【文献】
J. Mol. Biol., 2006, 355(3), pp.443-458
【文献】
Nat. Biotechnol., 2007 Jul, 25(7), pp.786-793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細胞のゲノムにレポーターコンストラクトを組み込んだ後に1対のジンクフィンガーヌクレアーゼによる標的配列の二本鎖切断を検出するためのレポーターコンストラクトであって、該レポーターコンストラクトが、
(i)少なくとも2種のジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される複数の標的配列で隔てられたレポーター遺伝子の重複する非機能的な配列、及び
(ii)重複する非機能的なレポーター遺伝子配列に隣接するゲノムに対する相同領域を含み、
該標的配列が該対のジンクフィンガーヌクレアーゼによって開裂される時に、該レポーター遺伝子が再構築される、レポーターコンストラクト。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に記載されるのは、機能性ヌクレアーゼを同定するためのハイスループットなインビボスクリーニングシステムのための組成物および方法である。特に、このアッセイは、ヌクレアーゼがその標的部位で二本鎖切断を誘導する能力をモニタリングするためのレポーターシステムを用いる。さらに、このアッセイを用いて、細胞増殖に対するヌクレアーゼの効果(毒性)を決定することができる。
【0019】
人工ヌクレアーゼ技術は、天然のDNA結合タンパク質の人工作製に基づく。例えば、目的に合わせたDNA結合特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼの人工作製が記載されている。Chames et al. (2005) Nucleic Acids Res 33(20):e178;Arnould et al. (2006) J. Mol. Biol. 355:443-458。さらに、ZFPの人工作製も記載されている。例えば、米国特許第6,534,261号;第6,607,882号;第6,824,978号;第6,979,539号;第6,933,113号;第7,163,824号;および第7,013,219号を参照されたい。
【0020】
さらに、ZFN、すなわち、その人工(ZFP)DNA結合ドメインを介してその意図される遺伝子標的を認識することができ、かつそのヌクレアーゼによって、遺伝子がZFP結合部位の近くで切断される、機能的な実体を作り出すために、ZFPがヌクレアーゼドメインに付着させられている。例えば、Kim et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(3):1156-1160を参照されたい。最近になって、ZFNは、種々の生物におけるゲノム修飾に用いられている。例えば、米国特許公開20030232410;20050208489;20050026157;20050064474;20060188987;20060063231;および国際公開WO 07/014275を参照されたい。
【0021】
特異的DNA配列に結合するZFPの人工作製を可能にする規則が十分に特徴付けられており、この規則によって特異的ZFPが正確に同定されるが、これらの同じZFPは、ZFNに組み入れられたときに同等の親和性および/または特異性で結合しない場合がある。例えば、染色体物質が生きた細胞におけるヌクレアーゼドメインの正確な二量体化に影響を及ぼし、結果的に切断能を減少させ得る可能性、および所与のゲノム遺伝子座全体の精密なクロマチン構造により、ZFNがその意図される標的配列に結合し、それを切断する能力が異なる形で影響を受ける可能性がある。さらに、設計されたDNA結合ドメインがクロマチン化した形態の細胞ゲノムと共に提示されるときに従う検索パラメータを、インビトロアッセイが模倣することは、不可能ではないにせよ、難しい。結果として、遺伝子修飾のための最適な特徴を示すZFNを同定するために、関連のある生物の数多くの変異体、または細胞系統を試験することが不可欠である。
【0022】
さらに、あらゆるインビボシステムはそれ独自の特色を有するので、ZFN作用を決定するための特異的な検出アッセイを開発する必要がある。したがって、天然のホーミングエンドヌクレアーゼとは異なる結合特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼを選抜するこれまでに記載されたインビボスクリーニング法とは異なり、本明細書に記載される方法は、インビボでの機能性および宿主細胞に対するヌクレアーゼの毒性を予測することにより、特定の結合部位に結合することが既に知られているヌクレアーゼを順位付けする迅速かつ効率的な方法を提供する。
【0023】
したがって、本明細書に記載される方法および組成物は、インビボで生物学的活性のあるヌクレアーゼを同定するための極めて効率的かつ迅速な方法を提供する。本明細書に記載されるアッセイは、インビボでのヌクレアーゼ機能性を正確に予測することに加え、ヌクレアーゼ毒性を決定するのに使用することができ、それにより、最も安全でかつ最も機能的に活性のあるタンパク質の同定を可能にする。
【0024】
概要
本発明の実施、ならびに本明細書に開示される組成物の調製および使用は、別途示されない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および解析、コンピュータ化学、細胞培養、組換えDNA、ならびに当業者の能力の範囲内にある関連分野における従来の技術を利用する。これらの技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989、および第3版, 2001;Ausubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, 1987および定期的更新版;METHODS IN ENZYMOLOGYシリーズ, Academic Press, San Diego;Wolffe, CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION, 第3版, Academic Press, San Diego, 1998;METHODS IN ENZYMOLOGY, 第304巻, 「Chromatin」 (P.M. Wassarman and A. P. Wolffe編), Academic Press, San Diego, 1999;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 第119巻, 「Chromatin Protocols」(P.B. Becker編) Humana Press, Totowa, 1999を参照されたい。
【0025】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、互換的に用いられ、線状または環状の立体構造の、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。本開示の目的のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的であると見なされるべきではない。これらの用語は、天然のヌクレオチドの公知の類似体、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)が修飾されているヌクレオチドを包含することができる。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対形成特異性を有する。すなわち、Aの類似体はTと塩基対を形成する。
【0026】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に用いられる。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸が、対応する天然アミノ酸の化学的類似体または修飾された誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0027】
「結合」とは、巨大分子間の(例えば、タンパク質と核酸の間の)配列特異的な、非共有結合による相互作用を指す。全体としての相互作用が配列特異的である限りにおいて、結合相互作用の構成要素の全てが配列特異的である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)必要はない。このような相互作用は、通常、10
-6M
-1以下の解離常数(K
d)を特徴とする。「親和性」とは、結合の強さを指す。増大した結合親和性は、より低いK
dと相関する。
【0028】
「結合タンパク質」は、別の分子に非共有結合により結合することができるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)、および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合、それはそれ自身に結合(してホモ二量体、ヘテロ三量体などを形成)することができ、かつ/またはそれは異なるタンパク質の1つもしくは複数の分子に結合することができる。結合タンパク質は、2つ以上の種類の結合活性を有することができる。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合活性、RNA結合活性、およびタンパク質結合活性を有する。
