特許第5763159号(P5763159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763159
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0216 20140101AFI20150723BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   H01L31/04 240
   H01L31/04 260
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-257321(P2013-257321)
(22)【出願日】2013年12月12日
(62)【分割の表示】特願2011-516531(P2011-516531)の分割
【原出願日】2009年6月23日
(65)【公開番号】特開2014-68034(P2014-68034A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年1月10日
(31)【優先権主張番号】12/166,266
(32)【優先日】2008年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505379467
【氏名又は名称】サンパワー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カズンズ、ピーター ジョン
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/130188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
H01L 31/18−31/20
H01L 51/42−51/48
H02S 10/00−10/40
H02S 30/00−50/15
H02S 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
基板の後面側表面の上に形成され、前記基板との間で後面接合を形成する第1のドープトポリシリコンと、
前記基板の前面側表面の上に形成され、前記基板に電気的な接続を行う第2のドープトポリシリコンと、
前記第1のドープトポリシリコンと前記基板の前記後面側表面との間の第1の誘電体と、
前記第2のドープトポリシリコンと前記基板の前記前面側表面との間の第2の誘電体と、
前記太陽電池の前記後面の前記第1のドープトポリシリコンに電気的な接続を行う第1の金属コンタクトと、
前記太陽電池の前記前面の前記第2のドープトポリシリコンに電気的な接続を行う第2の金属コンタクトと
前記第1のドープトポリシリコン上に形成された二酸化珪素層と
を備え、
前記第1の金属コンタクトは、前記二酸化珪素層に形成されたコンタクト穴を満たし、かつ、前記二酸化珪素層の上に形成され、前記二酸化珪素層とともに、赤外線反射層を形成し、
前記第1の金属コンタクトおよび前記第2の金属コンタクトは、前記太陽電池から外部の電気回路へ給電することができるよう構成される太陽電池。
【請求項2】
前記基板の前記前面側表面の上の反射保護層をさらに備える請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記反射保護層は窒化珪素を含む請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記基板はN型シリコン基板を含み、前記第1のドープトポリシリコンはP型ドープトポリシリコンを含み、前記第2のドープトポリシリコンはN型ドープトポリシリコンを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1の誘電体は、10および50オングストロームの間の厚みに形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第1の金属コンタクト上に形成された第3の金属コンタクトをさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第3の金属コンタクトは、前記第2の金属コンタクトに垂直に形成されたバスバーを備える、請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
通常動作時に太陽光線を集めるべく太陽側を向いた前面と、前記前面に対向する後面とを備える太陽電池であって、
N型シリコン基板と、
前記太陽電池の前記前面の前記N型シリコン基板のテクスチャ加工された表面と、
前記N型シリコン基板の前記テクスチャ加工された表面の上の反射保護層と、
前記N型シリコン基板との間で後面接合を形成するP型ポリシリコン層と、
前記太陽電池の前記前面の上のN型ポリシリコン層と、
前記太陽電池の前記前面から前記N型ポリシリコン層に電気的な接続を行う負極の金属コンタクトと、
前記太陽電池の前記後面から前記P型ポリシリコン層に電気的な接続を行う正極の金属コンタクトと
