特許第5763066号(P5763066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763066有機エレクトロルミネセンス素子のための新規な材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763066
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセンス素子のための新規な材料
(51)【国際特許分類】
   C07C 15/38 20060101AFI20150723BHJP
   C07C 1/32 20060101ALI20150723BHJP
   C07D 235/18 20060101ALI20150723BHJP
   C08G 61/10 20060101ALI20150723BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150723BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   C07C15/38CSP
   C07C1/32
   C07D235/18
   C08G61/10
   C09K11/06 690
   C09K11/06 610
   C09K11/06 620
   C09K11/06 640
   C09K11/06 655
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】79
(21)【出願番号】特願2012-521992(P2012-521992)
(86)(22)【出願日】2010年7月5日
(65)【公表番号】特表2013-500281(P2013-500281A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】EP2010004054
(87)【国際公開番号】WO2011012212
(87)【国際公開日】20110203
【審査請求日】2013年7月4日
(31)【優先権主張番号】102009034625.2
(32)【優先日】2009年7月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】パルハム、アミア・ホサイン
(72)【発明者】
【氏名】ブエシング、アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ハイル、ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】シュトエッセル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ホルバッハ、ミハエル
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−242879(JP,A)
【文献】 特開2009−132706(JP,A)
【文献】 特開2005−302667(JP,A)
【文献】 Yang, Hua; Petersen, Jeffrey L.; Wang, Kung K.,Synthesis and separation of the atropisomers of 2-(5-benzo[b]fluorenyl)-2'-hydroxy-1,1'-binaphthyl and related compounds,Tetrahedron,英国,2006年,62(34),8133-8141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)または式(2)の化合物。
【化1】
(ここで、非特異的結合として引かれたダッシュ記号は、基Ar、XまたはYが、各場合に、互いに独立して、夫々のベンゾ[a]アントラセンの8,9あるいは11位の一つを介して結合し、対応して基Rは、この位置には結合していないことを示すことを意図しており、記号と添え字には、以下が適用される:
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する二価のモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、
X、Yは、出現毎に同一であるか異なり、添え字pとqに依存して、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する一、二、三、四、五あるいは六価のモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であるか;または、Xおよび/またはYは、p=0および/またはq=0ならば、N(Ar基であり;または、Xおよび/またはYは、p=2および/またはq=2ならば、NあるいはP=Oであり、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OAr、B(OR、OSO、OH、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有するアルケニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、各場合に、1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり; ここで、同一の窒素あるいは燐原子に結合する2個の基Arは、単結合により、または、B(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rから選ばれるブリッジにより、互いに連結されてもよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dもしくは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよく k、l、m、nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、
p、qは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり、
ただし、次の化合物は、除外される。
【化2】
【請求項2】
基Ar、XまたはYが、各場合に、互いに独立して、ベンゾ[a]アントラセンの8および11位の一つを介して結合し、対応して基Rは、この位置には結合していないことを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
ベンゾ[a]アントラセンの1,2,3,4,5および6位の基Rは、Hであるか、または、水素以外のRは、2,3,4,5もしくは6位の一つのみに存在するか、および/または、ベンゾ[a]アントラセンの7および12位の2個の基Rは、両者のいずれがHであるか、いずれもがHでないことを特徴とする、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
以下の式(3)〜(8)から選択される、請求項1〜3何れか1項記載の化合物。
【化3-1】
【化3-2】
(ここで、基ArもしくはXもしくはYが、ベンゾ[a]アントラセンの8,9あるいは11位の一つを介して結合し、記号と添字は、請求項1に記載されるのと同じ意味を有し、RはRと同じ意味を有し、ただし、ベンゾ[a]アントラセン中の両方のRは、いずれがHもしくはDであるか、いずれもがHおよびDでない。)
【請求項5】
式(9)〜(21)から選択される、請求項1〜4何れか1項記載の化合物。
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
(ここで、記号と添字は、請求項1に記載されるのと同じ意味を有し、式(9)と式(10)中の基Xおよび式(14)〜(17)中の基Yは、各場合に、一価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造または基N(Arであり、ここで、RはRと同じ意味を有し、ただし、ベンゾ[a]アントラセン中の両方のRは、いずれがHであるか、いずれもがHでなく、ここで、Wは以下の式(22)または(23)の基であり、
【化5】
ここで、式(22)または(23)中の破線は、この基がArもしくはYと結合する位置を示し;
水素以外の1個の置換基Rは、式(9)〜(23)の夫々で4-位か、5位で結合してよい。)
【請求項6】
基Xおよび/またはYは、基ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、カルバゾール、フェナントレン、ベンズアントラセン、クリセン、ピレン、フェナントロリン、フェナントロイミダゾール、1,3,5-トリアジン、ベンズイミダゾール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンもしくはトリアリールアミンから構築され、または、p=0および/またはq=0ならばN(Ar基を表すことを特徴とする、請求項1〜5何れか1項記載の化合物。
【請求項7】
p=0の化合物の基Xとq=0の化合物の基Yは、次の式(24)〜(36)の単位から選ばれることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載の化合物。
【化6】
(ここで、RとRは、請求項1に示される意味を有し、さらに、
Arは、5〜16個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であって、夫々は、1以上の基Rにより置換されてよいものであるか、または、式(24)においては、式(31)あるいは(32)の基であり、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、5〜20個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基または15〜30個の芳香族環原子を有するトリアリールアミン基であって、夫々は、1以上の基Rにより置換されてよいものであり、ここで、二個のArは基Eにより架橋されてもよく、
Eは、単結合、O、S、N(R)またはC(Rを表し、ここで、基C(R上の2個の基Rは、環形成によりスピロ構造を形成してもよく、
tは、1、2もしくは3であり、
sは、出現毎に同一であるか異なり、0もしくは1であり、
ここで、tは、何個のArが連続して出現するかを示すことを意図している。)
【請求項8】
式(1)〜(23)の化合物における記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,4-ナフチレン、9,10-アントリレン、2,7-フェナントレニレン、3,6-フェナントレニレン、1,6-ピレニレン、2,7-ピレニレン、2,6-ピリジニレン、2,5-ピリジニレン、2,2’-ビフェニル、3,3’-ビフェニル、4,4’-ビフェニル、2,7-フルオレニルもしくは2,7-スピロビフルオレニルから選択されるアリーレンまたはヘテロアリーレン基を表すことを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の化合物。
【請求項9】