【0029】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、1つまたは複数のジンクフィンガーを介して配列特異的な様式でDNAに結合するタンパク質、またはより大きいタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーは、結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域であり、その構造は亜鉛イオンの配位によって安定化される。用語ジンクフィンガーDNA結合タンパク質は、しばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。
【0030】
ジンクフィンガー結合ドメインは、所定のヌクレオチド配列に結合するように「人工的に作り出す」ことができる。ジンクフィンガータンパク質を人工的に作り出すための方法の非限定的な例は、設計と選択である。設計されたジンクフィンガータンパク質は、天然に生じないタンパク質であり、その設計/組成は、主として合理的基準に由来する。設計の合理的基準には、置換規則ならびに既存のZFPの設計および結合データに関する情報を格納するデータベース中の情報を処理するためのコンピュータアルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許6,140,081;6,453,242;および6,534,261を参照されたい。WO 98/53058;WO 98/53059;WO 98/53060;WO 02/016536、およびWO 03/016496も参照されたい。
【0031】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質は、天然に見出されないタンパク質であり、その産生は、主として、ファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択などの実験過程からもたらされる。例えば、US 5,789,538;US 5,925,523;US 6,007,988;US 6,013,453;US 6,200,759;WO 95/19431;WO 96/06166;WO 98/53057;WO 98/54311;WO 00/27878;WO 01/60970;WO 01/88197、およびWO 02/099084を参照されたい。
【0032】
「切断」とは、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的な加水分解を含むが、これらに限定されない、種々の方法により開始させることができる。一本鎖切断と二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として生じることができる。DNA切断は、平滑末端または互い違い末端のいずれかの産生をもたらすことができる。ある実施形態において、融合ポリペプチドが、標的化二本鎖DNA切断に用いられる。
【0033】
「切断半ドメイン」は、第二のポリペプチド(同一であるかまたは異なっているかのいずれか)と共に、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第一および第二の切断半ドメイン」、「+および−の切断半ドメイン」、ならびに「右および左の切断半ドメイン」は、二量体化する切断半ドメインの対を指すために互換的に用いられる。
【0034】
「人工切断半ドメイン」は、別の切断半ドメイン(例えば、別の人工切断半ドメイン)との絶対へテロ二量体(obligate heterodimer)を形成するように修飾されている切断半ドメインである。米国特許出願第10/912,932号および第11/304,981号ならびに米国仮出願第60/808,486号(2006年5月25日に出願)も参照されたく、これらはそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0035】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造体である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含む、タンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大部分は、ヌクレオソームコアが、各々2つのヒストンH2A、H2B、H3、およびH4を含む八量体と会合したおよそ150塩基対のDNAを含み;かつ(生物によって可変の長さの)リンカーDNAがヌクレオソームコアの間に伸長している、ヌクレオソームの形で存在する。ヒストンH1という分子は、通常リンカーDNAと会合している。本開示の目的のために、用語「クロマチン」は、原核生物と真核生物の両方の、全ての種類の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体クロマチンとエピソーム性クロマチンの両方を含む。
【0036】
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、しばしば、その核型によって特徴付けられ、それは細胞のゲノムを含む全ての染色体の集合体である。細胞のゲノムは1つまたは複数の染色体を含むことができる。
【0037】
「エピソーム」は、複製する核酸、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の部分ではない核酸を含むその他の構造体である。エピソームの例としては、プラスミドおよびある種のウイルスゲノムが挙げられる。
【0038】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在するならば、結合分子が結合する核酸の一部を規定する核酸配列である。例えば、5'-GAATTC-3'という配列は、Eco RI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。
【0039】
「外因性」分子は、通常は細胞に存在しないが、1つまたは複数の遺伝学的方法、生化学的方法、またはその他の方法によって細胞に導入することができる分子である。「通常細胞に存在すること」は、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、成体の筋肉細胞に関して外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、熱ショックを受けていない細胞に関して外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全の内因性分子の機能型、または正常に機能する内因性分子の機能不全型を含むことができる。
【0040】
外因性分子は、とりわけ、小分子(例えば、コンビナトリアル化学反応過程によって生成されるようなもの)、または巨大分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の修飾された誘導体、もしくは上記の分子の1つもしくは複数を含む任意の複合体)であることができる。核酸は、DNAおよびRNAを含み、一本鎖または二本鎖であることができ;線状、分岐状、または環状であることができ;かつ任意の長さであることができる。核酸には、二重鎖を形成することができる核酸、および三重鎖を形成する核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および第5,422,251号を参照されたい。タンパク質としては、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチン再構築因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、ジメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイラーゼ、およびヘリカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
外因性分子は、内因性分子と同じ種類の分子、例えば、外因性のタンパク質または核酸であることができる。例えば、外因性核酸は、細胞に導入された感染性ウイルスゲノム、プラスミド、もしくはエピソーム、または通常は細胞に存在しない染色体を含むことができる。外因性分子を細胞に導入するための方法は、当業者に公知であり、脂質を介する転移(すなわち、中性およびカチオン性の脂質を含む、リポソーム)、エレクトロポレーション、直接注射、細胞融合、粒子衝突、リン酸カルシウム共沈殿、DEAEデキストランを介する転移、およびウイルスベクターを介する転移を含むが、これらに限定されない。
【0042】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下の特定の発生段階の特定の細胞に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリアもしくは葉緑体もしくはその他のオルガネラのゲノム、または天然に存在するエピソーム性核酸を含むことができる。さらなる内因性分子として、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を挙げることができる。
【0043】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合で、連結している分子である。サブユニット分子は同じ化学的種類の分子であることができ、または異なる化学的種類の分子であることができる。第一の種類の融合分子の例としては、融合タンパク質(例えば、ZFP DNA結合ドメインと切断ドメインの間の融合体)および融合核酸(例えば、前記の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。第二の種類の融合分子の例としては、三重鎖を形成する核酸とポリペプチドの間の融合体、およびマイナーグルーブ・バインダーと核酸の間の融合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
