が完全に離れていることが望ましいが、乗員に対して悪影響を及ぼさない程度の伝熱を許容するときには、天板と第1支持部材が一部で接触した状態であってもよい。
なお、本発明のガス発生器は、作動前には伝熱抑制空間は形成されておらず、天板に第1支持部材が接した状態(圧接状態である必要はない)となっている。このため、ハウジングの容積を小さく抑えることができ、ガス発生器の取り付けスペースが嵩張ることなく、コンパクトに設計できる利点がある。
【0015】
本発明のガス発生器の作動時において、燃焼室で発生した燃焼ガスはフィルタを通過した後でガス排出口から排出される。
このとき、天板と第1支持部材との間に伝熱抑制空間が形成されるが、燃焼ガスの一部は、第1支持部材の円板部がフィルタ上面と接する部分のみ形成された連通孔を通って前記伝熱抑制空間に流入した後で、ガス排出口から排出される。
このように第1支持部材の連通孔を通過して空間に流入したガスは、必ずフィルタを通過していることから、燃焼ガス中の高温の残渣が直接天板の裏側に付着し、作動後に天板の温度を徐々に上昇させるような事態が生じることがない。
【0016】
本発明のガス発生器では、第1支持部材が有している連通孔の総開口面積(A1)と、第1支持部材と第2支持部材との間で形成される通路の断面積(A2)、及びガス排出口の総開口面積(A3)を関連づけるようにすることもできる。
本発明のガス発生器ではA1+A2>A3とすることが好ましく、この場合、作動時に燃焼室の圧力が増大したときには、第1支持部材が有する連通孔を通って、燃焼ガスが速やかに燃焼室外部(第1支持部材とハウジング天板との隙間であり、まだ伝熱抑制空間にはなっていない状態)に流れ、その圧力を受けて天板が外側方向に変形する。そして天板と第1支持部材との間に伝熱抑制空間が形成される。なお、できるだけ第1支持部材と第2支持部材で形成される通路の方へ燃焼ガスが流れることが好ましいため、A1<A2とすることができる(例えばA2/A1=50)。
しかし、第1支持部材の複数の連通孔の作用により燃焼室と伝熱抑制空間との圧力差は小さいため、第1支持部材は殆ど変形しない。
またハウジング天板は変形した後には元の形状には戻らないため、伝熱抑制空間は維持された状態となる。
そのため作動後に燃焼残渣が付着し高温になったフィルタは、その上面が第1支持部材に当接した状態を維持し、フィルタの熱が第1支持部材には伝熱する。しかし、伝熱抑制空間が存在するため、第1支持部材の熱は伝熱抑制空間によって断熱されており、ハウジング天板に移動し難くなっている。ことから、ハウジング天板の温度上昇を抑制することができる。
A1とA2、及びA3の比率は、上記した作用を発現させる観点から、(A1+A2)/A3が3〜100の範囲にすることが好ましく、4〜80の範囲にすることがより好ましい。
【0017】
またハウジングは、ディフューザシェルとクロージャシェルを組み合わせるときに、少なくとも上部周壁板と下部周壁板が接触した状態で接合されていればよく、それぞれの上部周壁板と下部周壁板の長さの比率は制限されるものではない。
【0018】
請求項2の発明は、課題の解決手段として、
前記上部周壁板と前記下部周壁板からなる周壁板において周壁段差部が形成されており、
前記第2支持部材が、略筒状壁部と環状平面部の間に環状段差部を有しており、
前記周壁段差部の段差面に対して、前記環状段差部の段差面が当接される形状になっており、
作動前は、前記周壁段差部の段差面と前記環状段差部の段差面の間には間隙が存在しており、
作動時は、前記周壁段差部の段差面に対して前記環状段差部の段差面が当接される、請求項1記載のガス発生器を提供する。
【0019】
請求項2の発明は、作動時において伝熱抑制空間がより形成され易くするための手段を提供するものである。
作動時、ハウジングの周壁段差部の段差面に対して第2支持部材の環状段差部の段差面が当接されることで、第2支持部材がハウジング天板に向かって移動することが阻止される。このため、十分な伝熱抑制空間が確保される。またガス排出口が、第2支持部材で閉塞されることもない。
