特許第5763221号(P5763221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763221エチレン−ビニルアルコール系熱可塑性エラストマーおよび加硫物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763221
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】エチレン−ビニルアルコール系熱可塑性エラストマーおよび加硫物
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20150723BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20150723BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20150723BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20150723BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20150723BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20150723BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C08L29/04 S
   C08L23/16
   C08L23/22
   C08L23/06
   C08L21/00
   C08L53/00
   B60C5/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-556612(P2013-556612)
(86)(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公表番号】特表2014-511419(P2014-511419A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】US2011063555
(87)【国際公開番号】WO2012118546
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2013年8月29日
(31)【優先権主張番号】13/039,476
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ サニー
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−029727(JP,A)
【文献】 特開2004−189916(JP,A)
【文献】 特開2007−211059(JP,A)
【文献】 特開2002−060500(JP,A)
【文献】 特開平10−001579(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00703279(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 29/04
C08L 23/16
C08L 23/22
C08L 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)を含む熱可塑性樹脂と、
前記樹脂に分散したブチルゴム、ハロブチルゴムおよびそれらの混合物から選択される硬化ゴムを含むエラストマーと、
飽和ゴムを含むEVOH−ゴム相溶化剤と、
硬化剤と
を含む、熱可塑性加硫物。
【請求項2】
エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)を含む熱可塑性樹脂と、
エチレン−プロピレン−ジエンゴム及びポリプロピレンを含むエラストマーと、
ポリエチレンを含むEVOH−ゴム相溶化剤と、
硬化剤と
を含む、熱可塑性加硫物。
【請求項3】
EVOHが、20〜50モルパーセントのエチレンおよび少なくとも90パーセントの鹸化を含む、請求項1又は2に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項4】
ポリエチレン相溶化剤が、直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレンまたはそれらの組合せをさらに含んでもよい、請求項2に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項5】
空気タイヤまたはホースにおける空気バリア層として形成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱可塑性加硫物。
【請求項6】
請求項1に記載の熱可塑性加硫物であって、
ブチルゴム、ハロブチルゴムおよびそれらの組合せから選択される、100重量部の硬化性エラストマーと、
10〜100重量部の熱可塑性エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)と、
30〜40重量部の相溶化剤としての、エラストマー性スチレン−イソブチレンブロックコポリマーまたはエラストマー性水素化スチレンブロックコポリマーと、
硬化剤とを含み、
加硫物の10〜30重量%のイソブチレンおよびn−ブテンのオリゴマーを含んでもよく、
0〜60重量部の充填剤を含んでもよく、
加硫物の0.05〜5重量%のシリコーン流体を含んでもよい、
熱可塑性加硫物。
【請求項7】
請求項2に記載の熱可塑性加硫物であって、
エチレン−プロピレン−ジエンゴムおよびポリプロピレンを含むエラストマーと、
熱可塑性加硫物の総重量を基準として10〜50%の、
(i)熱可塑性加硫物の5〜40重量%を占める熱可塑性エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ならびに
(ii)熱可塑性加硫物の10〜45重量%の、ポリエチレンと、
硬化剤とを含み、
エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびポリプロピレンワックスを含んでもよい、熱可塑性加硫物。
【請求項8】
10〜30重量%の直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項7に記載の熱可塑性加硫物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善されたガスバリア特性を有する、熱可塑性エラストマー(TPE)、および当該技術分野において動的加硫合金(DVA)としても知られる熱可塑性加硫物(TPV)に関する。
【背景技術】
【0002】
空気タイヤにおけるガスバリア層として有用な熱可塑性エラストマー組成物は、周知である。例えば、EP722850B1は、ポリアミドまたはポリアミドのブレンド等の低透過性熱可塑性マトリックス中に分散した、以下でBIMSと呼ばれる臭素化ポリ(イソブチレン−co−パラメチルスチレン)等の低透過性ゴムを含む低透過性熱可塑性エラストマー組成物を開示している。
改善されたコアリング(coring)特性を有する熱可塑性加硫物は、例えばUS6946522から知られており、これは、熱可塑性ポリプロピレン樹脂、加硫ブチルゴム、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)ブロックコポリマーおよびポリブテン油可塑剤のブレンドを開示している。
改善されたバリア特性を有する熱可塑性加硫物は、例えばUS7060753から知られており、これは、高メルトフローインデックス熱可塑性オレフィン樹脂、ブチルゴムならびにイソブチレンおよびブテンのオリゴマーの組成物を開示している。
エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)は、優れたガスバリア特性を有することが知られている。日本国特許出願第7−55929号には、ポリエチレンテレフタレートおよびビニルアルコール−エチレンコポリマー(PET/EVOH)等の熱可塑性樹脂系ブレンドで構成される、低ガス透過性能を示すある特定の組成物であって、成形により1種の熱可塑性樹脂が他の層上に重ねられて複数の層を形成している組成物が開示されている。しかしながら、これらの材料は熱可塑性樹脂/熱可塑性樹脂ブレンドであるため、それらは、一方ではガスバリア性能に優れているものの、柔軟性に欠け、したがってそのようなフィルムは、大きな応力および屈曲に曝される車両用タイヤに使用されると破壊される。
US2008/0314490には、シラン系カップリング剤を含むジエン系ゴム層に結合したEVOH層を含有する低透過性ゴムラミネートが開示されている。EVOH層は、ガスバリア特性を付与するために十分厚くなければならないが、低い伸張屈曲疲労を回避するために十分薄くなければならない。
熱可塑性エラストマーおよび動的加硫熱可塑性バリアフィルムのバリア特性を改善すること、ならびに/またはバリア層においてEVOHを使用したフィルムの機械的特性を改善することが、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、熱可塑性エラストマー(TPE)または熱可塑性加硫物(TPV)は、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)と、その中に分散したゴム成分と、EVOH−ゴム相溶化剤とを含む。
一実施形態において、TPEまたはTPV中の熱可塑性エラストマー組成物は、連続相中のEVOHを含む熱可塑性樹脂と、分散相としてその中に分散したゴム組成物とを含み、ゴム組成物は、硬化したまたは硬化性エラストマーを含む。
一実施形態において、EVOHは、20〜50モルパーセントのエチレンおよび少なくとも90パーセントの鹸化を含む。一実施形態において、TPVは、ジエン系ゴムを含む。別の実施形態において、ゴムは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレン−co−p−メチルスチレンゴム、およびそれらの混合物から選択される。
【0004】
具体的実施形態において、ゴムは、イソブチレン誘導ゴム、およびその混合物から選択され、EVOH−ゴム相溶化剤は、例えば水素化スチレンブロックコポリマー、水素化スチレンブロックコポリマー等の飽和ゴムを含む。
別の具体的実施形態において、ゴムは、EPDMを含み、EVOH−ゴム相溶化剤は、例えば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンを含み、また別の実施形態において、EVOH−ゴム相溶化剤は、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリプロピレンまたはそれらの組合せをさらに含み得る。
様々な実施形態において、TPVは、充填剤、硬化系、シリコーン流体、可塑剤またはそれらの任意の組合せをさらに含み得る。別の実施形態において、TPVは、液体ポリブテンをさらに含み得る。
別の実施形態において、TPVは、空気タイヤにおける空気バリア層として形成される。別の実施形態において、タイヤインナーライナーは、本明細書に記載のTPVを含む。さらなる実施形態において、ホースは、本明細書に記載のTPVを含む層と共押出しされたエラストマー層を含む。
