【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0074】
[重合体の構造の解析方法]
実施例で得た共重合体の構造は、日本電子(株)製JNM−ECS400を用いた各種NMR解析により決定した。一般式(2)で示されるアリル化合物に由来するモノマーユニットの含有率と共重合体末端構造は、溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(0.55mL)及び緩和試薬としてCr(acac)
3(10mg)を用い、120℃において、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMR(9.0マイクロ秒の90°パルス、スペクトル幅:31kHz、緩和時間:10秒、取り込み時間:10秒、FIDの積算回数5,000〜10,000回)によって決定した。
【0075】
分岐構造は、
13C−NMRの3級炭素原子のスペクトルにより判断することができる。すなわち、酢酸アリル分岐の炭素原子(
図3中の炭素原子dに相当)は37.9ppmに現れるのに対して、ポリマー主鎖の分岐がある場合、3級炭素原子(分岐根元の炭素原子)のケミカルシフト値は、38.2〜39ppm付近に現れるので、両者を区別することができる(
図3参照)(参考文献:Macromolecules 1999, 32, 1620-1625)。
【0076】
末端構造についても同様に、
13C−NMRあるいは
1H−NMRで構造を解析することができる。特に末端二重結合を有する場合、
13C−NMRスペクトルで114ppm及び139ppmにスペクトルが現れ、10〜40ppmに現れる飽和末端構造を区別することができる(参考文献:Chem. Commun. 2002, 744-745)。
【0077】
数平均分子量及び重量平均分子量は、東ソー(株)製,TSKgel GMHHR−H(S)HTカラム(7.8mmI.D.×30cmを2本直列)を備えた東ソー(株)製高温GPC装置、HLC−8121GPC/HTを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2−ジクロロベンゼン、温度:145℃)により算出した。
【0078】
[金属錯体触媒1の合成]
下記の反応スキームに従って金属錯体触媒1を合成した。
【化33】
【0079】
(a)化合物1aの合成
アルゴン雰囲気下、ベンゼンスルホン酸(東京化成工業製、662mg,4.2mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(20mL)に、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.65Mヘキサン溶液,5.1mL,8.4mmol)を0℃で加え、室温で2.5時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後にクロロジシクロヘキシルホスフィン(Sigma-Aldrich製,885mg,3.8mmol)を−78℃で加え、室温で24時間撹拌した。反応をトリフルオロ酢酸(東京化成工業製、0.5M THF溶液,8.4mL,4.2mmol)で停止した後に、生じた沈殿をろ過によって回収し、減圧下乾燥してホスホニウムスルホナート(化合物1a)を得た。収量は656mg(85%)であった。
【0080】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.98-0.27 (m, 4H), 1.30-1.58 (m, 6H), 1.62-1.78 (m, 4H), 1.88 (br s, 4H), 2.28 (br s, 2H), 3.33 (br s, 2H), 5.19 (br d,
1J
PH = 370 Hz, 1H), 7.48-7.58 (m, 2H), 7.80 (br s, 1H), 8.27 (br s, 1H);
13C−NMR(101MHz,CDCl
3):δ 25.0 (s), 25.6-26.2 (m), 28.8 (br), 30.3 (br), 34.6 (br d,
1J
PC = 40 Hz), 113.4 (br d,
1J
PC = 87 Hz), 128.8 (d, J
PC = 9 Hz), 130.1 (d, J
PC = 9 Hz), 135.4 (br), 137.1 (br), 150.5 (br);
31P−NMR(162MHz,CDCl
3):δ 52.8 (d,
1J
PH = 370 Hz) (90%), 20.8 (d,
1J
PH = 530 Hz) (10%);
Anal. calcd for C
18H
27O
3PS, C, 60.99; H, 7.68. found: C, 60.90; H, 7.55。
【0081】
(b)錯体1bの合成
アルゴン雰囲気下、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(dicyclohexylphosphino)benzenesulfonic acid;化合物1a)(426mg,1.2mmol)とジイソプロピルエチルアミン(和光純薬工業製、1.1mL,6.0mmol)の塩化メチレン溶液(16mL)に、(COD)PdMeCl(「Chem., 1993, 32, 5769-5778」に従って合成。COD=1,5−シクロオクタジエン、321mg,1.2mmol)の塩化メチレン溶液(6mL)を加え、室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、ろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に加えた。生じた沈殿物をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、錯体1bを得た。収量は656mg(85%)であった。
【0082】
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ 0.71 (d,
3J
PH = 1.4 Hz, 3H, PdCH
3), 1.11-1.35 (m, 8H), 1.45 (d, J = 6.6 Hz, 6H, HNCH(CH
3)
2), 1.57 (d, J = 6.6Hz, 6H, HNCH(CH
3)
2), 1.57 (t, J = 7.3 Hz, 3H, HNCH
2CH
3), 1.60-1.70 (m, 6H), 1.72-1.84 (m, 4H), 2.12-2.28 (m, 4H), 3.29 (dq, J = 7.3, 5.0 Hz, 2H, HNCH
2CH
3), 3.92-4.01 (m, 2H, HNCH(CH
3)
2), 7.45 (dd, J = 7.2, 7.2 Hz, 1H), 7.49 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 1H), 7.59 (dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 1H), 8.21 (ddd, J = 7.7, 3.6, 1.3 Hz, 1H), 8.87 (br, 1H, NH);
13C−NMR(101MHz,CDCl
3):δ -7.3 (s, PdCH
3), 12.0 (s, HNCH
2CH
3), 17.9 (s, HNCH(CH
3)
2), 19.2 (s, HNCH(CH
3)
2), 26.0 (s), 26.9-27.4 (m), 28.7 (s), 29.4 (d, J
PC = 4 Hz), 35.6 (d,
1J
PC = 25 Hz), 42.4 (s, HNCH
2CH
3), 54.6 (s, HNCH(CH
3)
2), 125.5 (d,
1J
PC = 33 Hz), 128.3 (d, J
PC = 7 Hz), 128.9 (d, J
PC = 6 Hz), 130.3 (s), 132.5 (s), 150.9 (d,
