(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願は、様々な例示的な実施形態において、インクジェット印刷またはジェッティングを含む印刷に適したインク組成物を開示する。これらのインク組成物により、均一で滑らかなインクジェット印刷された線の形成が可能になる。これらのインク組成物により、同様に、非常に狭い幅でそのような線を形成させることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子と、炭化水素溶媒と、アルコール共溶媒とを含むインク組成物が開示される。
【0012】
他の実施形態では、オレイン酸により安定化された銀ナノ粒子と、ドデカンと、テルピネオールと、を含み、銀ナノ粒子がインク組成物の約35重量%から約60重量%を占め、ドデカン対テルピネオールの重量比が約3:1から約1:1であるインク組成物が開示される。
【0013】
さらに他の実施形態では、有機アミンにより安定化された銀ナノ粒子と、イソパラフィン溶媒と、テルピネオールと、を含み、銀ナノ粒子がインクの約35重量%から約60重量%を占め、イソパラフィン溶媒対テルピネオールの重量比が約3:1から約1:1であるインク組成物が開示される。
【0014】
銀ナノ粒子と、炭化水素溶媒と、アルコール共溶媒とを含むインク組成物を提供する工程と、インク組成物の滴を基材上に堆積させ線を印刷する工程と、を含む、基材上に線を印刷する方法もまた、開示される。
【0015】
「銀ナノ粒子」において使用されるように「ナノ」という用語は、1000nm未満の粒子サイズを示す。実施形態では、銀ナノ粒子は、約0.5nmから約1000nm、約1mmから約500nm、約1nmから約100nm、および特に約1nmから約20nmの粒子サイズを有する。粒子サイズは本明細書では、TEM(透過型電子顕微鏡法)により決定されるように、銀ナノ粒子の平均直径として規定される。
【0016】
量に関して使用される「約」という修飾語は、提示した値を含み、状況により決定される意味を有する(例えば、少なくとも、特別な量の測定値に関連する誤差の程度を含む)。範囲に関連して使用される場合、「約」という修飾語はまた、2つの端点の絶対値により規定される範囲を開示するものとして考えるべきである。例えば、「約2から約4」という範囲はまた、「2から4まで」という範囲を開示する。
【0017】
本発明のインク組成物は、(1)銀ナノ粒子と、(2)炭化水素溶媒と、(3)アルコール共溶媒とを含む。
【0018】
銀ナノ粒子は、約100nm以下、好ましくは約50nm以下の平均直径を有してもよい。いくつかの特定の実施形態では、ナノ粒子は、約1nmから約15nm、例えば約2nmから約10nmの平均直径を有する。さらに、粒子サイズ分布幅は、最大ナノ粒子の直径と最小ナノ粒子の直径との間の差、または最小および最大ナノ粒子の間の範囲を示す。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子の粒子サイズ分布は、約10nmから約50nm、または約10nmから約25nmであってもよい。さらに別の実施形態では、銀ナノ粒子は、約1nmから約50nmの小さな粒子サイズおよび約10nmから約30nmの狭いサイズ分布幅を有する。理論に制限されることなく、狭いサイズ分布幅を有する小さな粒子サイズにより、ナノ粒子は溶媒中に入れられた場合に、より容易に分散されると考えられる。
【0019】
実施形態では、銀ナノ粒子は元素銀または銀複合物(silver composite)から構成される。銀の他に、銀複合物は、(i)1つまたは複数の他の金属類および(ii)1つまたは複数の非金属類のいずれかまたは両方を含んでもよい。適した他の金属類としては、例えば、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、およびNi、特に遷移金属類、例えば、Au、Pt、Pd、Cu、Cr、Ni、およびそれらの混合物が挙げられる。例示的な金属複合物は、Au−Ag、Ag−Cu、Au−Ag−Cu、およびAu−Ag−Pdである。金属複合物中の適した非金属類としては、例えば、Si、C、およびGeが挙げられる。銀複合物の様々な成分は、例えば、約0.01重量%から約99.9重量%、特に約10重量%から約90重量%の範囲の量で存在してもよい。実施形態では、銀複合物は、銀と、1つ、2つまたはそれ以上の他の金属類から構成される金属合金であり、銀は、例えば、ナノ粒子の少なくとも約20重量%、特にナノ粒子の約50重量%より多くを占める。
【0020】
銀ナノ粒子は、カルボン酸または有機アミンによりその表面上で安定化されてもよい。カルボン酸は一般に、4から約20の炭素原子を有する。カルボン酸は、例えば、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、エイコセン酸、エライジン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、シトロネル酸、ゲラン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、それらの異性体、およびそれらの混合物から選択される。
