(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明に係る植物栽培装置、植物、植物栽培方法、及び、培地の一実施形態について説明する。
【0017】
〔植物工場の構成〕
まず、本実施形態に係る植物工場について、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る植物工場100の概略を示す断面図である。
図2に示すように、植物工場100は、その内部に植物栽培装置1が複数設置された構成となっている。植物栽培装置1は、植物20を育成する培養容器2を多段に積み重ねて多段栽培を行うものとして示されているが、これに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態では、植物工場100が、人工照明5が用いられ且つ温度を含めた環境条件を人工的に制御する完全制御型植物工場である場合を例に挙げて説明する。植物栽培装置1は、完全制御型植物工場内に設置されることで、外部と切り離された閉鎖的空間において植物の栽培を完全に制御して行うことができ、植物の大量生産が可能となる。
【0019】
なお、植物工場100において人工照明の設けられる場所は特に限定されるものではない。本実施形態では人工照明5が植物工場100の備える植物栽培装置1に設けられている場合を例に挙げて説明するが、例えば、人工照明が植物工場100の天井に設けられていてもよい。
【0020】
本件発明に係る植物工場100は、完全制御型植物工場に限定されるものではなく、例えば、太陽光を前記植物に照射する採光部を備えた太陽光利用型植物工場であってもよい。植物栽培装置1を太陽光型植物工場内に設置した場合には、果実を食用とする野菜(果菜類)の栽培に有利となる。また、植物の栽培に太陽光エネルギーを利用することで、植物の栽培コストの低減化を図ることが可能となる。
【0021】
植物栽培装置1は、植物工場100内に設置されることにより、光や温度を含めた環境条件を人為的にコントロールすると共に、無農薬で植物を栽培することが可能となり、栄養価が高く美味しい植物を提供することが可能となる。また、植物工場100で植物を栽培することで、季節や場所にあまりとらわれずに植物を連続生産することができるため、悪天候や耕地不足に悩まされることもなくなり、また、栽培工程を定量化することにより栽培コストを大幅に削減することもできる。
【0022】
〔植物栽培装置の構成〕
次に、本実施形態に係る植物栽培装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る植物栽培装置1の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る植物栽培装置1は、培養容器2、植物支持パネル4、人工照明5、及び、液体培地回路10を備えている。また、液体培地回路10は、液体培地タンク6、ポンプ7、加熱装置8、温度センサ8a、冷却装置9、温度センサ9a、及び、開閉バルブ11を備えている。そして、培養容器2には液体培地3が収容されており、液体培地3により植物20が育成される。
【0023】
(培養容器および培地)
本実施形態に係る培地は、植物を生育するための培地であって、酵母を含んでいる。なお、以降では、
図1に示すように培地が液体培地3である場合を例に挙げて説明するが、本件発明に係る培地はこれに限定されるものではなく、例えば土壌等の固体培地であってもよい。
【0024】
また、液体培地3が含んでいる酵母は、清酒酵母やビール酵母等の醸造用酵母、パン酵母、ワイン酵母、味噌醤油酵母等の一般的に食品や食品の製造に用いられる酵母であれば良く、特に制限されない。また、酵母は、その形態として、乾燥酵母や液状酵母の他に、酵母エキス(液状、粉末状等)を含む。酵母には、葉酸、ビタミン、ミネラル等の成分が豊富に含まれており、培地に含ませることで葉酸の供給源として好適に用いることができる。
【0025】
培地は、酵母を含むことで、栽培する植物の葉酸含有量を高め、酵母を含まない培地で栽培した植物の葉酸含有量の限界を超えた量の葉酸を含む植物を栽培することができる。また、培地に酵母が含まれることで、葉酸以外にもビタミンやミネラル等の人体に有効な成分を高濃度で含んだ植物を栽培することができる。また、培地は、葉酸供給源として自然物である酵母を含んでいることが好ましい。これによれば、従来の化学合成法で製造された葉酸を用いるよりも安い栽培コストでありながらも、高い濃度で葉酸を含む植物を栽培することが可能となる。
