特許第5763330号(P5763330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763330
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20150723BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20150723BHJP
   C08G 73/02 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   G02F1/1337
   G02F1/1333 500
   C08G73/02
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2010-268530(P2010-268530)
(22)【出願日】2010年12月1日
(65)【公開番号】特開2012-118330(P2012-118330A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年7月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】桃井 優一
【審査官】 小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−170090(JP,A)
【文献】 特開2000−019562(JP,A)
【文献】 特開2008−201682(JP,A)
【文献】 特開2005−281166(JP,A)
【文献】 特開平09−243984(JP,A)
【文献】 特開2009−093143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C09K 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向膜が形成されていない一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層とを有する液晶表示装置であって、
前記一対の基板の少なくとも1つはフレキシブル基板であり、且つ前記液晶層は液晶成分と、前記液晶成分と相溶性のあるデンドロンとを含むか、又は液晶成分と、前記液晶成分と相溶性のあるデンドリマー及びデンドロンとを含み、
前記デンドロンは、以下の一般式(III):
【化1】
(式中、Rは、水素、脂環式基、芳香族基、又はHO−(CH−基(式中、mは2〜6の整数である)であり;Aは、
【化2】
(式中、Yは、炭素数1〜12のアルキル基若しくはアルコキシ基、又はフッ素である)であり;Aは、
【化3】
であり;Xは、直接結合、−COO−基又は−N=N−基であり;nは、3〜12の整数である)により表されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記フレキシブル基板のガラス転移温度が200℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
VAモードであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記フレキシブル基板として偏光板を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記デンドリマーは、アルキル基、アルコキシ基及びフッ素からなる群より選択される少なくとも1つを末端に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記デンドリマーは、以下の式(I):
【化4】
(式中、Rは式(II):
【化5】
であり、A
【化6】
(式中、Yは炭素数1〜12のアルキル基若しくはアルコキシ基、又はフッ素である)であり、Xは直接結合、−COO−基又は−N=N−基であり、A
【化7】
であり、nは3〜12の整数である)により表されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記液晶成分は、2種以上の液晶成分を含む混合液晶であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記液晶成分は、フッ素系混合液晶であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。詳細には、本発明は、時計の表示板、携帯電話のディスプレイ、コンピュータやテレビのディスプレイなどに用いられる液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低駆動電圧、低消費電力、薄型及び軽量などの特性を有していることから、時計の表示板、携帯電話のディスプレイ、コンピュータやテレビのディスプレイなどにおける用途が拡がっている。
現在主流の液晶表示装置は、TN(twisted nematic)モード、VA(vertical alignment)モード、IPS(in-plane switching)モードなどの駆動方式を採用しているが、これらの駆動方式の種類によって液晶材料に要求される物性(例えば、液晶相の温度範囲や粘度など)が異なる。そのため、所望の物性を満たすために、単一の液晶成分ではなく、2種以上の液晶成分を含む混合液晶が液晶材料として一般的に使用されている。
【0003】
上記の駆動方式の液晶表示装置ではいずれも、液晶分子の配向を制御する手段が必要であり、配向膜を形成する手段が一般的に使用されている。例えば、TNやIPSモードの液晶表示装置では、ラビング処理を施した配向膜によって、基板に対して平行方向に液晶分子を配向制御している。一方、ラビング処理が不要なVAモードの液晶表示装置では、配向膜によって基板に対して垂直方向に液晶分子を配向制御している。このような従来の液晶表示装置の断面図を図4に示す。図4において、従来の液晶表示装置は、一対の基板(第1基板1及び第2基板2)と、液晶層3と、スペーサ4と、シール材5と、配向膜8とを備えており、一対の基板と液晶層3との間に形成された配向膜8によって液晶層3中の液晶分子を配向制御している。
【0004】
一般的に、配向膜とは、液晶分子の配列状態を制御する膜であり、ポリイミドをベースとした組成物から形成される。また、基板に対して垂直方向に液晶分子を配向させる場合、アルキル基やフッ素含有基などの疎水構造が配向膜に導入される(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、疎水構造の導入量を高めると、配向膜の垂直配向能が向上する一方、配向膜の印刷性が低下する結果、配向膜の印刷ムラが生じ易く、均一な配向膜を形成することが難しくなるという問題がある。つまり、配向膜によって配向制御を行う場合、配向膜の印刷性と配向膜の配向能とのバランスを考慮することが重要になる。
【0005】
また、近年、フレキシブル基板を用いた液晶表示装置が、従来のガラス基板を用いた液晶表示装置に比べて、より薄く、軽く、そして丈夫なことから注目されている。しかしながら、フレキシブル基板を用いた液晶表示装置としては、TNモード(例えば、非特許文献2参照)やコレステリック液晶を使ったものなどが知られているが、まだ試作段階であり、実用化されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ディスプレイ材料事業部LCD材料部、「LCD用垂直配向膜」、JSRテクニカルレビュー、JSR株式会社、2007年3月、第114号
【非特許文献2】平井剛、外2名、「低温焼成アクティブマトリックスLCD用高信頼性配向剤の開発」、JSRテクニカルレビュー、JSR株式会社、2008年3月、第115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配向膜によって液晶分子の配向制御を行う場合、一般的に、配向膜の形成に起因する様々な問題がある。例えば、配向膜を形成する際にゴミやピンホールによって印刷上の製造歩留まりが低下したり、基板の大型化に伴って配向膜の形成工程に要する投資コストが増大するなどの問題がある。