別の実施形態において、熱可塑性エラストマーは、(i)ブチルゴム、ハロブチルゴムおよびそれらの組合せから選択される、100重量部の硬化性エラストマーと、(ii)10〜100重量部の熱可塑性エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)と、(iii)約30〜約40重量部のエラストマー性スチレン−イソブチレンブロックコポリマーまたはエラストマー性水素化スチレンブロックコポリマーと、(iv)硬化性エラストマー用硬化パッケージとを含む。一実施形態において、熱可塑性エラストマーはまた、組成物の約10〜約30重量%のイソブチレンおよびn−ブテンのオリゴマー、0〜約60重量部の充填剤、組成物の約0.05〜約5重量%のシリコーン流体、またはそれらの組合せを含んでもよい。
【0005】
一実施形態において、エラストマー性水素化スチレンブロックコポリマーが存在し、水素化スチレンブロックコポリマーは、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン)(SEP)、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)(SEPS)、水素化ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SEBS)、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン/ブタジエン−b−スチレン)(SEEPS)、およびそれらの組合せから選択される。一実施形態において、熱可塑性加硫物は、熱可塑性エラストマーを動的に加硫することにより得られる。
別の実施形態において、熱可塑性エラストマー組成物は、(a)エチレン−プロピレンゴムおよびポリプロピレンを含む熱可塑性加硫物と、(b)熱可塑性エラストマー組成物の総重量を基準として15〜50パーセントの、(i)熱可塑性エラストマー組成物の5〜40重量%を占める熱可塑性エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)ならびに(ii)熱可塑性エラストマー組成物の10〜45重量%の、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびポリプロピレンワックスのうちの1種または複数を含む改質剤とを含む。一実施形態において、熱可塑性エラストマーは、10〜30重量%の直鎖状低密度ポリエチレンを含む。さらなる実施形態において、改質剤は、組成物の1〜5重量%のポリプロピレン−EVOHリグラインド安定剤をさらに含む。
【0006】
一実施形態において、熱可塑性エラストマー組成物は、(a)エチレン−プロピレンゴムおよびポリプロピレンの混合物を動的に加硫して、熱可塑性加硫物を得るステップ、ならびに(b)ステップ(a)からの熱可塑性加硫物を、EVOHおよび改質剤と溶融混合するステップにより調製される。
別の実施形態において、熱可塑性樹脂、ゴムおよび硬化パッケージを組み合わせるステップと、組合せを動的に加硫してTPVを形成するステップとを含む熱可塑性加硫物を調製する方法における改善が提供される。改善は、EVOHおよびEVOH−エラストマー相溶化剤をTPVに組み込んで、ガスバリア特性を改善するステップを含む。一実施形態において、EVOHは、動的加硫ステップ中に熱可塑性樹脂に組み込まれ、加硫後の溶融混合ステップにおいて別のEVOHがTPVに組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の好ましい用途は、タイヤインナーライナーおよび他の物品におけるバリアフィルム用の熱可塑性エラストマー組成物に関し、より具体的には、優れた耐久性、ならびに空気等の流体および液体の不透過性を示す熱可塑性エラストマー組成物に関する。好ましい組成上の特徴は、概して連続的な熱可塑性マトリックス中に分散した加硫粒子の形態での、分散エラストマーの向上または最大化された含量に関する。さらに、本発明の特に好ましい態様は、微小サイズ粒子を含むゴムドメインを提供することができる熱可塑性エラストマー組成物の生成に好適な効率的混合プロセスに関し、そのようなドメインはまた一方で伸張性および弾性が高い。
好ましいエラストマーは、低い透過性を示し、好ましくは、ブチルゴム、ハロブチルゴム、スチレン−イソブチレン−スチレン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、または別のもしくは他のポリマーとのそれらのブレンド等の、ジエン系ゴム等のポリマーである。一実施形態において、ゴムは、好ましくは、ハロゲン化イソブチレン誘導エラストマー等のポリマーであり、特に好ましくは、臭素化イソブチレン誘導エラストマー、特に臭素化パラメチルスチレン−co−イソブチレンポリマーであり、特に好ましくは、高含量のブロモパラメチルスチレンを示すブロモブチルエラストマーであり、また好ましくは、市販のブロモブチルエラストマー、または、上述の臭素化エラストマーの1種または複数種との互いの、もしくは他のポリマーとのブレンドである。
【0008】
特許請求の範囲を含む明細書全体を通して、以下の用語は、示される意味を有するものとする。
「オリゴマー」という用語は、本明細書において、一般に認められている意味で、数個のみのモノマー単位からなるポリマー分子、すなわち二量体、三量体または四量体を定義するものとして使用される。
ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、ターポリマー等を示すように使用され得る。同様に、コポリマーは、少なくとも2種のモノマーを含むポリマーを示し得るが、他のモノマーを含んでもよい。全分子量は、別段に指定されない限り、重量平均である。
ポリマーがモノマーを含むものとして示される場合、モノマーは、重合された形態でまたは誘導体の形態でポリマー中に存在する。しかしながら、参照し易いように、「(それぞれの)モノマーを含む」または同様の語句が、省略表現として使用される。同様に、触媒成分が中性の安定な形態の成分を含むものとして説明される場合、当業者には、成分の活性形態が、モノマーと反応してポリマーを形成する形態であることが十分理解される。
【0009】
イソオレフィンは、同じ炭素上に2つの置換を有する任意のオレフィンモノマーを示す。
マルチオレフィンは、2つの二重結合を有する任意のモノマーを示す。好ましい実施形態において、マルチオレフィンは、イソプレン等の共役ジエン等の、2つの共役二重結合を含む任意のモノマーである。別の好ましい実施形態において、マルチオレフィンは、2つの非共役二重結合を含む任意のモノマーである。
単数または複数のエラストマーは、本明細書において使用される場合、ASTM D1566の定義に一致する任意のポリマーまたはポリマーの組成物を示す。この用語は、「ゴム」という用語と交換可能に使用され得る。
置換は、化学化合物または構成物質の少なくとも1個の水素の置換を示す。
本明細書において言及されるポリマーおよび/またはエラストマーに関して、「硬化」、「加硫」または「架橋」という用語は、例えば鎖延長中におけるような結合、またはポリマーもしくはエラストマーを含むポリマー鎖間の架橋(そのようなプロセスに供されるエラストマーが、タイヤが使用される際の、硬化反応から得られる必要な機能的特性を提供し得る程度までの)の形成を含む化学反応を示す。本発明の目的において、エラストマー含有組成物が「硬化」、「加硫」または「架橋」されたとみなされるために、そのような硬化反応が完全に完了する必要はない。例えば、本発明の目的において、本発明に基づくインナーライナー層組成物を含むタイヤは、その組成物が一成分であるタイヤが製造中および製造後に必要な製品仕様試験に合格し、車両において使用される際に満足な性能を発揮すれば、十分に硬化されている。さらに、追加的な硬化時間により追加的な架橋が生成され得た場合であっても、タイヤが使用することができれば、組成物は、満足に、十分に、または実質的に硬化、加硫または架橋されている。
熱可塑性エラストマー(TPE)は、一般的に、従来のゴムとは異なり、熱可塑性材料のように処理およびリサイクルされ得るゴム状材料と定義され得る(ASTM D1566)。TPEが加硫ゴムを含有する場合、TPEはまた、動的加硫により生成される化学的に架橋したゴム様相を有するTPEと定義される熱可塑性加硫物(TPV)と呼ぶこともできる(ASTM D1566)。
【0010】
本明細書において使用される場合、TPEおよびTPVという用語は、熱可塑性樹脂およびゴムのブレンドを示す。そのような材料は、弾性の特徴を有し、すなわち、それらは、大きな変形から迅速および強制的に回復することができる。このゴム様挙動の1つの基準は、材料が、室温でその元の長さの2倍まで伸長され、解放されるまで1分間保持された後、1分以内にその元の長さの1.5倍未満まで収縮することである(ASTM D1566)。別の基準は、引張永久歪みの測定のためのASTM D412に見られる。材料はまた、高い弾性回復を特徴とし、これは変形後の回復率を示し、圧縮後のパーセント回復率として定量化され得る。完全弾性材料は100%の回復率を有し、一方完全組成材料は弾性回復を有さない。さらに別の基準は、圧縮永久歪みの測定のためのASTM D395に見られる。
一実施形態において、TPEおよび特にTPVは、熱可塑性相中のエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)と、その中に分散した硬化ゴムと、熱可塑性成分相および硬化ゴム相の両方と相溶性のまたは別様には熱可塑性成分相と硬化ゴム相との間の相溶性を改善する相溶化剤とを含む。
【0011】
熱可塑性成分−エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)
一実施形態において、熱可塑性成分は、エチレンビニルアルコールコポリマーを含む。一実施形態において、EVOHは、20〜50モルパーセントの重合エチレン成分比率、および90%以上の加水分解度を有する。実施形態において、EVOHは、30mol%〜50mol%のエチレン含量、30mol%〜40mol%のエチレン含量、30mol%〜34mol%のエチレン含量、34mol%〜36mol%のエチレン含量、36mol%〜40mol%のエチレン含量、40mol%〜46mol%のエチレン含量、46mol%〜50mol%のエチレン含量を有するか、またはそれらの混合等である。
【0012】
一般に、より高いエチレン含量は、より大きな柔軟性、より良好な処理性およびゴム成分とのより良好な相溶性を提供し、一方より低いエチレン含量および/または高い加水分解度もしくは鹸化度は、改善された空気バリア特性に有益である。一実施形態において、EVOHは半結晶性であり、EVOHのより高い結晶化度は、一般に空気バリア特性を改善し、すなわち酸素透過率を低減する。一実施形態において、EVOHは、結晶性を増加させ空気バリア特性を改善するために、TPEまたはDVA中で熱処理に供される。一実施形態において、EVOHポリマー自体は、試験法ISO 14663−2付属書類Cにより、65%相対湿度および20℃で、5cc.20μm/m.day.atm未満、好ましくは3cc.20μm/m.day.atm未満、より好ましくは2cc.20μm/m.day.atm未満の酸素透過速度を有する。
【0013】
