(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内輪および外輪にそれぞれ軌道溝が形成され、これら内外輪の軌道溝間に複数のボールおよびこれらのボールの間にそれぞれ介在する互いに分離した複数の間座が設けられた旋回軸受において、
前記間座の両側のボール接触面は、前記ボールの半径よりも大径の単一の球面形状であり、
この旋回軸受は、ボールが内外輪の軌道溝の内面に4点接触する形状に前記各軌道溝の断面形状が形成された4点接触玉軸受であり、前記ボールの直径を30mm以上80mm以下とした大型の旋回軸受であり、
前記内外輪のいずれか一方の軌道輪は、軌道輪本体と、この軌道輪本体に軸受径方向に貫通するように設けられた挿入孔に嵌め込まれた栓とを有し、この軸受径方向に貫通する挿入孔に嵌め込まれた前記栓における前記軌道輪の軌道溝側の周面が、前記軌道輪の軌道溝の円周方向の一部を形成しており、
前記間座は樹脂材料からなり、この樹脂材料を、温度270℃における溶融粘度1000Pa・s以上2000Pa・s以下としたことを特徴とする旋回軸受。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風車等に使用される旋回軸受にラジアル荷重やモーメント荷重が作用すると、各転動体の接触角が異なり、転動体毎の公転速度が変化する。
前記間座を使用する場合において、転動体と間座間にある円周方向すきまが詰まった場合、転動体と間座間に干渉力が発生する。
【0005】
間座は、ボールサイズ毎に寸法が決まるため、ボールPCDに拘わらず様々な軸受サイズに兼用できる。このため、金型費用等の付帯経費を抑えることができる。従来、建設機械やクレーンの旋回軸受に使用される保持器形式は樹脂製の間座形式である。
【0006】
発電容量1MW以上の大型の風力発電装置のヨー、ブレード用の旋回軸受に使用されるボールサイズは一般に大きくボール直径30mmを超えるサイズが使用されることが多い。直径30mmを超えるようなボールに使用する樹脂間座では、厚肉品となるため、射出成形時にこの樹脂間座の内部や表面にボイドが発生しやすくなる。
【0007】
ここで樹脂間座のメリット、デメリットについて列挙する。
メリット:
(1)ボールPCDに拘わらず樹脂間座を兼用可能
(2)質量 小
(3)価格 低
デメリット:
(1)ボイドによる強度不足
(2)保持器形式に対して、ボールの離合集散がし易い
肉ぬすみ等でボイド対策する方法が一般には考えられるが、強度面を考えると、得策とは言えない。
【0008】
この発明の目的は、金型費用等の付帯経費を抑えることができ、ボイドによる強度不足を解決することができる旋回軸
受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の旋回軸受は、内輪および外輪にそれぞれ軌道溝が形成され、これら内外輪の軌道溝間に複数のボールおよびこれらのボールの間にそれぞれ介在する互いに分離した複数の間座が設けられた旋回軸受において、前記間座の両側のボール接触面は、前記ボールの半径よりも大径の単一の球面形状であり、この旋回軸受は、ボールが内外輪の軌道溝の内面に4点接触する形状に前記各軌道溝の断面形状が形成された4点接触玉軸受であり、前記ボールの直径を30mm以上80mm以下とした大型の旋回軸受であり、
前記内外輪のいずれか一方の軌道輪は、軌道輪本体と、この軌道輪本体に軸受径方向に貫通するように設けられた挿入孔に嵌め込まれた栓とを有し
、この軸受径方向に貫通する挿入孔に嵌め込まれた前記栓における前記軌道輪の軌道溝側の周面が、前記軌道輪の軌道溝の円周方向の一部を形成しており、
前記間座は樹脂材料からなり、この樹脂材料を、温度270℃における溶融粘度1000Pa・s以上2000Pa・s以下としたことを特徴とする。
【0010】
この構成によると、間座の樹脂材料を溶融粘度1000Pa・s(温度270℃)以上としたため、間座が厚肉となっても、この間座の内部や表面のボイドの発生を抑えることができる。これにより間座が強度不足となることを未然に防止できる。この間座は、ボールサイズ毎に寸法が決まるため、ボールPCDに拘わらず様々な軸受サイズに兼用できる。このため、金型費用等の付帯経費を抑えることができる。よって、旋回軸受の製造コストの低減を図ることができる。また、内外輪の軌道溝の内面にボールが4点接触する4点接触玉軸受であるため、両方向のアキシアル荷重を負荷することができる。
