(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地震の際には、埋設管用クッション材を構成する砂のせん断抵抗が著しく低下して砂粒子の相互移動が起こり、このとき砂粒子間の間隙が水で飽和されていると、砂粒子間の間隙の水圧が増加して液状化の状態が発生する。その結果、埋設管に通常より大きな力が作用して該埋設管に損傷が生じるおそれがあるといった問題がある。例えば2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震による地盤の液状化により、埋め戻し部の路面の沈下等が起こり、埋設管の損傷が多くの地域で発生した。本願発明者の知見によれば、これは埋設管を埋設する際に、埋設管用クッション材として砂のみを用いていることが要因であるものと推察される。
【0006】
本発明は上記従来の問題を解決するためになされたものであって、通常時には埋設管を高い強度でもって所定の位置に適切に保持することができる一方、地震が発生したときには、埋設管の周囲の地盤ないしは埋設管用クッション材に液状化が生じるのを防止して、埋設管の損傷を有効に防止することを可能にする手段を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る、埋設管の埋設に際して該埋設管の周囲に配置される埋設管用クッション材は、砂と、該砂より粒子径が小さく砂粒子間の間隙に位置する細粒土とを含んでいる。この埋設管用クッション材においては、砂及び細粒土の総質量に対する砂の質量の比率は好ましくは70〜80%の範囲内である。
【0008】
本発明に係る埋設管用クッション材においては、砂の粒径は0.075〜2mmの範囲内であるのが好ましく、細粒土の粒径は0.075mm以下であるのが好ましい。具体的には、細粒土として、粘土、シルト又は粘土とシルトの混合物などを用いることができる。ここで、細粒土ないしは粘土の粒径の下限はとくには限定されないが、本願発明者の知見によれば、実在する土では下限は0.0001mm程度であるものと考察される。また、本発明に係る埋設管用クッション材を構成する砂としては、その含水比が7.5〜12.5質量%の範囲内であるときに、密度が1.72〜2.00g/cm
3であり、地盤反力係数(K値)が2000〜10000MN/m
3であるものを用いるのが好ましい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「地盤反力係数(K値)」は、モールドの中の試料(砂又は埋設管用クッション材)に対して計測を行って求められる値を意味し、普通の地盤に対する計測を行って求められる値を意味するものではない。このため、本明細書及び特許請求の範囲における地盤反力係数の値(K値)は、普通の地盤に対する計測を行って求められるK値に比べてかなり大きな値となっている。
【0009】
また、本発明に係る埋設管の埋め戻し方法は、(a)地面に形成された凹部内に埋設管を配置し、(b)本発明に係る埋設管用クッション材を埋設管の周囲に配置し、(c)凹部内において埋設管用クッション材の上に埋め戻し材を充填することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る埋設管用クッション材、又は該埋設管用クッション材を用いた埋設管の埋め戻し方法によれば、比較的粒径が大きい砂の粒子間の間隙に、比較的粒径が小さい細粒土が存在するので、通常時には埋設管を高い強度でもって所定の位置に適切に保持することができる。また、震災が発生して埋設管の周囲の地盤が振動したときには、細粒土によって埋設管用クッション材内における急激なせん断抵抗の低下と過剰間隙水圧の上昇が抑制される。このため、埋設管の周囲の地盤ないしは埋設管用クッション材が液状化するのが防止ないしは抑制され、埋設管に損傷が生じるのが防止される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態を具体的に説明する。
図1(a)に示すように、水道管、下水道管、ガス管、通信ケーブル保護管等の埋設管を道路等の地面に埋設する際には、まず地面1に形成された掘削溝等の凹部2の内部の所定の位置に、埋設管3が配置される。次に、
図1(b)に示すように、凹部2の内部において、埋設管3の周囲に埋設管用クッション材4が配置される。この後、凹部2の内部において埋設管用クッション材4の上に土砂等の埋め戻し材5が配置され、埋設管3が埋め戻される。
【0013】