細胞内での融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の細胞への送達から、またはポリヌクレオチドが転写され、転写産物が翻訳されて、融合タンパク質を生成する、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって生じることができる。トランス・スプライシング、ポリペプチド切断、およびポリペプチドライゲーションも、細胞内でのタンパク質の発現に関与することができる。ポリヌクレオチドとポリペプチドの細胞への送達のための方法は、本開示中の別の場所に提示されている。
【0045】
「真核」細胞としては、真菌細胞(例えば、酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、およびヒト細胞(例えば、T細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
用語「操作的な連結」および「操作的に連結される」(または「機能的に連結される」)は、2つ以上の構成要素(例えば、配列エレメント)の並置に関して互換的に用いられ、その場合、これらの構成要素は、両方の構成要素が正常に機能しかつこれらの構成要素の少なくとも1つがその他の構成要素の少なくとも1つに対して影響を与える機能を仲介することができる可能性を与えるように配置されている。例示として、転写調節配列が、1つまたは複数の転写調節因子の有無に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、転写調節配列(例えば、プロモーター)は、コード配列に操作的に連結されている。転写調節配列は、通常、コード配列とシスで操作的に連結されるが、それに直接的に近接している必要はない。例えば、エンハンサーは、たとえそれらが隣接していなくても、コード配列に操作的に連結される転写調節配列である。
【0047】
融合ポリペプチドに関して、用語「操作的に連結される」は、構成要素の各々がその他の構成要素と連結して、万が一そのように連結していなければそれが果たすであろうものと同じ機能を果たすという事実を指すことができる。例えば、ZFP DNA結合ドメインが切断ドメインに融合している融合ポリペプチドに関して、融合ポリペプチドにおいて、ZFP DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができる一方で、切断ドメインが標的部位付近のDNAを切断することができるならば、ZFP DNA結合ドメインおよび切断ドメインは、操作的に連結されている。
【0048】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に転移することができる。典型的には、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、および「遺伝子転移ベクター」は、関心のある遺伝子の発現を導くことができ、かつ遺伝子配列を標的細胞に転移することができる任意の核酸コンストラクトを意味する。したがって、この用語には、クローニングビヒクル、発現ビヒクル、および組込みベクターが含まれる。
【0049】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」とは、好ましくは日常的に行なわれるアッセイにおいて容易に測定されるタンパク質産物を産生する任意の配列を指す。好適なレポーター遺伝子としては、Mel1、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、発光タンパク質、およびβ-ガラクトシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
概説
本明細書に記載されるのは、最も高い頻度でその標的部位を切断し、かつ宿主細胞にとって毒性のないヌクレアーゼを同定するための組成物および方法である。試験されるヌクレアーゼの標的部位を含むレポーターコンストラクトが、これらのレポーターコンストラクトを含む宿主細胞と同様に記載されている。本明細書に記載される方法において、レポーター株を作り出すために、ヌクレアーゼの標的部位を含むレポーターコンストラクトが宿主細胞(例えば、酵母細胞)に導入される。ヌクレアーゼが細胞で発現され、その標的部位で二本鎖切断(DSB)を誘導する(例えば、二本鎖切断を誘導する)とき、レポーター遺伝子は、宿主細胞の一本鎖アニーリング(SSA)機構によって再構成される。レポーター遺伝子の発現は、標準的な技術によって容易に決定され、レポーター遺伝子発現のレベルは、ヌクレアーゼが標的部位で切断する能力を反映する。さらに、宿主細胞は、細胞増殖に対するヌクレアーゼ発現の効果を決定するために、容易にアッセイすることができる。
【0051】
したがって、本明細書に記載されるのは、特定の標的部位に結合することが知られているヌクレアーゼのパネルから最も活性が高くかつ最も毒性が少ないヌクレアーゼを決定するための迅速かつ効率的なハイスループットスクリーニング法である。標的遺伝子座での活性によるヌクレアーゼの順位付けを可能にすることに加えて、本開示は、どのヌクレアーゼがゲノムの非特異的切断を示すかということに関する決定も可能にする。
【0052】
ヌクレアーゼ作用のインビボでの特徴解析を可能にする、本明細書に記載される試薬および方法は、出芽酵母で行なうことができる。酵母の迅速でかつ汎用性のある遺伝学により、ハイスループット様式の簡単なアッセイでヌクレアーゼの大きいパネルを試験することが可能になる。この試薬およびシステムを用いて、任意の生物由来の任意の遺伝子に対して設計されたヌクレアーゼを選抜することができ、本開示は、下等脊椎動物、植物、およびヒト細胞培養を用いて、最適な活性を示すヌクレアーゼ対を正確に同定することが確認されている。
【0053】
レポーターコンストラクト
本明細書に記載される方法およびシステムは、試験されるヌクレアーゼの標的配列を含む配列を含むレポーターコンストラクトを利用している。標的配列が切断され、レポーター遺伝子配列の一本鎖アニーリング(SSA)によってレポーターが再構成されたときにのみレポーター遺伝子が機能的であるように、レポーターコンストラクトは設計される。典型的には、レポーターコンストラクトは、任意のヌクレアーゼ標的配列が、例えば、ポリリンカーを介してレポーター遺伝子配列の真ん中に容易に挿入されることができるように作製される(
図1および2を参照のこと)。
【0054】
選抜されるヌクレアーゼの1つまたは複数の標的部位は、PCRまたは市販のクローニングシステム(例えば、TOPO(登録商標)および/もしくはGateway(登録商標)クローニングシステム)を含む、任意の好適な方法論によってレポーターコンストラクトに挿入することができる。ある実施形態において、標的部位は、標的部位のコンカテマーを含む。実施例1も参照されたい。標的部位は、原核生物または真核生物の遺伝子、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)、酵母、または植物の細胞由来であることができる。
【0055】
検出可能な産物の産生を触媒する酵素(例えば、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、糖加水分解酵素、およびエステラーゼ)を含むが、これらに限定されない、検出可能なシグナルを提供する任意のレポーター遺伝子を用いることができる。酵素をコードする好適なレポーター遺伝子の非限定的な例としては、例えば、MEL1、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ;Alton and Vapnek (1979) Nature 282:864 869)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ラクタマーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ならびにアルカリホスファターゼ(例えば、Toh, et al. (1980) Eur. J. Biochem. 182:231 238;およびHall et al. (1983) J. Mol. Appl. Gen. 2:101)が挙げられる。また、例えば、蛍光タンパク質(例えば、GFP(緑色蛍光タンパク質))などの、検出可能なシグナルを直接提供するレポーター遺伝子を利用してもよい。蛍光は、例えば、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)システムを含む、種々の市販の蛍光検出システムを用いて検出される。
【0056】
ある実施形態において、レポーター遺伝子は、酵素(例えば、MEL1)をコードする。古典的なβ-ガラクトシダーゼ酵母レポーター遺伝子と比較した場合、分泌されるMEL1レポーターの遺伝子を使用することにより、細胞溶解を必要とせずに、増殖培地から直接組換え事象を簡便に検出することが可能になる(Aho et al. (1997) Anal Biochem 253:270-272)。
【0057】
図1および2に示されるように、レポーターコンストラクトは、典型的には、宿主細胞ゲノムDNAの領域と相同であるレポーター-標的-レポーター配列に隣接する配列も含む。これらの「相同性アーム」は、レポーターコンストラクトの宿主細胞への標的化組込みを可能にし、安定なレポーター宿主細胞株を生成させる。相同性アームは、宿主細胞の任意のゲノム配列に対するものであることができる。好ましくは、相同性アームは、宿主細胞ゲノムの非必須部位(例えば、酵母のHO遺伝子座)へのレポーターコンストラクトの挿入を導く。好適な挿入部位のその他の非限定的な例としては、栄養要求性マーカー(例えば、URA3、LYS2、およびTRP1)が挙げられる。好ましくは、レポーターコンストラクトは、その突然変異(またはノックアウト)が宿主細胞増殖に定量的に影響を及ぼさない遺伝子座に挿入される。レポーターコンストラクトは、標準的な技術を用いて宿主細胞ゲノムに組み込まれてもよい。例えば、Chamesら(上記)およびArnouldら(上記)を参照されたい。あるいは、レポーターコンストラクトは、エピソームによって維持することができる。
