(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による化学反応装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による化学反応装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による化学反応装置は、リアクターの上方側が、リアクターの長さ方向に対して湾曲形状を有しており、また、長さ方向に直交する方向に対してアーチ形状を有しているものである。
【0017】
図1は、本実施の形態による化学反応装置1の構成を示す図である。本実施の形態による化学反応装置1は、混合部12と、リアクター13と、マイクロ波発生器14と、導波管15と、マイクロ波制御部16と、触媒分離部17と、処理液貯留槽18とを備える。
【0018】
混合部12は、原料と固体触媒とを混合させる。混合部12は、原料等と反応剤とを混合させてもよい。原料は、複数の物質を含むものであってもよい。例えば、リアクター13においてエステル化を行う場合には、油脂とアルコールが原料であってもよい。その原料と、固体触媒とは、
図1で示されるように、ポンプ11によって混合部12に供給されてもよく、または、他の方法によって混合部12に供給されてもよい。混合部12は、例えば、羽根状の部材や翼状の部材、スクリュー状の部材を回転させることによって、2以上の物質を混合してもよい。なお、本実施の形態では、原料と混合される触媒が固体触媒(不均一系触媒)である場合について説明するが、触媒は液状の触媒(均一系触媒)であってもよい。また、固体触媒は、リアクター13内で流動床を形成してもよく、または、そうでなくてもよい。また、その固体触媒の形状は問わない。固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状(中空であってもよく、そうでなくてもよい)、球状、ペレット状、リング状、シェル状等であってもよい。また、その固体触媒は、例えば、マイクロ波吸収性もしくはマイクロ波感受性を有してもよく、または、そうでなくてもよい。固体触媒がマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する場合には、後述するリアクター13の内部においてマイクロ波を照射した際に、固体触媒がマイクロ波によって加熱されることになり、その固体触媒近傍での化学反応が促進されることになる。なお、そのマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性については、照射されるマイクロ波の周波数やリアクター13の内部の温度等に依存することになる。すなわち、使用するマイクロ波の周波数、及び原料を反応させるリアクター13の内部の温度において、誘電損失係数の高いものがマイクロ波吸収性の高いものとなる。したがって、例えば、そのようなマイクロ波吸収性の高い物質を含む固体触媒を用いるようにしてもよい。例えば、2.45GHzのマイクロ波が照射される場合には、マイクロ波吸収性を有する物質として、フラーレンを除くカーボン類(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、または活性炭など)や、鉄、ニッケル、コバルト、またはフェライト等がある。したがって、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性を有する物質を含むものであってもよい。具体的には、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよく、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒とを組み合わせたコンポジットであってもよく、または、マイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよい。そのコンポジット化は、例えば、物理吸着によって行われてもよく、化学結合によって行われてもよく、合金化によって行われてもよく、または、その他の方法によって行われてもよい。また、混合部12において、リアクター13での反応に備えて、予備的な加熱を行ってもよく、または、行わなくてもよい。その予備的な加熱を行う場合には、原料等がリアクター13に入る時点において所望の温度または所望の温度幅となるように、混合部12における予備的な加熱の温度が制御されることが好適である。なお、混合部12での予備加熱が行われない場合には、その予備加熱に対応する加熱がリアクター13において行われてもよい。混合部12で混合された原料と固体触媒は、リアクター13に入れられる。
【0019】
リアクター13は、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で入れられる水平方向に延びた形状を有する反応器である。そのリアクター13は、フロー式のものであってもよく、またはバッチ式のものであってもよい。前者の場合には、リアクター13は、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式の反応器となる。なお、内容物の流れる方向は、リアクター13の長さ方向である。本実施の形態では、リアクター13がフロー式のものである場合について主に説明する。