EVOHは、例えば、エチレンおよび酢酸ビニルのラジカル重合等により得られるエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)を鹸化することにより生成され得る。一実施形態において、例えば、EVAL Company of America社から市販されている製品、例えばEVAL E105A(エチレン含量44mol%)、EVAL H171B(38mol%のエチレン成分比)またはEVAL L171B(26mol%のエチレン成分比)等を、単独でまたは任意の組合せとして使用することができる。
【0014】
実施形態において、EVOHは、TPVの空気バリア特性を改善するために効果的な量で存在し、例えば、一実施形態において、EVOHは、100重量部のゴム当たり10重量部(phr)〜100phrで存在する。
【0015】
熱可塑性成分−他の樹脂
実施形態において、追加の有用な熱可塑性樹脂は、500MPaを超えるヤング率を有し、好ましくはEVOH成分およびエラストマー成分と相溶性であり、好ましくは30℃で60×10−12cc−cm/cm−sec−cm Hg未満の空気透過係数、および好ましくは約170℃〜約230℃の融点を有する、以下の1種または複数種を含むがこれらに限定されない任意の熱可塑性ホモポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物を含み得る。
a)ポリアミド樹脂:ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン6,10(N610)、ナイロン6,12(N612)、ナイロン6/66コポリマー(N6/66)、ナイロン6/66/610(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T(N6T)、ナイロン6/6Tコポリマー、ナイロン66/PPコポリマー、ナイロン66/PPSコポリマー、
b)ポリエステル樹脂:ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEIコポリマー、ポリアクリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド(polyoxalkylene diimide)二酸/ポリブチレートテレフタレートコポリマーおよび他の芳香族ポリエステル、
c)ポリニトリル樹脂:ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレンコポリマー(AS)、メタクリロニトリル−スチレンコポリマー、メタクリロニトリル−スチレン−ブタジエンコポリマー、
d)ポリメタクリレート樹脂:ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、
e)ポリビニル樹脂(例示であり、限定されない):酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレンコポリマー(EVOA)(上に定義されたEVOHコポリマー以外、すなわち、20mol%未満または50mol%超のエチレンおよび/または90%未満の加水分解を含むEVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニル/ポリビニリデンコポリマー、ポリ塩化ビニリデン/メタクリレートコポリマー、
f)セルロース樹脂:酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、
g)フッ素樹脂:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレンコポリマー(ETFE)、
h)ポリイミド樹脂:芳香族ポリイミド、
i)ポリスルホン、
j)ポリアセタール、
k)ポリラクトン、
l)ポリフェニレンオキシドおよびポリフェニレンサルファイド、
m)スチレン−無水マレイン酸、
n)芳香族ポリケトン、
o)結晶性および半結晶性プロピレンホモポリマーおよびコポリマーを含む、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ならびに
p)a)からo)まで(これらを含む)の全ての混合物、およびa)からp)まで(これらを含む)のそれぞれに含まれる、説明的なまたは例示された熱可塑性樹脂のいずれかの混合物。
【0016】
エラストマー成分
様々な実施形態における熱可塑性エラストマーのエラストマーは、ジエン系ゴム、例えばブチル、ハロブチル、および/またはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ハロゲン化イソブチレン含有ゴム等であってもよい。典型的には、ゴム成分は、上述の熱可塑性樹脂を含む組成物中に、約10/90〜90/10、好ましくは約55/45〜80/20、より好ましくは約60/40〜約75/25、より好ましくは約65/35〜約75/25の樹脂に対するゴムの重量比で存在する。
ハロゲン化ゴムは、少なくとも約0.1mol%のハロゲン、例えば、臭素、塩素およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを有するゴムと定義される。本実施形態において有用な好ましいハロゲン化ゴムは、ハロゲン化イソブチレン系ホモポリマーまたはコポリマーを含む。これらのポリマーは、イソブチレン誘導単位等のC−Cイソモノオレフィン誘導単位、および少なくとも1種の他の重合性単位のランダムコポリマーとして説明され得る。一実施形態において、ハロゲン化イソブチレン系コポリマーは、ブチル型ゴムまたは分岐ブチル型ゴム、特にこれらのエラストマーの臭素化形態である。
【0017】
ブチルゴムは、典型的には、モノマーの混合物を反応させることにより調製され、混合物は、少なくとも(1)イソブチレン等のC−C12イソオレフィンモノマー成分および(2)マルチオレフィンモノマー成分を有する。イソオレフィンは、一実施形態において全モノマー混合物の70〜99.5重量%、別の実施形態において85〜99.5重量%の範囲である。マルチオレフィン成分は、モノマー混合物中に、一実施形態において30〜0.5重量%、別の実施形態において15〜0.5重量%で存在する。さらに別の実施形態において、モノマー混合物の8〜0.5重量%がマルチオレフィンである。イソオレフィンは、好ましくは、C−C12化合物であり、その限定されない例は、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセン、および4−メチル−1−ペンテン等の化合物である。マルチオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、およびピペリレン等のC−C14マルチオレフィンである。スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレンメトキシスチレン、インデン、およびインデン誘導体等の他の重合性モノマーもまた、ブチルゴムにおけるホモ重合または共重合に好適である。一実施形態において有用なブチルゴムポリマーの一実施形態は、95〜99.5重量%のイソブチレンを、0.5〜8重量%のイソプレンと、さらに別の実施形態において0.5重量%〜5.0重量%のイソプレンと反応させることにより得られる。
【0018】
ハロゲン化ブチルゴムは、上述のブチルゴム生成物のハロゲン化により生成される。ハロゲン化は任意の手段で行うことができ、本明細書における実施形態は、ハロゲン化プロセスにより限定されない。ハロゲン化ブチルゴムは、典型的には、約20〜約70(125℃でML 1+8)、例えば別の実施形態において約25〜約55のムーニー粘度を有する。ハロゲン含量は、典型的には、ハロゲン化ブチルゴムの重量を基準として約0.1〜10重量%、例えば約0.5〜5重量%、代替的には約0.8〜約2.5重量%、例えば約1〜約2重量%である。
ブチルゴムの別の有用な実施形態は、ハロゲン化された、分岐または「星型分岐」ブチルゴムである。一実施形態において、星型分岐ブチルゴム(「SBB」)は、ブチルゴムおよびポリジエンまたはブロックコポリマーを含む組成物である。ポリジエン、ブロックコポリマーまたは分岐剤(以下「ポリジエン」)は、典型的にはカチオン反応性であり、ブチルもしくはハロゲン化ブチルゴムの重合中に存在するか、またはブチルゴムとブレンドされてSBBを形成し得る。分岐剤またはポリジエンは、いかなる好適な分岐剤であってもよく、実施形態は、SBBを作製するために使用されるポリジエンまたは分岐剤の種類に限定されない。
【0019】
使用されるSBBは、ハロゲン化されていてもよい。一実施形態において、ハロゲン化星型分岐ブチルゴム(「HSBB」)は、ハロゲン化されたまたはハロゲン化されていないブチルゴム、およびハロゲン化されたまたはハロゲン化されていないポリジエンまたはブロックコポリマーを含む。一実施形態において、HSBBは、典型的には、上述のようなハロゲン化ブチルゴムと、スチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーからなる群から選択される、ポリジエンおよび部分水素化ポリジエンのコポリマーとを含む組成物である。ポリジエンは、全モノマー含量を基準とした重量%で、典型的には約0.3重量%超、代替的には約0.3〜3重量%または約0.4〜2.7重量%で存在し得る。
【0020】
他の有用なブチルゴムは、C−Cイソオレフィン、例えばイソブチレンまたは上述の他のC−Cイソオレフィンと、ハロメチルスチレンとを含むランダムコポリマーを含む、イソオレフィン/パラ−アルキルスチレンコポリマーである。ハロメチルスチレンは、オルト−、メタ−またはパラ−アルキル置換スチレンであってもよい。一実施形態において、ハロメチルスチレンは、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90重量%のパラ−異性体を含有するp−ハロメチルスチレンである。「ハロ」基は、いかなるハロゲンであってもよく、望ましくは塩素または臭素であり、最も好ましくは臭素である。コポリマーはまた、官能化インターポリマーを含んでもよく、スチレンモノマー単位上に存在するアルキル置換基の少なくともいくつかは、ベンジルハロゲンまたは以下でさらに説明される別の官能基を含有する。これらのインターポリマーは、本明細書において、「ハロメチルスチレンを含むイソオレフィンコポリマー」または単に「イソオレフィンコポリマー」と呼ばれる。
【0021】
イソブチレンおよびp−メチルスチレンのそのようなコポリマーで最も有用なのは、ベンジル環上に存在するメチル置換基の最大60mol%が臭素または塩素原子、好ましくは臭素原子を含有する(p−ブロモメチルスチレン)、0.5〜20mol%のp−メチルスチレン、および、ハロゲン原子が無水マレイン酸またはアクリルもしくはメタクリル酸官能基により置き換えられたその酸またはエステル官能化形態を含有するコポリマーである。これらのインターポリマーは、ハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)または臭素化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)(BIMS)と呼ばれる。「ハロゲン化」または「臭素化」という用語の使用は、コポリマーのハロゲン化の方法に限定されず、単にイソブチレン誘導単位、p−メチルスチレン誘導単位、およびp−ハロメチルスチレン誘導単位を含むコポリマーを説明するものであることが理解される。