【0058】
レポーターコンストラクトはまた、1つまたは複数の選択マーカーを含んでもよい。陽性選択マーカーは、遺伝子を運搬および発現する細胞のみがある条件下で生存および/または増殖するのを可能にする産物をコードするポリヌクレオチドである。例えば、抗生物質耐性遺伝子(例えば、Kan
rまたはNeo
r)を発現する細胞が抗生物質またはその類似体(例えば、G418)に耐性であるのに対し、これらの耐性遺伝子を発現しない細胞は抗生物質の存在下で殺傷される。ハイグロマイシン耐性、ゼオシン(商標)耐性などを含む陽性選択マーカーのその他の例は当業者に公知であろう(Golstein and McCusker (1999) Yeast 15:1541-1553を参照のこと)。陰性選択マーカーは、遺伝子を運搬および発現する細胞のみがある条件下で殺傷されるのを可能にする産物をコードするポリヌクレオチドである。例えば、ガンシクロビルを添加すると、チミジンキナーゼ(例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、HSV-TK)を発現する細胞が殺傷される。その他の陰性選択マーカーは当業者に公知である。選択マーカーはトランスジーンである必要はなく、さらにレポーターおよび選択マーカーは、様々な組み合わせで用いることができる。
【0059】
レポーターコンストラクトには、追加のレポーター遺伝子、例えば、細胞がDNA損傷応答(DDR)を受けていることを示すことによってオフターゲットのヌクレアーゼ活性を反映する遺伝子も含まれてよい。このような好適な追加のオフターゲットレポーターの非限定的な例としては、単独のDSBの誘導でさえも上方調節されることが知られている遺伝子(例えば、RNR2、RNR4、DIN7、PCL5、DUN1)が挙げられる。Lee et al. (2000) Cold Spring Harb Symp Quant Biol. 65:303:314も参照されたい。追加のレポーターは、単独で導入されることができ、一過性に発現されるかまたは宿主細胞に安定に組み込まれてもよい。
【0060】
宿主細胞
ヌクレアーゼが標的配列を切断する時に機能性レポーターを再構成する任意の宿主細胞を、本開示の実施で用いることができる。細胞種類は、細胞株または例えば、初代細胞のような天然の(例えば、単離された)細胞であることができる。細胞株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能であるか、または例えば、Freshney et al., Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique, 第3版, 1994、およびそこで引用されている参考文献に記載されているような、当技術分野で公知の方法によって作製することができる。同様に、細胞は、当技術分野で公知の方法によって単離することができる。細胞種類のその他の非限定的な例としては、病態を有するかまたは病態に陥りやすい細胞(例えば、癌性細胞および形質転換細胞)、病原体に感染した細胞、幹細胞、完全に分化した細胞、一部分化した細胞、不死化細胞などが挙げられる。原核(例えば、細菌)細胞または真核(例えば、酵母、植物、真菌、魚類、ならびに哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、マウス、ウシ、ブタ、およびヒト))細胞を用いることができ、真核細胞が好ましい。好適な哺乳動物細胞株としては、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、HEP-G2細胞、BaF-3細胞、シュナイダー細胞、COS細胞(SV40 T抗原を発現するサル腎細胞)、CV-1細胞、HuTu80細胞、NTERA2細胞、NB4細胞、HL-60細胞およびHeLa細胞、293細胞(例えば、Graham et al. (1977) J. Gen. Virol. 36:59を参照のこと)、ならびにSP2またはNS0のようなミエローマ細胞(例えば、Galfre and Milstein (1981) Meth. Enzymol. 73(B):3 46)を参照のこと)が挙げられる。その他の真核細胞としては、例えば、昆虫(例えば、ヨトウガ(sp. frugiperda))、酵母(例えば、出芽酵母、分裂酵母(S. pombe)、ピキア・パトリス(P. pastoris)、クルイベルミセロ・ラクチス(K. lactis)、ハンセヌラ・ポリモルファ(H. polymorpha))を含む真菌細胞、および植物細胞が挙げられる(Fleer, R. (1992) Current Opinion in Biotechnology 3:486 496)。
【0061】
好ましい実施形態において、宿主細胞は酵母細胞である。レポーターの再構成に必要とされる介在配列の欠失は、これらの細胞において効率的な過程であり、大きいゲノム標的のスキャニングを可能にするので、酵母細胞は有利に利用される。標的が最大25kbであっても、酵母細胞はDSBの導入を乗り切る(Vaze et al. (2002) Mol Cell 10:373-385)。さらに、レポーターコンストラクト内の400塩基対の相同領域が提供される限り、100%の酵母細胞がSSA修復経路を用いて切断を乗り切る(Sugawara et al. (2000) Mol Cell Biol 20:5300-5309)。例として、69-1BまたはBY4741を含む、酵母細胞の任意の株を用いることができる。
【0062】
ヌクレアーゼ
本明細書に記載される方法および組成物は、広く適用可能であり、任意の関心のあるヌクレアーゼを含んでもよい。ヌクレアーゼの非限定的な例としては、メガヌクレアーゼおよびジンクフィンガーヌクレアーゼが挙げられる。ヌクレアーゼは、異種DNA結合ドメインおよび切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;異種切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含んでもよく、またはあるいは、天然のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように改変されてもよい(例えば、コグネートな結合部位とは異なる部位に結合するように人工的に作り出されているメガヌクレアーゼ)。
【0063】
ある実施形態において、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。天然のメガヌクレアーゼは、15〜40塩基対の切断部位を認識し、一般に4つのファミリー、すなわちLAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cystボックスファミリー、およびHNHファミリーに分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼとしては、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、およびI-TevIIIが挙げられる。これらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388;Dujon et al. (1989) Gene 82:115-118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163-180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353、およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。
【0064】
天然のメガヌクレアーゼ由来(主としてLAGLIDADGファミリー由来)のDNA結合ドメインが、植物、酵母、ショウジョウバエ、哺乳動物細胞、およびマウスで部位特異的ゲノム修飾を促進するために用いられているが、このアプローチは、メガヌクレアーゼ認識配列を保存している相同遺伝子(Monet et al. (1999), Biochem. Biophysics. Res. Common. 255: 88-93)またはその中に認識配列が導入されている予め人工的に作り出されたゲノム(Route et al. (1994), Mol. Cell. Biol. 14: 8096-106;Chilton et al. (2003), Plant Physiology. 133: 956-65;Puchta et al. (1996), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 5055-60;Rong et al. (2002), Genes Dev. 16: 1568-81;Gouble et al. (2006), J. Gene Med. 8(5):616-622)のいずれかの修飾に限定されている。したがって、医学的または生物工学的に意義のある部位での新規の結合特異性を示すメガヌクレアーゼを人工的に作り出す試みがなされている(Porteus et al. (2005), Nat. Biotechnol. 23: 967-73;Sussman et al. (2004), J. Mol. Biol. 342: 31-41;Epinat et al. (2003), Nucleic Acids Res. 31: 2952-62;Chevalier et al. (2002) Molec. Cell 10:895-905;Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:2952-2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441:656-659;Paques et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許公開第20070117128号;第20060206949号;第20060153826号;第20060078552号;および第20040002092号)。さらに、メガヌクレアーゼ由来の天然または人工のDNA結合ドメインもまた、異種ヌクレアーゼ(例えば、FokI)由来の切断ドメインと機能的に連結されている。