図1で示されるリアクター13では、図中左右方向がリアクター13の長さ方向であり、図中左側から右側に内容物が流れることになる。したがって、内容物は、リアクター13の上流側、すなわち、図中の左側に入れられることになる。リアクター13の内容物は、例えば、原料と触媒との混合物である。そのリアクター13の内部を、混合部12で混合された、原料と触媒とが流れることになる。なお、リアクター13における化学反応によって、原料から生成物が生成されるため、リアクター13の内容物には生成物が含まれていると考えてもよい。すなわち、その内容物は、原料及び/または生成物であると言うこともできる。また、内容物の上方に未充填空間が存在するため、内容物は通常、気体以外のものである。また、内容物は、リアクター13内部において、流動性を有するものであり、また、液面が平らになるものであるため、固体(例えば、粉体や粒状体等)以外のものである。したがって、内容物は、液状のものである。その液状の内容物は、例えば、水や油、水溶液、コロイド溶液等のように、流動性の高いものであってもよく、または、スラリーや懸濁液のように、流動性の低いものであってもよい。なお、リアクター13内部において、内容物の液面は水平であることが好適であるため、液状の内容物は、流動性が低かったとしても、外部から振動を加えることなく、ある程度の時間の経過に応じて液面が水平になる程度の流動性を有していることが好適である。すなわち、液状の内容物は、外部からの振動がなくても、表面が変形しうる程度の流動性を有していることが好適である。なお、液面の水平状態は、完全な平坦であってもよく、または、細かい凹凸があったとしても全体として平坦であるといった程度であってもよい。内容物の流動性が高くない場合には、完全な平坦にならないこともありうるからである。リアクター13の内壁は、マイクロ波を反射する物質で構成されていることが好適である。マイクロ波を反射する物質としては、例えば、金属がある。このリアクター13の内部の構成については後述する。
【0020】
マイクロ波発生器14は、マイクロ波を発生する。本実施の形態による化学反応装置1は、1個のマイクロ波発生器14を備えていてもよく、または、2個以上のマイクロ波発生器14を備えていてもよい。そのマイクロ波の周波数は限定されるものではないが、例えば、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、24GHzであってもよく、915MHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。なお、化学反応装置1が2個以上のマイクロ波発生器14を備えている場合に、各マイクロ波発生器14の発生するマイクロ波の周波数は、同じであってもよく、または、異なっていてもよい。後者の場合には、例えば、リアクター13のフロー方向における上流側で周波数Aのマイクロ波が照射され、下流側で周波数Bのマイクロ波が照射されるようにしてもよく、または、リアクター13のフロー方向における同じ位置で、周波数A,Bのマイクロ波が照射されるようにしてもよい。なお、周波数Aと、周波数Bとは異なるものとする。
【0021】
導波管15は、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波を、リアクター13の未充填空間に伝送する。導波管15は、
図1で示されるように、マイクロ波発生器14の個数と同じ個数だけ存在してもよい。また、導波管15は、分岐を有し、未充填空間の2以上の位置にマイクロ波を伝送してもよい。なお、導波管15は、マイクロ波発生器14が発生するマイクロ波の周波数に応じた規格のものを使用することが好適である。
【0022】
マイクロ波制御部16は、後述する温度測定部25が測定した温度に応じて、リアクター13に照射するマイクロ波の出力(パワー)を制御する。このマイクロ波制御部16による制御によって、リアクター13の内部を所望の温度または所望の温度幅に維持することが可能となる。
【0023】
触媒分離部17は、リアクター13における反応後の生成物から触媒を分離する。原料と混合された触媒が固体触媒である場合には、例えば、フィルタによって固体触媒を分離してもよく、固体触媒と生成物の一方を沈澱させることによって固体触媒を分離してもよい。また、固体触媒が磁性体を含むものである場合には、磁石によって固体触媒を吸着することによって、固体触媒を分離してもよい。なお、分離された固体触媒は、適宜、再利用することができうる。また、液体の触媒を用いた場合には、触媒分離部17において、蒸留や抽出、中和を行うことによって、触媒を分離してもよい。
【0024】
処理液貯留槽18には、触媒分離部17において触媒の分離された生成物が入れられる。そして、適宜、最終的な製造物と副生成物等に分けられる。例えば、原料が遊離脂肪酸であり、リアクター13においてエステル化が行われた場合には、バイオディーゼル燃料である製造物と、水である副生成物とが得られる。その場合には、酸触媒が用いられる。また、例えば、原料がトリグリセリドであり、リアクター13においてエステル交換が行われた場合には、バイオディーゼル燃料である製造物と、グリセリンである副生成物とが得られる。その場合には、アルカリ触媒が用いられる。
【0025】
なお、リアクター13の後段に、リアクター13での反応後の物質を冷却する図示しない冷却器を備えてもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、その冷却器は、リアクター13での反応後の物質を水冷するものであってもよい。
【0026】
図2は、本実施の形態によるリアクター13の内部構造の一例を示す図である。
図2で示されるように、未充填空間22は、リアクター13の長さ方向(
図2では左右方向)の全体に対して存在することが好適であるが、そうでなくてもよい。
図2において、リアクター13は、内部が仕切り板21によって複数の室31,32,33,34に仕切られている。その複数の室31,32,33,34は、直列に連続した室である。前述のように、リアクター13の内部では、上方に未充填空間22が存在する。その未充填空間22に対して、導波管15を介して、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が照射される。なお、