埋設管用クッション材4は、砂と、該砂より粒径が小さく砂粒子間の間隙に位置する細粒土とを含んでいる。この埋設管用クッション材4における、砂及び細粒土の総質量に対する砂の質量の比率は70〜80%の範囲内である。なお、埋設管用クッション材4が、実質的に砂及び細粒土のみで構成されている場合は、埋設管用クッション材4の質量に対する砂の質量の比率が70〜80%の範囲内となる。
【0014】
埋設管用クッション材4を構成する砂及び細粒土としては、それぞれ、粒径が0.075〜2mmの範囲内の砂及び粒径が0.075mm以下の細粒土が用いられる。ここで、砂は、粒径が0.42mm〜2mmの範囲内の粗砂であってもよい。なお、この砂は、その含水比が7.5〜12.5質量%の範囲内であるときに密度が1.72g/cm
3以上であるものを用いるのが好ましい。なお、本願発明者による実験では、その含水比が7.5〜12.5質量%の範囲内であるときに密度が1.72〜1.82g/cm
3である砂を用いているが、砂の密度が高ければ高いほど強い埋設管用クッション材4を形成することができる。したがって、埋設管用クッション材4を構成する砂の密度は1.82g/cm
3を超えていてもよいが、本願発明者の知見によれば、その上限は実在する砂では概ね2.00g/cm
3程度であるものと考察される。また、この砂はその地盤反力係数(K値)が2000MN/m
3以上であるものを用いるのが好ましい。本願発明者による実験では、その含水比が7.5〜12.5質量%の範囲内であるときに地盤反力係数(K値)が2000〜4000MN/m
3である砂を用いているが、砂の地盤反力係数(K値)が高ければ高いほど強い埋設管用クッション材4を形成することができる。したがって、埋設管用クッション材4を構成する砂の地盤反力係数(K値)は4000MN/m
3超えていてもよいが、本願発明者の知見によればその上限は実在する砂では概ね10000MN/m
3程度であるものと考察される。また、細粒土としては、粘土(地盤工学会基準では粒径0.005mm以下の土)、シルト(地盤工学会基準では粒径0.005〜0.075mmの土)又は粘土とシルトの混合物などを用いることができる。なお、細粒土ないしは粘土の粒径の下限は、とくには限定されないが、本願発明者の知見によれば、実在する土では下限は0.0001mm程度であるものと推察される。
【0015】
以下、埋設管用クッション材4を前記のように構成する根拠を詳しく説明する。前記のとおり、本願発明者は、地震が発生したときに、埋設管の周囲の地盤の振動により埋設管用クッション材を構成する砂のせん断抵抗が著しく低下し、このため各砂粒子間の間隙水の圧力が上昇して砂が液状化するのは、埋設管を埋設する際に、埋設管用クッション材として砂のみを用いていることが要因であるものと考察した。そこで、本願発明者は、砂を主成分とした上で、砂粒子間の間隙に適切な寸法の細粒土を存在させた埋設管用クッション材を用いれば、地震が発生したときに、埋設管の周囲の地盤ないしは埋設管用クッション材が振動しても、細粒土によって埋設管用クッション材内における急激なせん断抵抗の低下と過剰間隙水圧の上昇が抑制され、埋設管用クッション材の液状化が防止又は抑制されるものと考察した。
【0016】
そこで、本願発明者は、まず、砂のみからなる埋設管用クッション材と、砂と細粒土とからなり両者の配合率が互いに異なる3種の埋設管用クッション材とを調製し、これらの埋設管用クッション材について、突固めによる土の締固め試験(以下「締固め試験」という。)と、小型FWDによる地盤の剛性評価試験(以下「剛性評価試験」という。)とを行い、埋設管の埋め戻しに適した砂と細粒土の配合率を選定した。さらに、このように配合率が選定された埋設管用クッション材と、砂のみからなる埋設管用クッション材とについて振動実験を行い、選定された埋設管用クッション材が液状化に対する抵抗性が高いか否かを検証した。
【0017】
(実験に用いた砂及び細粒土)
前記の締固め試験、剛性評価試験又は振動実験(以下、「液状化抵抗性評価実験」と総称する。)で用いた埋設管用クッション材9を構成する砂は、建設工事により生じたガレキや建設発生土などを加工又は再生することにより製造された粒径が0.075〜2mmの範囲内の砂又は粒径が0.42〜2mmの範囲内の粗砂であり、滋賀県によってビワクルエコ製品ないしはリサイクル認定製品として認定され(認定番号b51)、株式会社山崎砂利商店によって製造・販売されている「洗い砂P」である。また、前記の各実験で用いた埋設管用クッション材9を構成する細粒土は、建設発生土等を処理又は加工することにより製造された再生土であって、その粒径は0.075mm以下であり、滋賀県によってビワクルエコ製品ないしはリサイクル認定製品として認定され(認定番号b52)、株式会社山崎砂利商店によって製造・販売されている「改良土Rs’−75」である。なお、「改良土Rs’−75」の粒径の下限は、限定される訳ではないが、0.0001mm程度であるものと推察される。
