(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ラミニン結合領域及び/又はC3若しくはC3met結合領域を含むリガンドであって、配列番号7〜10から構成される群から選択されるアミノ酸配列、又はラミニン及び/又はC3若しくはC3met結合特性を保持するそのフラグメント、水酸化物、スルホン化物若しくは糖化物から構成される前記リガンド。
請求項8に記載の1種以上のリガンド又は請求項9に記載の融合蛋白質と、1種以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、キャリヤー又は防腐剤とを含有する医薬。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
M.catarrhalisは上下気道感染症の主原因であることが分かっているので、M.catarrhalisに対して使用することができるワクチンの開発が現在必要になっている。
【0007】
従って、本発明の目的はM.catarrhalisがどのように体内の上皮細胞と相互作用して免疫系に作用するかを突き止めることであった。こうして、M.catarrhalisに対するワクチンとして作用することが可能な物質を開発することができる。
【0008】
この研究では、臨床単離株に由来するM.catarrhalis突然変異体を使用し、UspA1及びA2の両者がフィブロネクチンとラミニンに結合することを明らかにすることができた。更に、M.catarrhalisが補体系の古典経路を阻害することを明らかにすると共に、どのように阻害するかも解明することができた。
【0009】
多くの細菌はフィブロネクチンと結合するMSCRAMMSを介して上皮細胞に接着する[54,77]。Pseudomonas aeruginosaは鼻腔上皮細胞で細胞性フィブロネクチンと結合するFnBPをもつ[69]。この細菌とフィブロネクチン蛋白質の相互作用を阻害すると、宿主組織の感染防除を助長できると思われる。実際に、S.aureus FnBPに対する抗体は感染マウスでこの細菌の迅速なクリアランスを生じたと報告されている[71]。
【0010】
組換えトランケート型UspA1/A2蛋白質と全長分子をカバーする短いフラグメントを本発明に従ってフィブロネクチン結合について試験した。UspA1及びA2はいずれもフィブロネクチンと結合し、フィブロネクチン結合領域はUspA1
299−452とUspA2
165−318に位置することが分かった。これらの2種のトランケート型蛋白質はいずれも抗フィブロネクチン抗体と同程度までM.catarrhalisとChang結膜上皮細胞の結合を阻害した。この結果、M.catarrhalis UspA1及びA2はいずれも細胞性フィブロネクチンを介する上皮細胞との結合に関与していることが分かった。従って、UspA1
299−452及びUspA2
165−318内の生物活性部位はM.catarrhalisに対するワクチンに加える潜在的候補として提案される。
【0011】
更に、本発明者らはM.catarrhalisとラミニンの結合について試験し、特性決定した。M.catarrhalisはCOPD患者における感染症増悪の一般的な原因である。COPD患者におけるこの種の繁殖はアドヘシンのレパートリーが多いことが一因であると思われる。更に、喫煙者ではラミニン層自体が肥厚して基底膜が露出し、上皮完全性の低下等の病的変化が生じる[4]。所定の病原菌はラミニンと結合できることが分かっているので、このような損傷して露出した粘膜表面と接着できると考えられる。このような病原菌としては、特にS.aureusやP.aeruginosa等の重大な気道疾患を誘発することが知られている病原菌が挙げられる[7,63]。本発明者らはM.catarrhalisユビキタス表面蛋白質(Usp)A1及びA2もラミニンと結合することを実証することができた。UspA1及びA2のラミニン結合領域は特にUspA1
50−491及びUspA2
30−351のN末端側半分に検出された。これらの領域はフィブロネクチン結合領域も含んでいる。他方、フィブロネクチンと結合した最小フラグメントであるUspA1
299−452及びUspA2
165−318は容易に検出可能な程度までラミニンと結合しなかった。UspA1のN末端側半分(UspA1
50−491)よりも小さいフラグメントはその全ラミニン結合能を失い、UspA2では、全長組換え蛋白質(UspA2
30−539)よりも程度は低いが、UspA2
30−170のみがラミニンと結合した。これらの結果は分子の部分によって機能的役割が異なることを示唆している。UspA1
50−770もラミニン結合特性をもつことが分かった。
【0012】
しかし、UspA1及びA2の最小ラミニン結合領域を比較した処、UspA2
30−170及びUspA1
50−491のアミノ酸ホモロジーによる類似性は殆どないことが分かった(データは示せず)。両者のN末端側半分の一致度は22%に過ぎないが、どちらの蛋白質も「ロリポップ」形の球形ヘッド構造をもつことが定説である[2,32]ので、これは意外ではない。
【0013】
UspA1
50−770及びUspA2
30−539内の生物活性部位はM.catarrhalisに対するワクチンに加える潜在的候補として提案される。
【0014】
最後に、本発明者らはM.catarrhalisユビキタス表面蛋白質A1及びA2と先天免疫系の相互作用について検討し、M.catarrhalisが補体系を阻害することを突き止めた。補体系は病原微生物に対する先天性防御の最前線の1つであり、この系の活性化は細菌表面への蛋白質付着のカスケードをもたらし、その結果、膜攻撃複合体の形成又は病原菌のオプソニン化後に貪食作用を生じる[85,86]。最も重要な補体蛋白質の1つはC3であり、所定の免疫グロブリンと同等濃度(1〜1.2mg/ml)で循環中に存在する。C3はオプソニンとして重要な役割を果たすのみならず、補体活性化の古典経路、レクチン経路及び代替経路の共通接点でもある。代替経路は古典経路とレクチン経路の増幅ループとして機能し、補体阻害剤の不在下でC3と微生物表面の共有結合により自発的に活性化することもできる。C3付着にはC3α鎖上のスルフヒドリル基(Cys
1010)とグルタミルカルボニル基(Gln
1012)の近接により天然蛋白質で形成される内部チオエステル結合の存在が必要である[76]。C3α鎖のアミノ末端から77残基ペプチドを蛋白分解により開裂すると、C3a(アナフィラトキシン)とC3bを生じる。その後、準安定チオエステルのカルボニル基とアクチベーター表面の蛋白質又は糖鎖構造の−NH
2又は−OH基の共有結合によりC3bが付着する[36,37]。M.catarrhalis UspA1及びA2はEDTAで処理した血清に由来する補体第3成分(C3)とメチルアミンで処理したC3(C3met)の両者と用量依存的に非共有的に結合することが分かった。UspA1
50−770及びUspA2
30−539はC3及びC3metと結合することが分かった。UspA2のC3結合領域は主にUspA2
200−458に位置することが分かった。他方、UspA1は相互作用に果たす役割が小さいことが分かった。UspA1
50−770及びUspA2
30−539内の生物活性部位はM.catarrhalisに対するワクチンに加える潜在的候補として提案される。
【0015】
UspAファミリーはUspA1(分子量88kDa)、UspA2(62kDa)、及びハイブリッド蛋白質UspA2H(92kDa)から構成される[2,43]。これらの蛋白質はSDS−PAGEで高分子量複合体として移動し、比較的保存されているため、重要なワクチン候補である。UspA1及びA2のアミノ酸配列は43%一致しており、140アミノ酸残基が93%一致している[2]。中耳炎をもつ幼児に由来する108個のM.catarrhalis鼻咽頭単離株群では、単離株の夫々107個(99%)と108個(100%)にuspA1及びuspA2遺伝子が検出された。21%がハイブリッド変異体遺伝子uspA2Hをもつことが確認された[50]。更に、UspA1及びA2に対する自然獲得抗体は細菌性であることが知られている[15]。
【0016】
UspAファミリーの蛋白質は数種の機能をもつと考えられている。M.catarrhalisとChang結膜上皮細胞及びHep−2咽頭上皮細胞の結合にはUspA1発現が不可欠である[43,49]。更に最近の研究では、UspA1は肺上皮細胞株A549で発現される癌胎児性抗原関連細胞接着分子(CEACAM)と結合することが報告されている[31]。精製UspA1はドットブロット実験でフィブロネクチンと結合するが、精製UspA2は結合しないことも報告されている[49]。UspA1及びA2はいずれもM.catarrhalis血清抵抗性に重要な役割を果たすらしい[1,5,58,60]。
【0017】
本発明はUspA1及びA2の両者が臨床単離株M.catarrhalis BBH18及びRH4におけるM.catarrhalisとフィブロネクチン及びラミニンの結合の決定基であることを実証する。興味深いことに、M.catarrhalis Bc5に由来する組換えUspA1及びA2はいずれも同程度までフィブロネクチンと結合した。フィブロネクチンの結合領域はUspA1のアミノ酸残基299〜452及びUspA2の165〜318に検出された。これらの2種の領域は31アミノ酸残基配列が一致する。重要な点として、これらの残基を含むUspA1とUspA2のトランケート型蛋白質フラグメントはM.catarrhalisとChang上皮細胞の結合を阻害することができ、これらの細胞との相互作用が細胞性フィブロネクチンを介在することが示唆された。
【0018】
ラミニンの結合領域は上記アミノ酸残基の範囲内に検出された。組換え蛋白質との結合アッセイによると、主要な結合領域は両者蛋白質が球状ヘッドを形成するN末端に位置することが判明した。
【0019】
組織及び細胞外マトリックス(ECM)成分との接着を媒介する細菌因子は「接着性マトリックス分子を認識する微生物表面成分(MSCRAMMS)」と呼ばれる単一ファミリーに一括分類される。UspA1/A2はいずれもフィブロネクチン及びラミニンと結合するので、これらの蛋白質はMSCRAMMSと言うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
1側面によると、本発明は配列番号1をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0021】
別の側面によると、本発明は配列番号2をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0022】
別の側面によると、本発明は配列番号3をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0023】
別の側面によると、本発明は配列番号4をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0024】
別の側面によると、本発明は配列番号5をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0025】
別の側面によると、本発明は配列番号6をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0026】
別の側面によると、本発明は配列番号7をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0027】
別の側面によると、本発明は配列番号8をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0028】
別の側面によると、本発明は配列番号9をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0029】
別の側面によると、本発明は配列番号10をもつペプチドと、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物を提供する。
【0030】
別の側面によると、本発明は感染症、好ましくはM.catarrhalisに起因する感染症、特にM.catarrhalisの粘膜表面輸送に起因する感染症の治療又は予防用医薬の製造における少なくとも1種の本発明のペプチドの使用を提供する。
【0031】
別の側面によると、本発明は更にフィブロネクチン結合領域を含むリガンドを提供し、前記リガンドは配列番号1、配列番号2及び配列番号3から構成される群から選択されるアミノ酸配列と、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物から構成される。
【0032】
本発明は更にラミニン結合領域を含むリガンドを提供し、前記リガンドは配列番号4〜配列番号8から構成される群から選択されるアミノ酸配列と、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物から構成される。
【0033】
更に、本発明はC3又はC3met結合領域を含むリガンドを提供し、前記リガンドは配列番号4、配列番号6、配列番号9及び配列番号10から構成される群から選択されるアミノ酸配列と、そのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物及び他の二次処理物から構成される。
【0034】
更に、本発明は本発明の1種以上のリガンドと、1種以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、キャリヤー又は防腐剤を含有する医薬を提供する。
【0035】
本発明は更に本発明の1種以上のリガンドと、1種以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、キャリヤー又は防腐剤を含有するワクチンを提供する。
【0036】
本発明は更に医薬的に有効な量の本発明の医薬又はリガンドを投与する段階を含む個体における感染症、好ましくはM.catarrhalisに起因する感染症、特にM.catarrhalisの粘膜表面輸送に起因する感染症の治療又は予防方法を提供する。
【0037】
最後に、本発明は本発明のリガンド、蛋白質又はペプチドと、そのホモログ、多形体、縮重変異体及びスプライス変異体をコードする核酸配列も提供する。
【0038】
本発明の目的、課題、解決手段及び特徴に関する他の開示は図面及び特許請求の範囲を参照して以下の発明の詳細な説明から理解されよう。
【0039】