これらの官能化ポリマーは、好ましくは、ポリマーの少なくとも95重量%が、ポリマーの平均p−アルキルスチレン含量の10%以内のp−アルキルスチレン含量を有するように、実質的に均一な組成分布を有する。また、より好ましいポリマーは、5未満、より好ましくは2.5未満の狭い分子量分布(Mw/Mn)、約200000〜約2000000の範囲の好ましい粘度平均分子量、およびゲル透過クロマトグラフィーにより決定される約25000から約750000の範囲の好ましい数平均分子量を特徴とする。
【0022】
好ましいハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)ポリマーは、一般に約0.1〜約5重量%のブロモメチル基を含有する臭素化ポリマーである。さらに別の実施形態において、ブロモメチル基の量は、約0.2〜約2.5重量%である。換言すれば、好ましいコポリマーは、ポリマーの重量を基準として約0.05〜約2.5mol%の臭素、より好ましくは約0.1〜約1.25mol%の臭素を含有し、環ハロゲンまたはポリマー骨格鎖中のハロゲンを実質的に含まない。一実施形態において、インターポリマーは、C−Cイソモノオレフィン誘導単位、p−メチルスチレン誘導単位およびp−ハロメチルスチレン誘導単位のコポリマーであり、p−ハロメチルスチレン単位は、インターポリマー中に、インターポリマーを基準として約0.4〜約1mol%で存在する。別の実施形態において、p−ハロメチルスチレンは、p−ブロモメチルスチレンである。ムーニー粘度(1+8、125℃、ASTM D1646、修正)は、約30〜約60ムーニー単位である。
【0023】
本発明における使用に好適なエラストマーを含有する他のC−Cイソオレフィン誘導単位は、イソオレフィンおよび少なくとも2種のマルチオレフィンを含むポリマーを含み、マルチオレフィンは、重合前に異なる骨格構造を有する。そのようなポリマーは、C−Cイソオレフィン誘導単位、C−C14マルチオレフィン誘導単位、およびアルキルスチレン誘導単位のブロックおよびランダムポリマーの両方を含む。1種のそのようなポリマーは、イソブチレン、イソプレンおよびアルキルスチレン、好ましくはメチルスチレン、モノマーから形成され得る。別の好適なポリマーは、イソブチレン、シクロペンタジエン、およびアルキルスチレンモノマーから重合され得る。そのようなポリマーは、カチオン重合条件下で得られる。
「エチレン/プロピレンゴム」という用語は、本明細書において、一般的に、非共役ジエンターモノマーを含むエチレン/プロピレンゴム(EPDM)または含まないエチレン/プロピレンゴム(EPM)を示すように使用される。一実施形態において、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)は、エチレン、プロピレンおよび非共役ジエンのコポリマーを含む。非共役ジエンを含まないエチレン/プロピレンゴム(EPM)は、別の実施形態である。エチレン/プロピレンゴムにおけるプロピレンに対するエチレンの比は、約40/60〜約85/15、より望ましくは約50/50〜約75/25である。EPDMにおける使用のための非共役ジエンは、当該技術分野において周知であり、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,3−シクロペンタジエン、5−ビニルノルボルネン、それらの組合せ等を含む。コポリマー中の非共役ジエンの量は、通常、EPDMゴム成分の重量を基準として、最大約10重量%、より望ましくは約0.5〜約4または5重量%であり、残りはエチレンまたはプロピレンである。非共役ジエンを含まないエチレン/プロピレンゴム(EPM)は、放射線硬化または過酸化物硬化により架橋され得る。EPDMは、ブチルまたは他の不飽和ゴムと共に使用される硬化剤のいずれかにより架橋され得る。
【0024】
一般に、本実施形態において有用な他の好適なゴムは、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBRを含む)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR、マレイン酸改質エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンおよび芳香族ビニルまたはジエンモノマーコポリマー、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、他のハロゲン含有ゴム(例えば、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸改質塩素化ポリエチレン(M−CM))、シリコーンゴム(例えば、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム)、硫黄含有ゴム(例えば、ポリスルフィドゴム)、フルオロゴム(例えば、フッ化ビニリデンゴム、フッ素含有ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、フッ素含有シリコーンゴム、フッ素含有ホスファゲンゴム)、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン含有エラストマー、オレフィンエラストマー、エステルエラストマー、ウレタンエラストマーまたはポリアミドエラストマー)、ならびにそれらの混合物を含む。
【0025】
好適なゴム成分の別のクラスは、単独で使用されてもよいが、好ましくは別のゴム成分とのブレンドとして使用される高ジエンゴムおよびその水和物を含む。高ジエン含量ゴムまたはエラストマーはまた、高ジエンモノマーゴムとも呼ばれる。典型的には、これは、典型的には少なくとも50mol%のC−C12ジエンモノマー、典型的には少なくとも約60mol%〜約100mol%、より好ましくは少なくとも約70mol%〜約100mol%、より好ましくは少なくとも約80mol%〜約100mol%を含むゴムである。有用な高ジエンモノマーゴムは、オレフィンもしくはイソオレフィンおよびマルチオレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、またはマルチオレフィンのホモポリマーを含む。高ジエンモノマーゴムの好ましい例は、単独で、または組合せおよび混合物として使用されてもよい、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を含む。
【0026】
官能化ゴムを有利に使用することができる。好適な官能基は、EVOHにおけるヒドロキシルまたはアセテート基、ポリアミド中に存在するアミン官能基等の熱可塑性成分における反応性官能基と反応することができる官能基を含む。例えば、無水マレイン酸、アシルラクタム等は、それぞれポリアミドおよび/またはEVOHにおけるアミンおよび/またはヒドロキシルと容易に反応し得る。そのようなゴムにおける化学反応性官能基の存在は、一実施形態において、可塑性マトリックスにおけるゴムの微小粒子サイズ分散をもたらす、ゴムとEVOHとの間の反応性相溶化をさらに促進することができ、ゴム粒子は、約1μm以下、好ましくは約0.5μm未満の平均粒径を示す。
上述のような微小粒子の形態で熱可塑性マトリックス中に分散したゴムは、部分的に、実質的にまたは完全に加硫可能であるかまたは加硫されている(架橋もしくは硬化されている)。そのような架橋は、当業者により使用される動的加硫法により達成され得る。動的加硫が使用される場合、ゴムの混合および分散中に加硫を達成するために、好適な硬化剤または硬化系をブレンドに分散させることも必要である。
代替的に、ゴムが熱架橋し易い場合、動的加硫に対応する様式での混合および分散中に十分な熱エネルギーを与えることにより、または微小粒子の形態で分散させた後でそのような分散後の架橋を達成するために十分な熱エネルギーを提供することにより、加硫することができる。さらなる代替例として、ゴムは、放射線照射により架橋され得る。いずれにしても、ゴムが、EVOH含有熱可塑性マトリックス中に、約0.1μm〜約1μm、例えば約0.1μm〜約0.75μmまたは約0.1μm〜約0.5μmの平均粒径を有する微小粒子の形態で分散していることが好ましい。
【0027】
EVOH−ゴム相溶化剤
二次的ポリマーおよび他の添加剤が、相溶化剤または加工助剤として機能してもよい。本明細書において使用される場合、「相溶化剤」は、2種の非相溶性ポリマードメインをより相溶性とする添加剤である。二次的ポリマーは、熱可塑性ポリマーもしくはエラストマー性ポリマー、それらの混合物であってもよく、または、熱可塑性およびエラストマー性ドメインの両方を有するポリマーであってもよく、熱可塑性相にのみ、エラストマーにのみ、エラストマーおよび熱可塑性相の両方においてエラストマーと熱可塑性相との間の界面に、または任意の組合せとして存在してもよい。
一実施形態において、相溶化二次的ポリマーは、一般に、非常に極性であるEVOHと相溶性の少なくとも1つのドメインと、非極性の傾向を有する、エラストマー相におけるゴムと相溶性の少なくとも別のドメインとを有する。ポリマードメインは、ブレンドが通常はいずれのポリマードメインのガラス転移温度Tgとも異なる単一のTgを示すような分子間混合が存在する場合には、熱力学的に相溶性であると理解される。非相溶性ポリマーは、通常、それぞれのブレンド成分のTgと同じ2つのTgを示し、最悪の場合ではそれぞれのポリマー相は分離を示す。ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。ポリマードメインは、それ自体相溶性であってもよく、または、別のポリマー、プロセス油、可塑剤等の追加の成分の存在により相溶性とされてもよい。
【0028】
一実施形態において、二次的ポリマーは、加硫ゴム粒子の微細分散を得るため、エラストマー中に存在する特定のゴムおよび/または他の熱可塑性成分に依存して、相溶性のために選択される。主要エラストマー成分がブチルまたはハロブチルゴムを含む一実施形態において、二次的ポリマーは、非加硫性ゴム、例えば飽和ゴム、すなわち、二次的ポリマーが熱可塑性およびエラストマー性ドメインの両方を含有する場合、二次的ゴムポリマーまたはゴム様ドメインにおける炭素間結合のモルパーセントとして0.1%未満のエチレン性不飽和を含有するゴムであってもよい。主要エラストマーがエチレン/プロピレンゴム、例えばEPDM等のオレフィンゴムを含む別の実施形態において、二次的ポリマーは、ポリエチレン(エチレン−アルファ−オレフィンコポリマーを含む)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマーまたはそれらの混合物等のポリオレフィンを含んでもよい。
【0029】
飽和ゴム相溶化剤
例えば、EVOHおよびブチルゴムと相溶性の好適な非加硫性ゴムは、水素化スチレンブロックコポリマーを含む商品名SEPTONとして入手可能である。非加硫性ゴムは、不飽和ゴムの動的加硫中にほとんど架橋されず、ゴム−熱可塑性樹脂界面への移動に利用可能であり得、エラストマーおよび熱可塑性相の両方と相溶性である場合、混合物の安定化を促進する。