また、フレキシブル基板は、従来のガラス基板に比べて、配向膜の印刷性が悪く、配向安定性を得ることが難しい。その上、液晶表示装置を製造する場合に150℃以上の高温プロセス、例えば、配向膜を形成する際の高温焼成プロセス(例えば、150〜200℃で20分以上)や、熱硬化性のシール材を硬化する際の高温焼成プロセス(例えば、160℃〜250℃で3時間以上)が要求されるため、耐熱性が低い一般的に公知の安価なフレキシブル基板自体の使用が制限される。この中でも、シール材を硬化する際の高温焼成プロセスについては、UV硬化性のシール材を用いると共にODF(液晶滴下注入法)を採用することで回避することができるものの、配向膜を形成する際の高温焼成プロセスについては依然として回避することができない。そのため、耐熱性があり且つ温度収縮性の優れたフレキシブル基板を選択して使用しなければならず、当該技術分野において一般的に公知の安価なフレキシブル基板を使用できない結果、液晶表示装置の製造コストの上昇に繋がるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、配向膜を形成することなく液晶分子の配向制御を行うことによって、配向膜の形成に起因する様々な問題を防止すると共に、当該技術分野において一般的に公知の安価なフレキシブル基板を用いることによって、軽量化、薄型化及びコストダウンが可能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、液晶成分と相溶性のある、特定の構造を有するデンドロンを液晶成分に配合することで、配向膜を形成する必要がなくなり、且つ当該技術分野において一般的に公知の安価なフレキシブル基板を用いても配向制御を容易に行い得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、配向膜が形成されていない一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層とを有する液晶表示装置であって、前記一対の基板の少なくとも1つはフレキシブル基板であり、且つ前記液晶層は液晶成分と、前記液晶成分と相溶性のあるデンドロンとを含むか、又は液晶成分と、前記液晶成分と相溶性のあるデンドリマー及びデンドロンとを含み、前記デンドロンが、以下で説明する一般式(III)により表されることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配向膜を形成することなく液晶分子の配向制御を行うことによって、配向膜の形成に起因する様々な問題を防止すると共に、当該技術分野において一般的に公知の安価なフレキシブル基板を用いることによって、軽量化、薄型化及びコストダウンが可能な液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の液晶表示装置の断面図である。
図2】本発明の他の液晶表示装置の断面図である。
図3】実施例で作製した液晶表示装置の断面図である。
図4】従来の液晶表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶表示装置は、配向膜が形成されていない一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層とを有する。
以下、本発明の液晶表示装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の液晶表示装置の断面図である。
図1において、本発明の液晶表示装置は、一対の基板(第1基板1及び第2基板2)と、液晶層3と、スペーサ4と、シール材5とを備えている。この一対の基板のうち、一方が表示側基板、他方が液晶駆動側基板として用いられる。
【0014】
第1基板1及び第2基板2のうちの少なくとも1つはフレキシブル基板である。ここで、本明細書において「フレキシブル基板」とは、柔軟性があり、大きく変形させることが可能な基板を意味する。フレキシブル基板としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の安価なものを用いることができる。フレキシブル基板のガラス転移温度は、特に限定されないが、実用性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
フレキシブル基板の例としては、樹脂基板、樹脂及びガラス繊維などからなる基板、金属箔などが挙げられる。樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリアミド、芳香族ポリアミドなどの合成樹脂を挙げることができる。このようなフレキシブル基板を用いることにより、従来のガラス基板を用いた場合に比べて、液晶表示装置の大幅な軽量化、薄型化及びコストダウンが可能になる。
【0015】
具体的には、第1基板1及び第2基板2の一方をガラス基板とし、他方の第1基板1及び第2基板2をフレキシブル基板とすることができる。また、第1基板1及び第2基板2の両方をフレキシブル基板としてもよい。第1基板1及び第2基板2の両方をフレキシブル基板とすれば、液晶表示装置の軽量化、薄型化及びコストダウンに加えて、液晶表示装置に柔軟性を付与することも可能である。
【0016】
また、図示していないが、本発明の液晶表示装置では、第1基板1及び第2基板2上に、平面型電極や櫛型電極などの電極を設けることができ、さらに必要に応じてカラーフィルタや、カラーフィルタを保護するためのオーバーコートを設けることができる。電極、カラーフィルタ及びオーバーコートとしては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0017】
また、図2に示すように、本発明の液晶表示装置では、従来の液晶表示装置と同じように、第1基板1及び第2基板2の液晶層3と接する面と反対の面上に偏光板6を設けることができる。しかしながら、本発明の液晶表示装置では、偏光板6を個別に設けずに、第1基板1及び第2基板2として偏光板を用いてもよい。このような構成とすることにより、偏光板が、その本来の機能だけでなく基板としての機能を持つため、ガラス基板自体を使用する必要がなくなる。その結果、従来の液晶表示装置に比べて、液晶表示装置のより一層大幅な軽量化、薄型化及びコストダウンが可能になる。
【0018】
ここで、本明細書において「偏光板」とは、自然光や各種の偏光を任意の偏光に変換し得る素子をいう。偏光板としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。例えば、偏光板として、偏光子と、偏光子を保護するための保護フィルムとから構成されるものを用いればよい。偏光子としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などのポリエン系配向フィルムが挙げられる。また、保護フィルムとしては、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及びこれらの混合物から形成される光学等方性フィルムが挙げられる。また、偏光板として、市販のものを用いてもよい。
【0019】
液晶層3は、液晶成分、及び液晶成分と相溶性のあるデンドリマー及び/又はデンドロンを含む液晶組成物から構成される。ここで、本明細書において「デンドリマー」とは、中心から規則的に分岐した構造を持つ樹状高分子であり、コアと呼ばれる中心部分と、デンドロンと呼ばれる側鎖部分とから構成されるものを意味する。また、本明細書において「デンドロン」とは、デンドリマーと同様に中心から規則的に分岐した構造を持つ樹状高分子であるが、中心(フォーカルポイント)から一方向へのみ広がっている(伸びている)ものを意味する。デンドリマー及び/又はデンドロンは、液晶層3中に含有させることにより、液晶層3中において第1基板1及び第2基板2との界面に多く存在して配向膜と同様の作用効果を与え、液晶層3中の液晶分子を基板に対して垂直に配向させることができる。そのため、本発明の液晶表示装置では、液晶分子を配向制御するための配向膜を形成する必要がない。
【0020】
