(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコン等の情報機器や、携帯端末等の小型電子機器の内部配線には、小型の同軸ケーブルが多数本使用されている。例えば、ケーブル結線時のコネクタの高さが1mm程度になる低背化された同軸ケーブルが使用されている。また、これらの同軸ケーブルを、基板上の相手コネクタや他の同軸ケーブル等に接続するために、様々な形状の同軸コネクタも使用されている。従来、同軸コネクタの中心端子に同軸ケーブルの中心導体を電気的に接続するために、半田付けが行なわれていた。しかしながら、この電気的接続方法では、熟練が必要な半田付け作業の工数が必要となり、生産性が向上出来ないという問題が生じる場合がある。
【0003】
この問題点を解決する1つの先行技術として、特開2008−147094号公報(特許文献1)に記載された、相手コネクタとの嵌合方向に軸線をもち一端側で開口せる嵌合筒状部を有する外部導体と、該嵌合筒状体内に収められ保持されている誘電体と、同軸ケーブルの中心導体が接続される接続部及び相手端子に接触する接触部を備え上記誘電体で保持されている中心端子と、上記接続部の支持面上に配された上記中心導体を圧する押圧部材とを有し、上記外部導体は上記嵌合筒状部との境界で屈曲されて該嵌合筒状部を覆う蓋部と、該蓋部に連続して形成され該蓋部の屈曲後に同軸ケーブルを囲繞保持する囲繞部とを有する同軸電気コネクタが挙げられる。
【0004】
特許文献1記載の同軸コネクタは、同軸電気コネクタに同軸ケーブルを結線する際には、同軸ケーブルの端部被覆を除去して露呈することとなった中心導体を、本発明の同軸電気コネクタの中心端子の接続部に形成されている支持面上に配置する。その後、外部導体の蓋部を屈曲して押圧部材に押圧力を印加し、押圧部材は、この力を受けて該押圧部材の押圧面と端子の接続部の支持面との間で上記ケーブルの中心導体を挟圧する。さらに、上記押圧部材の押圧面と端子の接続部の支持面との少なくとも一方に、位置規制部が形成されており、中心導体は上記押圧面と支持面との間で挟圧されるに伴い、上記位置規制部によって正規位置で保持される。このように、引用文献1記載の同軸電気コネクタでは、同軸ケーブルの中心導体を半田結線することなく、中心導体は、正規位置に保たれるという一定の効果を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の蓋状の押圧部材に、リキッドクリスタルポリマー(LCP、液晶ポリマー)樹脂等にガラス繊維、炭素繊維やマイカ等のフィラーが充填された成形材料を使用した場合には、電気コネクタを小型化するにつれて、蓋状の押圧部材を屈曲した際に、押圧部材の根元における屈曲する位置(すなわち、屈曲位置)が一定とならず、押圧部材の押圧面と接続部の支持面との間の正規位置で、同軸ケーブルの中心導体を挟圧できない場合が生じる。例えば、フィラーが配合されたLCP樹脂等で押圧部材を成形した場合に、押圧部材の根元におけるフィラーの分布が偏っていたり、該根元の屈曲位置にちょうどフィラーが存在したりする場合等によって、押圧部材が根元の適切な位置で屈曲しないことが生じる。
【0007】
そのような場合、蓋状の押圧部材の押圧面が、接続部の支持面に対して正確に重なる位置からずれることになり、十分な押圧力によって、正規位置で同軸ケーブルの中心導体を挟圧することができず、その結果として、同軸ケーブルの特性インピーダンスが悪化し、高周波特性が不安定となる問題が生じる。
【0008】
また、上記のような蓋状の押圧部材に相当するものとして、特開平8−22851号公報(特許文献2)に記載の同軸プラグコネクタにおける、シェル部とプラグ内部コンタクトとの間に介在してプラグ外部導体とプラグ内部コンタクトとの間を絶縁するインシュレータの絶縁蓋が挙げられる。該絶縁蓋は、プラグ外部導体の蓋部と共に閉じることにより、プラグ外部導体の首部内に配置された同軸ケーブルの誘電体を覆うものである。絶縁体であるインシュレータの絶縁蓋は、その内側のヒンジを介してインシュレータ本体と連結されており、絶縁蓋を閉じる際にはヒンジが屈曲されることになる。