本発明の組成物は、一実施形態において、飽和スチレンブロックコポリマー、例えばスチレン−イソブチレン−スチレン(SIBS)、もしくは水素化スチレンブロックコポリマー、例えば水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン)(SEP)、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)(SEPS)、水素化ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SEBS)、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン/ブタジエン−b−スチレン)(SEEPS)、またはそれらの任意の組合せを含む。SIBSは、商品名SIBSTAR(株式会社カネカ製)として市販されており、そのような水素化スチレンブロックコポリマーは、例えば、Septon Company of America Incから入手可能なSEPTON製品群として入手可能である。一実施形態において、ブロックコポリマー成分の量は、一般に、組成物のゴム成分の100部当たり約30〜約40重量部の範囲である。本明細書において使用される場合、飽和ゴム成分が存在する場合は、100重量部のゴムまたはphr基準から除外される。例えば、100gのクロロブチルゴム、30gのSEEPSおよび20gのEVOHの混合物は、100phrのクロロブチルゴム、30phrのSEEPSおよび20phrのEVOHを含有する。
【0030】
水素化スチレンブロックコポリマーを使用した実施形態の熱可塑性エラストマーの調製において、ブロックコポリマー成分は、一般に、組成物の不可欠な部分となるように、1ステッププロセスで熱可塑性エラストマーの生成中に組成物中に直接組み込むことができる。ブロックコポリマーは水素化されているため、非常に低いレベルの不飽和を含有し、加硫中に熱可塑性エラストマーのエラストマー成分と同時硬化しない。ブロックコポリマーは、熱可塑性エラストマー中の熱可塑性ポリオレフィン樹脂と、共連続マトリックスを形成する。代替的に、ブロックコポリマーは、予形成熱可塑性エラストマー組成物と機械的にブレンドされてもよい。
【0031】
ポリオレフィン相溶化剤
主要エラストマーがオレフィンゴムを含む実施形態において、二次的ポリマーは、熱可塑性ポリオレフィンを含み得る。この実施形態におけるポリエチレン相溶化剤は、例えば、高分岐低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を含み得る。
LDPEは、高圧条件下でフリーラジカル開始剤を使用した重合により、エチレンから得ることができる。したがって、LDPEはまた、当該技術分野において、高圧ポリエチレン(HPPE)と呼ぶこともできる。フリーラジカルは、通常バックバイティングメカニズムとして知られるものによる、長鎖分岐を形成するような主鎖の長さに沿った鎖長の組込みを誘発する。分岐は、長さおよび構成において変動する。LDPEは、不均一に分岐したものとして説明され得る。形成されたポリマー鎖は大きく異なり、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布は幅広い。平均分子量は、鎖末端にまたは鎖に沿って組み込まれ得る様々なテロゲンまたは移動剤により制御することができる。エチレン以外のオレフィン、またはカルボニル基等の極性部分を含有する少量のオレフィン共重合性モノマー等のコモノマーが使用されてもよい。
LDPEは、本明細書における使用において、不均一に分岐したエチレンから誘導された少なくとも85mol%の単位を含むポリマーを含むように定義され、カルボニル基等の極性部分を含有するコモノマーから誘導された7.5mol%未満の単位を含有し、エチレン性不飽和エステル、例えばエチレン酢酸ビニル、エチレンメチルアクリレート、エチレンメタクリル酸、n−ブチルアクリレート(EBA)またはエチレンアクリル酸を含む。
【0032】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む直鎖状エチレン系ポリマーは、触媒重合機構を使用して生成される。重合は、一般に遷移金属成分、およびほとんどの場合は活性剤または共触媒を含む、チーグラー−ナッタ触媒を用いて行われてもよい。エチレンまたは他のオレフィンコモノマー等のモノマーは、主としてポリマー鎖の末端に組み込まれる。バックバイティングメカニズムは、実質的に存在しない。GPCにより測定される分子量分布(MWD)Mw/Mnは比較的狭く、これは本明細書において10未満であると定義される。そのようなポリマーは、より直鎖状の傾向を有し、長鎖分岐を有さないか、または低レベルの長鎖分岐を有する。本明細書の説明および特許請求の範囲において使用される場合、非分岐直鎖状ポリエチレンへの言及は、30未満のメルトインデックス比(MIR)を有するポリマーを示し、MIRは、ASTM D1238に従い190℃で測定されるメルトインデックス比、すなわちI21.6/I2.16@190℃と定義される。
【0033】
長鎖分岐が測定可能な量で存在する場合、それらの長さおよび構造は同様で直鎖状であると推測される。それらは、均一分岐直鎖状ポリエチレンと呼ぶことができる。この用語は、本明細書の説明および特許請求の範囲において使用される場合、35を超えるMIRを有するポリマーを示す。長鎖分岐直鎖状ポリエチレンの分子量分布(MWD、Mw/Mn)は、6未満、典型的には5未満であり、4未満はより高レベルの長鎖分岐を示し、これは、LDPEによく見られるものと比較して狭い。極性基による被毒に対する触媒の感受性により、極性基を有するモノマーは使用することができない。主なコモノマーは、アルファ−オレフィンである。
直鎖状ポリエチレンは、本明細書における使用において、少なくとも65mol%のエチレン誘導単位、および、分岐していないまたは分岐している場合は均一に分岐している、3〜12個の炭素原子を有する残りのアルファ−オレフィンから誘導された単位を含むポリマーを含む。一般に、これらのポリマーは、5.5未満の本明細書に記載のGPC示差屈折率(DRI)により決定されるMw/Mnを有する。
直鎖状ポリエチレンは、その密度に依存して異なる種類に細分化され得る。主な群は、VLDPE、LLDPEおよびHDPEである。一般的な文献では、これらのポリマーの規定の密度範囲は変動し得る。本明細書および特許請求の範囲において、VLDPEは、0.91g/cm未満の密度を有する直鎖状ポリエチレンと定義され、LLDPEは、0.91〜0.94g/cmの密度を有する直鎖状ポリエチレンと定義され、HDPEは、0.94g/cmを超える密度を有する直鎖状ポリマーと定義される。
【0034】
直鎖状ポリエチレンはまた、均一性、ひいては処理における全体的特性および生成されるフィルムの特性に影響する、使用される触媒系の性質を考慮して細分化され得る。接頭辞「zn」は、本明細書および特許請求の範囲において、「znLLDPE」のように、触媒系が遷移金属成分としてチタンを、および共触媒としてアルミニウムアルキルを使用したことを示すように使用される。接頭辞「m」は、本明細書および特許請求の範囲において、mLLDPEのように使用されて、遷移金属成分が、アルモキサンまたは非配位アニオンのような成分に関して周知である方法により活性化されたシングルサイト触媒(メタロセンまたは他のシングルサイト触媒を含み得る)であったことを示し、「zn」直鎖状ポリエチレン型は、「m」直鎖状ポリエチレン型と比較して、当該技術分野において最低限の技術を有する者に知られているような組成分布幅指数(CDBI)の測定またはCrystaf測定等の関連する密度に適切な好適な分別技術により決定され得るように、分子量分布および組成分布の点でより大きな不均一性を有する傾向がある。
【0035】
本明細書において使用される場合、「zn」直鎖状ポリエチレン型は、45%未満のCDBIを有する溶離分別により分析可能なポリエチレンを示し、一方「m」直鎖状ポリエチレン型は、50%を超えるCDBIを有するポリエチレンを示し、CDBIは、WO93/03093(US5206075)に記載のように測定される。低い密度においては、他の分別技術を使用して「zn」および「m」型の直鎖状ポリエチレンを分離することができる。
上述のようなmLLDPEの場合、好ましくは、ヘキサン抽出可能物質は、1.5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に0.6重量%未満である。FDAヘキサン抽出可能性試験は、2003年7月7日現在のバージョンからのものである。試験は、21 CFR 177.1520(d)(3)(ii)(e)に従い、抽出用のフィルムを使用し、抽出および乾燥後の乾燥フィルムを秤量して重量損失を測定することで行うことができる。
【0036】
本実施形態における二次的ポリマーとして有用である一般に好ましいエチレンポリマーおよびコポリマーは、ExxonMobil HDPE、ExxonMobil LLDPE、およびExxonMobil LDPEとして販売されているもの、ならびにEXACT(商標)、EXCEED(商標)、ESCORENE(商標)、ESCORENE ULTRA(商標)、EXXCO(商標)、ESCOR(商標)、ENABLE(商標)、NTX(商標)、PAXON(商標)およびOPTEMA(商標)の商品名で販売されているものを含む、テキサス州ヒューストンのExxonMobil Chemical Companyから販売されているものを含む。
二次的ポリオレフィンポリマーの場合、他のオレフィン系、ほとんどの場合プロピレン系の直鎖状ポリマーを生成するために、触媒重合メカニズムもまた使用される。その例は、プロピレン系ポリマー、例えばポリプロピレンホモポリマー、ランダムプロピレンコポリマー(RCP)、およびプロピレン系エラストマー(PBE)を含み、様々な程度のランダム性またはブロック性を有するWO99/07788およびWO2003/040201に記載のものを含む。「他の直鎖状ポリオレフィンポリマー」という用語は、本明細書および特許請求の範囲において、分岐していても分岐していなくてもよいが、上に定義された直鎖状ポリエチレンを除く、1種または複数種のオレフィンモノマーから誘導された単位を有する、一般に触媒重合メカニズムを使用した他の直鎖状ポリマーを示すように使用される。EVOH−EPDM TPV中の相溶化剤として好適な低粘度高融点ポリプロピレンの例は、Westlake Chemical Corporationから商品名EPOLENEとして入手可能なポリプロピレンワックスであり、商品名EPOLENE N−15として入手可能な12000分子量ポリプロピレンを含む。
【0037】
二次的ポリエチレンポリマーのさらなるクラスは、一実施形態による「差別化ポリエチレン」(DPE)である。差別化ポリエチレンは、本明細書において、極性コモノマーまたはターモノマーを含むポリエチレンポリマーと定義される。ターポリマー等の3種以上のモノマーを有するポリマーもまた、本明細書において使用される用語「コポリマー」に含まれる。典型的なDPEは、当該技術分野において周知であり、エチレンn−ブチルアクリレート、エチレンメチルアクリレートアクリル酸ターポリマー、エチレンアクリル酸、エチレンメチルアクリレート、亜鉛またはナトリウム中和エチレンアクリル酸コポリマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、および上記の組合せを含むエチレンポリマーを含むが、これらに限定されない。EVA相溶化剤の1つの代表例は、Celanese社から商品名ATEVAとして入手可能なEVA、例えば商品名ATEVA 4030ACとして得られるもの等の、40重量%の酢酸ビニルを含有するEVAを含む。
【0038】
他の相溶化剤
一実施形態による他の相溶化剤の1つのクラスは、ポリプロピレン(PP)およびエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)の組成物におけるリグラインド劣化を抑制するために使用される添加剤を含む。斑等の加工上の異常が、時折PP−EVOHリグラインド押出しにおいて見られる。そのような異常を抑制するために、例えばEVAL Company of America社から入手可能なGF−20 LDPE樹脂添加剤等のポリオレフィン−EVOHリグラインド安定剤が市販されている。