デンドリマー及び/又はデンドロンとしては、液晶成分と相溶性があれば特に限定されない。液晶成分と相溶性がないデンドリマー及び/又はデンドロンであると、液晶層3中で溶解せずに沈殿してしまい、液晶表示装置のコントラストなどの特性が低下してしまう。ここで、本明細書において「液晶成分と相溶性があるデンドリマー及び/又はデンドロン」とは、液晶成分にデンドリマー及び/又はデンドロンを配合し、これをオーブンで液晶成分の相転移温度以上の温度まで上昇させて等方相にした際にデンドリマー及び/又はデンドロンが溶解しており(すなわち、液晶成分とデンドリマー及び/又はデンドロンとの混合物が透明であり)、室温(例えば、25℃)まで戻してもデンドリマー及び/又はデンドロンの沈殿が確認されないものを意味する。
【0021】
液晶成分と相溶性のあるデンドリマーとしては、アルキル基、アルコキシ基及びフッ素からなる群より選択される少なくとも1つを末端に有するものが好ましい。その理由としては、このような構造を有するデンドリマーが、単成分のシアノ系液晶だけでなく、2種以上の液晶成分を含む混合液晶との相溶性に優れているためである。特に、実用的な液晶表示装置に一般的に使用されているフッ素系混合液晶は、液晶表示装置の信頼性を確保する観点から不純物が溶解し難いように設計してあるために添加物が溶解し難いものの、このような基を末端に有するデンドリマーは、フッ素系混合液晶に対しても良好な相溶性を示す。
アルキル基、アルコキシ基及びフッ素からなる群より選択される少なくとも1つを末端に有するデンドリマーは、例えば、下記の式(I)により表すことができる。
【0022】
【化1】
【0023】
上記式(I)中、R1は式(II)で表される。
【0024】
【化2】
【0025】
上記式(II)中、A1
【0026】
【化3】
【0027】
(式中、Yは炭素数1〜12のアルキル基若しくはアルコキシ基、又はフッ素である)であり、Xは直接結合、−COO−基又は−N=N−基であり、A2
【0028】
【化4】
【0029】
であり、nは3〜12の整数である。
【0030】
このような構造を有するデンドリマーは、コア部分を与える多官能性アミン化合物と、側鎖部分を与えるアクリル酸エステル誘導体とを有機溶剤中で反応させることによって得ることができる。
多官能性アミン化合物としては、ポリプロピレンテトラミンデンドリマー第1世代(Polypropylene tetramine Dendrimer, Generation 1.0)、ポリプロピレンオクタミンデンドリマー第2世代(Polypropylene octaamine Dendrimer, Generation 2.0)などであり、アルドリッチ社製のDAB−Am−4やDAB−Am−8などの市販品を使用することもできる。また、この多官能性アミン化合物は、エチレンジアミン及びアクリロニトリルを出発原料として合成することもできる。
アクリル酸エステル誘導体としては、合成するデンドリマーに応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の式(I)により表されるデンドリマーを合成する場合は、下記の式(IV)で表される化合物を原料として用いることができる。
【0031】
【化5】
【0032】
上記の式(IV)中、X、A1、A2及びnは、上記で定義した通りである。
多官能性アミン化合物とアクリル酸エステル誘導体との反応比は、多官能性アミン化合物1モルに対して、アクリル酸エステル誘導体を1.0〜3.0モル、好ましくは1.1〜1.5モルである。
【0033】
有機溶剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
また、有機溶剤の量は、多官能性アミン化合物やアクリル酸エステル誘導体の量などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
【0034】
反応温度としては、−50〜150℃、好ましくは25〜80℃である。反応温度が−50℃未満であると、反応速度が著しく低下することがある。また、反応温度が150℃を超えると、多官能性アミン化合物やアクリル酸エステル誘導体の安定性が低下することがある。
反応時間としては、2〜200時間、好ましくは48〜100時間である。反応時間が2時間未満であると、反応が十分に進行しないことがある。反応時間が200時間を超えると、時間がかかりすぎて実用的でない。
反応終了後は溶剤を除去することにより、目的とするデンドリマーを得ることができる。また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、トルエンなどの貧溶剤を加えて加熱し、上澄みを除去することによって精製してもよい。
【0035】
液晶成分と相溶性のあるデンドロンとしては、アルキル基、アルコキシ基及びフッ素からなる群より選択される少なくとも1つを非フォーカルポイント末端に有するものが好ましい。当該デンドロンはまた、アミノ基をフォーカルポイントに有するものが好ましい。これらの理由は、このような構造を有するデンドロンが、単成分のシアノ系液晶だけでなく、2種以上の液晶成分を含む混合液晶との相溶性に優れているためである。特に、実用的な液晶表示装置に一般的に使用されているフッ素系混合液晶は、液晶表示装置の信頼性を確保する観点から不純物が溶解し難いように設計してあるために添加物が溶解し難いものの、このような構造を有するデンドロンは、フッ素系混合液晶に対しても良好な相溶性を示す。
【0036】
また、本発明に用いられるデンドロンは、メソゲン基を有することが好ましい。その理由は、このデンドロンが、液晶成分の特性を阻害し難く、且つ液晶配向制御に優れているためである。ここで、メソゲン基とは、液晶性を発現するために必要な剛直構造を有する有機基を意味する。メソゲン基としては、特に限定されないが、例えば、安息香酸フェニル、ビフェニル、シアノビフェニル、ターフェニル、シアノターフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼン、ジアゾベンゼン、アニリンベンジリデン、アゾメチン、アゾキシベンゼン、スチルベン、フェニルシクロヘキシル、ビフェニルシクロヘキシル、フェノキシフェニル、ベンジリデンアニリン、ベンジルベンゾエート、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、ベンゾイルアニリン、トラン及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0037】
本発明に用いられるデンドロンの世代(分岐の次数)は、特に限定されないが、一般的に第1〜第6世代のものが用いられる。ここで、本明細書において分岐の数が1つのものを第1世代という。
【0038】
本発明に用いるのに好ましいデンドロンは、以下の一般式(III)を有する。
【0039】
【化6】
【0040】
式(III)中、Rは、水素、脂環式基、芳香族基、又はHO−(CH2m−基(式中、mは2〜6の整数である)である。ここで、脂環式基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基、アンドロスタニル基などが挙げられる。また、芳香族基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ビナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基などが挙げられる。また、式(III)中、A1は、
【0041】
【化7】
【0042】
(式中、Yは、炭素数1〜12のアルキル基若しくはアルコキシ基、又はフッ素である)であり、A2は、
【0043】
【化8】
【0044】
であり、Xは、直接結合、−COO−基又は−N=N−基であり、nは、3〜12の整数である。
【0045】
本発明に用いられるデンドロンは、各種文献に記載の公知の方法を用いて合成することができる。一般的には、フォーカルポイントを与えるアミノ基を有する化合物と、この化合物と結合してデンドロンの枝部分を与える化合物とを反応させればよい。例えば、デンドロンの枝部分を与えるアクリル酸エステル誘導体と、このアクリル酸エステル誘導体と反応する末端アミノ基及びフォーカルポイントを与えるアミノ基を有する化合物とを有機溶剤中で反応させればよい。
【0046】