【0026】
本件発明に係る植物栽培装置1は、植物を生育するための酵母を含む培地(本実施形態では液体培地3)を収容した培養容器2を備えている。ここで、当該培養容器に収容される液体培地3に関しては、上述した通りであるため、その説明を省略する。
【0027】
本実施形態に係る植物栽培装置1は、培地として液体培地3を用いた水耕栽培を行うことで、固体培地を用いた土壌栽培を行う場合よりも培地の条件の制御が容易となる。また、植物栽培装置1は、液体培地3を用いることで、土壌栽培のように投与した肥料によって塩類濃度が高められ連作障害をもたらしたり、肥料が分解して生じる酸等が根に害を与える等の問題が生じない。更に、植物栽培装置1は、液体培地3を用いることで、根が液体培地の中を自由に伸びて当該液体培地3中の栄養成分や水を十分に吸収することができるため、生産性の向上を図ることが可能となり、また、清潔な栽培環境や作業の省力化を得ることが可能となる。
【0028】
植物栽培装置1は、培養容器2に酵母を含む液体培地3を収容することにより、栽培する植物の葉酸含有量を高め、酵母を含まない培地で栽培した植物の葉酸含有量の限界を超えた量の葉酸を含む植物を栽培することができる。また、植物栽培装置1は、植物の根に吸収させる葉酸をはじめとした栄養成分の量をコントロールすることができ、これら栄養成分を植物に過剰供給してしまうことによる植物の生育阻害を招かない。また、植物栽培装置1は、培養容器2を備えることで、液体培地3のpHを適切な値に保持することができ、植物の生育管理が容易となる。
【0029】
ちなみに、本実施形態では、培養容器2に収容する液体培地3は、pHが5.5以上6.5以下に調整されることが好ましい。ここで、pHが5.5未満の場合には、石灰、モリブデン、硫黄等の成分が根から吸収され難くなるため好ましくない。また、pHが6.5を超える場合には、鉄、マンガン、ホウ素、銅、亜鉛等の成分が根から吸収され難くなるため好ましくない。なお、この値は培地が固体培地である場合も同様である。
【0030】
また、本実施形態では、液体培地3における酵母の濃度が0.05wt%以上10wt%以下であることが好ましい。
【0031】
植物栽培装置1は、液体培地3における酵母の濃度が0.05wt%以上10wt%以下であることで、植物の生育を阻害することなく、酵母に含まれる葉酸をはじめとする様々な栄養成分を十分に根から吸収させることができる。ここで、酵母の濃度が0.05wt%未満の場合には、栽培する植物の葉酸含有量を十分に高めることが出来ない。また、酵母の濃度が10wt%を超える場合には、栽培する植物に過剰に栄養分が供給されて、植物が軟弱となり易い。
【0032】
なお、本件発明では、培地に含まれる酵母として、酵母を原料として製造された酵母エキスを用いることが好ましい。ここで、酵母エキスとは、酵母の有用な成分を種々の方法(酵素分解、熱水抽出、自己消化等)により抽出したエキスを言う。
【0033】
酵母エキス中には、アミノ酸、ペプチド、核酸成分、糖類、微量成分のビタミン類やミネラル分等が含まれているため、植物の葉酸吸収性をより高めることができる。なお、本件発明の酵母エキスは、市場で入手可能のものを使用することができるため、栽培コストの低減化を図ることができる。
【0034】
(液体培地回路)
植物栽培装置1は、
図1に示すように、少なくとも培養容器2と、液体培地3を加熱殺菌する加熱装置8と、液体培地3を搬送するポンプ7とを環状に接続して、液体培地3を循環させる液体培地回路10を備えている。
【0035】
図1に示す如く、植物栽培装置1は、液体培地回路10を備え当該液体培地回路10に設けられている液体培地を搬送する手段としてのポンプ7により液体培地3を循環させることで、培養容器2内の全ての植物20の根に酵母を十分に行き渡らせることができる。
【0036】