【0020】
請求項3の発明は、課題の解決手段として、
前記第2支持部材が、さらに環状平面部の周縁部において前記ディフューザ天板側に突出した突出部を有しており、
前記フィルタが、前記環状平面部と当接された下面側において、前記突出部を嵌め込むための凹部を有しており、
前記第2支持部材が、前記略筒状部がハウジングに対して固定され、前記環状平面部が前記フィルタ下面に当接され、さらに前記突出部がフィルタ下面の凹部に嵌め込まれている、請求項1又は2記載のガス発生器を提供する。
【0021】
第2支持部材が有している突出部は、環状の突出部でもよいし、独立した複数の突出部でもよい。
フィルタが有している凹部は、突出部を嵌め込むことができる形状及び大きさのものであればよい。
このような構成にすることで、ガス発生器を組み立てるときにフィルタの位置決めが容易にできることと、組み立てた後にフィルタの位置がずれることを防止することができる。
【0022】
請求項4の発明は、課題の解決手段として、
前記ディフューザシェルの天板又は前記ディフューザシェルの天板と上部周壁板の境界部には、前記ハウジング内部に窪んだ複数の凹部が間隔をおいて形成されており、
前記第1支持部材が、前記円盤部の周縁部に環状壁部を有しており、
前記複数の凹部の先端部が、前記第1支持部材の円板部及び環状壁部の境界部を含む部分に当接されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のガス発生器を提供する。
【0023】
第1支持部材は、円板部の周縁部に環状壁部を有しており、フィルタは、環状壁部に対して圧入されるものであってもよい。なお、環状壁部は、第1支持部材とフィルタとの位置合わせと、ガス発生器へ組み付けた後に位置ずれを抑制するのが目的であるため、その目的が達成できる長さであれば、適宜寸法を調整することができる。
【0024】
請求項4のガス発生器では、ディフューザシェルの天板又はディフューザシェルの天板と上部周壁板の境界部に複数の凹部が円周方向に間隔をおいて形成されており、ハウジングの内側から見たとき、前記複数の凹部は内側方向への複数の凸部であり、前記複数の凸部の間は複数の凹部となっている。
本発明では、作動前の状態において、複数の凹部(内側方向への凸部)の先端部が第1支持部材の円板部及び環状壁部の境界部を含む部分に当接されており、作動時においてもこの状態が維持される。
よって、第1支持部材は内側方向への凸部とのみ接触しており、第1支持部材と凸部間の凹部とで隙間が存在している。
このため、第1支持部材とディフューザシェルの天板との接触面積を小さくすることで、前記天板への伝熱を抑制すると共に、前記隙間がフィルタを通過した燃焼ガスの排出経路となる。
また作動後においても第1支持部材と内側方向への凸部が当接されているため、第1支持部材、フィルタ及び第2支持部材ががたついて異音が発生することも防止できる。
なお、同じ効果を得るため、ディフューザシェルの前記境界部に複数の凹部(凹凸)を形成する代わりに、第1支持部材の円板部及び環状壁部の境界部に凹凸を形成してディフューザシェルの前記境界部との間に隙間を形成することもできる。
【0025】
本発明では、第2支持部材が、第1支持部材よりも熱伝導性のよい金属で形成されているものにすることができる。
このようにすると、フィルタやその周囲の燃焼残渣の熱が第2支持部材側に移動し易くなるため、ハウジング天板側への伝熱抑制効果が高められる。
【0026】
請求項6の発明は、課題の解決手段として、
天板とガス排出口が形成された上部周壁板を有するディフューザシェルと、底板と下部周壁板を有するクロージャシェルが、前記上部周壁板と下部周壁板のみが接合一体化されてなるハウジングで外殻が形成されており、
前記ハウジング内には、
カップ状容器内に点火手段が収容された点火手段室と、
前記点火手段室の周囲に形成されたガス発生剤が充填された燃焼室と、
前記天板に面するようにして、かつ前記上部周壁板と間隔をおいて配置された環状又は平板状のフィルタが配置されており、
前記環状又は平板状のフィルタが、
