(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フレキシブル銅箔張積層板(Flexible Copper Clad Laminate、FCCL)は、主にフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit Board、FPCB)の基材として使用され、その他、面発熱体電磁波シールド材料、フラットケーブル、包装材料などに使用されている。最近、プリント回路基板を使用する電子機器の小型化・高集積化・高効率化に従い、フレキシブル銅箔張積層板の使用が増加している。
【0003】
前記フレキシブル銅箔張積層板は、ポリイミド層と銅箔層とから構成される。このようなフレキシブル銅箔張積層板は、大きく、ポリイミドフィルム上に銅箔層が積層されて製造されるフレキシブル銅箔張積層板と、銅箔上にポリイミド層が積層されて製造されるフレキシブル銅箔張積層板とに大別される。即ち、フレキシブル銅箔張積層板としては、接着方式で製造されるフレキシブル銅箔張積層板とキャスト(cast)方式で製造されるフレキシブル銅箔張積層板とが挙げられる。
【0004】
接着方式により製造されるフレキシブル銅箔張積層板は、ポリイミドフィルム上にエポキシ接着剤で銅箔層を付着して製造されるものである。このようなフレキシブル銅箔張積層板は、接着フィルムが熱に弱く、高温・高圧環境下で銅箔層の銅イオンが接着フィルム層内へ移動して回路配線間の短絡を誘発するなど、最後に得られたフレキシブル銅箔張積層板の耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気特性などの物性が、使用される接着フィルムの特性によって支配され、ポリイミド樹脂本来の優れた屈曲性、耐熱性などの性能が十分に発揮できないものであった。
【0005】
一方、キャスト方式により製造されるフレキシブル銅箔張積層板は、前記接着方式により製造されるフレキシブル銅箔張積層板とは異なり、接着剤を使用せず、銅箔層上にポリイミドワニス(varnish)を塗布した後、適正条件下で熱処理を施し、銅箔層上にポリイミド樹脂層を形成することで製造されるものである。
【0006】
しかし、前記キャスト方式により製造されるフレキシブル銅箔張積層板では、ポリイミド層と銅箔との熱膨張係数の差による反り現象が発生するという問題があり、この問題を解決するために様々なフレキシブル銅箔張積層板の製造方法が開発されている。
【0007】
その中、銅箔に対するポリイミド樹脂層の熱膨張係数を変化させてフレキシブル銅箔張積層板を製造する方法が広く使用されている。このような方法で製造されるフレキシブル銅箔張積層板は、耐熱性や屈曲性が改善されて反り現象を防止することはできるが、ポリイミド樹脂層の接着性能が低下するという問題が発生する。これにより、フレキシブル銅箔張積層板は、多層フレキシブル回路基板の製造時に使用されるボンディングシート(bonding sheet, bonding prepreg)と接着し難いので、多層フレキシブルプリント回路基板への応用性低下が発生する。
【0008】
従って、フレキシブル銅箔張積層板を製造するにあたって、耐熱性、屈曲性などのような性能に加え、接着性能に優れた新規なポリイミド樹脂の開発が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、フレキシブル金属箔張積層板に使用できるポリアミック酸溶液であって、(a)芳香族テトラカルボン酸二無水物(aromatic tetracarboxylic acid dianhydride)として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic acid dianhydride:BPDA)及びピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride:PMDA)を含み、(b)1種以上の芳香族ジアミン(aromatic diamine)と、(c)有機溶媒と、(d)無機充填剤と、を含むことを特徴とする。これによって、屈曲性、反り特性、耐熱性、耐薬品性、電気的特性などの種々の特性が低下することなく接着性能が向上したポリイミド樹脂を製造することができる。
【0017】
また、このようなポリイミド樹脂を使用するフレキシブル金属箔張積層板は、接着性能が向上したポリイミド樹脂によってボンディングプリプレグ(prepreg)との接着が容易となるため、多層フレキシブルプリント回路基板(Multi-layer Flexible Printed Circuit Board)、リジッドフレキシブルプリント回路基板(Rigid Flexible Printed Circuit Board)などの多層プリント回路基板において容易に利用できる。
【0018】
本発明のポリアミック酸溶液においては、1つ以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物(aromatic tetracarboxylic acid dianhydride)(a)として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(a1)とピロメリット酸二無水物(PMDA)(a2)とを混合して使用する。
【0019】
