特許第5763217号(P5763217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763217
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】自動車、自動車を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/348 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   B60K17/348 B
【請求項の数】34
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-553959(P2013-553959)
(86)(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公表番号】特表2014-508675(P2014-508675A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】EP2012052850
(87)【国際公開番号】WO2012110658
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2013年11月14日
(31)【優先権主張番号】1102823.0
(32)【優先日】2011年2月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513208973
【氏名又は名称】ジャガー・ランド・ローバー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JAGUAR LAND ROVER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ピート・ステアーズ
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−166706(JP,A)
【文献】 特開2004−322702(JP,A)
【文献】 特開平10−272955(JP,A)
【文献】 特開2006−130992(JP,A)
【文献】 特開平11−157355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/28−17/36
B60K 23/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機手段と、
一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一及び第二のグループと、
制御手段を用いてトルク伝達通路を前記原動機手段から前記一つ又は複数の車輪から成る前記第一及び第二のグループに接続するように動作可能な動力伝達経路であって、前記動力伝達経路が第一のモードの動作である時には、前記第二のグループではなく一つ又は複数の車輪から成る前記第一のグループが前記トルク伝達通路に連結され、前記動力伝達経路が第二のモードの動作である時には、一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループの両方が前記トルク伝達通路に連結される動力伝達経路と、を備え、
前記動力伝達経路は、その補助部により、前記原動機手段から前記トルク伝達通路に前記第二のグループを接続するように動作可能であり、前記補助部は第一及び第二の解放自在のトルク伝達手段とプロップ・シャフトとを含み、前記第一の解放自在のトルク伝達手段は前記プロップ・シャフトの第一の末端を前記原動機手段から前記トルク伝達通路に接続するように動作可能であり、前記第二の解放自在のトルク伝達手段は前記プロップ・シャフトの第二の末端を一つ又は複数の車輪から成る前記第二のグループに接続するように動作可能であり、
前記制御手段は、前記第一のモードにおいて、前記プロップ・シャフトが前記原動機手段からの前記トルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る前記第二のグループの両方から分離されるように、前記第一及び前記第二のモードの動作間で前記動力伝達経路を切り替えるように前記補助部を制御可能であり、
前記制御手段は、前記動力伝達経路が前記第一のモードと前記第二のモードの間で移行する場合に、要求された接続速度で前記原動機手段から前記トルク伝達通路に一つ又は複数の車輪から成る前記第二のグループを接続するように補助部を制御可能であり、
動力伝達経路が前記第一のモードである場合には、前記制御手段は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件のセットのうちの一つに適合する時に前記第二のモードに移行するように前記動力伝達経路を制御可能であり、各始動条件はそれぞれ識別性を有し、前記制御手段は、適合する始動条件の識別性に相応する接続速度で、前記第一のモードから前記第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能である自動車。
【請求項2】
前記始動条件のセットが、以下の条件のうちから選択される少なくとも1の条件を含む請求項1に記載の自動車。
(a)一つ又は複数の車輪に動力伝達経路を経由して送られるトルクの瞬時量が、第一の所定の瞬時トルクの閾値より大きい、
(b)ステアリング・ホイールの角度が、第一の所定の操縦角度の閾値より高い、
(c)操縦自在の主車輪の角度が、第一の所定の操縦自在の主車輪角度の閾値より大きい、
(d)操縦自在の主車輪角度の変化の速度が、第一の操縦自在の主車輪角度速度の閾値を超える、
(e)ステアリング・ホイール角度の変化の速度が、第一の所定のステアリング・ホイール角度速度の閾値を超える、
(f)自動車の横加速度が、第一の所定の横加速度の閾値より大きい、
(g)横加速度の変化の速度が、第一の所定の横加速度の速度の閾値を超える、
(h)スロットル又は加速器のペダル位置の値が、第一の所定のスロットル又は加速器ペダル位置の閾値より大きい、
(i)スロットル又は加速器ペダル位置の変化の速度が、第一の所定のスロットル又は加速器速度の閾値より大きい、
(j)運転手要求トルクが、第一の所定の運転手要求トルクの閾値より大きい、
(k)原動機手段のトルクが、第一の所定の原動機手段のトルク閾値より大きい、
(l)ホイール・スリップの大きさが第一の所定のホイール・スリップの閾値より大きい、
(m)自動車の加速度が、第一の所定の自動車の加速度の閾値より大きい、
(n)自動車の減速度が、第一の所定の自動車の減速度の閾値より大きい、
(o)自動車のヨー・レートが、第一の所定のヨー・レートの閾値より大きい、
(p)ヨー・レート・エラーが、第一の所定のヨー・レート・エラーの閾値より大きい、
(q)手動又は自動ギア・シフト・コントロールが、一つ又は複数の所定のギア・シフト位置の値のうちの一つの第一のセットのひとつにセットされている、
(r)動作温度が、第一の所定の動作温度の閾値より低い、
(s)周囲温度が、第一の所定の周囲温度の閾値より低い、
(t)自動車の構成部品の温度が、第一の構成部品の温度閾値より低い、
(u)自動車の流体の温度が第一の流体の温度閾値より低い、
(v)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より低い、
(w)補助の動力伝達経路の流体の温度が、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より低い、
(x)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の高温閾値より高い、
(y)補助の動力伝達経路の流体の温度は、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の流体の高温閾値より高い、
(z)自動車の速度が、第一の所定の自動車の速度閾値より低い、
(a1)自動車は、一つ又は複数の自動車動作プログラムの一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を始めた、
(b1)走行表面の粗度が、第一の所定の表面粗度の閾値を超えている、
(c1)自動トランスミッションの現在の又は狙いとするギアが、一つ又は複数のギア値のものの第一のセットの一つにセットされている、
(d1)ブレーキ・ペダル位置の値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい、
(e1)ブレーキの圧力値が、第一の所定のブレーキ圧力の閾値より大きい。
【請求項3】
前記自動車は、運転手が選択自在な動作の自動車プログラムを複数有し、前記二つ以上の始動条件のセットは、前記自動車が所定の自動車プログラムに基づいて動作する要件を含む、請求項1又は2に記載の自動車。
【請求項4】
前記接続速度は自動車の速度に対応し、前記接続速度は、車両速度の増加に応じて増加するように構成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項5】
前記原動機手段は使用時に回転するように構成され、前記接続速度は前記原動機手段の回転速度に対応し、前記接続速度は、前記原動機手段の回転速度の増加に応じて増加するように構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項6】
前記接続速度は、自動車の横加速度の大きさに対応する請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項7】
前記接続速度は、自動車の横加速度の増加に応じて増加するように構成される請求項6に記載の自動車。
【請求項8】
前記横加速度の大きさが閾値を超える場合に、前記制御手段が、前記横加速度の大きさが閾値を超えない場合よりも早い接続速度で、前記原動機手段に一つ又は複数の車輪から成る前記第二のグループを接続するように、動力伝達経路を制御するように構成される請求項7に記載の自動車。
【請求項9】
前記接続速度は、自動車のオーディオ・システムのボリュームに対応する請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項10】
前記接続速度は、オーディオ・システムのボリュームの増加に応じて増加するように構成される請求項9に記載の自動車。
【請求項11】
前記ボリュームは、ユーザが選択したボリュームである請求項9又は10に記載の自動車。
【請求項12】
前記ボリュームは、接続行為が要求されたときに、前記オーディオ・システムから発せられるサウンドの実際のボリュームである請求項9又は10に記載の自動車。
【請求項13】
前記二つ以上の始動条件のセットは、少なくとも、一つ又は複数の条件からなる第一のサブセットと、一つ又は複数の条件からなる第二のサブセットとを含み、前記動力伝達経路は、前記第一のサブセットの条件が適合する場合に、前記第二のサブセットの条件に適合するが前記第一のサブセットの条件には適合しない場合よりも速い接続速度で前記第二のモードを設定するように構成される請求項1〜12のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項14】
前記第一のサブセットの条件は、下記の条件から選択された少なくとも一つの条件を含む請求項13に記載の自動車。
(a)一つ又は複数の車輪に動力伝達経路を経由して送られるトルクの瞬時量が、第一の所定の瞬時トルクの閾値より大きい、
(b)ステアリング・ホイールの角度が、第一の所定の操縦角度の閾値より高い、
(c)操縦自在の主車輪の角度が、第一の所定の操縦自在の主車輪角度の閾値より大きい、
(d)操縦自在の主車輪角度の変化の速度が、第一の操縦自在の主車輪角度の速度の閾値を超える、
(e)ステアリング・ホイール角度の変化の速度が、第一の所定のステアリング・ホイール角度速度の閾値を超える、