【0009】
しかしながら、このようなヒンジを有する絶縁蓋であっても、該ヒンジには平面的な一定の幅があるため、LCP樹脂等にフィラーが充填された成形材料を使用してインシュレータを成形した場合には、上記と同様の理由で、絶縁蓋を閉じる際に、絶縁蓋のヒンジにおける屈曲位置が一定の位置にならない場合が生じる。つまり、絶縁蓋のヒンジを形成する平面において、適切な位置で屈曲しない問題が生じる。
【0010】
このような事情に鑑み、外部導体と、該外部導体に収容される絶縁座と、絶縁座に嵌合される端子とからなる電気コネクタであって、同軸ケーブルの中心導体を半田結線することなく、絶縁座の中蓋部の内面と端子の上面との間に同軸ケーブルを挟圧するために、絶縁座の中蓋部が常にその根元部分の適切な位置で、安定して屈曲することができる電気コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電気コネクタは、
相手コネクタとの嵌合方向に一端側で開口せる嵌合するための筒状部を有する外部導体と、
上記筒状部内に収められ保持される絶縁座と、
同軸ケーブルの中心導体が接続される接触部及び相手端子に嵌合する嵌合部を備え上記絶縁座で保持されている端子と
を備える同軸コネクタにおいて、
上記絶縁座は、上記筒状部に収容される本体部と、上記接触部の支持面上に配された上記中心導体を挟圧するための中蓋部とを有し、
上記中蓋部はその根元部分に、上記中蓋部の表面を切り込んだ切込部を有し、
上記外部導体は、上記筒状部との境界で屈曲されて該筒状部を覆う外蓋部を有し、
該外蓋部が屈曲されて上記筒状部を覆う際に、上記外蓋部が上記中蓋部に押圧力を印加し、この力を受けて上記中蓋部は上記切込部の位置で屈曲して、上記中蓋部の押圧面と上記端子の上記接触部の支持面との間で上記同軸ケーブルの上記中心導体を挟圧し、
上記切込部は、上記中蓋部が屈曲される前の状態で、上記中蓋部の表面に切り込まれ
、
上記切込部は、上記中蓋部の押圧面と上記端子の上記接触部の支持面との間で上記同軸ケーブルの上記中心導体を挟圧した場合に、少なくとも一部が切断されるように構成されたことを特徴とする電気コネクタである。
【発明の効果】
【0012】
絶縁座の中蓋部が、外蓋部からの押圧力を受けて、接触部側に倒れる際に、折り曲げられ易い形状の切込部の位置で常に折り曲がるので、十分な押圧力で中心導体を挟圧して固定できる正規位置に、中蓋部を屈曲して倒すことができる。その結果として、同軸ケーブルの断線や、同軸ケーブルの特性インピーダンスの悪化や、不安定な高周波特性等を事前に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、実施の形態を説明するための全ての図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかるL型同軸コネクタの組み立て前の状態での各部材を分離して示す図である。また、
図2〜
図4は、各構成部品の詳細を示す図である。本実施形態によるL型同軸コネクタは、同軸ケーブルの延出方向と相手コネクタとの挿着方向とがほぼ直角になっている。このL型同軸コネクタは、同軸ケーブル(
図6〜
図10参照)のシールド線と電気的に接続する外部導体100と、外部導体100に収容される絶縁座200と、絶縁座200に収容され、同軸ケーブルの中心導体と電気的に接続する端子300とによって構成されている。
【0016】
外部導体100は、りん青銅などの導電性材料の金属板を打ち抜き、折り曲げなどの加工をして作られる。