本明細書で使用するリガンドなる用語は受容体と結合する全長分子と、受容体結合特性を保持するように受容体結合領域を含むその任意部分の両者を意味するものとする。等価受容体結合領域を含むリガンドも本発明に含まれる。
【0040】
フラグメント、ホモログ、機能的等価物及び誘導体なる用語は所望フィブロネクチン、ラミニン、C3又はC3met結合特性を保持する本発明のペプチド及び蛋白質フラグメントの変異体、改変体及び/又は部分を意味する。
【0041】
本発明のUspA1のホモログは下表1から明らかなように、少なくとも72%の配列一致度をもつ配列として定義される。
【0042】
本発明のフラグメントはN末端が1、2、5、10、15、20アミノ酸短縮もしくは延長した相同配列及び/又はC末端が1、2、5、10、15、20アミノ酸短縮もしくは延長した相同配列の任意のものとして定義される。
【0043】
縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物又は他の二次処理物なる用語は所望フィブロネクチン、ラミニン、C3又はC3met結合特性を保持しながら、縮重、水酸化、スルホン化又は糖化により元のペプチド又は蛋白質フラグメントに比較して改変された本発明のペプチド及び蛋白質フラグメントの変異体及び/又は改変体を意味する。
【0044】
本発明は特にMoraxella catarrhalisに起因する感染症に関する。本発明のペプチドは中耳炎、副鼻腔炎又は下気道感染症の治療又は予防に使用することができる。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
従って、本発明はラミニン及び/又はフィブロネクチン及び/又はC3結合特性をもつMoraxella catarrhalis外膜蛋白質から単離されたリガンドを提供し、前記リガンドは下記全長Moraxella catarrhalis BC5 UspA1及びUspA2配列に由来する配列番号1〜10から構成される群から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列から構成されるポリペプチド、又はそのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物もしくは他の二次処理物である。
【0048】
【化1】
【0049】
好ましい1態様では、リガンドは配列番号1〜10から構成される群から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列から構成されるポリペプチド[又は野生型ポリペプチドに対するポリペプチドトランケート]、又はそのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物もしくは他の二次処理物である。
【0050】
リガンドなる用語は本明細書ではラミニン及び/又はフィブロネクチン及び/又はC3と結合する全長分子と、夫々の結合特性を保持するようにラミニン及び/又はフィブロネクチン及び/又はC3結合領域を含むその任意部分の意味で使用する。従って、「リガンド」はラミニン及び/又はフィブロネクチン及び/又はC3結合領域、即ち結合に必要な1個以上のペプチド領域のみから構成される分子を含む。
【0051】
本発明の趣旨では、ポリペプチドのラミニン、フィブロネクチン又はC3結合特性は以下のように確認することができる。
【0052】
本発明の趣旨では、ポリペプチドのラミニン、フィブロネクチン又はC3結合特性は以下のように確認することができる。ポリペプチドを
125ヨウ素又は他の放射性化合物で標識し、流体相又は固相(例えばドットブロット)としてラジオイムノアッセイ(RIA)で結合を試験することができる。更に、適当な抗体と検出システムを使用して酵素免疫測定法(ELISA)又はフローサイトメトリーでポリペプチドの結合を分析することができる。ポリペプチドとラミニン、フィブロネクチン又はC3の相互作用は更に表面プラズモン共鳴法(Biacore)により試験することができる。方法の例は材料と方法のセクションに詳細に例示する。
【0053】
別の好ましい態様では、ポリペプチド[又は野生型ポリペプチドに対するポリペプチドトランケート]は本明細書に示すアラインメントで同定される配列番号1〜10内からの保存配列の少なくとも1種を含むか又は前記配列から構成される。従って、本態様では、ポリペプチド[又は野生型ポリペプチドに対するポリペプチドトランケート]は、
UspA1に由来する保存配列(フィブロネクチン結合領域に由来する保存フラグメント−「/」は1個の位置におけるアミノ酸の代替選択肢の区切りである)
【0054】
【化2】
【0055】
UspA2に由来する保存配列(フィブロネクチン結合領域に由来する保存フラグメント−「/」は1個の位置におけるアミノ酸の代替選択肢の区切りである)
K A D I D N N I N N/H I Y E L A Q Q Q D Q H S S D
I K/Q T/A L K/E K/N/S N V/I E/V E G/E L L/F E/N L S D/G H/R I/L I D Q K T/A D I/L A/T Q/K N/D
【0056】
UspA2に由来する保存配列(C3結合領域に由来する保存フラグメント−「/」は1個の位置におけるアミノ酸の代替選択肢の区切りである)
【0057】
【化3】
の少なくとも1種を含むか又は前記配列から構成される。
【0058】
当然のことながら、本発明のポリペプチドリガンドはN又はC末端の一方又は両方で本明細書に記載する配列にアミノ酸残基を付加又は欠失させることにより改変された本明細書に記載する配列のラミニン及び/又はフィブロネクチン及び/又はC3結合領域を含むことができ、前記改変ペプチドは夫々ラミニン及び/又はフィブロネクチン及び/又はC3と結合する能力を保持する。従って、本発明は更に、N又はC末端の一方又は両方で本明細書に記載するアミノ酸配列に50、40、30、20、10、5、3又は1アミノ酸残基を付加又は欠失させたポリペプチドを含むか又は前記ポリペプチドから構成されるリガンドを提供し、前記改変ポリペプチドはラミニン及び/又はフィブロネクチン及び/又はC3と結合する能力;及び/又は非改変ペプチドに対して免疫応答を誘発する能力を保持する。延長とは、元の全長アミノ酸配列からペプチドのコンテキストを使用して配列を延ばすことを意味する。
【0059】
本発明のポリペプチドのフラグメントについては、フラグメントがラミニン及び/又はフィブロネクチン及び/又はC3と結合する能力を保持する限り、本発明では(本明細書に記載する相同配列/保存領域/機能的領域に対して)任意寸法のフラグメントを使用することができる。受容体結合に必要な領域のみを含む最小ペプチドを単離することが望ましいと思われる。
【0060】
本発明のポリペプチドリガンドはN及びC末端の一方又は両方のトランケーションにより公知Moraxella catarrhalis UspA1又はUspA2蛋白質から誘導することができる。トランケートは全長天然UspA1又はA2分子以外のものである。従って、本発明は更に、N末端から少なくとも(又は厳密に)20、30、40、50、60、70、80、100、120、140、160個等〜298個のアミノ酸を欠失するか、及び/又はC末端から少なくとも(又は厳密に)20、30、40、50、60、70、80、100、120、140、160、180、200個等〜450個のアミノ酸を欠失する野生型UspA1配列を提供する。トランケートはフィブロネクチン結合機能(及び場合によりラミニン及び/又はC3結合機能)を保持することが好ましい。
【0061】
【表3】
【0062】
従って、本発明は更に、N末端から少なくとも(又は厳密に)20、30、40、50、60、70、80、100、120、140、160、164個のアミノ酸を欠失するか、及び/又はC末端から少なくとも(又は厳密に)20、30、40、50、60、70、80、100、120、140、180、200個等〜312個のアミノ酸を欠失する野生型UspA2配列を提供する。トランケートはフィブロネクチン結合機能(及び場合によりラミニン及び/又はC3結合機能)を保持することが好ましい。可能なトランケートは下表に示すものから選択することができ、その全てが本発明の範囲に含まれる。
【0063】
【表4】
【0064】
従って、本発明は更に、N末端から少なくとも(又は厳密に)5、10、15、20、25又は29個のアミノ酸を欠失するか、及び/又はC末端から少なくとも(又は厳密に)20、30、40、50、60、70、80、100、120、140、160、180、200個等〜453個のアミノ酸を欠失する野生型UspA2配列を提供する。トランケートはラミニン結合機能(及び場合によりフィブロネクチン及び/又はC3結合機能)を保持することが好ましい。可能なトランケートは下表に示すものから選択することができ、その全てが本発明の範囲に含まれる。
【0065】
【表5】
【0066】
従って、本発明は更に、N末端から少なくとも(又は厳密に)20、30、40、50、60、70、80、100、120、140、160個等〜301個のアミノ酸を欠失するか、及び/又はC末端から少なくとも(又は厳密に)20、30、40、50、60、70、80、100、120、140、160又は172個のアミノ酸を欠失する野生型UspA2配列を提供する。トランケートはC3結合機能(及び場合によりフィブロネクチン及び/又はラミニン結合機能)を保持することが好ましい。可能なトランケートは下表に示すものから選択することができ、その全てが本発明の範囲に含まれる。
【0067】
【表6】
【0068】
このように短縮することができる公知野生型UspA1配列はATCC25238(MX2;GenBankアクセション番号AAD43465)、P44(AAN84895)、O35E(AAB96359)、TTA37(AAF40122)、O12E(AAF40118)、O46E(AAF36416)、V1171(AAD43469)、TTA24(AAD43467)(表1/
図19参照);又はBC5(上記参照)株の配列である。このように短縮することができる公知野生型UspA2配列はO35E(GenBankアクセション番号O4407)、MC317(GenBankアクセション番号Q58XP4)、E22(GenBankアクセション番号Q848S1)、V1122(GenBankアクセション番号Q848S2)、P44(GenBankアクセション番号Q8GH86)、TTA37(GenBankアクセション番号Q9L961)、O46E(GenBankアクセション番号Q9L962)、O12E(GenBankアクセション番号Q9L963)、V1171(GenBankアクセション番号Q9XD51)、TTA24(GenBankアクセション番号Q9XD53)、SP12−5(GenBankアクセション番号Q8RTB2)、ATCC25238(GenBankアクセション番号Q9XD55)(表2/
図20参照);又はBC5[Forsgren_UspA2](上記参照)株の配列である。
【0069】
理想的には、本態様のUspA1又はUspA2トランケートは配列番号1〜10から構成される群から選択されるアミノ酸配列、又はそのフラグメント、ホモログ、機能的等価物、誘導体、縮重変異体、水酸化物、スルホン化物、糖化物もしくは他の二次処理物を含むか又は前記アミノ酸配列等から構成され;あるいは本明細書に示すアラインメントで同定されるこれらの領域内からの保存配列、例えば、
UspA1に由来する保存配列(フィブロネクチン結合領域に由来する保存フラグメント−「/」は1個の位置におけるアミノ酸の代替選択肢の区切りである)
【0070】
【化4】
【0071】
UspA2に由来する保存配列(フィブロネクチン結合領域に由来する保存フラグメント−「/」は1個の位置におけるアミノ酸の代替選択肢の区切りである)
K A D I D N N I N N/H I Y E L A Q Q Q D Q H S S D
I K/Q T/A L K/E K/N/S N V/I E/V E G/E L L/F E/N L S D/G H/R I/L I D Q K T/A D I/L A/T Q/K N/D
【0072】
UspA2に由来する保存配列(C3結合領域に由来する保存フラグメント−「/」は1個の位置におけるアミノ酸の代替選択肢の区切りである)
【0073】
【化5】
の少なくとも1種を含むか又は前記配列から構成される。
【0074】
本明細書に記載するようなポリペプチドリガンドを含む融合蛋白質を作製すると適切であると思われる。従って、別の態様では、本発明は本発明のポリペプチドリガンドを含む融合蛋白質を提供する。本態様の融合蛋白質は任意公知全長配列に対する一致度がその全長にわたって50%未満であることが好ましい。このような融合蛋白質は本発明のポリペプチドの誘導体を構成することができる。別の誘導体としては、ペプチド又は糖部分を共有結合するためのキャリヤーとしての本発明のポリペプチドの使用が挙げられる。これらの部分は例えば肺炎球菌莢膜オリゴ糖類もしくは多糖類、Moraxella catarrhalisリポオリゴ糖類、又は無莢膜型Haemophilus influenzaeリポオリゴ糖類と結合することができる。
【0075】
本発明の相同ペプチドは配列比較により同定することができる。相同ペプチドは本明細書に開示するペプチド配列又は本発明のそのフラグメントもしくはトランケートに対してその全長にわたって少なくとも60%一致していることが好ましく、昇順に少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%一致していることがより好ましい。相同ペプチドはフィブロネクチン及び/又はラミニン及び/又はC3と結合する能力;及び/又は本明細書に開示するペプチド配列又はそのフラグメントに対して免疫応答を誘発する能力を保持することが好ましい。
【0076】
図19及び20は異なる起源のUspA1及びUspA2のペプチド配列のアラインメントを示し、機能(即ちフィブロネクチン及び/又はラミニン及び/又はC3結合能)を保持しながら相同配列を形成するように改変可能な配列領域を示す。配列番号1〜10のBC5ペプチドの相同ペプチドは例えば
図19及び20の他の株に由来するBC5配列に対応する配列である。
【0077】
本発明のワクチン
本発明のポリペプチド/ペプチド/機能的領域/ホモログ/フラグメント/トランケート/誘導体は有効量の前記成分と医薬的に許容可能な賦形剤を含有するワクチンとして製剤化すると理想的である。
【0078】