p=1および/またはq=1の式(1)〜(8)または式(11)〜(21)の化合物における記号Xおよび/またはYは、夫々、互いに独立して、5〜14個の芳香族環原子を有する二価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を表し、および、p=2および/またはq=2の式(1)〜(8)の化合物における記号Xおよび/またはYは、Nまたは5〜14個の芳香族環原子を有する三価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を表し、および、p>2および/またはq>2の式(1)および式(2)の化合物における記号Xおよび/またはYは、対応してより高い価数の5〜14個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を表すことを特徴とする、請求項1乃至8何れか1項記載の化合物。
【請求項10】
反応性脱離基により、8,9あるいは11位で置換されたベンゾ[a]アントラセンが、カップリングして、官能化芳香族化合物またはモノもしくはポリ置換アミンとなる、請求項1〜9何れか1項記載の化合物の調製方法。
【請求項11】
式(37)または(37a)の化合物。
【化7】
(ここで、R、RおよびArは、請求項1に記載されるのと同じ意味を有し、Rは、ベンゾ[a]アントラセンの8,9もしくは11位で結合し、対応して、基Rは、この位置で結合せず、さらに:
、Rは、Cl、Br、I、B(ORまたはB(OArを表し、以下の化合物は本発明から除外される。
【化8】
)
【請求項12】
1以上の基RもしくはRまたはArまたはXもしくはYは、請求項1〜9何れか1項記載の化合物からのポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーへの結合を表す、請求項1〜9何れか1項記載の化合物を含むオリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマー。
【請求項13】
式(38)または式(39)または請求項11記載の化合物または請求項12記載のオリゴマー、デンドリマーもしくはポリマーの、電子素子での使用。
【化9】
(式中、使用される記号と添え字は、請求項1で定義されるのと同じ意味を有する。)
【請求項14】
少なくとも一つの請求項1〜9何れか1項もしくは請求項11記載の化合物または少なくとも一つの請求項12記載のオリゴマー、デンドリマーあるいはポリマーを含む、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)もしくは有機光受容器から選ばれる有機電子素子。
【請求項15】
請求項1〜9何れか1項もしくは請求項11記載の化合物が、蛍光ドーパントのためのホスト材料として使用され、ここで、蛍光ドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテルおよびアリールアミンから選ばれることを特徴とする、または請求項1〜9何れか1項記載の、もしくは請求項11記載の化合物が、発光材料(ドーパント)として、正孔輸送材料として、正孔注入材料として、または電子輸送材料として使用されることを特徴とする請求項14記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項16】
少なくとも一つの請求項1〜9何れか1項もしくは請求項11記載の化合物または請求項12記載のオリゴマー、デンドリマーあるいはポリマーと少なくとも一つの溶媒を含む、溶液もしくは処方
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換ベンゾ[a]アントラセン誘導体、その調製、その有機電子素子での使用、有機電子素子、特に、青色発光有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、これら化合物は、発光層でのマトリックス材料あるいはドーパントとして、および/または正孔輸送材料としておよび/または電子輸送材料として使用される。
【0002】
有機半導体は、多くの異なる型の電子用途のために開発されている。これら有機半導体が、機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461およびWO 98/27136に記載されている。しかしながら、これらの素子が、高品質で長寿命の表示装置のために使用することができるまでには、さらなる改善がなお必要とされる。このように、特に、青色発光有機エレクトロルミネセンス素子の不十分な寿命と不十分な効率は、なお現在も未だ満足に解決されない問題である。さらに、化合物は、高い熱安定性と高いガラス転移温度を有し、分解せずに昇華する必要がある。特に、高温での使用のためには、高いガラス転移温度は、長寿命を達成するために重要である。
【0003】
蛍光OLEDのために、主に縮合芳香族化合物、特に、アントラセン誘導体が、たとえば、9,10-ビス(2-ナフチル)アントラセン(US 5935721)が、先行技術にしたがって、特別に、青色発光エレクトロルミネセンス素子のためのホスト材料として使用される。WO 03/095445およびCN 1362464は、OLEDでの使用のための9,10-ビス(1-ナフチル)アントラセン誘導体を開示する。さらなるアントラセン誘導体は、WO 01/076323、WO 01/021729、WO 04/013073、WO 04/018588、WO 03/087023、WO 04/01858、WO 07/021117、WO 08/145239 および WO 07/114358に開示されている。アリール置換ピレンおよびクリセン系のマトリックス材料は、WO 04/016575に記載されている。高品質の用途のためには、改善されたマトリックス材料を提供する必要がある。
【0004】
青色発光化合物(エミッター、ドーパント)の場合に言及されてもよい先行技術は、アリールビニルアミンの使用である(たとえば、WO 04/013073、WO 04/016575、WO 04/018587)。しかしながら、これらの化合物は、熱的に不安定であり、分解せずに蒸発することはできず、OLED製造のための高度な技術的複雑性を必要とし、それゆえに工業的不都合を示している。したがって、高品質の用途のためには、特に、素子と昇華安定性と発光色に関して、改善された発光材料を提供する必要がある。
【0005】
したがって、有機電子素子において、熱的に安定であり、良好な効率と同時に長い寿命をもたらし、素子の製造中と動作中に再現性のある結果を与え、合成的に簡単に入手可能である改善された材料、特に、蛍光エミッター、特に、青色蛍光エミッターと蛍光材料に対する需要が引き続き存在する。さらなる改善が、正孔および電子輸送材料の場合にも必要である。
【0006】
驚くべきことに、8,9あるいは11、特に、8あるいは11位の少なくとも一つで、芳香族もしくは複素環式芳香族基により、ジアリールアミノ基により、または以下に定義されるその他の基のひとつにより置換されたベンゾ[a]アントラセン誘導体は、有機エレクトロルミネセンス素子での使用のために非常に高度に適していることが見出された。これら化合物は、先行技術にしたがう材料と比べて、素子における効率と、特に、寿命における増加を可能とする。これは、特に、青色蛍光素子にあてはまる。さらに、これら化合物は、高い熱安定性を有する。一般的に、これら材料は、高いガラス転移温度を有することから、有機電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用のために非常に高度に適している。したがって、本発明は、これら材料と有機電子素子でのそれらの使用に関する。
【0007】
これらの位置で、芳香族置換基により置換されたベンゾ[a]アントラセン誘導体は、既に散発的に文献に記載されてきた(たとえば、Maruyama et al., Chem. Lett. 1975, (1), 87-88; C. L. L. Chai et al., Austr. J. Chem. 1995, 48(3), 577-591, M. C. Kloetzel et al., J. Org. Chem. 1961, 26, 1748-1754 等)。しかしながら、これらの化合物の合成と反応性だけが研究されてきた。有機電子素子におけるこれら化合物の使用は提案されてはこなかった。さらに、WO 05/090365は、とりわけ、有機エレクトロルミネセンス素子での使用のためのポリ環状芳香族基を含む種々の有機シラン化合物を開示しており、それは、他の多くの化合物に加えて、アリール置換ベンゾアントラセンを含んでいる。これら化合物の特別の効果は、ここで、有機シリル基の存在に帰するものであり、置換ベンゾアントラセン骨格に帰するものではない。
【0008】
明確さのために、ベンゾ[a]アントラセンの構造と番号付けが、以下に示される。
【化1】
【0009】
本発明は、以下の式(1)または式(2)の化合物に関する。
【化2】
【0010】
ここで、非特異的結合として引かれたダッシュ記号は、基Ar、XまたはYが、各場合に、互いに独立して、ベンゾ[a]アントラセンの8,9あるいは11位の一つを介して結合し、対応して基Rは、この位置には結合していないことを示すことを意図しており、記号と添字は、以下が適用される:
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する二価のモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、
X、Yは、出現毎に同一であるか異なり、添え字pとqに依存して、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する一、二、三、四、五あるいは六価のモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であるか;または、Xおよび/またはYは、p=0および/またはq=0ならば、N(Ar基であり;または、Xおよび/またはYは、p=1および/またはq=1ならば、単結合もしくはC=O、O、S、SO、SO、NR、NAr、P(=O)Ar、O-B-(Ar)-O、O-BR-Oまたは1〜20個のC原子を有するアルキレン基であって、夫々は、各場合に、1以上の基Rで置換されてよく、ここで、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよく;または、p=2および/またはq=2ならば、Xおよび/またはYは、NあるいはP=Oであり、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OAr、B(OR、OSO、OH、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または2〜40個のC原子を有するアルケニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、各場合に、1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いに結合して、モノ-あるいはポリ環状脂肪族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するモノ-あるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;同一の窒素あるいは燐原子に結合する2個の基Arは、単結合により、または、B(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rから選ばれるブリッジにより、ここで、互いに連結されてもよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dもしくは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよく;2以上の隣接する置換基Rは、ここで、互いにモノ-あるいはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
