特許第5763376号(P5763376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763376
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】液体ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   F04D29/42 A
   F04D29/42 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-57732(P2011-57732)
(22)【出願日】2011年3月16日
(65)【公開番号】特開2012-193651(P2012-193651A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】392008437
【氏名又は名称】株式会社久保田鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久
(74)【代理人】
【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実
(74)【代理人】
【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也
(74)【代理人】
【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100131901
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 雅典
(74)【代理人】
【識別番号】100132012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩下 嗣也
(74)【代理人】
【識別番号】100141276
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 康二
(74)【代理人】
【識別番号】100143409
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100157093
【弁理士】
【氏名又は名称】間脇 八蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(74)【代理人】
【識別番号】100163197
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100163588
【弁理士】
【氏名又は名称】岡澤 祥平
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】河崎 勲
(72)【発明者】
【氏名】小西 宏征
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−103289(JP,A)
【文献】 実開平07−010500(JP,U)
【文献】 特開2010−111045(JP,A)
【文献】 特公平02−038377(JP,B2)
【文献】 特開平05−125950(JP,A)
【文献】 特開平06−299999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを軸受を介して回転自在に支持する第1ハウジングと、
前記シャフトの一端に固定されたインペラと、
前記第1ハウジングの前記インペラ側の開口端面に結合された第2ハウジングと
を備えた液体ポンプであって、
前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングは、一次射出により形成された射出成形体で構成されており、
前記軸受及び前記シャフトは、前記第1ハウジングにインサート成形により一体成形されたものであり、
前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングは、それぞれの開口端面が突き合わされて、二次射出により該開口端面に設けられた環状溝部に充填された樹脂材によって互いに結合されており、
前記環状溝部に充填された前記樹脂材は、前記環状溝部に連通し、前記開口端面に沿って、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの外周面まで延在する連通孔にも充填されている、液体ポンプ。
【請求項2】
前記樹脂材は、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングの射出成形体と同じ材料からなる、請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項3】
前記第2ハウジングの前記第1ハウジングと反対側の開口部の内径は、前記インペラの外径よりも大きい、請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項4】
前記軸受、前記シャフト、及び前記インペラは、前記第1ハウジングにインサート成形により一体成形されたものである、請求項1に記載の液体ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のハウジングを備えた液体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