前記P型ポリシリコン層の上の第1の誘電体キャップ層と、
前記N型ポリシリコン層の上の第2の誘電体キャップ層と
を備える太陽電池。
【請求項9】
前記正極の金属コンタクトは、前記P型ポリシリコン層の上に形成された誘電体層とともに赤外線反射層を形成する金属を含む請求項に記載の太陽電池。
【請求項10】
通常動作時に太陽光線を集めるべく太陽側を向いた前面と、前記前面に対向する後面とを備える太陽電池であって、
N型シリコン基板と、
前記太陽電池の前記前面の前記N型シリコン基板のテクスチャ加工された表面と、
前記N型シリコン基板の前記テクスチャ加工された表面の上の反射保護層と、
前記N型シリコン基板との間で後面接合を形成するP型ポリシリコン層と、
前記太陽電池の前記前面の上のN型ポリシリコン層と、
前記太陽電池の前記前面から前記N型ポリシリコン層に電気的な接続を行う負極の金属コンタクトと、
前記太陽電池の前記後面から前記P型ポリシリコン層に電気的な接続を行う正極の金属コンタクトと、
前記P型ポリシリコン層上に形成された二酸化珪素層と
を備え、
前記正極の金属コンタクトは、前記二酸化珪素層に形成されたコンタクト穴を満たし、かつ、前記二酸化珪素層の上に形成され、前記二酸化珪素層とともに、赤外線反射層を形成する、太陽電池。
【請求項11】
前記反射保護層は窒化珪素の層を含む請求項8から10のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記正極の金属コンタクト上に形成された第3の金属コンタクトをさらに備える、請求項8から11のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第3の金属コンタクトは、前記負極の金属コンタクトに垂直に形成されたバスバーを備える、請求項12に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して太陽電池に係り、より具体的には太陽電池製造方法および構造に係るが、これらに限定はされない。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光線を電気エネルギーに変換する公知のデバイスであり、半導体プロセス技術を利用して半導体ウェハ上に製造されるものがある。太陽電池は、協働して接合を形成するP型およびN型の拡散領域を含む。太陽光線が太陽電池に照射されることによって電子および正孔が生まれ、これらが拡散領域に移動することによって拡散領域間に電圧差が生じる。バックコンタクト型太陽電池では、拡散領域および拡散領域に連結された金属コンタクトの両方が全て太陽電池の後面に設けられる。金属コンタクトにより、外部の電気回路を太陽電池に連結して給電を行うことができるようになる。
【0003】
フロントコンタクト型太陽電池では、拡散領域に電気的な接続を行う金属コンタクトのうち少なくとも1つが太陽電池の前面に設けられる。バックコンタクト型太陽電池は金属コンタクトが前面にないということからフロントコンタクト型太陽電池に比べて美観に優れるので住居向け用途では好まれるが、発電性能が主眼に置かれるような発電所その他の用途で美観に優れることは主要な要件ではない。従って本明細書では、比較的効率的であり、コスト効率の良いフロントコンタクト型太陽電池の構造およびその製造方法を開示する。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、バイポーラ太陽電池は、シリコン基板と太陽電池の後面の第1のドーパント型の第1のドープ層とにより形成される後面接合を含む。第2のドーパント型の第2のドープ層は、太陽電池の前面から基板への電気的な接続を行う。第1の電気極性の第1の金属コンタクトが、太陽電池の後面の第1のドープ層に電気的に接続され、第2の電気極性の第2の金属コンタクトが、太陽電池の前面の第2のドープ層に電気的に接続される。例えば、第1のドープ層は、P型ドーパントをドープされたポリシリコンであってよく、第2のドープ層は、N型ドーパントをドープされたポリシリコンであってよい。第1および第2の金属コンタクトには外部の電気回路が電気的に接続されて、太陽電池から受電することができる。
【0005】
本発明のこれらおよびその他の特徴は、当業者が図面および請求項を含む全開示を読むことにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態における太陽電池の断面概略図である。
図2】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の前面を示す平面概略図である。
図3】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の後面を示す平面概略図である。