【0021】
有機アミンは、第1級、第2級、または第3級アミンであってもよい。有機アミンは一般に、3から約20の炭素原子を有する。特定の実施形態では、銀ナノ粒子はオレイン酸またはヘキサデシルアミンにより安定化される。有機アミンは、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジヘプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルアミン、N,N−ジウンデシルアミン、N,N−ジドデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、1,2−エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、およびN,N,N’,N’−テトラメチルブタン−1,4−ジアミン、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0022】
実施形態では、安定化された銀ナノ粒子は、元素銀から構成される。安定化されたナノ粒子は、約70重量%以上、例えば約70重量%から約90重量%、好ましくは約75重量%から約85重量%の銀含量を有してもよい。この含量は、従来のプロセスにより製造されるものより高い。含量は、任意の適した方法により分析することができる。例えば、銀含量は、TGA分析または灰化法(ashing method)により得ることができる。
【0023】
実施形態では、安定化された銀ナノ粒子は、特に長鎖カルボン酸類および長鎖有機アミン安定化剤で安定化された銀ナノ粒子は、低極性表面を有する。極性は、1つの分子のわずかに正に帯電した末端と別のまたは同じ分子の負の末端との間の双極子−双極子分子間力を示す。例えば、H
2Oは極性分子であるが、CH
4は非極性分子である。実施形態では、安定化された銀ナノ粒子の表面は、低極性炭化水素基から構成される。極性は表面張力に影響し、任意の適当なアプローチにより決定することができる。例えば、安定化された銀ナノ粒子が膜としてコートされている場合、膜の表面は非常に大きな前進水接触角(advancing water contact angle)を示し、低い表面エネルギおよび疎水性特性が示された。
【0024】
従来では、銀ナノ粒子をトルエンまたはキシレンに溶解または分散させ、印刷用のインク組成物を形成させていた。しかしながら、銀ナノ粒子はこれらの溶媒中で不安定であった。例えば、インク組成物を数日という短い期間貯蔵すると、銀ナノ粒子はインク容器内で純粋銀として析出してしまう。さらに、インクジェット印刷すると、固体(銀ナノ粒子)が印刷された滴の縁に蓄積し、滴の中心が非常に薄い層となり、すなわち、大きなコーヒーリング効果が生じた。また、線幅が大きいため、印刷された線の解像度が非常に低くなった。しばしば、不発に終わった滴が観察された。
【0025】
本開示では、銀ナノ粒子は、炭化水素溶媒とアルコール共溶媒の混合物中に溶解または分散される。この調合物は、改善されたインク安定性および均一な印刷特徴を提供し、コーヒーリング効果はほとんどない。60μmという低い線幅を達成することができる。さらに、このインク調合物は異なる表面エネルギを有する様々な基材表面上に噴射させ、印刷特徴を得ることができる。言い換えれば、インク組成物は基材の表面エネルギに関係なく動作する。
【0026】
実施形態では、炭化水素溶媒は、飽和炭化水素類(アルカン類)、不飽和炭化水素類(アルケン類およびアルキン類)、およびシクロアルカン類を含む脂肪族炭化水素である。典型的には、炭化水素溶媒は、5から約20の炭素原子を含む。特定の実施形態では、炭化水素溶媒はアルカン溶媒である。例示的なアルカン溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、それらの異性体、およびそれらの混合物が挙げられる。不飽和炭化水素類としては、例えば、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、テルピネン類、などが挙げられる。市販の炭化水素溶媒はまた、アイソパ(ISOPAR、登録商標)、例えばアイソパ(登録商標)C、アイソパ(登録商標)E、アイソパ(登録商標)G、アイソパ(登録商標)H、アイソパ(登録商標)K、アイソパ(登録商標)L、アイソパ(登録商標)Mおよびアイソパ(登録商標)Vという名で市販されているイソパラフィン溶媒を含む。特定の実施形態では、炭化水素溶媒は、約150℃から約300℃の沸点を有する。特定の態様では、n−ドデカンおよびアイソパ(登録商標)Gが、脂肪族炭化水素溶媒として使用される。
【0027】