k、l、m、nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、
p、qは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり、
ただし、次の式(1)または式(2)の化合物は、除外される。
【化3】
【0011】
本発明の具体例では、式(1)または式(2)の化合物は、荷電していない。
【0012】
式(1)または式(2)の化合物は、好ましくは、70℃より大きい、特に、好ましくは、100℃より大きい、非常に、特に、好ましくは、130℃より大きいガラス転移温度Tを有する。
【0013】
一、二、三、四、五あるいは六価のモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、好ましくは、5〜60個の、特に、好ましくは、5〜40個の、より好ましくは、5〜30個の、さらにより好ましくは、5〜20個の、さらにより好ましくは、6〜14個の、最も好ましくは、6〜10個の芳香族環原子を含む。本発明の意味での芳香族環構造は、6〜60個のC原子を環構造中に含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造は、2〜60個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、加えて、複数のアリールもしくはヘテロアリール基は、たとえば、sp混成のC、NあるいはO原子のような短い非芳香族単位(H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。このように、たとえば9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン、ベンゾフェノン等のような構造も、本発明の目的のための芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、同様に、複数のアリールもしくはヘテロアリール基が互いに単結合により連結される構造、たとえば、ビフェニル、ターフェニルもしくはビピリジンを意味するものと解される。しかしながら、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、最も好ましくは、完全縮合構造である。
【0014】
本発明の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の例は、各場合に、上記した基R、好ましくは、基Rの非芳香族代表により置換されていてもよく、任意の所望の位置で、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造に連結していてもよいが、以下を含む:ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンズアントラセン、ベンゾフェナントレン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾール。
【0015】
本発明の目的のために、直鎖、分岐あるいは環状アルキル基は、好ましくは、1〜40個のC原子を、より好ましくは、1〜20個のC原子または3〜40個のC原子を、より好ましくは、3〜20個のC原子を夫々有するアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を意味するものと解される。環状アルキル基は、モノ-、ビ-またはポリ-環状アルキル基であり得る。個々の-CHまたは-CH基は、N、NH、OもしくはSで置き代えられてよい。好ましいものは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルあるいはオクチニルである。
【0016】
直鎖、分岐あるいは環状アルコキシもしくはチオアルコキシ基は、OもしくはS原子を介して化合物の残部に結合する上記定義のとおりのアルキル基を意味するものと解される。
【0017】
好ましいアルコキシ基は、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシおよび2,2,2-トリフルオロエトキシである。
【0018】
好ましいチオアルコキシ基は、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチルチオ、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオ、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオおよびオクチニルチオである。
【0019】
5〜60個、好ましくは、5〜40個、特に、好ましくは、5〜20個、最も好ましくは、6〜14個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基は、O原子を介して上記定義のとおりのモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族基を有する基を意味するものと解される。
【0020】
アルキレン基は、直鎖、分岐あるいは環状であって、好ましくは、1〜20個もしくは3〜20個のC原子を、より好ましくは、1〜6個もしくは3〜6個のC原子を夫々含んでもよく、ここで、加えて、一以上の-CH基は、NH、NR、OもしくはSで置き代えられてよく、加えて、一以上のH原子はFで置き代えられてよい飽和あるいは不飽和脂肪族炭化水素基を意味するものと解される。より好ましいものは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖飽和炭化水素である。1〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素の例は、以下を含む:メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、sec-ブチレン(1-メチルプロピレン)、tert-ブチレン、イソペンチレン、n-ペンチレン、tert-ペンチレン(1,1-ジメチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン(ネオペンチル)、1-エチルプロピレン、2-メチルブチレン、n-ヘキシレン、イソヘキシレン、1,2-ジメチルブチレン、1-エチル-1-メチルプロピレン、1-エチル-2-メチルプロピレン、1,1,2-トリメチルプロピレン、1,2,2-トリメチルプロピレン、1-エチルブチレン、1-メチルブチレン、1,1-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、1,3-ジメチルブチレン、2,3-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチレン、2-エチルブチレン、1-メチルペンチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、2-エチルヘキシレン、トリフルオロメチレン、ペンタフルオロエチレン、2,2,2-トリフルオロエチレン、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、シクロペンテニレン、ヘキセニレン、シクロヘキセニレン、ヘプテニレン、シクロヘプテニレン、オクエテニレンおよびシクロオクエテニレン。
【0021】
本発明の1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素は、好ましくは、直鎖、分岐あるいは環状アルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、一以上の炭素原子は、O、NもしくはSで置き代えられてよい。さらに、一以上の水素原子は、フッ素で置き代えられてよい。1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素の例は、以下を含む:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル(1-メチルプロピル)、tert-ブチル、イソ-ペンチル、n-ペンチル、tert-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、1,2-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-メチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルおよびオクチニルである。
【0022】
芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素は、好ましくは、5〜20個、より好ましくは、5〜10個、最も好ましくは、5または6個の芳香族環原子を含む。単位が芳香族単位であるならば、環原子として、好ましくは、6〜20個、より好ましくは、6〜10個、最も好ましくは、6個の炭素原子を含む。単位が複素環式芳香族単位であるならば、好ましくは、5〜20個、より好ましくは、5〜10個、最も好ましくは、5個の芳香族環原子を含み、その中の少なくとも一つはヘテロ原子である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族単位は、単純な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または単純な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合アリールもしくはヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフランおよびインドール等を意味するものと解される。
【0023】
本発明の芳香族もしくは複素環式芳香族単位の例は、以下のとおりである:ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ベンズアントラセン、ベンゾフェナントレン、ペリレン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾール。
【0024】
二価もしくは多価脂肪族単位は、好ましくは、-CH-(CH-CH-基であって、ここで、hは、二価単位の場合には、0、1、2もしくは3であり、多価、好ましくは、三価もしくは四価単位の場合には、4〜10個の炭素原子を有する脂肪族基である。これら単位中の一以上の、好ましくは、一個のCH基は、NH、OもしくはSで置き代えられてよく、一以上の、好ましくは、一個のCH基は、Nで置き代えられてよい。さらに一以上のH原子は、Rで置換されてもよい。
【0025】
上記のとおり、基ArまたはXまたはYは、8,9もしくは11位を介してベンゾ[a]アントラセンに結合する。式(1)または(2)の化合物が、複数のベンゾ[a]アントラセン単位を含むならば、すなわち、添え字pおよび/またはqが1以上であるならば、これら単位の夫々は、ベンゾ[a]アントラセンの同じ位置を介してか、または、ベンゾ[a]アントラセンの異なる位置を介して結合してよい。ベンゾ[a]アントラセンの同じ位置を介して結合することは、化合物がより容易に合成により入手可能であるという優位性を有する。ベンゾ[a]アントラセンの異なる位置を介して結合することは、非対称化合物を生じ、一般的には、より高い溶解性とより高いガラス転移温度を有するという優位性を有する。本発明のさらなる具体例では、式(1)または(2)の基Ar、XまたはYは、