図4】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図5】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図6】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図7】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図8】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図9】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図10】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図11】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図12】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図13】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図14】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図15】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図16】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図17】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図18】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
図19】本発明の一実施形態における図1の太陽電池の製造工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示では、装置、処理パラメータ、材料、プロセスステップ、および構造等の数多くの特定の詳細を述べて、本発明の実施形態の完全な理解を促す。しかしながら当業者であれば、本発明をこれら特定の詳細の1以上がなくても実行可能であることを理解する。また、公知の特徴に関しては詳述を避けることにより本発明の態様を曖昧にしないようにしている場合もある。
【0008】
本発明は、低コストで高効率のフロントコンタクト型太陽電池に係る。これとは別であるが同種のフロントコンタクト型太陽電池が、ピータ・ジョン・カズンズ(Peter John Cousins)氏により2008年2月20日に出願され、速達番号がEM142856406USであり、「形成されたエミッタを有するフロントコンタクト型太陽電池(FRONT CONTACT SOLAR CELL WITH FORMED EMITTER)」なる名称の、出願人を同じくする米国出願第12/070,742号明細書に開示されている。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態におけるバイポーラフロントコンタクト型太陽電池100の断面概略図である。太陽電池100は、金属コンタクト102が設けられた前面と、金属コンタクト110と同じ側の後面とを有する。前面は後面に対向しており、通常動作時には太陽光線を集めるべく太陽側を向いている。太陽電池の前面には、基板101の前面側表面に形成された各層が含まれ、太陽電池の後面には、基板101の後面側表面に形成された各層が含まれる。
【0010】
図1の例においては、太陽電池100は、P型拡散領域として機能するP型ドープトポリシリコン層108とN型拡散領域として機能するN型シリコン基板101とから形成された後面接合を含む。一実施形態では、ポリシリコン層108は、約10fA.cm−2のエミッタ飽和電流を有する。N型シリコン基板101は、長寿命の(2から5ms等)N型シリコンウェハを含んでよく、その厚みは、基板の後面側表面からテクスチャ加工された前面側表面の先端までで計測した値(寸法D24参照)が約100から250μmであってよい。基板101の前面側表面は、ランダムにテクスチャ加工が施されてよく(図の113で示すように)、基板に形成されたN型ドープ領域105を含む。N型ドープ領域105により、太陽電池の青色光反応(blue response)を低下させることなく、前面側表面の再結合を低減させて横方向の導電性が高めることができるようになる。N型ドープ領域105は、100から500Ω/sqのシート抵抗を有してよい。
【0011】
太陽電池100の前面側のN型ドープトポリシリコン層106は、接触抵抗が低く、コンタクトの再結合を最小限に抑えることができる。ポリシリコン層106は、一実施形態ではドット形状に形成され基板101の前面側表面上の重量の重い拡散領域の面積が最小限に抑えられることから「Nドット」とも称される。一実施形態では、ポリシリコン層106は、約5fa.cm−2のエミッタ飽和電流を有する。ポリシリコン層106は、薄い誘電体層402の上に形成されてよい。薄い誘電体層402は、基板101の前面側表面に約10から50オングストロームの厚みに熱成長された二酸化珪素を含んでよい。一実施形態では、薄い誘電体層402は、テクスチャ加工をすると除去されてしまうので、テクスチャ加工される前面側表面113には形成されない。