(f)自動車の横加速度が、第一の所定の横加速度の閾値より大きい、
(g)横加速度の変化の速度が、第一の所定の横加速度の速度の閾値を超える、
(h)スロットル又は加速器のペダル位置の値が、第一の所定のスロットル又は加速器ペダル位置の閾値より大きい、
(i)スロットル又は加速器ペダル位置の変化の速度が、第一の所定のスロットル又は加速器速度の閾値より大きい、
(j)運転手要求トルクが、第一の所定の運転手要求トルクの閾値より大きい、
(k)原動機手段のトルクが、第一の所定の原動機手段のトルク閾値より大きい、
(l)ホイール・スリップの大きさが第一の所定のホイール・スリップの閾値より大きい、
(m)自動車の加速度が、第一の所定の自動車の加速度の閾値より大きい、
(n)自動車の減速度が、第一の所定の自動車の減速度の閾値より大きい、
(o)自動車のヨー・レートが、第一の所定のヨー・レートの閾値より大きい、
(p)ヨー・レート・エラーが、第一の所定のヨー・レート・エラーの閾値より大きい、
(q)ブレーキ・ペダル位置の値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい、
(r)ブレーキ・ペダル圧力値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい。
【請求項15】
前記第二のサブセットの条件は、下記の条件から選択された少なくとも一つの条件を含む請求項13又は14に記載の自動車。
(a)手動又は自動ギア・シフト・コントロールが、一つ又は複数の所定のギア・シフト位置の値のうちの一つの第一のセットの一つにセットされている、
(b)動作温度が、第一の所定の動作温度の閾値より低い、
(c)周囲温度が、第一の所定の周囲温度の閾値より低い、
(d)自動車の構成部品の温度が、第一の構成部品の温度閾値より低い、
(e)自動車の流体の温度が第一の流体の温度閾値より低い、
(f)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より低い、
(g)補助の動力伝達経路の流体の温度が、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より低い、
(h)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の高温閾値より高い、
(i)補助の動力伝達経路の流体の温度は、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の流体の高温閾値より高い、
(j)自動車の速度が、第一の所定の自動車の速度閾値より低い、
(k)自動車は、一つ又は複数の自動車動作プログラムの一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を始めた、
(l)走行表面の粗度が、第一の所定の表面粗度の閾値を超えている、
(m)自動トランスミッションの現在の又は狙いとするギアが、一つ又は複数のギア値のものの第一のセットの一つにセットされている。
【請求項16】
前記動力伝達経路は、反応評価器と予測評価器の出力に対応して第二のモードを設定するように構成されており、
前記反応評価器の出力は、車輪スリップの量が第一の所定の閾値を超えたかどうかについての判断に対応し、
前記予測評価器の出力は、車輪スリップの量が第一の所定の閾値以下である時に、車輪スリップの量が第二の所定の閾値を超えようとしていることを示す、一つ又は複数の自動車動作パラメータに関する一つ又は複数の条件に適合するという判断に対応することを含む請求項1〜15のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項17】
前記第二のサブセットの条件は、前記予測評価器の出力が、第二のモードの動作を設定すべきことを示す条件を含む請求項13に従属する請求項16に記載の自動車。
【請求項18】
前記第一のサブセットの条件は、前記反応評価器の出力が、第二のモードの動作を設定すべきことを示す条件を含む請求項16又は17に記載の自動車。
【請求項19】
前記予測評価器は、一つ又は複数の自動車動作パラメータの値に基づいて、所定の期間内で発生する第一のセットの条件のうちの一つの可能性を判断するように構成される請求項16〜18のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項20】
前記接続速度は、過去の接続速度の経歴に対応し、前記制御手段は、第一のモードから第二のモードへの移行が必要な時に、前記制御手段が必要な接続速度を決定できるように動作可能な過去の接続事象に付随したデータを保存するように構成される請求項1〜19のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項21】
前記データは、一つ又は複数の過去の接続事象中に設定した接続の速度と、一つ又は複数の過去の接続事象を始動する始動条件の識別性と、一つ又は複数の過去の接続事象が発生した時の一つ又は複数の自動車動作パラメータの値とのうちから選択された少なくとも1つに対応する請求項20に記載の自動車。
【請求項22】
前記制御手段は、自動車が走行している表面の摩擦の係数に対応する接続速度で第二のモードを設定するために、前記動力伝達経路を制御するように構成される請求項1〜21のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項23】
前記動力伝達経路は、自動車が走行している表面の摩擦に関して予測した係数に対応する接続速度で、第二のモードを設定するように構成される請求項22に記載の自動車。
【請求項24】
前記動力伝達経路は、第二のモードへの移行を始動する始動条件の識別性にかかわらず、実質的に一定の速度で、第二のモードから第一のモードを設定するように構成される請求項1〜23のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項25】
前記制御手段は、第一のモードから第二のモードへの移行が第一のサブセットの条件に適合する時に行われる速度より小さい速度で、第一のモードに第二のモードから移行するために、動力伝達経路を制御するように構成される請求項13又は請求項13に従属する請求項14〜24のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項26】
第一のモードにおいて、前記動力伝達経路は、一つ又は複数の自動車動作パラメータの値が所定値より大きい又は小さい時に第二のモードに移行するように動作可能であり、前記動力伝達経路は、第二のモードへの移行が行われる時の自動車動作パラメータの値と前記所定値との差に対応する速度で、第二のモードに移行するように構成される請求項1〜25のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項27】
前記第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方は、前記接続動作を行うように構成された一つ又は複数のアクチュエータを含み、前記接続動作の速度は、前記一つ又は複数のアクチュエータの移動の速度に依存する請求項1〜26のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項28】
前記第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方は、前記接続動作を行うように構成された複数のアクチュエータを含む請求項1〜27のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項29】
前記第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方のアクチュエータのうちの少なくとも二つは、時間的に異なる各々の瞬間で作動するように構成され、前記接続動作の速度は、各々のアクチュエータの作動間で経過する時間の長さに依存する請求項28に記載の自動車。
【請求項30】
前記第一の解放自在のトルク伝達手段は、少なくとも第一のアクチュエータを含み、第二の解放自在のトルク伝達手段は、少なくとも第のアクチュエータを含み、前記接続速度は、前記第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の各々のアクチュエータの作動間で経過する時間の長さに依存する請求項28又は29に記載の自動車。
【請求項31】
前記原動機手段は、エンジンと電気マシンとのうちから選択された少なくとも一つを含む請求項1〜30のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項32】
自動車を制御するための方法であって、
原動機手段と、
一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一及び第二のグループと、
制御手段を用いてトルク伝達通路を前記原動機手段から一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループに接続するように動作可能な動力伝達経路であって、前記動力伝達経路が第一のモードの動作である時には、第二のグループではなく一つ又は複数の車輪から成る第一のグループが前記トルク伝達通路に連結され、前記動力伝達経路が第二のモードの動作である時には、一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループの両方が前記トルク伝達通路に連結される動力伝達経路と、を備え、
前記動力伝達経路は、その補助部により、前記原動機手段から前記トルク伝達通路に第二のグループを接続するように動作可能であり、前記補助部は第一及び第二の解放自在のトルク伝達手段とプロップ・シャフトとを含み、前記第一の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第一の末端を前記原動機手段から前記トルク伝達通路に接続するように動作可能であり、前記第二の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第二の末端を一つ又は複数の車輪から成る第二のグループに接続するように動作可能である、前記自動車を備え、
前記方法は、第一のモードにおいて、プロップ・シャフトが原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループの両方から分離されるように、第一及び第二のモードの動作間で動力伝達経路を切り替えるように補助部を制御することと、
前記方法は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御することを含み、各始動条件はそれぞれ識別性を有し、本方法は、適合する始動条件の識別性に対応する接続速度で、第一のモードから第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御すること
を含む、自動車を制御するための方法。
【請求項33】
動力伝達経路を有する自動車のためのシステムであって、
原動機と、1組の後輪と、前記原動機を前記後輪へ接続するためのシャフトと、プロップ・シャフトを前記原動機及び前記後輪に選択的に接続するための第1及び第2の連結手段とを備え、
該システムは、前記プロップ・シャフトが前記原動機及び前記後輪から分離される第一のモードの動作と、前記原動機が前記プロップ・シャフトによって前記後輪に接続される第二のモードとの動作のうちの一つにおいて、前記第1及び第2の連結手段の動作を制御するように構成された制御手段を備え、
前記制御手段は、適合する少なくとも二つの始動条件であって各自動車動作パラメータに関連する始動条件のうちの一つに対応して、前記適合する始動条件に依存する接続速度で、前記第一のモードの動作から前記第二のモードの動作への移行を生じさせる様に構成されることを特徴とするシステム。