各場合に、互いに独立して、ベンゾ[a]アントラセンの8および11位の一つを介して、好ましくは、各場合に結合し、対応して基Rは、この位置には結合していない。これらの場合には、9位での結合とは対照的に、ベンゾ[a]アントラセン-Arもしくはベンゾ[a]アントラセン-Y結合周囲のアトロプ異性体の形成が、たとえば、アントラセン等の嵩高い基Ar、XもしくはYの場合に可能である。
【0026】
なおさらなる本発明の具体例では、式(2)の化合物は、好ましくは、q=0の場合に、Yが基N(Arである化合物である。
【0027】
なおさらなる本発明の具体例では、式(1)または(2)の化合物中のベンゾ[a]アントラセンの1,2,3,4,5および6位の基Rは、Hである。これに関しては、これは、存在する複数のベンゾアントラセン基が一つの場合だけで可能である。しかしながら、出現する二以上もしくはすべてのベンゾアントラセン基がこのような置換を有することも可能である。
【0028】
なおさらなる本発明の具体例では、式(1)または(2)の化合物は、好ましくは、水素以外の基Rが、2,3,4,5もしくは6位、好ましくは、4または5位の一つに厳密に存在する。この基Rは、好ましくは、上記定義のとおりの芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0029】
なおさらなる本発明の具体例では、式(1)または(2)の化合物中のベンゾ[a]アントラセンまたは適切には、複数のもしくはすべてのベンゾ[a]アントラセンの7および12位の2個の基Rは、夫々、好ましくは、両者のいずれかがHであるか、Hでない。7および12位の基はHでなければ、それらは、好ましくは、同一の基、特に、メチル、フェニル、ナフチルもしくはビフェニルであり、夫々は、一以上の非芳香族基Rにより置換されてよい。
【0030】
なおさらなる本発明の具体例では、式(1)または(2)の化合物は、以下の式(3)〜(8)から選択される:
【化4-1】
【化4-2】
【0031】
ここで、基ArもしくはXもしくはYが、ベンゾ[a]アントラセンの8,9あるいは11位、好ましくは、8または11位の一つ、適切には、ベンゾ[a]アントラセンを介して結合し、記号と添字は、上記具体例に記載されるものと同じ意味を有し、ここで、RはRと同じ意味を有し、ただし、ベンゾ[a]アントラセン中の両方のRは、いずれかがHもしくはDであるか、両方のRは、HおよびDでない。
【0032】
式(3)〜(8)の構造において、ベンゾアントラセンもしくは複数のベンゾアントラセン上の1位の置換基Rは、好ましくは、水素である。同様に特に、好ましいものは、すべての置換基Rが水素であるものである。
【0033】
なおさらなる本発明の具体例では、上記具体例の化合物は、好ましくは、式(9)〜(21)から選択される。
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【0034】
ここで、記号と添字は、上記具体例に記載されるのと同じ意味を有し、式(9)と式(10)中の基Xおよび式(14)〜(17)中の基Yは、各場合に、一価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造または基N(Arであり、ここで、RはRと同じ意味を有し、ただし、ベンゾ[a]アントラセン中の両方のRは、いずれかがHであるか、Hでなく、Wは以下の式(22)または(23)の基であり、
【化6】
【0035】
ここで、式(22)または(23)中の破線は、この基がArもしくはYと結合する位置を示す。
【0036】
式(9)〜(23)の化合物中で、各場合に、水素以外のさらなる置換基Rは、ベンゾアントラセンの4位もしくは5位に結合してよい。
【0037】
なおさらなる本発明の具体例では、基Xおよび/またはYは、基ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、カルバゾール、フェナントレン、ベンズアントラセン、クリセン、ピレン、フェナントロリン、フェナントロイミダゾール、1,3,5-トリアジン、ベンズイミダゾール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンもしくはトリアリールアミン、特に、トリフェニルアミンから構築され、または、p=0および/またはq=0ならば、N(Ar基を表す。
【0038】
なおさらなる本発明の具体例では、p=0の化合物の基Xとq=0の化合物の基Yは、次の式(24)〜(36)の群から選ばれる。
【化7】
【0039】
ここで、RとRは、上記具体例に示される意味を有し、さらに、
Arは、5〜16個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基、好ましくは、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-アントリル、クリセニル、1-ピレニル、2-ピレニル、2-フェナントレニル、3-フェナントレニル、9-フェナントレニル、2-ベンズイミダゾール、2-フルオレニル、2-スピロビフルオレニル、フルオランセニル、2-ベンズ[a]アントラセニル、3-ベンズ[a]アントラセニル、4-ベンズ[a]アントラセニル、5-ベンズ[a]アントラセニルもしくは6-ベンズ[a]アントラセニルであって、夫々は、1以上の基Rにより置換されてよいものであるか、または、式(24)においては、式(31)あるいは(32)の基である。
【0040】
Arは、出現毎に同一であるか異なり、5〜20個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基または15〜30個の芳香族環原子を有するトリアリールアミン基であって、夫々は、1以上の基Rにより置換されてよいものであり、好ましくは、6〜14個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基または18〜30個の芳香族環原子、好ましくは、18〜22個の芳香族環原子を有するトリアリールアミン基であって、夫々は、1以上の基Rにより置換されてよいものであり、ここで、二個の基Arは基Eにより架橋されてもよい。
【0041】
Eは、単結合、O、S、N(R)またはC(Rを表し、ここで、基C(R上の2個の基Rは、環形成によりスピロ構造を形成してもよい。
【0042】
qは、1、2または3である。
【0043】
sは、出現毎に同一であるか異なり、0または1である。
【0044】
ここで、tは、何個のArが連続して出現するかを示すことを意図している、すなわち、tが1である場合には、Arは、末端の一価基であり、tが2である場合には、基Arは、第2の基Arが一価の末端基として結合する二価基であり、または、tが3である場合には、互いに結合する第1と第2の単位Arは、夫々二価単位であり、第3の基Arは、第2の基Arに結合する末端一価単位である。t=2に対する、特に、好ましい構造は、オルト-ビフェニル、メタ-ビフェニル、パラ-ビフェニル、フェニレン-1-ナフチル、フェニレン-2-ナフチル、N-フェニル-2-ベンズイミダゾール、2-フルオレニルおよび2-スピロビフルオレニルである。
【0045】
式(32)中のArは、特に、好ましくは、同一であるか異なり、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-、3-あるいは4-トリフェニルアミンもしくは1-あるいは2-ナフチルジフェニルアミンであって、各場合にナフチルもしくはフェニル基を介して結合してよく、または、1-もしくは2-ジナフチルフェニルアミンであって、夫々ナフチルもしくはフェニル基を介して結合してよい。これらの基は、1〜4個のC原子を有する一以上のアルキル基または3〜8個のC原子を有する一以上の環状もしくは二環状アルキル基によりまたはフッ素もしくはシアノにより置換されてよい。
【0046】
上記具体例の化合物で、さらに好ましいものは、式(1)〜(23)の化合物における記号Arが、出現毎に同一であるか異なり、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,4-ナフチレン、9,10-アントリレン、2,7-フェナントレニレン、3,6-フェナントレニレン、1,6-ピレニレン、2,7-ピレニレン、2,6-ピリジニレン、2,5-ピリジニレン、2,2’-ビフェニル、3,3’-ビフェニル、4,4’-ビフェニル、2,7-フルオレニルあるいは2,7-スピロビフルオレニルから選択されるアリーレンもしくはヘテロアリーレンを表す。式(1)〜(8)および式(11)〜(21)中の基Arは、同一であるか異なって選択することができるという点が明らかに強調されるべきである。
【0047】
なおさらなる本発明の具体例では、p=1および/またはq=1の式(1)〜(8)または式(11)〜(21)の化合物における記号Xおよび/またはYは、夫々、互いに独立して、単結合またはC=O、O、NAr、POAr、O-B(Ar)O、1〜6個のC原子を有する二価のアルキレン基、5〜14個の芳香族環原子を有する二価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれる二価基を表し、および、p=2および/またはq=2の式(1)〜(8)の化合物における記号Xおよび/またはYは、Nまたは5〜14個の芳香族環原子を有する三価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、特に、1,3,5-ベンゼンあるいは1,3,5-トリアジンを表し、およびp>2および/またはq>2の式(1)および式(2)の化合物における記号Xおよび/またはYは、対応してより高い価数の5〜14個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を表す。
【0048】
式(1)、(3)、(5)、(7)および(11)〜(13)の化合物においては、添え字mとnは、同一に選ばれてよく、対称化合物を生じ、または、異なって選ばれてよく、非対称化合物を生じる。既に上記で言及したように、対称化合物はより簡単に合成により入手可能であるという優位性を有し、非対称化合物は、より適切な物理的性質を有することが多いという優位性を有する。
【0049】
さらに好ましい式(1)〜(23)の化合物においては、添え字m、n、kおよびlは、0である。
【0050】
さらに好ましい式(1)〜(23)の化合物においては、添え字pもしくはqは、0、1もしくは2であり、特に、好ましくは、0もしくは1である。
【0051】
Rが基N(Arであるならば、この基は、好ましくは、上記式(31)の基または式(32)の基から選ばれる。
【0052】
式(1)および(2)の化合物の例は、以下に示される。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【化8-5】
【化8-6】
【化8-7】
【化8-8】
【化8-9】
【化8-10】
【化8-11】
【化8-12】
【化8-13】
【化8-14】
【化8-15】
【化8-16】
【化8-17】
【化8-18】
【化8-19】
【化8-20】
【化8-21】
【化8-22】
【化8-23】
【化8-24】
【化8-25】
【0053】