少なくともフィルタ上面側に当接される1つのカップ状支持部材で支持されており、
前記カップ状支持部材が、円板部とその周縁部に形成された連通孔を有する筒状壁部を有しており、さらに前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側が前記フィルタ上面に当接され、
前記筒状壁部の少なくとも一部面がフィルタ外周面に当接されるように配置され、前記筒状壁部の開口端部がハウジングに対して固定されており、
作動時において、前記ディフューザシェル天板側が変形したとき、前記天板及び前記上部周壁板と前記カップ状支持部材との間に空間が形成されるものである、ガス発生器を提供する。
【0027】
請求項6の発明は、請求項1の発明において使用している第1支持部材と第2支持部材の2つの部材に代えて、1つのカップ状支持部材を使用したものである。
カップ状支持部材の円板部が、請求項1の発明における第1支持部材の円板部に相当するものである。
さらにカップ状支持部材の開口端部側の筒状壁部が、第2支持部材の略筒状壁部に相当するものである。筒状壁部は、請求項1における円板部と略筒状壁部を接続する働きをし、フィルタの外周面に相当する部分に複数のガス連通孔を形成している。
円板部に形成された連通孔の総開口面積(A1)と、筒状壁部のガス連通孔の総開口面積(A4)、ならびにディフューザのガス排出口の総開口面積(A3)は、A1+A4>A3とすることができる。また、できるだけ筒状壁部のガス連通孔(A4)のほうへ燃焼ガスが流れることが好ましいため、A1<A4とすることができる(例えばA4/A1=50)。
これらの数値の比率は、同様に(A1+A4)/A3が3〜100の範囲にすることが好ましく、4〜80の範囲にすることがより好ましい。
【0028】
カップ状支持部材は、円板部の一面側が天板に当接され、前記円板部の他面側がフィルタ上面に当接され、さらに前記筒状壁部の一部がフィルタ外周面に当接されるように配置されている。
カップ状支持部材の円板部及びフィルタの外径は、正対するディフューザシェルの上部周壁板の内径よりも小さくなっており、フィルタと上部周壁板の間に間隙が形成されるように調整されている。
【0029】
カップ状支持部材は、残部の筒状壁部がハウジング(上部周壁板及び下部周壁板からなる周壁板)に対して固定されている。
前記筒状壁部は、その外径と前記周壁板の内径の大きさを調整することで、前記周壁板に対して圧入できるようにすることが好ましい。
また筒状壁部の周壁板に対する固定位置は、フィルタからのカップ状支持部材と周壁板を経た天板への伝熱をできるだけ抑制するため、底板から天板までの高さ(H)を基準とすると、底板から0.2〜0.9Hの範囲であることが好ましく、0.3〜0.8Hの範囲であることがより好ましい。
【0030】
カップ状支持部材内にフィルタを配置するときは、カップ状支持部材の筒状壁部のフィルタ外周面に当接される部分の内径とフィルタ外径の大きさを調整することで、カップ状支持部材内にフィルタを圧入して固定することができる。
【0031】
またハウジングは、ディフューザシェルとクロージャシェルを組み合わせるときに、少なくとも上部周壁板と下部周壁板が接触した状態で接合されていればよく、それぞれの上部周壁板と下部周壁板の長さの比率は制限されるものではない。
【0032】
請求項7の発明は、課題の解決手段として、
前記カップ状支持部材が、
円板部とその周縁部に形成された筒状壁部と、前記筒状壁部の内周面側に形成された凸部を有しており、さらに前記円板部が前記フィルタ上面と接する部分にのみ複数の連通孔を有しているものであり、
前記円板部の一面側が前記天板に当接され、前記円板部の他面側が前記フィルタ上面に当接され、
前記凸部が前記フィルタ下面の周縁に当接され、
前記筒状壁部の少なくとも一部面がフィルタ外周面に当接されるように配置されている、請求項6記載のガス発生器を提供する。
【0033】