図2では、リアクター13内部に単一の未充填空間が存在する場合、すなわち、すべての室31〜34において未充填空間が共有されている場合について示しているが、そうでなくてもよい。すなわち、未充填空間は、すべての室のうち、少なくとも一部の2以上の室において共有されていてもよく、または、すべての室において共有されていなくてもよい(この場合には、各仕切り板21によって未充填空間が分断されていることになる)。各導波管15は、各室32,33,34の中央付近の位置に設けられてもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、一の導波管15によって未充填空間22に伝送されたマイクロ波が、その下方に存在する室に主に照射される。なお、マイクロ波は未充填空間を伝わるため、例えば、室32の位置の導波管15によって伝送されたマイクロ波が、未充填空間を介して室31や室33の内容物にも照射されることになる。なお、導波管15を仕切り板21の位置、すなわち、仕切り板21の上方の位置に設けてもよい。そのようにすることで、一の導波管15によって未充填空間22に伝送されたマイクロ波が、その導波管15に対応する位置の仕切り板21で区切られる2個の室に主に照射されることになる。なお、未充填空間が複数の室で共有されている場合には、その共有されている未充填空間に伝送されたマイクロ波は、その未充填空間を共有している複数の室の内容物20に照射されることになる。仕切り板21は、マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、または、マイクロ波を反射するものであってもよい。マイクロ波を透過する材料としては、例えば、テフロン(登録商標)や、石英ガラス、セラミック、窒化珪素アルミナ等がある。したがって、マイクロ波透過性の仕切り板21は、そのようなマイクロ波を透過する材料で構成されたものであってもよい。また、マイクロ波を吸収する材料としては、例えば、フラーレンを除くカーボン類等がある。したがって、マイクロ波吸収性の仕切り板21は、そのようなマイクロ波を吸収する材料で構成されたものであってもよい。また、マイクロ波を反射する材料としては、例えば、金属がある。したがって、マイクロ波を透過しない仕切り板21は、そのようなマイクロ波を反射する材料で構成されたものであってもよい。また、仕切り板21は、マイクロ波透過性の材料、マイクロ波吸収性の材料、マイクロ波反射性の材料のうち、任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されてもよい。
【0027】
また、
図2で示されるように、化学反応装置1は、リアクター13内の内容物20を回転撹拌する1以上の撹拌手段23を有してもよい。
図2では、各室31〜34に撹拌手段23が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。1以上の室に撹拌手段23が存在しなくてもよい。また、
図2では、撹拌手段23が羽根状のものである場合について示しているが、これは撹拌手段23を模式的に示したものであり、その撹拌は、例えば、羽根状、翼状、または、棒状の回転部材が回転されることによって行われてもよい。その回転部材は、マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、マイクロ波反射性のものであってもよく、または、マイクロ波透過性の材料、マイクロ波吸収性の材料、マイクロ波反射性の材料のうち、任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されたものであってもよい。その回転は、例えば、シャフトに装着された回転部材がシャフトの回転に応じて回転されることによって行われてもよく、または、マグネティックスターラーのように、磁性を用いて回転部材が回転されてもよい。シャフトを用いる前者の場合には、そのシャフトは室ごとに独立したものであってもよく、または、複数の室において共通して用いられるものであってもよい。磁性を用いる後者の場合には、棒状や羽根状、翼状等の回転部材(磁性撹拌子)が、磁石によって回転されることになる。なお、撹拌手段23による内容物の撹拌が、内容物を上流から下流の方向、もしくは、逆の方向に流すために用いられてもよく、または、そうでなくてもよい。なお、回転撹拌については、すでに公知であり、それらの詳細な説明を省略する。
【0028】
ここで、撹拌手段23がリアクター13の内容物を回転撹拌する理由について簡単に説明する。撹拌手段23が内容物を撹拌する第1の理由は、マイクロ波によって内容物が均一に加熱されるようにするためである。内容物の種類や内容物の温度にも依存するが、あるマイクロ波が浸透する深さは決まっているため、内容物の全体に均一にマイクロ波が照射され、均一に加熱されるように撹拌することになる。また、未充填空間22における内容物の表面積が大きくなると、マイクロ波をより効率よく内容物に照射することができるようになる。したがって、内容物を撹拌する第2の理由は、マイクロ波の照射面積をより広くするためである。そのため、撹拌手段23による内容物の撹拌は、未充填空間22における内容物の表面に波が起こる程度の激しさであることが好適であるが、そうでなくてもよい(第1の理由に応じた撹拌が行われるのであれば、結果として内容物の全体が加熱され、それで十分である場合もあるからである)。また、このように、撹拌手段23を用いて原料等の撹拌を行うため、原料に密度の異なる2以上の物質が含まれている場合であっても、両者を適切に混合して反応させることができるようになる。例えば、縦型のフロー式のリアクターにおいて、アルコールと廃油のように、密度の違うものを反応させようとしても、両者が容易に分離してしまうことになるが、本実施の形態のように横型のフロー式のリアクター13であって、撹拌手段23が存在する場合には、両者を適切に混合して反応させることができるようになる。
