【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲を参照することにより理解できるであろう。本発明の一側面は自動車及び方法を提供することにある。
【0009】
そこに保護が求められる本発明の更なる側面は、
原動機手段と、
一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一及び第二のグループと、
制御手段を用いてトルク伝達通路を原動機手段から一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループに接続するように動作可能な動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時には、第二のグループではなく一つ又は複数の車輪から成る第一のグループがトルク伝達通路に連結され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時には、一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループの両方がトルク伝達通路に連結される動力伝達経路と、を備え、
動力伝達経路は、その補助部により、原動機手段からトルク伝達通路に第二のグループを接続するように動作可能であり、補助部は第一及び第二の解放自在のトルク伝達手段とプロップ・シャフトとを含み、第一の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第一の末端を原動機手段からトルク伝達通路に接続するように動作可能であり、第二の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第二の末端を一つ又は複数の車輪から成る第二のグループに接続するように動作可能であり、
制御手段は、第一のモードにおいて、プロップ・シャフトが原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループの両方から分離されるように、第一及び第二のモードの動作間で動力伝達経路を切り替えるように補助部を制御可能であり、
制御手段は、動力伝達経路が第一のモードと第二のモードの間で移行する場合に、要求された接続速度で原動機手段からトルク伝達通路に一つ又は複数の車輪から成る第二のグループを接続するように補助部を制御可能であり、
動力伝達経路が第一のモードである場合には、制御手段は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能であり、各始動条件はそれぞれ識別性(アイデンティティ)を有し、制御手段は、適合する始動条件の識別性に対応する接続速度で、第一のモードから第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能である自動車が提供される。
【0010】
動力伝達経路の補助部が原動機手段からトルク伝達通路に一つ又は複数の車輪から成る第二のグループを接続する際の速度は、接続動作が行われる期間に関係するように考慮できることを理解すべきである。接続の速度が高ければ高いほど、動力伝達経路による第一のモードから第二のモードに移行する際の動作が動力伝達経路で完了する期間が短くなる。従って、接続速度の基準は、代替的には、接続動作が完了する期間、即ち、第一のモードから第二のモードへの移行が完了する期間になる。完了は、第一及び第二の解放自在のトルク伝達手段が、プロップ・シャフトが原動機手段と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループとからトルク伝達通路に接続される動作が完了することを意味する。解放自在のトルク伝達手段がクラッチ手段を含んでいる場合、完了は、クラッチ手段が十分に(且つ部分的でなく)閉止することを意味すると理解される。
【0011】
従って、制御手段は、適合する始動条件の識別性に対応する長さの期間全体にわたって第一のモードから第二のモードへ移行するように動力伝達経路を制御できる。
【0012】
解放自在のトルク伝達手段がクラッチ又はクラッチ手段を含む、ある実施形態においては、接続速度への言及は、クラッチ又はクラッチ手段の閉止の速度の言及として理解すべきである。ある実施形態においては、接続速度への言及は、十分に閉止するために複数のクラッチ手段に対して行われる合計時間についての言及と理解すべきである。例えば、一つのクラッチ手段の閉止と別のクラッチ手段の閉止との間の時間的遅延が変わると、異なる接続速度になる。ある実施形態においては、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段のうちの一つのクラッチ手段を、別のクラッチ手段を閉止する前にプロップ・シャフトを回転させるために、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段のうちの他のクラッチ手段を閉止する前に閉止することは利点と思われる。これは動力伝達経路の接続動作に伴うノイズや振動及び/又はハーシュネス(NVH)を低減できる。しかし、接続動作を急ぐ場合、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段のクラッチ手段は、各々の閉止動作間に遅延が殆ど又は全くない状態で他と実質的に同時に又は直後に閉止できる。