【請求項34】
前記制御手段が、適合する第一の始動条件に対応する場合に、適合する第二の始動条件に対応する場合とは異なる接続速度で、前記第一のモードの動作から前記第二のモードの動作へ移行することを生じさせるように構成される請求項33に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車及び自動車を制御するための方法に関する。限定されるものではないが、特に、本発明は自動車を駆動するためにトルクを供給する複数の車輪を変えるように動作可能な動力伝達経路を有する例えば全地形対応車(ATV)などの自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
原動力が自動車の2組の車輪のそれぞれに供給される四輪駆動動作モードを有する自動車を提供することが知られている。原動力は動力伝達経路を用いて車輪に供給される。
【0003】
ある既知の自動車では、原動力が両方の組の車輪に永久に供給されるように配置されている。ある他の自動車では、原動力が1組にだけ又は両方の組の車輪に対して選択的に供給されるように配置されている。運転手が操作可能なセレクタは、運転手が二輪又は四輪の動作を選択可能なように設けることができる。ある動力伝達経路システムは、二輪又は四輪駆動モードに移行する際に自動車が静止していることを必要とする。そのようなシステムは静的切断/再接続システムと呼ぶことができる。
【0004】
英国特許第2407804号は、自動車が移動している際の動力伝達経路からの車輪の切断に続いて、車輪の2つを動力伝達経路へ再接続する動的動力伝達経路再接続構成を開示している。そのようなシステムは、動的動力伝達経路再接続システムとも呼ぶことができる。英国特許第2407804号に開示されるシステムは、動的動力伝達経路再接続を可能とするクラッチ配置を採用している。
【0005】
ある既知の動的動力伝達経路の再接続システムにおいては、自動車が二輪駆動モードで操作されるような所定の条件に適合する際に、自動車が車輪のうちの二つに対する動力伝達経路の接続を自動的に分離できるように操作可能である。そのシステムは、所定の条件に適合しない場合には四輪駆動操作を可能にするために動力伝達経路を自動的に再接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第2407804号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1の目的は、既知の動的動力伝達経路システムの不利益を少なくとも部分的に軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲を参照することにより理解できるであろう。本発明の一側面は自動車及び方法を提供することにある。
【0009】
そこに保護が求められる本発明の更なる側面は、
原動機手段と、
一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一及び第二のグループと、
制御手段を用いてトルク伝達通路を原動機手段から一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループに接続するように動作可能な動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時には、第二のグループではなく一つ又は複数の車輪から成る第一のグループがトルク伝達通路に連結され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時には、一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループの両方がトルク伝達通路に連結される動力伝達経路と、を備え、
動力伝達経路は、その補助部により、原動機手段からトルク伝達通路に第二のグループを接続するように動作可能であり、補助部は第一及び第二の解放自在のトルク伝達手段とプロップ・シャフトとを含み、第一の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第一の末端を原動機手段からトルク伝達通路に接続するように動作可能であり、第二の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第二の末端を一つ又は複数の車輪から成る第二のグループに接続するように動作可能であり、
制御手段は、第一のモードにおいて、プロップ・シャフトが原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループの両方から分離されるように、第一及び第二のモードの動作間で動力伝達経路を切り替えるように補助部を制御可能であり、
制御手段は、動力伝達経路が第一のモードと第二のモードの間で移行する場合に、要求された接続速度で原動機手段からトルク伝達通路に一つ又は複数の車輪から成る第二のグループを接続するように補助部を制御可能であり、
動力伝達経路が第一のモードである場合には、制御手段は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能であり、各始動条件はそれぞれ識別性(アイデンティティ)を有し、制御手段は、適合する始動条件の識別性に対応する接続速度で、第一のモードから第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能である自動車が提供される。
【0010】
動力伝達経路の補助部が原動機手段からトルク伝達通路に一つ又は複数の車輪から成る第二のグループを接続する際の速度は、接続動作が行われる期間に関係するように考慮できることを理解すべきである。接続の速度が高ければ高いほど、動力伝達経路による第一のモードから第二のモードに移行する際の動作が動力伝達経路で完了する期間が短くなる。従って、接続速度の基準は、代替的には、接続動作が完了する期間、即ち、第一のモードから第二のモードへの移行が完了する期間になる。完了は、第一及び第二の解放自在のトルク伝達手段が、プロップ・シャフトが原動機手段と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループとからトルク伝達通路に接続される動作が完了することを意味する。解放自在のトルク伝達手段がクラッチ手段を含んでいる場合、完了は、クラッチ手段が十分に(且つ部分的でなく)閉止することを意味すると理解される。
【0011】
従って、制御手段は、適合する始動条件の識別性に対応する長さの期間全体にわたって第一のモードから第二のモードへ移行するように動力伝達経路を制御できる。
【0012】
解放自在のトルク伝達手段がクラッチ又はクラッチ手段を含む、ある実施形態においては、接続速度への言及は、クラッチ又はクラッチ手段の閉止の速度の言及として理解すべきである。ある実施形態においては、接続速度への言及は、十分に閉止するために複数のクラッチ手段に対して行われる合計時間についての言及と理解すべきである。例えば、一つのクラッチ手段の閉止と別のクラッチ手段の閉止との間の時間的遅延が変わると、異なる接続速度になる。ある実施形態においては、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段のうちの一つのクラッチ手段を、別のクラッチ手段を閉止する前にプロップ・シャフトを回転させるために、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段のうちの他のクラッチ手段を閉止する前に閉止することは利点と思われる。これは動力伝達経路の接続動作に伴うノイズや振動及び/又はハーシュネス(NVH)を低減できる。しかし、接続動作を急ぐ場合、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段のクラッチ手段は、各々の閉止動作間に遅延が殆ど又は全くない状態で他と実質的に同時に又は直後に閉止できる。
【0013】
プロップ・シャフトを原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る前述の第二のグループの両方から分離すると、プロップ・シャフトは、自動車が動いている時でも実質的に静止できることを理解すべきである。これは、プロップ・シャフトの回転に伴うエネルギー・ロスが、ある実施形態においては減少又は解消するという利点を有する。
【0014】
ここでいう一つ又は複数の車輪から成るグループとは、一つだけの車輪から成る構成要素を有するグループを含むことを理解すべきである。
【0015】
本発明の実施形態は、自動車がある状況で最適の性能特性を呈する方式で動力伝達経路を制御できるという利点を有する。従って、例えば、自動車が横滑りしている時のように、第二のモードへの移行を更に急ぐ事態において、接続速度は、移行をそれほど急がない事態と比べて速くなるように実施できる(即ち、接続動作がすぐに完了する)。
【0016】
ある実施形態においては、始動条件のセットは、下記の条件から選択された少なくとも一つの条件を含んでいる。
(a)一つ又は複数の車輪に動力伝達経路を経由して送られるトルクの瞬時量が、第一の所定の瞬時トルクの閾値より大きい、
(b)ステアリング・ホイールの角度が、第一の所定の操縦角度の閾値より高い、
(c)操縦自在の主車輪の角度が、第一の所定の操縦自在の主車輪角度の閾値より大きい、
(d)操縦自在の主車輪角度の変化の速度が、第一の操縦自在の主車輪角度速度の閾値を超える、
(e)ステアリング・ホイール角度の変化の速度が、第一の所定のステアリング・ホイール角度速度の閾値を超える、
(f)自動車の横加速度が、第一の所定の横加速度の閾値より大きい、
(g)横加速度の変化の速度が、第一の所定の横加速度の速度の閾値を超える、
(h)スロットル又は加速器のペダル位置の値が、第一の所定のスロットル又は加速器ペダル位置の閾値より大きい、
(i)スロットル又は加速器ペダル位置の変化の速度が、第一の所定のスロットル又は加速器の速度の閾値より大きい、
(j)運転手要求トルクが、第一の所定の運転手要求トルクの閾値より大きい、
(k)原動機手段のトルクが、第一の所定の原動機手段のトルク閾値より大きい、
(l)ホイール・スリップの大きさが第一の所定のホイール・スリップの閾値より大きい、
(m)自動車の加速度が、第一の所定の自動車の加速度の閾値より大きい、
(n)自動車の減速度が、第一の所定の自動車の減速度の閾値より大きい、
(o)自動車のヨー・レートが、第一の所定のヨー・レートの閾値より大きい、
(p)ヨー・レート・エラーが、第一の所定のヨー・レート・エラーの閾値より大きい、
(q)手動又は自動ギア・シフト・コントロールが、一つ又は複数の所定のギア・シフト位置の値のうちの一つの第一のセットのひとつにセットされている、
(r)動作温度が、第一の所定の動作温度の閾値より低い、
(s)周囲温度が、第一の所定の周囲温度の閾値より低い、
(t)自動車の構成部品の温度が、第一の構成部品の温度閾値より低い、
(u)自動車の流体の温度が第一の流体の温度閾値より低い、
(v)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より低い、
(w)補助の動力伝達経路の流体の温度が、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より低い、
(x)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の高温閾値より高い、
(y)補助の動力伝達経路の流体の温度は、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の流体の高温閾値より高い、
(z)自動車の速度が、第一の所定の自動車の速度閾値より低い、