図2に示すように、外部導体100は、略円筒状となるように丸められ、周方向の一箇所に間隙106を有する筒状部104と、間隙106をはさむ両側の位置から延出する相手コネクタ挿着方向(上下方向)に平行の2枚の保持腕108と、間隙106と直径方向で反対側に位置して、上記筒状部104の上端から起立して設けられた外蓋部112などから構成される。
【0017】
筒状部104は、絶縁座200の本体部204を同心位置に収容する部分であり、絶縁座200の本体部204を受ける突状座部116を内面に有する。また、筒状部104の径方向外側の弾性を与えるための切込溝120が周方向に複数形成される。筒状部104における保持腕108の延出方向に垂直方向の両側の上部及び、保持腕108の各々の上部には、絶縁座200を圧入して固定するための係止部124a、124b、128a、128bが形成されている。また、筒状部104の外周面下端近傍には、相手コネクタとの嵌合時にロックの機能をもたらす環状ロック溝122が形成されている。
【0018】
外蓋部112は、くびれた形状の屈曲部132と、屈曲部132につながって、屈曲時に筒状部104を覆う平蓋部136と、屈曲後に保持腕108を包囲して固定する固定部148と、同軸ケーブルのシールド線をカシメ包囲して電気的に接続するシールド線カシメ部156と、同軸ケーブルの外皮をカシメ包囲する外皮カシメ部168とを有する。外蓋部112は、同軸ケーブルと接続する際に筒状部104との接続部分である屈曲部132で屈曲し、同軸ケーブル上を覆う。
【0019】
平蓋部136は、両端に屈曲時において下方に屈曲する側部140を有している。また、屈曲部132が屈曲する際に、内側となる面にエンボス加工により突状部144が形成されている。二つの側部140の内面同士の距離は、筒状部104の外径と同じか若しくはそれより大きい。
【0020】
固定部148は、両端に屈曲時において下方に屈曲する側部152を持つ。屈曲部132が屈曲した後に、側部152は、保持腕108の外面に接し、さらに保持腕108の下方に回り込むように成形される。
【0021】
シールド線カシメ部156は、側部160を有し、屈曲部132が屈曲した後に、同軸ケーブルのシールド線をカシメ包囲して電気的に接続する。また、屈曲部132が屈曲する際に、内側となる面にエンボス加工により突状部164が形成され、同軸ケーブルが延伸方向に引っ張られても、同軸ケーブルがコネクタから抜けにくくなっている。
【0022】
外皮カシメ部168も、側部172を有し、屈曲部132が屈曲した後に、同軸ケーブルの外皮をカシメ包囲する。また、屈曲部132が屈曲する際に、内側となる面にエンボス加工により突状部176が形成され、同軸ケーブルが延伸方向に引っ張られても、同軸ケーブルがコネクタから抜けにくくなるようにしている。
【0023】
図3は、絶縁座200の詳細構成を示し、(a)は、斜視図、(b)は、上面図である。絶縁座200は、絶縁材料をモールド成形して作られる。該絶縁材料として、例えば、リキッドクリスタルポリマー(LCP、液晶ポリマー)樹脂等にガラス繊維、炭素繊維やマイカ等のフィラーが充填された材料などの耐熱性があり柔軟性のある材料が用いられる。
図3に示すように、絶縁座200は、略円筒状の本体部204と、本体部204の上部位置から半径外方の同軸ケーブルの延出方向に延びる肩部208と、肩部208と半径外方反対側に位置し、上方に延出する中蓋部212とを有している。絶縁座200の肩部208には、両側に案内壁248が傾斜して立設されているが、これは、中蓋部212が屈曲させられるときに、その案内をするものである。
【0024】
絶縁座200の本体部204には、端子300の舌片状の嵌合部308を収容する略四角内筒面の端子収容部216が上下に貫通して形成され、本体部204の上部周縁には、フランジ部220が形成されている。また、フランジ部220において、肩部208の延出方向に垂直方向の両側には、半径外方に突出する突出部224a、224bが形成されている。また、肩部208上方の延出方向に垂直方向の両側にも外方に突出する突出部228a、228bが形成されている。