このとき、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(a1)とピロメリット酸二無水物(PMDA)(a2)との混合比率は、a1:a2=50〜95:5〜50mol%の範囲であり、好ましくは、a1:a2=60〜90:10〜40mol%の範囲が適当である。もし、ピロメリット酸二無水物(PMDA)(a2)の使用比率が5mol%未満であれば、ボンディングプリプレグ(prepreg)との接着力が低下し、ピロメリット酸二無水物(PMDA)(a2)の使用比率が50mol%を超過すると、後に形成されるポリイミド樹脂層の金属箔(例えば、銅箔)に対する剥離強度及び柔軟性が低下することがあり得る。
【0020】
本発明のポリアミック酸溶液は、上記のBPDAとPMDAを含む芳香族テトラカルボン酸二無水物とイミド化反応してポリイミド樹脂を形成する1種以上の芳香族ジアミン(aromatic diamine)(b)とを含む。
【0021】
前記芳香族ジアミン(b)としては、例えば、p−フェニレンジアミン(p-phenylene diamine、p−PDA)、m−フェニレンジアミン(m-phenylene diamine、m−PDA)、4,4’−オキシジアニリン(4,4’-oxydianiline、4,4’−ODA)、2,2−ビス(4−4[アミノフェノキシ]−フェニル)プロパン(2,2-bis(4-4[aminophenoxy]-phenyl)propane、BAPP)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’-Dimethyl-4,4’-diaminobiphenyl、m−TB−HG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene、TPE−R)、2,2−ビス(4−[3−アミノフェノキシ]フェニル)スルホン(2,2-bis(4-[3-aminophenoxy]phenyl)sulfone、m−BAPS)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(4,4’-diamino benzanilide、DABA)または4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(4,4’-bis(4-aminophenoxy)biphenyl)などが挙げられるが、これらに限定されない。それらの中から1種以上を選択して混用する。
【0022】
好ましくは、上記の1種以上の芳香族ジアミン(b)として、p−フェニレンジアミン(p−PDA)(b1)と4,4’−オキシジアニリン(ODA)(b2)とを混合して使用する。このとき、p−フェニレンジアミン(p−PDA)(b1)と4,4’−オキシジアニリン(ODA)(b2)との混合比率は、b1:b2=50〜90:10〜50mol%の範囲、好ましくは、b1:b2=55〜85:15〜45mol%の範囲である。p−フェニレンジアミン(p−PDA)(b1)の使用比率が50mol%未満であれば、後に形成されるポリイミド樹脂を用いた金属箔張積層板の屈曲性、反り特性、寸法安定性が低下するおそれがあり、p−フェニレンジアミン(p−PDA)(b1)の使用比率が90mol%を超過すると、後に形成されるポリイミド樹脂層の金属箔(例えば、銅箔)に対する剥離強度が低下することがあり得る。
【0023】
本発明においては、後に形成されるポリイミド樹脂の接着力、特にボンディングプリプレグ(bonding prepreg)との接着力を向上させるため、前記BPDAとPMDAを含む芳香族テトラカルボン酸二無水物(a)と1つ以上の芳香族ジアミン(b)とを、a:b=1.05:1.00〜1.00:1.05molの範囲で混合して使用する。芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの混合比率が上記のような範囲から外れる場合は、ポリアミック酸溶液の粘度が十分に得られないため、後にポリイミド樹脂(層)の形成が十分に行われないおそれがある。
【0024】
本発明のポリアミック酸溶液は、後にポリイミド樹脂と金属箔との間の熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)の差を減少させるため、無機充填剤を含む。
【0025】
使用できる無機充填剤としては、例えば、滑石(talc)、雲母(mica)、シリカ(silica)、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、炭酸マグネシウム、クレイ、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化アンチモン、ガラス繊維またはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。その中で、後に形成されるポリイミド樹脂の接着力をより向上できる点から、滑石が好ましく使用される。このような無機充填剤は、ポリイミド樹脂と金属箔との間のCTEを減少させると共にポリイミド樹脂の接着力、特にポリイミド樹脂とボンディングプリプレグとの間の接着力を向上させるため、BPDAとPMDAを含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と1つ以上の芳香族ジアミンとの総重量に対して約1〜25重量%の範囲、好ましくは、約10〜20重量%の範囲で使用される。
