(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
本発明は、光の影響下で架橋し得るシリコーン混合物であって、
(A)一般式I、II、III及びIV
R
3SiO
1/2 (I),
R
2SiO
2/2 (II),
RSiO
3/2 (III),
SiO
4/2 (IV),
の単位から形成されたオルガノシロキサン樹脂、
式中、
Rは、所望によりハロゲンで置換された、1〜40個の炭素原子を有する飽和ヒドロカルビルラジカル、又は−OHを表し、ただし、
前記単位の少なくとも20mol%が一般式III及びIVの単位から選択され、
前記Rラジカルの少なくとも2個が、1〜10個の炭素原子を有するアルケニルラジカルであり、
前記Rラジカルの最大2重量%が−OHラジカルであり、
(B)一分子あたり少なくとも2個のアルケニル基を含み、200〜10000シロキシ単位の最も長い鎖長を有するポリオルガノシロキサン、
(C)一分子あたり少なくとも2個のSiH官能基を含む有機ケイ素化合物、および
(D)200〜500nmの光により活性化し得る、白金群から選択された触媒を含むシリコーン混合物を提供する。
【0006】
シリコーン混合物は、十分な初期強度(生強度)を有し、それによって長いシリコーン繊維を押出し、次いで低い温度で、光で硬化させることができる。同時に、シリコーン混合物は、光ファイバーに好適な優れた透明性を有する。
【0007】
ヒドロカルビルラジカルRは、ハロゲン置換された、直鎖状、環状、分岐鎖状、芳香族、飽和又は不飽和でよい。
【0008】
置換されていないRラジカルの例は、アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル、例えばn-ヘキシルラジカル、ヘプチルラジカル、例えばn-ヘプチルラジカル、オクチルラジカル、例えばn-オクチルラジカル及びイソオクチルラジカル、例えば2,2,4-トリメチルペンチルラジカル、ノニルラジカル、例えばn-ノニルラジカル、デシルラジカル、例えばn-デシルラジカル、シクロアルキルラジカル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、4-エチルシクロヘキシル、シクロヘプチルラジカル、ノルボルニルラジカル及びメチルシクロヘキシルラジカル、アリールラジカル、例えばフェニル、ビフェニリル、ナフチルラジカル、アルカリールラジカル、例えばo-、m-、p-トリルラジカル及びエチルフェニルラジカル、アラルキルラジカル、例えばベンジルラジカル及びアルファ-及びβ-フェニルエチルラジカルである。
【0009】
Rラジカルとして置換されたヒドロカルビルラジカルの例は、ハロゲン化炭化水素、例えばクロロメチル、3-クロロプロピル、3-ブロモプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル
、及びクロロフェニル、ジクロロフェニル及びトリフルオロトリルラジカルである。
【0010】
ヒドロカルビルラジカルRは、好ましくは1〜6個の炭素原子を有し、特に好ましくはアルキルラジカル及びフェニルラジカルである。好ましいハロゲン置換基はフッ素及び塩素である。特に好ましい一価のヒドロカルビルラジカルRは、メチル、エチル、フェニルである。
【0011】
アルケニル基Rは、有機ケイ素化合物(C)のSiH官能基との付加反応を受けやすい。典型的には、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、例えばビニル、アリル、メタリル
、1-プロペニル、5-ヘキセニル、エチニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、好ましくはビニル及びアリルを使用する。
【0012】
オルガノシロキサン樹脂(A)は、好ましくは少なくとも30mol%、特に少なくとも40mol%、及び好ましくは最大80mol%、特に最大70mol%、の一般式III及びIVの単位を含む。
【0013】
オルガノシロキサン樹脂(A)は、好ましくは少なくとも80mol%の単位、好ましくは少なくとも95mol%の、特に少なくとも97mol%の一般式I及びIVの単位を含むMQシリコーン樹脂(MQ)である。一般式IとIVの単位の平均比は、好ましくは少なくとも0.25、特に少なくとも0.5、好ましくは2、より好ましくは最大1.5である。
【0014】
好ましくは、Rラジカルの最大1重量%、特に最大0.5重量%は、OHラジカルである。
【0015】