なお、酵母は培養容器2内の液体培地3中に含まれる雑菌の増殖を助長させることが考えられるが、本実施形態に係る植物栽培装置1によれば、液体培地回路10は、液体培地を殺菌する手段としての加熱装置8を備えている。これにより、液体培地3中における雑菌の増殖を防ぎ、植物をより健康に栽培することが可能となる。加熱装置8としては、例えば、ヒーター等を例に挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0037】
また、加熱装置8は、液体培地3に含まれる雑菌の数を、10
4CFU/g以下に抑えるよう液体培地3を加熱殺菌することが好ましい。これにより、植物栽培装置1は、植物をより健康に栽培することができる。
【0038】
更に、本実施形態に係る植物栽培装置1において、加熱装置8は、液体培地3を55℃以上70℃以下に加熱処理するものであることが好ましい。これにより、植物栽培装置1は、液体培地3中の栄養成分量を保持したまま、雑菌の増殖を抑えることができる。ここで、加熱処理後の液体培地3の温度が55℃未満の場合には、雑菌の増殖を十分に抑えることが出来ない。また、加熱処理後の液体培地3の温度が70℃を超える場合には、培養容器2に液体培地3を移す際の冷却に多大なエネルギーを要するため現実的でない。よって低温殺菌を行うのが望ましい。
【0039】
また、
図1に示すように、植物栽培装置1は、加熱装置8の液体培地送出口付近に加熱処理された液体培地3の温度を測る温度センサ8aを設けることで、加熱装置8を自動制御して液体培地3を上記温度範囲に調整することができる。なお、温度センサ8aは、加熱装置8内の液体培地3の温度を計測可能に設けられていてもよいし、その設置位置は特に限定されるものではない。
【0040】
なお、本実施形態では、植物栽培装置1が液体培地3を殺菌する殺菌装置として加熱装置8を備えている場合を例に挙げて説明したが、本件発明はこれに限定されるものではない。例えば、加熱装置8に換えて銀イオンによる殺菌装置、又は、紫外線による殺菌装置等を備えていてもよいし、加熱装置8と他の殺菌装置とを組み合わせた殺菌装置であってもよい。
【0041】
また、
図1に示すように、植物栽培装置1の備える液体培地回路10は、加熱装置8により加熱殺菌された後の液体培地3を冷却する手段として、冷却装置9を備えている。本実施形態では、冷却装置9は、加熱殺菌された液体培地3を、10℃以上25℃以下に冷却する。
【0042】
冷却装置9を加熱装置8の下流側に接続して、加熱装置8で加熱された液体培地3を10℃以上25℃以下に冷却することで、例え培養容器2と加熱装置8との距離が短くとも、高温となった液体培地3が培養容器2内に到達するのを防ぐことができるため、植物の根を弱らせることがない。ここで、冷却処理後の液体培地3の温度が10℃未満の場合には、液体培地3に含まれる栄養成分を効率良く植物に供給することが出来ない。また、冷却処理後の液体培地3の温度が25℃を超える場合には、植物の根を弱体化させてしまい植物が枯れる恐れがある。なお、本実施形態に係る植物栽培装置1では、冷却装置9として、冷却コイル等を備えることができる。
【0043】
また、
図1に示すように、植物栽培装置1は、冷却装置9の液体培地送出口付近に冷却処理された液体培地の温度を測る温度センサ9aを設けることで、冷却装置9を自動制御して液体培地3を上記温度範囲に調整することができる。もちろん、温度センサ9aが設けられる位置は、温度センサ8aと同様特に限定されるものではない。
【0044】
なお、液体培地3中の雑菌の繁殖を防ぐためには、当該植物栽培装置1が設置される空間内(本実施形態では、植物工場100内)の雑菌を空気清浄器等を用いて排除することも効果的である。具体的には、当該植物栽培装置1が設置される空間内のクリーン度を、ISO規格(ISO14644−1:1999)でクラス4以上とすることが好ましい。
【0045】
ちなみに、本実施形態に係る植物栽培装置1は、
図1に示すように、植物20を植物支持パネル4に固定し、人工照明(蛍光ランプ、発光ダイオード等)5の光を照射して植物を栽培する構成を採用することができる。また、植物栽培装置1は、培養容器2よりも上流側に液体培地3を導入する量を調整可能な開閉バルブ11を備え、培養容器2よりも下流側に液体培地3の肥料濃度やpHを調整する液体培地タンク6を備える構成とすることもできる。もちろん、開閉バルブ11及び液体培地タンク6の設けられる位置は、これに限定されるものではない。