【0011】
前記間座は両側のボール接触面が、中心部に至るに従って深く凹む凹面形状とさ
れても良い。この間座を射出成形する金型のゲート位置を前記凹面形状の底部に配置しても良い。
例えば、金型のゲート位置を間座の外径部に配置するとボイドの発生率が高くなるうえ、間座の円周方向(軸受組込み後の状態)の強度に偏りが発生する場合がある。これに対して、金型のゲート位置を前記凹面形状の底部に配置すると、ボイドの発生率の低減を図り、間座の円周方向の強度に偏りが発生することを未然に防止できる。
前記間座は両側のボール接触面が、中心部に至るに従って深く凹む凹面形状とされ、この凹みの中心部に前記凹みよりもさらに凹み凹み部を設け、この間座を射出成形する金型のゲート位置を、前記凹み部に設けても良い。
【0012】
前記間座の樹脂材料をPA6としても良い。「PA6」とは、カプロラクタムを開環重縮合したポリアミドであり、「ナイロン6」とも称される。
【0013】
前記ボールの直径を30mm以上80mm以下
とする。このような直径寸法のボールに使用される間座の場合、直径30mm未満のボールに使用される間座よりも、厚肉品となる。このような厚肉品となる間座であっても、間座の樹脂材料を溶融粘度1000Pa・s(温度270℃)以上としたため、間座の内部や表面のボイドの発生を抑え、間座が強度不足となることを防止し得る。
【0014】
この発明の旋回軸受は、上記の各作用効果が得られるため、風車のブレードを主軸に対して、主軸軸心に略垂直な軸心回りに旋回自在に支持するためや、風車のナセルを支持台に対して旋回自在に支持するために好適に使用できる。
【0015】
この発明における第1の発明の風車の旋回部支持装置は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の旋回軸受により、風車のブレードを主軸に対して、主軸軸心に略垂直な軸心回りに旋回自在に支持したものである。この構成によると、風車のブレードを主軸軸心に略垂直な軸心回りに旋回させ、風の状態に合わせた最適な旋回角度に制御することができる。
【0016】
この発明における第2の発明の風車の旋回部支持装置は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の旋回軸受により、風車のナセルを支持台に対して旋回自在に支持したものである。この構成によると、風の状態に合わせてナセルの向きを随時変えることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の旋回軸受は、内輪および外輪にそれぞれ軌道溝が形成され、これら内外輪の軌道溝間に複数のボールおよびこれらのボールの間にそれぞれ介在する互いに分離した複数の間座が設けられた旋回軸受において、前記間座の両側のボール接触面は、前記ボールの半径よりも大径の単一の球面形状であり、この旋回軸受は、ボールが内外輪の軌道溝の内面に4点接触する形状に前記各軌道溝の断面形状が形成された4点接触玉軸受であり、前記ボールの直径を30mm以上80mm以下とした大型の旋回軸受であり、前記内外輪のいずれか一方の軌道輪は、軌道輪本体と、この軌道輪本体に軸受径方向に貫通するように設けられた挿入孔に嵌め込まれた栓とを有し
、この軸受径方向に貫通する挿入孔に嵌め込まれた前記栓における前記軌道輪の軌道溝側の周面が、前記軌道輪の軌道溝の円周方向の一部を形成しており、前記間座は樹脂材料からなり、この樹脂材料を、温度270℃における溶融粘度1000Pa・s以上2000Pa・s以下としたため、金型費用等の付帯経費を抑えることができ、ボイドによる強度不足を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を
図1ないし
図7と共に説明する。この旋回軸受は、例えば、風力発電用風車のブレードを主軸に対して、主軸軸心に略垂直な軸心回りに旋回自在に支持する軸受、または風車のナセルを支持台に対して旋回自在に支持する軸受として使用される。
【0020】
図1に示すように、旋回軸受は、内輪1と、外輪2と、これら内外輪1,2の複列の軌道溝1a,1b,2a,2b間にそれぞれ転動自在に介在する各列複数のボール3と、各列のボール3の間に介在する間座4とを備える。内外輪1,2の軌道溝1a,1b,2a,2bは、いずれも2つの曲面1aa,1ab,1ba,1bb,2aa,2ab,2ba,2bbで構成されている。