本発明のワクチンはMoraxella catarrhalis感染症又は中耳炎又は副鼻腔炎又は下気道感染症を予防又は治療するために患者に投与するために使用することができる。ワクチンは筋肉内、非経口、粘膜及び鼻腔内等の任意公知方法で投与することができる。
【0079】
本発明の併用ワクチン
本発明のワクチンは上記疾患を予防又は治療するために他のMoraxella catarrhalis抗原と併用することができる。
【0080】
本発明者らは特にMoraxella catarrhalisが宿主免疫系による攻撃を妨害する少なくとも2種類の手段をもつことを見いだした。下記実施例に記載するC3(及びC4BP)との相互作用に加え、M.catarrhalisは蛋白質MID(OMP106とも言う)を介して可溶性又は膜結合ヒトIgDに対して強い親和性をもつ。Bリンパ球とのモラクセラ依存的IgD結合の結果、特異的抗モラクセラモノクローナル抗体の産生を妨げるポリクローナル免疫グロブリンが合成される。M.catarrhalisが数種の手段でヒト免疫系を妨害するという事実は、M.catarrhalisが気道の非常に一般的な寄生菌である理由を説明するものである。
【0081】
本発明者らはIgD結合機能(MID)とC3結合機能(UspA1及び/又はUspA2)に関与する抗原の併用により、モラクセラのヒト免疫系妨害に対して高い防御能を宿主に与える免疫原組成物が得られ、従って、M.catarrhalisの粘膜表面輸送の低減を助長できると考える。
【0082】
従って、本発明の別の側面は有効量のUspA1及び/又はUspA2(特に後者)(例えば全長ポリペプチド又は好ましくはC3結合機能を保持する本明細書に記載するような本発明のポリペプチド/ペプチド/機能的領域/ホモログ/フラグメント/トランケート/誘導体)と、有効量の蛋白質MID(例えば全長ポリペプチド又は好ましくはヒトIgD結合機能を保持するそのポリペプチド/ペプチド/機能的領域/ホモログ/フラグメント/トランケート/誘導体)と、医薬的に許容可能な賦形剤を含有するワクチン組成物である。
【0083】
蛋白質MIDと、そのIgD結合性ホモログ/フラグメント/トランケートは(参照により本明細書に組込む)WO03/004651に記載されている。この目的に特に適切なフラグメントはWO03/004651に記載されているF2フラグメントを含む(又は前記フラグメントから構成される)ポリペプチド又は前記ポリペプチドに対して少なくとも60、70、80、90、95、99%の一致度をもち、好ましくはヒトIgD結合活性を保持する配列である。
【0084】
この併用ワクチンのMID及びUspA成分は相互に分離していてもよいが、公知分子生物学技術により相互に融合すると適切であると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】フィブロネクチン結合について試験した13種のM.catarrhalis株を示す(A)。抗UspA1/A2 pAbにより検出した処、強いフィブロネクチン結合がUspA1/A2発現と相関した(B−I)。M.catarrhalis BBH18野生型及びUspA1/A2欠損突然変異体のフローサイトメトリープロファイルは可溶性フィブロネクチンとのUspA1/A2依存的結合を示す。野生型臨床単離株(B及びF)と対応するUspA1(C及びG)又はUspA2(D及びH)欠損突然変異体及びUspA1とUspA2の両者を欠損する二重突然変異体(E及びI)のプロファイルを示す。細菌をウサギ抗UspA1/A2又はフィブロネクチンと共にインキュベートした後に、抗フィブロネクチンpAbと共にインキュベートした。次に、FITC標識ウサギpAbを加えた後にフローサイトメトリー分析した。プロファイル毎に3回の実験のうちの典型的な1回と平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図2】M.catarrhalis RH4 UspA2欠損突然変異体が
125I標識フィブロネクチンと結合しないことを示す。フィブロネクチンと結合しない陰性対照として大腸菌BL21を加えた。細菌を
125I標識フィブロネクチンと共にインキュベートした後に数回洗浄し、ガンマカウンターで分析した。UspA1及びA2の両者を発現するRH4野生型とフィブロネクチンの結合を100%とした。3回の独立した実験の平均値を示す。誤差線は標準偏差(SD)を表す。M.catarrhalis BBH18でも同様の結果が得られた。
【
図3】UspA1及びUspA2を欠損するM.catarrhalis突然変異体が固定化フィブロネクチンと結合しないことを実証する写真である。M.catarrhalis野生型はフィブロネクチンをコートしたガラススライドに高密度で接着することができた(A)。M.catarrhalis ΔuspA1突然変異体も高密度で保持された(B)が、M.catarrhalis ΔuspA2及びΔuspA1/A2二重突然変異体は接着が不良であった(C及びD)。ガラススライドにフィブロネクチンをコートし、M.catarrhalis RH4とその対応するUspA1/A2突然変異体を加えてインキュベートした。数回洗浄後に、細菌をグラム染色した。
【
図4】組換えUspA1及びA2が用量依存的にフィブロネクチンと結合することを示すグラフである。UspA1
50−770とUspA2
30−539の相対フィブロネクチン結合度を示す。両者UspA蛋白質(40nM)をマイクロタイタープレートにコートし、フィブロネクチン濃度を増加しながらインキュベートした後に、ウサギ抗ヒトフィブロネクチンpAbとHRP標識抗ウサギpAbで検出した。3回の別々の実験の平均値を示し、誤差線はSDを表す。
【
図5】UspA1及びUspA2の活性フィブロネクチン結合領域は夫々アミノ酸299〜452と165〜318に位置する。UspA1(A)及びUspA2(B)に由来するトランケート型蛋白質を示す。全フラグメントをELISAでフィブロネクチン結合について試験した。各トランケート型フラグメント40nMをマイクロタイタープレートにコートし、UspA1及びUspA2に夫々80μg/ml及び120μg/mlのフィブロネクチンを加えてインキュベートした。結合したフィブロネクチンをウサギ抗フィブロネクチンpAbで検出した後にHRP標識抗ウサギpAbで検出した。結果は3組の実験の代表値である。誤差線はSDを表す。
【
図6】配列番号1の配列と、UspA1
299−452及びUspA2
165−318の配列ホモロジーを示す。31個の同一アミノ酸残基を四角で囲んだ。
【
図7】トランケート型UspA1
50−491及びUspA1
299−452フラグメントがM.catarrhalis UspA依存的フィブロネクチン結合を競合的に阻害することを示す。フィブロネクチンと結合しないM.catarrhalisΔuspA1/A2二重突然変異体を陰性対照として加えた。UspA1組換え蛋白質をフィブロネクチン2mg/100mlと共にプレインキュベートした後にM.catarrhalisと共にインキュベートした。フローサイトメトリーでFITC標識抗フィブロネクチンpAbにより検出した場合にフィブロネクチンと結合したM.catarrhalisの平均蛍光値(MFI)を示す。UspA1
50−491及びUspA1
299−452は夫々95%及び63%の阻害を生じた。誤差線は3回の独立した実験の±SDを表す。
【
図8】UspA1
299−452及びUspA2
165−318が細胞性フィブロネクチンを介するM.catarrhalisのChang結膜細胞接着を阻害することを示す。抗フィブロネクチンpAbとフローサイトメトリーにより検出した処、Chang上皮細胞は表面にフィブロネクチンを発現した(A)。フィブロネクチン結合蛋白質UspA1
299−452、UspA2
165−318又は抗フィブロネクチンpAbと共にプレインキュベートした結果、対照組換え蛋白質(UspA1
433−580及びUspA2
30−177)及び対照抗体(抗ICAM1 mAb)に比較してM.catarrhalis RH4の結合は有意に低下した(B)。対応のあるスチューデントの両側t検定によると、P<0.05であった。3回の別々の試験の平均値を示し、誤差線はSDを表す。
【
図9A】UspA1及びA2を介するM.catarrhalis RH4とラミニンの結合を示す。M.catarrhalis RH4野生型(wt)は固定化ラミニンと強く結合し、平均ODは1.27であった。RH4ΔuspA1は1.14の平均OD(野生型の89.8%)を示した。RH4ΔuspA2と二重突然変異体RH4ΔuspA1/A2は平均ODが夫々0.19及び0.23(野生型の15.0%及び18.1%)であった。これはウシ血清アルブミンをコートしたプレートとの残留接着と有意差がなかった。ラミニン又はウシ血清アルブミン30μg/mlをマイクロタイタープレートにコートした。プレートをブロッキングした後に細菌懸濁液を加えてインキュベートし、最後に洗浄した。結合した細菌を抗MID pAbとHRP標識抗ウサギpAbで検出した。3回の代表的実験の平均結果を示す。誤差線は標準偏差(SD)を表す。
【
図9B】組換えUspA1及びA2がラミニンと用量依存的に結合することを示す。UspA1
50−770及びUspA2
30−539の相対ラミニン結合度を示す。両者UspA蛋白質(40nM)をマイクロタイタープレートにコートし、ラミニン濃度を増加しながらインキュベートした後に、ウサギ抗ラミニンpAbとHRP標識抗ウサギpAbで検出した。3回の別々の実験の平均値を示し、誤差線はSDを表す。
【
図10A】UspA1
50−770(A)及びUspA2
30−539(B)の活性ラミニン結合領域がN末端側半分に位置することを示す。40nM組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539とトランケート型蛋白質をマイクロタイタープレートにコートし、ラミニン20μg/mlを加えてインキュベートした後にウサギ抗ラミニンpAbとHRP標識抗ウサギpAbで検出した。3回の別々の実験の平均値を示し、誤差線はSDを表す。
【
図10B】UspA1
50−770(A)及びUspA2
30−539(B)の活性ラミニン結合領域がN末端側半分に位置することを示す。40nM組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539とトランケート型蛋白質をマイクロタイタープレートにコートし、ラミニン20μg/mlを加えてインキュベートした後にウサギ抗ラミニンpAbとHRP標識抗ウサギpAbで検出した。3回の別々の実験の平均値を示し、誤差線はSDを表す。
【
図11】C3、共有結合C3b及びC3metの模式図である。(A)血清中のC3分子はα鎖1本とβ鎖1本から構成される。(B)α鎖は活性化後に微生物表面に共有結合することができる内部チオエステル部位を含む。(C)C3をメチルアミンで処理すると、チオエステルと共有結合する。
【
図12】M.catarrhalisが外膜蛋白質UspA1及びA2により補体系の古典経路と代替経路を阻害することを示す。(A)M.catarrhalis RH4野生型(wt)、ΔuspA1、ΔuspA2又はΔuspA1/A2突然変異体を10% NHSの存在下でインキュベートした。(B)EDTA又はMg−EGTAを添加した10% NHSの存在下でΔuspA1/A2突然変異体をインキュベートした。指定時点で細菌を採取した。一晩インキュベーション後、コロニー形成単位(cfu)を計数した。実験開始時の細菌数を100%とした。3回の別々の実験の平均値を示し、誤差線はS.D.を表す。(A)ΔuspA1、ΔuspA2又はΔuspA1/A2突然変異体の5分後の平均値は野生型と有意差があった(P<0.05)。(B)ΔuspA1/A2突然変異体の5分後とMg−EGTAの存在下でインキュベートしたΔuspA1/A2突然変異体の10分後の平均値は野生型と有意差があった(P<0.05)。
【
図13】Moraxella catarrhalisが補体活性化から独立して血清中のC3と結合することを示す。C3と(A)M.catarrhalis RH4又は(B)Streptococcus pneumoniaeの結合を示すフローサイトメトリープロファイルを示す。細菌をNHS又はEDTAで前処理したNHSと共にインキュベートした。その後、ウサギ抗ヒトC3d pAbと二次層としてFITC標識ヤギ抗ウサギpAbを加えた後にフローサイトメトリー分析した。NHSの不在下で且つ両者pAbの存在下の細菌をバックグラウンド蛍光とした。3回のうちの1回の代表的実験を示す。
【
図14】M.catarrhalisがメチルアミンで処理した精製C3と用量依存的に非共有的に結合し、結合がイオン相互作用によることを示す。(A)C3met濃度の増加に伴う結合を示すフローサイトメトリープロファイルを示す。(B)パネル(A)の各プロファイルの平均蛍光強度(mfi)を示す。(C)RH4のC3met結合はNaCl濃度の増加と共に低下する。細菌を指定通りにNaClの存在下又は不在下でC3metと共にインキュベートした。C3met結合を
図3に記載したようにフローサイトメトリーにより測定した。誤差線はSDを表す。*P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001。
【
図15】M.catarrhalis RH4野生型及びUspA1/A2欠損突然変異体のフローサイトメトリープロファイルがUspA1/UspA2依存的C3met/C3結合を示すことを例証する。野生型臨床株(A,F,K)と、蛋白質MID(B,G,L)、UspA1(C,H,M)、UspA2(D,I,N)又はUspA1とUspA2の両者(E,J,O)を欠損する対応する突然変異体のプロファイルを示す。細菌をC3met(A−E)、NHS−EDTA(F−J)又はNHS(K−O)と共にインキュベートし、
図3に概説したように検出した。プロファイル毎に3回の実験のうちの典型的な1回と平均蛍光強度(mfi)を示す。
【
図16】C3metは精製組換えUspA2
30−539と結合するが、UspA1
50−770とは弱いC3met結合しか観察されないことを示す。更に、UspA2のC3met結合領域はアミノ酸残基200〜458に位置することが分かった。(A)組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539をニトロセルロース膜に固定化した。膜に[
125I]標識C3metを加えて一晩インキュベートし、増感紙を使用して結合した蛋白質をPersonal FX(Bio−Rad)で視覚化した。組換え蛋白質MID
962−1200を陰性対照として加えた。(B)UspA1
50−770、UspA2