フォーカルポイントを与えるアミノ基を有する化合物としては、特に限定されず、合成するデンドロンに応じて適宜選択すればよい。また、デンドロンの世代(分岐の次数)を調整する場合、フォーカルポイントを与えるアミノ基を有する化合物をアクリロニトリルなどと反応させることによって分岐構造とした後、水素化リチウムアルミニウムなどの還元剤を用いてニトリルをアミンに変換すればよい。
例えば、上記の一般式(III)を有するデンドロンを合成する場合、以下の一般式(V)を有する化合物を用いることができる。
R−N−((CH23−NH22 (V)
式中、Rは上記で定義した通りである。
ここで、上記(V)の化合物は、R−NH2とアクリロニトリルと(CH2=CHCN)を反応させた後、水素化リチウムアルミニウムなどの還元剤を用いてニトリルをアミンに変換することによって合成することができる。
【0047】
デンドロンの枝部分を与えるアクリル酸エステル誘導体としては、特に限定されず、合成するデンドロンに応じて適宜選択すればよい。例えば、上記の一般式(III)を有するデンドロンを合成する場合、以下の一般式(VI)を有するアクリル酸エステル誘導体を原料として用いることができる。
【0048】
【化9】
【0049】
式中、A1、A2、X及びnは、上記で定義した通りである。
【0050】
フォーカルポイントを与えるアミノ基を有する化合物(例えば、一般式(V)の化合物)と、アクリル酸エステル誘導体(例えば、一般式(VI)の化合物)との反応比は、使用する原料の種類に応じて適宜調整する必要があるが、一般的に、フォーカルポイントを与えるアミノ基を有する化合物1モルに対して、アクリル酸エステル誘導体を1〜10モル用いればよい。
【0051】
上記の反応に用いられる有機溶剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。有機溶剤の例としては、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
また、有機溶剤の量は、使用する原料の種類及び量などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
【0052】
反応温度としては、−50〜150℃、好ましくは25〜80℃である。反応温度が−50℃未満であると、反応速度が著しく低下することがある。また、反応温度が150℃を超えると、原料の安定性が低下することがある。
反応時間としては、2〜200時間、好ましくは48〜100時間である。反応時間が2時間未満であると、反応が十分に進行しないことがある。反応時間が200時間を超えると、時間がかかりすぎて実用的でない。
反応終了後は溶剤を除去することにより、目的とするデンドロンを得ることができる。また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、トルエンなどの貧溶剤を加えて加熱し、上澄みを除去することによってデンドロンを精製してもよい。
【0053】
液晶組成物(液晶層3)中のデンドリマー及び/又はデンドロンの配合量としては、第1基板1及び第2基板2と液晶層3との界面にデンドリマー及び/又はデンドロンを存在させ得るような量であれば特に限定されない。実際、液晶組成物(液晶層3)中のデンドリマー及び/又はデンドロンの配合量は、液晶層3を挟持する第1基板1及び第2基板2の面積に依存するため一義的に定義することはできないが、一般的に0.01〜50質量%である。デンドリマー及び/又はデンドロンの配合量が0.01質量%未満であると、当該界面に存在するデンドリマー及び/又はデンドロンの量が少なすぎてしまい、液晶分子の配向制御に対する長期信頼性が低下することがある。一方、デンドリマー及び/又はデンドロンの配合量が50質量%を超えると、液晶成分の量が少なくなり、応答時間の遅延や駆動電圧の増加など、液晶表示装置としての所望の性能が得られないことがある。
【0054】
液晶成分としては、特に限定されないが、2種以上の液晶成分を含む混合液晶であることが好ましい。この混合液晶は、使用用途にあわせて所望の物性(例えば、屈折率異方性、誘電率異方性、粘度、相転位温度など)を満たすように幾つかの液晶成分を混合することによって調製されるため、一義的に定義することは難しいが、フッ素系混合液晶やシアノ系混合液晶などと一般的に称される混合液晶であり得る。これらの中でも、現在、液晶表示装置に一般的に使用されているフッ素系混合液晶を用いることが好ましい。ここで、本明細書において「フッ素系混合液晶」とは、1種以上のフッ素系液晶を含む混合液晶を意味し、「シアノ系混合液晶」とは、1種以上のシアノ系液晶を含む混合液晶を意味する。
上記の混合液晶は、一般的に公知であると共に商業的に利用可能であり、例えば、フッ素系混合液晶は、ZLI−4792(p型)やMLC−6608(n型)という商品名でメルク株式会社によって販売されている。また、シアノ系混合液晶は、JC−5066XX(p型)という商品名でチッソ石油化学株式会社によって販売されている。
【0055】
デンドリマー及び/又はデンドロンを液晶成分に配合する方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、デンドリマー又はデンドロンを液晶成分に加えた後、周知の混合手段を用いて混合すればよい。
【0056】
スペーサ4は、第1基板1と第2基板2との間のギャップを保持するために設けられる。また、シール材5は第1基板1と第2基板2との間に液晶層3を挟持するために設けられる。スペーサ4及びシール材5としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0057】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定されず、各種モードとすることができる。中でも、TNモードに比べて、視野角、応答速度、コントラストなどの面で優れたVAモードであることが好ましい。
【0058】
上記のような構成を有する本発明の液晶表示装置は、従来の液晶表示装置の製造方法に準じて行うことができる。例えば、本発明の液晶表示装置は、以下のようにして製造することができる。
まず、第1基板1上に、スペーサ4を形成する。ここで、スペーサ4の形成方法としては、特に限定されず、フォトリソグラフィー法などの公知の方法を用いることができる。次に、スペーサ4を形成した第1基板1を洗浄して乾燥させた後、シール材5を塗布し、第2基板2を重ね合わせ、UV照射などにより硬化させて接着する。ここで、シール材5の一部には、液晶組成物を注入するための注入口を空けておく必要がある。次に、第1基板1と第2基板2との間に、注入口から真空注入法によって液晶組成物を注入した後、注入口を封止する。
なお、上記では毛細管現象を利用する真空注入法について説明したが、ODF(液晶滴下注入法)を用いてもよい。
【0059】
このようにして得られる本発明の液晶表示装置は、配向膜の形成工程やラビング処理を行わずに製造することができるため、配向膜の形成工程やラビング処理に起因する様々な問題(配向膜を形成する際にゴミやピンホールによって印刷上の製造歩留まりが低下したり、基板の大型化に伴って配向膜の形成工程に要するコストが増大するなどの問題)を防止することが可能になる。また、本発明の液晶表示装置では、製造時に高温焼成プロセスが要求されないため、当該技術分野において一般的に公知の安価なフレキシブル基板を使用することが可能となり、液晶表示装置の軽量化、薄型化及びコストダウンが可能になる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
<デンドリマーAの合成>
上記の式(I)におけるR1が、下記の式(E1)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0061】
【化10】
【0062】
6−[4−(4−ヘキシルフェニルジアゼジル)フェノキシ]ヘキサノールの合成