【0021】
各軌道溝1a,1b,2a,2bを構成する2つの曲面は、それぞれボール3よりも曲率半径が大きく、曲率中心が互いに異なるゴシックアーチ状の断面円弧状である。各軌道溝1a,1b,2a,2bを構成する一対の曲面間は、溝部1ac,1bc,2ac,2bcになっている。各ボール3は、内輪軌道溝1a,1bおよび外輪軌道溝2a,2bの前記各曲面に接点で接して4点接触する。ボール直径は例えば30mm以上80mm以下のものを適用している。この旋回軸受は4点接触複列玉軸受として構成されている。
【0022】
外輪2の端面には、例えば、雌ねじが形成された複数のボルト孔5が円周方向一定間隔おきに設けられ、外輪2の外周面にはギヤ6が設けられている。ギヤ6は、図示しない駆動源から外輪2へ旋回駆動力を伝達する手段である。複数のボルト孔5は、例えば、外輪2を支持台等に連結固定する孔である。内輪1は、軌道輪本体7と、この軌道輪本体7の挿入孔9,9(後述する)に嵌め込まれる栓8,8とを有し、さらに連結具10と、環状のシール部材11とを有する。軌道輪本体7および
図1上下の栓8,8は同心に配置され、互いに内径および外径が等しい寸法に形成されている。軌道輪本体7には複列の軌道溝1a,1bが形成され、栓8,8の外径面は各列の軌道溝1a,1bの円周方向の一部を成す。この内輪1の軌道溝1a,1b間距離と、外輪2の軌道溝2a,2b間距離とは、設計上同一寸法に設定される。
【0023】
図1および
図2に示すように、軌道輪本体7には、軌道溝1a,1b間、軌道溝2a,2b間に、ボール3及び間座4を挿入するための挿入孔9,9が設けられている。挿入孔9,9は、軌道輪本体7に軸受径方向に貫通するようにそれぞれ設けられる。各貫通孔9は円筒孔形状(
図2(B)参照)に形成される。また、挿入孔9,9は、
図2(A)に示すように、周方向に近接した位置、すなわち位相角度αが例えば4度〜5度となる位置に配置される。但し、位相角度αは4度〜5度に限定されるものではない。軌道輪本体7には、各挿入孔9に嵌込まれる栓8が設けられ、この栓8は連結具10により軌道輪本体7に固定される。前記連結具10としてはテーパーピンが適用される。軌道輪本体7および栓8には、各貫通孔9の周方向位置に対応して連結用孔7a,8aが形成され、この連結用孔7a,8aに前記テーパーピンを圧入状態に軸方向に挿入することで、軌道輪本体7および栓8が同心に配置され組立てられる。
【0024】
栓8のうち連結用孔8aよりも内径側位置の外周面には、環状溝8bが形成される。この環状溝8bに環状のシール部材11が嵌込まれ、軌道輪本体7の挿入孔9に対する栓8の密閉性を高めている。前記環状のシール部材11は、Oリング等のゴムや樹脂製の弾性体からなる。内外輪1,2の軸受空間にはグリースが充填され、この軸受空間の軸方向の両端が図示外のシール部材等により密封されている。
【0025】
間座4について説明する。
間座4は、例えば、PA6等の樹脂材料から成る。この樹脂材料として温度270℃における溶融粘度1000Pa・s以上2000Pa・s以下を採用している。樹脂材料はPA6に限定されるものではなくPA66、PA46を適用しても良く、また温度270℃における溶融粘度1000Pa・s以上2000Pa・s以下の樹脂材料であれば足りる。
【0026】
図3に示すように、この間座4は両側のボール接触面4a,4aが、中心部に至るに従って深く凹む球面を成す凹面形状とされている。この凹面形状の凹みの中心部に、前記凹みよりもさらに凹む凹み部4hを設け、
図5に示すように、この間座4を形成する射出成形用金型12のゲート位置P1を、前記凹み部4hに配置している。換言すれば、片側のボール接触面4aの底部に、ゲート位置P1を配置している。
図3、
図4に示すように、間座4の両側のボール接触面4a,4aは、
図3点線で表記したボール3のボール半径Rよりも若干大径の単一の球面形状としている。同
図3に示すように、前記ボール接触面4aを含む球面を、実線「R1」にて表記する。なお、ボール接触面4aは後述するように球面形状に限定されるものではない。
【0027】