本発明による式(1)もしくは式(2)の化合物は、当業者に一般的に知られる合成工程により調製することができる。出発化合物は、たとえば、対応するブロモベンゾ[a]アントラセンであり得、その合成は知られている(8-ブロモベンゾ[a]アントラセン:J. L. Wood et al., J. Am. Chem. Soc. 1951, 73(9), 4494-4495、9-ブロモベンゾ[a]アントラセン: M. C. Kloetzel et al., J. Org. Chem. 1961, 26(6), 1748-1754、8-および11-ブロモベンゾ[a]アントラセン:V. Snieckus et al., Tetrahedron Lett. 1985, 26(9), 1145-1148)。塩素、ヨウ素、トリフレートあるいはトシレートのような対応する脱離基により置換されたベンゾ[a]アントラセンは、同様に出発化合物として役立ち得る。ベンゾ[a]アントラセン誘導体は、次いで、8-ブロモベンゾ[a]アントラセンの例によりスキーム1で示されるとおりの対応するベンゾ[a]アントラセンに還元することができる。
【0054】
スキーム1
【化9】
【0055】
スキーム1での化合物は、一以上の基Rで置換されてもよく、ここで、Rは式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0056】
代替として、8-ブロモベンゾ[a]アントラキノン誘導体の例により、スキーム2で示されるとおりに、アントラキノン誘導体が、カップルし、次いで、対応する炭化水素に還元することができる。ここで、単純な芳香族化に代えて、対応する7,12-置換ベンゾ[a]アントラセン誘導体も、有機金属試薬、たとえば、有機リチウム化合物あるいはグリニャール化合物の付加反応と引き続く芳香族化により合成することができる。
【0057】
スキーム2
【化10】
【0058】
スキーム2での化合物は、一以上の基Rで置換されてもよく、ここで、Rは式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0059】
これら化合物由来のボロン酸あるいはボロン酸誘導体は、4-ブロモベンゾ[a]アントラセンの例を参照して、スキーム3の例により示されているように、たとえば、−78℃でTHF中のn-ブチルリチウムを使用する金属転移と、引き続く、中間体として生成されるリチオベンゾ[a]アントラセンとトリメチルボレートとの反応と、引き続く随意のエステル化により得ることができる。リチウム化化合物は、さらに、ベンゾニトリルのような求電子試薬との反応と、引き続く酸加水分解によりケトンに変換されるか、クロロジアリールホスフィンを使用し、引き続く酸化によりホスフィンオキシドに変換することができる。他の求電子試薬とリチウム化化合物との反応も可能である。
【0060】
スキーム3
【化11】
【0061】
スキーム3での化合物は、一以上の基Rで置換されてもよく、ここで、Rは式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0062】
ボロン酸あるいはボロン酸誘導体のアリールブロミドへの鈴木カップリングは、大きなクラスの異なる芳香族基もしくは複素環式芳香族化合物を生じる。これは、ベンゾ[a]アントラセン-4-ボロン酸から出発するスキーム4a)からe)での例により示されるが、その他の置換パターンにも同様に適用される。さらに、全構造は1以上の基Rにより置換されもよく、Rは、式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0063】
スキーム4
【化12】
【0064】
ハートウイッグ-ブッフバルト法によるパラジウムで促進される臭素のアミノ化は、対応するアミノ化されたベンゾ[a]アントラセンを生じる(スキーム6)。ベンゾ[a]アントラセンのその他の位置でのアミノ化は、対応して可能である。塩素、ヨウ素、トリフレート、トシレート等のような他の脱離基との対応する反応が可能である。
【0065】
スキーム5
【化13】
【0066】
スキーム4と5での化合物は、一以上の基Rで置換されてもよく、ここで、Rは式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0067】
さらに、ボロン酸は、ジオール、オリゴオールおよびポリオールと反応して、ボロン酸エステルを得るか、水分離機上でのトルエン中の還流により無水物を得ることができる(スキーム6)。ベンゾ[a]アントラセン上の9および11位置のための反応は対応して進行する。
【0068】
スキーム6
【化14】
【0069】
スキーム6での化合物は、一以上の基Rで置換されてもよく、ここで、Rは式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0070】
本発明は、なおさらに、反応性脱離基、特に、塩素、臭素、ヨウ素、トリフレート、トシレート、ボロン酸あるいはボロン酸エステルにより置換されたベンゾ[a]アントラセンを官能化された芳香族化合物へと、またはモノあるいはジ置換アミンへとカップリングすることによる式(1)もしくは式(2)の化合物の調製方法に関する。反応性脱離基は、好ましくは、臭素である。式(1)もしくは式(2)の骨格とアリール置換基との間の適切なカップリング反応は、特に、遷移金属触媒カップリング反応、特に、パラジウム触媒による鈴木カップリングであり、その結果、ボロン酸誘導体のハロゲン誘導体へのカップリングが、ここで、特に、適切である。適切なモノあるいはジ置換アミンへのカップリング反応は、特に、ハートウイッグ-ブッフバルト法によるパラジウム触媒カップリングである。ウルマンカップリングは、この目的のために、さらに適切である。このような反応のための反応条件は、有機合成の分野の当業者に一般的な条件で知られている。
【0071】
上記ベンゾ[a]アントラキノン誘導体は、追加的に臭素化され、二官能化ベンゾ[a]アントラキノン誘導体が得られる。これは、8-ブロモベンゾ[a]アントラキノンの臭素化の例により、スキーム7で示される。塩素、ヨウ素、トリフレート、トシレート等の対応する脱離基により置換されたベンゾ[a]アントラキノン誘導体も、同様に出発物質として役立ち、二個の異なる脱離基を有するベンゾ[a]アントラキノン誘導体を得ることができる。
【0072】
スキーム7
【化15】
【0073】
スキーム7での化合物は、一以上の基Rで置換されてもよく、ここで、Rは式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0074】
二官能化ベンゾ[a]アントラキノン誘導体は、4,8-ジブロモベンゾ[a]アントラセンの例により、スキーム8に示されるとおりに、次いで、対応するベンゾ[a]アントラセンに還元することができる。
【0075】
スキーム8
【化16】
【0076】
スキーム8での化合物は、一以上の基Rで置換されてもよく、ここで、Rは式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0077】
代替として、アントラキノン誘導体が、スキーム2と同様にカップルし、次いで、対応する炭化水素に還元し、二置換ベンゾ[a]アントラセンを得ることができる。ここで、単純な芳香族化に代えて、対応する7,12-置換ベンゾ[a]アントラセン誘導体も、有機金属試薬、たとえば、有機リチウム化合物あるいはグリニャール化合物の付加反応と引き続く芳香族化により合成することができる。
【0078】
これら化合物由来のボロン酸あるいはボロン酸誘導体は、4,8-ブロモベンゾ[a]アントラセンの例により、スキーム9で示されているように、たとえば、−78℃でTHF中のn-ブチルリチウムを使用する金属転移と、引き続く、中間体として生成されたリチオベンゾ[a]アントラセンとトリメチルボレートとの反応と、引き続く随意のエステル化により得ることができる。リチウム化化合物は、さらに、ベンゾニトリルのような求電子試薬との反応と引き続く酸加水分解によりケトンに、または、ジアリールホスフィンクロリドとの反応と引き続く酸化によりホスフィンオキシドに変換することができる。他の求電子試薬とリチウム化化合物との反応も可能である。ここで、反応条件に応じて、一リチウム化もしくは二リチウム化が可能である。
【0079】
スキーム9
【化17】
【0080】
スキーム9での化合物は、一以上の基Rで置換されてもよく、ここで、Rは式(1)もしくは式(2)のもとで上記と同じ意味を有する。
【0081】
多様な異なる芳香族および複素環式芳香族化合物も、一官能化ベンゾ[a]アントラセンのためにスキーム4と5に記載された合成と類似して、二官能化ベンゾ[a]アントラセンから得ることができる。したがって、本発明は、さらに、二個の反応性脱離基、特に、塩素、臭素、ヨウ素、トリフレート、トシレート、ボロン酸あるいはボロン酸エステルにより置換された二官能化ベンゾ[a]アントラセンを、官能化された芳香族化合物へと、またはモノあるいはジ置換アミンへとカップリングすることによる、式(1)もしくは式(2)の化合物の調製方法に関する。反応性脱離基は、好ましくは、臭素である。式(1)もしくは式(2)の骨格とアリール置換基もしくはアミンとの間の適切なカップリング反応は、既に上記言及した反応タイプである。
【0082】
したがって、本発明は、さらに、式(1)もしくは式(2)の化合物の合成における重要な中間体である、以下の式(37)または(37a)の化合物に関する。
【化18】
【0083】
ここで、R、RおよびArは、(1)もしくは式(2)の化合物のための上記と同じ意味を有し、Rは、ベンゾ[a]アントラセンの8,9もしくは11位で結合し、対応して、基Rは、この位置で結合せず、さらに:
、Rは、Cl、Br、I、B(ORあるいはB(OArを表す。
【0084】
以下の化合物は本発明から除外される。
【化19】
【0085】
本発明は、さらに、(1)もしくは式(2)の化合物の調製のための式(37)または(37a)の化合物の使用に関する。
【0086】
WO 06/117052に一般的な用語で記載されるとおりに、式(37)または(37a)のボロン酸誘導体を、直接的に、有機電子素子での活性化合物として使用することも可能である。
【0087】
上記記載の本発明による化合物、特に、臭素、沃素、ボロン酸もしくはボロン酸エステルのような反応性脱離基により置換される化合物は、対応するオリゴマー、デンドリマーあるいはポリマーの調製のためのモノマーとして使用することができる。ここで、オリゴマー化もしくはポリマー化は、好ましくは、ハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基を介して生じる。
【0088】
したがって、本発明は、さらに、1以上の式(1)もしくは式(2)の化合物を含むオリゴマー、ポリマーあるいはデンドリマーに関し、ここで、1以上の基RまたはRまたはArまたはXまたはYは、式(1)もしくは式(2)の化合物からのポリマー、オリゴマーあるいはデンドリマーへの結合を表わす。したがって、式(1)もしくは式(2)の化合物の連結に依存して、ベンゾ[a]アントラセン単位は、オリゴマーあるいはポリマーの側鎖を形成し、または、主鎖中で連結する。本発明の目的のために、オリゴマーは、少なくとも三つのベンゾ[a]アントラセン単位を含む化合物を意味するものと解される。ポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーは、共役、部分共役あるいは非共役であり得る。オリゴマーもしくはポリマーは、線状あるいは分岐状あるいは樹状であり得る。線状で連結された構造においては、式(1)もしくは式(2)の単位は、互いに直接的に連結し得るか、または、2価の基を介して、たとえば、置換あるいは非置換アルキレン基を介してか、もしくは、ヘテロ原子を介してか、もしくは、2価の芳香族基あるいは複素環式芳香族基を介して互いに直接連結し得る。分岐状および樹状構造においては、3個以上の式(1)もしくは式(2)の単位は、たとえば、三価あるいは多価基、たとえば、三価あるいは多価芳香族基もしくは複素環式芳香族基を介して連結し、分岐状あるいは樹状オリゴマーもしくはポリマーを生じる。式(1)もしくは式(2)の単位は、好ましくは、オリゴマー、デンドリマーあるいはポリマー中に、ベンゾ[a]アントラセンの4および8位、4および9位または4および11位を介して連結する。基Rへの、または基Xもしくは基Yへの二個の位置を介する連結が、さらに、好ましい。