好ましくは、Rラジカルの少なくとも0.1mol%、より好ましくは少なくとも0.5mol%、特に少なくとも2mol%、及び好ましくは最大20mol%、特に最大10mol%は、1〜10個の炭素原子を有するアルケニルラジカルである。
【0016】
オルガノシロキサン樹脂(A)の平均分子量Mnは、好ましくは少なくとも200g/mol、特に少なくとも1000g/mol、及び好ましくは最大100000g/mol、特に最大20000g/molである。
【0017】
アルケニル基を含むポリオルガノシロキサン(B)の組成物は、好ましくは平均一般式Vに対応する。
R
1xR
2ySiO
(4-x-y)/2 (V)
式中、
R
1は、一価の、所望によりハロゲン−又はシアノ−置換された、所望により有機二価基を介してケイ素に結合した、脂肪族の炭素−炭素多重結合を含む、C
1〜C
10ヒドロカルビルラジカルであり、
R
2は、一価の、所望によりハロゲン−又はシアノ−置換された、SiC−結合した、脂肪族の炭素−炭素多重結合を含まない、C
1〜C
10ヒドロカルビルラジカルであり、
xは、少なくとも2個のR
1ラジカルが各分子中に存在するように、非負の数であり、
yは、(x+y)が1.9〜2.2、好ましくは1.99〜2.05になるように、非負の数である。
【0018】
好ましくは、ポリオルガノシロキサン(B)の最も長い鎖の鎖長は、少なくとも300、最大で200〜7000シロキシ単位である。
【0019】
好ましいアルケニル基R
1の例は、Rラジカルに関して上に挙げてある。特に好ましいアルケニル基R
1は、ビニル及びアリルである。
【0020】
R
1ラジカルは、重合体鎖のどの位置にでも、特に末端ケイ素原子に結合できる。
【0021】
置換されていない、及び置換されたR
2ラジカルの例は、Rラジカルに関して上に挙げてある。
【0022】
R
2は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。メチル及びフェニルが特に好ましい。
【0023】
構成成分(B)は、アルケニル基を含み、例えばアルケニル基の含有量、アルケニル基の性質又は構造が異なった、各種ポリオルガノシロキサンの混合物でもよい。
【0024】
アルケニル基を含むポリオルガノシロキサン(B)の構造は、直鎖状、環状又は分岐鎖状でよい。分岐鎖状ポリオルガノシロキサンを形成する三−及び/又は四官能性単位の含有量は、典型的には非常に低く、好ましくは最大1mol%、特に最大0.1mol%である。
【0025】
ビニル基を含むポリジメチルシロキサンを使用するのが特に好ましく、その分子は、一般式
VIに対応し、
(ViMe
2SiO
1/2)
2(ViMeSiO)
p(Me
2SiO)
q (VI)
式中、非負の整数p及びqは、下記の関係、すなわちp≧0、200<(p+q)<10000、好ましくは500<(p+q)<2000、及びp:(p+q)<0.2、好ましくは<0.02、特に<0.001を満足する。
【0026】
ポリオルガノシロキサン(B)の25℃における粘度は、好ましくは0.5〜100000Pa.s、特に1〜2000 Pa.sである。
【0027】
アルケニル基R
1が、重合体鎖中のケイ素に結合し得ることになる有機二価基は、好ましくは二価のC
1〜C
10ヒドロカルビルラジカルである。
【0028】
シリコーン混合物は、好ましくは、オルガノシロキサン樹脂(A)の100重量部に対して、少なくとも10重量部、より好ましくは少なくとも25重量部、特に少なくとも40重量部、好ましくは最大90重量部、より好ましくは最大80重量部、特に最大70重量部のポリオルガノシロキサン(B)を含む。
【0029】
分子1個当たり少なくとも2個のSiH官能基を含む有機ケイ素化合物(C)は、好ましくは平均一般式VIIの組成物を有する。
H
aR
3bSiO
(4-a-b)/2 (VII)
式中、
R
3は、一価の、所望によりハロゲン−又はシアノ−置換された、SiC−結合した、脂肪族炭素−炭素多重結合を含まない、C
1〜C
18ヒドロカルビルラジカルであり、かつ
a及びbは、非負の整数であり、ただし、0.5<(a+b)<3.0及び0<a<2であり、一分子あたり少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子が存在する。
【0030】
R
3の例は、R及びR
2に関して規定したラジカルである。R
3は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。メチル及びフェニルが特に好ましい。
【0031】