図5に示すように、前記金型12は、上型13と、下型14とを有する。これら上型13と下型14とが型締めされた状態でキャビティ15が形成される。上型13にゲートGが設けられ、このゲートGがキャビティ15に開口する位置が前記ゲート位置P1となる。図示外の射出成形機からキャビティ15内に加熱溶融した前記樹脂材料を充填し所定圧力に制御し、冷却する。その後、型開きし、成形品である間座4を金型12から突き出す。なお、金型12に複数のキャビティ15が形成され、複数個の間座4を同時に成形可能にしても良い。
【0028】
(1)間座の強度比較について
ゲート位置による強度差、溶融粘度による強度差を確認するため、間座の圧壊試験を実施した。
図6は間座の圧壊試験方法を説明するための断面図であり、
図7はゲート位置および溶融粘度と、圧壊荷重との関係を表す図である。
試験対象の間座は、
本願の溶融粘度が高い材料(例えば、温度270℃における溶融粘度1110Pa・s)で且つゲート位置を凹み部に配置したもの、
比較例(1)の溶融粘度が低い材料(例えば、温度270℃における溶融粘度490Pa・s)で且つゲート位置を凹み部に配置したもの、
比較例(2)の溶融粘度が低い材料(例えば、温度270℃における溶融粘度490Pa・s)で且つゲート位置を間座の外径部に配置したもの、
である。
【0029】
図6に示すように、この試験機は、受座16と、筒状部材17と、押圧部材18とを有する。受座16は、鋼球19を支持可能な凹面状の座面16aaを含む円柱状の受座本体16aを有する。この受座本体16aの外周から径方向外方にフランジ部16bが付設され、これらフランジ部16bおよび受座本体16aが載置支持される。前記筒状部材17は、受座本体16aの外周に嵌合されると共に、フランジ部16bに複数のボルト20により連結されている。筒状部材17の内径は、試験対象となる間座および鋼球19よりも所定寸法大径に形成される。よって、筒状部材17の内部に、間座および鋼球19を挿入可能になっている。
【0030】
押圧部材18は、鋼球19を押圧する凹面状の押圧面18aaを含む円柱状の押圧部材本体18aとフランジ部18bとでなる。筒状部材17の内部において、座面16aaに支持された1個の鋼球19を介して、順次、試験対象となる間座、1個の鋼球19を挿入する。このとき、間座の両側のボール接触面4a,4aが上下の鋼球19,19にそれぞれ接触する。押圧部材本体18aが、筒状部材17の上端側の内部に摺動自在に挿入され、押圧面18aaにより上側の鋼球19を押圧する。よって、間座に所定速度で所定荷重を負荷し、圧壊荷重を測定し得る。本圧壊試験方法では、間座に1.6kN/secの速度で鋼球19を介して荷重を負荷し、圧壊荷重を測定した。但し、最大荷重196kNまでとした。
【0031】
この圧壊試験によると、比較例(2)の間座は全て70〜80kN程度の低荷重で圧壊し、比較例(1)の間座は低荷重で圧壊したものが確認された。これに対して、本願の間座4は全て最大荷重196kNにおいても圧壊が確認されなかった。
【0032】
(2)間座のボイド発生率について
溶融粘度の違う二つの材料にてボイド発生率を比較検証した。その他の成形条件は全て統一した。
溶融粘度が低い材料(例えば、温度270℃における溶融粘度490Pa・s)の場合:間座400個中13個ボイドが発生した。
溶融粘度が高い材料(例えば、温度270℃における溶融粘度1110Pa・s)の場合:間座400個中ボイドが発生したものは0個であった。
【0033】
以上説明した旋回軸受によると、樹脂材料を溶融粘度1000Pa・s(温度270℃)以上の間座4にしたため、この間座4のボイドの発生を抑えることができる。これにより間座4が強度不足となることを未然に防止できる。この間座4は、ボールサイズ毎に寸法が決まるため、ボールPCDつまりボールピッチ円直径に拘わらず様々な軸受サイズに兼用できる。このため、金型費用等の付帯経費を抑えることができる。よって、旋回軸受の製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
金型12のゲート位置P1を前記凹み部4hに配置したため、間座4の内部や表面のボイドの発生率の低減を図り、間座4の円周方向の強度に偏りが発生することを未然に防止できる。
この旋回軸受において、ボール3の直径を40mm以上としている。このような直径寸法のボール3に使用される間座4の場合、直径40mm未満のボールに使用される間座4よりも、厚肉品となる。このような厚肉品となる間座4であっても、間座4の樹脂材料を溶融粘度1000Pa・s(温度270℃)以上としたため、間座4の内部や表面のボイドの発生を抑え、間座4が強度不足となることを防止し得る。