(a1)自動車は、一つ又は複数の自動車動作プログラムの一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を始めた、
(b1)走行表面の粗度が、第一の所定の表面粗度の閾値を超えている、
(c1)自動トランスミッションの現在の又は狙いとするギアが、一つ又は複数のギア値のものの第一のセットの一つにセットされている、
(d1)ブレーキ・ペダル位置の値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい、
(e1)ブレーキの圧力値が、第一の所定のブレーキ圧力の閾値より大きい。
【0017】
従って、自動車が、動力伝達経路の第二のモードの動作が永久に必要とされずに、運転手が、動力伝達経路の第二のモードの動作が永久に必要とされる(オフ−ロード・モードのような)自動車動作モードを選択している、自動車プログラムに基づいて動作している場合、動力伝達経路は、第二のモードの動作を自動的に設定するように構成される。
【0018】
ある実施形態においては、自動車は、運転手が選択自在な動作の自動車プログラムを複数有し、二つ以上の始動条件のセットは、自動車が所定の自動車プログラムに基づいて動作する要件を含む。
【0019】
ある実施形態において、接続速度は自動車の速度に対応し、接続速度は、車両速度の増加に応じて増加するように構成される。
【0020】
即ち、第一のモードから第二のモードへの移行を完了するために必要な時間は、車両速度の増加に応じて減少するように構成される。
【0021】
この特徴には、自動車(又は運転手)が第二のモードを選択すると、自動車は高い自動車速度で瞬時に第二のモードを設定するという利点がある。これは、比較的高速で移動する時に、例えば、横滑りの際に第二のモードが設定されると、第二のモードは自動車がゆっくりと移動している場合よりも素早く設定されるという利点を有する。
【0022】
更に、この特徴には、高い接続動作速度の長所を、NVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)特性が著しく低下せずに入手できるという利点がある。これは、高い接続速度が、第二の1組の車輪の接続に起因するNVHが自動車の移動速度のために周囲の自動車のノイズと振動とで遮蔽される、高速の自動車の速度で採用されたからである。
【0023】
原動機手段は使用時に回転するように構成され、接続速度は原動機手段の回転速度に対応し、接続速度は、原動機手段の回転速度の増加に応じて増加するように構成される。
【0024】
これは、原動機手段が運転手のトルク要請又はスロットル入力に応答するために時間がかかりそうな場合(従って、接続速度の低下は運転手が気付かないほど小さい)において(エンジン速度のような)低速の原動機手段の速度で減速された速度が採用されるため、接続がなされる際に生じる構成部品の摩耗量が減少するという利点がある。低減されたノイズと振動は、自動車の性能を大きく低下しないので運転手も快適である。前述のように、原動機手段の応答時間が、低速の原動機手段の速度で増加するためである。
【0025】
原動機手段の応答時間の増加は、例えば、ターボチャージ付きエンジンのターボ遅れに起因して発生し得る。
【0026】
しかしながら、原動機手段のノイズ・レベルが増加する高速の原動機手段の速度で、高い接続速度が、自動車のNVH特性を著しく減少せずに採用され得る。
【0027】
ある実施形態において、接続速度は、自動車の横加速度の大きさに対応する。
【0028】
ある実施形態において、接続速度は、自動車の横加速度の増加に応じて増加するように構成される。
【0029】
この特徴には、横加速度が閾値(例えば、自動車の横滑りの可能性を示す値)を超えて検出されると、自動車は、横滑り又は更なる横滑りを防止するために、横加速度の大きさが閾値より低い場合よりも高い速度で、第二のセットの車輪を原動機手段に接続するように構成されるという利点がある。
【0030】
この特徴には、運転手が自ら気づく状況の深刻さに、接続速度が対応するという利点がある。従って、激しい横加速度が検出される場合は、比較的穏やかな横加速度が検出される状況と比べて、自動車が第二の1組の車輪を原動機手段により早く接続するように構成される。
【0031】
ある実施形態においては、横加速度の大きさが閾値を超える場合に、制御手段が、横加速度の大きさが閾値を超えない場合よりも早い接続速度で、原動機手段に第二の組の車輪を接続するように、動力伝達経路を制御するように構成される。
【0032】
ある実施形態において、接続速度は、自動車のオーディオ・システムのボリュームに対応している。
【0033】
ある実施形態において、接続速度は、オーディオ・システムのボリュームの増加に応じて増加するように構成される。
【0034】
第二のモードへの移行に伴うNVHの大きな値は、オーディオ・システムのボリュームが増加するにつれて、自動車のオーディオ・システムで遮蔽できることを理解すべきである。これは、自動車の乗員が認知できるほどNVHが著しく増加せずに、ボリュームが増加するので、第二のモードへの更なる素早い移行が可能になる。
【0035】
随意には、ボリュームは、ユーザが選択したボリュームである。
【0036】
代替的には、ボリュームは、接続行為が要求されたときに、オーディオ・システムから発せられるサウンドの実際のボリュームである。
【0037】
ある実施形態においては、二つ以上の始動条件のセットは、少なくとも、一つ又は複数の条件からなる第一のサブセットと、一つ又は複数の条件からなる第二のサブセットとを含み、動力伝達経路は、第一のサブセットの条件が適合する場合に、第二のサブセットの条件に適合するが第一のサブセットの条件には適合しない場合よりも速い接続速度で第二のモードを設定するように構成される。
【0038】
この特徴は、接続動作速度が、第二のモードへの移行を始動する際の型式及び/又は過酷さに対応しているので、自動車が出会う状況に適応できるという利点がある。
【0039】
ある実施形態において、条件の第一のサブセットは、下記の条件から選択された少なくとも一つの条件を含んでいる。
(a)一つ又は複数の車輪に動力伝達経路を経由して送られるトルクの瞬時量が、第一の所定の瞬時トルクの閾値より大きい、
(b)ステアリング・ホイールの角度が、第一の所定の操縦角度の閾値より高い、
(c)操縦自在の主車輪の角度が、第一の所定の操縦自在の主車輪角度の閾値より大きい、
(d)操縦自在の主車輪角度の変化の速度が、第一の操縦自在の主車輪角度の速度の閾値を超える、
(e)ステアリング・ホイール角度の変化の速度が、第一の所定のステアリング・ホイール角度速度の閾値を超える、
(f)自動車の横加速度が、第一の所定の横加速度の閾値より大きい、
(g)横加速度の変化の速度が、第一の所定の横加速度の速度の閾値を超える、
(h)スロットル又は加速器のペダル位置の値が、第一の所定のスロットル又は加速器ペダル位置の閾値より大きい、
(i)スロットル又は加速器ペダル位置の変化の速度が、第一の所定のスロットル又は加速器速度の閾値より大きい、
(j)運転手要求トルクが、第一の所定の運転手要求トルクの閾値より大きい、
(k)原動機手段のトルクが、第一の所定の原動機手段のトルク閾値より大きい、
(l)ホイール・スリップの大きさが第一の所定のホイール・スリップの閾値より大きい、
(m)自動車の加速度が、第一の所定の自動車の加速度の閾値より大きい、
(n)自動車の減速度が、第一の所定の自動車の減速度の閾値より大きい、
(o)自動車のヨー・レートが、第一の所定のヨー・レートの閾値より大きい、
(p)ヨー・レート・エラーが、第一の所定のヨー・レート・エラーの閾値より大きい、
(q)ブレーキ・ペダル位置の値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい、
(r)ブレーキ・ペダル圧力値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい。
【0040】
ある実施形態において、条件の第二のサブセットは、下記の条件から選択された少なくとも一つの条件を含んでいる。
(a)手動又は自動ギア・シフト・コントロールが、一つ又は複数の所定のギア・シフト位置の値のうちの一つの第一のセットの一つにセットされている、
(b)動作温度が、第一の所定の動作温度の閾値より低い、
(c)周囲温度が、第一の所定の周囲温度の閾値より低い、
(d)自動車の構成部品の温度が、第一の構成部品の温度閾値より低い、
(e)自動車の流体の温度が第一の流体の温度閾値より低い、
(f)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より低い、
(g)補助の動力伝達経路の流体の温度が、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より低い、
(h)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の高温閾値より高い、
(i)補助の動力伝達経路の流体の温度は、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の流体の高温閾値より高い、
(j)自動車の速度が、第一の所定の自動車の速度閾値より低い、
(k)自動車は、一つ又は複数の自動車動作プログラムの一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を始めた、
(l)走行表面の粗度が、第一の所定の表面粗度の閾値を超えている、
(m)自動トランスミッションの現在の又は狙いとするギアが、一つ又は複数のギア値のものの第一のセットの一つにセットされている。
【0041】
自動車が一つ又は複数の自動車動作プログラムから成る一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を始める条件(条件(k))は、例えば、運転手が所定の動作プログラムを選択する場合、又は所定の動作プログラムが自動車により自動的に設定される場合に適合され得る。
【0042】
ある実施形態において、動力伝達経路は、反応評価器と予測評価器の出力に対応して第二のモードを設定するように構成されており、
反応評価器の出力は、車輪スリップの量が第一の所定の閾値を超えたかどうかについての判断に対応し、
予測評価器の出力は、車輪スリップの量が第一の所定の閾値以下である時に、車輪スリップの量が第二の所定の閾値を超えようとしていることを示す、一つ又は複数の自動車動作パラメータに関する一つ又は複数の条件に適合するという判断に対応する。
【0043】
ある実施形態において、第二のサブセットの条件は、予測評価器の出力が、第二のモードの動作を設定すべきことを示す条件を含んでいる。
【0044】
ある実施形態において、第一のサブセットの条件は、反応評価器の出力が、第二のモードの動作を設定すべきことを示す条件を含んでいる。
【0045】
従って、予測評価器が第二のモードの動作を設定すべきことを予測すると、動力伝達経路は、低い速度で第二のモードの動作を設定するように構成される。これは、動力伝達経路の構成部品の摩耗量と、自動車が第二のモードを設定する時に生じたNVHの量は、自動車が高い速度で第二のモードを設定することを動力伝達経路に要求する事態を予測せず且つこのような事態が引き続き発生する、状況と比べると減少するという利点がある。このような事態が引き続き発生し、自動車が高い速度で第二のモードを設定する結果になると、自動車の構成部品の摩耗量が増加し、自動車のNVH特性が低下する。これらの事態は、自動車の動作中では可能な限り避けるべきである。
【0046】
ある実施形態においては、予測評価器は、一つ又は複数の自動車動作パラメータの値に基づいて、所定の期間内で発生する第一のセットの条件のうちの一つの可能性を定めるように構成される。
【0047】