請求項7の発明では、カップ状支持部材の円板部が、請求項1の発明における第1支持部材の円板部に相当し、さらにカップ状支持部材の筒状壁部と凸部の組み合わせが、請求項1の発明における第2支持部材の略筒状壁部と環状平面部の組み合わせに相当するものである。
カップ状支持部材内にフィルタを配置するときは、請求項6の発明と同様にしてカップ状支持部材内にフィルタを圧入して固定すると共に、凸部によりフィルタ外周面の側の下面を支持する。凹部は筒状壁部において円周方向に複数形成されていてもよい。また環状に形成されているものであってもよい。
【0034】
請求項8の発明は、課題の解決手段として、
前記上部周壁板と前記下部周壁板からなる周壁板において周壁段差部が形成されており、
前記カップ状支持部材が前記筒状壁部に環状段差部を有しており、
前記周壁段差部の段差面に対して、前記環状段差部の段差面が当接される形状になっており、
作動前は、前記周壁段差部の段差面と前記環状段差部の段差面の間には間隙が存在しており、
作動時は、前記周壁段差部の段差面に対して前記環状段差部の段差面が当接される、請求項6又は7記載のガス発生器を提供する。
【0035】
請求項8の発明は、作動時において伝熱抑制空間がより形成され易くするための手段を提供するものである。
作動時、ハウジングの周壁段差部の段差面に対して第2支持部材の環状段差部の段差面が当接されることで、第2支持部材がハウジング天板に向かって移動することが阻止される。このため、十分な伝熱抑制空間が確保される。
【0036】
請求項9の発明は、課題の解決手段として、
前記環状又は平板状のフィルタが、少なくともフィルタ上面側に当接される1つのカップ状支持部材と環状平面部と環状壁面部を有する環状部材で支持されており、
前記環状部材が、環状壁面部が前記カップ状支持部材の筒状壁部に対して当接され、環状平面部が前記環状又は平板状のフィルタの下面に当接されている、請求項6又は8記載のガス発生器を提供する。
【0037】
カップ状支持部材に加えて、さらに環状平面部と環状壁面部を有する環状部材を使用してフィルタを支持している。
【発明の効果】
【0038】
本発明のガス発生器は、従来技術と同等以上のフィルタ機能を維持できると共に、作動後において蓄熱されたフィルタや、燃焼残渣からの伝熱を抑制することで、乗員側に面するハウジングの温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明のガス発生器の軸X方向の断面図(作動前の状態を示す断面図)。
図2図2は、図1の配置状態の第1支持部材をひっくり返した状態で示した斜視図。
図3図1のガス発生器の作動時の断面図。
図4】(a)は、別実施形態であるガス発生器の斜視図、(b)は(a)の軸X方向の断面図。
図5】別実施形態であるガス発生器の軸X方向の断面図(作動前の状態を示す断面図)。
図6図5のガス発生器の作動時の断面図。
図7】さらに別実施形態であるガス発生器の軸X方向の断面図(作動前の状態を示す断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(1)図1のガス発生器
本発明のガス発生器1の一実施形態を図1により説明する。
ハウジング10は、ディフューザシェル11とクロージャシェル12が溶接により一体化されたものである。
【0041】
ディフューザシェル11は、天板11aと上部周壁板13を有し、開口部11bを有するカップ状であり、開口部11bにはフランジ11cを有している。
上部周壁板13は、天板11a側の内径が小さくなり(縮径部13a)、開口部11b側で内径が大きくなっており(拡径部13b)、縮径部13aと拡径部13bの間には周壁段差部13cが形成されている。
縮径部13aには複数のガス排出口14が形成されている。ガス排出口14は、作動前に内側からシールテープなどの閉塞手段で閉塞され、ハウジング10内部を気密に維持している。
【0042】
クロージャシェル12は、底板12aと下部周壁板16を有し、開口部12bを有するカップ状である。下部周壁板16は均一径のものである。
底板12aの中央部には、ハウジング内側に向いて突出した円筒部12cと、その上端から半径方向内側に向いた環状平面部12dが形成されており、軸Xと同心状の孔を有している。