【0025】
中蓋部212は、本体部204と接続する部分において屈曲することができる。中蓋部212の長さは、中蓋部212が完全に屈曲した状態で、中蓋部212の先端が、肩部208の肩部端面252と延伸方向に関して同位置となる長さか若しくは、それよりも少し短い長さである。本実施形態においては、中蓋部212は、屈曲後に切込部の位置にて外側から切れ込みが入り、内側にて本体部204と接続したままであるが、本発明においては、屈曲の際に中蓋部212と本体部との接続部分の全てが、切断されてもよい。
【0026】
肩部208の肩部端面252は、端子300のケーブル側端部302(
図4参照)よりもケーブル延出方向外側に位置する。本体部204内側及び腕部内側には、本体部204の中蓋部212との接続位置から肩部端面252まで延びるように、ケーブル側から見て矩形に切り取られた形状を持つ。該矩形に切り取られた形状の底面である座部232の端子収容部側の一部には、端子300が配置されるが、座部232は、ケーブル側端部302よりもケーブル延出方向外側において、端子300のケーブル延出方向よりも長いため、端子300が上面に配されない中心導体案内面236を有する。座部232は、ケーブル側縁部に、先端に向けて、下方に延びる斜面240を備える。さらに、該中心導体案内面236は、上方に盛り上がる隆起部244を有し、隆起部244の端部側は、上記斜面240の一部を形成する。
【0027】
図4は端子300の詳細構成を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)のC−C切断面における断面図である。端子300は、りん青銅などの導電性材料の金属板を打ち抜き、折り曲げ等の加工をして作られる。通常の場合、キャリアに複数の同一の端子が、一定の間隔で取り付けられていて、例えばケーブル側端部302がキャリアに接続した状態で、端子に折り曲げ加工等がなされる。端子300は、端子300のケーブル側端部302をキャリアから取り外した後に、L型同軸コネクタの組み立てに用いられる。
図4に示すように、端子300は、同軸ケーブルの中心導体と接触して、電気的に接続される接触部304と、相手コネクタの端子と嵌合する嵌合部308を有している。さらに、端子300には、絶縁座200の端子係止部256a、256b、260a、260bに、それぞれ嵌合するための圧入部324a、324b、322a、322bを有している。
【0028】
接触部304は、同軸ケーブルの延出方向に延びている略平面形状であり、同軸ケーブルの中心導体と接触する上面には、中心導体と咬合して、同軸ケーブルが抜けないように、複数の凹部によって形成される凹凸部312が設けられている。また、該略平面の延出方向と逆側の中蓋側端部314近傍には、同軸ケーブル結線時に同軸ケーブルの中心導体の位置決めをし、同軸ケーブルの中心導体の先端位置を規制する突起部316が設けられている。突起部316は、同軸ケーブルの中心導体の先端が奥の方へ行き過ぎるのを制限する中心導体規制面318を一辺(第1の辺)とする略三角形の平面形状を有し、前記第1の辺と対向する頂点が中蓋側端部314の近傍に位置する。突起部316は、接触部304の下側から打ち出されて形成される。また、突起部316は、中心導体規制面318から中蓋側端部314に向けて下がる傾斜を有し、中蓋側端部314近傍において最も低くなっている。そして、三角形の前記第1の辺と対向する頂点において、最も低くなっており、接触部304の平坦面と同じ高さになっている。また、突起部316の幅は、平面形状において、中心導体規制面318の幅が最も広く、中蓋側端部314近傍において最も狭くなっている。
【0029】