ある実施形態においては、反応評価器は高い速度で第二のモードへの移行を要請する信号だけを出力するように構成され、予測評価器は高速度又は低速度のいずれかで第二のモードへの移行を要請する信号を出力するように構成される。
【0048】
ある実施形態においては、原動機手段はエンジンを含み、加速器ペダル位置とエンジン速度と現在選択中のギアのうちの少なくとも一つに関して所定の条件に適合し、第二のモードへの移行を実施すべきであると予測評価器が判断すると、予測評価器が、比較的速い移行を要請する信号を出力するように構成される。
【0049】
所定の条件に適合しない場合、予測評価器が第二のモードへの移行を実施すべきと判断すると、予測評価器が比較的遅い移行を要請する信号を出力するように構成される。
【0050】
一部の構成では、自動車が所定のギアにあり且つエンジン速度が所定の速度を超える時に、加速器ペダル位置が所定の位置を超えると、予測評価器が比較的高い速度で移行を要請するように構成される。例えば、エンジン速度が毎分3000回転(rpm)又は任意の他の適切な数値を超える場合である。
【0051】
臨界スロットル位置は、選択したギアに伴って変わる。例えば、臨界位置は、第一のギア時で70%の低下、第二のギア時で80%の低下、第三のギア時で95%の低下になる。他の低下値も有用である。
【0052】
随意には、接続速度は過去の接続速度の経歴に対応し、制御手段は、第一のモードから第二のモードへの移行が必要になる時に、制御手段が必要な接続速度を決定できる過去の接続事象実態に付随したデータを保存するように構成される。
【0053】
ある実施形態において、データは、一つ又は複数の過去の接続事象中に設定した接続の速度と、一つ又は複数の過去の接続事象を始動する始動条件の識別性と、一つ又は複数の過去の接続事象が発生した時の一つ又は複数の自動車動作パラメータの値とのうちから選択された少なくとも1つに対応している。
【0054】
これには、ユーザの運転スタイル又は自動車を用いる環境の条件に適応するように構成できるという利点がある。従って、自動車が滑りやすい道路条件が存在し且つ自動車が横滑りのために四輪駆動モードを頻繁に設定する環境にある場合、自動車は、第二のモードへの移行が、第二のモードへの移行を始動できる一つ又は複数の条件に対して、例えば、比較的ゆっくりした速度で動力伝達経路接続を始動することが日常発生する条件に対して生じる速度を増加するように構成できる。他の構成も有用である。
【0055】
ある実施形態において、制御手段は、自動車が走行している表面の摩擦の係数に対応する速度で第二のモードを設定するために、動力伝達経路を制御するように構成される。
【0056】
随意には、動力伝達経路は、自動車が走行している表面の摩擦に関して予測した係数に対応する速度で、第二のモードを設定するように構成される。
【0057】
随意には、動力伝達経路は、第二のモードへの移行を始動する始動条件の識別性にかかわらず、実質的に一定の速度で、第二のモードから第一のモードを設定するように構成される。
【0058】
ある実施形態において、制御手段は、第一のモードから第二のモードへの移行が第一のサブセットの条件に適合する時に行われる速度より小さい速度で、第一のモードに第二のモードから移行するために、動力伝達経路を制御するように構成される。
【0059】
これには、NVH特性が増加し且つ構成部品の摩耗量が第一のモードへの移行が行われる時に減少されるという利点がある。
【0060】
ある実施形態においては、第一のモードにおいて、動力伝達経路は、一つ又は複数の自動車動作パラメータの値が所定値より大きい又は小さい時に第二のモードに移行するように動作可能であり、動力伝達経路は、第二のモードへの移行が行われる時の自動車動作パラメータの値と所定値との差に対応する速度で、第二のモードに移行するように構成される。
【0061】
ある実施形態においては、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方は、接続動作を行うように構成された一つ又は複数のアクチュエータを含み、接続動作の速度は、一つ又は複数のアクチュエータの移動の速度に依存する。
【0062】
ある実施形態においては、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方は、接続動作を行うように構成された複数のアクチュエータを含む。
【0063】
ある実施形態においては、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方のアクチュエータのうちの少なくとも二つは、時間的に異なる各々の瞬間で作動するように構成され、接続動作の速度は、各々のアクチュエータの作動間で経過する時間の長さに依存する。
【0064】
随意には、第一の解放自在のトルク伝達手段は少なくとも第一のアクチュエータを含み、第二の解放自在のトルク伝達手段は少なくとも第一のアクチュエータを含み、接続速度は第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の各々のアクチュエータの作動間で経過する時間の長さに依存する。
【0065】
ある実施形態において、原動機手段は、エンジンと電気マシンとのうちから選択された少なくとも一つを含む。
【0066】
原動機手段は、エンジンと電気マシンとを含むことができる。
【0067】
エンジンは、内燃エンジンでもよい。
【0068】
保護が要求される本発明の更なる側面において、自動車を制御するための方法が提供され、自動車は下記を備える。
原動機手段と、
一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一及び第二のグループと、
制御手段を用いてトルク伝達通路を原動機手段から一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループに接続するように動作可能な動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時には、第二のグループではなく一つ又は複数の車輪から成る第一のグループがトルク伝達通路に連結され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時には、一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループの両方がトルク伝達通路に連結される動力伝達経路と、を備え、
動力伝達経路は、その補助部により、原動機手段からトルク伝達通路に第二のグループを接続するように動作可能であり、補助部は第一及び第二の解放自在のトルク伝達手段とプロップ・シャフトとを含み、第一の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第一の末端を原動機手段からトルク伝達通路に接続するように動作可能であり、第二の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第二の末端を一つ又は複数の車輪から成る第二のグループに接続するように動作可能であり、
本方法は、第一のモードにおいて、プロップ・シャフトが原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループの両方から分離されるように第一及び第二のモードの動作間で動力伝達経路を切り替えるように補助部を制御することを含み、
本方法は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御することを含み、各始動条件はそれぞれ識別性を有し、本方法は、適合する始動条件の識別性に対応する接続速度で、第一のモードから第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御することを含む。
【0069】
保護が要求される本発明の更なる側面においては、
原動機と、
一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一と第二のグループと、
制御手段を用いてトルク伝達通路を原動機手段から一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループに接続するように動作可能な動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時には、第二のグループではなく一つ又は複数の車輪から成る第一のグループがトルク伝達通路に連結され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時には、一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループの両方がトルク伝達通路に連結される動力伝達経路と、を備え、
動力伝達経路は、その補助部により原動機手段からトルク伝達通路に第二のグループを接続するように動作可能であり、補助部は第一と第二のクラッチ手段とプロップ・シャフトとを含み、第一のクラッチ手段はプロップ・シャフトの第一の末端をトルク伝達通路に原動機手段から接続するように動作可能であり、第二のクラッチ手段はプロップ・シャフトの第二の末端を一つ又は複数の車輪から成る第二のグループに接続するように動作可能であり、
制御手段は、第一のモードにおいて、プロップ・シャフトが原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループの両方から分離されるように、第一及び第二のモードの動作間で動力伝達経路を切り替えるように補助部を制御可能であり、
制御手段は、動力伝達経路が第一のモードと第二のモードの間で移行する場合に、要求された接続速度で原動機手段からトルク伝達通路に一つ又は複数の車輪から成る第二のグループを接続するように補助部を制御可能であり、
動力伝達経路が第一のモードである場合には、制御手段は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能であり、各始動条件はそれぞれ識別性を有し、制御手段は、適合する始動条件の識別性に対応する接続速度で、第一のモードから第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能である自動車が提供される。
【0070】
保護が要求される本発明の一側面においては、自動車であって、原動機と、一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一と第二のグループと、原動機を一つ又は複数の車輪から成る第一と第二のグループに接続するための動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時に一つ又は複数の車輪から成る第一のグループが原動機により駆動され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時に、一つ又は複数の車輪から成る第二のグループが原動機により駆動される動力伝達系路と、を備え、動力伝達経路は、動力伝達経路が第一のモードと第二のモードの間で移行する場合に、所定の速度で1又は複数の車輪から成る第二のグループを原動機に接続するように動作可能な開放自在のトルク伝達手段を備える補助動力伝達経路を含み、第一のモードにおいて、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件の第一のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路が動作可能であり、接続の速度が適合する条件の識別性に対応する、自動車が提供される。
【0071】