30−539及び一連のトランケート型UspA2蛋白質をマイクロタイタープレートにコートし、C3metを加えてインキュベートした後に、ヤギ抗ヒトC3 pAb及びHRP標識抗ヤギpAbを加えてインキュベートした。3回の実験の平均値を示す。全サンプルからバックグラウンド結合を差し引いた。誤差線はS.D.を表す。*P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001。
【
図17】血清に組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539を添加すると、代替経路によるM.catarrhalisのC3b付着及び殺傷が阻害されることを示す。フローサイトメトリープロファイルは(A)NHSもしくは組換え(rec.)UspA1
50−770及びUspA2
30−539と共にプレインキュベートしたNHS、又は(B)NHS−Mg−EGTAもしくはUspA1
50−770及びUspA2
30−539と共にプレインキュベートしたNHS−Mg−EGTAと共にインキュベーション後のRH4ΔuspA1/A2へのC3b付着を示す。各種NHS組み合わせの添加後、
図13に記載したように細菌を分析した。(C)RH4ΔuspA1/A2を10% NHS又はNHS−Mg−EGTAと共にインキュベートした。阻害のために、細菌の添加前にNHS−Mg−EGTAを100nM UspA1
50−770及び/又はUspA2
30−539と共にインキュベートした。指定時点で細菌を採取した。実験開始時の細菌数を100%とした。3回の別々の実験の平均値を示し、誤差線はS.D.を表す。組換え蛋白質と共にプレインキュベートしたΔuspA1/A2突然変異体の10分、20分及び30分時点の結果はMg−EGTA単独の存在下でインキュベートしたΔuspA1/A2突然変異体と有意差があった(P<0.05)。
【
図18】組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539が代替経路の阻害によりウサギ赤血球の溶血を低下させることを示す。NHSを100nM UspA1
50−770及び/又はUspA2
30−539の存在下又は不在下に37℃で30分間インキュベートした。その後、指定濃度のNHSをウサギ赤血球に加えた。30分間インキュベーション後、懸濁液を遠心し、上清を分光分析法により測定した。各実験の最大溶血を100%とした。3回の別々の実験の平均値を示し、誤差線はS.D.に対応する。2、3及び4%のNHS濃度でNHS+UspA2
30−539及びNHS+UspA1
50−770/UspA2
30−539で得られた結果はNHS対照と有意差があった(P<0.05)。
【
図19A】UspA1の異なる部分のホモロジーを示すために、8種の異なる株のUspA1のパイルアップ分析を示す。
【
図19B】UspA1の異なる部分のホモロジーを示すために、8種の異なる株のUspA1のパイルアップ分析を示す。
【
図19C】UspA1の異なる部分のホモロジーを示すために、8種の異なる株のUspA1のパイルアップ分析を示す。
【
図19D】UspA1の異なる部分のホモロジーを示すために、8種の異なる株のUspA1のパイルアップ分析を示す。
【
図20A】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20B】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20C】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20D】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20E】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20F】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20G】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20H】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20I】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図20J】UspA2の異なる部分のホモロジーを示すために、13種の異なる株のUspA2のパイルアップ分析を示す。
【
図21】厳密なマッチ数と領域アラインメント長の比として計算したForsgren配列で同定された領域の%一致度を示し、領域アラインメントは上記全アラインメントのうちのForsgren領域を含む部分である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
材料と方法
M.catarrhalisとフィブロネクチンの相互作用
細菌株及び培養条件
臨床M.catarrhalis株のソースを表7に示す。M.catarrhalis BBH18及びRH4突然変異体は先に文献に記載したように構築した[23,58]。M.catarrhalis株はブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)液体ブロス又はBHI寒天プレートで37℃にて常法により培養した。UspA1欠損突然変異体はクロラムフェニコール(Sigma,St.Louis,MO)1.5μg/mlを添加したBHIで培養し、UspA2欠損突然変異体はゼオシン(Invitrogen,Carlsbad,CA)7μg/mlの存在下でインキュベートした。二重突然変異体の増殖にはクロラムフェニコールとゼオシンの両方を使用した。
【0087】
【表7】
注:株C10、R4はuspA1遺伝子を欠損しており、F16、R14、Z14はuspA2遺伝子を欠損していた[10]。その他の株はuspA1及びA2遺伝子の両方を含んでいた(データは示せず)。
【0088】
DNA法
uspA1、A2及びA2H遺伝子の有無が不明であった株でこれらの遺伝子の存在を検出するために、Meierら[50]により記載されているようなプライマーとPCR条件を使用した。RH4及びBBH18の夫々のuspA1及びuspA2遺伝子のUspA1
299−452及びUspA2
165−3185’及び3’プライマーを使用して部分的配列決定を実施した。アミノ酸残基「DQKADIDNNINNIYELAQQQDQHSSDIKTLK」の存在の確認もPCRにより実施し、その場合には、この配列の5’末端からデザインしたプライマー(5’−CAAAGCTGACATCCAAGCACTTG−3’)とMeierら[50]により記載されているようなuspA1及びA2の3’プライマーを使用した。
【0089】
組換え蛋白質構築及び発現
その疎水性C末端を欠損する組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539については最近文献に記載している[58]。DNeasy組織キット(Qiagen,Hilden,ドイツ)を使用してM.catarrhalis Bc5からゲノムDNAを抽出した。更に、UspA1
50−770及びUspA2
30−539をカバーする多重領域に対応する組換え蛋白質も同一方法により構築した。使用したプライマーを表8に示す。全構築物を標準方法に従って配列決定した。組換え蛋白質の発現及び精製は先に文献に記載したように実施した[59]。天然条件の製造業者の指示に従ってニッケル樹脂を充填したカラム(Novagen)を使用して蛋白質を精製した。組換え蛋白質は先に文献に記載したようにSDS−PAGEで分析した[21]。
【0091】
抗体
ウサギ抗UspA1/A2ポリクローナル抗体(pAb)については最近文献に詳細に記載している[58]。使用した他の抗体はウサギ抗ヒトフィブロネクチンpAb、ブタFITC標識抗ウサギpAb、ブタ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギpAb及びマウス抗ヒトCD54(ICAM1)モノクローナル抗体(mAb)とした。抗体はDakopatts(Glostrup,デンマーク)から入手した。
【0092】
フローサイトメトリー分析
UspA1/A2蛋白質発現とM.catarrhalisのフィブロネクチン結合能はフローサイトメトリーにより分析した。M.catarrhalis野生型株及びUspA1/A2欠損突然変異体を一晩増殖させ、3%魚ゼラチンを添加したリン酸緩衝食塩水(PBS−ゼラチン)で2回洗浄した。次に細菌(10
8)を抗UspA1/A2抗血清又はフィブロネクチン(Sigma,St Louis,MO)5μgと共にインキュベートした。次に洗浄し、(製造業者の指示に従って希釈した)FITC標識抗ウサギpAbと共に室温で30分間又は(先にフィブロネクチンを加えた場合には)ウサギ抗ヒトフィブロネクチンpAbの100倍希釈液と共に室温で30分間インキュベートした後、FITC標識抗ウサギpAbと共にインキュベートした。更に3回洗浄後、細菌をフローサイトメトリー(EPICS,XL−MCL,Coulter,Hialeah,FL)により分析した。全インキュベーションは最終容量100μlのPBS−ゼラチン中で実施し、洗浄は同一緩衝液で実施した。抗フィブロネクチンpAbとFITC標識抗ウサギpAbを各分析株の陰性対照として別々に加えた。フィブロネクチン阻害試験はUspAフラグメント0.25μmolをフィブロネクチン2μgと共に1時間プレインキュベートした後にM.catarrhalis細菌(10
8)と共にインキュベートすることにより実施した。M.catarrhalisと結合した残留遊離フィブロネクチン量を上記に概説したようにフローサイトメトリーにより測定した。
【0093】
M.catarrhalisと固定化フィブロネクチンの結合
ガラススライドにフィブロネクチン(1mg/ml)の30μlアリコートをコートし、室温で風乾した。PBSで1回洗浄後、予め冷却しておいた後期対数期の細菌(600nmの光学密度(OD)=0.9)を入れたシャーレでスライドをインキュベートした。室温で2時間後、ガラススライドをPBSで1回洗浄した後、グラム染色した。
【0094】
蛋白質標識及びラジオイムノアッセイ(RIA)
フィブロネクチンはクロラミンT法[21]により高比活性(蛋白質1モル当たりヨウ素0.05モル)まで
125ヨウ素標識した(Amersham,Buckinghamshire,英国)。M.catarrhalis株BBH18及びRH4とその対応する突然変異体は固体培地で一晩増殖させ、2%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したPBSで洗浄した。2% BSAを添加したPBS中、
125I標識フィブロネクチン(1600kcpm/サンプル)と共に細菌(10
8)を37℃で1時間インキュベートした。PBS+2% BSAで3回洗浄後、細菌に結合した
125I標識フィブロネクチンをガンマカウンター(Wallac,Espoo,Finland)で測定した。
【0095】
酵素免疫測定法(ELISA)
マイクロタイタープレート(Nunc−Immuno Module;Roskilde,デンマーク)に75mM炭酸ナトリウム,pH9.6中40nM精製組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539蛋白質を4℃で一晩コートした。プレートを洗浄用緩衝液(50mM Tris−HCl,0.15M NaCl,及び0.1% Tween 20,pH7.5)で4回洗浄し、3%魚ゼラチンを添加した洗浄用緩衝液で2時間室温にてブロッキングした。更に4回洗浄後、(洗浄用緩衝液中)1.5%魚ゼラチンで3倍系列希釈したフィブロネクチン(120μg/ml)を加えてウェルを1時間室温にてインキュベートした。その後、プレートを洗浄し、ウサギ抗ヒトフィブロネクチンpAbを加えて1時間インキュベートした。更に洗浄後、HRP標識抗ウサギpAbを加え、1時間室温でインキュベートした。1.5%魚ゼラチンを添加した洗浄用緩衝液で抗ヒトフィブロネクチンとHRP標識抗ウサギpAbの両者を1,000倍に希釈した。ウェルを4回洗浄し、プレートを展開し、OD
450を測定した。UspA1
50−770及びUspA2
30−539をカバーするトランケート型蛋白質のELISAは夫々80μg/ml及び120μg/mlの一定用量のフィブロネクチンを用いて実施した。
【0096】
細胞株接着阻害アッセイ
10%胎仔ウシ血清、2mM L−グルタミン及びゲンタマイシン12μg/mlを添加したRPMI 1640培地(Gibco BRL,Life Technologies,Paisley,Scotland)でChang結膜細胞(ATCC CCL 20.2)を培養した。接着阻害実験の前日に細胞を回収し、ゲンタマイシン非添加RPMI 1640で2回洗浄し、ゲンタマイシン非添加培地200μl中細胞10
4個/ウェルの終濃度で96ウェル組織培養プレート(Nunc)に加えた。その後、5% CO
2及び95%空気の加湿雰囲気で細胞を一晩37℃にてインキュベートした。実験日に、フィブロネクチン結合領域(UspA1
299−452及びUspA2
165−318)を含む組換えUspA1/A2トランケート型蛋白質又はウサギ抗ヒトフィブロネクチンpAb(50倍希釈)の濃度を増加しながら1時間プレインキュベートすることによりM.catarrhalis接着の阻害を実施した。フィブロネクチンと結合しない組換え蛋白質(UspA1
433−580及びUspA2
30−177)を対照として使用した。Chang上皮細胞はICAM1を発現することが知られている[18]。そこで、抗ICAM1抗体を使用して抗フィブロネクチン抗体の阻害作用が立体障害の二次作用であるか否かを調べた。次に、PBS−ゼラチン中のM.catarrhalis RH4(10
6)をコンフルエントな単層に接種した。全実験で、組織培養プレートは3,000×gで5分間遠心し、5% CO
2中、37℃でインキュベートした。30分後に、感染させた単層をPBS−ゼラチンで数回リンスして非接着細菌を除去した後、トリプシン−EDTA(0.05%トリプシン+0.5mM EDTA)で処理し、プラスチック支持体からChang細胞を遊離させた。その後、BHIを添加した寒天プレートに得られた細胞/細菌懸濁液を希釈液として播種し、5% CO
2中、37℃で一晩インキュベートした。
【0097】
Chang結膜上皮細胞におけるフィブロネクチン発現の測定