【0046】
また、本実施形態に係る植物栽培装置1により栽培される植物は、葉物野菜であることが好ましい。植物栽培装置1は、栽培する植物が葉物野菜である場合、葉酸の含有量をより効果的に高めることができる。ここで、葉物野菜が、アブラナ科、キク科、及び、アカザ亜科の少なくともいずれかであれば、更に葉酸の含有量を高めることができるため好ましい。なお、栽培する植物については、後述する。
【0047】
〔植物栽培方法〕
上述した植物栽培装置1は、これを用いて植物を栽培する植物栽培方法に適用することができる。ここで、本実施形態に係る植物栽培装置1において植物を栽培する方法について簡単に説明する。
【0048】
本実施形態に係る植物栽培方法は、上記で説明した植物栽培装置1において酵母を含む培地(液体培地3)を用いて植物を生育する工程(以降、酵母使用育成工程とも記載する)を含んでいる。ここで、植物を生育するために用いられる液体培地3に関しては、上述した通りであるため、その説明を省略する。
【0049】
この植物栽培方法によれば、酵母を含む液体培地3を用いて植物を生育することで、酵母に含まれる葉酸をはじめ、タンパク質、ビタミンB群、ビタミンD、アミノ酸、ミネラル等の栄養成分を十分に含んだ植物を栽培することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る植物栽培方法において、液体培地3は、植物の成熟期に用いる(すなわち、酵母使用育成工程を植物の成熟期に行う)ことが好ましい。これによれば、栽培する植物の根を液体培地に浸ける時期を植物の成熟期とすることができるため、植物の弱体化を招かない。仮に、育成植物を成長が未熟な段階で酵母を含む液体培地3に浸けると、植物の弱体化を招き、却って生育の妨げとなる場合がある。従って、本実施形態に係る植物栽培方法では、植物が成熟期に満たない段階では液体培地3と隔離された場所で生育させることが望ましい。
【0051】
また、本件発明に係る植物栽培方法は、液体培地3を殺菌する殺菌工程を含んでいることが好ましく、殺菌工程において加熱による殺菌を行う場合には加熱された液体培地3を冷却する冷却工程を含んでいることが更に好ましい。なお、液体培地3の殺菌や冷却については、上述した通りであるため、その説明を省略する。
【0052】
〔植物〕
本実施形態に係る植物は、上述したように、植物栽培装置1において、酵母を含む培地を用いて栽培される。
【0053】
これによれば、本実施形態に係る植物は、上述した本件発明に係る植物栽培装置1により酵母を含んだ培地を用いて栽培されたものであるため、葉酸を多く含むことができる。また、植物は、酵母に含まれる葉酸以外にもタンパク質、ビタミンB群、ビタミンD、アミノ酸、ミネラル等の栄養成分が十分に取り込まれて栄養価に富んだものとなる。
【実施例】
【0054】
以上に、本件発明に係る植物栽培装置、植物、植物栽培方法、及び、培地について説明したが、以下に本件発明の実施例を示し、本件発明をより詳細に説明する。なお、本件発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0055】
本実施例では、成熟期の植物の根を酵母濃度の異なる液体培地に浸積させ、所定期間経過後における当該植物の葉酸含有量がどの程度変化するかについて確認を行った。本実施例で確認する植物は、アブラナ科、キク科、及び、アカザ亜科の葉物野菜とし、具体的には、アブラナ科のミズナ、キク科のレタス、アカザ亜科のホウレン草を用いた。なお、これら葉物野菜に含まれる葉酸の測定は、高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。
【0056】