保護が要求される本発明の一側面においては、自動車を制御する方法が提供され、自動車は、原動機と、車輪から成る少なくとも第一と第二のグループと、原動機を第一と第二のグループに接続するための動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時に車輪から成る第一のグループが原動機により駆動され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時に車輪から成る第二のグループが原動機により駆動される動力伝達経路と、を備え、動力伝達経路は、動力伝達経路が第一のモードと第二のモードの間で移行する場合に、原動機手段から1又は複数の車輪から成る第二のグループを接続及び分離するように動作可能な開放自在のトルク伝達手段を備える補助動力伝達経路を含み、その方法は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の条件の第一のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように、動力伝達経路を制御することを第一のモードで含み、その方法は適合する条件の識別性に対応して接続の速度を制御することを更に備える、自動車を制御する前述の方法が提供される。
【0072】
本出願の範囲内において、上述の段落と特許請求の範囲及び/又は以下に詳細な説明と図面とに記載されている種々の側面、実施形態、実施例、代替物、特にそれらの特徴は、独自に又はその任意の組み合わせにおいて実施できることが想定される。例えば、ある実施形態に関連して説明した特徴は、このような特徴が相反することが無い限り、全ての実施形態に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車の概略である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る自動車のコントローラの一部の概略図である。
図3図3は、本発明の更なる実施形態に係る自動車の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明の実施形態を、添付する図面を参照しながら例示の目的のみにおいて説明する。
【0075】
本発明の実施形態に係る自動車1の動力伝達経路5が図1に概略的に図示されている。動力伝達経路5は、ギア・ボックス18を用いて、内燃エンジン11の形態で原動機に接続されており、1組の前輪12、13と、補助部10と、1組の後輪14、15とを有している。
【0076】
動力伝達経路5は、そこにギア・ボックス18によって供給された動力を、内燃エンジン11から、(二輪駆動モードの動作で)前輪12、13だけに、又は(四輪駆動モードの動作で)前輪12、13と後輪14、15とに伝達するように選択的に配置されている。
【0077】
動力は、内燃エンジン11から前輪12、13に、クラッチ17とギア・ボックス18と1組の前輪駆動シャフト19とを用いて伝達される。
【0078】
動力は、動力伝達経路10の補助部を用いて後輪14、15に伝達される。補助部10は、ギア・ボックス18に補助部10の主駆動シャフト又はプロップ・シャフト23を接続するように動作可能な、動力伝達クラッチ(PTC)22を持つ動力伝達ユニット(PTU)24を有する。プロップ・シャフト23は、後輪駆動シャフト26にプロップ・シャフト23を連結するように動作可能なリア・ディファレンシャル30に順に連結されている。
【0079】
リア・ディファレンシャル30は、四輪駆動モードの動作が必要な時に、後輪駆動シャフト26にプロップ・シャフト23を接続するように動作可能なリア・ディファレンシャル30の1組のクラッチ27を有する。
【0080】
動力伝達経路5は、PTU24とクラッチ27との操作を制御するように構成したコントローラ40を有する。四輪駆動モードの動作が必要な時に、コントローラ40は、PTC22を閉止すると共にディファレンシャル27のクラッチ27を閉止するように構成されている。
【0081】
図1の実施形態においては、PTC22とディファレンシャル・クラッチ27は、複数の異なる速度(レート)のうち選択された1の速度で各々のクラッチを閉止するように動作可能な各々のアクチュエータを有する。これにより、二輪駆動モードの動作から四輪駆動モードの動作への移行を、対応する複数の異なる速度のうちの一つで行うこと可能となる。摩擦クラッチの場合、クラッチが閉止すると、クラッチが入力からその出力に伝達できる最大量のトルクは、閉止条件に関連した最大転送トルク値へと増加することを理解すべきである。湿式多板クラッチの場合、クラッチが伝達できる最大量のトルクは、クラッチのプレートに印加される圧力の量に対応している。
【0082】
各々のアクチュエータが各々のクラッチ構成を作動する変化速度は、クラッチ及び動力伝達経路5のなかで考えられる一つ又は複数の他の構成部品が摩耗する変化速度に影響することを理解すべきである。作動の変化速度は、自動車の運転手又は乗員が体験するNVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)のレベルにも影響する。
【0083】
これを認識し、本発明者らは、ある状況において、後輪14、15及び/又はギア・ボックスがプロップ・シャフト23に接続される速度を減少させるために、少ない速度でディファレンシャル27及び/又はPTC22のクラッチ27を作動させることが望ましいことを見いだした。これは、動力伝達経路5の構成部品が摩耗する速度を減少でき、且つ第一のモードから第二のモードへの移行に伴うNVHも減少させることができる。
【0084】
PTU24を有しないある実施形態においては、リア・ディファレンシャル30のクラッチ27だけが、後輪14、15を内燃エンジン11に接続及び非接続させるように動作可能であることを理解すべきである。
【0085】
同様に、クラッチ27を有しないある実施形態においては、PTU24だけが、後輪14、15をエンジン11に接続及び非接続させるように動作可能である。
【0086】
動力伝達経路5のコントローラ40は、動力伝達経路5の四輪駆動モードの動作を設定する要求がそれほど緊急でない場合には遅い速度のPTC22とクラッチ27の作動を採用し、四輪駆動モードを設定する要求がより緊急の場合には高い速度の作動を採用するように、補助の動力伝達経路10を制御するように構成されている。
【0087】
本実施形態においては、コントローラ40は、一つ又は複数の自動車動作パラメータの値に応じて自動的に又は運転手が要求した自動車動作モード又は特性の選択に対応して、四輪駆動モードを設定するように動力伝達経路5を制御するように動作可能である。従って、コントローラ40が車輪スリップ量が所定値を超えることを検出する際に、そのコントローラは、四輪駆動モードを自動的に設定するように動力伝達経路5を制御可能である。四輪駆動モードを設定する要求が運転手の特定の自動車動作モードの選択に対応する場合と比べると、コントローラ40が四輪駆動モードが必要であると判断する複数の状況においては、四輪駆動動力伝達経路モードへの移行が更に緊急になることを理解すべきである。
【0088】
本実施形態では、コントローラ40は、運転手が(ギア・ボックス又はトランスミッション18の動作のモードのような)動作の自動車モード、又は四輪駆動モードを設定するように動力伝達経路5を要求する(テライン応答プログラムのような)自動車プログラムを選択する時には、動力伝達経路5に関して低いNVHと減少した摩耗となるように、動力伝達経路5の補助部10の接続について比較的遅い速度を採用するように構成されている。
【0089】
例えば、運転手がセレクタを用いて四輪駆動モードを選択すると、動力伝達経路5は、自動車が(例えば)横滑りの検出のために四輪駆動モードを自動的に選択するよりも、むしろ遅い速度で四輪駆動モードを設定するように構成される。
【0090】
同様に、運転手が「スノー(雪)/アイス(氷)」テライン応答モードを選択すると、自動車は、自動車が実際の横滑り状態を検出した場合よりも遅い速度で四輪駆動モードを自動的に設定するように構成される。
【0091】
同様に、自動車が、ある自動車動作モードにおいて四輪駆動動作が必要な所定の速度閾値を超えた場合、或いは、ある自動車動作モードにおいて四輪駆動動作が必要な速度閾値以下になる場合、動力伝達経路5は、接続に関して比較的遅い速度で四輪駆動モードの動作を設定するように構成される。
【0092】
ある実施形態においては、接続の速度は、接続動作が要求される時の自動車1の速度と、接続動作が要求される時のエンジン11の速度にも依存している。これは、接続動作で生じるNVHは、高速の自動車又はエンジン速度(即ち、ノイズ・レベル)では、低速の自動車又はエンジン速度よりも、運転手が気づかないほど小さくなりやすいため、NVH特性に関しては認知できるほど(又は少なくとも実質的に)低下させることなく、高速の自動車又はエンジン速度で、高い接続速度とすることが可能になるからである。
【0093】
低速のエンジン速度における低い接続動作速度は、低い接続速度に起因する自動車の特性の損失が、低速のエンジン速度で増大するエンジン応答時間(即ち、遅いエンジン応答)のために、運転手にとって気付かないほど小さいという長所も有している。これは、例えば、ターボチャージ付きエンジンのターボ・ラグのためである。動力伝達経路5の減少した応答時間は、従って、このような環境でも更に許容可能である。
【0094】
示される実施形態では、運転手が四輪駆動モードの動作を設定するために動力伝達経路5を要求するギアを選択すると、コントローラ40は、比較的遅い速度で四輪駆動モードを設定するために動力伝達経路5を制御するように再び調整される。
【0095】
コントローラ40は、四輪駆動モードに移行するための理由が、以下の第一のリストの条件のうちから選択される1のものである場合、(第一の期間、例えば、約1秒以下、あるいは1秒より長い任意の他の適切な値である期間を超える)比較的高い速度で四輪駆動モードを設定するように動力伝達経路5を制御する:
(a)一つ又は複数の車輪に動力伝達経路を経由して送られるトルクの瞬時量が、第一の所定の瞬時トルクの閾値より大きい、
(b)ステアリング・ホイール角度が、第一の所定の操縦角度の閾値より高い、
(c)操縦自在の主車輪角度が、第一の所定の操縦自在の主車輪角度の閾値より大きい、
(d)操縦自在の主車輪角度の変化の速度が、第一の操縦自在の主車輪角度速度の閾値を超える、
(e)ステアリング・ホイール角度の変化の速度が、第一の所定のステアリング・ホイール角度速度の閾値を超える、
(f)自動車の横加速度が、第一の所定の横加速度の閾値より大きい、
(g)横加速度の変化の速度が、第一の所定の横加速度の変化の速度の閾値を超える、
(h)スロットル又は加速器のペダル位置の値が、第一の所定のスロットル又は加速器ペダル位置の閾値より大きい、
(i)スロットル又は加速器ペダル位置の変化の速度が、第一の所定のスロットル又は加速器の速度の閾値より大きい、
(j)運転手要求トルクが、第一の所定の運転手要求トルクの閾値より大きい、
(k)エンジン・トルクが、第一の所定のエンジン・トルクの閾値より大きい、
(l)ホイール・スリップ量が第一の所定のホイール・スリップの閾値より大きい、
(m)自動車の加速度が、第一の所定の自動車の加速度の閾値より大きい、
(n)自動車の減速度が、第一の所定の自動車の減速度の閾値より大きい、
(o)自動車のヨー・レートが、第一の所定のヨー・レートの閾値より大きい、
(p)ヨー・レート・エラーが、第一の所定のヨー・レート・エラーの閾値より大きい、
(q)ブレーキ・ペダル位置の値が第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい、
(r)ブレーキ圧力値が、第一の所定のブレーキ圧力の閾値より大きい。
【0096】
他の条件も有用なことを理解すべきである。ある実施形態においては、四輪駆動モードを設定するために、上記条件の全てが、動力伝達経路5を制御するように、コントローラ40を始動するわけでないように構成してあることも更に理解すべきである。
【0097】
