(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763363
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ワークの穴加工装置及びワークの穴加工方法
(51)【国際特許分類】
B23B 41/00 20060101AFI20150723BHJP
B23B 35/00 20060101ALI20150723BHJP
B23B 29/02 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
B23B41/00 B
B23B35/00
B23B29/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-32960(P2011-32960)
(22)【出願日】2011年2月18日
(65)【公開番号】特開2012-171026(P2012-171026A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】593186046
【氏名又は名称】株式会社新機械技研
(74)【復代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100084353
【弁理士】
【氏名又は名称】八嶋 敬市
(72)【発明者】
【氏名】村松 健司
【審査官】
五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−067290(JP,A)
【文献】
特開昭53−014486(JP,A)
【文献】
特開平01−205906(JP,A)
【文献】
特開平03−281112(JP,A)
【文献】
特開平04−304913(JP,A)
【文献】
特開平06−285708(JP,A)
【文献】
特開2004−106090(JP,A)
【文献】
特開2009−248291(JP,A)
【文献】
実公昭51−009118(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 41/00−41/02
B23B 27/00
B23B 29/02
B23B 35/00
B23B 39/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの穴を加工するための穴加工装置において、主軸と、前記主軸を内部に形成した空間に収容するための筒状のハウジングと、前記ハウジングの前記空間の複数箇所に備えられるものであって前記主軸を回転自在に保持する複数個の軸受と、前記主軸の先端付近に取り付けられるものであって前記ハウジングの外周よりも外側に突出した前記穴を加工するための切削手段とを有し、
前記ハウジングにおける前記切削手段に近い挿入部の前記空間に前記複数個の軸受のうちの前記切削手段に近い位置の軸受を備え、
前記挿入部と前記切削手段とを前記ワークの前記穴内に挿入しながら、前記挿入部は前記穴内に接触させずに前記切削手段で前記穴を加工することを特徴とするワークの穴加工装置。
【請求項2】
主軸と、前記主軸を内部に形成した空間に収容するための筒状のハウジングと、前記ハウジングの前記空間の複数箇所に備えられるものであって前記主軸を回転自在に保持する複数個の軸受と、前記主軸の先端付近に取り付けられるものであって前記ハウジングの外周よりも外側に突出した前記穴を加工するための切削手段とを有する穴加工装置を用いてワークの穴を加工する穴の加工方法であって、
前記ハウジングにおける前記切削手段に近い挿入部の前記空間に前記複数個の軸受のうちの前記切削手段に近い位置の軸受を備え、
前記挿入部と前記切削手段とを前記ワークの前記穴内に挿入しながら、前記挿入部は前記穴内に接触させずに前記切削手段で前記穴を加工することを特徴とするワークの穴加工方法。
【請求項3】
前記ワークに前記穴を複数個形成したものにおいて、
隣接する前記穴同士のピッチと同間隔で前記穴加工装置をイケールに取り付け、
前記各穴加工装置の前記主軸と前記軸受と前記ハウジングの前記挿入部とを前記各穴に挿入して、隣接する複数の前記穴を同時に前記各穴加工装置で加工することを特徴とする請求項2記載のワークの穴加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに形成した穴に中ぐり加工や精密加工を行うためのワークの穴加工装置及びワークの穴加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークに形成された穴を広げたり、穴に精密な加工を行ったりする穴加工装置が知られている(例えば特許文献1)。ここで、従来既知の中ぐり加工装置(穴加工装置)を
図2に基づいて説明する。中ぐり加工装置10は、駆動手段によって回転させられるスピンドル等の主軸12と、内部空間14を有し主軸12の一部をその内部空間14に収容するための軸頭本体16と、軸頭本体16の内部空間14に備えられるものであって、主軸12を回転自在に保持するための複列円筒ころ軸受18並びに複数の軸受20と、主軸12の一端側に固定されて主軸12と共に回転するボーリングバー22と、ボーリングバー22に取付けられる切削手段であるチップ24を有するものである。
【0003】
複数の軸受20は、間隔を開けて2箇所に備えられ、1箇所ごとに例えば2個の軸受20が隣接して備えられる。複列円筒ころ軸受18は、2箇所の軸受20を間にしてボーリングバー22の反対側に備えられる。内部空間14における2箇所の軸受20の間の軸方向に、円柱状の内側カラー26と外側カラー28とが備えられる。