開口部12bは、ディフューザシェル11の開口部内(拡径部13b)に嵌め込まれ、この嵌入部分のみにおいてディフューザシェル11とクロージャシェル12が溶接により一体化されている。
【0043】
ハウジング10内には、カップ状容器20が、開口部からクロージャシェル底板12aの円筒部12cに対して被せられた状態で配置されている。
カップ状容器20は、底面20aと周壁部22を有し、開口部20bを有しており、開口部20bには外側に広がったフレアー20cが形成されている
カップ状容器20は、フレアー20cにおいてクロージャシェル底板12aに対して溶接で固定されている。
周壁部22には、複数の連通孔23が形成されており、作動前にはシールテープで閉塞されている。
【0044】
カップ状容器20の内部は、点火手段が収容された点火手段室30となっている。
図1においては点火手段として、公知の電気式点火器32と公知の火薬やガス発生剤(図示せず)を併用している。ただし、電気式点火器32のみを用いたものであってもよい。
電気式点火器32は、クロージャシェル12の円筒部12cと環状平面部12dが樹脂で一体化された点火器固定部33において、クロージャシェル12と一体に固定されている。
【0045】
カップ状容器20(点火手段室30)の外部には、公知のガス発生剤(図示せず)が収容された燃焼室40が形成されている。
燃焼室40と点火手段室30は、作動時に連通孔23によって連通される。
【0046】
燃焼室40の上部には、環状フィルタ50が配置されている。環状フィルタ50は、カップ状容器20とディフューザシェル天板11aとの間に位置するように置かれ、さらに縮径部13aの内周面(即ちガス排出口14)と間隔をおいて(即ち環状の空間52を形成するように)配置されている。
フィルタ50は、フィルタ上面54側が第1支持部材60で当接支持され、フィルタ下面56側が第2支持部材70で当接支持されている。
【0047】
第1支持部材60は、フィルタ50とディフューザシェル天板11aとの間に配置されている。
第1支持部材60は、図2に示すように、円板部62とその周縁に形成された環状壁部64を有している。
第1支持部材60は、鉄やステンレスで形成されているが、熱伝導性の低いセラミックで形成することもできる。第1支持部材60を鉄で形成する場合、その厚みは0.5〜1.0mm程度とすることができる。
【0048】
円板部62には、円周方向に沿って配列された複数の連通孔66が形成されている。これらの複数の連通孔66は、図1の状態においてフィルタ上面54に当接する位置になるように形成されている。つまり連通孔66はフィルタ上面54によって閉塞されている。
図1の実施形態では、複数の連通孔66の総開口面積(A1)と第1支持部材60と第2支持部材70との間で露出しているフィルタ50の外周面の断面積(A2)の和は、ガス排出口14の総開口面積(A3)よりも大きくなっている(A1+A2>A3)。
さらに複数の連通孔66の総開口面積(A1)は、燃焼室40で発生したガスがガス排出口14から排出されるまでの排出経路におけるいずれの断面積よりも大きくなっている。
【0049】
第1支持部材60は、円板部62の一面側が天板11aに当接され、円板部62の他面側がフィルタ上面54に当接され、さらに環状壁部64がフィルタ外周面55の一部に当接されるように配置されている。
このとき円板部62の連通孔66は、全てがフィルタ上面54に当接された状態になっている。
【0050】
第2支持部材70は、略筒状壁部70bと、略筒状壁部70bの一端側周縁に形成された環状平面部70aを有している。
略筒状壁部70bは、クロージャシェル12に圧入して固定できるように、略筒状壁部70bの外径とクロージャシェル12(下部周壁板16)の内径の大きさが調整されている。
第2支持部材70は、略筒状壁部70bと環状平面部70aの間に環状段差部70cを有している。
第2支持部材70は、さらに環状平面部70aの周縁部において上方向(天板11a方向)への突出部70dを有している。
