特許第5763338号(P5763338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763338ヒドロフルオロオレフィンとヒドロクロロフルオロオレフィンの発泡剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763338
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ヒドロフルオロオレフィンとヒドロクロロフルオロオレフィンの発泡剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   C08J9/14CET
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-501241(P2010-501241)
(86)(22)【出願日】2008年3月28日
(65)【公表番号】特表2010-522817(P2010-522817A)
(43)【公表日】2010年7月8日
(86)【国際出願番号】US2008058594
(87)【国際公開番号】WO2008121778
(87)【国際公開日】20081009
【審査請求日】2011年3月8日
(31)【優先権主張番号】60/908,762
(32)【優先日】2007年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブレット・エル・ヴァン・ホーン
(72)【発明者】
【氏名】マハー・ワイ・エルシェイク
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ビー・チェン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ボネット
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/002703(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0142173(US,A1)
【文献】 特表2007−500127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00〜9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3,3,3−トリフルオロプロペンと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとを含む、ポリスチレンの発泡のための発泡剤組成物であり、
前記発泡剤組成物で発泡するポリスチレンが、前記3,3,3−トリフルオロプロペンの添加率4.1〜6.5重量%及び前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの添加率3.4〜6.6重量%において、44.3〜52.5kg/m3密度を有する発泡剤組成物。
【請求項2】
ヒドロフルオロカーボン、アルカン、二酸化炭素、ギ酸メチル、不活性ガス、大気ガス、アルコール、エーテル、フッ化エーテル、不飽和フッ化エーテル、ケトン、フルオロケトン及び水をさらに含む、請求項1に記載の発泡剤組成物。
【請求項3】
前記アルカンが、プロパン、ブタン、ペンタン、またはヘキサンから選択される、請求項2に記載の発泡剤組成物。
【請求項4】
前記ペンタンが、n−ペンタン、シクロペンタン、イソ−ペンタンまたはそれらの混合物から選択される、請求項3に記載の発泡剤組成物。
【請求項5】
前記アルコールが、エタノール、イソ−プロパノール、ブタノール、エチルヘキサノール、メタノール、またはそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の発泡剤組成物。
【請求項6】
前記エーテルが、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、またはそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の発泡剤組成物。
【請求項7】
前記ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、またはそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の発泡剤組成物。
【請求項8】
染料、顔料、気泡制御剤、充填剤、酸化防止剤、押出し成形助剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、赤外線減衰剤、断熱性添加剤、可塑剤、粘度調整剤、耐衝撃性改良剤、気体遮断樹脂、カーボンブラック、界面活性剤、およびそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の発泡剤組成物。
【請求項9】
3,3,3−トリフルオロプロペンと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとを含む発泡剤組成物を含むポリスチレン発泡製品であり、