【0012】
基板101のテクスチャ加工された前面側表面113には窒化珪素層103の反射保護被膜(ARC)を形成してよい。テクスチャ加工された前面側表面113と反射保護被膜とにより、太陽光線収集効率が上がる。テクスチャ加工された前面側表面113の窒化珪素層103の下には、パッシベーション酸化物135を形成してよい。一実施形態では、パッシベーション酸化物135は、基板101のテクスチャ加工された前面側表面に、約10から250オングストロームの厚みに熱成長させる。
【0013】
一実施形態では、ポリシリコン層108を、薄い誘電体層107の上に形成する。ポリシリコン層108は、LPCVDまたはPECVD、熱アニーリング等のCVD法でポリシリコンの層を形成することで形成することができる。ポリシリコン層108は、約100Ω/sqのシート抵抗を有してよい。薄い誘電体層107は、基板101の後面側表面に約10から50オングストロームの厚みに熱成長された二酸化珪素を含んでよい。金属コンタクト110は、二酸化珪素層109を含む誘電体に形成されたコンタクト穴123によってポリシリコン層108に電気的に接続される。二酸化珪素層109は電気的絶縁を提供し、金属コンタクト110を、太陽光線の収集量を増加させるための赤外線反射層として機能させる。以下の記載から明らかになるように、二酸化珪素層109はさらに、ドーパントをポリシリコン層108に拡散させる際のドーパント源としても機能してよい。
【0014】
一実施形態では、金属コンタクト110は、約15mΩ/sqのシート抵抗を有し、印刷プロセスにより約10から30μmの厚みに形成されたアルミニウムを含む。バスバー112が金属コンタクト110に電気的に接続され、外部の電気回路を太陽電池100に電気的に接続するための正極端子を提供する。一実施形態では、バスバー112は銀を含み、約5−25mΩ.cmのコンダクタンスと、約15−35μmの厚みとを有する。
【0015】
金属コンタクト110は、さらに、基板101に対向するよう形成されるアルミニウムを含む材料スタックと、アルミニウムの上に形成されるチタン‐タングステンを含む拡散バリア層と、拡散バリア層上に形成される銅のシード層とを含んでよい。この構成においては、バスバー112は、シード層上に電気めっきされた銅を含んでよい。
【0016】
太陽電池100の前面側では、各金属コンタクト102が、二酸化珪素層104に形成されたコンタクト穴120によってポリシリコン層106に電気的に接続される。二酸化珪素層109と同様に、二酸化珪素層104も、ポリシリコン層106に拡散されるドーパントのドーパント源として機能してよい。ポリシリコン層108および106は、基板101への形成前に予めドープしてもよいことが理解されよう。
【0017】
金属コンタクト102は負極端子を提供して、外部の電気回路を太陽電池100に連結させて給電を行うことができる。一実施形態では、金属コンタクト102は、約5−25mΩ./sqのシート抵抗と、約15−35μmの厚みとを有する銀を含む。
【0018】
隣接する金属コンタクト102同士の間の、テクスチャ加工された前面側表面113で隔離されたピッチ(寸法D21)は、約4200μmであってよい。ポリシリコン層104の直径(寸法D22)は約390μmであってよい。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態における太陽電池100の前面を示す平面概略図である。図2の例では、2つのバスバー201が、基板101の前面に平行である。各コンタクト穴120のなかには金属コンタクト102が設けられており、各コンタクト穴120が約50から200μmの直径を有してよい。複数の金属コンタクト102がバスバー201に垂直に形成される。各金属コンタクト102は、約60−120μmの幅(図1の寸法D23を参照のこと)を有してよい。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態における太陽電池100の後面を示す平面概略図である。図3の例では、バスバー112が後面に平行である。実際には、バスバー201および112は、隣接する太陽電池のバスバーそれぞれに電気的に接続されて、太陽電池アレイを形成する。
【0021】
太陽電池は、既に実行可能且つ再生可能なエネルギー源としてエネルギー消費者間に幅広く受け入れられている。しかし、他のエネルギー源との競争で優位に立つためには、太陽電池製造業者は比較的低コストで効率的な太陽電池を製造する必要がある。これを念頭において、図4から図19を参照しながら太陽電池100の製造方法を以下に説明する。
【0022】
図4から図19は、本発明の一実施形態における太陽電池100の製造工程を示す。
【0023】