この突出部70dは必要に応じて設けられるものであり、突出部70dを設けたときは、フィルタ下面56の突出部70dに正対する位置には、突出部70dを嵌め込むための凹部58を形成する。
突出部70dと凹部58は、互いに嵌め込むことができるように、大きさや形状を調整する。例えば、環状の突出部70dであれば、環状の凹部(環状溝)58にし、複数の独立した突出部70dであれば、複数の独立した凹部58にしてもよい。
【0051】
第2支持部材70は、略筒状壁部70bがクロージャシェル12の下部周壁板16に対して固定され、環状平面部70aがフィルタ下面56に当接されるように配置されている。
略筒状壁部70bの下部周壁板16に対する固定位置は、フィルタ50やその近傍にある燃焼残渣からの第2支持部材70と下部周壁板16を経た天板11aへの伝熱をできるだけ抑制するため、底板12aから天板11aまでの高さ(H)を基準とすると、底板12aから0.2〜0.9Hの範囲である。
さらに第2支持部材70は、環状段差部70cの高さ位置がディフューザシェル11の周壁段差部13cよりも下側(底板12a側)になり、かつ環状段差部70cと周壁段差部13cの間に間隔が生じるように配置されている。
【0052】
次に図1に示すガス発生器1の組立方法の一例を説明する。
(I)点火器32とカップ状容器20が取り付けられたクロージャシェル12の燃焼室40にガス発生剤を充填する。
(II)第2支持部材70をクロージャシェル12に対して圧入して固定する。このとき環状段差部70cの高さ位置がディフューザシェル11の周壁段差部13cよりも下側になり、かつそれらの間に間隔が生じるように圧入固定する。
(III)第2支持部材70の環状平面部70aの上にフィルタ50を置く。このとき、第2支持部材70が突出部70dを有し、フィルタ50が対応する凹部58を有するものであれば、突出部70dを凹部58に嵌め込むように配置する。このようにすれば、フィルタ50の位置決めが容易になるほか、組立時においてフィルタ50がずれることも防止できる。
(IV)必要に応じさらにガス発生剤を充填した後、フィルタ50の上面54に第1支持部材60を被せる。
(V)ディフューザシェル11をクロージャシェル12に被せ、接触部を溶接一体化する。
このとき、第1支持部材60の円板部62に対して、ディフューザシェル11の天板11aが当接するようにして被せるが、望ましくは天板11aが円板部62に対して密着するようにして被せる。このようにすることでフィルタ50は、第1支持部材60と第2支持部材70により強く固定されることになる。
【0053】
次に図1に示すガス発生器1の動作を図1図3により説明する。図3は、図1のガス発生器1の作動時の状態を示している。
点火器32が作動すると、点火手段収容室30のガス発生剤(図示せず)が着火燃焼して燃焼生成物が発生する。
そして連通孔23から燃焼室40内に燃焼生成物が放出され、燃焼室40内のガス発生剤(図示せず)が着火燃焼して燃焼ガスが発生する。
このとき、燃焼ガスの圧力によって、図3中の矢印で示すような軸X方向へ荷重が働く。このため、ハウジング10は天板11aが変形する。図では示していないが、クロージャシェル12の底板12aにも軸X方向に同様の荷重が働き底板12aが変形する。
【0054】
第2支持部材70は、圧力を受けて天板11a側に移動する。しかし、環状段差部70cが周壁段差部13cに当たるため、それ以上の移動が抑制される。そのため、ディフューザシェル天板11aに対して第1支持部材60の円板部62と環状壁部64の境界部分が接触することがなく、環状の隙間74が形成される。
【0055】
燃焼室40で発生した燃焼ガスは、フィルタ内周面からフィルタ50内部に侵入し、環状の空間52を通り、シールテープを破壊してガス排出口14から排出される。即ち矢印Aで示すようなガスの流れ(主要排出経路)が形成される。
燃焼室40の圧力上昇でディフューザシェルの天板11aが図3に示すように変形すると、第1支持部材60と天板11aとの間に空間(伝熱抑制空間)80が生じる。