【0089】
オリゴマー、デンドリマーおよびポリマー中の式(1)もしくは式(2)の繰り返し単位に対して、上記記載と同じ選好が適用される。
【0090】
オリゴマーもしくはポリマーの調製のために、本発明によるモノマーは、さらなるモノマーとホモ重合もしくは共重合される。適切で好ましいコモノマーは、(たとえば、EP 842208もしくはWO 00/22026にしたがう)フルオレン、(たとえば、EP 707020、EP 894107もしくはWO 06/061181にしたがう)スピロビフルオレン、(たとえば、WO 92/18552にしたがう)パラ-フェニレン、(たとえば、WO 04/070772もしくはWO 04/113468にしたがう)カルバゾール、(たとえば、EP 1028136にしたがう)チオフェン、(たとえば、WO 05/014689もしくはWO 07/006383にしたがう)ジヒドロフェナントレン、(たとえば、WO 04/041901もしくはWO 04/113412にしたがう)シス-およびトランス-インデノフルオレン、(たとえば、WO 05/040302にしたがう)ケトン、(たとえば、WO 05/104264もしくはWO 07/017066にしたがう)フェナントレンまたは複数のこれら単位から選択される。ポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーは、通常、さらなる単位を、たとえば、(たとえば、WO 07/068325にしたがう)ビニルトリアリールアミンまたは(たとえば、WO 06/003000にしたがう)燐光金属錯体および/または電荷輸送単位、特に、トリアリールアミン系のもののような、たとえば、発光(蛍光あるいは燐光)単位をも含む。
【0091】
本発明のさらなる具体例は、以下の式(38)もしくは(39)の化合物もしくは式(37)の化合物または一以上の式(1)もしくは式(2)の化合物を含むオリゴマー、デンドリマーあるはポリマーの、電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関し、ここで、一以上の基RまたはRまたはArまたはXまたはYは、ポリマー、オリゴマーあるいはデンドリマーへの式(1)もしくは式(2)の化合物からの結合を表わす。
【化20】
【0092】
式中、使用される記号と添え字は、上記具体例と同じ意味を有する。
【0093】
式(1)もしくは式(2)の化合物と、対応するオリゴマー、デンドリマーおよびポリマーは、電子素子での、特に、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED、PLED)での使用のために適している。置換基に応じて、化合物は、異なる機能と層に使用される。
【0094】
したがって、本発明は、さらに、式(1)もしくは式(2)の化合物と、対応するオリゴマー、デンドリマーおよびポリマーの、特に、電子素子、特に、有機エレクトロルミネセンス素子での使用に関する。上記言及した式(3)〜(21)の好ましい化合物は、この目的のために特に適切である。
【0095】
本発明は、さらに、少なくとも一つの式(1)もしくは式(2)の化合物または少なくとも一つの対応するオリゴマー、デンドリマーあるいはポリマーを含む電子素子、特に、陽極、陰極および少なくとも1つの発光層を含む有機エレクトロルミネセンス素子に関し、発光層もしくは他の層であり得る少なくとも一つの有機層が、少なくとも一つの式(1)もしくは式(2)の化合物または少なくとも一つの対応するオリゴマー、デンドリマーあるいはポリマーを含むことを特徴とする。上記言及した式(3)〜(21)の好ましい化合物は、この目的のために特に適切である。
【0096】
陰極、陽極および発光層に加えて、有機エレクトロルミネセンス素子はさらなる層を含んでもよい。これらは、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、有機あるいは無機p/n接合および/または電荷生成層から選択される(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在する必要はないことが指摘されねばならない。
【0097】
有機エレクトロルミネセンス素子分野の当業者は、どの材料をこれらさらなる層に使用できるかを知っている。一般的には、先行技術に従い使用されるような全ての材料が、さらなる層のために適切であり、当分野の当業者は、創意を要さずに、これら材料と本発明による材料とを有機エレクトロルミネセンス素子中で組み合わせることができるであろう。本発明による有機エレクトロルミネセンス素子中の正孔輸送あるいは正孔注入層に使用することのできる好ましい正孔輸送材料の例は、インデノフルオレンアミンおよび関連誘導体(たとえば、WO 06/122630もしくはWO 06/100896にしたがう)、EP 1661888に開示されたアミン誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(たとえば、WO 01/049806にしたがう)、縮合芳香族環を有するアミン誘導体(たとえば、US5,061,569にしたがう)、WO 95/09147に開示されたアミン誘導体、モノベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO 08/0406449にしたがう)またはジベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO 07/140847にしたがう)である。
【0098】
本発明のさらに好ましい具体例では、有機エレクトロルミネセンス素子は、二個以上の発光層を有し、少なくとも一つの有機層は、少なくとも一つの式(1)もしくは式(2)の化合物を含む。これらの発光層は、特に好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発することができ、青色および黄色およびオレンジ色もしくは赤色光を発光することのできる種々の発光化合物が、発光層に使用される。ここで、式(1)もしくは式(2)の化合物は、好ましくは、青色発光層に使用される。特に、好ましいものは、3層構造であり、すなわち、3個の発光層を有する構造であり、これら層の少なくとも一つの層は、少なくとも一つの式(1)もしくは式(2)の化合物を含み、その3層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、たとえば、WO 05/011013参照。)。ここで使用される緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光エミッターは、好ましくは、燐光化合物である。広帯域発光帯を有し、それゆえ白色発光を呈するエミッターも、同様に白色発光のために適している。
【0099】
本発明の具体例では、式(1)〜(21)の化合物は、蛍光ドーパント、特に、青色蛍光ドーパントのためのマトリックス材料として使用される。この場合に、式(1)〜(10)および(14)〜(17)中の1以上の基Arおよび/またはXおよび/またはYは、好ましくは、単純あるいは縮合アリールもしくはヘテロアリール、特に、フェニルアントリルもしくは、1-あるいは2-ナフチルアントリルから選択される。式(1)〜(8)および(11)〜(21)中の1以上の基Arおよび/またはXおよび/またはYは、さらに好ましくは、縮合アリーレン基、特に、9,10-アントラセンから選択される
マトリックスとドーパントとを含む系中のマトリックス材料は、より高い割合で系中に存在する成分を意味するものと解される。1つのマトリックスと複数のドーパントを含む系では、マトリックスは、混合物中で最も高い割合を有する成分を意味するものと解される。さらに、複数のマトリックス材料の混合物を使用することも可能である
発光層中の式(1)もしくは式(2)のマトリックス材料の割合は、50.0〜99.9重量%、好ましくは、80.0〜99.5重量%、特に好ましくは90.0〜99.0重量%である。対応して、ドーパントの割合は、各場合に100%の全発光層全体を基礎として、0.01〜50.0重量%、好ましくは、0.5〜20.0重量%、特に好ましくは、1〜10重量%である。
【0100】
さらに、複数のマトリックス材料の混合物を使用することも可能であり、ここで、一つのマトリックス材料は、式(1)もしくは式(2)の化合物である。本発明の化合物を組み合わせることができる適切なさらなるマトリックス材料は、アリールアミン、アントラセン誘導体、特に、少なくとも一つの縮合アリール基で置換されたアントラセン誘導体、芳香族炭化水素もしくは電子伝導性化合物、特に、少なくとも一つの電子欠損複素環式芳香族環構造を含む化合物から選ばれる。
【0101】
好ましいドーパントは、上記マトリックスと組み合わせて使用することができ、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテルおよびアリールアミンのクラスから選択される。モノスチリルアミンは、1個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。ジスチリルアミンは、2個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。トリスチリルアミンは、3個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。テトラスチリルアミンは、4個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。スチリル基は、特に好ましくは、スチルベンであり、さらに置換されていてもよい。対応するホスフィンとエーテルはアミンと同様に定義される。本発明の目的のために、アリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含む。これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は、好ましくは、縮合環構造、特に、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環構造である。それらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンもしくは芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、一個のジアリールアミノ基が、アントラセンに直接、好ましくは、9-位で結合する化合物を意味するものと解される。芳香族ジアントラセンアミンは、二個のジアリールアミノ基が、アントラセンに直接、好ましくは、9.10-位で結合する化合物を意味するものと解される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミンおよびクリセンジアミンは、同様に定義され、ここで、ジアリールアミノ基は、好ましくは、ピレンに、1位もしくは1.6-位で結合する。さらに好ましいドーパントは、たとえば、WO 06/122630にしたがうインデノフルオレンアミンあるいはインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO 08/006449にしたがうベンゾインデノフルオレンアミンあるいはベンゾインデノフルオレンジアミン、および、たとえば、WO 07/140847にしたがうジベンゾインデノフルオレンアミンあるいはジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。スチリルアミンのクラスからのドーパントの例は、置換あるいは非置換トリスチルベンアミンまたは、たとえば、WO 06/000388、WO 06/058737、WO 06/000389、WO 07/065549およびWO 07/115610に記載されるドーパントである。再度、さらに、以下に記載される本発明のドーパントが好ましい。好ましい蛍光ドーパントは、さらに、たとえば、DE 102008035413に記載された化合物のような縮合芳香族炭化水素である。