【0026】
このような無機充填剤の平均粒径は、約0.05〜50μmの範囲、好ましくは、約0.1〜10μmの範囲である。
【0027】
本発明のポリアミック酸溶液に使用できる溶媒としては、例えば、N−メチルピロリジノン(N-methylpyrrolidinone、NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide、DMAc)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide、DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)、シクロヘキサン(cyclohexane)、アセトニトリル(acetonitrile)などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、それらは、単独または2種以上混合して使用することができる。
【0028】
なお、本発明のポリアミック酸溶液は、ポリイミド樹脂の接着力をより向上させるため、エポキシ樹脂をさらに含むことができる。このとき、ハロゲン系エポキシ樹脂を使用することができるが、その分子内に臭素などのハロゲン原子が含まれない、環境にやさしい非ハロゲン系エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0029】
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン、ウレタン、ポリイミド、ポリアミドなどを含有することができ、また、骨格内にリン原子、サルファー原子、窒素原子などを含むこともできる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはこれらに水素添加したもの、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエテール系エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル(dimmer acid glycidyl ester)などのグリシジルエステル系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン系エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などの線状脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられるが、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0030】
このようなエポキシ樹脂は、BPDAとPMDAを含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と1つ以上の芳香族ジアミンとの総重量に対して約1〜10重量%の範囲、好ましくは、約1〜5重量%の範囲でポリアミック酸溶液に含まれることが適切である。エポキシ樹脂の含量が1重量%未満であれば、後に形成されるポリイミド樹脂の接着力、特にボンディングプリプレグとの接着力が十分に得られなくなり、エポキシ樹脂の含量が10重量%を超過すると、後に形成されるポリイミド樹脂の軟性および耐熱性が低下することがあり得る。
【0031】
本発明のポリアミック酸溶液において、有機溶媒を除いた固形物成分、即ち、1つ以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物、1つ以上の芳香族ジアミン及び無機充填剤の合計濃度は、約10〜50重量%の範囲、好ましくは、約10〜35重量%の範囲である。前記固形物の合計濃度が、上記の範囲から外れる場合は、前記ポリアミック酸溶液が、金属箔に対する塗布性が低下すると共に作業効率が低下し、塗工する際に、ポリイミド樹脂層の厚さが不均一で、塗工性が低下することがあり得る。
【0032】
本発明のポリアミック酸溶液は、必要に応じて、本発明の目的と効果を害しない範囲内で、可塑剤、酸化防止剤、難燃化剤、分散剤、粘度調節剤、レベリング(leveling)剤、またはその他の通常の添加剤などを少量含むことができる。
【0033】
本発明のポリアミック酸溶液の粘度は、約3,000〜50,000cps範囲、好ましくは、約15,000〜40,000cpsの範囲であるが、これに限定されない。
【0034】
本発明では、前述のポリアミック酸溶液がイミド化することにより、ランダム共重合体(random copolymer)またはブロック共重合体(block copolymer)の形態であるポリイミド樹脂を製造することができる。なお、製造されたポリイミド樹脂は、イミド環を含有する高分子物質であって、耐熱性、耐化学性、耐磨耗性、電気的特性に優れているだけでなく、優れた接着性能、特に、多層フレキシブルプリント配線板やリジッドプリントフレキシブル配線板などのプリント回路基板の形成時に使用されるボンディングプリプレグ(prepreg)との接着性能に優れている。
【0035】
前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、約100,000〜200,000の範囲が適切である。
【0036】
このようなポリイミド樹脂を製造する際には、上記のポリアミック酸溶液のイミド化温度、即ち、反応温度は、好ましくは、約250〜400℃の範囲であり、反応時間は、好ましくは、約5〜50分間の範囲である。