2J
PC = 11 Hz);
31P−NMR(162MHz,CDCl
3):δ 31.7;
Anal. calcd for C
27H
49ClNO
3PPdS, C, 50.62; H, 7.71; N, 2.19. found: C, 50.49; H, 8.00, N, 2.12。
【0083】
(c)金属錯体触媒1の合成
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(420mg,3.03mmol)と2,6−ルチジン(東京化成工業製、333mg,3.11mmol)の塩化メチレン懸濁液(2mL)に、錯体1b(194mg,0.30mmol)の塩化メチレン溶液(4mL)を加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下留去して残った固体をジエチルエーテルで洗浄した後に、塩化メチレンで抽出した。抽出液をセライト(乾燥珪藻土)でろ過し、ゆっくりとヘキサン(40mL)中に加えた。生じた沈殿物をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒1を得た。収量は123mg(70%)であった。
【0084】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.32 (d,
3J
PH = 2.3 Hz, 3H, PdCH
3), 1.12-1.47 (m, 8H), 1.60-1.94 (m, 10H), 2.22-2.33 (m, 4H), 3.18 (s, 6H, CH
3 of lutidine), 7.12 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.47 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 1H), 7.52 (dddd, J = 7.6, 7.6, 1.4, 1.4 Hz, 1H), 7.58 (dd, J = 8.1, 8.1 Hz, 1H), 7.60 (dd, J = 7.5, 7.5 Hz, 1H), 8.29 (ddd, 7.8, 3.9, 1.5 Hz, 1H);
13C−NMR(101MHz,CDCl
3):δ -9.4 (d,
2J
PC = 4.8 Hz, PdCH
3), 26.3 (s, CH
3 of lutidine), 26.9-27.5 (m), 28.6 (s), 29.6 (d, J
PC = 3 Hz), 35.5 (d,
1J
PC = 26 Hz), 122.5 (s),122.5 (s), 124.6 (d,
1J
PC = 35 Hz), 128.9 (d, J
PC = 7 Hz), 129.0 (d, J
PC = 6 Hz), 130.7 (s), 132.4 (s), 138.1 (s). 151.0 (d,
2J
PC = 12 Hz), 159.0 (s);
31P−NMR(162MHz,CDCl
3):δ 27.5;
Anal. calcd for C
26H
38NO
3PPdS, C, 53.65; H, 6.58; N, 2.51. found: C, 53.51; H, 6.74; N, 2.40。
【0085】
実施例1:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体1の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(58.2mg,0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、塩化メチレン(3.75mL)、トルエン(3.75mL)、酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体1を得た。収量は754mgであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量8,100、重量平均分子量16,200と算出し、Mw/Mnは2.0であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRによりエチレン:酢酸アリルのモル比は100:3.4(酢酸アリルモル分率=3.3%)と決定した。また、炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2ppm)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。この場合の検出限界値より、分岐数が炭素原子1000個あたり1個以下である直鎖状ポリマーであることがわかった。また、末端二重結合に由来する114ppm及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測され、末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。さらに、
図4に示すIRスペクトルでは、1744cm
-1にカルボニル基由来のピークが観測された。
重合条件及び結果を表1及び2に示す。
なお、生産性と触媒活性は次の式により計算した。
【数3】
【数4】
【0086】
実施例2:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体2の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(58.2mg,0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(7.5mL)、酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体2を得た。収量は585mgであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量7,900、重量平均分子量15,500と算出し、Mw/Mnは2.0であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRによりエチレン:酢酸アリルのモル比は100:4.4(酢酸アリルモル分率=4.2%)と決定した。また、炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2ppm)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114ppm及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0087】
実施例3:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体3の調製)
2−(ジシクロペンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(dicyclopentylphosphino)benzenesulfonic acid)を出発物質として金属錯体触媒1と同様の方法により金属錯体触媒2を合成した。
【化34】
この金属錯体触媒2を使用して、実施例2と同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒2(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(7.5mL)、酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体3を得た。収量は226mgであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量3,400、重量平均分子量5,400と算出し、Mw/Mnは1.6であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRによりエチレン:酢酸アリルのモル比は100:2.0(酢酸アリルモル分率=2.0%)と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2ppm)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114ppm及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。重合条件及び結果を表1及び2に示す。。