【0013】
プロップ・シャフトを原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る前述の第二のグループの両方から分離すると、プロップ・シャフトは、自動車が動いている時でも実質的に静止できることを理解すべきである。これは、プロップ・シャフトの回転に伴うエネルギー・ロスが、ある実施形態においては減少又は解消するという利点を有する。
【0014】
ここでいう一つ又は複数の車輪から成るグループとは、一つだけの車輪から成る構成要素を有するグループを含むことを理解すべきである。
【0015】
本発明の実施形態は、自動車がある状況で最適の性能特性を呈する方式で動力伝達経路を制御できるという利点を有する。従って、例えば、自動車が横滑りしている時のように、第二のモードへの移行を更に急ぐ事態において、接続速度は、移行をそれほど急がない事態と比べて速くなるように実施できる(即ち、接続動作がすぐに完了する)。
【0016】
ある実施形態においては、始動条件のセットは、下記の条件から選択された少なくとも一つの条件を含んでいる。
(a)一つ又は複数の車輪に動力伝達経路を経由して送られるトルクの瞬時量が、第一の所定の瞬時トルクの閾値より大きい、
(b)ステアリング・ホイールの角度が、第一の所定の操縦角度の閾値より高い、
(c)操縦自在の主車輪の角度が、第一の所定の操縦自在の主車輪角度の閾値より大きい、
(d)操縦自在の主車輪角度の変化の速度が、第一の操縦自在の主車輪角度速度の閾値を超える、
(e)ステアリング・ホイール角度の変化の速度が、第一の所定のステアリング・ホイール角度速度の閾値を超える、
(f)自動車の横加速度が、第一の所定の横加速度の閾値より大きい、
(g)横加速度の変化の速度が、第一の所定の横加速度の速度の閾値を超える、
(h)スロットル又は加速器のペダル位置の値が、第一の所定のスロットル又は加速器ペダル位置の閾値より大きい、
(i)スロットル又は加速器ペダル位置の変化の速度が、第一の所定のスロットル又は加速器の速度の閾値より大きい、
(j)運転手要求トルクが、第一の所定の運転手要求トルクの閾値より大きい、
(k)原動機手段のトルクが、第一の所定の原動機手段のトルク閾値より大きい、
(l)ホイール・スリップの大きさが第一の所定のホイール・スリップの閾値より大きい、
(m)自動車の加速度が、第一の所定の自動車の加速度の閾値より大きい、
(n)自動車の減速度が、第一の所定の自動車の減速度の閾値より大きい、
(o)自動車のヨー・レートが、第一の所定のヨー・レートの閾値より大きい、
(p)ヨー・レート・エラーが、第一の所定のヨー・レート・エラーの閾値より大きい、
(q)手動又は自動ギア・シフト・コントロールが、一つ又は複数の所定のギア・シフト位置の値のうちの一つの第一のセットのひとつにセットされている、
(r)動作温度が、第一の所定の動作温度の閾値より低い、
(s)周囲温度が、第一の所定の周囲温度の閾値より低い、
(t)自動車の構成部品の温度が、第一の構成部品の温度閾値より低い、
(u)自動車の流体の温度が第一の流体の温度閾値より低い、
(v)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より低い、
(w)補助の動力伝達経路の流体の温度が、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より低い、
(x)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の高温閾値より高い、
(y)補助の動力伝達経路の流体の温度は、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の流体の高温閾値より高い、
(z)自動車の速度が、第一の所定の自動車の速度閾値より低い、
(a1)自動車は、一つ又は複数の自動車動作プログラムの一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を始めた、
(b1)走行表面の粗度が、第一の所定の表面粗度の閾値を超えている、
(c1)自動トランスミッションの現在の又は狙いとするギアが、一つ又は複数のギア値のものの第一のセットの一つにセットされている、