【0065】
その他の実施形態において、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。ZFNは、選択遺伝子内の標的部位に結合するように人工的に作り出されているジンクフィンガータンパク質および切断ドメインまたは切断半ドメインを含む。
【0066】
ジンクフィンガー結合ドメインは、選択配列に結合するように人工的に作り出すことができる。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141;Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340;Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660;Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637;Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416を参照されたい。人工ジンクフィンガー結合ドメインは、天然のジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。人工作製の方法には、合理的設計および様々な種類の選択が含まれるが、これらに限定されない。合理的設計には、例えば、トリプレット(またはカドラプレット)のヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用が含まれる。この場合、各々のトリプレットまたはカドラプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはカドラプレットの配列に結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と会合する。例えば、共同所有の米国特許6,453,242および6,534,261を参照されたく、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
ファージディスプレイおよびツー・ハイブリッドシステムを含む、例示的な選択法は、米国特許5,789,538;5,925,523;6,007,988;6,013,453;6,410,248;6,140,466;6,200,759;および6,242,568;ならびにWO 98/37186;WO 98/53057;WO 00/27878;WO 01/88197、およびGB 2,338,237に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の増強は、例えば、共同所有のWO 02/077227に記載されている。
【0068】
標的部位の選択、ZFN、ならびに融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築の方法は当業者に公知であり、米国特許出願公開第20050064474号および第20060188987号(これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)に詳細に記載されている。
【0069】
さらに、これらおよびその他の参考文献に開示されているように、ジンクフィンガードメインおよび/または多フィンガー型ジンクフィンガータンパク質は、例えば、5アミノ酸長以上のリンカーを含む、任意の好適なリンカー配列を用いて、1つに連結されてもよい。例えば、例示的な6アミノ酸長以上のリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;第6,903,185号;および第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0070】
ヌクレアーゼ(例えば、ZFNおよび/またはメガヌクレアーゼ)は、ヌクレアーゼ(切断ドメイン、切断半ドメイン)も含む。上記のように、切断ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種であってもよく、例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインとヌクレアーゼ由来の切断ドメインまたはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインと異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメインであってもよい。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインを得ることができる例示的なエンドヌクレアーゼとしては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、New England Biolabs, Beverly, MAの2002-2003版カタログ;およびBelfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388を参照されたい。DNAを切断するさらなる酵素は公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNアーゼI;マイクロコッカルヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn et al. (編) Nucleases, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1993も参照のこと)。これらの酵素(またはその機能性断片)のうちの1つまたは複数は、切断ドメインおよび切断半ドメインの源として用いることができる。
【0071】
同様に、切断半ドメインは、切断活性に二量体化が必要である、上で示されているような、任意のヌクレアーゼまたはその部分から得ることができる。一般に、融合タンパク質が切断半ドメインを含む場合、切断には2つの融合タンパク質が必要である。あるいは、2つの切断半ドメインを含む単一のタンパク質を用いることができる。2つの切断半ドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(もしくはその機能性断片)から得ることができ、または各々の切断半ドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(もしくはその機能性断片)から得ることができる。さらに、2つの融合タンパク質がそれぞれの標的部位に結合することによって、切断半ドメインが互いに、例えば、二量体化によって機能的な切断ドメインを形成するのを可能にする空間的な配向に置かれるように、2つの融合タンパク質の標的部位は、互いに関して、好ましく配置される。したがって、ある実施形態において、標的部位の近い末端を、5〜8ヌクレオチドまたは15〜18ヌクレオチド隔てさせる。しかしながら、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位の間に(例えば、2〜50ヌクレオチドまたはそれより多く)介在することができる。一般に、切断の部位は、標的部位の間にある。
【0072】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在しており、(認識部位で)DNAに配列特異的に結合し、結合の部位または結合の部位の近くでDNAを切断することができる。ある種の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から隔たった部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素Fok Iは、一方の鎖上ではその認識部位から9ヌクレオチド離れた場所で、他方の鎖上ではその認識部位から13ヌクレオチド離れた場所で、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許5,356,802;5,436,150;および5,487,994;ならびにLi et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279;Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764-2768; Kim et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887; Kim et al. (1994b) J. Biol. Chem. 269:31,978-31,982を参照されたい。したがって、1つの実施形態において、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の切断ドメイン(または切断半ドメイン)および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメイン(人工的に作り出されたものであってもなくてもよい)を含む。