【0088】
実施例4:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体4の調製)
2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)を出発物質として金属錯体触媒1と同様の方法により金属錯体触媒3を合成した。
【化35】
この金属錯体触媒3を使用して、実施例2と同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒3(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(7.5mL)、酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体4を得た。収量は525mgであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量6,700、重量平均分子量12,700と算出し、Mw/Mnは1.9であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRによりエチレン:酢酸アリルのモル比は100:2.7(酢酸アリルモル分率=2.0%)と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2ppm)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114ppm及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0089】
比較例1:ラジカル法による酢酸アリルとエチレンの共重合
金属錯体触媒の代わりに、ラジカル発生剤AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)を使用して、酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、120mLオートクレーブに、AIBN(0.742g,4.52mmol)、酢酸アリル(80mL,74.6g,747mmol)を加えた。エチレンを圧力1.0MPaとなるように充填した後、オートクレーブを90℃で、2時間撹拌した。反応中のエチレン圧は、溶媒に溶け込む分の圧低下が観測された後(エチレン圧をかけて開始約10分間)、反応によるエチレン圧の低下は観測されなかった。室温に冷却後、得られた溶液を減圧蒸留して未反応の酢酸アリルを留去すると、オイル状物質7.3gが得られた。得られたオイル状物質を
1H−NMR、
13C−NMRにより分析すると、エチレン共重合によるエチレン骨格は存在せず、酢酸アリルのみが反応したオリゴマー(酢酸アリルモル分率=100.0%)であることがわかった。サイズ排除クロマトグラフィーにより分析すると、数平均分子量1,600、重量平均分子量2,800と算出され、Mw/Mnは1.9であった。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0090】
[金属錯体触媒4の合成]
【化36】
窒素雰囲気下、2−[ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]ベンゼンスルホン酸(2-[bis(2-methoxyphenyl)phosphino]benzenesulfonic acid)(0.46g,1.1mmol)と(TMEDA)PdMe
2(「Organometallics 1989, 8, 2907-2917」に従って合成。TMEDA=N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、0.29g,1.1mmol)の塩化メチレン溶液(7mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液に2,6−ルチジン(1.2g,11.4mmol)を加え、さらに3時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒4を得た。収量は0.46g(64%)であった。
【0091】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ -0.06 (d,
3J
PH = 1.2 Hz, 3H, PdCH
3), 3.15 (s, 6H, CH
3 of lutidine), 3.61 (s, 6H, OCH
3), 6.90-6.93 (m, 2H), 7.03-7.11 (m, 4H), 7.32-7.57 (m, 6H), 7.77 (br s, 2H), 8.16 (br s, 1H)。
【0092】
[金属錯体触媒5の合成]
窒素雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)(0.96g,3.5mmol)と(TMEDA)PdMe
2(0.88g,3.5mmol)の塩化メチレン溶液(30mL)を室温で1.5時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥し、金属錯体触媒5を得た。収量は1.6g(98%)であった。
【0093】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.39 (s, 6H, PdCH
3), 1.23 (br, 24H, P[CH(CH
3)
2]
2), 2.57 (br, 2H, PC[H(CH
3)
2]
2), 2.64 (s, 12H, (CH
3)
2NCH
2CH
2N(CH
3)
2), 3.48 (s, 4H, (CH
3)
2NCH
2CH
2N(CH
3)
2), 7.48-7.55 (m, 6H), 8.29 (br, 2H)。
【0094】
[金属錯体触媒6の合成]
窒素雰囲気下、金属錯体触媒5(0.48g,0.53mmol)のジメチルスルホキシド(dmso)溶液(10mL)を減圧下(0.15mmHg)、40℃で10時間撹拌した。反応液に塩化メチレン(30mL)及び水(30mL)を加えた後、分液漏斗を用い、有機層と水層を分離した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を留去した。残渣に塩化メチレン(10mL)を加え溶解させ、その溶液をヘキサン(50mL)に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒6を得た。収量は0.26g(52%)であった。
【0095】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.68 (s, 3H, PdCH
3), 1.21-1.32 (m, 12H, P[CH(CH
3)
2]
2), 2.49-2.58 (m, 2H, P[CH(CH
3)
2]
2), 2.88 (s, 6H, CH
3(S=O)CH
3), 7.47-7.58 (m, 3H), 8.31-8.33 (m, 1H)。
【0096】
[金属錯体触媒7の合成]
【化37】
窒素雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸((2-diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)(0.33g,1.2mmol)と(TMEDA)PdMe