【0029】
また、
図2で示されるように、リアクター13は、温度測定部25をも有してもよい。すなわち、本実施の形態による化学反応装置1は、リアクター13の内部の温度を測定する温度測定部25を備えていてもよい。リアクター13の内部の温度は、リアクター13の内容物の温度であることが好適である。
図2では、各室31〜34に温度測定部25が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。1以上の室に温度測定部25が存在しなくてもよい。また、
図2では、温度測定部25を模式的に示しているが、温度測定部25は、例えば、熱電対によって温度を測定してもよく、赤外線センサによって温度を測定してもよく、光ファイバーによって温度を測定してもよく、その他の方法によって温度を測定してもよい。温度測定部25が測定した温度(厳密に言えば、温度を示すデータである)は、マイクロ波制御部16に渡され、マイクロ波発生器14によるマイクロ波の出力の制御のために用いられる。その制御は、前述のように、各室31〜34の温度を所望の温度または所望の温度幅に維持するための制御である。例えば、
図2で示されるように、仕切り板21の位置にマイクロ波が照射される場合には、その位置に照射されるマイクロ波の出力の制御を、例えば、マイクロ波が照射される位置の仕切り板21で区切られる2個の室の温度のうち、一方を用いて行ってもよく、または、両者を用いて行ってもよい。前者の場合には、例えば、低い方の温度を用いて制御を行ってもよく、高い方の温度を用いて制御を行ってもよく、または、あらかじめ決められた室の温度を用いて制御を行ってもよい。後者の場合には、例えば、両者の平均を用いて制御を行ってもよく、または、両者の室の容量に応じた加重平均(室の容量に応じた重みを考慮した平均)を用いて制御を行ってもよい。
【0030】
ここで、リアクター13の上方側の形状について説明する。リアクター13の上方側は、
図1,
図2で示されるように、リアクター13の長さ方向(
図1、
図2における左右方向)に対して湾曲形状を有している。その湾曲形状は、上に凸となる湾曲形状である。すなわち、リアクター13の天井側の形状は、長さ方向における中央付近の未充填空間22の上下方向(鉛直方向)の高さが最も高くなっており、リアクター13の両端に向かうにしたがって、未充填空間22の上下方向の高さが徐々に低くなっていく形状となっている。なお、リアクター13の両端は、リアクター13の流入孔側、及び排出孔側である。その湾曲形状は、例えば、半楕円形状や、円弧形状等であってもよい。また、厳密に言えば、そのリアクター13の上方側の形状とは、リアクター13内部(すなわち、未充填空間22)の上方側の形状のことである。以下の説明においても同様である。また、リアクター13のフロー方向は、横型のフロー式のリアクター13の長さ方向であると考えてもよい。
【0031】
図3は、リアクター13を、その長さ方向から見た外観図であり、
図4Aは、
図1のIVA−IVA線断面図であり、
図4Bは、
図1のIVB−IVB線断面図である。
図4A,
図4Bにおいて、撹拌手段23のシャフト23a及び回転部材23bを示しているが、断面の位置によっては、回転部材23bが存在しない断面となることもありうる。また、それらの断面図において、リアクター13の上方側の形状は、アーチ形状となっている。すなわち、リアクター13の上方側は、リアクター13の長さ方向に直交する方向に対してアーチ形状を有している。なお、長さ方向に直交する方向とは、長さ方向に直交する方向のうち、水平な方向であると考えてもよい。そのアーチ形状は、上に凸となるアーチ形状である。すなわち、リアクター13の天井側の形状は、リアクター13の長さ方向に直交する方向における中央付近の未充填空間22の上下方向(鉛直方向)の高さが最も高くなっており、リアクター13の側面に向かうにしたがって、未充填空間22の上下方向の高さが徐々に低くなっていく形状となっている。そのアーチ形状は、例えば、半円形状であってもよく、半楕円形状であってもよく、その他のアーチ形状であってもよい。また、リアクター13の上方側は、長さ方向に湾曲した形状となっているため、
図4Aの未充填空間の高さは、
図4Bの未充填空間の高さよりも低くなっている。なお、リアクター13の下方側の断面形状は、
図4A,
図4Bで示されるように、下に凸となる半円形状であってもよく、または、その他の形状であってもよい。前者のようにすることで、回転部材23bがシャフト23aを中心に回転する場合にも、回転部材23bと、リアクター13の内部とが干渉しないようにすることができ、また、回転部材23bとリアクター13との隙間を少なくすることができるため、撹拌されずにリアクター13の一部に滞留する内容物をより少なくすることができる。なお、
図4A,
図4Bで示されるように、リアクター13の縦断面において、上方側のアーチ形状と、下方側の半円形状との間に、水平方向の幅が変化しない領域が存在してもよい。そして、内容物20の液面がその領域にある場合には、液面の高さが変化しても、その液面の面積が不変であるようになっていてもよい。
【0032】
図4Cは、未充填空間22に入射されるマイクロ波と、内容物20の液面とのなす角度について説明するための図である。なお、