他の実施形態では、炭化水素溶媒は芳香族炭化水素溶媒である。典型的には、芳香族炭化水素溶媒は、約7から約20の炭素原子を含む。例示的な芳香族炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルトルエン、メシチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、およびエチルベンゼン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、メシチレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、およびテトラヒドロナフタレンが、炭化水素溶媒として使用される。
【0028】
実施形態では、アルコール共溶媒は、第1級アルコール、第2級アルコール、および第3級アルコールとすることができる。典型的には、アルコール共溶媒は、少なくとも6の炭素原子、例えば約6から約20の炭素原子を含む。例示的なアルコール類としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、およびヘキサデカノール;ジオール、例えば、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、およびデカンジオール;不飽和二重結合を含むアルコール、例えば、ファルネソール、デデカジエノール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ヘプタジエノール、テトラデセノール、ヘキサデセネオール、フィトール、オレイルアルコール、デデセノール、デセノール、ウンデシレニルアルコール、ノネノール、シトロネロール、オクテノールおよびヘプテノール;不飽和二重結合を有するかまたは有さない脂環式アルコール、例えば、メチルシクロヘキサノール、メントール、ジメチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキセノール、テルピネオール、ジヒドロカルベオール、イソプレゴール、クレゾール、トリメチルシクロヘキセノール;など;ならびにこれらの混合物および異性体が挙げられる。特定の実施形態では、アルコール共溶媒は、約6から約20の炭素原子を含む不飽和アルコールである。例示的な不飽和アルコール共溶媒としては、ファルネソール、デデカジエノール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ヘプタジエノール、テトラデセノール、ヘキサデセネオール、フィトール、オレイルアルコール、デデセノール、デセノール、ウンデシレニルアルコール、ノネノール、シトロネロール、オクテノールおよびヘプテノール、メチルシクロヘキセノール、テルピネオール、ジヒドロカルベオール、イソプレゴール、クレゾール、トリメチルシクロヘキセノール、ならびにこれらの混合物および異性体が挙げられる。他の実施形態では、アルコール共溶媒は、芳香族アルコール(フェノール)、例えばクレゾールである。
【0029】
特定の実施形態では、アルコール共溶媒は、テルピネオール(terpineol)を含む。テルピネオールは、下記で示すように、少なくとも4つの異性体(α、β、γ、および4−異性体)を有する。
【0031】
一般に、テルピネオール溶媒は、重量で測定した場合に大部分がα−テルピネオール異性体である。言い換えれば、α−テルピネオール異性体がテルピネオール溶媒の少なくとも約50重量%である。いくつかの実施形態では、テルピネオールは4つの異性体の混合物である。他の実施形態では、α−テルピネオールが使用される。
【0032】
実施形態では、炭化水素溶媒は、アルコール共溶媒の沸点以下の沸点を有する。他の実施形態では、炭化水素溶媒は、アルコール共溶媒の沸点よりも約20℃から約80℃、例えば約30℃から約60℃だけ低い沸点を有する。例えば、炭化水素溶媒ドデカンは、215〜217℃の沸点を有するが、これは、219℃の沸点を有するテルピネオール共溶媒と組み合わせることができる。炭化水素溶媒アイソパ(登録商標)G(163〜176℃の沸点)もまた、テルピネオール共溶媒と組み合わせることができる。他の態様では、炭化水素溶媒は、アルコール共溶媒よりも高い沸点を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、アルコール共溶媒よりも炭化水素溶媒中でより大きな溶解度を有する。銀ナノ粒子(もしあれば、安定化剤と共に)は、炭化水素溶媒中約15重量%から約85重量%、例えば約20重量%から約80重量%の溶解度を有してもよい。銀ナノ粒子(もしあれば、安定化剤と共に)は、アルコール共溶媒中約5重量%から約60重量%、例えば約10重量%から約50重量%の溶解度を有してもよい。他の実施形態では、アルコール共溶媒は炭化水素溶媒よりも大きな表面張力を有する。さらに他の実施形態では、銀ナノ粒子はアルコール共溶媒よりも炭化水素溶媒中でより安定であり、アルコール共溶媒は炭化水素溶媒よりも大きな表面張力を有する。