一分子あたり3個以上のSiH結合を含む有機ケイ素化合物(C)が好ましい。一分子あたり2個だけのSiH結合を有する有機ケイ素化合物(C)の場合、一分子あたり少なくとも3個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(B)を使用するのが推奨される。
【0032】
ケイ素原子に直接結合した水素原子だけを基材とする有機ケイ素化合物(C)の水素含有量は、好ましくは0.002〜1.7重量%の水素、好ましくは0.1〜1.7重量%の水素である。
【0033】
有機ケイ素化合物(C)は、好ましくは一分子あたり少なくとも3個、最大600個のケイ素原子を含む。一分子あたり4〜200個のケイ素原子を含む有機ケイ素化合物(C)を使用するのが好ましい。
【0034】
有機ケイ素化合物(C)の構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状又は網目状でよい。
【0035】
特に好ましい有機ケイ素化合物(C)は、一般式VIIIの直鎖状ポリオルガノシロキサンである。
(HR
42SiO
1/2)
c(R
43SiO
1/2)
d(HR
4SiO
2/2)
e(R
42SiO
2/2)
f (VIII)
式中、
R
4は、R
3に関して定義した通りであり、
非負の整数c、d、e及びfは、下記の関係、すなわち(c+d)=2、(c+e)>2、5<(e+f)<200及び
0.1<e/(e+f)<
1を満足する。
【0036】
SiH官能性有機ケイ素化合物(C)は、好ましくは架橋性シリコーン混合物中に、SiH基とアルケニル基のモル比が0.5〜5、特に1.0〜3.0になるように存在する。
【0037】
使用する触媒(D)は、シリコーン材料を付加架橋する際に進行するヒドロシリル化反応に触媒作用し、200〜500nmの光により活性化し得る、白金族から選択されたすべての公知の触媒でよい。触媒(D)は、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム及びイリジウムの中の、少なくとも一種の金属又は化合物を含み、好ましくは白金である。
【0038】
特に好適な触媒(D)は、白金のシクロペンタジエニル錯体である。特に好ましい触媒(C)は、MeCp(PtMe
3)である。
【0039】
触媒(D)は、例えばヒドロシリル化触媒を含む微小構造カプセル、又は欧州特許出願公開第1006147号に記載のオルガノポリシロキサン粒子の形態を包含する、どのような望ましい形態でもよい。
【0040】
ヒドロシリル化触媒(D)の量は、シリコーン混合物が白金族金属の含有量0.1〜200ppm、好ましくは0.5〜40ppmを有するように選択する。
【0041】
シリコーン混合物は、透明であり、好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、特に0.01重量%以下の、直径が50nmを超える光散乱性充填材を含む。
【0042】
シリコーン混合物は、構成成分(E)として、添加物を70重量%まで、好ましくは0.0001〜40重量%の比率でさらに含むことができる。これらの添加物は、例えばポリオルガノシロキサン(A)、(B)及び(C)以外の樹脂状ポリオルガノシロキサン、分散助剤、溶剤、密着性促進剤、染料、可塑剤、有機重合体及び熱安定剤でよい。さらに、チキソトロピー成分も構成成分(E)として存在し得る。
【0043】
さらに、式
HSi(CH
3)
2-[O-Si(CH
3)
2]
w-H
のシロキサンも連鎖延長剤として存在でき、wは、1〜1000の値を表す。
【0044】
さらに、シリコーン混合物の処理時間、開始温度及び架橋速度を制御するための添加剤(E)が存在することもできる。これらの抑制剤及び安定剤は、架橋材料の分野では非常に良く知られている。
【0045】
さらに、圧縮永久ひずみを改良する添加剤も加えることができる。さらに、非ビニル官能化されたポリジオルガノシロキサンを加えることもできる。
【0046】
シリコーン混合物は、好ましくは粘度[D=0.5l/s/25℃]が少なくとも100Pas、より好ましくは少なくとも500Pas、特に少なくとも1000Pas、好ましくは最大500000Pas、特に最大10000Pasである。
【0047】
シリコーン混合物の配合物形成は、上に挙げた成分をいずれかの順序で混合することにより、行う。
【0048】
本発明は、シリコーン繊維の製造方法であって、上記のシリコーン混合物を、ダイを通して、コンベヤーベルト上に連続的に押し出し、活性化し、200〜500nm、特に250〜350nmの波長を有するUV光源で加硫処理する方法を提供する。
