特許第5763302号(P5763302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763302
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】グラフェンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   C01B31/02 101Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-87688(P2010-87688)
(22)【出願日】2010年4月6日
(65)【公開番号】特開2010-241680(P2010-241680A)
(43)【公開日】2010年10月28日
【審査請求日】2013年3月19日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0029882
(32)【優先日】2009年4月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】鮮于 文旭
(72)【発明者】
【氏名】馬 東俊
(72)【発明者】
【氏名】李 正賢
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−062247(JP,A)
【文献】 特開2009−143761(JP,A)
【文献】 特開2004−106168(JP,A)
【文献】 特開2007−031239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B31/00−31/36
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンの製造方法において、
基板上に炭素含有物質を整列させる段階と、
前記炭素含有物質が形成された前記基板に対してアニーリングを実施し、前記基板上にグラフェンを製造する段階とを含み、
前記炭素含有物質は、カーボンナノチューブまたはフラーレンであり、
前記アニーリング工程は、レーザまたはRTA工程によって、前記基板の前記炭素含有物質と接触した面の局部溶融温度または再結晶温度以上の温度に加熱することを特徴とするグラフェンの製造方法。
【請求項2】
前記基板はSi、SiC、SOI、a−Si、poly−Si、a−SiCまたはガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項3】
前記基板はa−Si、poly−Si、a−SiC、GeまたはGeCのうち、少なくともいずれか一つが形成されたガラス基板または石英基板であることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項4】
前記基板がSiを含む場合、前記アニーリング工程によって、前記炭素含有物質下部の基板には、SiCが形成されることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項5】
前記基板上に炭素含有物質を整列させる段階は、前記基板上に多数の金属触媒を整列させ、炭素ソースガスを供給することを含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの製造方法に係り、特に、カーボンナノチューブまたはフラーレンに対してアニーリング工程を実施することによって、グラフェンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、炭素に基づく材料、例えば、カーボンナノチューブ(carbon nanotube)、ダイヤモンド(diamond)、グラファイト(graphite)、グラフェン(graphene)などが、多様な分野のナノ技術で研究されている。かような材料は、FET(field effect transistor)、バイオセンサ(biosensor)、ナノ複合物(nanocomposite)または量子素子(quantum device)等に利用されており、また利用されうる。
【0003】
グラフェンは、二次元物質であって、バンドギャップが0である半導体物質(ゼロギャップ半導体物質)であり、ここ数年にわたりグラフェンの電気的特性について多様な研究が発表されている。かようなグラフェンの電気的な特性には、両極性超電流(biopolar supercurrent)、スピン輸送(spin transport)、量子ホール効果(quantum hole effect)などが含まれる。現在、グラフェンは、炭素を基盤とするナノ電子素子の集積化のための基本単位として利用されうる物質として脚光を浴びている。
【0004】