(d1)ブレーキ・ペダル位置の値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい、
(e1)ブレーキの圧力値が、第一の所定のブレーキ圧力の閾値より大きい。
【0017】
従って、自動車が、動力伝達経路の第二のモードの動作が永久に必要とされずに、運転手が、動力伝達経路の第二のモードの動作が永久に必要とされる(オフ−ロード・モードのような)自動車動作モードを選択している、自動車プログラムに基づいて動作している場合、動力伝達経路は、第二のモードの動作を自動的に設定するように構成される。
【0018】
ある実施形態においては、自動車は、運転手が選択自在な動作の自動車プログラムを複数有し、二つ以上の始動条件のセットは、自動車が所定の自動車プログラムに基づいて動作する要件を含む。
【0019】
ある実施形態において、接続速度は自動車の速度に対応し、接続速度は、車両速度の増加に応じて増加するように構成される。
【0020】
即ち、第一のモードから第二のモードへの移行を完了するために必要な時間は、車両速度の増加に応じて減少するように構成される。
【0021】
この特徴には、自動車(又は運転手)が第二のモードを選択すると、自動車は高い自動車速度で瞬時に第二のモードを設定するという利点がある。これは、比較的高速で移動する時に、例えば、横滑りの際に第二のモードが設定されると、第二のモードは自動車がゆっくりと移動している場合よりも素早く設定されるという利点を有する。
【0022】
更に、この特徴には、高い接続動作速度の長所を、NVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)特性が著しく低下せずに入手できるという利点がある。これは、高い接続速度が、第二の1組の車輪の接続に起因するNVHが自動車の移動速度のために周囲の自動車のノイズと振動とで遮蔽される、高速の自動車の速度で採用されたからである。
【0023】
原動機手段は使用時に回転するように構成され、接続速度は原動機手段の回転速度に対応し、接続速度は、原動機手段の回転速度の増加に応じて増加するように構成される。
【0024】
これは、原動機手段が運転手のトルク要請又はスロットル入力に応答するために時間がかかりそうな場合(従って、接続速度の低下は運転手が気付かないほど小さい)において(エンジン速度のような)低速の原動機手段の速度で減速された速度が採用されるため、接続がなされる際に生じる構成部品の摩耗量が減少するという利点がある。低減されたノイズと振動は、自動車の性能を大きく低下しないので運転手も快適である。前述のように、原動機手段の応答時間が、低速の原動機手段の速度で増加するためである。
【0025】
原動機手段の応答時間の増加は、例えば、ターボチャージ付きエンジンのターボ遅れに起因して発生し得る。
【0026】
しかしながら、原動機手段のノイズ・レベルが増加する高速の原動機手段の速度で、高い接続速度が、自動車のNVH特性を著しく減少せずに採用され得る。
【0027】
ある実施形態において、接続速度は、自動車の横加速度の大きさに対応する。
【0028】
ある実施形態において、接続速度は、自動車の横加速度の増加に応じて増加するように構成される。
【0029】
この特徴には、横加速度が閾値(例えば、自動車の横滑りの可能性を示す値)を超えて検出されると、自動車は、横滑り又は更なる横滑りを防止するために、横加速度の大きさが閾値より低い場合よりも高い速度で、第二のセットの車輪を原動機手段に接続するように構成されるという利点がある。
【0030】
この特徴には、運転手が自ら気づく状況の深刻さに、接続速度が対応するという利点がある。従って、激しい横加速度が検出される場合は、比較的穏やかな横加速度が検出される状況と比べて、自動車が第二の1組の車輪を原動機手段により早く接続するように構成される。
【0031】
ある実施形態においては、横加速度の大きさが閾値を超える場合に、制御手段が、横加速度の大きさが閾値を超えない場合よりも早い接続速度で、原動機手段に第二の組の車輪を接続するように、動力伝達経路を制御するように構成される。
【0032】
ある実施形態において、接続速度は、自動車のオーディオ・システムのボリュームに対応している。
【0033】
ある実施形態において、接続速度は、オーディオ・システムのボリュームの増加に応じて増加するように構成される。
【0034】
第二のモードへの移行に伴うNVHの大きな値は、オーディオ・システムのボリュームが増加するにつれて、自動車のオーディオ・システムで遮蔽できることを理解すべきである。これは、自動車の乗員が認知できるほどNVHが著しく増加せずに、ボリュームが増加するので、第二のモードへの更なる素早い移行が可能になる。
【0035】
随意には、ボリュームは、ユーザが選択したボリュームである。
【0036】