水冷エンジンの冷却システム等に使用されるウォータポンプは、シャフトの一端にインペラが取り付けられ、他端にエンジン等の動力源が連結されるとともに、その中央部分が、軸受を介してハウジングに回転自在に支持されている。そして、インペラと軸受との間にシール部材を介装して、ハウジングのインペラ側には、ポンプ室を形成するカバーが取り付けられている。
【0003】
従来のウォータポンプは、シャフト、軸受、インペラ等を内装するハウジング及びカバーは、それぞれ別体で形成され、両者をボルトで締結するよう構成が一般的であった。
【0004】
しかしながら、このような従来の構成では、ボルトの締結等の組立工数が増えるため、コストアップに繋がる。また、ハウジングとカバーとを樹脂で形成すれば軽量化が図られるが、ボルト締結部に金属ブッシュを挿入する工程がさらに加わるため、コストダウンには繋がらない。
【0005】
そこで、組立工数を低減するために、特許文献1には、ハウジングとカバーとを樹脂で一体成形する製造方法が記載されている。具体的には、シャフト、軸受、インペラ等を組み付けたサブ組立体を作成した後、このサブ組立体を金型に入れて、射出成形により、渦巻室(ポンプ室)の形状に合わせた中子を形成する。その後、サブ組立体と中子とを金型に入れて、射出成形により、ハウジングとカバーとを一体成形し、最後に、中子をその材料の溶融温度以上で加熱することによって中子を溶出させて渦巻室を形成する。これにより、シャフト、軸受、インペラ等が内装された状態で、ハウジングと蓋とを一体成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−299999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたウォータポンプの製造方法では、サブ組立体に中子を一体成形するための金型と、サブ組立体と中子とが内装された状態で、ハウジングとカバーとを一体成形するための金型とを別個に用意する必要があり、工程が複雑になるとともに、金型コストが上昇するという問題がある。また、最初の射出成形で形成する中子は、後の射出成形で一体形成するハウジングとカバーよりも、融点の低い樹脂材料を用いる必要があり、材料選択に制限がある。さらに、中子を溶出させて渦巻室を形成するため、中子の溶出時に、渦巻室を形成するハウジングやカバーの内壁面が粗面化されて、流路抵抗が増加するという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その主な目的は、簡単な工程で製造でき、流路抵抗が小さく、ポンプ効率の向上した液体ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液体ポンプは、シャフトを軸受を介して回転自在に支持する第1ハウジン
グと、シャフトの一端に固定されたインペラと、第1ハウジングのインペラ側の開口端面に結合された第2ハウジングとを備え、第1ハウジング及び第2ハウジングは、一次射出により形成された射出成形体で構成されており、軸受及びシャフトは、第1ハウジングにインサート成形により一体成形されたものである。そして、第1ハウジング及び第2ハウジングは、それぞれの開口端面が突き合わされて、二次射出により開口端面に設けられた環状溝部に充填された樹脂材によって互いに結合されており、環状溝部に充填された樹脂材は、環状溝部に連通し、開口端面に沿って、第1ハウジング及び第2ハウジングの外周面まで延在する連通孔にも充填されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成により、射出成形で形成した第1ハウジング及び第2ハウジングが、その開口端面に設けられた環状溝部に充填された樹脂材によって互いに結合されているので、シャフト、軸受、及びインペラを内装するハウジングが一体化された構成の液体ポンプを容易に得ることができる。これにより、軽量でコストの低減された液体ポンプが実現できる。
【0011】
また、環状溝部に充填された樹脂材は、開口端面に沿って、第1ハウジング及び第2ハウジングの外周面まで延在しているので、第1ハウジング及び第2ハウジングの結合状態を外部から視認することができる。これにより、品質の安定した液体ポンプを実現することができる。また、第1ハウジング及び第2ハウジングを結合する樹脂材の結合面積が大きくなるので、第1ハウジング及び第2ハウジングの溶着強度が高まり、液密性の高い液体ポンプを実現することができる。加えて、第1ハウジング及び第2ハウジングを樹脂材で溶着する際、環状溝部に充填される樹脂材は、開口端面に沿って、第1ハウジング及び第2ハウジングの外周面まで導出されるので、樹脂材の一部が第1ハウジング及び第2ハウジングの内周面まで染み出すのを抑制することができる。これにより、ポンプ室(渦巻室)を形成するハウジングの内壁面には、樹脂の染み出しによるバリが生じないため、ポンプ室内の流路抵抗を低減することができ、ポンプ効率の向上した液体ポンプを実現することができる。
【0012】
さらに、ポンプ室は、従来のように中子を溶出して形成することなく、通常の射出成形により形成したハウジング内に形成されるので、ハウジングの内壁面を滑らかにすることができる。これにより、ポンプ室内の流路抵抗をさらに低減することができる。