【0004】
ボーリングバー22は、主軸12の一端側に着脱自在に取付けられるもので、主軸12と共に回転する。ボーリングバー22は、ワーク30に形成される穴32(32a,32b,32c)に挿入可能な円筒状の先端挿入部34を有している。先端挿入部34の自由端付近に側面に突出するチップ24が取付けられる。ボーリングバー22の回転中心軸からチップ24の横方向突出先端までの長さは、先端挿入部34の半径よりも大きいものに設定されている。また、ボーリングバー22の回転中心軸からチップ24の横方向突出先端までの長さは、ワーク30に形成された加工前の穴32の半径より大きく設定されている。
【0005】
穴32を中ぐり加工する場合には、ボーリングバー22(主軸12)を回転させながらその挿入先端部34をワーク30の穴32に入れて、チップ24で穴32の中ぐり加工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−210088
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の中ぐり加工装置では、ワーク30に形成される穴32の大きさに合わせたボーリングバー22を主軸12に着脱自在に取り付けている。主軸12の直径や主軸12を回転自在に保持する軸受20の直径や軸頭本体14の直径は、ワーク30の穴32の直径よりも充分大きい寸法に作られている。ワーク30に形成される穴32には、チップ24を取り付けたボーリングバー22(挿入先端部34)のみが挿入されるもので、主軸12や軸受20は穴32には挿入できないものであった。このように、軸受20が穴32に入ることができない結果、従来の中ぐり加工装置では、チップ24による穴32の切削ポイントからチップ24に一番近い軸受20の位置までの距離aは長くなって、切削剛性が低くなってしまうという欠点があった。
【0008】
これに対して、切削剛性を大きくしようとすると、主軸12の直径を大きくしなければならなかった。主軸12の直径を大きくしようとすると、加工装置全体(例えば軸受20や軸頭本体16)が大きくなるという別の問題が発生する。
【0009】
中ぐり加工装置(穴加工装置)を複数個並列に配置して、ワーク30に形成される加工穴32(32a,32b,32c)を2軸またはそれ以上の多軸で同時に中ぐり(穴)加工をしようとすると、ワーク30に形成される複数個の加工穴32(32a,32b,32c)のピッチは、(軸受20の外径+α(α=3〜5mm))以上の寸法でなければならない。しかし、中ぐり加工装置(穴加工装置)では、主軸12も軸受20も軸頭本体14も、ワーク30の穴32の中に入るものではないため、加工穴32のピッチが狭くなると、2軸またはそれ以上の多軸での同時の中ぐり加工を行うことができないという欠点があった。
【0010】
本発明は、装置全体を小さくすることができ、しかもワークの複数の穴の加工ピッチが狭い場合でもワークに2軸または多軸での穴の同時加工ができるワークの穴加工装置及びワークの穴加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るワークの穴加工装置は、ワークの穴を加工するための穴加工装置において、主軸と、前記主軸を内部に形成した空間に収容するための筒状のハウジングと、前記ハウジングの前記空間の複数箇所に備えられるものであって前記主軸を回転自在に保持する複数個の軸受と、前記主軸の先端付近に取り付けられるものであって
前記ハウジングの外周よりも外側に突出した前記穴を加工するための切削手段とを有し、前記ハウジングにおける前記切削手段に近い挿入部の前記空間に前記複数個の軸受のうちの前記切削手段に近い位置の軸受を備え、前記挿入部と前記切削手段とを前記ワークの前記穴内に挿入しながら
、前記挿入部は前記穴内に接触させずに前記切削手段で前記穴を加工することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係るワークの穴加工方法は、主軸と、前記主軸を内部に形成した空間に収容するための筒状のハウジングと、前記ハウジングの前記空間の複数箇所に備えられるものであって前記主軸を回転自在に保持する複数個の軸受と、前記主軸の先端付近に取り付けられるものであって
前記ハウジングの外周よりも外側に突出した前記穴を加工するための切削手段とを有する穴加工装置を用いてワークの穴を加工する穴の加工方法であって、前記ハウジングにおける前記切削手段に近い挿入部の前記空間に前記複数個の軸受のうちの前記切削手段に近い位置の軸受を備え、前記挿入部と前記切削手段とを前記ワークの前記穴内に挿入しながら
、前記挿入部は前記穴内に接触させずに前記切削手段で前記穴を加工することを特徴とするものである。本発明は、前記ワークに前記穴を複数個形成したものにおいて、
隣接する前記穴同士のピッチと同間隔で前記穴加工装置をイケールに取り付け、前記各穴加工装置の前記主軸と前記軸受と前記ハウジングの前記挿入部とを前記各穴に挿入して、
隣接する複数の前記穴を同時に前記各穴加工装置で加工することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主軸とその主軸を保持する軸受とがワークの穴内に入り込みながら穴を加工するため、主軸に取り付けられたチップとそのチップに一番近い軸受との距離を格段に短くすることが可能となる。これによって、切削剛性を高めることができ、主軸軸径を小さくすることが可能となり、主軸を保持する軸受や、その軸受を保持するハウジングを小さくすることができる。この結果、装置全体を小さくすることができ、省スペース化を達成することができる。