一実施形態による他の相溶化剤は、熱可塑性樹脂およびゴムポリマーの両方もしくは一方の構造、または熱可塑性樹脂もしくはゴムポリマーと反応することができるエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミン基、マレイン酸基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基等を有するコポリマーの構造を有するもの等のコポリマーを含む。二次的ゴムは、混合される熱可塑性樹脂ポリマーおよびゴムポリマーの種類に依存して選択され得る。そのような有用な二次的ゴムは、無水マレイン酸グラフトアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ジエンゴム、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン等の無水マレイン酸グラフトゴム、およびマレイン化エチレン−プロピレン(EPM)、マレイン化エチレン−ブテン、マレイン化エチレン−ヘキセン、マレイン化エチレン−オクテン、マレイン化エチレン−デセン、マレイン化エチレン−プロピレン−ジエン、マレイン化エチレン−酢酸ビニル、マレイン化エチレン−メチルアクリレート、マレイン化エチレン−エチルアクリレート、マレイン化エチレン−アクリル酸等のマレイン化エチレンコポリマーゴム、ならびにそれらの混合物を含む。同じく有用となり得るゴムは、EPDM/スチレン、EPDM/アクリロニトリルグラフトコポリマーおよびそれらのマレイン酸改質形態、スチレン/マレイン酸コポリマー、反応性フェノキシ熱可塑性樹脂、ならびにそれらの混合物を含む。
【0039】
二次的ゴム中に存在する有用な好ましい官能基の例は、カルボン酸、カルボン酸のエステル、酸無水物、ジエステル、塩、アミド、およびイミド等のカルボニル結合を含む化合物を含む。芳香族ビニル化合物、加水分解性不飽和シラン化合物、飽和ハロゲン化炭化水素、および不飽和ハロゲン化炭化水素もまた使用され得る。特に好ましい官能基の例は、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2−メチルマレイン酸無水物、2−クロロマレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、および4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロトン酸、ビシクロ(2.2.2)オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オキサ−1,3−ジケトスピロ(4.4)ノナ−7−エン、ビシクロ(2.2.1)ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ノルボルナ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ナド酸無水物、メチルナド酸無水物、ハイミック酸無水物、メチルハイミック酸無水物、ならびにx−メチル−ビシクロ(2.2.1)ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(XMNA)を含むが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書において有用な官能化ポリマーの作製に好適なポリマーは、エチレンポリマーおよびプロピレンポリマーを含む。特に好ましいポリマーは、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン−デセン、ウンデセン、ドデセン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、ブタクリル酸または酢酸ビニルの1種または複数種と共重合したエチレンのポリマーを含む。好ましくは、そのようなエチレンポリマーは、マレイン酸または無水マレイン酸で改質されている。特に好ましいポリマーの別のクラスは、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン−デセン、ウンデセン、ドデセン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、ブタクリル酸または酢酸ビニルの1種または複数種と共重合したプロピレンのポリマーを含む。好ましくは、そのようなプロピレンポリマーは、マレイン酸または無水マレイン酸で改質されている。
【0041】
好ましい実施形態において、官能化されるポリマーは、無水マレイン酸がポリマーの骨格ポリマー鎖に共有結合するように無水マレイン酸でグラフトされる。ポリマー上にグラフトされた無水物官能基は、無水物のままであってもよく、酸官能基に酸化されていてもよく、および/または当該技術分野において知られているプロセスによりさらに反応して、アミド、アミン、アルコール等の他の官能基を導入してもよい。
特に好ましいポリマーの別のクラスは、イソプレン、イソブチレンの1種または複数と共重合したC−Cイソオレフィン(例えばイソブチレン)のポリマーを含む。好ましくは、そのようなイソブチレンポリマーは、マレイン酸または無水マレイン酸で改質されている。特に好ましい官能化ポリマーは、イソブチレンおよびイソプレンのマレイン化コポリマー、イソブチレンおよびパラメチルスチレンのマレイン化コポリマー、マレイン化ハロブチル型コポリマー、マレイン化SBB型コポリマーならびにマレイン化BIMS型コポリマーを含む。官能化ポリマーに使用され得る様々な方法が、当該技術分野において知られている。これらの方法は、選択的酸化、フリーラジカルグラフト、オゾン分解、エポキシ化等を含むが、これらに限定されない。
【0042】
好ましくは、官能化ポリマーは、約50重量%未満、約45重量%未満、約40重量%未満、約35重量%未満、約30重量%未満、約25重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、約10重量%未満、約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、および約2重量%未満の無水マレイン酸からなる群から選択される濃度で存在する無水マレイン酸を含む。また好ましくは、無水マレイン酸(MA)のポリマー−g−MA中のレベルは、約0.1重量%超、好ましくは約0.5重量%超、代替的には約1重量%超の無水マレイン酸であってもよい。好ましい実施形態において、官能化ポリマーは、約0.1〜約10重量%の無水マレイン酸、好ましくは約0.25〜約5重量%、より好ましくは約0.5〜約4重量%、さらにより好ましくは約0.75〜約3.5重量%、例えば約1.5〜約2.5重量%の無水マレイン酸を含んでもよい。グラフトされたポリマーの官能基含量は、絶対的な官能基含量が決定されている標準を用いた較正に基づくフーリエ変換赤外(FTIR)分光法により決定することができる。
別のゴムを有することにより、熱可塑性エラストマー組成物中の主要ゴムおよび二次的ゴムの両方を考慮した全体的なゴム含量を増加させながら、ポリアミドマトリックス中のゴム成分の微小粒径分散を含む所望の形態を維持することができる。最大ゴム含量の増加は、特にエラストマー粒子の合体の制限を考慮して、非混和性の二次的ゴムが存在する場合に実現され得る。さらに、上述のように低いまたはより少ないレベルの二次的ゴム濃度の量を制御することにより、その合体を実質的に回避または防止するために二次的ゴムを硬化または加硫する必要性を回避することができる。これは特に、一実施形態において、二次的ゴムが熱可塑性樹脂の存在下で熱可塑性樹脂と反応性となり得、実質的に固定され得るため成り立つ。二次的ゴムに硬化剤を添加する必要がないため、硬化剤と予備混合または予備配合する必要がなく(ただし、硬化剤が添加されて二次的ゴムがそれと動的に加硫されてもよい)、押出混合中に二次的ゴムを押出混合機に直接添加することが実現可能であり、二次的ゴムは、好ましくはペレット形態で提供される。さらに、ほとんどの官能化ゴム、例えばマレイン化エチレンコポリマーゴムおよび無水マレイン酸グラフトゴムは極めて透過性であるため、二次的ゴム濃度を低く維持すること、典型的には全組成物の総重量を基準として20重量%以下、好ましくは約1重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約10重量%以下に維持することが望ましい。ブレンドされる二次的官能化相溶化剤ゴムの量は、典型的には、約20重量%以下、好ましくは約10重量%未満、一般には約0.5重量%〜約20重量%、例えば約5重量%〜約15重量%、例えば約7.5重量%〜約12.5重量%である。
【0043】
一般手順
一般に、ポリマー組成物、例えばタイヤを製造するために使用されるものは、最終タイヤ製品において架橋される。架橋または加硫は、硬化剤および/または促進剤の組込みにより達成され、そのような薬剤の全体的な混合物は、典型的には硬化「系」と呼ばれる。例えば高ジエンゴムおよびより反応性の低いエラストマーの混合物が使用される場合、典型的には2種以上の硬化剤がその有益な効果のために使用されるため、硬化系が使用される。
例えば極めて不透過性の組成物を形成するための熱可塑性樹脂の存在下での動的加硫のために、特定のエラストマーを加硫することができる任意の従来の硬化系が、本明細書において使用され得る。一実施形態による動的加硫は、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)の導入前、導入中、および/または導入後に生じ得る。
【0044】
架橋または硬化剤は、例えば硫黄、酸化亜鉛および脂肪酸ならびにそれらの混合物の少なくとも1種を含む。一般に、ポリマー組成物は、硬化剤、例えば硫黄、金属酸化物(すなわち酸化亜鉛、ZnO)、有機金属化合物、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ラジカル開始剤等を添加し、組成物または混合物を加熱することにより架橋され得る。ZnO、CaO、MgO、Al、CrO、FeO、Fe、およびNiOが、本発明において機能し得る一般的な硬化剤である。これらの金属酸化物は、対応するステアリン酸金属錯体(例えば、Zn、Ca、Mg、およびAlのステアリン酸塩)、またはステアリン酸、および硫黄化合物またはアルキルペルオキシド化合物と併せて使用され得る。本発明のエラストマー成分に好適な硬化系は、ステアリン酸亜鉛またはステアリン酸と組み合わせた酸化亜鉛を含み、また促進剤または加硫剤の1種または複数を含んでもよい。
【0045】
一実施形態において、硬化剤は、有機過酸化物、例えば、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化ベンゾイル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペロキシイソプロピル)ベンゼン、4,4−ジ−t−ブチルペロキシ−バレレネート−n−ブチルエステル等を含んでもよい。過酸化物硬化剤は、具体的には、一実施形態において、熱可塑性樹脂を自ら過酸化物の存在下で架橋させ、過度に硬化された非熱可塑性組成物をもたらす1種または複数種の熱可塑性樹脂が存在する場合、熱可塑性エラストマーから除かれる。