2(0.30g,1.2mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液にピリジン(和光純薬工業製、0.48g,6.0mmol)を加え、さらに1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒7を得た。収量は0.39g(68%)であった。
【0097】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.57 (s, 3H, PdCH
3), 1.19-1.35 (m, 12H, P[CH(CH
3)
2]
2), 2.52-2.61 (m, 2H, P[CH(CH
3)
2]
2), 7.47-7.59 (m, 5H), 7.82-7.87 (m, 1H), 8.35 (br, 1H), 8.87 (br, 2H)。
【0098】
[金属錯体触媒8の合成]
【化38】
窒素雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸((2-diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)(0.22g,0.81mmol)と(TMEDA)PdMe
2(0.21g,0.81mmol)の塩化メチレン溶液(8mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液に2−メチルキノリン(東京化成工業製、1.2g,8.1mmol)を加え、さらに2時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒8を得た。収量は0.41g(95%)であった。
【0099】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.39 (s, 3H, PdCH
3), 1.30-1.49 (m, 12H, P[CH(CH
3)
2]
2), 2.62-2.69 (m, 2H, P[CH(CH
3)
2]
2), 3.43 (s, 3H, 2-CH
3-quinoline), 7.41-7.64 (m, 5H), 7.81-7.86 (m, 2H), 8.19 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.30 (br, 1H), 9.58 (d, 1H, J = 8.0 Hz)。
【0100】
[金属錯体触媒9の合成]
【化39】
窒素雰囲気下、4−エチルベンゼンスルホン酸(Sigma-Aldrich社製)を出発原料として化合物1aと同様の方法で合成した2−ジイソプロピルホスフィノ−4−エチルベンゼンスルホン酸(2-diisopropylphosphino-4-ethylbenzenesulfonic acid)(0.37g,1.2mmol)と(TMEDA)PdMe
2(0.31g,1.2mmol)の塩化メチレン溶液(8mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液に2,6−ルチジン(1.3g,12.3mmol)を加え、さらに2時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒9を得た。収量は0.51g(77%)であった。
【0101】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.33 (s, 3H, PdCH
3), 1.26-1.39 (m, 15H), 2.52-2.73 (m, 4H), 3.18 (s, 6H, CH
3 of lutidine), 7.12 (d, 2H, J = 7.2 Hz), 7.33-7.37 (m, 2H), 7.57 (t, 1H, J = 7.2 Hz), 8.20 (br, 1H)。
【0102】
[金属錯体触媒10の合成]
【化40】
窒素雰囲気下、ベンゼンスルホン酸(Sigma-Aldrich社製)を出発原料として化合物1aと同様の方法で合成した2−ビス(2',6'−ジメトキシ−2−ビフェニル)ホスフィノベンゼンスルホン酸(2-bis(2',6'-dimethoxy-2-biphenyl)phosphinobenzenesulfonic acid)(0.53g,0.87mmol)と(TMEDA)PdMe
2(0.22g,0.87mmol)のTHF溶液(12mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液に2,6−ルチジン(0.93g,8.7mmol)を加え、さらに4時間撹拌した。反応液にt−ブチルメチルエーテル(10mL)を加え、生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒10を得た。収量は0.50g(69%)であった。
【0103】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 0.16 (s, 3H, PdCH
3), 3.14 (s, 6H, CH
3 of lutidine), 3.48-3.74 (m, 12H), 6.12-8.27 (m, 21H)。
【0104】
実施例5:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体5の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒4(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、塩化メチレン(3.75mL)、トルエン(3.75mL)、及び酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体5を得た。収量は0.29gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量4,000、重量平均分子量7,000と算出し、Mw/Mnは1.7であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で3.7%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0105】
実施例6:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体6の調製)
窒素雰囲気下、酢酸アリル(37.5mL,34.9g,350mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、金属錯体触媒1(0.10mmol)のトルエン溶液(37.5mL)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、5時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(400mL)に加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体6を得た。収量は2.1gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量14,000、重量平均分子量29,000と算出し、Mw/Mnは2.1であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で3.8%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0106】
実施例7〜30:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体7〜30の調製)
実施例5及び6と同様にして共重合体7〜30を製造した。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
比較例2:エチレンの単独重合