代替的には、ボリュームは、接続行為が要求されたときに、オーディオ・システムから発せられるサウンドの実際のボリュームである。
【0037】
ある実施形態においては、二つ以上の始動条件のセットは、少なくとも、一つ又は複数の条件からなる第一のサブセットと、一つ又は複数の条件からなる第二のサブセットとを含み、動力伝達経路は、第一のサブセットの条件が適合する場合に、第二のサブセットの条件に適合するが第一のサブセットの条件には適合しない場合よりも速い接続速度で第二のモードを設定するように構成される。
【0038】
この特徴は、接続動作速度が、第二のモードへの移行を始動する際の型式及び/又は過酷さに対応しているので、自動車が出会う状況に適応できるという利点がある。
【0039】
ある実施形態において、条件の第一のサブセットは、下記の条件から選択された少なくとも一つの条件を含んでいる。
(a)一つ又は複数の車輪に動力伝達経路を経由して送られるトルクの瞬時量が、第一の所定の瞬時トルクの閾値より大きい、
(b)ステアリング・ホイールの角度が、第一の所定の操縦角度の閾値より高い、
(c)操縦自在の主車輪の角度が、第一の所定の操縦自在の主車輪角度の閾値より大きい、
(d)操縦自在の主車輪角度の変化の速度が、第一の操縦自在の主車輪角度の速度の閾値を超える、
(e)ステアリング・ホイール角度の変化の速度が、第一の所定のステアリング・ホイール角度速度の閾値を超える、
(f)自動車の横加速度が、第一の所定の横加速度の閾値より大きい、
(g)横加速度の変化の速度が、第一の所定の横加速度の速度の閾値を超える、
(h)スロットル又は加速器のペダル位置の値が、第一の所定のスロットル又は加速器ペダル位置の閾値より大きい、
(i)スロットル又は加速器ペダル位置の変化の速度が、第一の所定のスロットル又は加速器速度の閾値より大きい、
(j)運転手要求トルクが、第一の所定の運転手要求トルクの閾値より大きい、
(k)原動機手段のトルクが、第一の所定の原動機手段のトルク閾値より大きい、
(l)ホイール・スリップの大きさが第一の所定のホイール・スリップの閾値より大きい、
(m)自動車の加速度が、第一の所定の自動車の加速度の閾値より大きい、
(n)自動車の減速度が、第一の所定の自動車の減速度の閾値より大きい、
(o)自動車のヨー・レートが、第一の所定のヨー・レートの閾値より大きい、
(p)ヨー・レート・エラーが、第一の所定のヨー・レート・エラーの閾値より大きい、
(q)ブレーキ・ペダル位置の値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい、
(r)ブレーキ・ペダル圧力値が、第一の所定のブレーキ・ペダル位置の閾値より大きい。
【0040】
ある実施形態において、条件の第二のサブセットは、下記の条件から選択された少なくとも一つの条件を含んでいる。
(a)手動又は自動ギア・シフト・コントロールが、一つ又は複数の所定のギア・シフト位置の値のうちの一つの第一のセットの一つにセットされている、
(b)動作温度が、第一の所定の動作温度の閾値より低い、
(c)周囲温度が、第一の所定の周囲温度の閾値より低い、
(d)自動車の構成部品の温度が、第一の構成部品の温度閾値より低い、
(e)自動車の流体の温度が第一の流体の温度閾値より低い、
(f)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より低い、
(g)補助の動力伝達経路の流体の温度が、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より低い、
(h)補助の動力伝達経路の構成部品の温度が、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の構成部品の高温閾値より高い、
(i)補助の動力伝達経路の流体の温度は、第一の所定の動力伝達経路の流体の低温閾値より高い、第一の所定の動力伝達経路の流体の高温閾値より高い、
(j)自動車の速度が、第一の所定の自動車の速度閾値より低い、
(k)自動車は、一つ又は複数の自動車動作プログラムの一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を始めた、
(l)走行表面の粗度が、第一の所定の表面粗度の閾値を超えている、
(m)自動トランスミッションの現在の又は狙いとするギアが、一つ又は複数のギア値のものの第一のセットの一つにセットされている。
【0041】
自動車が一つ又は複数の自動車動作プログラムから成る一つ又は複数の所定のセットに基づいて動作を始める条件(条件(k))は、例えば、運転手が所定の動作プログラムを選択する場合、又は所定の動作プログラムが自動車により自動的に設定される場合に適合され得る。
【0042】
ある実施形態において、動力伝達経路は、反応評価器と予測評価器の出力に対応して第二のモードを設定するように構成されており、
