【実施例】
【0022】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0023】
(1)固有粘度
1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒(フェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=40重量%:60重量%)を溶媒に用いて、35℃の恒温下オストワルト型粘度計を用いて測定した。
【0024】
(2)ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの酸成分・グリコール成分の組成
得られた共重合ポリエステルを溶媒(重トリフルオロ酢酸:重クロロホルム=50重量%:50重量%)に溶かして、
1H−NMR〔日本電子製 JEOL A−90(90MHz)〕により、酸成分としては1,4−ジメチルテレフタレート、2,6−ジメチルナフタレート、グリコール成分としては1,4−ジクロヘキサンジメタノール、エチレングリコールなどの指標となるプロトンを同定し、ピーク強度より含有量を測定した。
【0025】
(3)残存元素量の測定
得られたポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを加熱溶融して、円形ディスクを作成し、リガク製蛍光X線装置3270型を用いて、含有する金属元素量とリン元素量とを測定した。なお、反応物Aに由来しない金属元素量やリン元素量は、上記量から取り除いて、計算した。
【0026】
(4)示差走査熱量計の測定
TAインスツルメンツ社製Q20型示差走査熱量計を用いて測定した。測定条件は下記の通りである。
ポリエステルのサンプルを、示差走査熱量計を用い、窒素気流下、20℃/分の昇温条件にて300℃まで加熱し、300℃で2分間保持、溶融させたものを液体窒素中で急冷・固化させる(なお、試料の融点が300℃を超える場合、試料の融点+25℃まで加熱、2分間の保持を行なった)。
得られたポリエステルを、20℃/分の昇温条件にて、前に到達した温度になるまで加熱し、2分保持後、10℃/分の降温条件で走査して、現れる発熱、吸熱ピークを観測し、ガラス転移点(Tg)、昇温結晶化温度(Tci)、融点(Tm)、降温結晶化温度(Tcd)を測定した。
【0027】
(5)重合時の突沸
300mLの三ツ口フラスコを用いて、酸成分の合計仕込量が0.5mol、グリコール成分の合計仕込量が1.0molとなるように剤を添加して、酢酸マンガン・四水和物を酸成分に対して0.04mol%を添加してエステル交換反応を行なう。エステル交換反応後にフェニルホスホン酸を酸成分に対して0.05mol%添加し、さらにトリメリット酸チタンを酸成分に対して0.03mol%添加する。その後三ツ口フラスコを300℃のバスに浸して、10Kpa/minの速度で1KPaまで減圧して重合反応を進行している際に反応物が突沸してフラスコの口部を閉塞させる場合は「あり」として、突沸せずフラスコの口部を閉塞しない場合は「なし」とする。
【0028】
(6)フィルムの製膜性
溶融温度300℃にて押出機よりTダイを経てフィルム状に押出し、冷却ドラム上に流延し、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを130℃で加熱しながら縦方向へ3.0倍に延伸して、140℃で加熱しながら横方向へ4.0倍に延伸した後に230℃で30秒間熱固定させる製膜工程にて、安定に製膜できるか観察した。下記基準で評価した。
○:1時間以上安定に製膜できる
×:1時間以内に切断が発生し、安定な製膜ができない
【0029】
(7)溶融熱安定性
得られたポリマーを一旦ペレット状にし、140℃で6時間乾燥した後、大気圧下にて300℃の温度にて30分間溶融状態で攪拌をつづけた後に、ポリマーを回収し、ただちに氷水中で急冷した。そして、乾燥処理後で溶融処理前のポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの固有粘度(IV
0)と、溶融処理後のポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの固有粘度(IV
30)を測定した。そして、乾燥処理後で溶融処理前の固有粘度(IV
0)から溶融処理後の固有粘度(IV
30)を差し引いたものを固有粘度差(△IV)とした。この△IVが小さいほど溶融熱安定性に優れるといえる。なお、融点が300℃を超えるものについては、製膜などで問題があることから評価をしなかった。
【0030】
[実施例1]
2,6−ジメチルナフタレート(NDC)、1,4−ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、エチレングリコール(EG)とをモル比(NDC:DMT/CHDM:EG=80:20/140:60)の割合で、さらに酢酸マンガン四水和物を全酸成分に対し、0.040mol%となるようにエステル交換反応槽に仕込み、190℃まで昇温した。その後、240℃に昇温しながらメタノールを除去しエステル交換反応を終了した。
続いて、フェニルホスホン酸とトリメリット酸チタンとを、全酸成分に対し、それぞれ0.050mol%および0.030mol%となるように仕込んだ。なお、トリメリット酸チタンは、0.6重量%エチレングリコール溶液の状態で添加した。このようにして得られた反応生成物を重合反応槽へと移行した。重縮合反応槽内では昇温しつつ、圧力をゆっくりと減圧し、最終的に重縮合温度300℃、50Paの真空下で重縮合を行い、テレフタル酸共重合ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
得られたテレフタル酸共重合ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの特性を表1に示す。
【0031】
[実施例2〜9]
NDC,DMT,CHDM,EGの組成、残存元素量が表1の通りになるように仕込量を変えた以外には実施例1と同様の操作を行なった。ただし、実施例9についてはフェニルホスホン酸の添加と同時期にIrganox1010(チバ社製)を、全酸成分の重量に対して、0.5質量%添加した。
【0032】
[比較例1]
NDC,DMT,CHDM,EGの組成、残存元素量が表1の通りになるように仕込量を変えた以外には実施例1と同様の操作を行なった。ただし重縮合温度は310℃とした。
【0033】
[比較例2、3、5、6、8]
NDC,DMT,CHDM,EGの組成、残存元素量が表1の通りになるように仕込量を変えた以外には実施例1と同様の操作を行なった。
【0034】
[比較例4]
NDC,DMT,CHDM,EGの組成、残存元素量が表1の通りになるように仕込量を変えた以外には実施例1と同様の操作を行なった。ただし、重縮合反応については重合時の突沸を避けるため、合計仕込量が、実施例1に対して、70重量%となるようにして反応させた。
【0035】
[比較例7]
NDC,DMT,CHDM,EGの組成、残存元素量が表1の通りになるように仕込量を変えた以外には実施例1と同様の操作を行なった。ただし、リン化合物としてフェニルホスホン酸ではなく、リン酸トリメチル(構造式B)を使用した。
【0036】
【化2】
【0037】
[比較例9]
NDC,DMT,CHDM,EGの組成、残存元素量が表1の通りになるように仕込量を変えた以外には実施例1と同様の操作を行なった。ただし、重縮合温度は330℃とし、重合時の突沸を避けるため、合計仕込量が、実施例1に対して、70重量%となるようにして反応させた。
【0038】
【表1】
【0039】
表1中の、NDCは2,6−ジメチルナフタレート成分、DMTは1,4−ジメチルテレフタレート成分、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール成分、EGはエチレングリコール成分、Irg1010はIrganox1010(チバ社製)、Tgはガラス転移点(℃)、Tciは昇温結晶化温度(℃)、Tmは融点(℃)、Tcdは降温結晶化温度(℃)を意味する。