図4Cでは、撹拌手段23を省略している。そのマイクロ波と、内容物20の液面とのなす角度θは、30〜75度(deg)の範囲内であることが好適である。そのような範囲内とすることによって、後述するように、マイクロ波を内容物20により均一に照射することができるようになる。なお、そのマイクロ波と、内容物20の液面とのなす角度θは、略45度であることがさらに好適である。ここで、略45度とは、測定誤差や設計誤差などの誤差の程度、45度からずれている角度も含むという意味である。また、マイクロ波は、内容物20のフロー方向に直交する方向(
図4Cの左右方向)における略中央の位置に照射されてもよい。すなわち、
図4Cで示されるように、内容物20の液面の左右方向における略中央に、マイクロ波が照射されてもよい。このようにすることで、液面で反射したマイクロ波が、リアクター13の天井側で反射され、再度、内容物20に照射されやすくなる。なお、略中央とは、測定誤差や設計誤差などの誤差の程度、中央からずれている位置も含むという意味である。また、マイクロ波が、その略中央の位置に照射されるとは、そのマイクロ波を伝送する導波管15を長さ方向に延長した場合に、その延長された導波管と、内容物の液面とが交わる位置が、その略中央の位置になる状況であると考えてもよい。
【0033】
なお、
図4Cで示されるように、未充填空間に入射されるマイクロ波と、内容物20の液面との角度θが略45°である場合には、通常、導波管15の開口部が
図2の未充填空間22において見えるようになっているが、
図1,
図2では、説明の便宜上、θ=90°である導波管15を示している。
【0034】
次に、仕切り板21について説明する。リアクター13に入った原料等の内容物20は、各室31〜34の間を流通し、最終的に下流(
図2のリアクター13の右端)から出力される。なお、その仕切り板21には、内容物が流通する流路が存在する。その流路は、内容物が主にリアクター13の上流側(
図2の左側)から、下流側(
図2の右側)に向かって流れていく流路であるが、一部は下流側から上流側に流れてもよい。その仕切り板21の流路は、例えば、仕切り板21の上方において内容物がオーバーフローする流路であってもよく、または、仕切り板21の隙間において内容物が流れる流路であってもよい。その仕切り板21は、例えば、特開2013−103160号公報で示されるものであってもよい。また、リアクター13の内部に複数の仕切り板21が存在する場合に、各仕切り板21は、同じ形状であってもよく、または、そうでなくてもよい。
【0035】
なお、リアクター13内における液面の高さは、全体としては、リアクター13の流出孔の位置によって決まることになる。通常、液面の高さは、その流出孔の位置よりも高くなるため、その流出孔の位置によって、液面の下限を決定することができる。また、各室の液面の高さは、その室と、隣接する後段の室との間の流路の高さによって決まることになる。この場合にも、通常、各室の液面の高さは、その室から流出する流路の位置と同程度になるため、その流路の位置によって、液面の高さを制御することもできうる。なお、通常は、リアクター13からの流出孔の高さと、各室から内容物が後段側に流出する流路の高さとはほぼ同程度となる。
また、リアクター13の壁面は、断熱材で覆われていてもよい。そのようにすることで、リアクター13の内部の熱が外部に放出されることを防止することができる。
【0036】
次に、本実施の形態による化学反応装置1の動作について簡単に説明する。原料と触媒とは、ポンプ11によって混合部12に供給される。そして、混合部12において混合され、リアクター13に投入される。そのリアクター13への原料等の供給速度は、あらかじめ決められていてもよい。
【0037】
リアクター13に供給された原料等は、撹拌手段23によって撹拌されながら、上流側から下流側に流れていく。その際に、マイクロ波発生器14が発生したマイクロ波が導波管15を介してリアクター13の未充填空間22に伝送され、原料等に照射される。その結果、原料等が加熱されることになり、原料等の反応が促進されることになる。なお、各室31〜34の温度は、温度測定部25によって測定され、図示しない経路によって、マイクロ波制御部16に渡される。そして、マイクロ波制御部16は、各室31〜34の温度が所望の温度または所望の温度幅となるようにマイクロ波発生器14の出力を制御する。
【0038】
リアクター13から出力された生成物は、触媒分離部17に投入され、触媒が分離される。そして、触媒の分離された生成物がポンプ11によって処理液貯留槽18に投入され、処理液貯留槽18において、目的とする製造物と副生成物とに分けられる。このようにして、最終的な製造物が得られることになる。また、このような処理が繰り返して実行されることにより、目的とする製造物が順次、生成されていくことになる。なお、リアクター13が、未充填空間の上部で開閉可能な構成になっているのであれば、例えば、リアクター13の内部の様子を確認したい場合、または、リアクター13の内部のメンテナンスを行いたい場合に、リアクター13の上部を開けることによって、リアクター13の内部にアクセスすることも可能である。
【0039】
なお、触媒分離部17における触媒の分離の処理や、処理液貯留槽18における製造物と副生成物との分離の処理は、生成物が投入されるごとに順次、行ってもよく、または、投入された生成物が一定の分量だけたまってから、一括して行ってもよい。すなわち、リアクター13における処理はフロー式(流通式)で処理されるが、その後段の触媒分離部17や処理液貯留槽18における処理は、フロー式で処理されてもよく、または、バッチ式で処理されてもよい。
【0040】
また、本実施の形態による化学反応装置1において行われる化学反応は、マイクロ波の照射自体、または、マイクロ波の照射に応じた加熱によって引き起こされる化学反応であれば、どのようなものであってもよい。例えば、エステル化やエステル交換によるバイオディーゼル燃料の生成であってもよく、エステルであるインク原料の生成であってもよく、その他の化学反応であってもよい。また、マイクロ波の照射と共に、超音波の照射も行われてもよく、または、そうでなくてもよい。