200mlの三口フラスコに、4−(4−ヘキシルフェニルジアゼニル)フェノール(5.0g、17.7mmol)、6−ブロモヘキサノール(4.9g、18mmol)、炭酸カリウム(2.45g、17.7mmol)及びエタノール(20ml)を入れて溶解し、48時間加熱還流した。加熱還流が終了した後、減圧下でエタノールを除去して得られた残渣をジエチルエーテルに溶解し、この溶液を水で3回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸ナトリウムを加えて水分を除去した後、ジエチルエーテルを減圧下で留去し、得られた残渣をn−ヘキサンで再結晶させることで、橙色の針状結晶を収量3.9g(収率58%)で得た。この針状結晶は、IRにより、3289cm-1(OH)、2919cm-1(C−H)、1473cm-1(N=N)、1253cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0063】
6−[4−(4−ヘキシルフェニルジアゼジル)フェノキシ]ヘキシルアクリレートの合成
100mlの三口フラスコに、6−[4−(4−ヘキシルフェニルジアゼジル)フェノキシ]ヘキサノール(3.5g、9.2mmol)、トリエチルアミン(0.92g、9.2mmol)及びTHF(30ml)を入れて溶解し、氷で0℃に冷却した。この溶液に塩化アクリロイル(1.2g、14mmol)を注射器を用いて加え、室温で24時間撹拌した。生じた白色固体をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮した後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:クロロホルム)により精製し、黄色固体を収量3.4g(収率85%)で得た。この黄色固体は、IRにより、2935cm-1(C−H)、1716cm-1(C=O)、1473cm-1(N=N)、1261cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。また、この黄色固体の元素分析値は、C273623として計算した値と0.5%の範囲内で一致した。(計算値〜C:74.28%、H:8.31%、N:6.42%、実測値〜C:74.48%、H:8.61%、N:6.35%)
【0064】
デンドリマーAの合成
100mlのナスフラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.39g、0.51mmol)、6−[4−(4−ヘキシルフェニルジアゼジル)フェノキシ]ヘキシルアクリレート(4.9g、11mmol)及びTHF(20ml)を入れ、50℃で72時間加熱した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のTHFに溶解して400mlのヘキサンに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を2回繰り返すことによって精製し、ペースト状の橙色固体を収量3.9g(収率98%)で得た。この橙色固体は、IRにより、2931cm-1(C−H)、1735cm-1(C=O)、1457cm-1(N=N)、1253cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。また、この橙色固体の元素分析値は、C4726724648として計算した値と0.5%の範囲内で一致した。(計算値〜C:73.07%、H:8.73%、N:8.30%、実測値〜C:72.86%、H:8.49%、N:8.40%)さらに、この橙色固体のDSC測定を行ったところ、昇温過程においては−13℃にTg、33℃及び83℃に吸熱ピークが観測され、また、降温過程においては81℃及び28℃に発熱ピーク、−29℃にTgが観測された。
【0065】
<デンドリマーBの合成>
上記の式(I)におけるR1が、下記の式(E2)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0066】
【化11】
【0067】
6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキサノールの合成
200mlのナスフラスコに、4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシフェノール(10g、41mmol)、6−ブロモヘキサノール(8.8g、49mmol)、炭酸カリウム(11g、80mmol)及び2−ブタノン(50ml)を入れて溶解し、60時間加熱還流した。加熱還流が終了した後、減圧下で2−ブタノンを除去して得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、この溶液を水で3回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸ナトリウムを加えて水分を除去した後、酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残渣をn−ヘキサンで再結晶させることで、白色結晶を収量6.2g(収率44%)で得た。この白色結晶は、IRにより、3340cm-1(OH)、2922cm-1(C−H)、1245cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0068】
6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキシルアクリレートの合成
200mlの三口フラスコに、6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキサノール(6.0g、17mmol)、トリエチルアミン(2.2g、22mmol)及びTHF(50ml)を入れて溶解し、氷で0℃に冷却した。この溶液に塩化アクリロイル(1.9g、21mmol)を注射器を用いてゆっくり加え、室温で12時間撹拌した。生じた白色固体をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮した後、得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、100mlの水で3回洗浄した。次に、有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、減圧下で濃縮した。次に、残渣をカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:ヘキサン/クロロホルム(容積比率50:1))により精製し、無色透明な液体を収量6.4g(収率93%)で得た。この液体は、IRにより、2920cm-1(C−H)、1716cm-1(C=O)、1245cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0069】
デンドリマーBの合成
20mlのナスフラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.16g、0.21mmol)、6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキシルアクリレート(4.0g、10mmol)及びTHF(5ml)を入れ、50℃で72時間加熱した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のクロロホルムに溶解して100mlのメタノールに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を2回繰り返すことによって精製し、ペースト状の淡黄色固体を収量0.45g(収率30%)で得た。この淡黄色固体は、IRにより、2921cm-1(C−H)、1736cm-1(C=O)、1247cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。また、この淡黄色固体の元素分析値は、C4567361448として計算した値と0.5%の範囲内で一致した。(計算値〜C:76.25%、H:10.33%、N:2.73%、実測値〜C:76.09%、H:10.52%、N:2.80%)また、この淡黄色固体のMALDI−TOF−MSによる分子量を測定したところ、理論値m/Z=7183(M+H)に対して、実測値m/Z=7181.2(M+H)であった。さらに、この淡黄色固体のDSC測定を行ったところ、昇温過程においては−24℃にTg、14℃及び73℃に吸熱ピークが観測され、また、降温過程においては69℃及び15℃に発熱ピーク、−26℃にTgが観測された。