【0034】
銀ナノ粒子の負荷は、インク組成物の性能にとって重要である可能性がある。銀ナノ粒子が任意の安定化剤と共にインク組成物の少なくとも35重量%、例えば約35重量%から約70重量%、または約40重量%から約60重量%までである場合、より良好な結果が得られる。さらに、炭化水素溶媒のアルコール共溶媒に対する重量比もまた重要である可能性がある。炭化水素溶媒のアルコール共溶媒に対する重量比は、約5:1未満、例えば約5:1から約1:2までであってもよい。特定の実施形態では、重量比は、約2:1から約1:1までである。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子はインク組成物の少なくとも約35重量%であり、炭化水素溶媒のアルコール共溶媒に対する重量比は2以下である。
【0035】
得られたインク組成物は、約2センチポイズから約15センチポイズ、または約2センチポイズから約10センチポイズ、または約2センチポイズから約6センチポイズの粘度を有してもよい。インク組成物はまた、約20ミリニュートン/メートルから約35ミリニュートン/メートル、例えば、約22ミリニュートン/メートルから約35ミリニュートン/メートル、約20ミリニュートン/メートルから約30ミリニュートン/メートル、または約22ミリニュートン/メートルから約28ミリニュートン/メートルの表面張力を有してもよい。要望通り、他の成分をインク組成物に添加してもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、インク組成物は、銀ナノ粒子と、炭化水素溶媒と、アルコール共溶媒とを含む。
【0036】
本開示のインク組成物から、インクの粘度に対処することができる任意の方法を使用して、導電性要素を作製することができる。典型的には、インクジェット印刷が使用される。圧電プリンタを含む任意の型のインクジェットプリンタをインクジェット印刷のために使用することができる。この段階で堆積された銀ナノ粒子は導電性を示してもよく、または示さなくてもよい。
【0037】
任意の適した噴射条件を使用して、インク組成物を噴射させてもよい。実施形態では、インクは圧電プリンタヘッドを用いて、約23℃から約45℃、好ましくは約23℃から約35℃のプリンタヘッド温度を用いて印刷される。基材の温度は、約23℃から約80℃、好ましくは約40℃から約80℃、約40℃から約60℃としてもよい。滴間隔は、約20μmから約80μm、好ましくは約20μmから約60μmとしてもよい。特定の実施形態では、基材温度は約50℃から約60℃であり、滴間隔は40μmである。滴間隔および基材温度の組み合わせにより、印刷された線の幅および滑らかさが決定される。
【0038】
コーヒーリング効果を定量するために、パラメータh
edge/h
center(h
e/h
cとも呼ばれる)をここで縁高さ対中心高さの比として規定する。印刷された特徴、例えば線のプロファイルは、表面形状測定装置を用いて測定することができる。縁高さ(h
edge)および中心高さ(h
center)を得ることができる。h
edge/h
center比はコーヒーリング効果が存在するかどうかを示す(
図1A〜1Cを参照されたい)と考えられる。
図1Bで示されるように、h
edge/h
centerが1.0である場合、コーヒーリング効果は存在せず、印刷された線は完全に平らであると考えられる。
図1Aで示されるように、h
edge/h
center>>1.0である場合、中心は縁よりずっと薄く、大きなコーヒーリング効果が示される。最後に、
図1Cに示されるように、h
edge/h
center<1.0である場合、中心は縁よりも高い。これは多くの用途において同様に許容される可能性がある。実施形態では、本開示のインク組成物を用いて印刷した特徴は、約1.0、例えば約0.8から約1.2のh
edge/h
centerを有する。他の実施形態では、h
edge/h
centerは1.5未満である。
【0039】
本開示のインク組成物の1つの利点は、異なる表面エネルギを有する様々な基材表面上に印刷することができることである。いくつかの実施形態では、プラズマ洗浄されたガラスまたはプラスチック基材などの親水性表面が使用される。例えば、30°未満の低い前進水接触角を有する表面は高い表面エネルギを示す。他の実施形態では、約60°から約100°の前進水接触角を有する修飾表面が使用される。実施形態では、インク組成物は、例えば約0°から約100°の様々な水接触角を有する基材上で印刷させることができ、同様の印刷された特徴が達成される。
【0040】
約300℃未満の温度、好ましくは約250℃以下、たとえば約150℃以下で、堆積させたナノ粒子を加熱すると、ナノ粒子は合一し、電子デバイスにおいて導電要素として使用するのに適した導電性層を形成する。加熱は、例えば、約1分から約10時間、特に約5分から約1時間の範囲の時間の間実施される。加熱は、約80℃から約300℃の温度で実施することができる。より特定的な実施形態では、加熱は、約100℃から約250℃、または約120℃から約200℃の温度で実施される。