【0041】
[シミュレーション結果]
次に、シミュレーション結果について説明する。そのシミュレーションは、高周波3次元電磁界解析ソフトウェア「ANSYS(登録商標) HFSS」を用いて行った。なお、各シミュレーション結果において、色の薄い箇所(白っぽい箇所)がマイクロ波の強度が大きい箇所であり、色の濃い箇所(黒っぽい箇所)がマイクロ波の強度が小さい箇所である。
【0042】
シミュレーション1
このシミュレーションでは、未充填空間に入射されるマイクロ波と、内容物の液面とのなす角度θを15度から90度まで変化させた。
図6A〜
図6Fは、それぞれθ=15°、30°、45°、60°、75°、90°に対応するシミュレーション結果である。なお、各シミュレーション結果において、リアクターの上方側の形状は、長さ方向においても、長さ方向に直交する方向においてもフラットであるとした。すなわち、リアクターの断面形状を
図5で示されるものとした。また、
図6A〜
図6Fのそれぞれにおいて、内容物の液面位置が矢印で示されている。また、
図6A〜
図6Fのそれぞれにおいて、リアクターの長さ方向は、図中の左右方向である。したがって、
図6A〜
図6Fでは、リアクターを
図1や
図2と同じ方向から見ていることになる。
図6Aで示されるθ=15°の場合には、マイクロ波の多くが液面で反射し、液中に浸透していない。また、
図6Aでは、略中央付近に上下に延びるマイクロ波の弱い領域が存在し、その部分にはマイクロ波が適切に照射されていない。また、
図6Fで示されるθ=90°の場合には、マイクロ波が液中にも浸透しているが、その液中におけるマイクロ波のムラが大きく、マイクロ波が集中している箇所と、そうでない箇所とが存在する。また、
図6Aの場合と同様に、
図6Fにおいても、略中央付近に上下に延びるマイクロ波の弱い領域が存在する。
図6B〜
図6Eのそれぞれは、θ=30°、45°、60°、75°に対応し、液中においてマイクロ波の強度分布が比較的均等であることが分かる。したがって、マイクロ波を照射する角度としては、θ=30〜75度の範囲が好適であることが分かる。特に、
図6Cで示されるθ=45°の場合には、液中におけるマイクロ波の強度分布が均等であり、さらにリアクターの上方におけるマイクロ波の集中も存在していない。したがって、θ=45°付近でマイクロ波を照射することがさらに好適であることが分かる。そのため、以下のシミュレーション2、3では、θ=45°とした。なお、マイクロ波の照射方向は、そのマイクロ波を伝送する導波管の長さ方向であると考えてもよい。
【0043】
シミュレーション2
このシミュレーションでは、リアクター13の長さ方向においてリアクターの上方側が湾曲形状を有している場合と、そうでない場合とを比較した。
図7Aは、リアクター13の上方側が長さ方向において湾曲形状を有している場合のシミュレーション結果であり、
図7Bは、そうでない場合、すなわち、リアクターの上方側が長さ方向において湾曲形状を有しておらず、フラットである場合のシミュレーション結果である。なお、両方の場合において、長さ方向と直交する方向については、リアクターの上方側の形状がフラットであるとした。すなわち、リアクターの断面形状が
図5で示されるものとした。また、
図7A,
図7Bの図中の矢印によって、内容物のフロー方向を示している。したがって、
図7A,
図7Bでは、リアクターを
図1や
図2と同じ方向から見ていることになる。また、
図7A,
図7Bの両方において、リアクターの内部はマイクロ波を透過しない仕切り板によって7個の室に分けられている。そして、その両方において、左から1番目の室と、左から4番目の室との上方にそれぞれ、導波管が接続されているものとしている。
図7Aでは、その導波管15の接続されている位置の室におけるマイクロ波の強度が最も大きくなっているが、それ以外の室にも均等にマイクロ波が照射されている。一方、
図7Bでは、導波管の接続されている位置の室と関係なく、左から1番目と、左から3番目の室におけるマイクロ波の強度が大きくなっており、さらに右から1番目の室には全くマイクロ波が入っていない。そのように、長さ方向におけるリアクターの上方側の形状が湾曲形状である場合には、各室により均等にマイクロ波が照射され、マイクロ波の集中も比較的少ない。一方、長さ方向におけるリアクターの上方側の形状がフラット形状である場合には、マイクロ波が集中することになり、均等な照射を行うことができていない。したがって、リアクター13の上方側を、長さ方向に対して湾曲形状を有するようにすることは、マイクロ波の集中を低減し、マイクロ波がより均等に照射されるようにするために有効であることが分かる。
【0044】
シミュレーション3
このシミュレーションでは、リアクター13の長さ方向に直交する方向においてリアクターの上方側がアーチ形状である場合と、そうでない場合とを比較した。
図8Aは、リアクター13の上方側が、長さ方向に直交する方向においてアーチ形状を有している場合のシミュレーション結果であり、
図8Bは、そうでない場合、すなわち、リアクターの上方側が長さ方向に直交する方向においてフラットである場合のシミュレーション結果である。なお、両方の場合において、長さ方向については、リアクターの上方側の形状がフラットであるとした。すなわち、リアクターの長さ方向のどの位置での断面も同じ形状となる。また、
図8A,
図8Bの両方において、内容物の液面位置が矢印で示されている。また、
図8A,
図8Bでは、リアクターを
図3と同じ方向から見ていることになる。なお、
図8A,
図8Bでは、仕切り板を透視している。