例えば、中心導体の先端位置を規制する手段として、長方形の突起部を打ち出しにより形成した場合、圧入部324a、324bの部分の強度が劣化するおそれがある。しかし、本実施の形態では、圧入部324a、324bの近傍、すなわち中蓋側端部314の近傍において、打ち出しの幅及び高さが最小になっているので、この部分の強度が所定以上に維持される。したがって、本実施の形態による電気コネクタの突起部316は、このような形状を有することにより、同軸ケーブルの中心導体の先端の位置決めを行い、かつ、端子300の強度を保つことが可能になる。
【0030】
図4に示した突起部316は略三角形であるが、この形状に限定されず、類似の他の形状であっても、同様の効果を奏することができる。例えば、突起部316は、台形であってもよい。その場合、突起部316は、同軸ケーブル側の第1の辺(中心導体規制面318)を下底、中蓋側端部314側の第2の辺を上底とする台形となる。そして、前記第1の辺が中心導体の先端位置を規制する中心導体規制面318を形成し、前記第2の辺が圧入部324a、324bの近傍になる。
【0031】
図4に示すように、嵌合部308は、接触部304の両端から下方に延長した二つの舌状片320a、320bを有している。舌状片320a、320bは、下方に行くに従って互いの距離を狭めるように傾斜しており、該距離の最も短い部分は、相手コネクタの端子(相手端子)の中心導体の大きさよりも小さい。また、舌状片320a、320bの先端は、相手端子の中心導体を中心側に案内できるように互いの距離を広げるように傾斜する。相手コネクタとの接続時には、相手コネクタの端子の中心導体の嵌合部が二つの舌状片320a、320bを押し広げることによって発生する舌状片320a、320bの内側方向への弾性力によって、相手端子の嵌合部が、把持される。本実施形態において、端子300は、雌型端子であるが、本発明においては、端子は、雄型端子であってもよい。また、舌状片は、2つに限られず、3つ以上であってもよい。
【0032】
図5は外部導体100、絶縁座200及び端子300の組み立て後の本発明の一実施形態のコネクタの図である。上記のコネクタは、以下に記載のように組み立てられる。まず、絶縁座200の本体部204を外部導体100の筒状部104に収容するように挿着することで、絶縁座200の突出部224a、224b、228a、228bを、外部導体100の係止部124a、124bに圧入し、係止部128a、128bに取付ける。さらに、端子300の嵌合部308を、絶縁座の端子収容部216に収容するように圧入することで、端子300の圧入部322a、322b、324a、324bが、絶縁座200の端子係止部260a、260b、256a、256bに、それぞれ圧入する。それにより、端子300の接触部304の下面が、絶縁座200の座部232の上面に載置固定される。
【0033】
図6は同軸ケーブルをコネクタに配置した後の状態を示す図である。端子300の圧入固定後に、同軸ケーブルをコネクタに配置する。同軸ケーブルは、ストリッパ等を用いて、3段剥き加工されていて、同軸ケーブルの先端から中心導体C1、誘電体C2、シールド線C3及び外皮C4の順で露出している。同軸ケーブルの誘電体の断面を絶縁座200の肩部端面252に当接させ、中心導体C1が端子300に接触するように、同軸ケーブルの中心導体C1を端子300の接触部304及び絶縁座200の座部232の中心導体案内面236上に配置する。中心導体C1が剥き出しとなった部分が長すぎる場合には、中心導体C1の先端が、突起部316の中心導体規制面318に当接し、誘電体C2の断面が、肩部端面252に当接しないため、或いは中心導体C1が撓むので、組み立て作業者は、容易に組み立て異常を発見することができる。
【0034】
図7は、同軸ケーブルの中心導体C1を接触部304に載置した後に、外蓋部112を途中まで屈曲させた図である。外蓋部112を屈曲する際に、外蓋部112における平蓋部136の内面(主に、その内面の突状部144)からの押圧力を受けて、外蓋部112と共に中蓋部212が屈曲される。また、
図8に、