反応評価器の出力は、車輪スリップの量が第一の所定の閾値を超えたかどうかについての判断に対応し、
予測評価器の出力は、車輪スリップの量が第一の所定の閾値以下である時に、車輪スリップの量が第二の所定の閾値を超えようとしていることを示す、一つ又は複数の自動車動作パラメータに関する一つ又は複数の条件に適合するという判断に対応する。
【0043】
ある実施形態において、第二のサブセットの条件は、予測評価器の出力が、第二のモードの動作を設定すべきことを示す条件を含んでいる。
【0044】
ある実施形態において、第一のサブセットの条件は、反応評価器の出力が、第二のモードの動作を設定すべきことを示す条件を含んでいる。
【0045】
従って、予測評価器が第二のモードの動作を設定すべきことを予測すると、動力伝達経路は、低い速度で第二のモードの動作を設定するように構成される。これは、動力伝達経路の構成部品の摩耗量と、自動車が第二のモードを設定する時に生じたNVHの量は、自動車が高い速度で第二のモードを設定することを動力伝達経路に要求する事態を予測せず且つこのような事態が引き続き発生する、状況と比べると減少するという利点がある。このような事態が引き続き発生し、自動車が高い速度で第二のモードを設定する結果になると、自動車の構成部品の摩耗量が増加し、自動車のNVH特性が低下する。これらの事態は、自動車の動作中では可能な限り避けるべきである。
【0046】
ある実施形態においては、予測評価器は、一つ又は複数の自動車動作パラメータの値に基づいて、所定の期間内で発生する第一のセットの条件のうちの一つの可能性を定めるように構成される。
【0047】
ある実施形態においては、反応評価器は高い速度で第二のモードへの移行を要請する信号だけを出力するように構成され、予測評価器は高速度又は低速度のいずれかで第二のモードへの移行を要請する信号を出力するように構成される。
【0048】
ある実施形態においては、原動機手段はエンジンを含み、加速器ペダル位置とエンジン速度と現在選択中のギアのうちの少なくとも一つに関して所定の条件に適合し、第二のモードへの移行を実施すべきであると予測評価器が判断すると、予測評価器が、比較的速い移行を要請する信号を出力するように構成される。
【0049】
所定の条件に適合しない場合、予測評価器が第二のモードへの移行を実施すべきと判断すると、予測評価器が比較的遅い移行を要請する信号を出力するように構成される。
【0050】
一部の構成では、自動車が所定のギアにあり且つエンジン速度が所定の速度を超える時に、加速器ペダル位置が所定の位置を超えると、予測評価器が比較的高い速度で移行を要請するように構成される。例えば、エンジン速度が毎分3000回転(rpm)又は任意の他の適切な数値を超える場合である。
【0051】
臨界スロットル位置は、選択したギアに伴って変わる。例えば、臨界位置は、第一のギア時で70%の低下、第二のギア時で80%の低下、第三のギア時で95%の低下になる。他の低下値も有用である。
【0052】
随意には、接続速度は過去の接続速度の経歴に対応し、制御手段は、第一のモードから第二のモードへの移行が必要になる時に、制御手段が必要な接続速度を決定できる過去の接続事象実態に付随したデータを保存するように構成される。
【0053】
ある実施形態において、データは、一つ又は複数の過去の接続事象中に設定した接続の速度と、一つ又は複数の過去の接続事象を始動する始動条件の識別性と、一つ又は複数の過去の接続事象が発生した時の一つ又は複数の自動車動作パラメータの値とのうちから選択された少なくとも1つに対応している。
【0054】
これには、ユーザの運転スタイル又は自動車を用いる環境の条件に適応するように構成できるという利点がある。従って、自動車が滑りやすい道路条件が存在し且つ自動車が横滑りのために四輪駆動モードを頻繁に設定する環境にある場合、自動車は、第二のモードへの移行が、第二のモードへの移行を始動できる一つ又は複数の条件に対して、例えば、比較的ゆっくりした速度で動力伝達経路接続を始動することが日常発生する条件に対して生じる速度を増加するように構成できる。他の構成も有用である。
【0055】
ある実施形態において、制御手段は、自動車が走行している表面の摩擦の係数に対応する速度で第二のモードを設定するために、動力伝達経路を制御するように構成される。
【0056】
随意には、動力伝達経路は、自動車が走行している表面の摩擦に関して予測した係数に対応する速度で、第二のモードを設定するように構成される。
【0057】
随意には、動力伝達経路は、第二のモードへの移行を始動する始動条件の識別性にかかわらず、実質的に一定の速度で、第二のモードから第一のモードを設定するように構成される。
【0058】