【0013】
また、第1ハウジング及び第2ハウジングは、一次射出により形成された成形体からなり、樹脂材は、二次射出により環状溝部に充填されたものであることにより、第1ハウジング及び第2ハウジングの結合を、一次成形品である第1ハウジング及び第2ハウジングを金型で形成した後、第1ハウジング及び第2ハウジングの接合面(開口端面)が対向するように金型をスライドさせ、その接合面の周囲(環状溝部)に樹脂を二次射出させることにより行うことができる。その結果、簡単な工程で、シャフト、軸受、及びインペラを内装した状態で、一体化されたハウジングが形成できるため、簡単な工程で製造でき、コスト低減された液体ポンプを実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な工程で製造でき、流路抵抗が小さく、ポンプ効率の向上した液体ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態における液体ポンプの構成を示した断面図である。
図2】(a)及び(b)は、第1ハウジング及び第2ハウジングを形成する方法を示した断面図である。
図3】(a)は、第1ハウジング及び第2ハウジングを結合する方法を示した断面図で、(b)はその部分拡大図である。
図4】第1ハウジング及び第2ハウジングが一体成形されたハウジング構造の一部を示した半断面斜視図である。
図5】液体ポンプの組み付け方法を示した断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態における第1ハウジングの形成方法を示した断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態における液体ポンプの構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における液体ポンプ100の構成を模式的に示した断面図である。なお、本発明における液体ポンプ100は、例えば、水冷エンジンの冷却システムに冷却水を循環させるウォータポンプ等に適用できるが、これに限定されず、ポンプ室内でインペラが回転することにより、水等の液体を吸入、吐出して利用するポンプに適用することができる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態における液体ポンプ100は、シャフト10を軸受11を介して回転自在に支持する第1ハウジング20と、シャフト10の一端に固定されたインペラ30と、第1ハウジングのインペラ30側の開口端面に結合された第2ハウジング21とを備えている。そして、第1ハウジング20及び第2ハウジング21は、射出成形体で構成されており、軸受11及びシャフト10は、第1ハウジング20にインサート成形により一体成形されたものである。また、第1ハウジング20及び第2ハウジング21は、後述する方法により、それぞれの開口端面が突き合わされて、開口端面に設けられた環状溝部に充填された樹脂材23によって互いに結合されている。ここで、環状溝部に充填された樹脂材23は、開口端面に沿って、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の外周面まで延在している。
【0019】
ハウジング20、21内には、インペラ30を囲むように渦巻状のポンプ室22が形成され、第2ハウジング21の第1ハウジング20と反対側の開口端部には、液体をポンプ室22内に導くための管(不図示)を結合するコネクタ40が結合される。また、軸受11とインペラ30との間には、シャフト10に圧入されたメカニカルシール31が配設されており、これにより、軸受11がポンプ室22に対して密閉されている。また、シャフト10の他端には、ボス部50を介してプーリ51が固定される。このプーリ51には、例えば、エンジンのクランクシャフトからタイミングベルトを介して動力が伝達されて、シャフト10及びインペラ30が回転される。これにより、吸入口41から吸入された液体は、ポンプ室22内に流入し、インペラ30の回転による遠心力を得て、第2ハウジング21に設けられた吐出口(不図示)から吐き出される。
【0020】
次に、図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)を参照しながら、本実施形態における液体ポンプ100の製造方法を説明する。ここで、図2(a)、(b)は、第1ハウジング20及び第2ハウジング21を形成する方法を示した断面図で、図3(a)は、第1ハウジング20及び第2ハウジング21を結合する方法を示した断面図で、図3(b)は、図3(a)の矢印Aの部分の拡大図である。
【0021】
まず、図2(a)に示すように、金型60、61内に、軸受11が組み付けられたシャフト10をインサートして、キャビティ20a内に樹脂を注入して、第1ハウジング20を射出成形する。同じく、図2(b)に示すように、金型60、61内のキャビティ21aに樹脂を注入して、第2ハウジング21を射出成形する。なお、金型60、61には、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の接合面(開口端面)となる部位に、突起部60a、61aをそれぞれ形成しておくことによって、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の接合面に、後述する環状溝部が形成される。