【0037】
また、本発明は、上記のポリイミド樹脂を用いるフレキシブル金属箔張積層板、好ましくは、フレキシブル銅箔張積層板を提供することができる。
【0038】
本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属箔張積層板10は、
図1に示されるように、金属箔層1、及び前記金属箔の片面に形成されたポリイミド樹脂層2を含み、前記ポリイミド樹脂層は、上記のポリアミック酸溶液をイミド化して形成されるものである。このとき、前記ポリイミド樹脂層は、耐熱性、屈曲性、反り特性、電気的特性などに優れているだけでなく、優れた接着性能を有し、後にプリント回路基板の形成時に使用されるボンディングプリプレグとの接着が容易に行われる。
【0039】
前記金属箔1としては、導電性及び軟性を有する金属であれば、特に限定されない。前記金属箔は、例えば、銅、錫、金または銀であることができ、好ましくは、銅である。なお、銅箔としては、圧延銅箔または電解銅箔を使用することができる。
【0040】
前記金属箔1の厚さは、特に限定されないが、約5〜40μmの範囲、好ましくは、約9〜35μmの範囲である。
【0041】
前記ポリイミド樹脂層2の厚さは、特に限定されないが、約2〜60μmの範囲、好ましくは、約3〜30μmの範囲である。
【0042】
また、前記ポリイミド樹脂層2の熱膨張係数(CTE)は、約10〜30ppm/℃の範囲であり、金属箔(例えば、銅箔)に対する剥離強度(Peel Strength)が約0.80kgf/cm以上、好ましくは、約1.00kgf/cm以上であり、ボンディングプリプレグに対する剥離強度が約0.70kgf/cm以上、好ましくは、約1.00kgf/cm以上である。
【0043】
本発明に係るフレキシブル金属箔張積層板の製造方法について説明すると、下記の通りであるが、これらに限定されない。本発明に係るフレキシブル金属箔張積層板の製造方法の好適な一実施形態では、上記のポリアミック酸溶液を金属箔上に塗布するステップ、及び前記金属箔上に塗布されたポリアミック酸溶液に熱を加えて金属箔上にポリイミド樹脂層を形成するステップを含むことができる。
【0044】
また、本発明の好適な他の実施形態では、上記のポリアミック酸溶液を金属箔上に塗布するステップ、前記金属箔上に塗布されたポリアミック酸溶液に熱を加えて金属箔上にポリイミド樹脂層を形成するステップ、及び前記ポリイミド樹脂層の表面に常圧プラズマ処理を施すステップを含むことができる。
【0045】
まず、1)用意されたポリアミック酸溶液を金属箔の表面に塗布する。
【0046】
前記ポリアミック酸溶液は、1つ以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物、1つ以上の芳香族ジアミン及び無機充填剤を有機溶媒に溶解させて用意する。なお、用意されたポリアミック酸溶液の粘度は、約3,000〜50,000cpsの範囲、好ましくは、約15,000〜40,000cpsの範囲であるが、これに限定されない。
【0047】
用意されたポリアミック酸溶液を金属箔上に塗布する際において、塗布されるポリアミック酸溶液の厚さは、濃度に依存するが、最後に得られたイミド化反応終了後のポリイミド樹脂層の厚さが約2〜60μmの範囲、好ましくは、約3〜30μmの範囲となるように調節して塗布することが好ましい。
【0048】
2)次に、金属箔上に塗布されたポリアミック酸溶液に熱を加えると、1つ以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物と1つ以上の芳香族ジアミンとがイミド化反応し、金属箔上にポリイミド樹脂層が形成される。
【0049】
なお、前記加熱温度は、好ましくは、約250〜400℃の範囲であり、加熱時間は、好ましくは、約5〜50分間の範囲である。
【0050】
3)本発明では、形成されたポリイミド層とボンディングプリプレグとの接着力をより向上させるため、前記ポリイミド樹脂層の表面に常圧プラズマ処理を施すことができる。この常圧プラズマ処理によってポリイミド樹脂層の表面にカルボキシル基が形成されることで、ボンディングプリプレグとの接着力が向上し、多層フレキシブルプリント配線板やリジッドプリントフレキシブル配線板などのプリント回路基板を容易に形成することができる。さらに、このような常圧プラズマ処理を用いると、工程の安定性が向上し、連続工程を行うことが可能となる。
【0051】
前記常圧プラズマ処理時に使用できるガス(gas)としては、アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス、ヘリウムガスまたはこれらの混合ガスが挙げられるが、これらに限定されない。前記ガスの注入量は、特に限定されないが、10〜800sccmの範囲、好ましくは、50〜500sccmの範囲であることができる。
【0052】
このようなガスを用いる常圧プラズマ発生装置は、約0.1〜10m/min範囲の処理速度で行われ、電極とポリイミド樹脂層との距離が約1〜10mmの範囲であることができるが、これらに限定されない。
【0053】
このような常圧プラズマ発生装置により発生される常圧プラズマの強さは、約2〜50kVの範囲、好ましくは、約5〜30kVの範囲であることができる。このような強さを有する常圧プラズマを、約0.1〜10m/minの速度で、ポリイミド樹脂層の表面に施すことが適切である。