金属錯体触媒1を使用して、エチレンの単独重合を行った。すなわち、窒素雰囲気下、120mLオートクレーブ中に、金属錯体触媒1(0.050mmol)のトルエン溶液(75mL)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、1時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(400mL)に加えた。生じた重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥した。収量は8.3gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量30,000、重量平均分子量70,000と算出され、Mw/Mnは2.1であった。
【0110】
比較例3:有機アルミを使用した場合
前周期の遷移金属錯体を使用して極性基含有モノマーを(共)重合させる場合には、極性基含有モノマーに対して等量以上の有機アルミニウムを使用する。この場合、ポリマー鎖が有機アルミへ連鎖移動してポリマー生長が停止するため、末端二重結合が観測されないことが文献に示されている(Macromolecules 2004, 37, 5145)。
【0111】
実施例31: 酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体31の調製;in situ)
アルゴン雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸-(2-(diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)(0.12mmol)とPd
2(DBA)
3・CHCl
3(DBA=ジベンジリデンアセトン,0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、塩化メチレン(3.75mL)、トルエン(3.75mL)、及び酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、15時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体31を得た。収量は1.7gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量4,000、重量平均分子量9,000と算出し、Mw/Mnは2.7であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で2.7%と決定した。また、炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。
【0112】
実施例32:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体32の調製)
窒素雰囲気下、酢酸アリル(37.5mL,34.9g,348mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、金属錯体触媒3(0.010mmol)のトルエン溶液(37.5mL)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、5時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(400mL)に加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体32を得た。収量は0.89gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量13,000、重量平均分子量29,000と算出し、Mw/Mnは2.2であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で3.3%と決定した。また、炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。、また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。
【0113】
実施例33〜35:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体33〜35の調製)
反応時間をそれぞれ25時間、50時間、100時間としたこと以外は実施例32と同様にして、共重合体33〜35を得た。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0114】
実施例32〜35の重合時間に対する触媒当たりのポリマー生産性をグラフにしたものを
図16に示す。本重合触媒系では、触媒失活が殆ど見られず、重合時間の経過と共に、ポリマー収量が増大していることがわかる。これは、エチレンと酢酸ビニルの共重合では、重合時間の経過と共に、重合活性が低下して、触媒当たりのポリマー生産性が頭打ちになっている現象(例えば、J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 14606, Supporting Information S10参照)と大きく異なっており、本発明が工業化にとって有利な技術であることが分る。
【0115】
実施例36:酢酸アリル・エチレン共重合体のけん化反応(共重合体36の調製)
窒素雰囲気下、実施例6で得られた酢酸アリル・エチレン共重合体(1.0g)及び水酸化カリウム(0.056g,1.1mmol)のトルエン(115mL)、エタノール(35mL)懸濁液を80℃で、6時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(500mL)に加えた。生じた沈殿をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体36を得た。収量は0.86gであった。得られた粉末を
13C−NMR、IRにより分析すると、酢酸アリル・エチレン共重合体に存在していたエステル基が完全に水酸基に変換されており、アリルアルコール・エチレン共重合体であることがわかった。IRスペクトルを
図5に示す。アリルアルコール含有率は
13C−NMRにより、モル分率で3.2%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。加えて、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析すると、数平均分子量12,000、重量平均分子量26,000と算出され、Mw/Mnは2.2であった。
【0116】
実施例37:酢酸アリル・エチレン共重合体の部分けん化反応(共重合体37の調製)
窒素雰囲気下、実施例20で得られた酢酸アリル・エチレン共重合体(3.0g)及び水酸化カリウム(0.0023g,0.042mmol)のトルエン(75mL)、エタノール(5mL)懸濁液を80℃で、30分撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(500mL)に加えた。生じた沈殿をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体37を得た。収量は2.8gであった。得られた粉末を
13C−NMRにより分析すると、モル分率で酢酸アリルユニットが2.0%、アリルアルコールユニットが1.8%存在することが判明した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。加えて、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析すると、数平均分子量11,000、重量平均分子量26,000と算出され、Mw/Mnは2.4であった。
【0117】
実施例38:アリルアルコールとエチレンの共重合(共重合体38の調製)