図4では、損傷エッチングステップを経て太陽電池に加工されるN型シリコン基板101が準備される。本例の基板101はウェハ形状であるので、通常は、ウェハベンダが基板101をインゴットから切断するときに利用する切断プロセスによって損傷を受けた表面を有する形で受け取られる。ウェハベンダから受け取った状態の基板101の厚みは約100から250ミクロンと想定される。一実施形態の損傷エッチングステップでは、水酸化カリウムを含むウェットエッチングプロセスで、基板101の各面を約10から20μm除去する。損傷エッチングステップでは、基板101を洗浄して金属汚染の除去も行われる。
【0024】
図5では、薄い誘電体層402および107が、基板101の前面側表面および後面側表面それぞれに形成される。薄い誘電体層402および107は、N型シリコン基板101の表面に約10から50オングストロームの厚みに熱成長された二酸化珪素を含んでよい。そしてポリシリコン層を薄い誘電体層402および107の上に形成して、前面にポリシリコン層106を、後面にポリシリコン層108を形成する。ポリシリコン層106およびポリシリコン層108のそれぞれは、CVDによって約1000から2000オングストロームの厚みに形成されてよい。
【0025】
図6では、P型ドーパント源403が、太陽電池の後面のポリシリコン層108上に形成される。この名称が示唆しているように、P型ドーパント源403は、後続するドーパント注入ステップにおいてポリシリコン層108に拡散させられるP型ドーパントの源を提供する。P型ドーパント源403上には誘電体キャップ層404が形成されて、ドーパントが注入ステップで太陽電池の後面から流出しないようにする。一実施形態では、P型ドーパント源403は、APCVDで約500から1000オングストロームの厚みに堆積されたBSG(ホウケイ酸塩ガラス)を含み、ドーパント濃度が重量比5から10%であり、キャップ層404は、これもAPCVDにより約2000から3000オングストロームの厚みに形成されたドープされていない二酸化珪素を含む。P型ドーパント源403およびキャップ層404の形成の後に洗浄ステップを行って、ソースとなるセルの前面から汚染の可能性のあるものを除去して、太陽電池の前面にN型ドーパント源を形成する準備をする。
【0026】
図7では、N型ドーパント源405を、太陽電池の前面のポリシリコン層106の上に形成する。この名称が示唆しているように、N型ドーパント源405は、後続するドーパント注入ステップにおいてポリシリコン層106に拡散させられるN型ドーパントの源を提供する。N型ドーパント源405上には誘電体キャップ層406が形成されて、ドーパントが注入ステップで太陽電池の前面から流出しないようにする。一実施形態では、N型ドーパント源405は、APCVDで約500から1000オングストロームの厚みに堆積されたPSG(リンガラス)を含み、ドーパント濃度が重量比5から10%であり、キャップ層406は、これもAPCVDにより約2000から3000オングストロームの厚みに形成されたドープされていない二酸化珪素を含む。
【0027】
図8では、マスク407を太陽電池の前面のキャップ層406上に形成する。マスク407は、キャップ層406およびN型ドーパント源405に対して後で行われるエッチング中に金属コンタクト102が形成される領域を画定して保護する。
【0028】
図9では、マスク408を太陽電池の後面のキャップ層404上に形成する。マスク408は、太陽電池の前面のキャップ層406およびN型ドーパント源405のエッチング中に太陽電池の後面を保護する。図9の例では、太陽電池の後面のエッジは、マスク408によりカバーされないことにより(つまり露出させることで)、太陽電池のエッジ上の絶縁トレンチの形成を促す。マスク407および408は、レジスト等の耐酸性有機材料を含んでよく、印刷プロセス(スクリーン印刷、インクジェット印刷等)を利用して形成されてよい。
【0029】
図10では、キャップ層406およびN型ドーパント源405の、マスク407でカバーされていない部分(図9参照)と、キャップ層404およびP型ドーパント源403の、マスク408でカバーされていない部分とが、酸化物エッチングステップでエッチングされる。酸化物エッチングステップにより、テクスチャ加工された前面側表面113(図1参照)が後に形成される領域が露出する。一実施形態では、酸化物エッチングステップは、BOE(バッファ酸化物エッチング)プロセスを含む。マスク407および408は、酸化物エッチングステップの後に除去される。
【0030】
図11では、前面の基板101の露出した部分に対してランダムにテクスチャ加工を施して、テクスチャ加工された前面側表面113を形成する。一実施形態では、基板101の前面側表面は、水酸化カリウムおよびイソプロピルアルコールを含むウェットエッチングプロセスを利用してランダムなピラミッド型となるようテクスチャ加工される。テクスチャ加工処理により、ポリシリコン層106の露出した部分がエッチングで除去される。
【0031】
図12では、ドーパント注入ステップを行って、N型ドーパントをN型ドーパント源405(図11参照)からポリシリコン層106へと拡散し、P型ドーパントをP型ドーパント源403からポリシリコン層108へと拡散し、N型ドーパントを基板101の前面へと拡散して、N型ドープ領域105を形成する。二酸化珪素層109は、注入ステップ後のP型ドーパント源403およびキャップ層404を表す。同様に、二酸化珪素層104は、注入ステップ後のN型ドーパント源405およびキャップ層406を表す。
