特許第5763294号(P5763294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763294
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20150723BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20150723BHJP
   F01N 3/029 20060101ALI20150723BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150723BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   F01N3/02 321B
   F01N3/02 321Z
   F01N3/08 BZAB
   F01N3/24 T
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-267665(P2009-267665)
(22)【出願日】2009年11月25日
(65)【公開番号】特開2011-111945(P2011-111945A)
(43)【公開日】2011年6月9日
【審査請求日】2012年10月1日
【審判番号】不服2014-18440(P2014-18440/J1)
【審判請求日】2014年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】田代 欣久
【合議体】
【審判長】 伊藤 元人
【審判官】 松下 聡
【審判官】 金澤 俊郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−239109(JP,A)
【文献】 特開2009−264181(JP,A)
【文献】 特開2004−204699(JP,A)
【文献】 特開2009−250091(JP,A)
【文献】 特開2008−175079(JP,A)
【文献】 特開2002−242664(JP,A)
【文献】 特開平8−49532(JP,A)
【文献】 特開2006−342737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ付きディーゼルエンジンの排気通路の前記ターボよりも下流側に、上流側から順に、触媒を担持していないディーゼルパティキュレートフィルターとSCR触媒とを配設した排気浄化装置であって、
前記排気通路の前記ターボよりも上流側に、上流側から順に一段目酸化触媒と二段目酸化触媒とが配設され、前記排気通路の前記一段目酸化触媒と前記二段目酸化触媒との間に、燃料を前記排気通路内に噴射する燃料噴射ノズルが設けられ、前記排気通路の前記二段目酸化触媒と前記ターボとの間に、尿素を前記排気通路内に噴射する尿素噴射ノズルが設けられると共に、前記尿素噴射ノズルと前記ディーゼルパティキュレートフィルターとの間に、触媒が配設されていないことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気通路の前記一段目酸化触媒と前記燃料噴射ノズルとの間に、前記排気通路内の排気ガスの一部をEGRガスとして前記ターボ付きディーゼルエンジンの吸気通路に導入するべくEGRガス取出口が設けられている請求項1に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ付きディーゼルエンジンの排気通路のターボよりも下流側に、ディーゼルパティキュレートフィルターとSCR触媒とを有する後処理装置を装着している排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、ターボ付きディーゼルエンジンの排気浄化装置40であって、エンジン本体41に排気マニホールド42を介して接続された排気管43のターボ(ターボチャージャー)44よりも排気下流側に、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)45とSCR触媒(選択還元触媒)46とを有する後処理装置を装着している排気浄化装置40においては、排気管43のDPF45とSCR触媒46との間に、還元剤としての尿素を排気管43内に噴射する尿素噴射ノズル47が設けられている。
【0003】
また、図3に示す排気浄化装置40においては、排気管43のターボ44とDPF45との間に、排気ガス中のHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を浄化する一段目DOC(酸化触媒)48が配設されており、排気管43のSCR触媒46よりも排気下流側には、NH3(アンモニア)を分解する二段目DOC49が配設されている。
【0004】