ある実施形態において、制御手段は、第一のモードから第二のモードへの移行が第一のサブセットの条件に適合する時に行われる速度より小さい速度で、第一のモードに第二のモードから移行するために、動力伝達経路を制御するように構成される。
【0059】
これには、NVH特性が増加し且つ構成部品の摩耗量が第一のモードへの移行が行われる時に減少されるという利点がある。
【0060】
ある実施形態においては、第一のモードにおいて、動力伝達経路は、一つ又は複数の自動車動作パラメータの値が所定値より大きい又は小さい時に第二のモードに移行するように動作可能であり、動力伝達経路は、第二のモードへの移行が行われる時の自動車動作パラメータの値と所定値との差に対応する速度で、第二のモードに移行するように構成される。
【0061】
ある実施形態においては、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方は、接続動作を行うように構成された一つ又は複数のアクチュエータを含み、接続動作の速度は、一つ又は複数のアクチュエータの移動の速度に依存する。
【0062】
ある実施形態においては、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方は、接続動作を行うように構成された複数のアクチュエータを含む。
【0063】
ある実施形態においては、第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の一方又は両方のアクチュエータのうちの少なくとも二つは、時間的に異なる各々の瞬間で作動するように構成され、接続動作の速度は、各々のアクチュエータの作動間で経過する時間の長さに依存する。
【0064】
随意には、第一の解放自在のトルク伝達手段は少なくとも第一のアクチュエータを含み、第二の解放自在のトルク伝達手段は少なくとも第一のアクチュエータを含み、接続速度は第一と第二の解放自在のトルク伝達手段の各々のアクチュエータの作動間で経過する時間の長さに依存する。
【0065】
ある実施形態において、原動機手段は、エンジンと電気マシンとのうちから選択された少なくとも一つを含む。
【0066】
原動機手段は、エンジンと電気マシンとを含むことができる。
【0067】
エンジンは、内燃エンジンでもよい。
【0068】
保護が要求される本発明の更なる側面において、自動車を制御するための方法が提供され、自動車は下記を備える。
原動機手段と、
一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一及び第二のグループと、
制御手段を用いてトルク伝達通路を原動機手段から一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループに接続するように動作可能な動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時には、第二のグループではなく一つ又は複数の車輪から成る第一のグループがトルク伝達通路に連結され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時には、一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループの両方がトルク伝達通路に連結される動力伝達経路と、を備え、
動力伝達経路は、その補助部により、原動機手段からトルク伝達通路に第二のグループを接続するように動作可能であり、補助部は第一及び第二の解放自在のトルク伝達手段とプロップ・シャフトとを含み、第一の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第一の末端を原動機手段からトルク伝達通路に接続するように動作可能であり、第二の解放自在のトルク伝達手段はプロップ・シャフトの第二の末端を一つ又は複数の車輪から成る第二のグループに接続するように動作可能であり、
本方法は、第一のモードにおいて、プロップ・シャフトが原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループの両方から分離されるように第一及び第二のモードの動作間で動力伝達経路を切り替えるように補助部を制御することを含み、
本方法は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御することを含み、各始動条件はそれぞれ識別性を有し、本方法は、適合する始動条件の識別性に対応する接続速度で、第一のモードから第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御することを含む。
【0069】
保護が要求される本発明の更なる側面においては、
原動機と、
一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一と第二のグループと、