図7のA−A切断面における断面図を示す。
図8に示されるように、同軸ケーブルの中心導体C1の誘電体等が剥がされて剥き出しとなった部分C11の下方には、端子300の接触部304及び絶縁座200の座部232の中心導体案内面236がある。一方で、同軸ケーブルの誘電体C2、シールド線C3及び外皮C4は、絶縁座200のケーブル延伸方向外側に位置している。
【0035】
さらに、外部導体100の外蓋部112(特に、平蓋部136)が筒状部104を覆うように倒される際に、その屈曲部を屈曲させる。その際に、外部導体100における平蓋部136によって、絶縁座200の中蓋部212の外面に押圧力が印加される。そして、中蓋部212は、該押圧力を受けて、中蓋部212の内面(すなわち、押圧面)と、端子300の接触部304の上面(すなわち、中心導体C1を支持するための支持面)との間で同軸ケーブルの中心導体C1を挟圧する。その後、固定部148によって、保持腕108を包囲して、外蓋部112が開かないように外蓋部112の位置を固定する。さらに、シールド線カシメ部156によってシールド線C3をカシメ包囲して、シールド線C3と外部導体100の電気的接続を確保する。また、外皮カシメ部168によって外皮C4をカシメ包囲して、同軸ケーブルがコネクタから外れないように固定する。上記のように、中心導体C1は、挟圧され、シールド線C3及び外皮C4は、カシメ包囲されて変形するが、誘電体C2は、挟圧されることもカシメ包囲されることもなく、同軸ケーブルがコネクタに固定された状態であっても変形することがない。従って、コネクタ接続時のケーブルのインピーダンス等の電気的特性の変化が少ない。
【0036】
図9に固定後のコネクタ及び同軸ケーブルの図を、
図10に、
図9のB−B切断面における断面図を示す。中蓋部212の内面(押圧面)と端子300の接触部304の上面(支持面)によって、中心導体C1を挟圧し、端子300と中心導体C1の電気的接続を確保する。接触部304の上面にある凹凸部312が、中心導体C1に咬合するため、端子300から中心導体C1が離れにくく、中心導体の電気的接続が安定的に保たれる。さらに、中蓋部212の内面と絶縁座200の隆起部244による挟圧力によって、中心導体C1を保持する。中心導体C1は、中蓋部212の内面と端子300の接触部304の上面による挟圧力によって、電気的接続が確保され、中蓋部212の内面と隆起部244による挟圧力によって保持されるため、半田付けによって中心導体C1を端子に固定する必要がない。
【0037】
図11は、端子300が絶縁座200に挿着され、端子300の圧入部322a、322b、324a、324bが、絶縁座200の端子係止部260a、260b、256a、256bにそれぞれ圧入して固定された状態の絶縁座200を示す図である。絶縁座200の中蓋部212は、外部導体100の外蓋部112を屈曲する際に、外蓋部112における平蓋部136からの押圧力を中蓋部212の外面で受けて、中蓋部212は、肩部208の溝部の両内側にある傾斜して立設された案内壁248と中蓋部212の側面両側にある先端側面262により、中心導体C1を正しく固定するための位置(すなわち、正規位置)に屈曲して倒れるように案内される。そして、中蓋部212の先端側面262は、それぞれ案内壁248に接するか、わずかな隙間を有して対向し、中蓋部凹面264も、座部凸面266に接するか、わずかな隙間を有して対向して、中蓋部212の内面と端子300の接触部304との間で同軸ケーブルの中心導体C1を挟圧する。
【0038】
絶縁座200を成形するための材料として、耐熱性があり柔軟性のある材料、例えば、リキッドクリスタルポリマー(LCP、液晶ポリマー)樹脂等にガラス繊維、炭素繊維やマイカ等のフィラーが充填された成形材料が使用される。
【0039】