スクレーピングによりChang結膜上皮細胞を回収した後にPBS−ゼラチンに再懸濁した。細胞(1×10
6/ml)をウサギ抗ヒトフィブロネクチンpAbで標識した後に洗浄し、FITC標識抗ウサギpAbと共にインキュベートした。更に3回洗浄後、細胞を上記に概説したようにフローサイトメトリーにより分析した。
【0098】
M.catarrhalisとラミニンの相互作用
細菌株及び培養条件
臨床M.catarrhalis株BBH18及びRH4とその対応する突然変異体については先に文献に記載している[58]。どちらの株もUspA1に比較してUspA2の発現度が比較的高い[58]。突然変異体は野生型株に比較して等量のM.catarrhalis免疫グロブリンD結合蛋白質(MID)を発現した。細菌はブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)ブロス又はBHI寒天プレートで37℃にて常法により培養した。UspA1欠損、UspA2欠損及び二重突然変異体は文献に記載したように抗生物質を添加したBHIで培養した[58]。
【0099】
組換え蛋白質構築及び発現
その疎水性C末端を欠損する組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539を作製した[58]。更に、UspA1
50−770及びUspA2
30−539をカバーする多重領域に対応する組換え蛋白質も使用した[78]。
【0100】
抗体
ウサギ抗UspA1/A2及び抗MIDポリクローナル抗体(pAb)を使用した[22,58]。ウサギ抗ラミニンpAbはSigma(St Louis,MO,米国)から入手した。ブタ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギpAbはDakopatts(Glostrup,デンマーク)から入手した。
【0101】
M.catarrhalisと固定化ラミニンの結合
マイクロタイタープレート(Nunc−Immuno Module;Roskilde,デンマーク)にTris−HCL,pH9.0中、Engelbreth−Holm−Swarmマウス肉腫ラミニン(Sigma,Saint Louis,米国)又はウシ血清アルブミン(BSA)(30μg/ml)を4℃で一晩コートした。プレートをリン酸緩衝食塩水+0.05% Tween 20,pH7.2(PBS−Tween)で洗浄した後、PBS+0.1% Tween 20,pH7.2中2% BSAでブロッキングした。次に100μl中M.catarrhalis RH4及びBBH18(10
8)を加えた後に1時間インキュベートした。PBS−Tweenで3回洗浄することにより未結合細菌を除去した。残留結合細菌を抗MID pAbにより検出した後、HRP標識抗ウサギpAbで検出した。プレートを展開し、標準プロトコールに従ってOD
450を測定した。
【0102】
酵素免疫測定法(ELISA)
マイクロタイタープレート(Nunc−Immuno Module)に75mM炭酸ナトリウム,pH9.6中40nM精製組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539蛋白質を4℃でコートした。プレートを洗浄用緩衝液(50mM Tris−HCl,0.15M NaCl,及び0.1% Tween 20,pH7.5)で4回洗浄し、3%魚ゼラチンを添加した洗浄用緩衝液で室温にてブロッキングした。更に洗浄後、(洗浄用緩衝液中)1.5%魚ゼラチンで各種指定希釈倍率に希釈したラミニンを加えてウェルを1時間室温でインキュベートした。その後、プレートを洗浄し、ウサギ抗ラミニンpAbを加えてインキュベートした。更に洗浄後、HRP標識抗ウサギpAbを加え、室温でインキュベートした。1.5%魚ゼラチンを添加した洗浄用緩衝液で抗ラミニン及びHRP標識抗ウサギpAbの両者を1,000倍に希釈した。ウェルを洗浄し、プレートを展開し、OD
450を測定した。未コートウェルに同一のラミニン希釈液を加えてインキュベートし、バックグラウンド対照として使用した。UspA1
50−770及びUspA2
30−539をカバーするトランケート型蛋白質のELISAは一定用量(20μg/ml)のラミニンを用いて実施した。
【0103】
M.catarrhalisとC3及びC3metの相互作用
細菌株及び培養条件
臨床M.catarrhalis株と近縁亜種については最近文献に詳細に記載している[21,53]。典型的な株であるNeisseria gonorrheae CCUG 15821、Streptococcus pyogenes CCUG 25570及び25571、Streptococcus agalactiae CCUG 4208、Streptococcus pneumoniae ATCC 49619、Legionella pneumophila ATCC 33152、Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145、Staphylococcus aureus ATCC 29213、並びにStaphylococcus aureus ATCC 25923はCulture Collection,University of Gothenburg(CCUG;Department of Clinical Bacteriology,Sahlgrenska Hospital,Gothenburg,スウェーデン)、又はAmerican Type Culture Collection(ATCC;Manassas,Va)から入手した。表9のその他の株はMedical Microbiology,Department of Laboratory Medicine,Malmo University Hospital,Lund University,スウェーデンから入手した臨床単離株とした。
【0105】
各種非モラクセラ種は適当な標準培地で増殖させた。M.catarrhalis株はブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)液体ブロス又はBHI寒天プレートで37℃にて常法により培養した。M.catarrhalis BBH18及びRH4突然変異体は先に文献に記載したように作製した[22,23,58]。MID欠損突然変異体はカナマイシン50μg/mlを添加したBHI中で増殖させた。UspA1欠損突然変異体はクロラムフェニコール(Sigma,St.Louis,MO)1.5μg/mlを添加したBHIで培養し、UspA2欠損突然変異体はゼオシン(Invitrogen,Carlsbad,CA)7μg/mlの存在下でインキュベートした。UspA1/A2二重突然変異体にはクロラムフェニコールとゼオシンの両方を使用した。
【0106】
抗体
完全フロイントアジュバント(Difco,Becton Dickinson,Heidelberg,ドイツ)で乳化した組換え全長UspA1(200μg)をウサギに筋肉内免疫し、18日目と36日目に不完全フロイントアジュバントに乳化した同一用量の蛋白質をブースター免疫した[22]。3週間後に採血した。特異性を増すために、標識組換えUspA1
50−770を固定したセファロースを用いて抗UspA1抗血清をアフィニティー精製した[58]。抗血清はUspA1及びUspA2に同等に結合したので、抗UspA1/A2pAbと命名した。ウサギ抗ヒトC3d pAbとFITC標識ブタ抗ウサギpAbはDakopatts(Glostrup,デンマーク)から購入し、ヤギ抗ヒトC3はAdvanced Research Technologies(San Diego,CA)から購入した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ロバ抗ヤギpAbはSerotec(Oxford,英国)から入手した。
【0107】
蛋白質及びヨウ素標識
その疎水性C末端を欠損する組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539の作製については最近文献に記載している[23]。トランケート型UspA1及びUspA2蛋白質はTanら[78]により詳細に記載されているように作製した。C3bはAdvanced Research Technologiesから購入した。C3(H
2O)は精製C3の凍結解凍により取得した。C3b様分子(C3met)は精製C3を100mMメチルアミン(pH8.0)の存在下に2時間37℃でインキュベートした後に100mM Tris−HCl(pH7.5),150mM NaClで透析することにより作製した。結合試験では、クロラミンT法を使用してC3metを蛋白質1モル当たり
125I(Amersham,Buckinghamshire,英国)0.05モルで標識した[25]。
【0108】
フローサイトメトリー分析
C3とM.catarrhalis及び他の種との結合はフローサイトメトリーにより分析した。細菌を固体培地で一晩増殖させ、2% BSA(Sigma)を添加したPBS(PBS−BSA)で2回洗浄した。その後、細菌(10
8コロニー形成単位;cfu)をPBS−BSA中、C3met、C3b、C3(H
2O)、又は10% NHSもしくはNHS+10mM EDTAもしくはNHS+4mM MgCl
2+10mM EGTA(Mg−EGTA)と共に30分間37℃でインキュベートした。洗浄後、細菌を抗ヒトC3d pAbと共に30分間氷上でインキュベートした後、洗浄し、更に30分間氷上でFITC標識ヤギ抗ウサギpAbと共にインキュベートした。更に3回洗浄後、細菌をフローサイトメトリー(EPICS,XL−MCL,Coulter,Hialeah,FL)により分析した。全インキュベーションは最終容量100μlのPBS−BSA中で実施し、洗浄は同一緩衝液で実施した。抗ヒトC3d pAbとFITC標識抗ウサギpAbを各分析株の陰性対照として別々に加えた。阻害試験では、血清を組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539蛋白質100nMと共に30分間37℃でプレインキュベートした。M.catarrhalisとC3の相互作用の特徴を分析するために、濃度を増加しながらNaCl(0−1.0M)を細菌とC3metに加えた。UspA1/A2発現を分析するために、細菌(10
8cfu)を抗UspA1/A2 pAbと共にインキュベートし、上記のように洗浄した。製造業者の指示に従って希釈したFITC標識ヤギ抗ウサギpAbを検出に使用した。EDTAが外膜蛋白質UspA1及びUspA2を破壊しなかったことを確証するために、M.catarrhalisをEDTAの存在下又は不在下でインキュベートした後にUspA1/A2発現を検出した。EDTAはNHS−EDTA実験で使用した濃度ではUspA1/A2の密度を変化させなかった。
【0109】
血清及び血清殺菌アッセイ
正常ヒト血清(NHS)は5人の健常ボランティアから採取した。血液を30分間室温で凝固させた後、氷上で60分間インキュベートした。遠心後、血清をプールし、分取し、−70℃で保存した。古典経路と代替経路の両方を不活性化するために、10mM EDTAを加えた。他方、古典経路を不活性化するためにMg−EGTAを加えた。C4BPのα鎖のCCP1に対するマウスmAbであるmAb 104を固定化したHiTrapカラム(Amersham Biosciences)に新鮮血清を通すことによりC4BPを欠損するヒト血清を調製した[41]。フロースルーを採取し、欠乏血清をアリコートに分けて−70℃で保存した。Biorex 70イオン交換クロマトグラフィー(Bio−Rad,Hercules,CA)を使用してC1q精製の第1段階[79]によりC1q欠乏血清を得た。得られた血清は正常溶血活性を示した。D因子及びプロパージン欠損血清はAnders Sjoholm博士(Department of Medical Microbiology,Lund University,Lund,スウェーデン)から寄贈された。0.1%(wt/vol)ゼラチン,1mM MgCl
2,0.15mM CaCl
2,及び2.5%デキストロースを添加した2.5mMベロナール緩衝液,pH7.3(DGVB
++)でM.catarrhalis株を希釈した。細菌(10
3cfu)を最終容量100μl中、10% NHS+EDTA又はMg−EGTAと共にインキュベートした。細菌/NHSを37℃でインキュベートし、各種時点で10μlアリコートを取り出し、BHI寒天プレートに撒いた。阻害試験では、細菌を添加する前に10%血清を100nM組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539蛋白質と共に30分間37℃でインキュベートした。
【0110】
ドットブロットアッセイ
0.1M Tris−HCl,pH9.0(100μl)で3倍系列(1.9−150nM)希釈した精製組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539をドットブロット装置によりニトロセルロース膜(Schleicher & Schull,Dassel,ドイツ)にスポットした。飽和後、5%粉乳を添加したPBS−Tweenに膜を浸して2時間室温でインキュベートし、PBS−Tweenで4回洗浄した。その後、2%粉乳を添加したPBS−Tweenで希釈した5kcpm[
125I]標識C3metを一晩4℃で加えた。増感紙を使用して結合した蛋白質をPersonal FX(Bio−Rad)で視覚化した。
【0111】
表面プラズモン共鳴法(Biacore)
UspA1/2とC4BPの相互作用について最近文献[58]に記載したように、UspA1
50−770又はUspA2
30−539とC3の相互作用を表面プラズモン共鳴法(Biacore 2000;Biacore,Uppsala,スウェーデン)により更に分析した。Biaevaluationソフトウェア(Biacore)により提供される定常状態親和性モデルを使用して濃度に対してプロットした平衡状態の応答を示す結合曲線からK
D(平衡解離定数)を計算した。
【0112】
酵素免疫測定法(ELISA)
マイクロタイタープレート(Nunc−Immuno Module;Roskilde,デンマーク)に精製組換えUspA1
50−770、UspA2