グラフェンの製造方法として、テープ(tape)を利用し、グラファイトからグラフェンを基板に転移する方法が紹介されている。しかし、高品質のグラフェンを得るためには、高真空及び1150℃ないし1400℃の高温工程を進めなければならないために、グラフェンの量産が困難であるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、二次元構造のグラフェンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によるグラフェンの製造方法は、グラフェンの製造方法において、基板上に炭素含有物質を整列させる段階と、前記炭素含有物質が形成された前記基板に対してアニーリングを実施し、前記基板上にグラフェンを製造する段階とを含むグラフェンの製造方法を提供する。
【0007】
前記炭素含有物質は、カーボンナノチューブまたはフラーレンでありうる。
【0008】
前記アニーリングは、前記基板の前記炭素含有物質と接触した面の局部溶融温度または再結晶温度以上の温度に加熱することによってなされうる。
【0009】
前記基板はSi、SiC、SOI(silicon on insulator)、a−Si(amorphous−Si)、poly−Si、a−SiCまたはガラス基板でありうる。
【0010】
前記基板は、a−Si、poly−Si、a−SiC、GeまたはGeCのうち、少なくともいずれか一つが形成されたガラス基板または石英基板でありうる。
【0011】
前記アニーリング工程は、レーザまたはRTA(rapid thermal annealing)工程によるものでありうる。
【0012】
前記アニーリング工程によって、前記炭素含有物質下部の基板には、SiCが形成されうる。
【0013】
前記基板上に炭素含有物質を整列させる段階は、前記基板上に多数の金属触媒を整列させて、炭素ソースガスを供給できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施例によれば、基板上に整列されたカーボンナノチューブまたはフラーレンに対するアニーリング工程を実施することによって、グラフェンを製造でき、別途の高真空、高温工程が必要なく、高品質の大面積グラフェン製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】カーボンナノチューブを利用したグラフェンの製造方法を示した図面である。
図1B】カーボンナノチューブを利用したグラフェンの製造方法を示した図面である。
図2A】フラーレンを利用したグラフェンの製造方法を示した図面である。
図2B】フラーレンを利用したグラフェンの製造方法を示した図面である。
図3】基板上に形成されたカーボンナノチューブまたはフラーレンに対してアニーリングを実施し、グラフェンが形成される原理を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の実施形態によるグラフェン(graphene)の製造方法について詳細に説明する。参考用に、図面に示した各層の厚さ及び幅は、説明のために多少誇張されて図示されていることがある。
【0017】
本発明の実施形態によるグラフェンの製造方法では、基板上に分散された炭素含有物質、例えば、カーボンナノチューブ(carbon nanotube)またはフラーレン(fullerenes)をレーザまたはRTA(rapid thermal annealing)などを利用し、アニーリングを実施することによって、非常に簡単な工程でグラフェンを製造できる。
【0018】
図1A図1B図2A図2B及び図3は、本発明の実施形態によるグラフェンの製造方法を示した図面である。ここで、図1A及び図1Bは、カーボンナノチューブを利用したグラフェンの製造方法を示した図面である。
【0019】
図1Aを参照すれば、まず基板10上に、カーボンナノチューブ11,12を所望の位置に整列させるように形成する。ここで参照符号11のカーボンナノチューブは、基板10上に形成されたカーボンナノチューブ12を拡大したものである。
【0020】
基板10上に整列されたカーボンナノチューブ11,12は、アーク放電法(arc discharge)、レーザ蒸発法(laser ablation)、化学気相蒸着法(CVD:chemical vapor deposition)などを利用して形成できる。金属触媒粒子を利用し、基板10上にカーボンナノチューブ11,12を形成する工程の例を挙げれば、次の通りである。まず、基板10上の所望の位置に、金属触媒粒子を配列する。そして、アセチレンやメタンのようなガス炭素ソースを供給すれば、熱分解されつつ、炭素成分が金属触媒粒子と結合しつつカーボンナノチューブを形成できる。
【0021】
ここで、基板10は、Si、SiC、SOI(silicon on insulator)、a−Si(amorphous−Si)、poly−Si、a−SiCまたはガラス基板でありうる。また基板10は、a−Si、poly−Si、a−SiC、GeまたはGeCなどの薄膜が蒸着されているガラス基板や石英基板などでありうる。
【0022】
そして、図1Bを参照すれば、カーボンナノチューブ11,12が配列された基板10に対して、レーザまたはRTA工程を利用してアニーリング工程Lを実施する。アニーリング工程によって、基板10と接触している部位のカーボンナノチューブ11,12は、基板10の物質と反応して化合物などを形成し、基板10上には、二次元構造のグラフェン13が残留する。
【0023】