【0035】
この旋回軸受のうち内輪1は、軌道輪本体7を有し、軌道溝1a,1b間、軌道溝2a,2b間に、ボール3及び間座4を挿入する挿入孔9,9を、前記軌道輪本体7に軸受径方向に貫通するように設けたものである。さらに、挿入孔9,9に嵌込まれる栓8,8を連結具10により固定し、この栓8,8が軌道溝1a,1bの一部を成すものである。この構成によると、軸受の組立て前に、軌道輪本体7の挿入孔9に栓8を一旦固定した状態で、前記軌道溝1a,1bを形成しておく。その後挿入孔9から栓8を離脱する。軸受の組立時において、軌道輪本体7の挿入孔9から必要数のボール3及び間座4を挿入した後、前記挿入孔9を栓8で埋めて固定する。このように軸受の組立てを簡単に行うことができる。なお、各栓8の軌道溝形成部分は、熱処理が施されないいわゆる未焼入れのため、軌道輪本体7のうち少なくとも挿入孔9,9が形成される周方向位置はあまり荷重が掛からない設置状態にすることが望ましい。この例では、挿入孔9,9を、
図2(A)に示すように、周方向に近接した位置に配置したため、軌道輪本体7を望ましい設置状態にできる。それ故、軸受寿命をより延ばすことが可能となる。
【0036】
間座4の他の例として、
図8に示すように、間座4の両側のボール接触面4a,4aは、互いに中心曲率および曲率中心の異なる円弧を1回転させた軌跡となる回転体形状の曲面からなる接触面内径部4aaと接触面外径部4abとを繋いだ複合曲面形状としても良い。
詳しくは、接触面内径部4aaは、ボール接触部として、ボール半径R(
図3参照)に略等しい径の球面部を有する形状としてある。間座4は、両側のボール接触面4a,4aを、上記のような複合曲面形状とする代わりに、互いに中心角度の異なる円すい面からなる接触面内径部と接触面外径部とを繋いだ複合円すい面形状、または単一の円すい面形状としても良い。また、両側のボール接触面4a,4aを、曲率中心の異なる2つの円弧で構成されるゴシックアーチ状の断面形状としても良い。
【0037】
風車の旋回部支持装置について説明する。
図9および
図10は風力発電用の風車の一例を示す。この風車21は、支持台22上にナセル23を水平旋回自在に設け、このナセル23のケーシング24内に主軸25を回転自在に支持し、この主軸25のケーシング24外に突出した一端に、旋回翼であるブレード26を取付けてなる。主軸25の他端は増速機27に接続され、増速機27の出力軸28が発電機29のロータ軸に結合されている。
【0038】
ナセル23は、旋回軸受BR1により旋回自在に支持され、この旋回軸受BR1にこの発明の
図1ないし
図4に示した実施形態の旋回軸受が用いられている。
図9に示すように、ケーシング24に複数の駆動源30が設置され、各駆動源30に図示しない減速機を介してピニオンギヤが固着される。
図1に示す旋回軸受の外輪2のギヤ6が前記ピニオンギヤに噛合するように配置される。例えば、外輪2が複数のボルト孔5により支持台22に連結固定され、内輪1がケーシング24に固定される。複数の駆動源30を同期して駆動させ、この旋回駆動力を外輪2へ伝達する。よって、支持台22に対してナセル23が相対的に旋回可能となる。
【0039】
ブレード26は、旋回軸受BR2により旋回自在に支持される。この旋回軸受BR2は、例えば、
図1の分割形の内輪1に代えて一体形の内輪が適用され、且つ、外輪2に設けたギヤ6に代えて、前記一体形の内輪の内周面にギヤを設けたものが適用される。主軸25の突出した先端部25aには、ブレード26を旋回駆動する駆動源が設けられる。前記先端部25aにこの旋回軸受の外輪が連結固定され、内輪の内周面に付設のギヤが、前記駆動源のピニオンギヤに噛合されている。この駆動源を駆動させ、この旋回駆動力を内輪を伝達することで、ブレード26が旋回可能となる。したがって、旋回軸受BR2は、風車のブレード26を主軸25に対して、主軸軸心L1に略垂直な軸心L2回りに旋回自在に支持し得る。このように、ブレード26の角度およびナセル23の向きを風の状態に合わせて随時変え得る。
【0040】
この発明の旋回軸受を、風力発電用以外の油圧ショベル、クレーン等の建設機械、工作機械の回転テーブル、砲座、パラボラアンテナ等にも適用できる。