【0073】
切断ドメインが結合ドメインから切り離せる、例示的なIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、二量体として活性がある。Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10,570-10,575。したがって、本開示の目的のために、開示された融合タンパク質で用いられるFok I酵素の部分は、切断半ドメインと考えられる。したがって、ジンクフィンガー-Fok I融合体を用いた細胞配列の標的化二本鎖切断および/または標的化置換のために、各々FokI切断半ドメインを含む、2つの融合タンパク質を用いて、触媒活性のある切断ドメインを再構成することができる。あるいは、1つのジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFok I切断半ドメインを含む単一のポリペプチド分子を用いることもできる。ジンクフィンガー-Fok I融合体を用いた標的化切断および標的化配列改変のためのパラメータは本開示中の別の場所に提供されている。
【0074】
切断ドメインまたは切断半ドメインは、切断活性を保持するか、または多量体化(例えば、二量体化)して、機能的な切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の部分であることができる。
【0075】
例示的なIIS型制限酵素は、国際公開WO 2007/014275号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらなる制限酵素も分離可能な結合ドメインおよび切断半ドメインを含み、これらは本開示によって企図される。例えば、Roberts et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:418-420を参照されたい。
【0076】
ある実施形態において、切断ドメインは、例えば、米国特許公開第20050064474号および第20060188987号ならびに米国出願第11/805,850号(2007年5月23日に出願)(これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているような、ホモ二量体化を最小限に抑えるかまたはホモ二量体化を妨げる1つまたは複数の人工切断半ドメイン(二量体化ドメイン突然変異体とも呼ばれる)を含む。Fok I の位置446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538のアミノ酸残基は全て、Fok I切断半ドメインの二量体化に影響を与えるための標的である。
【0077】
絶対的ヘテロ二量体を形成するFok Iの例示的な人工切断半ドメインとしては、第一の切断半ドメインがFok Iの位置490および538のアミノ酸残基における突然変異を含み、第二の切断半ドメインが位置486および499のアミノ酸残基における突然変異を含む対が挙げられる。
【0078】
したがって、1つの実施形態において、490における突然変異によって、Glu(E)がLys(K)と置き換えられ、538における突然変異によって、Iso(I)がLys(K)と置き換えられ、486における突然変異によって、Gln(Q)がGlu(E)と置き換えられ、位置499における突然変異によって、Iso(I)がLys(K)と置き換えられる。具体的に、本明細書に記載される人工切断半ドメインは、一方の切断半ドメインの位置490(E→K)および538(I→K)を突然変異させて「E490K:I538K」と呼ばれる人工切断半ドメインを産生し、もう一方の切断半ドメインの位置486(Q→E)および499(I→L)を突然変異させて「Q486E:I499L」と呼ばれる人工切断半ドメインを産生することによって調製された。本明細書に記載される人工切断半ドメインは、絶対的ヘテロ二量体突然変異体であり、この変異体では、異常な切断が最小限に抑えられているかまたは消失させられている。例えば、米国仮出願第60/808,486号(2006年5月25日に出願)の実施例1を参照されたく、その開示は全ての目的のためにその全体が参照により組み入れられる。
【0079】
本明細書に記載される人工切断半ドメインは、任意の好適な方法を用いて、例えば、米国特許公開第20050064474号の実施例5および米国特許仮出願第60/721,054号の実施例38に記載されているような野生型切断半ドメイン(Fok I)の部位特異的突然変異生成によって調製することができる。
【0080】
ヌクレアーゼ発現コンストラクトは、当技術分野で公知の方法を用いて容易に設計することができる。例えば、米国特許公開20030232410;20050208489;20050026157;20050064474;20060188987;20060063231;および国際公開WO 07/014275を参照されたい。ある実施形態において、ヌクレアーゼの発現は、誘導性プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(抑制解除)され、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にある。特に、炭素源が(例えば、グルコースからラフィノースへ、ラフィノースからガラクトースへと)連続的に変化するによって、ガラクトキナーゼプロモーターが誘導され、ヌクレアーゼが発現する。誘導性プロモーターのその他の非限定的な例としては、CUP1、MET15、PHO5、およびtet-応答性プロモーターが挙げられる。
【0081】
生物学的活性のあるヌクレアーゼの同定
本明細書に記載されているようなSSAレポーターコンストラクトを含む宿主細胞を用いて、特定の標的部位に結合するように人工的に作り出されたヌクレアーゼのパネルから最も活性が高くかつ最も毒性が少ないヌクレアーゼを同定することができる。本開示のシステムは、一本鎖アニーリング(SSA)と呼ばれる相同性指向性修復(HDR)の特定の経路を利用している。2つの隣接相同領域間で二本鎖切断(DSB)が生じる場合、切断された染色体の修復により、1コピーの反復配列を含む欠失が結果として生じる(Paques and Haber (1999) Microbiol Mol Biol Rev 63:349-404)。標的配列で隔てられたレポーター遺伝子の2つの重複する非機能的な部分を含むレポーターコンストラクトを人工的に作り出すことによって、ヌクレアーゼ誘導性のDSBを容易に検出することができる。
【0082】
図1に概略が示されているように、最も大きいインビボでの切断活性を有するヌクレアーゼの同定は、レポーターコンストラクトの導入から始まる。レポーターコンストラクトは、例えば、エピソームを用いて(例えば、酵母セントロメアプラスミド(YCp)を用いて)、エピソーム性とすることができる。好ましくは、レポーターコンストラクトは、例えば、相同組換えによって、宿主細胞(例えば、酵母)のゲノムに組み込まれる。
【0083】
レポーターの正確な組込みについて株をジェノタイピングした後、宿主株をヌクレアーゼ発現ベクターで形質転換する。好ましくは、培養培地中の炭素源を変化させることによって、選択された量の時間、ヌクレアーゼ発現を誘導することができるように、ヌクレアーゼ発現は誘導性(例えば、ガラクトース誘導性)とする。細胞機構が誘導されたDSBを修復するのに必要とする回復期間の後、再構成されたレポーター遺伝子(例えば、Mel1酵素)の活性を、好適な(例えば、比色による)アッセイを用いて、培地のアリコートから決定する。
【0084】
各ヌクレアーゼについて得られる活性は、それが染色体の標的配列内でDSBを誘導する能力を定量的に反映する。活性は、典型的には、培養液中の細胞の密度に対して標準化される。
【0085】
本明細書に記載されるインビボスクリーニングシステムは、酵母ゲノム全体をヌクレアーゼによるオフターゲット切断について同時に調べるという追加効果を有する。宿主細胞は、DSBの第二の経路すなわち、非相同末端結合(NHEJ)のための機構も含む。半数体の状態では、酵母細胞は、エンドヌクレアーゼの継続的な存在によって誘導される持続的なDSBに対して非効率的に応答する。0.1%の細胞しかこの種のDSBを切り抜けて生存することができず、集団の増殖が結果として著しく遅れる(Moore and Haber, 1996)。このようなオフターゲット活性はほとんどの細胞を殺傷するが、培養液中の細胞密度を分光光度法で決定することにより、細胞増殖を容易にモニタリングすることができるので、(おそらくはその特異性とオフターゲット切断の欠如のおかげで)細胞にとって最も毒性が少ないヌクレアーゼを容易に同定することができる。
【0086】
さらに、オフターゲット効果は、DNA損傷応答(DDR)経路を活用する「シグナル獲得」アッセイを利用することによって、モニタリングすることもできる。いくつかの遺伝子は、単独のDSBの誘導でさえも上方調節されることが知られている(Lee et al. (2000) Cold Spring Harb Symp Quant Biol 65:303-314)。したがって、本明細書に記載される組成物または方法はいずれも、DSBの存在下でのみ転写されるプロモーターの制御下にある第二のレポーター遺伝子をさらに含んでもよい。この第二のレポーター遺伝子の活性を用いて、非特異的なヌクレアーゼを広く検出することができる。
【0087】
例えば、中断されるMEL1遺伝子の中に対抗選択遺伝子を挿入することもできる。これによって、突然変異させたZFNの集団から活性変異体を選択することができる。URA3を含むが、これに限定されない、任意の対抗選択遺伝子を用いることができる(