【0032】
注入ステップの後で、ポリシリコン層108はP型ドープ層となり、ポリシリコン層106はN型ドープ層となる。N型ドープ領域105は、注入ステップ中に図11のサンプルを拡散炉のリンに曝すことにより形成されてよい。単にポリシリコン層106をリンの環境に曝すのではなく、N型ドーパント源405を利用することにより、N型ドープされたポリシリコン層106に対してN型の拡散を、より制御し且つ集中して行うことができるので好適である。パッシベーション酸化物層(図11には示さない、図1の層135を参照)は、注入プロセス中に、テクスチャ加工された表面113上に成長させられてよい。
【0033】
一実施形態では、ポリシリコン層108を後面にドープして、ポリシリコン層106を前面にドープして、N型ドープ領域105を形成する注入ステップはインサイチュに行てよく、これは、本開示のコンテキストでは、炉内または他の単一のチャンバまたは複数のチャンバプロセスツール内に基板101を一回手動でロードすること(single manual loading)(例えば製造要員による)を意味する。一実施形態では、注入ステップは拡散炉内で行われる。注入ステップの前の一連のステップによってインサイチュな拡散を行うことができ、これにより製造コストを下げることができるので好適である。
【0034】
図13では、窒化珪素層103の反射保護被膜を、テクスチャ加工された前面側表面113の上に形成する。窒化珪素層103は、例えばPECVDによって約450オングストロームの厚みに形成されてよい。
【0035】
図14では、マスク409を太陽電池の前面上に形成する。マスク409は、コンタクト穴120(図1参照)が後に形成される領域を画定する。
【0036】
図15では、マスク410を太陽電池の後面上に形成する。マスク410は、コンタクト穴123(図1参照)が後に形成される領域を画定する。マスク409および410は、レジスト等の耐酸性有機材料を含んでよく、印刷プロセス(スクリーン印刷、インクジェット印刷等)を利用して形成されてよい。
【0037】
図16では、二酸化珪素層104および109の、マスク409および410から露出している部分をそれぞれ除去することにより、コンタクト穴120および123を形成する。一実施形態では、二酸化珪素層104の露出している部分およびポリシリコン層106上のストップを除去する選択的なコンタクトエッチングプロセスを利用することにより、コンタクト穴120が形成される。これと同じコンタクトエッチングプロセスを利用して、二酸化珪素層109の露出している部分およびポリシリコン層108上のストップも除去される。一実施形態では、コンタクトエッチングプロセスには、BOE(バッファ酸化物エッチング)プロセスが含まれる。マスク409および410は、コンタクトエッチングプロセスの後で除去される。
【0038】
図17では、金属コンタクト110を二酸化珪素層109の上に形成して、コンタクト穴123を満たし、ポリシリコン層108に対して電気的な接続を行う。金属コンタクト110は、スクリーン印刷等の印刷プロセスにより形成することができる。金属コンタクト110はアルミニウムを含むことで、二酸化珪素層109との協働により、優れた後面の赤外線反射器を形成して太陽光線収集効率を上げることができる。
【0039】
図18では、金属コンタクト123を金属コンタクト110の上に形成して、ポリシリコン層108に対して電気的な接続を行う。金属コンタクト123は、スクリーン印刷等の印刷プロセスにより形成することができる。金属コンタクト110は例えば銀を含んでよい。
【0040】
図19では、金属コンタクト102を二酸化珪素層104の上に形成して、コンタクト穴120を満たし、ポリシリコン層106を介して基板101に対して電気的な接続を行う。金属コンタクト120は銀を含み、スクリーン印刷等の印刷プロセスにより形成されてよい。
【0041】
金属コンタクト102および110を形成した後に、焼成ステップを行ってよい。焼成ステップは、スクリーン印刷された銀ペーストを金属コンタクトとして利用する場合に利用することができるが、他のプロセスまたは金属を利用する際には利用しない。次いで、太陽電池100を目視でチェックしてテストする。
【0042】
向上したフロントコンタクト型太陽電池およびその製造方法を開示してきた。本発明の特定の実施形態を記載したが、これら実施形態はあくまで例示を目的としたものであり限定は意図していないことを理解されたい。本開示を読めば当業者であれば、さらなる多くの実施形態について想到するであろう。
[項目1]
通常動作時に太陽光線を集めるべく太陽側を向いた前面と、前記前面に対向する後面とを備える太陽電池であって、
シリコン基板と、
前記基板の後面側表面の上に形成され、前記基板との間で後面接合を形成する第1のドープトポリシリコン層と、