別の実施形態において、硬化剤は、許容される全ての法域において参照することにより本明細書に組み込まれるUS7803875に開示されるように、ハロゲン化されていてもよい、ならびに酸化亜鉛およびカルボン酸金属塩を伴ってもよいフェノールホルムアルデヒド樹脂を含んでもよい。市販のフェノールホルムアルデヒド樹脂は、例えば、共にSchenectady International, Incから入手可能であるSP−1045オクチルフェノール硬化樹脂またはSP−1056F臭素化オクチルフェノール硬化樹脂を含んでもよい。
【0046】
硬化促進剤は、アミン、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバメート、キサンテート等を含む。硬化プロセスの促進は、ある量の促進物質を組成物に添加することにより達成され得る。ゴムの促進された加硫のメカニズムは、硬化剤、促進剤、活性剤およびポリマーの間の複雑な相互作用が関与する。理想的には、利用可能な硬化剤の全てが、個々のポリマー鎖を互いに結合し、ポリマーマトリックスの全体的な強度を高める効果的な架橋の形成において消費される。当該技術分野において多くの促進剤が知られている。1種または複数種の架橋性ポリマーと併せると有用な、硬化剤、促進剤およびそれらが一部を成す硬化系は、当該技術分野において周知である。
【0047】
硬化系は、例えば、ゴム含有組成物を熱可塑性樹脂に添加する前に、ゴムおよび硬化系成分を、プロセスステップにおいて、そのような目的のためにゴム産業において一般的に使用される任意の混合機器、例えばBanburyミキサー、混合押出機等を使用して混合することにより、好適な濃度でゴム成分中に分散させることができ、ゴム成分は、1種または複数種の充填剤、増量剤および/または可塑剤を含有してもよい。そのような混合は、一般に、ゴム組成物を「促進する」と言われる。代替的に、ゴム組成物は、動的加硫を行う前に、混合押出機の段階で促進されてもよいが、商業的な実際の統合プロセスにおいて制御することが困難であり、より望ましくない。硬化系は、動的加硫を行うことを意図した混合機器においてゴムを熱可塑性樹脂に添加する前に、意図される最終用途のために同じく1種または複数種の充填剤、増量剤および他の一般的な成分を含んでもよいゴム相またはゴム組成物中に分散されることが特に好ましい。そうすることにより、後述されるように、動的加硫機器、好ましくは混合押出機へのより効率的で効果的な供給のために、予備配合されたゴム組成物をペレット化することができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の硬化剤が、典型的には約0.1〜15phrで、代替的には約0.5〜約10phrで存在する。
一実施形態において、動的に加硫された組成物は、EVOHを含む熱可塑性樹脂の連続マトリックス中に分散した、実質的に完全に硬化した微小粒子の形態のゴム成分を含むことが好ましい。一実施形態において、動的に加硫されたゴム成分は、EVOH含有マトリックス中に、約0.1μm〜約1μm、例えば約0.1μm〜約0.75μmまたは約0.1μm〜約0.5μmの平均粒径を有する微小粒子の形態で分散していることが好ましい。粒径は、当技術分野において周知の、タッピングフェーズの原子間力顕微鏡(AFM)を含む方法により測定することができる。
一般に、「動的加硫」という用語は、熱可塑性樹脂および少なくとも1種の加硫性ゴムが、ゴムの硬化剤または硬化系の存在下、高せん断および高温条件において混合される加硫プロセスを指すように使用される。その結果、ゴムは、粒子として、好ましくはミクロゲルの形態で、連続マトリックスを形成する、または連続マトリックスとして存在する樹脂中で、架橋と同時に分散される。得られる組成物は、当該技術分野において、「動的加硫合金」またはDVAとして知られる。典型的には、動的加硫は、ゴムの硬化温度以上および樹脂の融点以上の温度で成分を混合することにより達成される。動的に加硫されたまたは硬化された組成物の独特の特徴は、ゴムが硬化されるという事実にもかかわらず、押出、射出成形、圧縮成形等の従来の熱可塑性樹脂処理技術により組成物を処理および再処理することができるということである。スクラップおよび/またはフラッシング(flashing)もまた回収および再処理され得る。典型的な動的加硫プロセスにおいて、硬化剤添加は、混合および加硫または架橋を実質的に同時に行うように変更され、組成物中の加硫性成分の少なくとも1つは、少なくとも1種の加硫性ゴム、エラストマーまたはポリマー、および、少なくとも1種の加硫性成分のための加硫剤を使用して加硫可能ではない少なくとも1種のポリマーまたは樹脂を含む。動的加硫は、Banbury(登録商標)内部混合器、ロールミキサー、および混合押出機を含む、ゴムおよびプラスチック産業において一般的に利用可能な様々な種類の商業的機器において行うことができる。
【0049】
DVAは再加工可能であるため、EVOHおよび/または任意の相溶化剤は、一実施形態において、EVOH以外の熱可塑性樹脂中のゴムの動的加硫後にDVAに組み込まれてもよく、または、追加的EVOHが、加硫後EVOHに対して同じまたは異なってもよいEVOHの第1の部分を含有する熱可塑性樹脂と共に動的加硫後にDVAに組み込まれてもよい。このようにして、EVOHを含有しない市販のTPVを、溶融混合ステップにおけるEVOHの添加により改質することができ、これはまた、EVOHの前、またはEVOHと同時に、またはEVOHの後に任意の相溶化剤を添加することを含んでもよい。
このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物は、連続層を形成するナイロン樹脂のマトリックス中の分散層(ドメイン)として分散した不連続相を形成するエラストマー成分で構造化される。動的加硫の結果、組成物は熱可塑性を維持し、組成物のフィルム、層またはシート状構造が、例えば接着またはタイ層によりラミネートとして形成され得る。
【0050】
単軸押出機の最後でTシート押出ダイ、直線もしくはクロスヘッド構造チューブ押出ダイ、インフレーション成形円筒ダイ等を使用して、熱可塑性エラストマー組成物をシート、フィルムもしくはチューブ状に成形することにより、またはカレンダー処理により、組成物を空気透過防止層、例えば空気タイヤのインターライナーとして、およびホースの構成要素または層等として使用することが可能である。一実施形態において、ホースは、ゴム等の構造層と共にバリア層として組成物を共押出しすることにより製造され得る。
このようにして得られたシートまたはチューブ状の成形物品は、空気タイヤのインナーライナー層または低ガス透過性ホースのホースチューブまたはホースカバーに効果的に使用され得る。さらに、組成物の低透過特性は、流体と直接接触する層が、扱われる流体に対する好適な耐性を有する限り、例えば水、流体圧流体、ブレーキ液、熱伝導流体等のガス以外の流体との使用に好適である。
【0051】
本明細書に記載の組成物は、炭酸カルシウム、粘土、雲母、シリカおよびシリケート、タルク、二酸化チタン、スターチならびに他の有機充填剤、例えば木粉およびカーボンブラック等の1種または複数種の充填剤成分を有してもよい。好適な充填剤材料は、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、改質カーボンブラック、例えばシリカ処理またはシリカ被覆カーボンブラック等のカーボンブラックを含む。強化グレードのカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの特に有用なグレードは、ミディアムカラーファーネスブラックとしても特定される三菱カーボンブラックグレードMA600である。充填剤は、0〜約60phr、例えば約1〜約50phr、または約10〜約40phr、例えば約20〜約35phrのレベルで存在してもよい。
例示的な酸化防止剤は、アルキル化フェノール、ヒンダードフェノールおよびフェノール誘導体、例えばt−ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ポリブチル化ビスフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アルキル化ヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−パラクレゾール、2,5−ジ−tert−アリールヒドロキノン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、テトラキス−(メチレン−(3,5−ジ−(tert)−ブチル−4−ヒドロシンナメート))メタン(IRGANOX 1010)等を含む。ヒンダードフェノール酸化防止剤の例は、Ciba Specialty Chemicals社(バーゼル、スイス)から、IRGANOX 565、IRGANOX 1010およびIRGANOX 1076を含むIRGANOXシリーズの商品名で市販されている。一実施形態において、TPV組成物は、活性または未加工ベースの(供給されたままの市販の酸化防止剤パッケージ中の不活性状態を除き、EVOH等のブレンド成分中の任意の酸化防止剤を含む)全酸化防止剤の0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜2重量%を占める。
【0052】
プロセス油または可塑剤油が組成物中に存在してもよい。そのような油は、主に、例えば混合、カレンダー処理等の層の調製中の組成物の処理を改善するために使用される。一般に、プロセス油は、パラフィン油、芳香族油、ナフテン油、およびポリブテン油から選択され得る。また、ゴムプロセス油は、パラフィン、ナフテンまたは芳香族炭化水素プロセス油のクラスに含まれるかどうかに依存してASTM規格を有する。利用されるプロセス油の種類は、エラストマー成分の種類と関連して習慣的に使用されるものであり、熟練したゴム化学者には、特定の用途における特定のゴムと共にどの種類の油が利用されるべきかが理解される。熱可塑性エラストマー組成物には、一実施形態において、油は、全組成物の0〜約30重量%のレベルで存在してもよく、一実施形態において、好ましくは、組成物の不透過性を最大化するために油は含まれない。
【0053】
一実施形態において、プロセス油は、従来のプロセス油およびスリップ剤の使用とは異なり、バリア特性を向上させることができるイソブチレンおよびn−ブテンのオリゴマーである。ポリブテンとしても知られるイソブチレンおよびn−ブテンのオリゴマーは、熱可塑性加硫物中に、熱可塑性加硫物組成物の総重量を基準として約10〜約30重量%のレベルで存在し、約15〜約25重量%が好ましい。
別の実施形態において、処理特性を改善するために、シリコーン流体および脂肪酸アミド等の1種または複数種のスリップ剤、好ましくはポリジメチルシロキサン等のシリコーン流体が含まれてもよい。任意の効果的な量の添加剤が使用され得る。典型的には、その量は、組成物の総重量を基準として約0.05〜約5重量%、好ましくは約0.05〜約3重量%の範囲である。
【0054】
したがって、本発明は、以下の本発明の実施形態を提供する。
A.エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)を含む熱可塑性樹脂と、その中に分散した硬化ゴムと、EVOH−ゴム相溶化剤とを含む、熱可塑性加硫物。
B.EVOHが、20〜50mol%のエチレンおよび少なくとも90%の鹸化を含む、実施形態Aの熱可塑性加硫物。