【0018】
なお、一般に、建設発生土等を処理又は加工することにより製造される細粒土ないしは粘土及び/又はシルトの需要は比較的少ないので、これらが過剰に製造された場合は、処分場に廃棄せざるをえない。本発明に係る埋設管用クッション材は、震災時における埋設管の周囲の地盤の液状化を防止することに加えて、このような需要が比較的少ない細粒土ないしは粘土及び/又はシルトを有効に活用する点においても有用なものといえる。
【0019】
液状化抵抗性評価実験には、埋設管用クッション材9として、下記の表1に示す試料1〜4を用いた。なお、本明細書及び図面において、「%」との記号は、「質量%」を意味するものとする。
【0021】
(締固め試験)
締固め試験は、表1に示す試料1〜4について、含水比w(%)を種々変えて、湿潤密度ρ
t(g/cm
3)及び乾燥密度ρ
d(g/cm
3)を算出ないしは測定し、乾燥密度ρ
dが最も高い試料を最適な埋設管用クッション材とした。
【0022】
(剛性評価試験)
剛性評価試験は、小型FWD(Falling Weight Deflectometer:重錘落下による荷重変位測定装置)を用いて行った。具体的には、締固め試験で得られた各試料を用いて形成された地盤について、小型FEDを用いて剛性評価を行った。小型FWDを用いて、載荷応力ないしは載荷荷重と、沈下量とを測定し、両者の関係から小型FWDによるK値(地盤反力係数)を求めることができる。そこで、このようにして求めたK値によって地盤の剛性を評価した。なお、K値は、下記の式1により算出することができる。
地盤反力係数K(MN/m
3)=載荷応力(MN/m
2)/変位量(m)………………………式1
【0023】
(振動実験)
振動実験は、埋設管用クッション材9が液状化に対する抵抗性が高い地盤を形成することができるか否かを検証するために、
図2に示す振動実験装置6を用いて、締固め試験及び剛性評価試験の試験結果に基づいて、実際の地盤を想定して行った。
【0024】
図2に示すように、振動実験装置6は、振動試験機7と、貯槽8とを備えている。そして、貯槽8内には埋設管用クッション材9が収容され、この埋設管用クッション材9の上面におもり10が載せられている。貯槽8の底壁の上面には間隙水圧計11が配設され、また貯槽8の外部において振動試験機7の上面には加速度計12が配設されている。ここで、間隙水圧計11及び加速度計12は、それぞれのケーブル13、14を介して、データロガ15に電気的に接続されている。また、振動試験機7は、ケーブル16を介して、パソコン17に電気的に接続されている。
【0025】
埋設管用クッション材9の液状化に対する抵抗性の高低の判定は、目視と、下記の式2により算出される過剰間隙水圧比ないしは過剰間隙水圧とに基づいて行った。
過剰間隙水圧比=過剰間隙水圧(kgf/cm
2)/拘束圧(kgf/cm
2)……………式2
この振動実験では、過剰間隙水圧比が0.95より大きいときに埋設管用クッション材9が液状化しているものと判定した。
【0026】
(液状化抵抗性評価実験の結果)
図3は、締固め試験により得た締固め曲線、すなわち前記の埋設管用クッション材の試料1〜4における、含水比と乾燥密度の関係を示すグラフである。
図3から明らかなとおり、最も高い乾燥密度を示しているのは試料2(砂80%、細粒土20%)であり、次に高い乾燥密度を示しているのは試料3(砂70%、細粒土30%)である。
【0027】
図4は、剛性評価試験により得たK値(地盤反発係数)と含水比の関係を示すグラフである。最も高いK値を示しているのは砂のみからなる試料1であり、次に高いK値を示しているのは試料2(砂80%、細粒土20%)である。
【0028】
締固め試験及び剛性評価試験の結果によれば、試料2は、乾燥密度が十分に高く、かつK値すなわち剛性も十分に高いものと評価される。また、試料3は、試料2には及ばないものの、比較的高い乾燥密度及びK値を示している。したがって、本発明に係る埋設管用クッション材においては、砂及び細粒土の総質量に対する記砂の質量の比率を70〜80%の範囲内に設定すれば、剛性が高く、かつ液状化に対する抵抗性が高い地盤を形成することができるものと推察される。そこで、試料2(砂80%、細粒土20%)と、砂のみからなる比較例としての試料1とについて振動実験を行い、両試料の液状化に対する抵抗性の検証を行った。