図8Aで示されるように、長さ方向に直交する方向において、リアクター13の上方側がアーチ形状を有する場合には、そのリアクター13の上方側におけるマイクロ波の集中がほとんど見られなかった。それに対し、
図8Bで示されるように、長さ方向に直交する方向において、リアクターの上方側がアーチ形状を有していない場合には、そのリアクターの上方側において、マイクロ波の集中している箇所があった。特に、
図8Bの右上の箇所においては、リアクターの上面付近においてマイクロ波が集中しており、リアクターの上面板が異常加熱されるおそれがある。したがって、リアクター13の上方側の形状を、長さ方向に直交する方向に対してアーチ形状とすることは、未充填空間におけるマイクロ波の集中を低減するために有効であることが分かった。
【0045】
なお、シミュレーション結果3から、リアクター13の内壁が90°またはそれ未満の角度(鋭角)で折れ曲がっている箇所(例えば、
図8Bの右上の箇所等)が存在すると、その箇所にマイクロ波が集中する可能性があると考えられる。したがって、リアクター13の内部全体、または少なくともリアクター13の未充填空間において、リアクター13の内壁が90°を超える角度(鈍角)によって連続していることが好適であると考えられる。
【0046】
以上のように、本実施の形態による化学反応装置1によれば、リアクター13の上方側の形状を、リアクター13の長さ方向において湾曲形状としたり、長さ方向に直交する方向においてアーチ形状としたりすることによって、内容物以外の箇所、例えば未充填空間等におけるマイクロ波の集中を低減することができ、また内容物により均等にマイクロ波が照射することができるようになる。その結果、内容物が適切に加熱されることになり、内容物に関する化学反応が促進されることになる。なお、シングルモードの場合には、マイクロ波の定在波を用いるため、電界や磁界の集中する箇所を容易に把握できるが、マルチモードの場合には、電界や磁界の集中する箇所を把握することは非常に難しい。しかしながら、本実施の形態による化学反応装置1のリアクター13のような形状とすることにより、マルチモードであっても、未充填空間等におけるマイクロ波の集中を低減させることができるようになる。また、目的としていない箇所におけるマイクロ波の集中を低減できることによって、エネルギー効率も向上しうると考えられる。
【0047】
また、未充填空間に入射されるマイクロ波と、内容物の液面とのなす角度θを30°〜75°の範囲内とすることにより、内容物により均等にマイクロ波を照射することができるようになる。さらに、その角度θを略45°とすることによって、そのことがより顕著になると共に、未充填空間におけるマイクロ波の集中を低減できるようになる。
【0048】
また、マイクロ波を、リアクター13の長さ方向に直交する方向における略中央の位置に照射することによって、内容物の液面で反射したマイクロ波が、リアクター13の上方側によって反射された際に、その反射されたマイクロ波が内容物に照射される可能性を高めることができと考えられる。
【0049】
なお、上記説明では、リアクター13内を流れる内容物に対してマイクロ波が照射される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、リアクター13に、内容物を満たし、内容物の投入を停止した後に未充填空間を介して内容物にマイクロ波を照射し、そのマイクロ波の照射を終了した後に、新たな内容物をリアクター13に投入することによって、反応後の内容物が排出されるようにしてもよい。そして、そのような内容物のフローと、マイクロ波の照射とを交互に繰り返して行うようにしてもよい。また、その場合において、新たな内容物をリアクター13に投入している際にも、マイクロ波を内容物に照射するようにしてもよい。また、上述のように、リアクター13を、バッチ式のリアクターとして用いてもよい。リアクター13をバッチ式のリアクターとして用いる場合には、例えば、内容物を排出するための排出孔がリアクター13の底部に設けられていてもよい。
【0050】
また、本実施の形態では、原料と触媒とを混合する混合部12が存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、あらかじめ混合された原料と触媒とを用いる場合や、リアクター13において混合をも行う場合、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっている場合、リアクター13内を流れる固体触媒に代えて固定床の固体触媒を用いる場合、または、触媒を使用しない場合などには、化学反応装置1は、混合部12を備えなくてもよい。なお、固定床の固体触媒を用いる場合には、通常、その固定床の固体触媒はリアクター13の内部に存在することになる。その固定床の固体触媒は、例えば、リアクター13の内壁に貼着されたものであってもよく、または、リアクター13の内部において触媒充填層やカラム等に充填されることによって固定されたものであってもよい。その固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状(中空であってもよく、そうでなくてもよい)、球状、ペレット状、リング状、シェル状、ハニカム状、発泡体状、繊維状、布状、板状、または、その他の形状であってもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、リアクター13が、
図2で示されるように、直列に連続した4個の室31〜34を有する場合について説明したが、この室の個数は1個であってもよく、または、2個以上であってもよい。通常、室の数が多いほど、リアクター13の流入孔から流出孔に対して原料が短絡して流れることを効果的に防止できる。
【0052】