【0102】
本発明のさらなる具体例では、式(1)もしくは式(2)の化合物は、発光材料として使用される。式(1)〜(21)の化合物中の少なくとも一つのArおよび/またはXおよび/またはY基が、少なくとも一つのアリールアミノ単位を含むならば、化合物は、発光化合物として、特に、適切である。好ましいアリールアミノ単位は、上記に示される式(31)および(32)の基である。式(1)〜(21)の化合物中の基Xもしくは基Yが、NもしくはNArを表すならば、化合物は、さらに、発光化合物として適切である。しかしながら、アミノ基を含まない化合物も、発光化合物として使用することができる。
【0103】
発光層混合物中の式(1)もしくは式(2)の化合物の割合は、0.1〜50.0重量%、好ましくは、0.5〜20.0重量%、特に好ましくは、1.0〜10.0重量%である。対応して、マトリックス材料の割合は、各場合に100%の混合物を全体として基礎として、50.0〜99.9重量%、好ましくは、80.0〜99.5重量%、特に好ましくは、90.0〜99.0重量%である。
【0104】
この場合に適切なマトリックス材料は、種々なクラスの物質からの材料である。好ましいマトリックス材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461に記載されるとおりの2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461にしたがうスピロ-DPVBi)、ベンゾアントラセン誘導体(たとえば、WO 08/145239にしたがう)、ベンゾフェナントレン誘導体(たとえば、WO 09/069566もしく未公開出願DE 10200900574.6にしたがう)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 04/081017にしたがう)、正孔伝導化合物(たとえば、WO 04/058911にしたがう)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 05/084081およびWO 05/084082にしたがう)、アトロプ異性体(たとえば、WO 06/048268にしたがうに)またはボロン酸誘導体(たとえば、WO 06/177052にしたがう)のクラスから選択される。適切なマトリックス材料は、さらに、上記記載のとおりの本発明によるベンゾ[a]アントラセン化合物でもある。本発明による化合物に加えて、特に好ましいマトリックス材料は、ナフタレン、アントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、オリゴアリ−レンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドのクラスから選択される。本発明によるベンゾ[a]アントラセン化合物に加えて、非常に特に好ましいマトリックス材料は、アントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドのクラスから選択される。本発明の目的のために、オリゴアリーレンは、少なくとも3個のアリールあるいはアリーレン基が互いに結合する化合物を意味するものと解されることを意図している。
【0105】
本発明のなお別の具体例では、式(1)もしくは式(2)の化合物は、正孔輸送材料としてもしくは正孔注入材料として使用される。そのとき、化合物は、好ましくは、少なくとも1個の基N(Arにより置換される;少なくとも一つの基Rは、特に、好ましくは、基N(Arである。N(Ar基は、好ましくは、上記の式(31)および(32)から選択される。式(1)〜(21)の化合物中の基XもしくはYが、NあるいはNArを表わすならば、化合物は、さらに好ましい。化合物は、好ましくは、正孔輸送あるいは正孔注入層中で使用される。本発明の目的のために、正孔注入層は、陽極に直接に隣接する層である。本発明の目的のために、正孔輸送層は、正孔注入層と発光層もしくは電子障壁層との間にある層である。式(1)もしくは式(2)の化合物が、正孔輸送材料あるいは正孔注入材料として使用されるならば、それらは、電子受容体化合物、たとえば、F-TCNQまたはEP 1476881もしくはEP 1596445に記載されるとおりの化合物でドープされることが好まれてよい。
【0106】
本発明のなお、さらなる具体例では、式(1)もしくは式(2)の化合物は、電子輸送材料として使用される。ここで、1以上の置換基Rおよび/またはRは、少なくとも1個のC=O、P(=O)および/またはSO単位を含むことが好ましく、これは、好ましくは、ベンゾ[a]アントラセンに直接結合する。ここで、同様に、好ましいものは、1以上の置換基Rおよび/またはRは、たとえば、イミダゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンゾチアジアゾール、フェナントロリン等のような貧電子複素環を含むものである。同様に、好ましいものは、式(1)〜(21)の化合物中の1以上のAr基が、たとえば、イミダゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、フェナントロリン等のような貧電子複素環を表し、および/または基Yが、この型の貧電子複素環またはC=O、POAr、SOあるいはSOを表すものである。化合物は、電子供与化合物でドープされていることがさらに好ましい。
【0107】
式(1)もしくは式(2)の繰り返し単位が、ポリマー中で、ポリマーの骨組として、発光単位として、正孔輸送単位としておよび/または電子輸送単位としても使用され得る。好ましい置換パターンは、ここで、上記記載のものに対応する。
【0108】
さらに好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用されることを特徴とし、材料は、10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で気相堆積される。しかしながら、初期圧力が、たとえば、10−7mbar未満よりさらに低いことも可能である。
【0109】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で、適用されることを特徴とする。
【0110】
さらに、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷あるいはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)あるいはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のためには必要である。高い溶解度は、化合物の適切な置換により達成することができる。
【0111】
複数の上記プロセスを使用すること、たとえば、一以上の層を溶液から適用し、一以上のさらなる層を気相堆積により適用することもできる。
【0112】
本発明の化合物の溶液または処方は、溶液からの適用のために必要である。したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの式(1)もしくは式(2)の化合物と少なくとも一つの溶媒、好ましくは、有機溶媒を含む、溶液または処方に関する。
【0113】
本発明による化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関して、向上した効率と顕著により長い寿命を有し、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子を、先行技術にしたがう材料を含むものよりも、高品質で長寿命の表示装置での使用のために、より適切とする。さらに、本発明による化合物は、高い熱安定性と高いガラス転移温度を有し、分解せずに昇華することができる。
【0114】
本出願の明細書は、OLEDおよびPLEDと対応する表示装置に関する本発明による化合物の使用に向けられている。説明の制限にもかかわらず、当業者は、さらなる発明性を要することなく、他の電子素子、たとえば、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)または有機光受容器で本発明の化合物を使用することができる。
【0115】
本発明は、同様に、対応する素子での本発明による化合物の使用とこれら素子自体に関する。
【0116】
前記具体例もしくは好ましい範囲もしくは本発明の定義が、所望により互いに組み合わせることができることも、本発明の一部である。
【0117】
本発明は、今後、以下の例により、より詳細に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、開示された範囲全体で本発明を実施するために、所要の細部を使用することができ、さらなる発明性を要せず本発明のさらなる化合物を調製することができ、これらを電子素子に使用することができ、本発明によるプロセスを使用することができる。
【0118】

以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下で行われる。出発材料は、アルドリッチ(ALDRICH)もしくはABCRから購入するか、文献記載の方法により調製することができる。8-ブロモベンゾ[a]アントラセン-7,12-ジオンは、J. L. Wood et al., J. Am. Chem. Soc. 1951, 73(9), 4494-4495で、9-ブロモベンゾ[a]アントラセン-7,12-ジオンは、M. C. Kloetzel et al., J. Org. Chem. 1961, 26(6), 1748-1754で、8-および11-ブロモベンゾ[a]アントラセン-7,12-ジオンは、V. Snieckus et al., Tetrahedron Lett. 1985, 26(9), 1145-1148である。
【0119】
例1:8-ブロモベンゾ[a]アントラセンの合成
【化21】
【0120】