絶縁座200が、フィラーが配合されたLCP樹脂等で成形された場合に、中蓋部212の根元におけるフィラーの分布が偏っていたり、該根元の屈曲位置にちょうどフィラーが存在したりする場合等によって、中蓋部212が根元部分の適切な位置で屈曲しないことが生じる。そのような場合、中蓋部212の押圧面が、端子300の接触部304の支持面に対して正確に重なる位置からずれることになり、十分な押圧力によって、正規位置で同軸ケーブルの中心導体C1を挟圧することができず、その結果として、同軸ケーブルの特性インピーダンスが悪化し、高周波特性が不安定となる問題が生じる場合がある。
【0040】
中蓋部212が、その根元部分の適切な位置から屈曲され、中蓋部212の押圧面が、常に正規位置で中心導体C1を接触部304に支持面に挟圧できるようにするために、
図11に示すように、中蓋部212の根元部分に、中蓋部212の厚さが最薄になる切込部270を設けている。切込部270は、中蓋部212の根元部分に位置し、中蓋部212の幅方向に延びる、V字形またはU字形等の折り曲げ容易な形状の溝(すなわち、ノッチ)である。また、切込部270は、中蓋部212の根元部分の両側側面のうち少なくとも一面に設けることもできる。切込部270のV字形状の溝は、例えば、溝の延出方向に延びる鋭角斜面により形成される。
【0041】
外蓋部112からの押圧力を受けて、接触部304側に倒れる際に、折り曲げられ易い形状の切込部270の位置で折り曲がるため、中心導体C1を十分に挟圧して固定できる正規位置に、中蓋部212を屈曲して倒すことができる。切込部270は、中蓋部212を屈曲して、中蓋部212の押圧面と接触部304の支持面との間で、中心導体C1を狭圧したときに、少なくもと一部が切断される場合がある。切込部の一部又は全部が切断された場合であっても、中蓋部212は、外蓋部112(特に、平蓋部136)から受ける十分な押圧力で固定されており、さらに、座部凸面266に中蓋部凹面264が嵌り、案内壁248に先端側面262が対向することで、ケーブル延出方向に対して横方向への移動が規制され、案内壁248の中蓋側側面(肩部端面252とは反対側の側面)に、中蓋部凹面264の先端面が対向することで、ケーブル延出方向への移動が規制される。これにより、中蓋部212が切断された場合でも、ケーブル延出方向またはその横方向に外れることを防止することができる。また、切込部270の一部を切断して中蓋部212を屈曲することは、中蓋部212が切込部270の位置ではない不適切な位置で無理に屈曲することを防止することができる。つまり、中蓋部212を切込部270の位置で正確に屈曲状態にできる。よって、中蓋部212の一部切断を前提とすることは、中蓋部212が折曲げの際に無理に屈曲されることで意図しない方向に曲がることよりも望ましい。
【0042】
図12は、切込部の1つ実施形態として、中蓋部212が接触部304に屈曲して倒れる方向とは反対側、すなわち、中蓋部212の根元部分の外側に切込部270aを設けた絶縁座200を示す。
【0043】
図13は、切込部の別の実施形態として、中蓋部212が接触部304に屈曲して倒れる方向、すなわち、中蓋部212の根元部分の内側に切込部270bを設けた絶縁座200を示す。
【0044】
図14は、切込部のさらに別の実施形態として、中蓋部212の根元部分の外側と内側、すなわち両側に切込部270cを設けた絶縁座200を示す。
【0045】
切込部270a、270b、270cのいずれの切込部を採用しても、中蓋部212が外蓋部112からの押圧力を受けて、接触部304側に倒れる際に、切込部の位置で折り曲がるため、中心導体C1を十分に挟圧して固定できる正規位置に、中蓋部212を屈曲して倒すことができる。また、切込部は、中蓋部212の外内面だけではなく、中蓋部212の根元部分の両側側面の少なくとも一面に、側面の幅方向に設けることもできる。ただし、これらの切込部だけに限定されるものではない。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。