これは第1支持部材60に形成された連通孔66が、十分に大きな総開口面積を有することから、第1支持部材60の円板部62に対して燃焼室40側と空間80側の圧力差が小さくなり、実質的に円板部62が変形しないためである。
そして、図3の状態では、上記した環状段差部70cと周壁段差部13cの相互作用によって、ディフューザシェル天板11aと第1支持部材60の円板部62と環状壁部64の境界部分が離れており、環状の隙間74が形成される。
この環状の隙間74がガスの通路となって、図のBで示す2つ目のガスの流れ(補助的排出経路)が生じる。この場合、燃焼ガスはフィルタ50を通った後に連通孔66を通って空間80に排出されるため、燃焼ガスの冷却や浄化は十分になされている。
【0056】
作動後には、捕集された残渣や燃焼ガスが通過したことで蓄積された熱によりフィルタ50が高温になっている。
しかし、本発明のガス発生器1では、図3に示すように空間(伝熱抑制空間)80が形成されているため、フィルタ50に蓄積された熱や、その周囲に存在する燃焼残渣の熱がディフューザシェル11の天板11aに伝わり難くなり、天板11aの過度の温度上昇が抑制される。
【0057】
なお、燃焼ガスが矢印Bの流れによって排出されるとき、連通孔66を通過した後、天板11aの内面に衝突するが、衝突している時間が非常に短く、燃焼ガスが直接関与して天板11aの温度上昇をもたらすことは殆どない。また燃焼ガス中の残渣もフィルタ50によって濾過されており、連通孔66を通過する燃焼残渣は実質的に存在せず、残渣が関与して天板11aの温度が上昇することはない。
【0058】
なお、ディフューザシェル11の天板11a側にフィルタ50の熱を伝えないようにする効果を高めるため、第2支持部材70を第1支持部材60よりも熱伝導性のよい材質で形成することもできる。
例えば、第1支持部材60が鉄やステンレスで形成されているときには、第2支持部材70はアルミニウムや銅によって形成することができる。また、第2支持部材70とクロージャシェル12の下部周壁板16との接触面積を増加させ、フィルタ50の熱がより多くクロージャシェル12側に移動するようにしてもよい。
【0059】
(2)図4のガス発生器
図4で示すガス発生器1は、ディフューザシェル11の天板11aと縮径部13aとの境界部110において、複数の凹部120が間隔をおいて形成されていることを除いて、図1のガス発生器1と同じものである。
【0060】
図4(a)に示すように、境界部110には、円周方向に複数の凹部120が間隔をおいて形成されている。複数の凹部120(ハウジングの内側に窪んだ部分)の間は複数の凸部121となっている。
複数の凹部120は、ハウジング10の内側から見たときには複数の凸部となっており、同様に複数の凸部121は複数の凹部となっている。
ガス発生器作動前の状態で複数の凹部120の先端部は、第1支持部材60の円板部62と環状壁部64との境界部63に当接されており、複数の凸部121は境界部63との間には間隔(凹部120の深さに相当する間隔)が存在している。
【0061】
図4で示すガス発生器が作動したとき、図3と同様に天板11aが変形して、天板11aと円板部62との間に空間(伝熱抑制空間)80が形成される。
一方、第1支持部材60の境界部63は、複数の凹部120の先端部に当接された状態を維持している。
よって、複数の凸部121は境界部63との間の間隔(凹部120の深さに相当する間隔)にガスが流れる流路が形成され、空間80内のガスは前記流路を通って環状空間52に到達し、ガス排出口14から排出される。
従って、図4で示したガス発生器においても、作動時には図3のAとBで示すような2つのガスの排出経路が確保される。
【0062】
また、天板11aの境界部110と第1支持部材60の境界部63が、複数の凹部120の先端部のみで当接されているため、フィルタ50や燃焼残渣の熱が第1支持部材60を経由して天板11aに伝わることが抑制される。
さらには作動後においても、複数の凹部120の先端部によって第1支持部材60とフィルタ50が上方から支持されているため、作動後において部品のがたつきによる異音が発生することがない。