表1には、本実施例で確認するミズナ、レタス、ホウレン草の各葉物野菜について、それぞれ酵母濃度の異なる液体培地に24時間浸積させた場合の、葉酸含量の変化を示した。表1に示すように、本実施例で用いる液体培地の酵母濃度は、0wt%、0.1wt%とした。また、葉酸含有量は、新鮮重量(FW)当たりの含量で示した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示す結果より、ミズナ、レタス、ホウレン草の各葉物野菜は、液体培地に酵母を含ませることで、液体培地に酵母を含まないもの(酵母濃度:0wt%)と比較して葉酸含有量が著しく高められることが確認できた。特に、レタスに関しては、酵母濃度が0.1wt%の液体培地に根を24時間浸すことで、液体培地に酵母を含まないもの(酵母濃度:0wt%)に比べて葉酸含有量を2倍以上高められることが確認できた。また、ミズナに関しても、酵母濃度が0.1wt%の液体培地に根を24時間浸すことで、液体培地に酵母を含まないもの(酵母濃度:0wt%)に比べて葉酸含有量を約1.2倍以上高められることが確認できた。また、ホウレン草に関しても、酵母濃度が0.1wt%の液体培地に根を24時間浸すことで、液体培地に酵母を含まないもの(酵母濃度:0wt%)に比べて葉酸含有量を約1.3倍程度高められることが確認できた。
【0059】
ここで、一般的には、畑で栽培される植物に含まれる葉酸が、植物工場で栽培される植物に含まれる葉酸よりも少ないことが一般的である。しかし、本件発明は、上述のように酵母を含む培地により植物を栽培することにより、植物工場で栽培される植物だけでなく、一般的に畑で栽培される植物に含まれる葉酸よりも葉酸含有量の多い植物を栽培することができる。
【0060】
なお、一般に植物工場で栽培される植物に含まれる葉酸が畑で栽培される植物に含まれる葉酸よりも少なくなる一因としては、例えば植物工場内での人工照明による光合成により生成される葉酸が、太陽光(自然光)による光合成により生成される葉酸よりも少ないことなどが知られている。
【0061】
しかし、畑で栽培される植物には、いわゆる「旬」の時期があり、植物の葉酸の含有量も、旬の時期とそうでない時期とで、3倍程度の差があるとも言われている。これに対し、本件発明のように、植物工場に設置される植物栽培装置において葉酸の含まれる培地を用いて植物を栽培することにより、年間を通じて葉酸含有量の高い植物を栽培することができる。
【0062】
また、ミズナについて、酵母濃度が0.1wt%の液体培地により栽培する期間(表2中では、栽培期間とする)を0時間(h)、24時間(h)、96時間(h)として栽培した場合の葉酸含有量の測定結果を表2に、液体培地中の酵母濃度を0wt%、0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%として24時間栽培した場合の葉酸含有量の測定結果を表3に示す。なお、表2及び表3に示す葉酸含有量は、表1と同様に新鮮重量(FW)当たりの含量で示した。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表2に示すように、酵母を含む培地により栽培する期間を長くすることにより、植物の葉酸の含有量を増やすことができることが確認できた。また、表3に示すように、液体培地中の酵母濃度を高くすることによっても、植物の葉酸の含有量を増やすことができることが確認できた。
【0066】
従って、本件発明では、酵母を含む培地により栽培する期間、及び、液体培地中の酵母濃度の少なくとも何れかを調整することにより、植物の葉酸含有量をコントロールすることができる。
【0067】
なお、本実施例では、植物が葉物野菜である場合を例に挙げて説明したが、本件発明はこれに限定されるものではなく、例えば、果菜類(ナス科(ナス、トマト等)及びウリ科(キュウリ、カボチャなど)等)、豆類、スプラウト(もやし、貝割れ大根等)に代表される発芽野菜、果実的野菜(バラ科(イチゴ等)及びウリ科(スイカ、メロン)等)、茎菜類(アスパラガス、ネギ等)、花菜類(ブロッコリー、カリフラワー等)、根菜類等の野菜であればよい。
【0068】
また、本件発明により栽培される植物は野菜に限定されず、上述の植物栽培装置(又は植物栽培方法)により栽培することのできる果物等でもあってもよい。すなわち、本件発明により栽培される植物は、食用に適する植物であればよい。
【解決手段】植物を生育するための酵母を含む培地を収容する培養容器を備えていることを特徴とする植物栽培装置を採用する。特に、当該培地を液体培地とし、この液体培地における酵母の濃度が0.05wt%以上10wt%以下であることで、植物の生育を阻害することなく、酵母に含まれる葉酸をはじめとする様々な栄養成分を十分に根から吸収させることができる。