前記ポリスチレン発泡製品は、前記3,3,3−トリフルオロプロペンの添加率4.1〜6.5重量%及び前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの添加率3.4〜6.6重量%において、44.3〜52.5kg/m3の密度を有する発泡製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性熱可塑性組成物の製造に使用される、(1)少なくとも1種類のヒドロフルオロオレフィン(HFO)と、(2)少なくとも1種類のヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)とを含む発泡剤組成物に関する。成分(1)のHFOとしては、限定されないが、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、シス−および/またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)および2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、およびそれらの混合物が挙げられる。成分(2)のHCFOとしては、限定されないが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、ジクロロ−フッ化プロペン、およびそれらの混合物が挙げられる。この発泡剤組成物は、向上したKファクターを有する低密度断熱性発泡体の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
地球全体の気候変動に関する懸念が続いているため、高いオゾン層破壊係数(ODP)および高い地球温暖化係数(GWP)を有するものに代わる技術を開発する必要性が増している。非オゾン層破壊化合物であるヒドロフルオロカーボン(HFC)は、熱可塑性発泡体の製造におけるクロロフルオロカーボン(CFC)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替発泡剤として認められている。
【0003】
HFO−1243zf、(シス/トランス)−HFO−1234ze、HFO−1234yf、および(E/Z)−HFO−1225yeなどのヒドロフルオロオレフィンは、断熱用のポリスチレン押出発泡体を含む熱可塑性発泡体を製造するための潜在的な低GWP発泡剤としてとして認められている。
【0004】
少なくとも1種類のヒドロクロロフルオロオレフィンと併せて、少なくとも1種類のヒドロフルオロオレフィンを含む発泡剤組成物によって、優れたKファクターを有し、断熱性発泡体に特に有用である低密度の独立気泡発泡体を製造することが可能となることが発見された。本発明は、拡大、制御された気泡サイズを有する低密度の独立気泡発泡体の製造もまた可能にする。
【0005】
国際公開第2004/037913号パンフレット、国際公開第2007/002703号パンフレット、および米国特許出願公開第2004119047号明細書には、臭化およびヨウ化化合物などの他の多くの材料の中で、多くのHFOおよびHCFOを含む一般式のハロゲン化アルケンを含有する発泡剤が開示されている。発泡剤組成物におけるHFOとHCFOの具体的な組み合わせは開示されていない。HFO、具体的にはHFO−1234zeおよびHFO−1234yfを単独で、またはHFCと併せて、含むポリスチレンを発泡するための発泡剤組成物、ならびにHCFO−1233zdを含むPUR発泡のための発泡剤組成物が示されている。HFOとHCFOを含む発泡剤組成物の例は開示されていない。
【0006】
GB950,876号明細書には、ポリウレタン発泡体の製造方法が開示されている。沸点150℃未満、好ましくは50℃未満を有する適切なハロゲン化飽和または不飽和炭化水素を発泡剤として使用することができることが開示されている。トリクロロフルオロエテン、クロロトリフルオロエテン、および1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエテンが、3,3,3−トリフルオロプロペンと共に適切な発泡剤のリストに開示されている。ヒドロクロロフルオロプロペンは特に開示されておらず、長鎖HCFOについても3,3,3−トリフルオロプロペン以外の他のHFOについても開示されていない。熱可塑性材料発泡のための発泡剤に関連する開示内容も、言及される熱可塑性材料の発泡におけるHCFOの利益も、HCFOおよびHFOを含む発泡剤の組み合わせの利益も記述されていない。
【0007】