【0063】
(3)図5のガス発生器
図5のガス発生器は、図1のガス発生器において使用している第1支持部材60と第2支持部材70の2つの部材に代えて、1つのカップ状支持部材を使用したことを除いては、図1のガス発生器1と同じものである。
【0064】
カップ状支持部材260は、円板部262とその周縁部に形成された筒状壁部264を有している。
円板部262は、フィルタ上面54と接する部分にのみ複数の連通孔266を有している。
筒状壁部264は、フィルタ外周面55と当接される縮径部267、クロージャシェル内壁板16に当接される拡径部268を有している。拡径部268の外径は、縮径部267の外径よりも大きくなっている。
縮径部267には複数の連通孔267aが形成されている。
縮径部267と拡径部268間には、内周面側に形成され軸X側(ハウジング中心側)に突き出された凸部269を有している。
凸部269と拡径部268の間には、環状段差部270を有している。
【0065】
カップ状支持部材260は、円板部262の一面側が天板11aに当接され、円板部262の他面側がフィルタ上面54に当接されている。
筒状壁部の縮径部267は、フィルタ外周面55に当接されている。縮径部267とディフューザシェル縮径部13a(ガス排出口14を有している)との間には環状空間52が形成されている。
凸部269は、フィルタ下面56の外周面55側(外周縁)に当接されている。このため、図1に示すフィルタ50とは異なり、フィルタ下面56の大部分は燃焼室40内に露出された状態になっている。
【0066】
筒状壁部の拡径部268は、クロージャシェル下部周壁板16に対して圧入されている。
拡径部268の下部周壁板16に対する固定位置は、フィルタ50や燃焼残渣からの拡径部268と下部周壁板16を経た天板11aへの伝熱をできるだけ抑制するため、底板12aから天板11aまでの高さ(H)を基準とすると、底板12aから0.2〜0.9Hの範囲である。
さらにカップ状支持部材260は、環状段差部270の高さ位置がディフューザシェル11の周壁段差部13cよりも下側(底板12a側)になり、かつ環状段差部270と周壁段差部13cの間に間隔が生じるように配置されている。
【0067】
円板部262に形成された連通孔266の総開口面積(A1)と、筒状壁部(縮径部267)の連通孔267aの総開口面積(A4)、ガス排出口14の総開口面積(A3)は、A1+A4>A3の関係を満たすようにされ、A1<A4の関係を満たすようにされている。
さらに(A1+A4)/A3=4〜80の範囲に調整されている。
【0068】
図5のガス発生器の動作は、図1のガス発生器の動作と実質的に同じである。
図5に示すガス発生器が作動したとき、図6に示す状態となり、燃焼ガスはA及びBの2つのガス排出経路を通ってガス排出口14から排出される。
【0069】
(4)図7のガス発生器
図7のガス発生器は、図5のガス発生器において使用しているカップ状支持部材260に環状部材370を組み合わせて、環状フィルタ50を支持していることを除いては、図5のガス発生器と同じものである。
但し、図7のカップ状支持部材260は、図5のカップ状支持部材260の筒状壁部264に形成された凸部269は形成されていないが、形成されていてもよい。
【0070】
環状部材370は、環状平面部371と環状壁面部372を有している。
環状壁面部372は、カップ状支持部材260の縮径部267に対して圧接されている。
環状平面部371は、環状フィルタ50の下面56に当接されている。
図7のガス発生器は、図5のガス発生器と同様に動作する。
【符号の説明】
【0071】
10 ハウジング
11 ディフューザシェル
11a 天板
12 クロージャシェル
12a 底板
30 点火手段室
32 点火器
40 燃焼室
50 フィルタ
60 第1支持部材
70 第2支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7