【0022】
次に、図3(a)に示すように、金型60、61のいずれかをスライドさせて、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の接合面が対向するように配置する。そして、図3(b)に示すように、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の接合面に形成された環状溝部24に、樹脂を二次射出により注入することによって、第1ハウジング20及び第2ハウジング21が、環状溝部24に充填された樹脂材によって結合される。これにより、シャフト10及び軸受11が内装された状態で、一体化されたハウジング20、21が形成される。
【0023】
ここで、図3(b)に示すように、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の接合面には、環状溝部24に加えて、これに連通し、接合面に沿って第1ハウジング20及び第2ハウジング21の外周面まで延びる連通孔25が形成されている。これにより、環状溝部24に注入された樹脂材は、連通孔25を介して、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の外周面まで流出される。
【0024】
図4は、第1ハウジング20及び第2ハウジング21が一体成形されたハウジング構造の一部を示した半断面斜視図である。図4に示すように、環状溝部24に充填された樹脂材23は、開口端面に沿って、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の外周面まで延在している。これにより、第1ハウジング及び第2ハウジングの結合状態を、外周面まで延在した樹脂材23bによって、外部から容易に視認することができる。その結果、品質の安定した液体ポンプ100を実現することができる。
【0025】
また、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の結合は、環状溝部24に充填された樹脂材23に加えて、連通孔25に充填された樹脂材23aによってもなされるため、結合面積を大きくすることができる。これにより、第1ハウジング及び第2ハウジングの溶着強度が高まり、液密性の高い液体ポンプ100を実現することができる。
【0026】
加えて、第1ハウジング20及び第2ハウジング21を樹脂材で溶着する際、環状溝部24に充填される樹脂材23は、開口端面に沿って、第1ハウジング20及び第2ハウジング21の外周面まで導出されるので、樹脂材23の一部が第1ハウジング20及び第2ハウジング21の内周面まで染み出すのを抑制することができる。これにより、ポンプ室22を形成するハウジング20、21の内壁面には、樹脂材23の染み出しによるバリが生じないため、ポンプ室22内の流路抵抗を低減することができ、ポンプ効率の向上した液体ポンプ100を実現することができる。
【0027】
図5は、液体ポンプ100の組み付け方法を示した断面図である。図5に示すように、シャフト10及び軸受11が内装されて一体的に形成されたハウジング20、21に、メカニカルシール31及びインペラ30を組み付けることによって、図1に示した液体ポンプ100が完成される。組み付けは、例えば、メカニカルシール31及びインペラ30の内周面を、シャフト10の外周面に圧入することによって行うことができる。なお、このとき、第2ハウジング21の第1ハウジング20と反対側の開口部21aの内径を、インペラ30の外径よりも大きくしておくことが好まし。これにより、インペラ30を、第2ハウジング21の開口部21aからシャフト10に容易に圧入することができる。
【0028】
以上説明したように、本発明における液体ポンプ100は、射出成形で形成した第1及び第2ハウジング20、21が、その開口端面に設けられた環状溝部24に充填された樹脂材23によって互いに結合されているので、シャフト10、軸受11、及びインペラ30を内装するハウジング20、21が一体化された構成の液体ポンプ100を容易に得ることができる。これにより、軽量でコストの低減された液体ポンプが実現できる。
【0029】
また、環状溝部24に充填された樹脂材23は、開口端面に沿って、第1及び第2ハウジング20、21の外周面まで延在しているので、第1及び第2ハウジング20、21の結合状態を外部から視認することができる。これにより、品質の安定した液体ポンプ100を実現することができる。
【0030】
また、第1及び第2ハウジング20、21を結合する樹脂材23の結合面積が大きくなるので、第1及び第2ハウジング20、21の溶着強度が高まり、液密性の高い液体ポンプ100を実現することができる。
【0031】
加えて、第1及び第2ハウジング20、21を樹脂材23で溶着する際、環状溝部24に充填される樹脂材23は、開口端面に沿って、第1及び第2ハウジング20、21の外周面まで導出されるので、樹脂材23の一部が第1及び第2ハウジング20、21の内周面まで染み出すのを抑制することができる。これにより、ポンプ室22を形成するハウジング20、21の内壁面には、樹脂材23の染み出しによるバリが生じないため、ポンプ室22内の流路抵抗を低減することができ、ポンプ効率の向上した液体ポンプ100を実現することができる。