30−539、又はトランケート型UspA1及びUspA2フラグメント(75mM炭酸ナトリウム,pH9.6中40nM)の3種類を4℃で一晩コートした。プレートを洗浄用緩衝液(0.1% Tween 20を添加したPBS,pH7.2)で4回洗浄し、1.5%オボアルブミンを添加した洗浄用緩衝液(ブロッキングバッファー)で2時間室温にてブロッキングした。洗浄後、ブロッキングバッファーで希釈したC3met 0.25μgをウェルに加えて一晩4℃でインキュベートした。その後、プレートを洗浄し、ブロッキングバッファーで希釈したヤギ抗ヒトC3を加えて1時間室温でインキュベートした。更に洗浄後、HRP標識ロバ抗ヤギpAbを更に1時間室温で加えた。ウェルを4回洗浄し、プレートを展開し、OD
450を測定した。
【0113】
溶血アッセイ
0.1%(wt/vol)ゼラチン,7mM MgCl
2,10mM EGTA,及び2.5%デキストロースを添加した氷冷2.5mMベロナール緩衝液,pH7.3(Mg
++EGTA)でウサギ赤血球を3回洗浄し、0.5×10
9個/mlの濃度で再懸濁した。Mg
++EGTAで希釈した各種濃度(0〜4%)の血清を赤血球に加えてインキュベートした。37℃で1時間後、赤血球を遠心し、405nmで遊離ヘモグロビンの分光光度測定により溶解赤血球量を測定した。UspA1及びUspA2で阻害するために、10%血清を100nM組換えUspA1
50−770及び/又はUspA2
30−539蛋白質の存在下に30分間37℃でプレインキュベートした後に、0〜4%で赤血球に添加した。
【0114】
多形核白血球の単離と貪食作用
macrodex(Pharmalink AB,Upplands Vasby,スウェーデン)を使用して健常ボランティアの新鮮血からヒト多形核白血球(PMN)を単離した。PMNを10分間300gで遠心し、PBSで洗浄し、RPMI 1640培地(Life Technologies,Paisley,スコットランド)に再懸濁した。細胞懸濁液(0.5×10
8)を3% NHSもしくはNHS−EDTA、又は精製C3met 20μgで15分間37℃にてオプソニン化した。洗浄後、10:1の細菌/PMN比で細菌をPMN(1×10
7個/ml)と混合した後、振盪下に37℃でインキュベートした。0分間、30分間、60分間及び120分間インキュベーション後の生存細菌を生菌数により測定した。貪食されたNHS処理細菌数をNHSの不在下で貪食された細菌数に比較した。NHSでオプソニン化したS.aureusを陽性対照として使用した。
【0115】
実施例及び結果
M.catarrhalisとフィブロネクチンの相互作用
UspA1及びA2を欠損するM.catarrhalisは可溶性又は固定化フィブロネクチンと結合しない。
【0116】
M.catarrhalis臨床株のランダム群(n=13)(表7)を選択し、そのUspA1/A2発現との相関においてフィブロネクチン結合をフローサイトメトリーにより試験した。平均蛍光強度(MFI)が高い場合にUspA1/A2発現強度が高いものとみなし、UspA1/A2発現に相関させた(ピアソン相関係数0.77,P<0.05)(
図1A)。しかし、本発明の抗UspA1/A2 pAbでUspA1及びA2発現を区別することはできなかった。更に、本試験で使用した株にuspA2H遺伝子は検出されなかったので、UspA2H蛋白質の存在は結合に寄与しないと思われる(データは示せず)。
【0117】
2種のM.catarrhalis単離株(BBH18及びRH4)とUspA1、UspA2又は両者蛋白質を欠損するその特異的突然変異体もフローサイトメトリーにより分析した。M.catarrhalis BBH18はフィブロネクチンと強く結合し、平均蛍光強度(MFI)は96.1であった(
図1F)。他方、BBH18ΔuspA1はフィブロネクチン結合の低下を示し、MFIは68.6であった(
図1G)。BBH18ΔuspA2及び二重突然変異体BBH18ΔuspA1/A2とフィブロネクチンの結合は夫々MFIが10.7及び11.5に過ぎないことが判明した(
図1H,1J)。臨床株M.catarrhalis RH4のUspA1/A2突然変異体でも同様の結果が得られた。これらの結果をまとめると、UspA1及びA2はフィブロネクチンと結合し、細菌のフィブロネクチン結合能はUspA1/A2発現に強く依存すると予想された。
【0118】
フィブロネクチンとM.catarrhalisの相互作用を更に分析するために、
125I標識フィブロネクチンを加え、2種の臨床M.catarrhalis単離株(BBH18及びRH4)と夫々の突然変異体をインキュベートした。野生型M.catarrhalis RH4は
125I−フィブロネクチンと強く結合し、対応するΔuspA1突然変異体は野生型の80%の結合を示した。他方、ΔuspA2及び二重突然変異体は
125I−フィブロネクチンとの結合が夫々14%及び12%であり、バックグラウンドレベル(5.0〜10%)を僅かに上回るだけであった(
図2)。M.catarrhalis BBH18と対応するUspA1/A2突然変異体でも同様の結果が得られた。以上の結果から、M.catarrhalisと可溶性フィブロネクチンの結合を最大にするためにはUspA1及びA2の両方が必要であると予想される。
【0119】
細菌と固定化フィブロネクチンの結合を更に検討するために、フィブロネクチンをコートしたガラススライドにM.catarrhalis RH4とその対応するΔuspA1/A2突然変異体をスポットした。2時間インキュベーション後、スライドを洗浄した後、グラム染色した。M.catarrhalis野生型及びΔuspA1突然変異体はフィブロネクチンをコートしたガラススライドに強く接着することが分かった(
図3A及び3B)。他方、M.catarrhalisΔuspA2及びΔupA1/A2二重突然変異体はフィブロネクチンをコートしたガラススライドとの接着が弱く、洗浄後に数個の細菌しか残らなかった(夫々
図3C及び3D)。別のM.catarrhalis臨床単離株(BBH18)とその突然変異体による実験も同様の結果を示し、UspA2はM.catarrhalisと固定化フィブロネクチンの結合に特に重要であることが分かった。
【0120】
フィブロネクチン結合領域はUspA1の299〜452とUspA2の165〜318に位置するアミノ酸残基を含む。
【0121】
UspA1及びA2とフィブロネクチンの相互作用を更に分析するために、トランケート型UspA1
50−770及びUspA2
30−539を大腸菌で組換えにより作製し、マイクロタイタープレートにコートし、フィブロネクチン濃度を増加しながらインキュベートした。結合したフィブロネクチンを抗ヒトフィブロネクチンpAbで検出した後、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗ウサギpAbを加えてインキュベートした。組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539はいずれも可溶性フィブロネクチンと結合し、相互作用は用量依存的であった(
図4)。
【0122】
UspA1のフィブロネクチン結合領域を決定するために、全長UspA1
50−770分子をカバーする組換え蛋白質を作製した。フィブロネクチンを固定化UspA1蛋白質フラグメントと共にインキュベートし、相互作用をELISAにより定量した。UspA1
50−491はUspA1
50−770とほぼ同等効率でフィブロネクチンと結合し、結合領域が蛋白質のこの部分に含まれることが示唆された。他のトランケート型フラグメントでは、UspA1
299−452が高い効率でフィブロネクチンと結合した(
図5A)。同時に、フィブロネクチンとアミノ酸UspA2
30−539を含む数個の組換えUspA2フラグメントの相互作用も分析した。2個のフラグメントUspA2
101−318及びUspA2
165−318はフィブロネクチンと強く結合した(
図5B)。以上の結果から、結合領域はUspA1
299−452及びUspA2
165−318に存在する残基を含むことが極めて明白である。これらの2個の結合フラグメントの配列比較の結果、31個のアミノ酸残基「DQKADIDNNINNIYELAQQQDQHSSDIKTLK」がuspA1及びA2で一致していることが判明した(
図6)。更に、この反復配列はM.catarrhalis BBH18及びRH4のuspA1及びA2遺伝子にも検出された(データは示せず)。
【0123】
UspA1
50−491及びUspA1
299−452フラグメントはM.catarrhalisとフィブロネクチンの結合を競合的に阻害する。
【0124】
UspA1/A2のフィブロネクチン結合領域に関する上記結果を更に確証するために、フィブロネクチンとM.catarrhalisの結合を阻害する能力について組換えトランケート型UspA1蛋白質を試験した。フィブロネクチン(2μg)を組換えUspA1フラグメント0.25μmolと共にプレインキュベートした後にM.catarrhalisと共にインキュベートした。最後に、UspA依存的なM.catarrhalisとフィブロネクチンの結合をフローサイトメトリーにより測定した。UspA1
50−491及びUspA1
299−452と共にプレインキュベートした結果、フィブロネクチン結合度は低下し、UspA1
50−491では95%低下し、UspA1
299−452では63%低下した(
図7)。フィブロネクチンをトランケート型UspA2
101−318と共にプレインキュベートした場合には、50%の阻害が得られた。
【0125】
従って、UspA1及びA2のフィブロネクチン結合領域はフィブロネクチンとM.catarrhalisの相互作用を阻害する。
【0126】
UspA1
299−452及びUspA2
165−318はM.catarrhalisとChang上皮細胞の接着を阻害する。
【0127】
上皮細胞はフィブロネクチンを発現することが知られており、多くの細菌は細胞性フィブロネクチンを介して上皮細胞に付着する[46,54,69,77]。従来の研究によると、M.catarrhalisは上皮細胞と接着することが分かっている[43,49]。本実施例では呼吸器病原菌の接着実験で頻用されているChan結膜細胞を分析した。フローサイトメトリー分析によると、Chang細胞はフィブロネクチンを高度に発現した(
図8A)。
【0128】
UspA依存的フィブロネクチン結合が細菌接着に重要であるか否かを分析するために、Chang上皮細胞を抗ヒトフィブロネクチンpAb、又は組換え蛋白質UspA1
299−452及びUspA2
165−318と共にプレインキュベートした。その後、M.catarrhalis RH4を加え、細菌接着を分析した。UspA1
299−452、UspA2
165−318、又は抗ヒトフィブロネクチンpAb 0.4μmol/200μlの存在下のプレインキュベーション後の(コロニー形成単位数により測定した)相対接着率は夫々36%、35%及び32%であった。組換えペプチドの濃度を増加しても、阻害率は増加しなかった。他方、非フィブロネクチン結合フラグメントUspA1
433−580及びUspA2
30−177はM.catarrhalisとChang上皮細胞の相互作用を阻害しなかった(
図8B)。従って、Chang上皮細胞表面のフィブロネクチンはM.catarrhalisの受容体として機能すると思われ、UspA1の299〜452位及びUspA2の165〜318位のアミノ酸残基は相互作用に関与するリガンドを含む。
【0129】
M.catarrhalisとラミニンの相互作用
M.catarrhalisはUspA1及びA2を介してラミニンと結合する。
【0130】
2種の臨床M.catarrhalis単離株(BBH18及びRH4)と、UspA1、UspA2又は両者蛋白質を欠損するその特異的突然変異体を全細胞ELISAにより分析した。M.catarrhalis RH4は固定化ラミニンと強く結合した(
図9A)。他方、M.catarrhalis RH4 uspA1突然変異体(RH4ΔuspA1)は野生型の89.9%のラミニン結合度を示した。M.catarrhalis RH4 uspA2突然変異体(RH4ΔuspA2)と二重突然変異体RH4ΔuspA1/A2は夫々野生型の15.2%及び18.1%の結合能であった。これはBSAをコートしたプレートの残留接着と有意差がなかった。臨床株M.catarrhalis BBH18に由来するUspA1/A2突然変異体でも同様の結果が得られた。これらの2種の株(BBH18及びRH4)において、UspA2はUspA1よりも優先的に発現される蛋白質であるので、野生型とRH4ΔuspA1の結合度の差が最小であることを説明できる。以上の結果をまとめると、UspA1及びA2はラミニンと結合したことが明らかである。
【0131】
UspA1/A2とラミニンの結合を更に分析するために、トランケート型UspA1
50−770及びUspA2
30−539を大腸菌で作製した。組換え蛋白質をマイクロタイタープレートにコートし、ラミニン濃度を増加しながらインキュベートした。結合したラミニンをウサギ抗ラミニンpAbで検出した後、HRP標識抗ウサギpAbを加えてインキュベートした。組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539はいずれも可溶性ラミニンと強く結合し、結合は用量依存的且つ飽和性であった(
図9B)。
【0132】
ラミニン結合領域を決定するために、全長分子をカバーする組換えUspA1及びA2を作製した。ラミニンを固定化トランケート型UspA1及びA2フラグメントと共にインキュベートした後、ELISAにより定量した。UspA1
50−491はUspA1
50−770とほぼ同等効率でラミニンと結合し、結合領域が蛋白質のこの部分に含まれることが示唆された。他方、この領域をカバーする他のトランケート型フラグメントのうちで、ラミニンと結合すると思われる他のフラグメントは皆無であった。N末端部分であるUspA2
30−351は全長蛋白質に比較して44.7%の結合能を維持することができた。もっと短い蛋白質UspA2
30−177は43.7%の結合能を示した(
図10B)。これらの結果から、結合領域はUspA1及びUspA2の両者のN末端内に存在する残基を含むことが明らかである。
【0133】
M.catarrhalisとC3及びC3metの相互作用
M.catarrhalis外膜蛋白質UspA1及びUspA2は補体カスケードの古典経路と代替経路の両者を阻害する。
【0134】
正常ヒト血清(NHS)中でM.catarrhalisが生存するにはUspA2表面発現が不可欠であり[1,58]、即ちモラクセラUspA2欠損突然変異体はNHSに暴露されると迅速に死滅する。本発明者らはUspA1及びA2がいずれもC4BPと結合するので補体活性化の古典経路を阻害するらしいということを最近報告している[58]。M.catarrhalisと補体系の相互作用を更に解明するために、MgCl