なお、図3中、50は吸気マニホールド、51は吸気管、52はエアクリーナー、53はターボ44のコンプレッサー、54はインタークーラー、55はターボ44のタービン、56は差圧センサー、57は排気スロットル(排気絞りバルブ)、58はECU(エンジン制御ユニット或いは電子制御ユニット)である。
【0005】
DPF45の強制再生時には、コモンレールシステム(図示せず)のマルチ噴射により排気ガスを昇温させると共に、更に一段目DOC48で排気ガスを昇温させ、その排気ガスでDPF45内に溜め込まれたスート及びPM等を燃焼させるようになっている。
【0006】
一方、SCR触媒46のNOx還元時には、尿素噴射ノズル47により尿素を排気管43内に噴射し、噴射した尿素を排気管43の中でNH3に転換させ、そのNH3をSCR触媒46によるNOx還元に使用するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−101535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図3に示す排気浄化装置40においては、一段目DOC48がターボ44後段に位置しているため、排気温度が低い低負荷運転時に、一段目DOC48の温度が上がらず、活性温度に達せず、DPF45の強制再生ができない問題があった。
【0009】
また、図3に示す排気浄化装置40においては、SCR触媒46がターボ44後段に位置しているため、排気温度が低い低負荷運転時に、SCR触媒46の温度が上がらず、活性温度に達せず、SCR触媒46による高いNOx浄化性能が確保できない問題を有していた。
【0010】
さらに、SCR触媒46の浄化のために尿素噴射ノズル47により尿素を排気管43内に噴射し、噴射した尿素を排気管43の中でNH3に転換させ、そのNH3をSCR触媒46によるNOx還元に使用するが、尿素からNH3への転換効率が低く、これもNOx浄化率低下の原因の一つでもあった(図2参照)。その改良方法として排気管43の尿素噴射ノズル47とSCR触媒46との間にミキシングデバイスを装着する方法が提案されているが、排気圧力の上昇を招く問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、排気温度が低い低負荷運転時でもDPFの強制再生を可能とし、更にSCR触媒による高いNOx浄化性能を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、ターボ付きディーゼルエンジンの排気通路の前記ターボよりも下流側に、上流側から順に、触媒を担持していないディーゼルパティキュレートフィルターとSCR触媒とを配設した排気浄化装置であって、前記排気通路の前記ターボよりも上流側に、上流側から順に一段目酸化触媒と二段目酸化触媒とが配設され、前記排気通路の前記一段目酸化触媒と前記二段目酸化触媒との間に、燃料を前記排気通路内に噴射する燃料噴射ノズルが設けられ、前記排気通路の前記二段目酸化触媒と前記ターボとの間に、尿素を前記排気通路内に噴射する尿素噴射ノズルが設けられているものである。
【0013】
前記排気通路の前記一段目酸化触媒と前記燃料噴射ノズルとの間に、前記排気通路内の排気ガスの一部をEGRガスとして前記ターボ付きディーゼルエンジンの吸気通路に導入するべくEGRガス取出口が設けられていても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排気温度が低い低負荷運転時でもDPFの強制再生を可能とし、更にSCR触媒による高いNOx浄化性能を確保することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る排気浄化装置を備えたターボ付きディーゼルエンジンの概略図である。
図2図2は、NH3への転換効率を示す図である。
図3図3は、従来例に係る排気浄化装置を備えたターボ付きディーゼルエンジンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る排気浄化装置10を備えたターボ付きディーゼルエンジンでは、エンジン本体11の吸気通路12に、吸気上流側から順に、エアクリーナー13と、ターボ(ターボチャージャー)14のコンプレッサー15と、インタークーラー16とが配設されている。また、エンジン本体11の排気通路17には、排気上流側から順に、ターボ14のタービン18と、排気スロットル(排気絞りバルブ)19とが配設されている。また、排気通路17と吸気通路12とは、排気通路17内の排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路12に導入するためにEGR通路20で連通されており、EGR通路20にはEGRクーラー21とEGRバルブ(図示せず)とが設けられている。
【0018】