【0032】
さらに、ポンプ室22は、従来のように中子を溶出して形成することなく、通常の射出成形により形成したハウジング20、21内に形成されるので、ハウジング20、21の内壁面を滑らかにすることができる。これにより、ポンプ室22内の流路抵抗をさらに低減することができる。
【0033】
また、第1及び第2ハウジング20、21の結合を、一次成形品である第1及び第2ハウジング20、21を金型60、61で形成した後、第1及び第2ハウジング20、21の接合面(開口端面)が対向するように金型60、61をスライドさせ、その接合面の周囲(環状溝部24)に樹脂を二次射出させることにより行うので、簡単な工程で、シャフト10、軸受11、及びインペラ30を内装した状態で、一体化されたハウジング20、21が形成できる。これにより、簡単な工程で製造でき、コスト低減された液体ポンプ100を実現することができる。
【0034】
なお、本発明において、第1及び第2ハウジング20、21、並びに環状溝部24内に充填される樹脂材23の材料は特に制限されないが、二次射出により形成する樹脂材23を、第1及び第2ハウジング20、21の射出成形体と同じ材料にすることによって、材料コストの低減等を図ることができる。
【0035】
また、第1及び第2ハウジング20、21の構造は特に制限されず、液体ポンプに要求される仕様に応じて、適宜その構造を決めればよい。
【0036】
(第2の実施形態)
本発明における液体ポンプは、シャフト10、軸受11、メカニカルシール31、及びインペラ30が内装された状態で一体化されたハウジング20、21で構成されるが、第1の実施形態で説明した液体ポンプでは、メカニカルシール31及びインペラ30が、シャフト10及び軸受11が内装された状態で一体化されたハウジング20、21を形成した後に、当該ハウジング20、21のシャフト10に組み付けられたものである。
【0037】
本発明の第2の実施形態にける液体ポンプは、シャフト10、軸受11、メカニカルシール31、及びインペラ30をインサート成形により一体成形した第1ハウジング20を、二次射出による樹脂材23で第2ハウジング21と結合して構成したものである。
【0038】
図6は、本実施形態における第1ハウジング20の形成方法を示した断面図である。
【0039】
図6に示すように、金型60、61内に、軸受11、メカニカルシール31及びインペラ30を組み付けたシャフト10をインサートして、キャビティ20a内に樹脂を注入して、第1ハウジング20を射出成形する。このとき、軸受11、メカニカルシール31及びインペラ30とキャビティ20aとの間には、略円筒状のリング70が挿入されている。このリング70の一端は、金型60の上面60bに当接しており、他端は、金型61の上面61bに当接している。これにより、軸受11、メカニカルシール31及びインペラ30は、リング70によってキャビティ20aと隔離されるため、キャビティ20a内に注入される樹脂が、メカニカルシール31及びインペラ30側に流出するのを防止することができる。また、リング70を熱伝導の小さい材料で構成することによって、キャビティ20a内に注入される溶融樹脂の熱が、軸受11、メカニカルシール31及びインペラ30に伝わるのを抑制することができる。このリング70による断熱は、特に、メカニカルシール31が、ゴム等の耐熱性の低い材料で構成されている場合に有効となる。
【0040】
図7は、シャフト10、軸受11、メカニカルシール31、及びインペラ30を一体化して形成した第1ハウジング20を、二次射出による樹脂材23で第2ハウジング21と結合して構成された液体ポンプの構成を示した断面図である。ここで、第2ハウジング21は、図2(b)に示した方法と同様の方法で形成することができる。また、第1ハウジング20と第2ハウジング21の結合とは、図3(a)に示した方法と同様の方法で形成することができる。
【0041】
このような方法で形成された液体ポンプは、一体化されたハウジング20、21を形成した後に、インペラ30等をシャフト10に組み込む工程が不要となるため、第2ハウジング21の開口部21aの内径を、インペラ30の外径よりも大きくする必要はない。そのため、第2ハウジング21の設計自由度が増すため、例えば、冷却システムの構成に合わせて、吸入口等の位置を設定することができる。
【0042】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態において、シャフト10及びインペラ30の回転は、エンジン等の外部の動力で駆動する構成の液体ポンプについて説明したが、ハウジング20、21内にシャフト10及びインペラ30の回転を駆動するモータを内装した構成の電動ポンプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の液体ポンプは、例えば、エンジン冷却用のウォータポンプに有用である。
【符号の説明】
【0044】
10 シャフト
11 軸受
20 第1ハウジング
20a キャビティ
21 第2ハウジング
21a キャビティ
22 ポンプ室
23 樹脂材
24 環状溝部
25 連通孔
30 インペラ
31 メカニカルシール
40 コネクタ
41 吸入口
50 ボス部
51 プーリ
60、61 金型
70 リング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7