CA2016328号明細書には、独立気泡ポリイソシアネート発泡体を製造する方法が開示されている。ハロゲン化アルカンおよびアルケンを含む有機化合物発泡剤が開示されており、そのアルケンはプロピレンであり、ハロゲン化炭化水素はクロロフルオロカーボンであり得る。多くの例示的な化合物の中で、特定のペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、およびジフルオロプロペンと共に、塩素1個およびフッ素1〜3個を含有する特定のクロロフルオロエチレンが挙げられている。ヒドロクロロフルオロプロペンも、長鎖HCFOも特に開示されていない。熱可塑性材料の発泡のための発泡剤に関連する開示内容も、言及される熱可塑性材料発泡におけるHCFOの利益も、HCFOおよびHFOを含む発泡剤の組み合わせの利益も記述されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/037913号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/002703号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2004119047号明細書
【特許文献4】GB950,876号明細書
【特許文献5】CA2016328号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)少なくとも1種類のヒドロフルオロオレフィン(HFO)と、(2)少なくとも1種類のヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)とを含む、オゾン破壊がごくわずかであり、かつGWPが低い発泡剤の使用に関する。本発明では、断熱性発泡体として使用することができる、低減された密度および向上したKファクターを有する発泡体の製造に有用な発泡剤および発泡性樹脂組成物を開示する。本発明の好ましい実施形態において、成分(1)のHFOは、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf);(シスおよび/またはトランス)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、特にトランス異性体;2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf);(シスおよび/またはトランス)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)およびそれらの混合物である。成分(2)のHCFOは、好ましくは(シスおよび/またはトランス)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、特にトランス異性体、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、およびそれらの混合物である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の他の実施形態は、樹脂に対して約1pphを超え約100pph未満の発泡剤組成物、樹脂に対して好ましくは約2pphを超え約40pph未満の発泡剤組成物、さらに好ましくは樹脂に対して約3pphを超え約25pph未満の発泡剤組成物、またさらに好ましくは樹脂に対して約4pphを超え約15pph未満の発泡剤組成物を含有する発泡性樹脂組成物である。
【0011】
熱可塑性発泡製品を製造する方法は以下のとおりである。発泡性ポリマー組成物を含む成分を任意の順序で共にブレンドすることによって、発泡性ポリマー組成物を調製する。典型的には、ポリマー樹脂を可塑化し、次いで初期圧力で発泡剤組成物の成分中でブレンドすることによって、発泡性ポリマー組成物を調製する。ポリマー樹脂を可塑化する一般的な方法は、熱可塑化であり、発泡剤組成物中でブレンドするのに十分に軟化させるために、ポリマー樹脂を十分に加熱することを含む。一般に、熱可塑化は、結晶質ポリマーに関しては、そのガラス転移温度(Tg)または溶融温度(Tm)付近またはその温度を超えて、熱可塑性ポリマー樹脂を加熱することを含む。
【0012】
発泡性ポリマー組成物は、核剤、気泡制御剤、染料、顔料、充填剤、酸化防止剤、押出し成形助剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、赤外線減衰剤および断熱性添加剤などの更なる添加剤を含有し得る。核剤としては、特に、タルク、炭酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、および化学発泡剤、例えばアゾジカーボンアミドまたは重炭酸ナトリウムおよびクエン酸などの材料が挙げられる。赤外線減衰剤および断熱性添加剤としては、特にカーボンブラック、グラファイト、二酸化ケイ素、金属フレークまたは粉末が挙げられる。難燃剤としては、特にヘキサブロモシクロデカンおよびポリ臭化ビフェニルエーテルなどの臭化材料が挙げられる。
【0013】
本発明の発泡体製造方法としては、バッチ式、セミバッチ式、および連続プロセスが挙げられる。バッチプロセスは、貯蔵可能な状態で発泡性ポリマー組成物の少なくとも一部を調製し、次いで、その後のある時点で発泡性ポリマー組成物のその部分を使用して、発泡体を製造することを含む。
【0014】