本実施形態では、吸気通路12は、エンジン本体11に装着された吸気マニホールド22と、吸気マニホールド22に接続された吸気管23とから構成されている。また、排気通路17は、エンジン本体11に装着された排気マニホールド24と、排気マニホールド24に接続された排気管25とから構成されている。また、EGR通路20は、一端が排気マニホールド24に接続され且つ他端が吸気管23に接続されたEGR管26から構成されている。
【0019】
本実施形態に係る排気浄化装置10においては、排気通路17のターボ14よりも排気下流側に後処理装置が設けられており、この後処理装置は、触媒を担持していないDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)27と、その下流側のSCR触媒(選択還元触媒)28とを有している。DPF27は、排気ガス中のスート(すす)及びPM(粒子状物質)等を捕集するフィルターであり、本実施形態では排気管25に装着されている。また、SCR触媒28は、尿素から転換されるNH3(アンモニア)で排気ガス中のNOxを還元する触媒であり、本実施形態では排気管25に装着されている。
【0020】
また、本実施形態に係る排気浄化装置10においては、排気通路17のターボ14よりも排気上流側には、排気上流側から順に一段目DOC(酸化触媒)29と二段目DOC30とが配設され、排気通路17の一段目DOC29と二段目DOC30との間には、燃料(本実施形態では、軽油)を排気通路17内に噴射する燃料噴射ノズル(本実施形態では、軽油噴射ノズル)31が装着され、排気通路17の二段目DOC30とターボ14との間には、還元剤としての尿素(尿素水)を排気通路17内に噴射する尿素噴射ノズル32が装着されている。本実施形態に係る排気浄化装置10においては、更に排気通路17の一段目DOC29と軽油噴射ノズル31との間に、排気通路17内の排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路12に導入すべくEGRガス取出口33が取り付けられている。
【0021】
つまり、本実施形態に係る排気浄化装置10においては、排気通路17のターボ14よりも排気上流側に、排気上流側から順番に、一段目DOC29と、EGRガス取出口33と、軽油噴射ノズル31と、二段目DOC30と、尿素噴射ノズル32とが設けられている。
【0022】
本実施形態の一段目DOC29及び二段目DOC30は、排気ガス中のHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を浄化する触媒である。本実施形態では、一段目DOC29は排気マニホールド24の入口部に気筒毎に装着されており、二段目DOC30は排気マニホールド24の出口部に装着されている。また、本実施形態では、EGRガス取出口33は排気マニホールド24に取り付けられている。さらに、本実施形態では、軽油噴射ノズル31は排気マニホールド24に装着されており、尿素噴射ノズル32は排気管25に装着されている。
【0023】
また、本実施形態に係る排気浄化装置10においては、排気通路17のSCR触媒28よりも排気下流側には、三段目DOC34が配設されている。本実施形態の三段目DOC34は、NH3を分解する触媒であり、排気管25に装着されている。
【0024】
さらに、本実施形態に係る排気浄化装置10においては、排気通路17には、二段目DOC30の入口の排気温度を検出する第一排気温度センサー35と、DPF27の入口の排気温度を検出する第二排気温度センサー36と、SCR触媒28の入口の排気温度を検出する第三排気温度センサー37と、DPF27の出入口の差圧を検出する差圧センサー38とが設けられており、これら第一排気温度センサー35、第二排気温度センサー36、第三排気温度センサー37、差圧センサー38等の検出値に基づいて、ECU(エンジン制御ユニット或いは電子制御ユニット)39が軽油噴射ノズル31及び尿素噴射ノズル32等を制御するようになっている。本実施形態では、第一排気温度センサー35は排気マニホールド24に装着されており、第二排気温度センサー36、第三排気温度センサー37及び差圧センサー38は排気管25に装着されている。
【0025】
以上の構成からなる本実施形態に係る排気浄化装置10の作用を説明する。
【0026】
一段目DOC29を通過した排気ガスは一部浄化され、一段目DOC29を通過した排気ガスの一部はEGRガスとしてEGR管26を介して吸気管23に導入される。EGRガスはEGR管26に設けられたEGRクーラー21で冷却されるので、EGR効果が促進され、エンジン本体11でNOx低減が行われる。しかし、低負荷運転時において、EGRガス温度が低い場合、EGRガス中の高沸点HC成分がEGR系(EGR管26、EGRクーラー21及びEGRバルブ等)を汚損させる問題があった。本実施形態では、一段目DOC29によりEGRガス中の高沸点HC成分も浄化されるため、EGR系の汚損は発生しない。
【0027】