また、本実施の形態では、化学反応装置1が温度測定部25とマイクロ波制御部16とを備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、マイクロ波の出力をあらかじめ決められた値にすることによって、リアクター13の内部の温度を所望の温度や温度幅に維持することができる場合には、温度を用いたマイクロ波の出力の制御を行わなくてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、リアクター13の後段に触媒分離部17を備えた場合について説明したが、そうでなくてもよい。他の装置によって触媒を分離する場合や、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっている場合、リアクター13内を流れる固体触媒に代えて固定床の固体触媒を用いる場合、リアクター13での化学反応に触媒を用いない場合などのように、本実施の形態による化学反応装置1において触媒の分離を行わなくてもよい場合には、触媒分離部17を備えていなくてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、原料と触媒とが混合されてリアクター13に投入される場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、原料のみがリアクター13に投入されてもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合には、リアクター13の内部を、原料のみが流れてもよい。すなわち、リアクター13の内容物は、例えば、複数の原料の混合物であってもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合であっても、例えば、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっているときには、リアクター13の内部を原料と触媒とが流れてもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合には、混合部12は、例えば、原料を混合させてもよく、または、原料(基質)と反応剤とを混合させてもよい。また、その原料等の混合が必要ない場合には、前述のように、化学反応装置1は、混合部12を備えていなくてもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、リアクター13内の原料を撹拌する1以上の撹拌手段23を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、リアクター13がマイクロ波を原料の全体に容易に照射することができるような構成である場合(例えば、リアクター13の内径が小さい場合等)には、撹拌手段23がなくてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、化学反応装置1が処理液貯留槽18を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、化学反応装置1から出力された生成物や副生成物が混合したものについて、他の装置において生成物の抽出等が行われてもよい。
【0057】
また、本実施の形態において、リアクター13の上方側の形状が、リアクター13の長さ方向において湾曲形状である場合について説明したが、そうでなくてもよい。また、リアクター13の上方側の形状が、リアクター13の長さ方向に直交する方向においてアーチ形状である場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、リアクター13の上方側の形状は、リアクター13の長さ方向において湾曲形状であるが、リアクター13の長さ方向に直交する方向においてアーチ形状でなくてもよく、リアクター13の長さ方向において湾曲形状でないが、リアクター13の長さ方向に直交する方向においてアーチ形状であってもよく、または、リアクター13の長さ方向において湾曲形状でなく、リアクター13の長さ方向に直交する方向においてアーチ形状でなくてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、未充填空間に入射されるマイクロ波と、内容物の液面とのなす角度が30度以上、75度以下の範囲内である場合について説明したが、そうでなくてもよい。その角度が、その範囲外であってもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、マイクロ波が、リアクター13の長さ方向に直交する方向における略中央の位置に照射される場合について説明したが、そうでなくてもよい。それ以外の位置にマイクロ波が照射されてもよい。
【0060】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【課題】リアクター内部において、一部の箇所にマイクロ波が集中することを低減でき、またマイクロ波が内容物により均等に照射されるようにすることができる化学反応装置を提供する。
【解決手段】化学反応装置1は、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式のリアクター13と、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器14と、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波を、リアクター13の未充填空間に伝送する導波管15と、を備える。そして、リアクター13の上方側は、内容物のフロー方向に対して湾曲形状を有している。