窒素雰囲気下、アリルアルコール(15mL,12.8g,219.8mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、金属錯体触媒1(0.15mmol)のトルエン溶液(60mL)を加えた。エチレン(4.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、7時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(400mL)に加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体38を得た。収量は0.12gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量2,000、重量平均分子量3,400と算出し、Mw/Mnは1.7であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で2.7%と決定した。
【0118】
実施例39〜40:アリルアルコールとエチレンの共重合(共重合体39、40の調製)
表3に示す条件としたこと以外は実施例38と同様にして共重合体39及び40を製造した。結果を表4に示す。
【0119】
実施例41:塩化アリルとエチレンの共重合(共重合体41の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(12mL)、塩化アリル(3mL,2.8g,36.8mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、15時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(30mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体41を得た。収量は0.41gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量10,000、重量平均分子量19,000と算出し、Mw/Mnは1.9であった。共重合体中の塩化アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で1.0%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。
【0120】
実施例42〜43:塩化アリルとエチレンの共重合(共重合体42〜43の調製)
表3に示す条件としたこと以外は実施例41と同様にして共重合体42及び43を製造した。結果を表4に示す。
【0121】
実施例44:臭化アリルとエチレンの共重合(共重合体44の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(12mL)、臭化アリル(3mL,4.3g,35.5mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、15時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(30mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体44を得た。収量は0.34gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量8,000、重量平均分子量15,000と算出し、Mw/Mnは1.9であった。共重合体中の臭化アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で0.71%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。
【0122】
実施例45:臭化アリルとエチレンの共重合(共重合体45の調製)
表3に示す条件としたこと以外は実施例44と同様にして共重合体45を製造した。結果を表4に示す。
【0123】
実施例46:N−アリルアニリンとエチレンの共重合(共重合体46の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(12mL)、N−アリルアニリン(3mL,2.9g,22.1mmol)を加えた。エチレン(5.0MPa)を充填した後、オートクレーブを120℃で、15時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(30mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体46を得た。収量は0.13gであった。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに
13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量1,500、重量平均分子量3,100と算出し、Mw/Mnは2.1であった。
【0124】
実施例47:N−アリルアニリンとエチレンの共重合(共重合体47の調製)
表3に示した条件としたこと以外は実施例46と同様にして共重合体47を製造した。結果を表4に示した。なお、サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量2,100、重量平均分子量3,200と算出し、Mw/Mnは1.5であった。
【0125】
実施例48:N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンとエチレンの共重合(共重合体48の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(15mL)、N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン(2.4g,15.0mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(30mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体48を得た。収量は1.9gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量5,200、重量平均分子量12,200と算出し、Mw/Mnは2.4であった。共重合体中のN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で3.7%と決定した。
【0126】
実施例49:N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンとエチレンの共重合体の加水分解反応(共重合体49の調製)
窒素雰囲気下、実施例48で得られたN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン・エチレン共重合体(0.302g)を含む100mLナスフラスコに、トルエン(40mL)、エチルアルコール(12mL)、35%塩酸(20mL)を加え、78℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、炭酸水素ナトリウムを加え中和した。水による洗浄を4回行った後に減圧下乾燥して、共重合体49を得た。収量は0.237gであった。共重合体中のアリルアミン含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた
13C−NMRにより、モル分率で2.0%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に
13C−NMRシグナルは観測されなかった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量2,600、重量平均分子量4,700と算出し、Mw/Mnは1.8であった。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】