2を添加したEGTA(Mg−EGTA)又はEDTAで処理した血清中でUspA1/A2二重突然変異体の生存を試験した。Mg−EGTAは古典経路とレクチン経路を阻害するので、代替経路を別個に分析することができる。他方、EDTAは2価カチオン(Mg
2+及びCa
2+)を吸収することにより全補体経路を阻害する。M.catarrhalis RH4野生型は30分間インキュベーション後に生存していたが、RH4ΔuspA1/A2二重突然変異体は10分後に無傷のNHSにより死滅した(
図12)。古典経路を阻害した場合(NHS+Mg−EGTA)には、RH4ΔuspA1/A2突然変異体はキレート剤を加えないNHSに比較して有意に長時間生存したが、野生型細菌ほど長時間ではなかった。更に、古典経路と代替経路の両者をEDTAで阻害した場合には、M.catarrhalis RH4ΔuspA1/A2は生存した。M.catarrhalis BBH18単離株とその対応するBBH18ΔuspA1/A2突然変異体でも同様の結果が得られた(図示せず)。同時に、C1q及びD因子/プロパージン欠損血清の実験の結果、古典経路と代替経路はいずれもM.catarrhalisにより阻害されることが分かった(図示せず)。従って、ヒト気道に定着することが多い病原菌であるM.catarrhalisは外膜蛋白質UspA1及びA2により補体系の古典経路のみならず代替経路をも阻害する。
【0135】
M.catarrhalisはEDTAで不活化した血清からC3を吸収する。
【0136】
C3bは微生物の表面と共有結合するので、代替経路を誘導する(
図11B)。M.catarrhalisがC3と相互作用できるか否かを分析するために、NHS又はEDTAで処理したNHSと共に本実施例のRH4野生型株をインキュベートした。C3とC3bの両者を認識する抗C3dポリクローナル抗体(pAb)を使用してフローサイトメトリーによりM.catarrhalis RH4の細菌表面のC3/C3bの(共有結合による)結合又は付着を検出した。無傷の補体を含むNHSと共に細菌をインキュベートすると、C3が付着した(
図13)。興味深いことに、EDTAの存在下で補体カスケードを不活性化しても、M.catarrhalis RH4はC3と結合した(
図13A)。比較のために加えたStreptococcus pneumoniaeはEDTAで処理した血清からC3を吸収しなかった(
図13B)。肺炎球菌とは対照的に、M.catarrhalisはこのように補体不活性化とは無関係にC3と結合した。C3の内部チオエステルは流体相でC3(H
2O)に自発的に加水分解する。従って、M.catarrhalisと相互作用する可能性が最も高いC3形態は無傷のC3又はC3(H
2O)であった。M.catarrhalisはC4BPとも結合する[58]ので、C4BPがC3結合に加わるのを避けたいと思い、このために、C4BP欠乏血清を使用した。M.catarrhalisはNHSと同程度までC4BP欠乏血清からC3を吸収した(図示せず)。
【0137】
C3metとM.catarrhalisの結合は用量依存的且つ非共有的である。
【0138】
本実験によると、C3は補体活性化とは無関係にM.catarrhalisの表面に結合するようであった。そこで、非機能的なC3変換体がこの細菌と結合できるか否かを分析した。天然C3をヒト血清から精製し、メチルアミンで処理し、C3bと等価であるが、微生物と共有結合できないC3met分子にC3を変換した(
図11C)。フローサイトメトリー分析の結果、M.catarrhalis RH4野生型株は用量依存的且つ飽和性にC3metと高い効率で結合することが判明した(
図14A及びB)。C3bとC3(H
2O)もM.catarrhalisに結合した(図示せず)ので、この相互作用はC3分子のC3a部分を介在していなかった。NaCl濃度を増加すると相互作用が低下したので、M.catarrhalis RH4とC3metの結合は相当程度までイオン相互作用に依存していた(
図14C)。M.catarrhalis BBH18野生型株でも同様の結果が得られた(図示せず)。
【0139】
C3の結合が全M.catarrhalis株の一般特徴であるか否かを調べるために、臨床単離株のランダム群(n=13)を選択し、それらのC3met結合能を分析した。抗C3d pAbを用いたフローサイトメトリー分析によると、全M.catarrhalis株はC3metと結合することが判明した。mfi値は4〜39であった。他方、比較のために加えたS.pneumoniaeと大腸菌はC3metと結合しなかった。
【0140】
M.catarrhalisはユニークなC3及びC3met結合細菌である。
【0141】
NHSからの細菌C3吸収の分析を拡張するために、近縁モラクセラ亜種(n=13)と一般的なヒト病原菌(n=13)をNHS−EDTAの存在下でインキュベートした。興味深いことに、試験した全細菌種のうちで、M.catarrhalisは補体不活性化血清中でC3と結合した唯一の細菌であった(表9)。全近縁モラクセラ株と他のヒト病原菌もC3metの結合を分析した。C3結合と同様に、M.catarrhalisはC3metと結合した唯一の種であった。以上の結果をまとめると、M.catarrhalisはC3及びC3metと非共有的に強く結合するユニークな特徴をもつ。
【0142】
M.catarrhalisは外膜蛋白質UspA1及びUspA2を介してC3metと結合する。
【0143】
C3結合に関与するM.catarrhalis蛋白質を決定するために、外膜蛋白質MID、UspA1及び/又はUspA2を欠損する細菌突然変異体群を試験した[22,58]。興味深いことに、C3metの結合はUsp発現と有意に相関した(
図15)。M.catarrhalis RH4Δmidは野生型対応株と同程度までC3metと結合した(
図15A−B)。RH4ΔuspA1突然変異体は結合の低下が僅かであったが、RH4ΔuspA2は野生型対応株に比較して弱い結合剤であった(
図15C−D)。同時に、C3metと二重RH4ΔuspA1/A2突然変異体の結合は完全に消滅した(
図15E)。更に、NHS−EDTAを使用して同一実験を実施した処、同一パターンが認められた(
図15F−J)。正常ヒト血清を使用した場合には、C3の共有付着及び結合の混合物であったので、全突然変異体がその表面に同等量のC3を示した(
図15K−O)。M.catarrhalis BBH18単離株と対応するBBH18突然変異体でも同様の結果が得られた。
【0144】
C3とUspA1/A2の相互作用を更に分析するために、UspA1
50−770及びUspA2
30−539を大腸菌で作製し、精製した。組換え蛋白質をニトロセネロース膜にドットブロットした後に、ヨウ素で標識したC3metと共にインキュベートした。M.catarrhalis外膜蛋白質MIDに由来する組換えMID
962−1200[59]を陰性対照として加えた。UspA1
50−770とは弱い結合しか検出されなかったが、[
125I]−C3metはUspA2
30−539と強く結合した(
図16A)。これらの結果は表面プラズモン共鳴法(即ちBiacore)により更に裏付けられた。アミノカップリングを使用してUspA1
50−770及びUspA2
30−539をCM5チップの表面に固定化し、飽和に達するまでC3metを注入した。C3metとUspA2
30−539又はUspA1
50−770の相互作用のK
Dは夫々3及び14μMであった。結論として、UspA2はM.catarrhalisの主要なC3met結合蛋白質であるが、UspA1は結合に関与する程度が低いことが分かった。
【0145】
C3結合領域はUspA2のアミノ酸残基200〜458に位置する。
【0146】
UspA2のC3結合領域を決定するために、全長UspA2
30−539分子をカバーする組換え蛋白質を作製した。C3metを固定化全長UspA1
50−770、UspA2
30−539及び一連のトランケート型UspA2蛋白質と共にインキュベートした。その後、相互作用をELISAにより定量した。ドットブロット実験(
図16A)に一致し、UspA1
50−770はELISAでUspA2
30−539よりも著しく低い程度にしかC3metと結合しなかった(
図16B)。トランケート型蛋白質フラグメントのうちで、UspA2
165−318、UspA2
200−539及びUspA2
302−458はC3metと高い効率で結合し、結合領域がアミノ酸残基200〜458に位置することが示唆された。
【0147】
組換えUspA1/A2はC3活性を中和する。
【0148】
代替経路のUspA1/A2依存的阻害を詳細に検討するために、10% NHS又は100nM 組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539と共にプレインキュベートしておいた血清と共にインキュベートした細菌で一連のフローサイトメトリー実験を実施した。興味深いことに、NHSをUspA1
50−770及びUspA2
30−539で前処理した場合にはM.catarrhalis RH4ΔuspA1/A2の表面のC3付着/結合の有意低下が観察された(
図17A)。古典経路をMg−EGTAで阻害した場合にも同様の結果が得られた(
図17B)。従って、組換え蛋白質UspA1
50−770及びUspA2
30−539はC3をNHSから吸収し、C3の付着/結合を阻害した。
【0149】
組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539によるC3の吸収が細菌生存率を増加したか否かを調べるために、UspA1
50−770及びUspA2
30−539を添加した血清と共に二重突然変異体M.catarrhalis RH4ΔuspA1/A2をインキュベートした後に生存細菌数を測定した。古典経路を阻害するために、Mg−EGTAを反応に加えた。興味深いことに、組換えUspA1
50−770及びUspA2
30−539をNHSに加えると、UspA1/A2欠損M.catarrhalisの死滅が抑制された(
図17C)。UspA2
30−539はUspA1
50−770に比較して細菌死滅の抑制効率が高かった。両者組換え蛋白質を混合しても、代替経路のそれ以上の阻害は検出されなかった。10% NHSが約600nM C3に対応する。UspA1分子を増やすとC3活性を中和できるか否かを調べるために、600nMまでのUspA1
50−770及び/又はUspA2
30−539を加えた。しかし、組換え蛋白質濃度を増加しても、阻害はそれ以上増加しなかった(図示せず)。
【0150】
代替経路の阻害剤としてのUspA1及びA2の役割を立証するために、ウサギ赤血球とNHSから構成される代替経路溶血アッセイも実施した。NHSを組換えUspA1
50−770、UspA2
30−539、又は両者蛋白質と共にプレインキュベートした後に赤血球に加えた。1時間インキュベーション後に、赤血球溶解量を測定した。興味深いことに、NHSをUspA1
50−770又はUspA2
30−539と共にプレインキュベートした場合には未処理NHSに比較して溶血の有意低下が観察された(
図18)。UspA2
30−539又はUspA1
50−770の存在下で細菌生存率は上昇した(
図17C)が、NHSをUspA1
50−770と共にプレインキュベートした場合に比較してUspA2
30−539単独の存在下でプレインキュベートしたほうが代替経路の阻害効率は上昇した。結論として、組換えUspA1
50−770又はUspA2
30−539はそのC3結合能により代替経路の活性を阻害した。
【0151】
補体カスケードにおける主要分子であることに加え、付着したC3b及びiC3b(不活性化C3b)はオプソニン貪食作用プロセスで除去するために微生物をターゲットとする。M.catarrhalisの表面に非共有的に結合したC3又はC3metもオプソニンとして機能できるか否かを調べるために、一連の貪食作用実験を実施した。M.catarrhalisをC3met、NHS又はEDTAで処理したNHSと共にプレインキュベートした後に多形核白血球を加えた。興味深いことに、M.catarrhalisはC3metの存在下で貪食されなかったが、NHSは貪食作用を強く促進した(データは示せず)。他方、NHSをEDTAで前処理した場合には、M.catarrhalisは多形核白血球により貪食されなかった。従って、C3/C3metはM.catarrhalis細胞表面で不活性であり、オプソニンとして機能しなかった。
【0152】
考察
M.catarrhalisとフィブロネクチンの相互作用
臨床M.catarrhalis株Bc5に由来するUspA1
299−452及びUspA2
165−318はフィブロネクチンと結合した最短フラグメントであった。興味深いことに、UspA1
299−452及びUspA2
165−318内に存在するアミノ酸配列を含むもっと長いフラグメントはより効率の高いフィブロネクチンとの結合を示した(
図5A及びB)。これは、これらの2つの領域が部分的結合領域に相当するか又は結合部位が特定分子構造に高度に依存することを意味すると思われる。UspA1
299−452とUspA2
165−318は23残基「NNINNIYELAQQQDQHSSDIKTL」を含む31個の共通のアミノ酸残基の配列(NNINNIY配列)をもつ。この配列は普遍的反応性が存在する防御モノクローナル抗体(mAb)17C7のエピトープを含む[2,50,30]。マウスモデルでは、mAb 17C7で受動免疫すると、M.catarrhalisに対する防御が得られ、肺クリアランスが改善された[30]。従って、最も興味深い点として、UspA1/A2フィブロネクチン結合領域はこれらの残基を含み、この領域はM.catarrhalis気道感染症の病因に重要であると言える。
【0153】
本実験で使用したフィブロネクチンと結合するM.catarrhalis BBH18及びRH4もそのUspA1/A2蛋白質にこれらの31アミノ酸残基をもつ。大半のM.catarrhalisはこの配列(即ちNNINNIY配列)の一部をもつ。しかし、そのUspA2遺伝子にNNINNIYをもつO35E等の株はフィブロネクチンと結合するUspA2蛋白質を発現しない[49]。その理由として、フランキング領域の変異がフィブロネクチンとの相互作用を変化させていると考えられる。また、保存NNINNIY配列自体に小さな一塩基アミノ酸置換が生じている可能性もある[28]。従って、フィブロネクチン結合はUspA1/A2発現だけでなく、各UspA蛋白質の個々の構成にも依存すると思われる。興味深いことに、接着特性をもつハイブリッドUspA2H蛋白質[M.catarrhalis TTA37及びO46E)にはほぼ同一のアミノ酸配列が認められる[43]。このことも31アミノ酸配列が接着に重要であるという本発明の知見を裏付けている。