コントローラ40は、四輪駆動モードに移行する理由が、以下の第二のリストの条件のうちから選択される1のものである場合、(第一の期間の時間より長い第二の期間の時間を超える、例えば、2秒の期間を超える)遅い速度で四輪駆動モードを設定するように動力伝達経路5を制御する:
(a)手動又は自動ギア・シフト・コントロールが、一つ又は複数の所定のギア・シフト位置の値のうちの第一のセットのものの値にセットされる、
(b)動作温度が、第一の所定の動作温度の閾値より低い、
(c)周囲温度が、第一の所定の周囲温度の閾値より低い、
(d)自動車の構成部品の温度が、第一の構成部品の温度閾値より低い、
(e)自動車の流体の温度が、第一の流体の温度閾値より低い。
(f)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より低い、
(g)補助の動力伝達経路の流体の温度が、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より低い、
(h)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の高温温度の閾値より高い、
(i)補助の動力伝達経路の流体の温度が、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の流体の高温温度より高い、
(j)自動車の速度が、第一の所定の自動車の速度閾値より低い。
(k)自動車が、一つ又は複数の自動車の動作プログラムのうちの一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を開始している、
(l)走行表面の粗度が、第一の所定の表面粗度の閾値を超える、
(m)自動トランスミッションの現在の又は狙いとするギアが、一つ又は複数のギア値の中の第一のセットのものの一つにセットされている。
【0098】
従って、コントローラ40が四輪駆動モードを設定するために自動車を制御する際の速度は、自動車が第二のリストの条件に適合するために四輪駆動モードを設定する場合よりも、第一のリストに適合する場合の方が速い。言い換えれば、第一のモードから第二のモードへの移行が始まってから完了するまでの時間の長さは、第一のリストの条件に適合する場合にはより短く、第一のリストでなく第二のリストの条件に適合する場合にはより長い。これは、一部の状況で、牽引力の損失の危険性は、第二のリストの条件と比べると、第一のリストの条件に適合する場合に大きくなるかも知れないからである。
【0099】
他の条件も有用であることを理解すべきである。ある実施形態は、前述の条件の全てが、四輪駆動モードを設定するように動力伝達経路5を制御して動力伝達経路状態制御部204を始動するわけでないように構成されることも理解すべきである。
【0100】
その他の構成も有用である。
【0101】
更に、第一のリストの場合、コントローラ40は、接続動作を始動する各々の自動車動作パラメータが所定値を超える場合の大きさに対応して、接続動作が実行される速度を増加させる(即ち、実行されるべき接続動作のための時間の長さを減少させる)ように構成される。設定すべき四輪駆動モードに必要な条件に対するコントローラ40の応答は、自動車が出会う状況の過酷さに依存する。
【0102】
ある実施形態においては、接続動作が行われる速度は、車載のエンターテインメント・システムのように、自動車のオーディオ・システムのボリューム設定に依存する。
【0103】
オーディオ・システムが生じる高レベルのサウンドは、動力伝達経路10からのノイズ・レベルの上昇を覆い隠すことができる。従って、動力伝達経路10のNVH特性の低下は、高いオーディオ・システムのサウンド・レベルでは気付かないほど小さい。
【0104】
自動車1は、横滑りを防ぐために必要な時に、ブレーキ作動の大きさを減少するために、自動車の一つ又は複数の車輪のブレーキを制御するように構成したアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)を備えている。自動車1は、車輪のスリップを防ぐために、自動車の一つ又は複数の車輪に送られるトルク量を制御するように構成したダイナミック・スタビリティ・コントロール・システム(DSC)60も有している。
【0105】
更に、自動車1は、車輪スリップが実質的に発生しないために必要な速度よりも速い速度で車輪が回転するように定まる事態において、自動車1の車輪をモニタして、車輪にブレーキをかけるように構成した、牽引力制御システム(TCS)70を有することができる。
【0106】
自動車1のコントローラ40は、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの移行を行うべき時を定める、1組の評価器を設けるように構成してあることを理解すべきである。
【0107】
図2は、コントローラ40の部分の略図である。コントローラ40は、コントローラ40の計算機によって実行されるコンピュータ・ソフトウエア・コードに具現化された反応評価器43を有する。反応評価器43は、コントローラ40が受信する信号S1、S2、S3、S4、S5を評価するように構成される。信号は、下記に対応している:
(a)一つ又は複数の車輪の縦方向の車輪スリップの量
(b)ヨー・レート・エラー
(c)アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)50が作動しているかどうかの判断
(d)動的安定性制御システム(DSC)システム60が作動しているかどうかの判断
(e)牽引力制御システム(TCS)70が作動しているかどうかの判断
【0108】
自動車1が二輪駆動モードの動作状態にあり、且つ信号S1、S2、S3、S4、S5の一つ又は複数の値が一つ又は複数の所定の反応評価器条件のセットに適合する時に、反応評価器43は、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの移行を始動するように構成される。
【0109】
二輪駆動モードから四輪駆動モードへの移行を始動するために、反応評価器43は、動力伝達経路5の状態、即ち、動力伝達経路5が二輪駆動モード又は四輪駆動モードであるかどうかについて制御するコントロール・モジュール47に出力信号R1を提供する。
【0110】
図2の実施形態では、出力信号R1が、ロジカルORゲート46を経由してコントロール・モジュール47に提供される。
【0111】
反応評価器43は、瞬時に設定すべき四輪駆動モードを必要とする条件が実際に存在する場合を定めるように構成されている。
【0112】
本実施形態においては、反応評価器43が、縦方向の車輪スリップ量(の大きさ)が所定の閾値を超える、又は(横方向の車輪スリップを示す)ヨー・レート・エラーの大きさが所定の閾値を超えていると判断すると、自動車は、瞬時に且つ比較的速い速度で四輪駆動モードを設定するように構成される。
【0113】
同様に、反応評価器43が、ABSシステム50とDSCシステム60とTCSシステム70のうちの任意の一つが作動状態であると判断すると、反応評価器43は、比較的速い速度で四輪駆動モードを設定するように自動車を制御する。ある実施形態においては、反応評価器43は、第二のモードへの移行を始動するかどうか決定する前に、ABSシステム50、DSCシステム60、及び/又はTCSシステム70の応答の重要性を判断するように構成されている。
【0114】
反応評価器43は、二輪駆動と四輪駆動のモード間で移行するように自動車を制御するために構成したコントロール・モジュール47に、制御信号R2を提供する。制御信号R2は、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの移行が行われる際の速度に対応している。従って、コントロール・モジュール47は、四輪駆動モードへの移行が必要な時と、その速度を決定できる。
【0115】
コントローラ40は、コントローラ40の計算デバイスにより実行されるコンピュータ・ソフトウエア・コードに具現化された予測評価器45も有している。図2に示す実施形態では、計算デバイスは、反応評価器43を動かすソフトウエアを実行するデバイスと同じ計算デバイスである。代替的には、計算デバイスは異なる計算デバイスであってもよい。
【0116】
反応評価器43のように、予測評価器45は、異なる各々の自動車動作パラメータの値に対応して、コントローラ40が受信した信号(信号S6,・・・,SN)を評価するようにも構成されている。
【0117】
しかし、反応評価器43において四輪駆動動作が必要であると判断するよりもむしろ、予測評価器45が、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの移行が以下の一つ又は複数の動作パラメータの値に基づいて所定の期間内に必要であるということを示す条件が存在することを判断するように構成される。即ち:
(a)一つ又は複数の車輪に動力伝達経路を経由して送られるトルクの瞬時値、
(b)ステアリング・ホイールの角度、
(c)操縦可能な主車輪の角度、
(d)操縦可能な主車輪角度の変化の速度、
(e)ステアリング・ホイールの変化の速度、
(f)自動車の横方向の加速、
(g)横方向の加速の変化の速度、
(h)スロットル又は加速器ペダルの位置、
(i)スロットル又は加速器のペダル位置の変化の速度、
(j)運転手の要求トルク、
(k)原動機トルク、
(l)車輪スリップの量、
(m)自動車の加速度、
(n)自動車の減速度、
(o)ヨー・レート、
(p)ヨー・レート・エラー、
(q)手動又は自動ギア・シフト・コントロールのギア・シフト位置の値、
(r)動作温度、
(s)周囲温度、
(t)自動車構成部品の温度、
(u)自動車の流体の温度、
(v)補助の動力伝達経路の構成部品の温度、
(w)補助の動力伝達経路の流体の温度、
(x)自動車の速度、
(y)自動車で行われる自動車動作プログラムの識別性(アイデンティティ)、
(z)自動車が移動している運転表面の粗度、
(a1)自動トランスミッションの現在の又は狙いとするギア、
(b1)ブレーキ・ペダル位置の値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい、
(c1)ブレーキ圧力値が、第一の所定のブレーキ圧力の閾値より大きい。
【0118】
予測評価器45は、反応評価器に送られる一つ又は複数の信号を入力として有することができる。
【0119】
ある実施形態においては、予測評価器45は、そのパラメータの値を具体的に表す入力信号を受信するよりもむしろ一つ又は複数の他の動作パラメータの値に基づいて、一つ又は複数の前述の動作パラメータ(ヨー・レート・エラーのような)を定めるように構成できる。
【0120】
予測評価器45が第一のモードから第二のモードへの移行が必要になりそうであると判断すると、反応評価器43は、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの移行を始動させる出力信号P1を提供するように構成される。
【0121】
図2に示すように、予測評価器45の出力信号P1は、ロジカルORオペレータ46により実行されるロジカルOR動作において、反応評価器43の出力信号R1と混合される。ロジカルORオペレータの出力は、前述のように、第二のモードに移行するように自動車を制御するコントロール・モジュール47に送られる。
【0122】
従って、自動車1は、四輪駆動モードへの移行を反応評価器43に始動させる条件が実際に生じる前に、四輪駆動モードを設定するように(予測評価器45を用いて)構成できる。
【0123】
ある実施形態においては、予測評価器45は、四輪駆動モードへの移行が必要になる確率を定めると共に、そのように定まった確率に対応する出力を生成するように構成される。
【0124】