C.ゴムが、ジエン系ゴムを含む、実施形態Aまたは実施形態Bの熱可塑性加硫物。
D.ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレン−co−p−メチルスチレンゴム、およびそれらの混合物から選択される、実施形態Aから実施形態Cまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性加硫物。
E.ゴムが、ブチルゴム、ハロブチルゴムおよびそれらの混合物から選択され、EVOH−ゴム相溶化剤が、飽和ゴムを含む、実施形態Aから実施形態Dまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性加硫物。
F.飽和ゴムが、スチレン−イソブチレンブロックコポリマーまたは水素化スチレンブロックコポリマーを含む、実施形態Eの熱可塑性加硫物。
G.ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)を含み、EVOH−ゴム相溶化剤が、ポリエチレンを含む、実施形態Aから実施形態Fまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性加硫物。
H.ポリエチレン相溶化剤が、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む、実施形態Gの熱可塑性加硫物。
I.EVOH−ゴム相溶化剤が、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリプロピレンまたはそれらの組合せをさらに含む、実施形態Gから実施形態Hまでの熱可塑性加硫物。
【0055】
J.充填剤、硬化系、シリコーン流体、可塑剤またはそれらの組合せをさらに含む、実施形態Aから実施形態Iまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性加硫物。
K.液体ポリブテンをさらに含む、実施形態Aから実施形態Jまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性加硫物。
L.空気タイヤにおける空気バリア層として形成される、実施形態Aから実施形態Kまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性加硫物。
M.実施形態Aから実施形態Kまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性加硫物を含む、タイヤインナーライナー。
N.実施形態Aから実施形態Kまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性加硫物を含む層と共押出しされたエラストマー層を含むホース。
O.ブチルゴム、ハロブチルゴムおよびそれらの組合せから選択される、100重量部の硬化性エラストマーと、10〜100重量部の熱可塑性エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)と、約30〜約40重量部のエラストマー性スチレン−イソブチレンブロックコポリマーまたはエラストマー性水素化スチレンブロックコポリマーと、硬化性エラストマー用硬化パッケージとを含み、組成物の約10〜約30重量%のイソブチレンおよびn−ブテンのオリゴマーを含んでもよく、0〜約60重量部の充填剤を含んでもよく、組成物の約0.05〜約5重量%のシリコーン流体を含んでもよい、熱可塑性エラストマー。
P.約30〜約40重量部のエラストマー性水素化スチレンブロックコポリマーを含み、水素化スチレンブロックコポリマーは、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン)(SEP)、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)(SEPS)、水素化ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SEBS)、水素化ポリ(スチレン−b−イソプレン/ブタジエン−b−スチレン)(SEEPS)、およびそれらの組合せから選択される、実施形態Oの熱可塑性エラストマー。
【0056】
Q.エチレン−プロピレンゴムおよびポリプロピレンを含む熱可塑性加硫物と、熱可塑性エラストマー組成物の総重量を基準として10〜50%の、(i)熱可塑性エラストマー組成物の5〜40重量%を占める熱可塑性エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)ならびに(ii)熱可塑性エラストマー組成物の10〜45重量%の改質剤であって、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびポリプロピレンワックスのうちの1種または複数を含む改質剤とを含む、熱可塑性エラストマー組成物。
R.10〜30重量%の直鎖状低密度ポリエチレンを含む、実施形態Qの熱可塑性エラストマー組成物。
S.改質剤が、組成物の1〜5重量%のポリプロピレン−EVOHリグラインド安定剤をさらに含む、実施形態Rの熱可塑性エラストマー組成物。
T.エチレン−プロピレンゴムおよびポリプロピレンの混合物を動的に加硫して、熱可塑性加硫物を得るステップ、ならびにステップ(a)からの熱可塑性加硫物を、EVOHおよび改質剤と溶融混合するステップにより調製される、実施形態Qから実施形態Sまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性エラストマー組成物。
U.実施形態Oから実施形態Sまでのいずれか1つまたはいずれかの組合せの熱可塑性エラストマーを動的に加硫することにより得られる、熱可塑性加硫物。
V.熱可塑性樹脂、ゴムおよび硬化パッケージを組み合わせるステップと、組合せを動的に加硫して熱可塑性加硫物(TPV)を形成するステップとを含む、熱可塑性加硫物を調製する方法において、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)およびEVOH−エラストマー相溶化剤をTPVに組み込んで、ガスバリア特性を改善するステップを含む改善。
W.EVOHが、動的加硫ステップ中に熱可塑性樹脂に組み込まれる、実施形態Vの改善。
X.EVOHが、加硫後の溶融混合ステップにおいてTPVに組み込まれる、実施形態Vまたは実施形態Wの改善。
【実施例】
【0057】
例において使用される成分として、以下の市販の製品を使用した。
【表1】
【0058】
本発明の組成物の特性を決定する上で、以下の測定法(標準)を使用した:硬度(ショアA)−ASTM D2240またはISO 868;最終引張強度−ASTM D412;M100(弾性率)−ASTM D412;最終伸び−ASTM D412;引張永久歪み−ASTM D412;圧縮永久歪み−ASTM D395(B);LCR粘度−Dynasco社製KAYENESS実験室毛管レオメーターで204℃および1200s−1で測定。
【0059】
例1〜2:表2中の成分の比率でクロロブチル−EVOH TPVを調製した。
【表2】
【0060】
例1および2の熱可塑性加硫物の調製において、以下の一般手順を使用した。BRABENDERミキサー(mixxer)等の典型的な熱可塑性樹脂配合機器内で、組成物を調製した。混合は、窒素ブランケットの存在下、180℃において100rpmで行った。クロロブチルゴム、EVOHおよびSEEPSを、まずMgO、ZnStおよびZnOと共にミキサー内に投入し、次いで可塑剤油の第1の部分(半分)を添加し、これらの成分を約3分間混合すると、BRABENDERミキサー上のトルク読取値により示されるような均質なブレンドが得られた。次いで、ZnOおよびDBDTCを慎重に添加し、2分間混合を継続した。最後に、残りの量の油可塑剤を添加し、混合をさらに2分間継続してから、ブレンドを排出した。
次いで、CARVER流体圧プレスで、ブレンドを12cm×14cmの寸法の2mm厚のパッドに成形した。約7グラムの均質化されたポリマーを、TEFLON(商標)被覆アルミニウム箔でライニングされた真鍮圧盤の間で成形した。10.2×10.2cm(4インチ×4インチ)正方形開口部を有する0.08cm(0.033インチ)厚のチェースを使用して、試料厚を制御した。最小限の圧力下で170℃または180℃での1分間の予熱後、流体圧荷重を徐々に44.5〜66.7kN(10000〜15000lb)に増加させ、そこで3分間保持した。続いて、水冷されたプレスの圧盤の間で、試料および成形プレートを、44.5〜66.7kN(10000〜15000lb)荷重下で3分間冷却した。物理的特性試験の前に、プラークを室温で最低24時間平衡化させた。
【0061】
【表3】
【0062】
表3中のデータは、空気バリア特性を向上させるためのEVOHを含むクロロブチル系TPVが柔軟性であり、処理性のための低溶融粘度を有していたことを示している。
例3〜5:表4中の成分の比率で、EPDM−EVOH TPVを調製した。
【0063】
【表4】
【0064】
例3から5の熱可塑性加硫物の調製において、以下の一般手順を使用した。SANTOPRENE TPV、LLDPE、EVOH、および他の配合成分を、まず約45mLの混合ヘッドを有するBRABENDER溶融ミキサー内で混合した。BRABENDERミキサーは、100rpmおよび180℃の温度で操作した。この温度での混合時間は5〜10分間であり、この後に試料を混合チャンバから取り出した。均質化された試料を、分析のために、上述と同様の様式で、CARVER流体圧プレスで圧縮下でフィルムとして成形した。物理的特性について試料を試験したが、選択された結果を表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5中のデータは、市販のEPDM/PP TPVであるSANTOPRENE 8201−60 TPVをEVOHおよび相溶化剤で改質して、匹敵するまたは改善された硬度およびエラストマー特性を維持しながら、空気バリア特性を向上させることができることを示している。
特性、測定単位、条件、物理状態またはパーセンテージの特定の組を表すもの等の、上記明細書または以下の特許請求の範囲において列挙されるいかなる数の範囲も、参照または他の方法により、そのように列挙される任意の範囲内に包含される数または範囲の任意の部分集合を含む、そのような範囲内に含まれる任意の数を、本明細書に文字通り明示的に組み込むことを意図する。
本明細書に記載の全ての文献は、本出願および特許請求の範囲と矛盾しない限り、いかなる特許出願および/または試験手順も含めて、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の原理、好ましい実施形態および動作形態が、上述の明細書において説明されている。本明細書において、本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、単に本発明の原理および用途を説明するものであることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲により定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱せずに、例示的実施形態に対して様々な修正が行われてもよいこと、および他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。