【0070】
<デンドリマーCの合成>
上記の式(I)におけるR1が、下記の式(E3)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0071】
【化12】
【0072】
3−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]プロパノールの合成
300mlのナスフラスコに、4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール(15g、61mmol)、3−ブロモ−1−プロパノール(10g、73mmol)、炭酸カリウム(17g、122mmol)及び2−ブタノン(80ml)を入れて溶解し、60時間加熱還流した。加熱還流が終了した後、減圧下で2−ブタノンを除去して得られた残渣を300mLの酢酸エチルに溶解し、この溶液を100mLの水で3回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸ナトリウムを加えて水分を除去した後、酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残渣をヘキサンで再結晶させることで、白色結晶を収量12.2g(収率66%)で得た。この白色結晶は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、7.2〜7.0ppm(d,2H,ArH)、6.9〜6.8ppm(d,2H,ArH)、4.1ppm(t,2H,OCH2)、3.85ppm(q,2H,PhCH2)、2.4ppm(m,1H,ArCH)、1.9〜1.2ppm(m,20H,CH2)、0.85ppm(t,3H,CH3)のδが観測された。また、IRにより、3340cm-1(OH)、2922cm-1(CH)、1245cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0073】
3−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]プロピルアクリレートの合成
300mlのナスフラスコに、3−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]プロパノール(10g、33mmol)、トリエチルアミン(3.4g、33mmol)及びTHF(100ml)を入れて溶解し、氷で0℃に冷却した。この溶液に塩化アクリロイル(4.4g、49mmol)を注射器を用いて加え、室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧除去して得られた残渣を300mLの酢酸エチルに溶解し、この溶液を100mLの水で3回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、減圧下で濃縮させた。そして、残渣をカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:クロロホルム)により精製し、白色固体を収量8.6g(収率73%)で得た。この白色固体は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、7.2〜7.0ppm(d,2H,ArH)、6.9〜6.8ppm(d,2H,ArH)、6.4〜5.8ppm(m,3H,OCHCH2)、4.3ppm(t,2H,OCH2)、4.0ppm(q,2H,PhCH2)、2.4ppm(m,1H,ArCH)、1.9〜1.2ppm(m,20H,CH2)、0.85ppm(t,3H,CH3)のδが観測された。また、IRにより、2920cm-1(C−H)、1715cm-1(C=O)、1245cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0074】
デンドリマーCの合成
200mlの二口フラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.48g、0.57mmol)、3−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]プロピルアクリレート(6.5g、18mmol)及びTHF(10ml)を入れ、窒素雰囲気下、50℃で7日間攪拌した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のクロロホルムに溶解してメタノールに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を3回繰り返すことによって精製し、淡黄色固体を収量2.1g(収率57%)で得た。この淡黄色固体は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、7.2〜6.7ppm(m,64H,ArH)、4.2ppm(t,32H,OCH2)、3.95ppm(t,32H,PhOCH2)、2.74ppm(t,32H,N−CH2)、2.6〜2.2ppm(t,100H,N−CH2,CH2C=O,ArCH)、1.9〜0.9ppm(m,332H,CH2)、0.85ppm(t,48H,CH3)のδが観測された。また、IRにより、2923cm-1(C−H)、1735cm-1(C=O)、1243cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。また、この淡黄色固体のMALDI−TOF−MSによる分子量を測定したところ、理論値m/Z=6531.82(M+Na)に対して、実測値m/Z=6531.69(M+Na)であった。さらに、この淡黄色固体の元素分析値は、C4086401448として計算した値と0.5%の範囲内で一致した。(計算値〜C:75.28%、H:9.91%、N:3.01%、実測値〜C:75.26%、H:10.10%、N:2.85%)また、この淡黄色固体のDSC測定を行ったところ、昇温過程においては17℃及び78℃に吸熱ピークが観測され、また、降温過程においては74℃及び15℃に発熱ピークが観測された。
【0075】
<デンドリマーDの合成>
上記の式(I)におけるR1が、下記の式(E4)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0076】
【化13】
【0077】
12−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ドデカノールの合成
300mlのナスフラスコに、4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール(15g、61mmol)、12−ブロモ−1−ドデカノール(19g、73mmol)、炭酸カリウム(17g、122mmol)及び2−ブタノン(100ml)を入れて溶解し、60時間加熱還流した。加熱還流が終了した後、減圧下で2−ブタノンを除去して得られた残渣を300mLの酢酸エチルに溶解し、この溶液を100mLの水で3回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸ナトリウムを加えて水分を除去した後、酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残渣をヘキサンで再結晶させることで、白色結晶を収量21.5g(収率82%)で得た。この白色結晶は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、7.2〜7.0ppm(d,2H,ArH)、6.9〜6.8ppm(d,2H,ArH)、3.9ppm(t,2H,OCH2)、3.6ppm(q,2H,PhCH2)、2.4ppm(m,1H,ArCH)、1.9〜1.2ppm(m,38H,CH2)、0.86ppm(t,3H,CH3)のδが観測された。また、IRにより、3340cm-1(OH)、2922cm-1(CH)、1245cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0078】