前記基板の前面側表面の上に形成され、前記基板に電気的な接続を行う第2のドープトポリシリコン層と、
前記第1のドープトポリシリコン層と前記基板の前記後面側表面との間の第1の誘電体層と、
前記第2のドープトポリシリコン層と前記基板の前記前面側表面との間の第2の誘電体層と、
前記太陽電池の前記後面の前記第1のドープトポリシリコン層に電気的な接続を行う第1の金属コンタクトと、
前記太陽電池の前記前面の前記第2のドープトポリシリコン層に電気的な接続を行う第2の金属コンタクトとを備え、
前記第1の金属コンタクトおよび前記第2の金属コンタクトは、前記太陽電池から外部の電気回路へ給電することができるよう構成される太陽電池。
[項目2]
前記基板のテクスチャ加工された前面側表面の上に反射保護層をさらに備える項目1に記載の太陽電池。
[項目3]
前記反射保護層は窒化珪素を含む項目2に記載の太陽電池。
[項目4]
前記基板はN型シリコン基板を含み、前記第1のドープトポリシリコン層はP型ドープトポリシリコンを含み、前記第2のドープトポリシリコン層はN型ドープトポリシリコンを含む項目1に記載の太陽電池。
[項目5]
前記第1の金属コンタクトは、前記第1の誘電体層の上に形成されたアルミニウムを含み、前記第1の誘電体層は二酸化珪素を含む項目1に記載の太陽電池。
[項目6]
前記第1の誘電体層は、10および50オングストロームの間の厚みに形成された二酸化珪素を含む項目1に記載の太陽電池。
[項目7]
前記第1の金属コンタクトの上に形成された第3の金属コンタクトをさらに備える項目1に記載の太陽電池。
[項目8]
前記第1のドープトポリシリコン層の上に形成された酸化物層をさらに備え、
前記第1の金属コンタクトは、前記太陽電池の前記後面の酸化物層とともに赤外線反射層を形成する項目1に記載の太陽電池。
[項目9]
通常動作時に太陽光線を集めるべく太陽側を向いた前面と、前記前面に対向する後面とを備える太陽電池を製造する方法であって、
前記太陽電池の前記後面のN型シリコン基板の後面側表面の上に第1の材料層を形成するステップと、
前記第1の材料層の上に、P型ドーパントを含む第1のドーパント源層を形成するステップと、
前記太陽電池の前記前面の前記N型シリコン基板の前面側表面の上に第2の材料層を形成するステップと、
前記第2の材料層の上に、N型ドーパントを含む第2のドーパント源層を形成するステップと、
前記第1のドーパント源層からP型ドーパントを前記第1の材料層へと拡散して、前記シリコン基板との間の後面接合を形成するステップと、
前記第2のドーパント源層からN型ドーパントを前記第2の材料層へと拡散するステップとを備える方法。
[項目10]
前記第1のドーパント源層および前記第2のドーパント源層からドーパントを拡散する前に、前記第1のドーパント源層の上に第1のキャップ層を形成し、前記第2のドーパント源層の上に第2のキャップ層を形成するステップをさらに備える項目9に記載の方法。
[項目11]
前記第1のドーパント源層は、ホウケイ酸塩ガラスを含む項目9に記載の方法。
[項目12]
前記第2のドーパント源層は、リンガラスを含む項目9に記載の方法。
[項目13]
前記第1の材料層および前記第2の材料層はポリシリコンを含む項目9に記載の方法。
[項目14]
前記N型シリコン基板の前記前面側表面をテクスチャ加工するステップと、
前記N型シリコン基板の前記テクスチャ加工された前面側表面の上に反射保護層を形成するステップとをさらに備える項目9に記載の方法。
[項目15]
前記反射保護層は窒化珪素を含む項目14に記載の方法。
[項目16]
前記第1のドーパント源層から前記P型ドーパントを前記第1の材料層へと拡散するステップ、および、前記第2のドーパント源層から前記N型ドーパントを前記第2の材料層へと拡散するステップは、インサイチュに行われる項目9に記載の方法。
[項目17]
通常動作時に太陽光線を集めるべく太陽側を向いた前面と、前記前面に対向する後面とを備える太陽電池であって、
N型シリコン基板と、
前記太陽電池の前記前面の前記N型シリコン基板のテクスチャ加工された表面と、
前記N型シリコン基板の前記テクスチャ加工された表面の上の反射保護層と、
前記N型シリコン基板との間で後面接合を形成するP型ポリシリコン層と、
前記太陽電池の前記前面の上のN型ポリシリコン層と、
前記太陽電池の前記前面から前記N型ポリシリコン層に電気的な接続を行う負極の金属コンタクトと、
前記太陽電池の前記後面から前記P型ポリシリコン層に電気的な接続を行う正極の金属コンタクトとを備える太陽電池。
[項目18]
前記反射保護層は窒化珪素の層を含む項目17に記載の太陽電池。
[項目19]
前記P型ポリシリコン層の上の第1の誘電体キャップ層と、前記N型ポリシリコン層の上の第2の誘電体キャップ層とをさらに備える項目17に記載の太陽電池。
[項目20]
前記正極の金属コンタクトは、前記P型ポリシリコン層の上に形成された誘電体層との間で赤外線反射層を形成する金属を含む項目17に記載の太陽電池。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19