制御手段を用いてトルク伝達通路を原動機手段から一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループに接続するように動作可能な動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時には、第二のグループではなく一つ又は複数の車輪から成る第一のグループがトルク伝達通路に連結され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時には、一つ又は複数の車輪から成る第一及び第二のグループの両方がトルク伝達通路に連結される動力伝達経路と、を備え、
動力伝達経路は、その補助部により原動機手段からトルク伝達通路に第二のグループを接続するように動作可能であり、補助部は第一と第二のクラッチ手段とプロップ・シャフトとを含み、第一のクラッチ手段はプロップ・シャフトの第一の末端をトルク伝達通路に原動機手段から接続するように動作可能であり、第二のクラッチ手段はプロップ・シャフトの第二の末端を一つ又は複数の車輪から成る第二のグループに接続するように動作可能であり、
制御手段は、第一のモードにおいて、プロップ・シャフトが原動機手段からのトルク伝達通路と一つ又は複数の車輪から成る第二のグループの両方から分離されるように、第一及び第二のモードの動作間で動力伝達経路を切り替えるように補助部を制御可能であり、
制御手段は、動力伝達経路が第一のモードと第二のモードの間で移行する場合に、要求された接続速度で原動機手段からトルク伝達通路に一つ又は複数の車輪から成る第二のグループを接続するように補助部を制御可能であり、
動力伝達経路が第一のモードである場合には、制御手段は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能であり、各始動条件はそれぞれ識別性を有し、制御手段は、適合する始動条件の識別性に対応する接続速度で、第一のモードから第二のモードに移行するように動力伝達経路を制御可能である自動車が提供される。
【0070】
保護が要求される本発明の一側面においては、自動車であって、原動機と、一つ又は複数の車輪から成る少なくとも第一と第二のグループと、原動機を一つ又は複数の車輪から成る第一と第二のグループに接続するための動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時に一つ又は複数の車輪から成る第一のグループが原動機により駆動され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時に、一つ又は複数の車輪から成る第二のグループが原動機により駆動される動力伝達系路と、を備え、動力伝達経路は、動力伝達経路が第一のモードと第二のモードの間で移行する場合に、所定の速度で1又は複数の車輪から成る第二のグループを原動機に接続するように動作可能な開放自在のトルク伝達手段を備える補助動力伝達経路を含み、第一のモードにおいて、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の始動条件の第一のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように動力伝達経路が動作可能であり、接続の速度が適合する条件の識別性に対応する、自動車が提供される。
【0071】
保護が要求される本発明の一側面においては、自動車を制御する方法が提供され、自動車は、原動機と、車輪から成る少なくとも第一と第二のグループと、原動機を第一と第二のグループに接続するための動力伝達経路であって、動力伝達経路が第一のモードの動作である時に車輪から成る第一のグループが原動機により駆動され、動力伝達経路が第二のモードの動作である時に車輪から成る第二のグループが原動機により駆動される動力伝達経路と、を備え、動力伝達経路は、動力伝達経路が第一のモードと第二のモードの間で移行する場合に、原動機手段から1又は複数の車輪から成る第二のグループを接続及び分離するように動作可能な開放自在のトルク伝達手段を備える補助動力伝達経路を含み、その方法は、一つ又は複数の自動車動作パラメータについて二つ以上の条件の第一のセットのうちの一つに適合する時に第二のモードに移行するように、動力伝達経路を制御することを第一のモードで含み、その方法は適合する条件の識別性に対応して接続の速度を制御することを更に備える、自動車を制御する前述の方法が提供される。
【0072】
本出願の範囲内において、上述の段落と特許請求の範囲及び/又は以下に詳細な説明と図面とに記載されている種々の側面、実施形態、実施例、代替物、特にそれらの特徴は、独自に又はその任意の組み合わせにおいて実施できることが想定される。例えば、ある実施形態に関連して説明した特徴は、このような特徴が相反することが無い限り、全ての実施形態に適用できる。