【0041】
堆積させた銀ナノ粒子を加熱することにより製造して得られた銀含有要素の導電率は、例えば、少なくとも1,000S/cmである。他の実施形態では、4プローブ法により測定されるように、導電率は少なくとも10,000S/cmである。
【0042】
得られた導電要素は、電子デバイス、例えば薄膜トランジスタ、有機発光ダイオード、RFID(無線自動識別)タグ、光起電装置、および導電要素または部品を必要とする他の電子デバイスにおいて、導電性電極、導電性パッド、導電線、導電性トラック、などとして使用することができる。実施形態では、印刷された導電性特徴は、約50nmから約200nm、例えば約70から約150nmの厚さを有する。ある用途、例えばPFIDタグのためのアンテナのための厚い層を達成するために、マルチパスを使用して厚さを蓄積することができる。
【0043】
図2では、基材およびゲート電極の両方として機能する、高濃度にn−ドープされたシリコンウエハ18と、その上面に2つの金属コンタクト、ソース電極20およびドレイン電極22が堆積されている熱成長酸化ケイ素を含む絶縁誘電体層14と、を備える薄膜トランジスタ(「TFT」)構造10が概略的に示されている。ここで示されるように、金属コンタクトであるソース電極20およびドレイン電極22上ならびにそれらの間に、半導体層12が存在する。
【0044】
図3では、基材36と、ゲート電極38と、ソース電極40およびドレイン電極42と、絶縁誘電体層34と、半導体層32と、を備える別のTFT構造30が概略的に示されている。
【0045】
図4では、基材およびゲート電極の両方として機能する、高濃度にn−ドープされたシリコンウエハ56と、熱成長酸化ケイ素を含む絶縁誘電体層54と、半導体層52と、を備え、半導体層52上面にソース電極60およびドレイン電極62が堆積されている、他のTFT構造50が概略的に示されている。
【0046】
図5では、基材76と、ゲート電極78と、ソース電極80と、ドレイン電極82と、半導体層72と、絶縁誘電体層74と、を備える別のTFT構造70が概略的に示されている。
【0047】
基材は、例えば、ケイ素、ガラス板、プラスチック膜またはシートから構成されてもよい。構造的に可撓性の装置では、プラスチック基材、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなどを使用してもよい。基材の厚さは、約10μmから10mmを超える量までとしてもよく、例示的な厚さは、とりわけ可撓性プラスチック基材では約50μmから約2mmであり、剛性基材、例えばガラスまたはケイ素では、約0.4mmから約10mmである。
【0048】
ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極は、本開示の実施形態により作製される。ゲート電極層の厚さは例えば、約10nmから約2000nmの範囲である。ソースおよびドレイン電極の典型的な厚さは、例えば、約40nmから約1μmであり、より特定的な厚さは、約60nmから約400nmである。
【0049】
絶縁誘電体層は一般に、無機金属膜または有機ポリマ膜とすることができる。絶縁層の厚さは、使用した誘電体材料の誘電率によって、例えば、約10nmから約500nmである。絶縁層の例示的な厚さは、約100nmから約500nmである。絶縁層は例えば、約10
−12S/cm未満である導電率を有してもよい。
【0050】
例えば、絶縁層とソース/ドレイン電極の間に、およびそれらと接触して、半導体層が配置され、ここで、半導体層の厚さは一般に、例えば、約10nmから約1μm、または約40nmから約100nmである。任意の半導体材料を使用してこの層を形成させてもよい。例示的な半導体材料としては、レジオレギュラー(regioregular)ポリチオフェン、オリゴチオフェン、およびペンタセンが挙げられる。半導体層はまた、溶液プロセス、例えば、半導体の溶液または分散物のスピンコーティング、キャスティング、スクリーン印刷、スタンピング、またはジェット印刷により、作製させることができる。
【0051】
絶縁誘電体層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極は任意の順序で形成され、特に、ゲート電極および半導体層が両方とも絶縁層に接触する、ならびにソース電極およびドレイン電極が両方とも半導体層に接触する実施形態では、そうである。「任意の順序」という句は、連続形成および同時形成を含む。例えば、ソース電極およびドレイン電極は、同時にまたは連続して形成させることができる。銀ナノ粒子は、任意の適した表面上の層、例えば、基材、誘電体層、または半導体層上の層として堆積させることができる。
【実施例】
【0052】
<実施例1>
