(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シースが、外科手術用縫合糸が目的の生物環境に置かれるまで生物細胞の流出を妨害するかまたは未然に防ぐ生分解性成分をさらに含む、請求項1記載の外科手術用縫合糸。
シースが、エマルジョン、懸濁液、液体、またはゲルと組み合わせた多孔性構築物、編物構築物、織物構築物、不織布構築物またはフィルム型構築物を含む、請求項1記載の外科手術用縫合糸。
支持(bearing)部位および連続するリーダー(leader)部位をさらに含み、該支持部位が、治療的に有効なレベルの生物細胞を含有するある長さの縫合糸材料を含む、請求項1記載の外科手術用縫合糸。
生物細胞が幹細胞、前駆細胞(progenitor cells)、および前駆細胞(precursor cells)からなる群より選択される、請求項1記載の外科手術用縫合糸。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
外科手術用縫合糸は広範囲の医療処置においてよく用いられ、皮膚、内部器官、血管、およびヒト身体の他の全ての組織が損傷または外科手術によって切り離された後に、これらをつなぎ止める目的で用いられることが多いが、これに限らない。組織留め具として機能することに加えて、縫合糸および他の細長い糸状の医療装置は、標的組織部位で新たな組織が成長するための、または新たな組織が成長する間に、例えば、腱修復において、組織スキャフォールドまたは構造支持体として、例えば、腱修復における組織スキャフォールドまたは構造支持体として機能することができる。
【0004】
縫合糸は、モノフィラメントからマルチフィラメント、織り糸構造および編み糸構築物まで、別個の糸状材料として、または針と組み合わせた一体型ユニットとして多種多様な形で入手することができる。縫合糸は、知的所有権の下にある多くのポリマーおよび複合材を含む非吸収材料、例えば、セルロース(綿、リネン)、タンパク質-セルロース(絹)、加工コラーゲン(ネコ消化管)、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド(「アラミド」)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetraflourethylene)、鋼、銅、銀、アルミニウム、様々な合金などから、生体吸収性(または生分解性もしくは生体内腐食性)合成材料、例えば、グリコール酸および乳酸のポリマーおよびコポリマーまでの多種多様な生体適合材料から製造することができる
1234。縫合糸を除去するために追加の外科的処置(およびこれに関連する生物学的破壊)が不要になるので、後者の生体吸収性材料の使用が好ましいことが多い。
1 Middleton, John et al., 「Synthetic Biodegradable Polymers as Medical Devices」, Medical Plastics and Biomaterials Magazine (March, 1998)(非特許文献1)
2 Shalaby, W et al., 「Absorbable and biodegradable polymers」, CRC Press, ISBN:0849314844 (2003)(非特許文献2)
3 Kotwal VB et al., 「Biodegradable polymers: Which, when and why?」, Indian J Pharm Sci, 69 (5): 616-625 (2007)(非特許文献3)
4 Williams et al. (2005)への米国特許第6,838,493号(特許文献1)
【0005】
好ましい縫合糸材料は生体適合性であることに加えて、優れた引張り強さを有し、末端を止める(例えば、結ぶまたは結び目を作る)手段と適合し、最低限の摩擦または摩耗で縫合中に組織を貫通できなければならない。また、皮膚または体液の浸出が問題となり得る他の障壁を縫合糸が貫通する場合、ウィッキング特性の少ない縫合糸、例えば、疎水性の表面特性を有する縫合糸が好ましい。だが、これらの望ましい取り扱い性の他に、免疫系によって必ず「異物」と認識される材料である縫合糸が炎症応答を誘導せず、感染を促進しないことも望ましい。さらに好ましいものは、炎症および感染を積極的に予防または阻害し、創傷を閉じるだけでなく完全治癒に積極的に寄与する縫合糸である。例えば、傷ついた組織の構造支持体となることに加えて、組織スキャフォールドが付着および侵入してくる細胞と相互作用し、例えば、増殖因子およびサイトカインなどの生理活性分子を放出することによって、細胞増殖および新組織の発生を効果的に誘導することも望ましい[参照により本明細書に組み入れられる、Tessmar, Joerg et al., 「Matrices and Scaffolds for Protein Delivery in Tissue Engineering」, Advanced Drug Delivery Reviews, 59 (4-5): 274-291 (May, 2007)(非特許文献4)を参照されたい]。