【0029】
振動実験は、
図2に示す振動実験装置6を用いて、およそ次のような手順で行った。
(1)貯槽8に所定の量の試料(埋設管用クッション材)を入れ、試料の上面におもり10を載せる。
(2)振動試験機7を動作させ、試料を収容している貯槽8に、所定の加速度で、矢印A、Bで示すように水平方向ないしは左右方向に振動させる。なお、時々刻々の加速度は加速度計12により測定・記録される。
(3)加速度を段階的(ステップ状)に変化(上昇)させ、試料の状態を目視しつつ、間隙水圧計11により時々刻々の試料の間隙水圧を測定・記録する。なお、各段階における加速度の大きさは試料ごとに異なる。
(4)目視による試料の観察と、間隙水圧が過剰間隙水圧を超えているか否かとにより、試料が液状化しているか否かを判定する。
【0030】
図5は、砂のみからなる試料1についての振動実験の結果を示すグラフである。この振動実験において、目視による観察では、加速度が第1段階(+/-0.25m/s
2)にあるときには液状化は認められなかったが、加速度が第2段階(+/-0.5m/s
2)に上昇したときに水の滲み出しが認められた。また、加速度が第2段階に上昇したときには、過剰間隙水圧が生じている(0.015kgf/cm
2を超えている)。したがって、加速度が第2段階に上昇したときに液状化が始まったものと判定される。そして、加速度が第3段階(+/-0.75m/s
2)まで上昇したときには、目視により液状化が観察され、また過剰間隙水圧がかなり大きくなっている。したがって、加速度が第3段階に上昇したときには、完全に液状化が生じているものと判定される。
【0031】
図6は、試料2(砂80%、細粒土20%)についての振動実験の結果を示すグラフである。この振動実験において、目視による観察では、加速度が第1〜第4段階(+/-0.5m/s
2〜+/-1.5m/s
2)にあるときには液状化は認められなかったが、加速度が第5段階(+/-1.8m/s
2)に上昇したときに水の滲み出しが認められた。また、加速度が第5段階に上昇したときには、過剰間隙水圧が生じている(0.015kgf/cm
2を超えている)。したがって、加速度が第5段階に上昇したときに液状化が始まっているものと判定される。そして、加速度が第6段階(+/-2.4m/s
2)まで上昇したときには、目視により液状化が観察された。したがって、加速度が第6段階に上昇したときには、完全に液状化が生じているものと判定される。
【0032】
図5及び
図6に示す実験結果によれば、砂のみからなる試料1では加速度が+/−0.5m/s
2となったときに液状化が始まっているので、砂のみからなる埋設管用クッション材は、地盤の振動に起因する液状化に対する抵抗性は比較的小さいものと考察される。これに対して、砂粒子間の間隙に細粒土が存在する試料2(砂80%、細粒土20%)では、加速度が+/−1.5m/s
2より小さいときには全く液状化は起こらず、加速度が+/−1.8m/s
2まで大きくなったときに液状化が始まっている。したがって、砂粒子間の間隙に適切な量の細粒土が存在する埋設管用クッション材、例えば砂及び細粒土の総質量に対する砂の質量の比率が70〜80%の範囲内である埋設管用クッション材、とくに砂及び細粒土の総質量に対する砂の質量の比率が80%である埋設管用クッション材は、剛性が高く、かつ地盤の振動に起因する液状化に対する抵抗性が大きいものと考察される。
【0033】
よって、砂粒子間の間隙に適切な量の細粒土が存在する本発明に係る埋設管用クッション材、又は該埋設管用クッション材を用いた埋設管の埋め戻し方法によれば、震災が発生して埋設管の周囲の地盤が振動したときに、埋設管の周囲の埋設管用クッション材が液状化するのが防止ないしは抑制され、埋設管に損傷が生じるのが防止される。
【課題】地震が発生したときに、埋設管の周囲の地盤ないしは埋設管用クッション材に液状化が生じるのを防止して、埋設管の損傷を有効に防止することを可能にする手段を提供する。
【解決手段】埋設管3の埋設時に該埋設管3の周囲に配置される埋設管用クッション材4は、砂と、該砂より粒子径が小さく砂粒子間の間隙に位置する細粒土とを含んでいる。埋設管用クッション材4においては、砂及び細粒土の総質量に対する砂の質量の比率は70〜80%の範囲内である。砂の粒径は0.075〜2mmの範囲内であり、細粒土の粒径は0.075mm以下である。砂としては、その含水比が7.5〜12.5%の範囲内であるときに、密度が1.72〜2.00g/cm