図8)。原栄養株の増殖を妨げるが、ura3突然変異体の増殖を可能にする特異的阻害剤、5-フルオロ-オロト酸(FOA)に基づいてこの遺伝子に関して陰性選択を行なうことができる。Ura3-細胞(SSAから生じる)は、FOAを含む培地上で選択することができる。FOAがデカルボキシラーゼの作用によって毒性のある化合物、5-フルオロウラシルに変換されるために、活性のないZFNを含むURA3+細胞が殺傷されるのに対し、ura3-細胞は耐性である。FOA培地上での陰性選択は、極めて識別力があり、通常、10-2未満のFOA耐性コロニーがUra+である。
【0088】
したがって、この種の対抗選択マーカー遺伝子を含むレポーター株は、このような遺伝子選抜で生成される大多数の突然変異体を典型的に構成する不活性変異体を排除するのに用いられる。SSAによるDSBの修復の間にURA3遺伝子が欠失させられるので、活性変異体を含む細胞はFOAに耐性である。ほとんどの非機能的なコロニー/変異体がこの選抜で排除されるので、この種の選択は、作業量を大幅に減少させる。
【0089】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがZFNを含む本開示の例示的な実施形態に関する。これは単に例示する目的のためのものであり、その他のヌクレアーゼ(例えば、人工DNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)および/または天然もしくは人工のホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)のDNA結合ドメインと異種切断ドメインの融合体)を用いることができるということが理解されよう。
【0090】
実施例
実施例1:酵母レポーターコンストラクトの人工作製
以下のように、酵母組込みプラスミド(Yip)HO-poly-KanMX-HO(Voth et al. (2001) Nucleic Acids Res 29:E59-59)を用いて、HO遺伝子座に標的化されるSSAレポーターコンストラクト(
図2参照)を作製した。(ATGに対して)MEL1遺伝子のヌクレオチド1〜750に対応する断片(Liljestrom (1985) Nucleic Acids Res 13:7257-7268)を、以下のプライマー:5'-aattgtcgacatgtttgctttctactttctcaccgc-3'(配列番号:1)5'-aattggatccccccattggagctgcc-3'(配列番号:2)を用いて、HO-poly-KanMX-HOのSalI部位およびBamHI部位にクローニングした。次に、ヌクレオチド299〜2100由来の断片を、以下のオリゴ:5'-aattgagctcagaccacctgcataataacagc-3'(配列番号:3)および5'-aattgaattcgggcaaaaattggtaccaatgc-3'(配列番号:4)を用いて、SacI部位およびEcoRI部位にクローニングした。最後に、PGK1プロモーターの1489塩基対の断片を、以下のオリゴ:5'-Aattcgtacgtctaactgatctatccaaaactg-3'(配列番号:5)および5'-Aattgtcgacttgatcttttggttttatatttgttg-3'(配列番号:6)を用いて、BsiWI部位およびSalI部位にクローニングした。
【0091】
上記のようなMEL1レポーターコンストラクトを、製造元の取扱説明書に従って、Gateway(登録商標)カセット(Invitrogen)を含むようにさらに修飾した。さらに、短いバージョンのPGK1プロモーターを含むレポーターコンストラクトを作製した。アンピシリン耐性遺伝子を欠くコンストラクトも作製した。
【0092】
様々なZFN標的部位を含むレポーターコンストラクトも作製した。簡潔に述べると、1コピーまたは複数コピーの標的部位をPCRによるかまたはコンカテマー化によって作製し、標準的な分子生物学の技術を用いて、Gateway(登録商標)MEL1レポーターコンストラクトに挿入した。コンカテマーは、DNAworks(インターネット上で入手可能)を用いてコンピュータ上で構築した。DNAworks は、標的部位コンカテマーの端から端までを覆う重複するオリゴを設計する。このオリゴを用いて、合成標的部位コンカテマーを合成し、2工程のクローニング過程を用いて、コンカテマーをレポーターコンストラクトに導入した。まず、コンカテマーをエントリーベクター(TOPO(登録商標)、Invitrogen, CA)にクローニングした。第二の工程で、本質的には製造元によって記載されているように、Gateway(登録商標)LR Clonase(商標)システム(Invitrogen)を用いて、コンカテマーをエントリーベクターからMEL1レポーターに移した。CCR5-、IPP2K-、およびPOU5F1/Oct34-標的化ZFNの標的部位を含むレポーターコンストラクトを作製し、標準化に用いた。
【0093】
実施例2:酵母へのレポーターコンストラクトの組込み
69-1B株(S288Cバックグラウンド;MATα his3Δ200 lys2-128δleu2Δ1)へのレポーターコンストラクトの組込みは、記載されている通りに行なった(Voth et al. (2001) Nucleic Acids Res 29:E59-59)。正確な組込みは、以下のオリゴ:HO-L: 5'-TATTAGGTGTGAAACCACGAAAAGT-3'(配列番号:7);5'-ACTGTCATTGGGAATGTCTTATGAT-3'(配列番号:8);HO-R: 5'-attacgctcgtcatcaaaatca-3'(配列番号:9);および5'-CATGTCTTCTCGTTAAGACTGCAT-3'(配列番号:10)を用いたコロニーPCRによって確認した。
【0094】
実施例3:ZFN活性アッセイ
レポーターコンストラクトの標的部位における切断によってMEL1活性が回復することを示すために、以下の実験を行なった。SSAレポーターコンストラクトを、HOエンドヌクレアーゼの認識部位を含むように、上記のように人工的に作り出し、上記のように宿主細胞に組み込んだ。その後、細胞にHOエンドヌクレアーゼをコードする発現ベクターをトランスフェクトし、細胞をガラクトースの存在下または非存在下で培養した。
【0096】
表1に示されるように、MEL1活性は、HOエンドヌクレアーゼが存在し、かつレポーター遺伝子座にその標的が存在するときにのみ観察された。さらに、HO発現が誘導されないときには、自然発生的なMEL1回復事象がごくまれに生じたことを除けば、本質的に少しのMEL1遺伝子活性も観察されなかった。HOエンドヌクレアーゼ発現の誘導によって、試料中の本質的に100%の細胞がMEL1状態に変換された。
【0097】
実施例4:持続的な生物学的活性のあるNME特異的ZFNの同定
NME内の配列を認識するようにZFNを設計し、これらの設計されたNME ZFNをコードする配列を含むプラスミドを、本質的にUrnov et al. (2005) Nature 435(7042):646-651に記載の通りに構築した。このZFNをインビトロアッセイ(ELISA)で試験した。
図3は、NME結合性ZFNおよびインビトロでのそのDNA結合特性に関する情報を示す。
【0098】
インビボスクリーニングのために、ZFNのコード配列を、標準的なクローニング手順を用いて、ガラクトース誘導性発現ベクターに移した(Moehle et al. (2007) Proc Natl Acad Sci U S A 104:3055-3060;Mumberg et al. (1994) Nucleic Acids Res 22:5767-5768;Urnov et al. (2005) Nature 435:646-651)。
【0099】
NME1 cDNA(RZPD IRAUp969A091D6)標的部位をこのレポーターコンストラクトにサブクローニングし、得られるレポーターコンストラクトを、実施例2に記載されているような酵母株のゲノムに組み込んだ。
【0100】
A.レポーター活性
NME1標的化ZFN対をコードする発現コンストラクトを、Gietz and Woods, (2006) Methods Mol Biol 313:107-120に記載の通りに深いウェルブロック中でレポーター株に形質転換した。ペトリ皿の面倒な操作をなくすために、形質転換体のプールを液体培地中で選択した。簡潔に述べると、細胞を1mlのSC His-Leu培地に再懸濁し、30℃で48時間インキュベートした。形質転換体をさらに濃縮するために、1:10希釈のプールを新鮮培地中でさらに24時間インキュベートした。
【0101】
GAL1プロモーターを抑制解除するために、形質転換体のプールを、炭素源として2%ラフィノースを含む1mlのSC His-Leu培地中に1:10で希釈し、30℃で一晩インキュベートした。このラフィノース培養物を、2%ガラクトースを含む1mlのSC His-Leu培地中に1:10で希釈することにより、ZFN発現を誘導した。その後、細胞を様々な時間(典型的には2〜6時間)インキュベートした後、2%グルコースを添加して、発現を停止させた。その後、DSB修復およびレポーター遺伝子発現を可能にするために、細胞を一晩インキュベートした。
【0102】
レポーターシグナルを培養液中の細胞の量に対して標準化するために、ウェルブロックを分光光度法によって600nmで測定した。その後、この深いウェルブロックを3000gで5分間遠心分離して酵母細胞をペレット化し、10μlの培地を、Chen et al. (2004) Anal Biochem 335:253-259およびRyan et al. (1998) Mol Cell Biol 18:1774-1782に記載の通りに、Mel1活性についてアッセイした。