図2から分かるように、予測評価器は、コントロール・モジュール47に出力信号P2をも提供する。出力信号P2は、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの移行が予測評価器45により指導されたことを示すものとして、コントロール・モジュール47により認識される。従って、コントロール・モジュール47は、対応する速度で四輪駆動モードに移行するように自動車を制御できる。この速度は、反応評価器43が必要な速度よりも低い速度であり得る。
【0125】
ある実施形態においては、コントロール・ラインP2は、四輪駆動モードへの移行が行われる速度についての指示も提供できる。
【0126】
ある実施形態においては、コントロール・モジュール47は、反応評価器43が四輪駆動モードを設定するように自動車1も始動したかどうかについて調べるために、制御信号ラインR2もチェックする。R2の値が、P2に対応してコントロール・モジュール47が採用したものよりも高い速度の接続が要求されることを示す場合、コントロール・モジュール47は、制御信号R2が要求する高い速度で四輪駆動モードを設定するように、自動車1を制御する。
【0127】
従って、反応評価器と予測評価器の両方が、四輪駆動モードへの移行をほぼ同時に始動させ、異なる各々の速度を指示する場合、コントロール・モジュール47は、二つの速度の高いほうで四輪駆動モードへの移行を始動するように構成される。
【0128】
ある実施形態においては、自動車は、第二のモードへの移行が一つの速度で生じている場合に、高い速度の移行を要請する制御入力を受信すると、自動車は二つの速度のうちの高い方での移行を続けるように構成される。
【0129】
予測評価器45に二輪駆動モードから四輪駆動モードへの移行を始動させる条件の例としては、(a)自動車の休止車輪に印加されるトルク量が所定値を超える(自動車が丘の上で重負荷で進もうとしているので、横滑りの危険が大きくなることを示唆する)条件と、(b)自動車の速度が、或る操縦可能な主車輪角度に対して定めた値を超える(自動車が横滑りする危険が高くなる速度でコーナーを切ろうとしていることを示唆する)ことを含む。
【0130】
反応評価器43は、車輪が実際にスリップしていないので、条件(a)のもとでは四輪駆動モードへの移行を始動しないことを理解すべきである。予測評価器45は、車輪スリップの危険が存在すると判断すると、車輪スリップが実際に発生する前に四輪駆動モードの動作に移行するように始動することが、自動車1が(縦方向又は横方向で)車輪スリップする危険を低減することを更に理解すべきである。
【0131】
反応評価器43は、自動車1がコーナーを通り抜ける際に実際に横滑りしない場合は、前述の条件(b)のもとで四輪駆動モードへの移行を始動しないことを理解すべきである。また、予測評価器45は、横滑りの危険が存在すると判断して横滑りが実際に発生する前に四輪駆動モードの動作への移行を始動することが、自動車1がコーナーを通り抜ける際に(縦方向又は横方向に)車輪スリップする危険を低減させる。
【0132】
反応評価器43は、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの瞬時の移行を必要とする条件が存在するかどうかについて判断するために、実質的な量の情報を継続的に処理することが要求されることを理解すべきである。
【0133】
反応評価器43に加えて予測評価器45を設けることにより、反応評価器43は、四輪駆動モードへの移行を必要とする条件が将来的に存在するかどうか決定するために、自動車動作パラメータの値について、予測評価器45が更に精巧な計算を潜在的に行いながら、二輪駆動モードから四輪駆動モードへの瞬時の移行が必要かどうかについて、自動車の動作条件情報を瞬時に処理することを継続できる。
【0134】
車輪スリップは、タイヤ又は動力伝達経路5の一つ又は複数の他の構成部品の過剰な摩耗が走行表面への損傷と同時に生じるために、少なくとも部分的には望ましくないことを理解すべきである。自動車は、表面が牽引力を妨げるほど大きく変質する車輪スピンが起きた後、走行表面上で動きにくくなるかも知れないことを理解すべきである。
【0135】
予測評価器45は、反応評価器43が予測評価器45と平行して機能し続けるために、車輪スリップの存在に対応して四輪駆動モードを設定する際に、自動車1の応答時間に影響せずに、反応評価器43のものよりも、完了するまでに長期間にわたって更に精巧な計算を実施できることを理解すべきである。
【0136】
ある実施形態においては、予測評価器45は、四輪駆動モードへの移行が、自動車1の運転手の運転スタイルの経歴(履歴)に対応して必要になるかどうか決定するように構成される。従って、予測評価器45は、自動車1が静止条件からまず進む際に車輪スピンが頻繁に発生していると判断すると、予測評価器45は、自動車が静止している時に四輪駆動モードの動作を自動的に設定するように自動車を御するように構成できる。予測評価器45は、所定の経歴の期間又は所定数の過去の運転サイクルにわたって、ユーザの運転スタイルの経歴を考慮するように構成されている。他の構成も有用である。
【0137】
同様に、予測評価器45は、自動車1の横方向の加速度の大きさが、比較的高い値と比較的低い値の間で繰り返し変動していると判断できる。このような変動は、例えば、自動車1が曲がりくねった道を走行していることを示唆する。従って、予測評価器45は、反応評価器43が四輪駆動モードの動作への移行を始動することの高い確率の存在に基づいて、四輪駆動モードを設定するように自動車1を制御できる。
【0138】
経歴の期間は、数秒、数分、数十分、数時間、数日、数週間、又は任意の他の適切な期間の単位の期間である。採用する経歴期間の長さは、考慮中の特定の動作パラメータにも対応できる。
【0139】
ある実施形態においては、反応評価器43は、第二のモードへの移行が必要と判断すると、比較的高い速度で第二のモードへの移行を要請する信号だけ出力するように構成される。一方、予測評価器45は、予測評価器45が、第二のモードへの移行が必要と判断すると、比較的高い速度又は比較的低い速度のいずれかで第二のモードへの移行を要請する信号を出力するように構成できる。
【0140】
反応評価器43が示した比較的高い速度は、予測評価器45が示した比較的高い速度と実質的に同じになる。或いは、それは高くても又は低くてもかまわない。
【0141】
ある実施形態においては、予測評価器45は、反応評価器43が、第二のモードへの移行を行うべきであり且つ所定の条件が加速器ペダル位置とエンジン速度と今選択中のギアのうちの一つ又は複数について適合すると判断すると、比較的速い移行を要請する信号を出力するように構成される。
【0142】
所定の条件に適合しない場合、予測評価器45は、予測評価器45が第二のモードへの移行を行うべきと判断すると、比較的遅い移行を要請する信号を出力するように構成される。
【0143】
ある実施形態においては、自動車1が所定のギアにあり且つエンジン速度が所定の速度を超えている時に、加速器ペダル位置が所定の位置を超える場合、予測評価器45は、比較的高い速度で移行を要請するように構成される。例えば、エンジン速度が毎分3000回転(rpm)又は任意の他の適切な数値を超える場合である。
【0144】
臨界スロットル位置は、選択したギアに伴って変わる。例えば、臨界位置は、第一のギア時で70%の低下、第二のギア時で80%の低下、第三のギア時で95%の低下になる。他の低下値も有用である。
【0145】
他の構成も、第一のモードから第二のモードへの移行を、反応評価器43又は予測評価器45を用いて始動することに関して有用である。
【0146】
「比較的高い」(又は「高」)速度とは、「比較的低い」(又は「低」)速度よりも高い速度であることを意味すると理解し、「比較的低い」(低)速度とは、「比較的高い」(高)速度より低い速度であることを意味することを理解すべきである。
【0147】
図3は、発明の更なる実施形態に係る自動車101の動力伝達経路105を示す。図3図1の実施形態と類似の部材は、数字1を接頭部にもつ同様の参照符号を付している。
【0148】
図3の実施形態は、動力伝達経路105が、トランスミッション118を介してエンジン111に、動力伝達経路105の補助部110の補助駆動シャフト又はプロップ・シャフト123の一端を接続するように動作可能な、動力転送クラッチ(PTC)122を有する動力転送ユニット(PTU)124(時折、動力取出ユニットとも呼ばれる)を有する点で、図1と類似している。
【0149】
しかし、図1の実施形態のリア・ディファレンシャル30の代替には、補助部110が後部駆動ユニット(RDU)127を有する。図3の実施形態において、RDU127は、PTU124に接続されているプロップ・シャフト123の末端と対向するプロップ・シャフト123の末端に連結されたクラウン・ホイール130を有する。
【0150】
RDU127は、各々、左右の後部駆動シャフト126L、127Rにクラウン・ホイール130を連結するように動作可能な1組の摩擦クラッチ127L、127Rも有する。
【0151】
RDU127は、各々、左右の摩擦クラッチ127L、127Rを開閉するように動作可能な左右のアクチュエータ127AL、127ARを各々備えている。アクチュエータ127AL、127ARは、アクチュエータ127AL、127ARが、両方の摩擦クラッチ127L、127Rが開かれる第一の位置から両方の摩擦クラッチ127L、127Rが閉止する第二の位置に向けて移動するにつれて、各々の摩擦クラッチ127L、127Rに圧力が印加され、これにより摩擦クラッチ127L、127Rが閉止するように構成されていている。
【0152】
コントローラ140は、PTU124がPTC122を閉止する速度と、アクチュエータ127AL、127ARが第一と第二の位置間を移動する速度とを制御し、これにより前述の図1の実施形態と同様な方式で、自動車が二輪駆動と四輪駆動のモード間を移行する速度を制御するように動作可能であることを理解すべきである。
【0153】
図1及び図3に示す動力伝達経路5、105以外の構成もまた有用であることを理解すべきである。
【0154】
この明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲において、「備える(comprise)」、「含む(contain)」及びこれら単語の変形、例えば「備えている(comprising)」及び「備えた(comprises)」は、「含むがこれに限定されない(including but not limited to)」という意味であり、他の部分、付加物、構成要素、数値又は工程等を除外(及び除外しない)することを意図するものではない。
【0155】
この明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数形は複数形を包含するものである。特に、不定冠詞が用いられる場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数のみならず複数をも意図することが理解されるべきである。
【0156】
特定の側面と併せて説明される特徴、数値、特性、化合物、化学的な構成成分又は群は、矛盾のない限り、ここに記載された任意の側面、実施形態又は実施例に適用可能であることが理解されるべきである。
【0157】
この出願は、2011年2月18日付けの英国特許GB1102823.0号明細書の優先権を主張し、その全内容が参照によりここに明示的に組み込まれる。
【符号の説明】
【0158】
1…自動車
5…動力伝達経路
10…補助部
11…内燃エンジン
12、13…前輪
14、15…後輪
17…クラッチ
18…ギア・ボックス
18…トランスミッション
19…前輪駆動シャフト
22…PTC
23…プロップ・シャフト
24…PTU
26…後輪駆動シャフト
27…クラッチ
30…リア・ディファレンシャル
40…コントローラ
43…反応評価器
45…予測評価器
47…コントロール・モジュール
50…ABSシステム
60…DSCシステム
70…TCSシステム
図1
図2
図3