2つのインク組成物を調合した。組成物Aは、オレイン酸により安定化された銀ナノ粒子40wt%とキシレン60wt%とを含む。組成物Bは、オレイン酸により安定化された銀ナノ粒子40wt%と、ドデカン40wt%と、テルピネオール20wt%とを含む。
【0053】
オレイン酸により安定化されたナノ粒子は、以下のように調製した。酢酸銀を50℃のトルエンとオレイルアミンの混合物に完全に溶解させた。トルエン中で希釈したフェニルヒドラジンをその後、滴下し、続いて、同じ温度で30分混合した。反応溶液を室温まで冷却した。次に、アセトンとメタノール(1:1v/v)の混合物を撹拌しながら添加し、オレイルアミンにより安定化された銀ナノ粒子を沈殿させた。生成物を濾過し、アセトンおよびメタノールで3度洗浄した。銀ナノ粒子をその後トルエンに溶解し、オレイン酸をその溶液に添加し、続いて30分混合した。アセトン/メタノール(1:1v/v)の混合物を添加することによりオレイン酸により安定化された銀ナノ粒子を沈殿させ、濾過し、メタノールで3度洗浄し、室温で一晩中、真空乾燥させた。
【0054】
その後、2つのインク組成物を使用して、10ピコリットルカートリッジを備えたダイマティクス(Dimatix)DMP−2800インクジェットプリンタにより、線を印刷した。線を
図6Aおよび6Bに示す。
【0055】
図6Aで示されるように、組成物Aは幅が約150〜200μmの線を印刷した。線の厚さはあまり均一ではなく、縁は厚いが、中央は薄かった。
図6Bでは、組成物Bの線はより狭く、幅が約100μmであった。幅はまたより均一であり、縁は滑らかであった。コーヒーリング効果は観察されなかった。
【0056】
<実施例2>
その後、インク組成物の線幅に対する基材の表面エネルギの効果を示すために、組成物Bを2つの異なる基材上に印刷した。プラズマ洗浄したガラス基材を親水性表面として使用した。ヘキサメチルジシラザンまたはオクチルトリクロロシランのいずれかにより修飾したガラス基材を疎水性表面として使用した。
【0057】
図7は、各表面上での組成物Bに対する線幅対滴間隔を示すグラフである。広範囲にわたる滴間隔に対し、親水性および疎水性表面の両方で同様の線幅が達成された。これにより、組成物Bが表面エネルギに依存しないことが示された。これは非常に重要な特性である。というのは、組成物Bおよび同様のインク組成物を使用して様々な表面エネルギを有する異なる表面上に電子部品を印刷することができることを意味するからである。
【0058】
<実施例3>
9つのインク組成物を製造した。それらは銀ナノ粒子の量およびドデカンのテルピネオールに対する重量比の点で異ならせた。インク組成物を用いて線を印刷し、210℃で30分間アニールし、導電性の線の収率(すなわち、線が導電性かそうでないか)を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
ここで示されるように、テルピネオールの相対量が低い場合(5:1の比)、印刷した線のいずれも導電性ではなかった。同様に、銀ナノ粒子の負荷が低い場合(25wt%)、印刷した線はいずれも導電性ではなかった。より高い銀ナノ粒子負荷およびより高いテルピネオール量では、印刷した線は全て導電性であった。
【0061】
<実施例4>
ヘキサデシルアミンにより安定された銀ナノ粒子を本実施例で使用した。インク組成物は40wt%の銀ナノ粒子と、テルピネオールと、炭化水素溶媒と、を含む。炭化水素溶媒のテルピネオールに対する比は2:1とした。炭化水素溶媒のアイデンティティを変動させて、その効果を決定した。基材の温度もまた変動させた。線を印刷し、線幅およびコーヒーリング効果を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
ここで示されるように、基材温度が増加すると印刷した線幅が減少した。テルピネオールの沸点(219℃)よりも高いかまたは低い沸点を有する炭化水素溶媒を使用すると、コーヒーリング効果の減少が助けられた(小さなh
edge/h
center比)。特に、アイソパ(ISOPAR、登録商標)Gとテルピネオールの組み合わせは、狭い線およびコーヒーリング効果の減少の両方を提供した。
【0064】
<実施例5>
アイソパ(登録商標)Gおよびテルピネオールを、アイソパ(登録商標)G対テルピネオール比2:1で溶媒として使用した。ヘキサデシルアミンにより安定化された銀ナノ粒子50wt%を使用して、インクを調合した。線を印刷すると、基材温度が60℃では、線幅が57μmまでさらに減少し、h
edge/h
center比が1.02であることが示された。
【0065】
<実施例6>
メシチレンおよびo−キシレンを炭化水素溶媒として使用し、テルピネオールを2:1の比で共溶媒として使用した。ヘキサデシルアミンにより安定化された銀ナノ粒子50wt%を使用した。線を印刷した。60℃の基材温度では、メシチレンを有するインク調合物では40から45μmの線幅が得られ、キシレンを有するインク調合物では約30μmの線幅が得られた。