セミバッチプロセスは、発泡性ポリマー組成物の少なくとも一部を調製し、その発泡性ポリマー組成物をすべて単一プロセスで発泡体へと断続的に発泡させることを含む。参照により本明細書に組み込まれる、例えば米国特許第4,323,528号明細書には、押出し成形プロセスを積重ねることによって、ポリオレフィン発泡体を製造する方法が開示されている。その方法は、1)熱可塑性材料および発泡剤組成物を混合して、発泡性ポリマー組成物を形成する工程、2)発泡性ポリマー組成物を発泡させない温度および圧力で維持された保持領域へと発泡性ポリマー組成物を押出す工程であって、その保持領域が、発泡性ポリマー組成物が発泡する、より低い圧力の領域へのオリフィス開口部を定めるダイ、およびダイオリフィスを閉める開閉可能なゲートを有する工程、3)可動ラムによって発泡性ポリマー組成物に機械圧力を実質的に同時にかけながら、ダイオリフィスを通して、保持領域から低圧の領域へとそれを射出すると同時に、一定間隔でゲートを開く工程、4)射出発泡性ポリマー組成物を発泡させて、発泡体を形成する工程を含む。
【0015】
連続プロセスは、発泡性ポリマー組成物を形成し、次いで中断することなく発泡性ポリマー組成物を発泡することを含む。例えば、ポリマー樹脂を加熱して溶融樹脂を形成することによって、発泡性ポリマー組成物を押出機内で調製し、初期圧力にて発泡剤組成物を溶融樹脂にブレンドし、発泡性ポリマー組成物を形成し、次いで発泡圧力にて発泡性ポリマー組成物をダイに通してある領域内に押出し成形し、発泡性ポリマー組成物を発泡させて発泡体を形成する。望ましくは、発泡体の特性を最適化するために、発泡剤を添加した後およびダイを通して押出し成形する前に、発泡性ポリマー組成物を冷却する。例えば、熱交換器で発泡性ポリマー組成物を冷却する。
【0016】
本発明の発泡体は、シート、厚板、ロッド、チューブ、ビーズまたはそのあらゆる組み合わせを含む、想定可能な任意の形状であることができる。互いに結合される、区別可能な複数の縦方向発泡体部材を含むラミネート発泡体が本発明に包含される。
【実施例】
【0017】
実施例1〜8:ポリスチレンにおける気体の溶解性および拡散係数
Hadj Romdhane,Ilyess(1994)「Polymer−Solvent Diffusion and Equilibrium Parameters by Inverse Gas−Liquid Chromatography」PhD Dissertation,Dept.of Chem.Eng.,Penn State University and Hong SU,Albouy A,Duda JL(1999)「Measurement and Prediction of Blowing Agent Solubility in Polystyrene at Supercritical Conditions」Cell Polym 18(5):301−313に記載のように、キャピラリーカラム逆ガスクロマトグラフィー(cc−IGC)を用いて、ポリスチレン樹脂における気体の溶解性および拡散係数を測定した。
【0018】
厚さ3ミクロンのポリスチレン内部フィルムコーティングを有する、長さ15m、直径0.53mmのGCキャピラリーカラムを作製した。水素炎イオン化検出器を備えたヒューレットパッカード(Hewlet Packard)5890シリーズIIガスクロマトグラフにカラムを取り付けた。標準ガスとしてメタンを使用し、参考文献に示される方法に従って、試験されたガスの溶離プロファイルを分析した。この結果から、ポリマーを通したガスの拡散係数Dp、ポリマー相におけるガスの濃度と気相におけるガスの濃度との比である分配係数Kによるポリマーにおけるガスの溶解性が得られる。その結果、樹脂における特定のガスのK値が高くなるほど、樹脂におけるその溶解性が高くなる。
【0019】
表1は、140℃でのポリスチレンにおける数種類の気体の分配係数および拡散係数の値を示す。比較例1〜2は、ポリスチレンにおける、十分に研究されている2つの発泡剤:HCFC−142b(1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン)およびHFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)の溶解性および拡散係数を示す。実施例3〜6は、ポリスチレンにおける選択されたHFO:HFO−1243zf(3,3,3−トリフルオロプロペン)、HFO−1234ze(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、HFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、HFO−1225ye(1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン)の溶解性および拡散係数を示す。実施例7および8は、トランス−HCFO−1233zd(1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)およびHCFO−1233xf(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)の溶解性および拡散係数を示す。
【0020】