200mlの次亜リン酸(50%)が、900mlの氷酢酸中の75g(200.2ミリモル)の8-ブロモベンゾ[a]アントラセン-7,12-ジオンの懸濁液に添加され、400mlのヨウ化水素酸(57%)が、滴下される。反応混合物は、還流下16時間加熱される。冷却後、沈殿した固形物が吸引ろ過され、夫々500mlの水、エタノール/水(1:1.v/v)およびエタノールで洗浄される。粗生成物はエタノール中で煮沸洗浄され、引き続き、トルエン/氷酢酸(1:1.v/v、約15ml/g)から再結晶化される。乾燥により35.8g(115.4ミリモル)、57.6%、純度99%の生成物を得る。
【0121】
例2:ベンゾ[a]アントラセン-8-ボロン酸の合成
【化22】
【0122】
52ml(130ミリモル)のn-ブチルリチウム(n-ヘキサン中2.5M)が、1000mlのTHF中の30.7g(100ミリモル)の8-ブロモベンゾ[a]アントラセンの懸濁液に、−78℃で激しく攪拌されながら滴下され、混合物は、さらに2時間攪拌される。16.7ml(150ミリモル)のトリメチルボレートが、激しく攪拌されながら一度に赤い溶液に添加され、混合物は−78℃でさらに30分間攪拌され、次いで、3時間かけて室温まで暖められ、300mlの水が添加され、混合物は30分間攪拌される。有機相が単離され、真空中で蒸発幹固される。固形物は、100mlのn-へキサンで満たされ、吸引ろ過され、100mlのへキサンで1度洗浄され、真空乾燥される。収率:23.7g(87ミリモル)、87%、ボロン酸無水物とボロン酸の変動量でのボロン酸の純度約90%(NMR)。ボロン酸は、さらなる純化をせずにこの形態で使用することができる。
【0123】
対応するボロン酸は、対応する臭素化物から例2と同様に得られる(例3と4)。
【化23】
【0124】
例5:9-(ナフト-2-イル)-10-(ベンゾ[a]アントラセン-8-イル)-アントラセンの合成
【化24】
【0125】
913mg(3ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、次いで112mg(0.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、300mlのトルエン、100mlのジオキサンと400mlの水の混合物中の19.2g(50ミリモル)の9-ブロモ-10-(2-ナフチル) アントラセン、15.0g(55ミリモル)のベンゾ[a]アントラセン-8-ボロン酸、25.5g(120ミリモル)の燐酸三カリウムの充分に攪拌された懸濁液に添加され、混合物は、引き続き還流下16時間加熱される。冷却後、沈殿した固形物は、吸引ろ過され、50mlのトルエンで3度、50mlのエタノール:水(1:1、v/v)で3度、100mlのエタノールで3度洗浄され、クロロベンゼン(約10ml/g)から3度再結晶化され、引き続き2度昇華される(p=5×10−5mbar、T=340℃)。収率:14.8g(27.5ミリモル)、55.0%、純度99.9%(HPLC)。
【0126】
本発明による以下の化合物は、対応する臭素化物とボロン酸とから、例5と同様に得られる(例6〜11)。
【化25-1】
【化25-2】
【0127】
例12:1-フェニル-2-(4-ベンゾ[a]アントラセン-8-イル-フェニル)ベンズイミダゾールの合成
【化26】
【0128】
例7と同様の調製。19.2g(50ミリモル)の9-ブロモ-10-(2-ナフトイル)アントラセンが、17.5g(50ミリモル)の1-フェニル-2-(4-ブロモフェニル)ベンズイミダゾールにより置き代えられる。反応混合物が冷却された後、有機相が分離され、300mlの水で3度洗浄され、シリカゲルでろ過され、蒸発乾固される。ガラス状の残留物は、50mlの沸騰トルエン中に溶解され、100mlのエタノールが溶液に添加される。12時間放置後、無色の結晶が吸引ろ過され、引き続き、純粋なジクロロメタン(Rf=0.32)によりシリカゲル上でクロマトグラフされる。最後に、生成物は、トルエン/エタノールから再度再結晶化される。昇華(p=5×10−5mbar、T=305℃)。収率:16.7g(33.4ミリモル)、66.8%、純度>99.9%(HPLC)。
【0129】
例13:8-(ビス(4-メチルフェニル)アミノ)ベンゾ[a]アントラセンの合成
【化27】
【0130】
190μl(1ミリモル)のクロロ-ジ-tert-ブチルホスフィンと、次いで112mg(0.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、500mlのトルエン中の15.4g(50ミリモル)の8-ブロモベンゾ[a]アントラセン、11.8g(60ミリモル)のビス(4-メチルフェニル)アミンと7.7g(80ミリモル)のソジウムtert-ブトキシドの懸濁液に添加され、混合物は、引き続き還流下5時間加熱される。混合物は60℃まで冷却された後、500mlの水が添加され、有機相が分離され、シリカゲルでろ過され、80℃で真空中蒸発乾固され、次いで、300mlのエタノールが添加される。冷却後、固形物は、吸引ろ過される。生成物は、トルエン/エタノール(1:1、v/v、約10ml/g)から5度再結晶化される。昇華(p=5×10−5mbar、T=240℃)。収率:10.1g(23.8ミリモル)、47.5%、純度>99.9%(HPLC)。
【0131】
例14:4,8-ジブロモベンゾ[a]アントラセン-7-12-ジオンの合成
【化28】
【0132】
38ml(740ミリモル)の臭素が、500mlのニトロベンゼン中の125g(370ミリモル)の8-ブロモベンゾ[a]アントラセン-7-12-ジオンの140℃に暖められた溶液中にゆっくりと滴下される。臭化水素の発生が低下し(約4時間)、冷却後、混合物は、500mlのエタノールで希釈され、沈殿した固形物は、吸引ろ過され、大量のエタノールで洗浄される。1lのエタノールで沸騰洗浄すると、140g(336.5ミリモル)、90.8%で、純度約90%(NMR)の生成物を得るが、さらなる精製はしないでこの形で、使用することができる。
【0133】
例15:4,8-ジブロモベンゾ[a]アントラセンの合成
【化29】
【0134】
200mlの次亜燐酸(50%)が、900mlの氷酢酸中の83.2g(200ミリモル)の4,8-ブロモベンゾ[a]アントラセン-7-12-ジオンの懸濁液中に添加され、400mlのヨウ化水素酸(57%)が滴下される。反応混合物は、還流下36時間加熱される。冷却後、沈殿した固形物は、吸引ろ過され、夫々500mlの水と、エタノール/水(1:1、v/v)で洗浄される。粗生成物は、エタノールで煮沸洗浄され、引き続き、トルエン/氷酢酸(1:1、v/v、約12ml/g)から再結晶化される。乾燥により48.6g(125.9ミリモル)、62.9%で、純度99%の生成物を得る。
【0135】
例16:ベンゾ[a]アントラセン-4-8-ジボロン酸の合成
【化30】
【0136】
104ml(260ミリモル)のn-ブチルリチウム(n-ヘキサン中2.5M)が、1000mlのTHF中の38.6g(100ミリモル)の4,8-ジブロモベンゾ[a]アントラセンの懸濁液に−78℃で激しく攪拌されながら滴下され、混合物は、さらに2時間攪拌される。33.4ml(300ミリモル)のトリメチルボレートが、激しく攪拌されながら一度に赤い溶液に添加され、混合物は−78℃でさらに30分間攪拌され、次いで、3時間かけて室温まで暖められ、500mlの水が添加され、混合物は30分間攪拌される。有機相が単離され、真空中で蒸発幹固される。固形物は、100mlのn-へキサンで満たされ、吸引ろ過され、100mlのへキサンで1度洗浄され、真空乾燥される。収率:26.5g(84ミリモル)、84%、ボロン酸無水物とボロン酸の変動量でのジボロン酸の純度約90%(NMR)。ジボロン酸は、さらなる精製をせずにこの形態で使用することができる。
【0137】
例17:4,8-ビス(ナフト-2-イル)ベンゾ[a]アントラセンの合成
【化31】
【0138】
1.83g(6ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、次いで224mg(1ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、300mlのトルエン、100mlのジオキサンと400mlの水の混合物中の15.8g(50ミリモル)のベンゾ[a]アントラセン-4,8-ジボロン酸、22.8g(110ミリモル)の2-ブロモナフタレン、50.1g(240ミリモル)の燐酸三カリウムの激しく攪拌された懸濁液に添加され、混合物は、引き続き還流下16時間加熱される。冷却後、混合物は1000mlのエタノールで希釈され、沈殿した固形物は、吸引ろ過され、50mlのエタノール:水(1:1、v/v)で3度、100mlのエタノールで3度洗浄される。粗生成物は、ジオキサン(約7ml/g)から4度再結晶化され、引き続き2度昇華される(p=5×10−5mbar、T=380℃)。収率:10.3g(21.5ミリモル)、43.0%、純度99.9%(HPLC)。
【0139】
例18:OLEDの製造
OLEDが、WO 04/058911に記載されるとおりの一般的プロセスにより製造されるが、これは、特別な状況(たとえば、最適な効率と色を達成するための層の厚さの変化)に対する個々の場合において適合される。
【0140】
以下の例19〜32は、種々のOLEDの結果を示す。構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された硝子板が、OLEDの基板を形成する。改善された加工のために、20nmのPEDOT(水からスピンコート、H.C.Stack,Goslar独から購入。ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン))が、基板に適用される。OLEDは、次の層配列から成る:基板/PEDOT/40nmの正孔輸送層(HTM)/30nmの発光層(EML)/20nmの電子輸送層(ETM)および最後に陰極。PEDOTとは別の材料が、真空室で熱気相堆積される。ここで発光層は、マトリックス(ホスト)とマトリックス材料が共蒸発により前混合されるドーパントとから常に成る。陰極は、1nm厚のLiF層とそこに堆積された100nmのAl層により形成される。表1は、OLEDを構築するために使用された材料の化学構造を示す。
【0141】
これらのOLEDは、標準方法により特性決定される;この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、効率(cd/Aで測定)、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としてのパワー効率(Im/Wで測定)および寿命が測定される。寿命は、初期輝度が6000cd/mから半分に低下した時間として定義される。
【0142】
表2は、いくつかのOLED(例19〜30)の結果を示す。例5、6および11の化合物が、本発明によるマトリックス材料として使用される。先行技術にしたがうマトリックス材料H1が比較例として使用される。
【0143】
表3は、例12からの化合物を本発明による電子輸送材料として含むOLED(例31および32)の結果を示す。比較例として、AlQが、先行技術にしたがう電子輸送材料として使用される。
【表1】
【表2】
【表3】
【0144】
上記例から明らかなように、本発明による化合物をマトリックス材料として含む本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術にしたがう素子より、より高い効率とより長い寿命を有する。加えて、本発明による材料が、上記例84でのとおりにAlQに代えて、電子輸送材料として使用されるならば、素子の効率はさらに改善され、電圧を減らすことができる。