12−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ドデシルアクリレートの合成
300mlのナスフラスコに、12−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ドデカノール(15g、35mmol)、トリエチルアミン(3.5g、35mmol)及びTHF(150ml)を入れて溶解し、氷で0℃に冷却した。この溶液に塩化アクリロイル(4.7g、52mmol)を注射器を用いて加え、室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧除去して得られた残渣を400mLの酢酸エチルに溶解し、この溶液を200mLの水で3回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、減圧下で濃縮させた。そして、残渣をカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:クロロホルム)により精製し、白色固体を収量9.2g(収率55%)で得た。この白色固体は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、7.2〜7.0ppm(d,2H,ArH)、6.9〜6.8ppm(d,2H,ArH)、6.4〜5.8ppm(m,3H,OCHCH2)、4.3ppm(t,2H,OCH2)、4.0ppm(q,2H,PhCH2)、2.4ppm(m,1H,ArCH)、1.9〜1.2ppm(m,38H,CH2)、0.85ppm(t,3H,CH3)のδが観測された。また、IRにより、2923cm-1(CH)、1717cm-1(C=O)、1244cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0079】
デンドリマーDの合成
200mlの二口フラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.26g、0.34mmol)、12−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ドデシルアクリレート(8.0g、17mmol)及びTHF(15ml)を入れ、窒素雰囲気下、50℃で7日間攪拌した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のクロロホルムに溶解してメタノールに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を3回繰り返すことによって精製し、淡黄色固体を収量1.1g(収率38%)で得た。この淡黄色固体は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、7.2〜6.7ppm(m,64H,ArH)、4.05ppm(t,32H,OCH2)、3.9ppm(t,32H,PhOCH2)、2.75ppm(t,32H,N−CH2)、2.6〜2.2ppm(t,100H,N−CH2,CH2C=O,ArCH)、1.9〜0.9ppm(m,640H,CH2)、0.85ppm(t,48H,CH3)のδが観測された。また、IRにより、2921cm-1(C−H)、1733cm-1(C=O)、1245cm-1(PhO−)の特性吸収が観測された。また、この淡黄色固体のMALDI−TOF−MSによる分子量を測定したところ、理論値m/Z=8552.08(M+Na)に対して、実測値m/Z=8552.12(M+Na)であった。さらに、この淡黄色固体の元素分析値は、C5529281448として計算した値と0.5%の範囲内で一致した。(計算値〜C:77.73%、H:10.97%、N:2.30%、実測値〜C:77.48%、H:11.02%、N:2.29%)また、この淡黄色固体のDSC測定を行ったところ、昇温過程においては74℃及び82℃に吸熱ピークが観測され、また、降温過程においては79℃及び72℃に発熱ピークが観測された。
【0080】
<デンドリマーEの合成>
上記の式(I)におけるR1が、下記の式(E5)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0081】
【化14】
【0082】
300mlのナスフラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.28g、0.31mmol)、甲陽化学工業株式会社製4−メトキシフェニル−6−ヘキシロキシアクリルベンゾエート(6.0g、15mmol)及びTHF(10ml)を入れ、窒素雰囲気下、50℃で7日間攪拌した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のクロロホルムに溶解してヘキサンに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を3回繰り返すことによって精製し、ペースト状の淡黄色固体を収量1.7g(収率76%)で得た。この淡黄色固体は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、8.2〜8.1ppm(d,32H,ArH)、7.1ppm(d,32H,ArH)、6.9ppm(t,64H,ArCH)、4.1ppm(t,32H,OCH2)、4.0ppm(t,32H,PhOCH2)、3.8ppm(s,48H,OCH3)、2.74ppm(t,32H,N−CH2)、2.6〜2.2ppm(t,84H,N−CH2,CH2C=O)、1.9〜0.9ppm(m,284H,CH2)のδが観測された。また、IRにより、2944cm-1(C−H)、1732cm-1(C=O)、1250cm-1(C−O−C)、1198cm-1及び1169cm-1(C(C=O)OC)の特性吸収が観測された。また、この淡黄色固体のMALDI−TOF−MSによる分子量を測定したところ、理論値m/Z=7170.57(M+Na)に対して、実測値m/Z=7172.48(M+Na)であった。
【0083】
<デンドリマーFの合成>
上記の式(I)におけるR1が、下記の式(E6)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0084】
【化15】
【0085】
300mlのナスフラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.33g、0.43mmol)、甲陽化学工業株式会社製6−(4−(4−フルオロフェニル)フェニロキシ)ヘキシルアクリレート(7.0g、20mmol)及びTHF(10ml)を入れ、窒素雰囲気下、50℃で7日間攪拌した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のクロロホルムに溶解してメタノールに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を3回繰り返すことによって精製し、淡黄色固体を収量1.9g(収率72%)で得た。この淡黄色固体は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、7.5〜7.2ppm(m,64H,ArH)、7.1ppm(t,32H,ArH)、6.9ppm(d,32H,ArCH)、4.1ppm(t,32H,OCH2)、3.9ppm(t,32H,PhOCH2)、2.74ppm(t,32H,N−CH2)、2.6〜2.2ppm(t,84H,N−CH2,CH2C=O)、1.9〜0.9ppm(m,284H,CH2)のδが観測された。また、IRにより、2940cm-1(C−H)、1732cm-1(C=O)、1235cm-1(C−O−C)、1182cm-1(C−F)、1160cm-1(C(C=O)OC)の特性吸収が観測された。さらに、この淡黄色固体のDSC測定を行ったところ、昇温過程においては56.90℃に吸熱ピークが観測され、また、降温過程においては49.51℃に発熱ピークが観測された。
【0086】
<デンドリマーGの合成>