かような工程過程で、基板10を加熱するが、真空状態に維持することも可能であり、ArまたはN雰囲気下で実施することも可能である。
【0024】
図2A及び図2Bは、フラーレンを利用したグラフェンの製造方法を示した図面である。
【0025】
図2A及び図2Bを参照すれば、まず、基板20上に炭素によって形成された球形物質であるフラーレン21,22を所定位置に整列させる。ここで、参照符号21のフラーレンは、基板20上に形成されたフラーレン22を拡大したものである。
【0026】
基板20はSi、SiC、SOI、a−Si、poly−Si、a−SiCまたはガラス基板であって、またa−Si、poly−Si、a−SiC、GeまたはGeCなどの薄膜が蒸着されているガラス基板や石英基板などでありうる。整列されたフラーレン21,22に対して、レーザまたはRTA工程を利用してアニーリング工程Lを実施する。
【0027】
アニーリング工程によって、基板20と接触している部位のフラーレン21,22は、基板20物質と反応して化合物などを形成し、基板20上には、二次元構造のグラフェン23が残留する。
【0028】
かような工程過程で、基板20を加熱するが、真空状態に維持することも可能であり、ArまたはN雰囲気下で実施することも可能である。
【0029】
カーボンナノチューブを利用してグラフェンを製造する場合には、ナノスケール・グラフェンライン(nanoscale graphene line)を形成でき、フラーレンを利用してグラフェンを製造する場合には、ナノスケール・グラフェンドット(nanoscale graphene dot)を形成できる。
【0030】
図3は、基板上に形成されたカーボンナノチューブまたはフラーレンに対してアニーリングを実施し、グラフェンが形成される原理を示した図面である。
【0031】
図3を参照すれば、基板30上に、炭素含有物質、すなわちカーボンナノチューブまたはフラーレン31が整列されている。ここで、カーボンナノチューブまたはフラーレン31に対して、レーザまたはRTA工程Lを利用してアニーリングを実施する。アニーリングは、基板30の炭素含有物質と接触した面の局部溶融温度または再結晶温度以上の温度に加熱することによってなされうる。このとき、カーボンナノチューブまたはフラーレン31と接する基板領域33が、溶融(melting)状態になりつつ、カーボンナノチューブまたはフラーレン31の下部領域と反応する。
【0032】
例えば、基板30がSiを含む場合、カーボンナノチューブまたはフラーレン31の炭素(C)と反応し、SiCを形成する。エキシマレーザを利用する場合、基板領域33が溶融状態として存在する時間が、数十nsecほどと非常に短いので、瞬間的に反応する。カーボンナノチューブまたはフラーレン31の下部領域が、溶融されたSiと反応する一方で、そのカーボンナノチューブまたはフラーレン31の下部領域の反対側のカーボンナノチューブまたはフラーレン31の上部領域32は、それ自体の弾力によって平坦化される。
【0033】
結果的に、基板30と接触しないカーボンナノチューブまたはフラーレン31の上部領域だけが残留し、基板30上にグラフェン34として残留する。カーボンナノチューブまたはフラーレン31は、基板30の溶融過程において、レーザなどの照射による熱的ダメージをほとんど受けないので、結果的に、SiC上にグラフェン34が形成された構造となる。従って、レーザ及びRTAによるアニーリング温度は、基板30が溶融または再結晶する温度以上の温度に加熱できる。
【0034】
炭素によって形成された二次元結晶構造を有したグラフェンがロール状に形成された場合、カーボンナノチューブ構造になって、さらにカーボンナノチューブを広げれば、ナノスケールの二次元グラフェンとして形成できる。Siの融点(melting point)は、1410℃であり、このとき、SiはCと反応して固溶体(solid solution)であるSiC構造になりうる。
【0035】
グラフェンは、特に4H−SiCまたは6H−SiC(0001)面で、エピタキシャル成長が可能である。本発明の実施形態によれば、レーザなどによって基板の一部領域に対してのみ、瞬間的なアニーリング工程でグラフェンを製造したり、Ge/基板構造である場合、GeとCとの反応温度が、基板の融点より低いという性能を利用して製作できるので、工程自体が非常に簡単であり、さらなる高真空、高温工程が必要とされない。
【0036】
上述の説明で多くの事項が具体的に記載されているが、それらは、発明の範囲を限定するものとするより、実施形態の例示として解釈されるものである。従って、本発明の範囲は、説明された実施形態によって定められるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想によって定められるものである。
【符号の説明】
【0037】
10,20,30 基板
11,12 カーボンナノチューブ
13,23 二次元構造のグラフェン
21,22,23 フラーレン
31 カーボンナノチューブまたはフラーレン
33 基板領域
34 グラフェン
L アニーリング工程
図1A
図1B
図2A
図2B
図3