【0054】
また、本発明は、上述のフレキシブル金属箔張積層板を備えたプリント回路基板を提供する。前記プリント回路基板は、多層フレキシブルプリント回路基板、リジッドフレキシブルプリント回路基板などであることができる。このようなプリント回路基板は、前記フレキシブル金属箔張積層板におけるポリイミド樹脂層に起因する、優れた耐熱性、耐絶縁性、屈曲性、難燃性、耐薬品性、接着性などの種々の性能を持続して発揮することが可能であるので、各種電子機器などの高機能化及び長寿命化に寄与することができる。
【0055】
さらに、本発明は、(a)1つ以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物(aromatic tetracarboxylic acid dianhydride)と、(b)1つ以上の芳香族ジアミン(aromatic diamine)と、(c)有機溶媒と、(d)無機充填剤と、を含むポリアミック酸溶液であって、前記1つ以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物(a)と前記1つ以上の芳香族ジアミン(b)との混合比率が、a:b=1.05:1.00〜1.00:1.05mol%の範囲であることを特徴とするポリアミック酸溶液を提供する。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明をより詳しく説明する。但し、下記の実施例は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記の実施例及び試験例に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
1−1.ポリアミック酸溶液の製造
温度計、攪拌機及び窒素吸入口と粉末投入口(Powder dispensing funnel)を備えた4口反応容器に窒素ガスを徐々に通過させながら166mlのN−メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidone, NMP)と6.8g(20重量%)の滑石(Talc)粉末とを加えて攪拌した。この溶液に7.11g(0.0657mol)のp−フェニレンジアミン(p-phenylene diamine、p−PDA)と3.32g(0.0166mol)の4,4’−オキシジアニリン(4,4’-oxydianiline、ODA)とを加え、25℃で攪拌して完全に溶解させた。この溶液に21.77g(0.0740mol)の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic acid dianhydride、BPDA)と1.79g(0.0082mol)のピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)とを徐々に加え、10時間攪拌しながら重合を行うことで、粘度25,000cpsのポリアミック酸溶液(polyamic acid solution)が得られた。
【0058】
1−2.フレキシブル銅箔張積層板の製造
キャスト法(casting method)を用いて厚さ18μmの電解銅箔の表面に、上記で得られたポリアミック酸溶液のコーティングを施した。なお、コーティング厚さは、硬化過程完了後の最後に得られたポリイミド樹脂層が25μmの厚さとなるように調節した。次いで、コーティングが施されたポリアミック酸溶液を、50〜200℃の温度で、10〜40分間数回にわたって乾燥を行った。次いで、250〜400℃に昇温してイミド化反応を行うことで、ポリイミド層が形成されたフレキシブル銅箔張積層板を製造した。
【0059】
[実施例2]
常圧プラズマ発生装置を用いて、上記の実施例1−2で製造されたフレキシブル銅箔張積層板のポリイミド層の表面に常圧プラズマ処理を施した。
【0060】
<常圧プラズマ処理条件>
ガス(gas):アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス
プラズマの強さ:7kV
電極とポリイミド層との距離:5mm
処理速度:1m/min
【0061】
[実施例3]〜[実施例8]
、[実施例12]及び[比較例1]〜[比較例
6]
下記の表1及び2に示されるように、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、4,4’−オキシジアニリン(ODA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、及びピロメリット酸二無水物(PMDA)と共に滑石(Talc)の含量を変えた以外は、実施例2と同様にしてポリアミック酸溶液、及びフレキシブル銅箔張積層板を製造した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
[実施例9]
9−1.ポリアミック酸溶液の製造