【0014】
更に、複数の穴が短いピッチで形成されているワークであっても、本発明の装置では主軸と軸受とを保持するハウジングをワークの穴に入れ込む大きさとすることから、2軸またはそれ以上の多軸の同時の穴加工が可能となる。2軸またはそれ以上の多軸の同時加工により、穴加工の加工時間を短縮することができ、単位時間でのワークの生産個数を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るワークの穴加工装置の一実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るワークの穴加工装置の一実施例を示す断面図である。
図1において
図2と同一符号は同一部材を示す。本発明に係るワークの穴加工装置40は、駆動手段(図示せず)によって回転させられるスピンドル等の主軸42と、その主軸を内部の空間44に収容するための筒状のハウジング46と、ハウジング46の内部の空間44に備えられるものであって、主軸42を回転自在に保持するために間隔を開けて3箇所に備えられる複数の軸受等の軸受48と、主軸42の先端付近に横方向に突出して取り付けられる切削手段であるチップ24を有している。
【0017】
間隔を開けて3箇所に備えられる複数の軸受48は、1箇所ごとに例えば2個の軸受48が隣接して備えられる。主軸42の自由先端に近い2箇所の軸受48の間の空間44の軸方向には、例えば外側カラー50と内側カラー52が備えられる。主軸42の自由先端に2番目に近い位置の軸受48と主軸42の自由先端から一番遠い位置の軸受48との間の空間44の軸方向には例えば内側カラー54が備えられる。
【0018】
筒状のハウジング46は、ワーク30に形成される加工穴32(32a、32b…)に挿入可能な直径の挿入部56(ハウジング46の一部分)を有する。この挿入部56は、ハウジング46においてチップ24に近い箇所であり、挿入部56(ハウジング46)に該当する位置の空間44内には、複数の軸受48のうち少なくともチップ24に近い位置の軸受48を備えている。複数の2箇所以上の軸受48を備えるのが望ましい。ハウジング46は、挿入部56以外の箇所において取り付け部材であるイケール58に固定される。ハウジング46の空間44には複数の軸受48が備えられ、複数の軸受48を介して主軸42はハウジング46に対して回転自在に取り付けられている。挿入部56に対応する空間44に幾つかの軸受48が備えられ、主軸42の自由先端側に近い位置の軸受48は、加工時にワーク30の加工穴32に挿入される位置となるように設定されている。
【0019】
主軸42の軸方向の自由先端は、筒状のハウジング46より外側に突出しており、ハウジング46より軸方向外側に突出した主軸42の自由先端付近にチップ24が取り付けられている。主軸42の回転中心よりチップ24の先端までの半径方向の長さRは、筒状のハウジング46の挿入部56の半径よりも長く、ワーク30に形成される加工前の穴32の半径より大きく設定されている。
【0020】
本発明では、ハウジング46の内側の空間44に複数箇所の軸受48を備え、ハウジング46の空間44内に主軸42を回転自在に備え、ハウジング46と幾つかの軸受48と主軸42とが、加工時にワーク30の穴32の中に挿入されるようにするものである。この結果、チップ24に一番近い位置の軸受(軸受)48とチップ24の取り付け位置との距離をAとすると、距離Aはワーク30の穴32の深さよりも充分短い距離となる。即ち、本発明におけるチップ24に一番近い位置の軸受48とチップ24の取り付け位置との距離Aは、
図2に示すチップ24に一番近い位置の軸受20とチップ24の取り付け位置との距離aと比べて格段に短くすることができる。この結果、本発明では、従来ものもと比べて切削剛性を高めることができる。
【0021】
切削剛性を高めることができるため、主軸42の軸径を小さくすることができ、その結果、機械装置を従来装置よりも小さくすることができ、従来装置よりも省スペース化を達成することができる。即ち、主軸42の軸径を小さくすることができるため、軸受48の外径とハウジング46の外径を小さくすることができ、ワーク30の穴32(32a,32b…)の中に主軸42やハウジング46を挿入することができる。
【0022】
本発明では、ハウジング46の挿入部56の半径は、主軸42の回転中心からチップ24の先端までの距離よりも短くする。また、ハウジング46の挿入部56の半径は、加工された穴32(32a,32b…)の内径よりも小さくなる。これによって、イケール58に固定される多数のハウジング46のピッチを、ワーク30に形成される複数個の穴32(32a,32b…)のピッチと同じピッチに配置することが可能となる。この結果、ワーク30に複数個の穴32(32a,32b…)が設けられている場合に、本発明では各穴加工装置40によって複数個の穴32(32a,32b…)を同時に加工することが可能となる。よって、本発明では、加工時間を短縮させることができ、加工部品の生産個数を増加させることができる。
【符号の説明】
【0023】
30 ワーク
32 穴
40 穴加工装置
42 主軸
44 空間
46 ハウジング
48 玉軸受
56 挿入部
58 イケール