【0103】
レポーター遺伝子発現の結果を
図4Aに示す。ZFN対を棒の下に示す。各々の対について、一番左の棒は、示されたZFN対を導入する前のMel1活性を示し、左から二番目の棒は、示されたZFN対が細胞に導入されてから2時間後のMel1活性を示し、左から三番目の棒は、示されたZFN対が細胞に導入されてから4時間後のMel1活性を示し、一番右の棒は、示されたZFN対が細胞に導入されてから6時間後のMel1活性を示す。示されているように、活性のあるZFN対の非存在下ではMel1活性が見られない。さらに、ZFN対は全て、ある程度の活性があったが、このアッセイによって、最も活性の高い対の順位付けがなされた。
【0104】
B.毒性
様々なZFNの毒性を評価するために、ラフィノース培養物を、2%ガラクトースを含む1mlのSC His-Leu培地中に1:100で希釈することにより、ZFN発現を誘導した。その後、細胞を様々な時間(典型的には24〜30時間)インキュベートした。その後、この集団の増殖を、分光光度法により600nmで読み取ることによって決定した。
【0105】
ZFNの存在下での酵母細胞増殖を
図4Bに示す。ZFN対を棒の下に示す。各々の対について、一番左の棒は、示されたZFN対を導入する前のOD600を示し、左から二番目の棒は、示されたZFN対が細胞に導入されてから23時間後のOD600測定値を示し、左から三番目の棒は、示されたZFN対が細胞に導入されてから27時間後のOD
600を示し、一番右の棒は、示されたZFN対が細胞に導入されてから30時間後のOD600を示す。示されているように、酵母細胞は、ある種のZFN対の存在下で正常に増殖する。
【0106】
C.酵母スクリーニングはインビボ活性を予測する
その後、レポーター活性アッセイ(
図4A)で同定された様々な活性のあるZFN対をヒトK562細胞に形質転換し、Miller et al. (2007) Nat Biotechnol. 25(7):778-85に記載の通りに、それらがNME1遺伝子座での突然変異を誘導する能力を試験した。
【0107】
図5に示されるように、ヒト培養細胞株のNME1に対して最も活性の高いZFN対は、13674-13677である。さらに、このZFN対は、酵母細胞増殖に影響を及ぼさない(
図4B)最も活性の高い(
図4A)タンパク質の1つであることが上で同定された。
【0108】
ヒト細胞株における遺伝子修飾と関連する最も主な問題は、修飾された細胞が時間とともに徐々に失われるということである。ZFNに関して、例えば、培養9日後に、おそらく1つには非特異的ZFNの過剰発現と関連する毒性が理由で、遺伝子が修飾された細胞の割合が減少する。Miller et al. (2007) Nat Biotechnol. 25(7):778-85を参照されたい。したがって、酵母のレポーター選抜および毒性選抜から同定されたZFN対が、時間が経っても非毒性のままであることをさらに確認するために、K562細胞のヒト染色体の修飾の割合を、ZFN対13674-13677を導入した2日後および9日後に測定した。
【0109】
図6に示されるように、13674-13677 ZFN対のトランスフェクションの2日後(D2)に観察されたNME1遺伝子座の修飾の割合は、培養9日後(D9)に維持された。
【0110】
これらの結果は、本明細書に記載される酵母システムがインビボでのZFN活性を正確に予測し、さらに、どのZFNが持続的なシグナルを経時的に生むかということも正確に予測するということを示す。
【0111】
実施例5:持続的な生物学的活性のあるPD1特異的ZFNの同定
ZFNをヒトPD1遺伝子に対して組み立て、Miller et al. (2007) Nat. Biotechnol. 25:778-785および米国特許公開第20050064474号および国際特許公開WO2005/014791に記載されているようなELISAおよびCEL1アッセイによって試験した。
【0112】
この最初のインビトロ選抜から、2つのリードZFN対を同定し、その効率の改善を試みるために、精緻化を行なった。これらの対は、この遺伝子のそれぞれエキソン1および5を標的化する。精緻化された(改善された)タンパク質を、本質的に上記の実施例4に記載されているように、タイムコース実験で再試験した。結果を下の表2にまとめる。
【表2】
【0113】
表2に示されるように、細胞をエキソン5に対するZFNで処置することによって、より大きい割合の、ゲノムが編集された細胞がこの集団から失われるのに対し、エキソン1に対して設計されたZFNで処置された細胞のゲノム編集シグナルは、はるかに安定している。
【0114】
これらのZFNを、活性および毒性についての酵母システムでも試験した。簡潔に述べると、PD1 cDNA(NM_005018)をSSAレポーターコンストラクトにサブクローニングし、このアッセイを、実施例3に記載の通りに行なった。
【0115】
図7に示されるように、このインビボアッセイシステムによって、PD1 ZFNの活性がはっきりと確認され(
図7A)、エキソン5を標的化する全てのZFNの毒性も決定された(
図7B)。これらの結果は、ヒト細胞で検出されるシグナルの損失と相関する。さらに、エキソン1に対して設計されたZFNは、酵母増殖の障害を全く示さず、ヒト細胞でのシグナルを維持する。
【0116】
実施例6:生物学的活性のあるゼブラフィッシュZFNの同定
ZFNのパネルを、ゼブラフィッシュSLC24A5(「ゴールデン」)遺伝子およびノーテイル(「NTL」)遺伝子に対して組み立て、適当な標的配列を有するSSAレポーターコンストラクトを含む酵母宿主細胞における活性をスクリーニングした。本明細書と同日に出願された米国特許第________、「Genomic Editing in Zebrafish Using Zinc Finger Nucleases」も参照されたい。
【0117】
酵母の活性選抜および毒性選抜の結果を、
図9A(ゴールデンZFN活性);
図9B(ゴールデンZFN毒性);
図10A(ノーテイルZFN活性);および
図10B(ノーテイルZFN毒性)に示す。
【0118】
酵母選抜で同定されたZFNを、その後、ゼブラフィッシュ胚に注射した。ゴールデンZFNを発現する胚のみが、色素沈着の体細胞モザイク現象を示した(
図11)。同様に、NTL-ZFN ZFNを発現する胚のみが、二股尾(forked-tail)の表現型を示した(
図12)。
【0119】
したがって、本明細書に記載されるインビボアッセイシステムにより、ゼブラフィッシュで生物学的活性のあるZFNが同定された。
【0120】
実施例7:選択に基づく選抜を用いた活性のあるZFN変異体の同定
以下のように、陽性選択および陰性選択レポーター酵母株を用いて、活性のあるZFN変異体を選択した。レポーターコンストラクト(
図8)を作製した。これは、十分に特徴解析されたZFN(8266)のホモ二量体認識部位を含んでいた。8266の認識ヘリックスおよび標的配列については米国特許公開第20080159996号の表1を参照されたい。このコンストラクトは、実施例4に記載されているような中断されるMEL1遺伝子の間に対抗選択遺伝子(URA3)も含んでいた。このレポーターを含む酵母細胞では、活性のないZFNを含む細胞は5-FOAの存在下で殺傷され、この集団での活性のあるZFN変異体を含む細胞の選択的拡大を可能にする。同様に、活性のあるZFNを含む細胞は、ウラシルの非存在下で増殖することができない。
【0121】
ZFPとFokI切断ドメインの間に(長さおよび/またはアミノ酸残基が異なる)5つの異なるリンカー配列を含むZFNを調製し、上記の酵母選抜アッセイで試験した。野生型リンカー配列を有するZFN(8266)は活性があった。さらに、2つの中程度の活性のある変異体および2つの活性のない変異体が同定された。8266を含むZFNならびに2つの中程度の活性のある変異体および2つの活性のない変異体のプールを調製し、以下のような酵母対抗選択アッセイで試験した。
【0122】
ZFN変異体を等モル比で混合し、レポーター株を、実施例4の通りに形質転換した。ZFNの誘導を、実施例4と同様に、6時間と24時間行なった。16時間の回復期間の後、対抗選択剤5-FOAを含む培地で20時間、細胞を100倍希釈した。活性のあるZFNがURA3を切断していたことの確認として、細胞を、添加されるウラシルを欠く培地中に同様に希釈した。
図13の右部分から分かるように、活性のあるZFNを含む細胞(SBS 8266)は、ウラシルの非存在下では増殖することができなかった。
図13に示されるように、酵母増殖は、活性のあるZFNを用いてレポーター株を形質転換したときにのみ観察される。
【0123】
その後、細胞を回収し、トータルDNAを酵母集団から抽出し、大腸菌に再形質転換することによって、個々のプラスミドが得られた。12個のコロニーを無作為に取り、配列を決定した。12個のうち、9個の配列が野生型リンカーと一致し、3個の配列が中程度に活性のある変異体に対応したが、活性のない変異体に対応する配列はなかった。したがって、ZFN変異体の集団内で最も活性の高い変異体を特異的に濃縮することが可能であった。
【0124】
これらのデータは、生化学的活性のある変異体のセットから生物学的活性のあるZFN対を同定するための酵母システムの正当性を立証し、かつそれらの相対的特異性を決定するための毒性アッセイの使用も示す。
【0125】
本明細書で言及される特許、特許出願、および刊行物は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0126】
本開示は、理解を明確にするための例示および例としていくぶん詳細に提供されているが、本開示の精神または範囲を逸脱することなく、様々な変更および修正を行なうことができるということが当業者には明白であろう。したがって、前述の説明および実施例は、限定的であると見なされるべきではない。