上記の式(I)におけるR1が、下記の式(E7)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0087】
【化16】
【0088】
300mlのナスフラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.25g、0.32mmol)、甲陽化学工業株式会社製6−(4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)フェニロキシ)ヘキシルアクリレート(6.0g、15mmol)及びTHF(10ml)を入れ、窒素雰囲気下、50℃で7日間攪拌した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のクロロホルムに溶解してヘキサンに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を3回繰り返すことによって精製し、淡黄色固体を収量1.3g(収率59%)で得た。この淡黄色固体は、1H−NMR(CDCl3,400MHz)により、7.5〜7.2ppm(d,32H,ArH)、7.1ppm(t,32H,ArH)、6.9ppm(d,32H,ArCH)、4.1ppm(t,32H,OCH2)、3.9ppm(t,32H,PhOCH2)、2.74ppm(t,32H,N−CH2)、2.6〜2.2ppm(t,84H,N−CH2,CH2C=O)、1.9〜0.9ppm(m,284H,CH2)のδが観測された。また、IRにより、2943cm-1(C−H)、1732cm-1(C=O)、1243cm-1(C−O−C)、1182cm-1(C−F)、1118cm-1(C(C=O)OC)の特性吸収が観測された。さらに、この淡黄色固体のDSC測定を行ったが、昇温過程及び降温過程のいずれにおいてもピークが観測されなかった。
【0089】
<デンドロンの合成>
下記の式(E8)で表されるデンドロンを次のようにして合成した。
【0090】
【化17】
【0091】
2−[N,N−ビス(2−シアノエチル)アミノ]エタノールの合成
200mLのナスフラスコに、水(60mL)、2−アミノエタノール(10g、0.17mmol)及びアクリロニトリル(22g、0.42mol)を入れ、80℃で1時間攪拌した後、減圧下でアクリロニトリル及び水を留去した。次に、残渣をクロロホルムに溶解し、この溶液に無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、クロロホルムを減圧下で除去することによって無色透明な液体を収量27g(収率97%)で得た。この液体のIRを測定したところ、3492cm-1(OH)、2248cm-1(CN)の特性吸収が観測された。
【0092】
2−[N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミノ]エタノールの合成
300mLの三口フラスコに、水素化リチウムアルミニウム(6.9g、0.18mol)及びTHF(160mL)を入れ、室温で30分攪拌した。次に、この溶液に−5℃で濃硫酸(3.6mL、0.068mol)を加え、さらに1時間攪拌した。次に、この溶液に2−[N,N−ビス(2−シアノエチル)アミノ]エタノール(5.0g、0.03mol)のTHF溶液(30mL)を加え、さらに室温で8時間攪拌した。次に、氷浴中で、この混合溶液に注射器を用いて水(9.7mL)を加えた。生成した固体をろ過することによって分離した後、固体をメタノールで24時間ソックスレー抽出した。次に、抽出液と、ろ過によって分離したろ液とを混合した後、この溶液に無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した。次に、減圧下で溶媒を除去することによって、黄色の液体を収量2.9g(収率54%)で得た。この液体のIRを測定したところ、3285cm-1(OH)の特性吸収が観測された。
【0093】
デンドロンの合成
50mLのナスフラスコに、2−[N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミノ]エタノール(0.18g、1.0mmol)、6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキシルアクリレート(2.1g、5.1mmol)及びTHF(1.0mL)を入れ、窒素雰囲気下で3日間攪拌した。次に、減圧下でTHFを除去した後、残渣をクロロホルムに溶解し、この溶液を水で三回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、減圧下でクロロホルムを除去した。次に、残渣を少量のクロロホルムに溶解した後、この溶液を100mLのメタノールに加え、上澄みをデカンテーションによって除去することによって沈殿物を回収した。この操作を6回繰り返すことによって精製を行い、淡黄色固体を収量0.85g(収率49%)で得た。
【0094】
この淡黄色固体の1H−NMR(CDCl3,400MHz)を測定したところ、7.12〜6.79ppm(m,ArH,16H)、4.07ppm(t,COOCH2,8H)、3.91ppm(t,PhOCH2,2H)、3.53ppm(t,HOCH2,2H)の特性吸収が観測された。また、この淡黄色固体のMALDI−TOF−MSによる分子量を測定したところ、理論値m/Z=1777.37(M+H)に対して実測値m/Z=1778.27(M+H)であった。また、この淡黄色固体のDSC測定を行ったところ、昇温過程においては14℃及び63℃に吸熱ピークが観測され、また、降温過程においては19℃及び58℃に発熱ピークが観測された。
【0095】
次に、上記の合成によって得られたデンドリマー又はデンドロンをそれぞれフッ素系混合液晶ZLI−4792(P型、メルク株式会社)と混合することによって液晶組成物を調製した。ここで、各液晶組成物中のデンドリマー又はデンドロンの配合量は1.0質量%とした。
次に、上記で得られた各液晶組成物を用い、図3に示す液晶表示装置を作製した。
まずITO櫛型電極(弊社内製、電極間距離10μm、電極面積1cm2)を備えた100mm×100mm×0.7mmのガラス基板7、偏光板6(日東電工株式会社製)を準備した。次に、ガラス基板7上に、高さ3μmのスペーサ4をフォトリソグラフィーによって形成した。次に、液晶注入口部となる部分を除くガラス基板7の周囲にディスペンサーを用いてUV硬化性樹脂(スリーボンド製3052)を塗布した後、スペーサ4を形成したガラス基板7と偏光板6とを重ね合わせ、偏光板6側を下にしてガラス基板7側からUV照射することによって接着させた。次に、上記で得られた液晶組成物を液晶注入口から真空注入し、上記のUV硬化性樹脂によって液晶注入口を封止した。その後、クロスニコル状態となるように他方の偏光板6をガラス基板7裏面上に配置した。
【0096】
次に、上記で作製した各液晶表示装置の垂直配向性を評価するために、輝度計(株式会社トプコン製、BM−5)を用いて評価した。具体的には、液晶表示装置をバックライトの上におき、液晶表示装置を挟んで反対側に輝度計を配置した。輝度の測定は、5箇所(中央部、上部、下部、左部及び右部)で行った。また、この評価において、一般的に、垂直配向が均一であれば、どの測定箇所においても等しく且つ輝度の値は小さくなるが、垂直配向が不十分であれば、光漏れによって輝度の値が大きくなる。
測定の結果、上記で作製した液晶表示装置では、いずれの測定箇所においても輝度の値が、垂直配向が不十分な場合に比べて明らかに小さく、垂直配向が均一であることを確認した。
【0097】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、配向膜を形成することなく液晶分子の配向制御を行うことによって、配向膜の形成に起因する様々な問題を防止すると共に、当該技術分野において一般的に公知の安価なフレキシブル基板を用いることによって、軽量化、薄型化及びコストダウンが可能な液晶表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 第1基板、2 第2基板、3 液晶層、4 スペーサ、5 シール材、6 偏光板、7 ガラス基板、8 配向膜。
図1
図2
図3
図4