また、DPF27の強制再生時には、コモンレールシステム(図示せず)のマルチ噴射により一段目DOC29の入口の排気温度を一段目DOC29の活性温度まで上昇させる。エンジン本体11から排出された排気ガスは一段目DOC29でHC及びCOの一部が浄化され更に昇温され、二段目DOC30に導入される。第一排気温度センサー35で検出される二段目DOC30の入口の排気温度が二段目DOC30の活性温度(例えば250℃)以上に達すると更に排気温度を上昇させるため、軽油噴射ノズル31により軽油が排気マニホールド24内に噴射される。DPF27内に溜め込まれたスート及びPM等を燃焼させるため、排気マニホールド24内に噴射された軽油により、第二排気温度センサー36により検出されるDPF27の入口の排気温度はDPF27中のスート及びPM等を燃焼させる温度前後(例えば約600℃前後)に上げられ、この温度近辺に所定時間の間制御維持されて、DPF27の強制再生は終了する。
【0028】
また、本実施形態に係る排気浄化装置10では、DPF27の強制再生中、EGR管26に設けたEGRバルブが全閉とされ、EGRカットがなされる。DPF27の強制再生中はEGRカットがなされるので、排気噴射(軽油噴射ノズル31による軽油噴射)と尿素噴射との同時作動が可能となる。つまり、DPF27の強制再生中はEGRバルブが全閉とされるので、軽油噴射ノズル31により排気マニホールド24内に噴射された軽油がEGR管26、吸気管23及び吸気マニホールド22を通ってエンジン本体11に導入されることがないので、排気ガスが悪化することはない。
【0029】
一方、SCR触媒28のNOx還元時には、第三排気温度センサー37により検出されるSCR触媒28の入口の排気温度がSCR触媒28の活性温度に達したとき、尿素噴射ノズル32によりNOxの量に見合った量の尿素が排気管25内に噴射される。
【0030】
本実施形態に係る排気浄化装置10では、排気温度の低下の少ないターボ14前段の排気通路17に二段階の酸化触媒(一段目DOC29、二段目DOC30)を配設しているので、DPF27の強制再生時に、一段目DOC29はエンジン本体11に近いためコモンレールシステムのマルチ噴射による温度上昇が早く、二段目DOC30の温度上昇を促進することができ、排気温度が低い低負荷運転時でもDPF27の強制再生を可能とすることができる。
【0031】
二段目DOC30は軽油噴射ノズル31から噴射された軽油を浄化するには触媒容量が比較的大きいことが必要とされるが、容量の確保可能な位置に配設されるので、二段目DOC30の容量を比較的大きくすることができ、二段目DOC30の温度が早期にDPF27中のスート及びPM等を燃焼させる温度に達することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る排気浄化装置10では、排気温度の低下の少ないターボ14前段の排気通路17に尿素噴射ノズル32を装着しているので、低負荷運転時の早期に尿素噴射ノズル32による尿素噴射が可能となり、尿素からNH3への転換効率は図2の如く大幅に上昇し、SCR触媒28によるNOx浄化率を高くできる。
【0033】
また、本実施形態に係る排気浄化装置10では、ターボ14前段の排気通路17に尿素噴射ノズル32を装着しているので、タービン18通過により排気ガスと尿素とのミキシングが良く、尿素噴射ノズル32をターボ14後段の排気通路17に装着する場合よりも尿素からNH3への転換効率は高く、また、排気管25にミキシングデバイスを装着したときのような排気圧力が上昇する不具合は発生しない。
【0034】
また、本実施形態に係る排気浄化装置10では、DPF27は触媒を担持していないため、DPF27を通過した尿素から熱分解されたNH3はNOxに変換されること無くSCR触媒28に導入されるので、SCR触媒28によるNOx浄化率を高くできる。
【0035】
さらに、本実施形態に係る排気浄化装置10では、排気通路17の一段目DOC29と軽油噴射ノズル31との間にEGRガス取出口33を設けているので、一段目DOC29で排気ガス中の高沸点HC成分が浄化され、その排気ガスの一部がEGRガス取出口33からEGR通路20に導入されるので、汚損物質(高沸点HC)によるEGR系(EGR管26、EGRクーラー21及びEGRバルブ等)の汚損という不具合を解消することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 排気浄化装置
11 エンジン本体
12 吸気通路
14 ターボ
17 排気通路
27 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)
28 SCR触媒
29 一段目DOC(一段目酸化触媒)
30 二段目DOC(二段目酸化触媒)
31 軽油噴射ノズル(燃料噴射ノズル)
32 尿素噴射ノズル
33 EGRガス取出口
図1
図2
図3