ポリスチレンにおけるHCFOの優れた溶解性および良好な拡散係数から、HCFOは、HFO発泡剤を使用して熱可塑性発泡体を製造するための有効な共発泡剤および/または加工助剤であるはずであることが示唆されている。ポリスチレンにおけるHCFOの溶解性は、熱可塑性樹脂の有用な可塑化を提供して発泡を助けるのに十分である。以上のことから分かるように、HCFO−1233xfは、HCFC−142bに匹敵する、ポリスチレンへの溶解性を有する。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例9〜18
バレル内径27mm、バレル長さ40直径を有する逆回転二軸スクリュー押出機を使用して、ポリスチレン押出発泡体を製造した。スクリューデザインは、発泡用途に適していた。押出機バレル内の圧力は歯車ポンプで制御し、押出機内で発泡剤が溶解するように十分に高く設定した。実施例10〜18の押出ダイは、ギャップ幅6.35mmを有する調節可能なリップスロットダイであった。実施例1では、ダイは、ランド長さ1mmを有する直径2mmのストランドダイであった。2種類のグレードの汎用ポリスチレンを押出し成形試験に使用し、速度2.27または4.54kg/時(5または10lb/時)で押出機に供給した。高圧送達ポンプを使用して、制御速度でポリスチレン樹脂溶融物に発泡剤をポンプで注入した。押出機内で発泡剤を混合し、樹脂溶融物に溶解して、発泡性樹脂組成物を生成する。その発泡性樹脂組成物を適切な発泡温度に冷却し、次いでダイから押出し成形し、そこで圧力の低下により発泡が開始される。核剤としてタルクを使用し、ポリスチレンと予めブレンドし、ポリスチレン中タルク50重量%のマスターバッチを生成した。このマスターバッチのビーズをポリスチレンペレットと混合し、各実験においてタルク0.5重量%を達成した。
【0023】
各実施中に回収された発泡体試料について、その密度、連続気泡含有率、および気泡サイズを測定した。密度はASTM D792に従って測定し、連続気泡含有率は、ASTM D285−Cに従ってガス比重びん法を用いて測定し、気泡サイズは、発泡体試料破壊表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から気泡直径を平均することによって測定した。気泡構造を観察し、かつ連続気泡含有率を定性的に調べるためにも、SEM画像が使用される。
【0024】
表2は、配合物における各発泡剤の添加率、樹脂供給速度、樹脂のメルトフローインデックス、発泡性樹脂溶融温度、および得られた発泡製品の密度、気泡サイズ、ならびに連続気泡含有率など、実施例9〜14のデータを示す。
【0025】
比較例9は、HFC−134aで発泡するポリスチレンに一般的であり、溶解性が乏しく、加工が難しいことから、サイズが小さく、かつ連続気泡が大きい高密度発泡体が生じる傾向がある。
【0026】
比較例10〜12は、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf;TFP)で発泡させた結果を示す。TFP充填率8.5重量%にて、得られた発泡体は小さな気泡サイズを有し、実施例10および11に匹敵する密度を有した。
【0027】
実施例13および14において、TFP(HFO−1243zf)およびHCFO−1233zdの発泡剤組成物によって、気泡サイズの有益な拡大と共に、TFPで達成可能なものよりも低密度の発泡体を製造することができ、密度53kg/m3未満で0.2mmを超える気泡サイズを有する独立気泡発泡体を製造することが可能であった。これらの発泡体は、向上したKファクターを有する断熱性発泡体として有用であろう。HCFO−1233zdは主にトランス異性体であった。
【0028】
実施例15および16は、唯一の発泡剤としてHFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロエタン)を使用して製造された。実施例16で示されるように、1234yf添加率5.7重量%にて、発泡製品は、非常に小さな気泡サイズ、マクロボイド、ブローホール、高い連続気泡含有率、および未溶解発泡剤により起こる、ダイでの頻繁なポッピングを有した。1234yfの含有率が増加すると、これらの問題が悪化した。実施例17および18については、HFO−1234yfおよびHCFO−1233zdの発泡剤組成物によって、HFO−1234yfを単独で使用して製造された発泡体よりも低密度の発泡体を製造することが可能となった。実施例17および18の発泡試料は、ほとんど欠陥がなく、優れた品質であり、ダイでのポッピングを有することなく製造された。
【0029】
【表2】
【0030】
本発明は、具体的な実施形態を参照して本明細書で説明および記述されているが、添付の特許請求の範囲が、示される詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ、当業者によって、これらの詳細に種々の修正形態が加えられることが期待され、その修正形態は、請求される主題の趣旨および範囲内にあり、これらの特許請求の範囲はそれに対応して構成されることが意図される。