温度計、攪拌機及び窒素吸入口と粉末投入口(powder dispensing funnel)を備えた4口反応容器に窒素ガスを徐々に通過させながら166mlのN−メチルピロリドン(NMP)と6.8g(20重量%)の滑石(Talc)粉末とを加えて攪拌した。この溶液に7.18g(0.0664mol)のp−フェニレンジアミン(p−PDA)と3.36g(0.0168mol)の4,4’−オキシジアニリン(ODA)とを加え、25℃で攪拌して完全に溶解させた。この溶液に21.77g(0.0740mol)の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と1.79g(0.0082mol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)を徐々に加え、10時間攪拌しながら重合を行うことで、粘度25,000cpsのポリアミック酸溶液が得られた。
【0065】
次いで、3.4mlのN−メチルピロリドン(NMP)に0.68g(2重量%)のエポキシ樹脂(ビスフェノールA型、SER−10)を溶解させた溶液を、上記で得られたポリアミック酸溶液に加え、2時間攪拌することで、粘度22,000cpsのポリアミック酸溶液が得られた。
【0066】
9−2.フレキシブル銅箔張積層板の製造
キャスト法(casting method)を用いて厚さ18μmの電解銅箔の表面に、上記で得られたポリアミック酸溶液のコーティングを施した。なお、コーティング厚さは、硬化過程完了後の最後に得られたポリイミド樹脂層が25μmの厚さとなるように調節した。次いで、コーティングが施されたポリアミック酸溶液を、50〜200℃の温度で、10〜40分間数回にわたって乾燥を行った。次いで、250〜400℃に昇温してイミド化反応を行うことで、ポリイミド層が形成されたフレキシブル銅箔張積層板を製造した。
【0067】
[実施例10]
21.77g(0.0740mol)の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1.79g(0.0082mol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)の代わりに、20.75g(0.0705mol)の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び2.71g(0.0124mol)のピロメリット酸二無水物(PMDA)を用い、上記の実施例9と同様にしてポリアミック酸溶液及びフレキシブル銅箔張積層板を製造した。
【0068】
次いで、常圧プラズマ発生装置を用いて、上記で製造されたフレキシブル銅箔張積層板のポリイミド層の表面に常圧プラズマ処理を施した。なお、常圧プラズマ処理条件は、実施例2と同様である。
【0069】
[実施例11]
0.68g(2重量%)のエポキシ樹脂(ビスフェノールA型、SER−10)の代わりに、3.4g(10重量%)のエポキシ樹脂(ビスフェノールA型、SER−10)を用いた以外は、実施例9と同様にしてポリアミック酸溶液及びフレキシブル銅箔張積層板を製造した。
【0070】
次いで、常圧プラズマ発生装置を用いて、上記で製造されたフレキシブル銅箔張積層板のポリイミド層の表面に常圧プラズマ処理を施した。なお、常圧プラズマ処理条件は、実施例2と同様である。
【0071】
[試験例1]−フレキシブル銅箔張積層板の特性評価
実施例1〜
12及び比較例1〜
6で製造された各フレキシブル銅箔張積層板の特性を評価するため、下記のような測定方法に従って測定を行った。その結果を表3に示す。
【0072】
1−1.剥離強度
フレキシブル銅箔張積層板のポリイミド層の表面にボンディングプリプレグ(prepreg)(DOOSAN電子BG製、DS−7402BS(DFP))60分間接着を行った後、25℃の温度条件下で前記ボンディングプリプレグを積層板の面に対して90度方向に50mm/minの速度で剥離する時に必要な力の最低値を測定し、これを剥離強度として示した。
【0073】
1−2.銅箔剥離強度
IPC−TM−650 No.2、4、9に準じて、フレキシブル銅箔張積層板に、パターン幅1mmの回路を形成した後、25℃の温度条件下で銅箔を前記積層板の面に対して90度方向に50mm/minの速度で剥離する時に必要な力の最低値を測定し、これを銅箔剥離強度として示した。
【0074】
1−3.屈曲性(MIT)
フレキシブル銅箔張積層板の回路が形成される表面に、カバーレイ(Coverlay)(PIフィルム12μm、接着剤25μm)を接合して屈曲試験片を製作した。この試験片をMIT屈曲試験装置に装着した後、0.38Rの曲率半径を有する治具を用い、175rpmの速度で、装着された試験片が断線するまでの回数を測定した。このとき、断線回数によって下記のように屈曲性を評価した。
−2,000回未満:不良
−2,000〜5,000回:普通
−5,000超過:良好
【0075】
1−4.反り特性(Curl)
フレキシブル銅箔張積層板(10cm×10cm)を水平床面上に静置した際に、凹状になったフレキシブル銅箔張積層板の各縁部から平面までの高さ(mm)の平均値を測定した。このとき、縁部から平面までの高さによって下記のように反り特性を評価した。
−0〜10mm以下:良好
−10mm超過〜20mm以下:普通
−20mm超過:不良
【0076】
【表3】
【0077】
試験の結果、比較例1のフレキシブル銅箔張積層板は、剥離強度、銅箔剥離強度、屈曲性、反り特性の面で非常に低く、比較例2〜
6でも概して低い物性が示されているが、これに対し、本発明に係る全ての実施例においては、フレキシブル銅箔張積層板として要求される基本物性、例えば、剥離強度、銅箔剥離強度、屈曲性、反り特性の面でいずれも優れた物性を有することがわかる。