【0154】
最後の実験系列では、M.catarrhalisとChang結膜細胞の接着をフィブロネクチン結合フラグメント(UspA1
299−452及びUspA2
165−318)により阻害できるか否かを試験した(
図8B)。UspA1
299−452、UspA2
165−318又は抗フィブロネクチンpAbと共にプレインキュベートした結果、Chang上皮細胞との結合は低下した。これらの結果はUspA1/A2とChang上皮細胞の相互作用におけるこれらの結合領域の重要性を確認し、更にフィブロネクチンがUspAの重要な受容体であることを示唆している。更に、FnBPは未分化及び損傷状態の気道への細菌の接着を助長することが知られている[54,69]。肺繊維芽細胞によるフィブロネクチン発現はタバコ煙抽出物によっても増加する[87]。従って、ECMフィブロネクチン又は上皮細胞性フィブロネクチンと結合するM.catarrhalis UspA1/A2の役割はCOPD患者において非常に重要であり、この患者群におけるM.catarrhalis感染症の頻発を説明することができる[40]。
【0155】
結論すると、M.catarrhalis BBH18、RH4及びBc5のUspA1/A2は非常に重要なFnBPであることが分かった。Bc5に由来する組換えUspA1及びA2はいずれもフィブロネクチンと結合し、結合領域は保存NNINNIY配列を含む共通のアミノ酸残基をもつ。更に、M.catarrhalis UspA1/A2と上皮細胞の相互作用は細胞性フィブロネクチンを介在する。従って、これらのフィブロネクチン結合領域の決定はM.catarrhalisに対するワクチンの開発を大きく前進させるものである。
【0156】
M.catarrhalisとラミニンの相互作用
M.catarrhalisはCOPD患者における感染症増悪の一般的な原因である。COPD患者におけるこの種の繁殖はアドヘシンのレパートリーが多いことが一因であると思われる。更に、喫煙者ではラミニン層自体が肥厚して基底膜が露出し、上皮完全性の低下等の病的変化が生じる[4]。所定の病原菌はラミニンと結合できることが分かっているので、このような損傷して露出した粘膜表面と接着できると考えられる。このような病原菌としては、特にS.aureusやP.aeruginosa等の重大な気道疾患を誘発することが知られている病原菌が挙げられる[7,63]。
【0157】
本発明者らはUspA1及びA2の両者がフィブロネクチンと結合することを最近明らかにした[78]。フィブロネクチン結合領域はUspA1
299−452及びUspA2
165−318内に位置していた。本試験では、(フィブロネクチン領域を含む)N末端半分UspA1
50−491及びUspA2
30−351もラミニンと結合した。他方、フィブロネクチンと結合した最小フラグメントであるUspA1
299−452及びUspA2
165−318は容易に検出可能な程度までラミニンと結合しなかった。実際に、UspA1のN末端側半分(UspA1
50−491)よりも小さいフラグメントはその全ラミニン結合能を失い、UspA2では、全長組換え蛋白質(UspA2
30−539)よりも程度は低いが、UspA2
30−170のみがラミニンと結合した。これらの結果は恐らく分子の部分によって機能的役割が異なることを示唆している。
【0158】
しかし、UspA1及びA2の最小ラミニン結合領域を比較した処、UspA2
30−170及びUspA1
50−491のアミノ酸ホモロジーによる類似性は殆どないことが分かった(データは示せず)。両者のN末端側半分の一致度は22%に過ぎないが、どちらの蛋白質も「ロリポップ」形の球形ヘッド構造をもつことが定説である[2,32]ので、これは意外ではない。三次構造がヘッド領域におけるラミニンとのin vivo相互作用に関与している可能性が高いと予想される。N末端は最も露出し、ヒト基底膜とin vivo接触するので、結合領域がN末端に位置するとみなすのは論理的である。
【0159】
組織及び細胞外マトリックス(ECM)成分との接着を媒介する細菌因子は「接着性マトリックス分子を認識する微生物表面成分(microbial surface components recognizing adhesive matrix molecules)(MSCRAMMS)」と呼ばれる単一ファミリーに一括分類される。UspA1/A2はフィブロネクチンとラミニンの両者に結合するので、これらの蛋白質はMSCRAMMSと言うことができる。本試験の結果から、UspA1及びA2は気道で異なるリガンドと相互作用する異なる領域をもつ多機能アドヘシンであると予想される。UspA1及びA2が構造的に関連するYersinia enterocoliticaのYadA等の他の細菌蛋白質でも同様の広域スペクトル結合プロファイルが報告されている[45,70]。YadAもフィブロネクチンとラミニンの両者と結合する[32]。
【0160】
以上をまとめると、UspA1/A2はM.catarrhalisと基底膜糖蛋白質ラミニンの相互作用に不可欠であり、COPD患者における感染症病因に重要な役割を果たしていることが分かった[74]。
【0161】
M.catarrhalisとC3及びC3metの相互作用
補体抵抗性は最も重要な細菌ビルレンス因子の1つである[66]。下気道感染症患者に由来するM.catarrhalis単離株の大半(89%)は補体による殺傷に抵抗性である[34]。M.catarrhalis UspA1及びA2はヒト血清におけるin vivo細菌生存に不可欠であり[1,15]、これらの2種の外膜蛋白質は古典経路の補体流体相レギュレーターであるC4BPと結合することが分かった[58]。本試験では、M.catarrhalisがC3の非共有的結合により代替経路を阻害できることを立証する(
図17及び18)。C3の結合は古典経路も阻害する可能性が非常に高い。しかし、M.catarrhalisはC4BPとも結合するので、これを詳細に分析することはできなかった。興味深いことに、数種の近縁モラクセラ亜種と一般的なヒト病原細菌はC3と結合しないので、M.catarrialis依存的C3結合はユニークである(表9)。C3及びメチルアミンで処理したC3との相互作用は主にUspA2に媒介され、UspA1の役割は小さい(
図15及び16)。UspA2のC3結合領域はアミノ酸残基200〜458に位置していた。この領域はUspA1の1領域に93%一致する140アミノ酸残基配列を含む[2]。他方、この配列類似性にも拘わらず、UspA1がC3と結合する程度は著しく低い。これは蛋白質間の立体配座の固有差に起因すると思われる。UspA1及びUspA2のC3結合の差はUspA1/A2とC4BPの相互作用と対照的である[58]。
【0162】
M.catarrhalisは古典経路と代替経路に等しく抵抗性である(
図12B)。この細菌は古典経路を阻害するC4BPと結合し[58]、本発明では代替経路との相互作用がC3の結合を介在することを立証する。これらのメカニズムのうちのどれが各種in vivo状況でM.catarrhalis血清抵抗性に最も重要であるかを決めるのは困難である。例えば、古典経路の重要度はM.catarrhalis感染暦と補体活性化抗体の産生能に強く依存するであろう。他方、病原菌には補体から防御する全メカニズムが確実に有益である。C3は補体系における主要分子であるので、C3の結合が全3種の活性化経路を制御している可能性が非常に高く、血清抵抗性の最大要因であると思われる。
【0163】
一次防御メカニズムとしての補体系の重要性は微生物が補体系の成分を阻害及び/又は中和するための各種ストラテジーを講じているという事実により明らかである[42,35,88]。M.catarrhalis以外に、S.pyogenes、Bordetella pertussis、大腸菌K1、Candida albicans及びN.gonorrhoeaeもC4BPと結合する特異的表面分子を発現し、その結果、古典補体経路から細菌を防御する[8,9,52,58,64,65,80]。古典経路の阻害に加え、数種の細菌(例えばC.albicans、N.meningitides、S.pyogenes及びS.pneumoniae;詳細については[68,89]参照)はH因子及びH因子様分子と結合するので、代替補体経路から部分的に防御される。
【0164】
UspA1及びA2は血清からC3を吸収するので補体活性化を阻害する可能性が非常に大きい。同様に、肺炎球菌表面蛋白質(Pneumococcal Surface Protein)A(PspA)もin vitro及びin vivoの両者で代替経路を阻害すると思われる。PspAはS.pneumoniaeの重要なビルレンス因子である。PspA欠損肺炎球菌株は血液から容易に除去されるが、PspAを発現する株は生存する[82]。更に、菌血症のマウスモデルにおいて、PspA欠損肺炎球菌はPspAを発現する肺炎球菌に比較してビルレンスが有意に低い[11]。PspA陽性肺炎球菌よりもPspA陰性肺炎球菌に多くのC3bが付着することが立証されている[67,82]。従って、PspAの発現はC3bによるオプソニン化を制限することにより補体によるS.pneumoniaeのクリアランスと貪食作用を低下させる[12,67]。正常マウスで非毒性のPspA欠損肺炎球菌がC3欠損B因子欠損マウスでは毒性になる[82]。
【0165】
我々の知る限りでは、C3と非共有的に結合することにより補体機能を阻害する細菌蛋白質は2例しかない。第1の例はStaphylococcus aureusの細胞外フィブリノーゲン結合蛋白質(Efb)であり、C3bと結合することが分かっている[44]。Efbはチオエステル立体配座に関係なく古典経路と代替経路の両者を阻害し、即ちC3bとの結合は非共有的である。第2の例は肺炎球菌コリン結合蛋白質(CbpA)であり、メチルアミンで処理したC3と結合することが分かっており、補体活性化に依存しない非共有的相互作用であることが示唆される[16]。CbpAは肺炎球菌細胞壁の成分であるが、CbpAは分泌されると、C3のみと結合するらしい。文献で確証されていないこの仮説を試験するために、11種の異なる肺炎球菌単離株をフローサイトメトリーによりC3結合(メチルアミンで処理したC3又はNHS−EDTA)について分析した(
図12B及び表9)。S.pneumoniaeの表面に結合したC3を検出することはできなかった。メチルアミンで処理したC3を使用した後に抗ヒトC3 pAbを使用してS.pneumoniaeの溶解液と培養上清をウェスタンブロットで分析した処、Chengら[16]の結果が確認された(図示せず)。EfbとCbpAがどちらもグラム陽性菌により分泌されるC3結合蛋白質であることを踏まえると、グラム陰性菌であるM.catarrhalisはC3と結合して細菌表面の代替経路を阻害する膜固定蛋白質をもつユニークな種である。
【0166】
酵母Candida albicansはC3b、iC3b及びC3dと結合することが分かっている。しかし、C3bに結合親和性はiC3b及びC3dよりもかなり低い[29]。本発明者らはC3とM.catarrhalis及びC.albicansの結合に大差があり(図示せず)、カンジダ菌はC3metと結合した(56%陽性細胞)が、平均蛍光強度(mfi)はM.catarrhalisのmfi 36.9に比較して<2.0に過ぎないことを見出した。更に、C.albicansをEDTAで処理した血清と共にインキュベートした処、検出可能な結合は認められなかった。C.albicansから2種のC3d結合蛋白質が単離されており、最も詳細に特性決定されている蛋白質はヒト補体受容体2(CD21)に対する抗体により最初に認識された60kDaマンノ蛋白質である[13]。他方、M.catarrhalis UspA1及びA2はCD21に対するポリクローナル抗体により認識されなかった(図示せず)。ブドウ球菌及び肺炎球菌[52,64]に加え、C.albicansに由来する分泌型C3d結合蛋白質も存在する[72]。最後に、C.albicans iC3b受容体は単離されており、ヒトCR3(CD11b)と構造的に類似している[3]。これらの受容体が病因に関与するメカニズムは完全には分かっていない。
【0167】
C3結合病原菌の上記例はこれらの種が血流から単離されることが多いという点でM.catarrhalisと著しく相違する。M.catarrhalisは粘膜病原菌であり、菌血症感染例は稀である。従って、C3との結合とその不活性化は粘膜表面で行われる可能性が高い。これは急性中耳炎等の疾患状態では進行中の強い補体活性化とそれに伴う炎症が生じるという事実により裏付けられる[57]。補体蛋白質は血漿滲出により粘膜表面に輸送されると考えられる[26,62]。例えば幼児からの中耳貯留液(MEE)でも非常に高濃度のC3産物を検出することができる[51]。更に、MEE液中の補体因子は無莢膜型H.influenzae等の他の粘膜病原菌に対する殺菌活性に重要であることが示されている[75]。M.catarrhalisは厳密なヒト病原菌である。この細菌は動物には中耳炎や肺炎等の疾患を誘発しない。マウス肺クリアランスモデルとチンチラ中耳炎モデルが数回使用されている。しかし、中耳炎も肺炎も発症せず、細菌は迅速に除去される[19,83]。従って、細菌C3結合の生物学的意義をin vivoで試験することは困難である。UspA1及びA2は多機能性蛋白質である[1,15,31,43,58,78]ので、M.catarrhalisのクリアランスの差をC3結合と相関させるのは不可能であると思われる。特に、UspA1がM.catarrhalisの重要なアドヘシンであり、CEACAM1とフィブロネクチンの両者に結合するという事実[31,78]はクリアランスに影響を与える可能性が高い。しかし、中耳炎等の疾患状態における強い補体活性化により、C3のモラクセラ依存的結合は粘膜防御に対抗する重要な手段であると思われる。
【0168】
M.catarrhalisが数種の手段でヒト免疫系を妨害するという事実は、M.catarrhalisが気道の非常に一般的な寄生菌である理由を説明するものである[73]。結論として、M.catarrhalisは体液性及び先天性免疫系の両者に対抗する高度な手段を講じている。本データから明らかなように、M.catarrhalisは他の細菌種に検出できないユニークな細菌細胞表面へのC3結合能をもつ。