【0049】
光で活性化する際の線量は、好ましくは少なくとも0.1J/cm
2、より好ましくは少なくとも0.5 J/cm
2、好ましくは最大20 J/cm
2、より好ましくは最大10 J/cm
2である。
【0050】
コンベヤーベルトの末端で、高透明度シリコーン繊維を直接取り出すか、または所望により、加熱により、例えば加熱トンネルを通過させて、硬化させることができる。
【0051】
押出しは、好ましくは少なくとも0℃、より好ましくは少なくとも10℃、特に少なくとも15℃、好ましくは最高50℃、より好ましくは最高35℃、特に最高25℃で行う。
【0052】
押出したシリコーン混合物の光による活性化は、好ましくは少なくとも1秒間、より好ましくは少なくとも5秒間、好ましくは最大で500秒間、より好ましくは最大100秒間で行う。
【0053】
ヒドロシリル化反応の開始は、シリコーン混合物の架橋を開始する。
【0054】
硬化は、好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも20℃、好ましくは最高60℃、より好ましくは最高40℃、特に最高30℃で行う。
【0055】
光の影響により硬化しないシリコーンを、シリコーン混合物の代わりに使用する場合、混合物の粘度は、室温から、硬化に必要な目標とする温度に加熱する際に下降し、クリープを引き起こすであろう。均質な幾何学的構造を有する繊維を連続的に製造することは不可能である。
【0056】
上記の式における全ての記号は、それぞれ互いに独立して定義される。全ての式で、ケイ素原子は四価である。
【0057】
下記の例では、それぞれの場合に他に指示がない限り、記載する全ての量及び百分率は重量で表し、全ての圧力は0.10MPa(絶対)であり、温度は20℃である。
諸例
例1〜6で使用する原料の説明
【0058】
MQシリコーン樹脂
ビニル官能化されたMQシリコーン樹脂
粉体MQ樹脂804、M、M
ビニル及びQ構造単位から形成され、下記のように説明される。
分子量MW5,300g/ml、Mn2400g/mol
ビニル含有量=70mmolのビニル/100g
M
ビニル/M/Q=0.09:0.72:1
【0059】
ビニルポリシロキサン
これらのビニルポリシロキサンは、ビニルジメチルシロキシ末端を有するジメチルポリシロキサンであり、異なった粘度/鎖長DP(Si―O単位) を有し、従来の製法により製造された。
ビニル重合体1 1020mPas、DP=183
ビニル重合体2 20100mPas、DP=615
ビニル重合体3 503200mPas、DP=1830
ビニル重合体4
DP=6550
【0060】
SiH架橋剤
SiH架橋剤V100は、トリメチルシリル末端を有するジメチル/メチル水素コポリシロキサンであり、粘度が9mm
2/sであり、H含有量が1.12重量%である。
【0061】
触媒マスターバッチ
UV光活性化し得る白金触媒は、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金であり、粘度1000mPasのビニル末端を有するポリジメチルシロキサンに溶解してあり、白金濃度が300ppmである。
【0062】
HDK
HDK(登録商標)SKS300(Wacker Chemie AG)ヘキサメチルジシラザンで疎水性付与したヒュームドシリカ、BET表面積300m
2/g。
【0063】
押出し及び架橋の説明
処方物を、好適なミキサー又はニーダー中、500nmを超える波長を有する光の下で混合して均質な混合物を形成し、一成分処方物として、25℃で、直径2mmのダイを通して、アルミニウムホイルを張り付けたコンベヤーベルト上に押し出した。コンベヤーベルトは、速度100cm/60秒で操作した。
【0064】
コンベヤーベルト上に押し出したシリコーン混合物は、コンベヤーベルト上に吊り下げたUV光源を使用し、25℃で架橋させた。UV光源(UVASPOT 2000、Honleから市販)は、Fラジエーターを備え、波長範囲250〜400nm のUV光を放射する。UV光により架橋した後、シリコーン押出物は、連続押出物として巻き取った。
【0065】
例を含む表1
例1〜4は、本発明により、各種の粘度/鎖長を有するビニル重合体を使用した。
例5は本発明に従わず、材料は、MQシリコーン樹脂がなければ、液体になるので、処理できなかった。
例6は、本発明に従わず、この例は国際公開第2009/027133A2号パンフレットと類似であり、HDKによる透明度がなかった。