【0006】
基礎材料および特定の構築物の選択によって望ましい特性が全て得られない場合、縫合糸を、抗菌性、摩擦性、生体適合性、および組織成長または組織修復を促進する特性などがあるが、これに限定されない、さらなる利益を実現する材料でコーティングすることが当技術分野において公知である。特に関心があるものは、増殖因子などの生理活性分子のコーティングを縫合糸に含めることである。例えば、様々な増殖因子分子の生分解性マトリックスでコーティングされた縫合糸を使用すると、適用部位での組織再生が改善されることが示されている[Dines, Joshua et al., 「Biologics in Shoulder Surgery: Suture Augmentation and Coating to Enhance Tendon Repair」, Techniques in Orthopaedics: Biologics in Shoulder Surgery, vol. 22(1):20-25, (March 2007)(非特許文献5)]。しかしながら、合成生産から導入された、選択された増殖因子は有益であることが分かっているが、生産に費用がかかり、患者において有害反応をもたらすことがある。さらに、選択された成分混合物は、内因性組織および体液に関連する、必要な治療活性範囲を有さない場合がある。
【0007】
内因性材料について言えば、移植材料、例えば、骨髄および脂肪組織、ならびにこれらから単離された特定の成分、例えば、増殖因子および幹細胞または前駆細胞も縫合糸および組織スキャフォールドに関して有用である。機構およびモダリティーが完全に理解されていない場合が多い合成材料とは対照的に、内因性の組織、細胞、および分子の移植片は、組織成長の促進において相互依存的(symbiotic)相乗的効果をもたらすことが知られている。移植片および移植材料は対象となるレシピエントから得られてもよく(自家移植片)、適合ドナーから得られてもよいが(同種異系移植片)、前者には、生体適合性が生来よりあること、利用および入手がしやすいこと、ならびにコストが低いことなど、いくつかの明確な利点がある。
【0008】
移植材料に関して、幹細胞は広範囲の組織に分化できるだけでなく、他の生物プロセスを誘発して、他の細胞の分化、特定の組織領域への細胞の動員、および/または免疫調節システムの調整に影響を及ぼす化学シグナルを送り(それによって、迅速な治癒を容易にし、腫脹および瘢痕組織形成を弱めるというさらなる潜在的な利益を有する)ので特に関心が高い。
【0009】
当技術分野には、このような治療剤および/または生理活性材料を有する縫合糸の例が数多くあるが(例えば、Brotz et al.への米国特許第6,264,675号(特許文献2)ならびにOlmo et al.への米国特許出願公開第2006/0047312号(特許文献3)、Stopek et al.への同第2008/0171972号(特許文献4)を参照されたい。これらは全て参照により本明細書に組み入れられる)、この分野の技術は、
表面コーティング、特に、縫合糸の表面に、抗菌性をもたらす、または限られた数の所定のタイプの生理活性分子、例えば、無菌生産環境において生産された特定の増殖因子、多くの場合、組換え法によって生産された特定の増殖因子をもたらす表面コーティングに焦点を当てている。しかしながら、このような前もって作られた合成コーティングシステムは、関心対象のコーティングが挿入中にかなり除去されるので(例えば、隣接する組織との接触によってぬぐい取られる、もしくははがされるので)、または導入後に急速に分散されるので、生物環境の状況において機能しないことが多い。縫合糸(およびこれに関連する生理活性材料)が有益な効果を発揮するのに必要な期間にわたって、標的部位に十分な濃度および密度の生理活性材料が維持されるのはめったにない。縫合糸表面に過剰な生理活性材料を提供することによって、この作用を打ち消すことができるが、生理活性材料の局所濃度が高くなるので、有害な、さらには毒性のある作用をもたらすことがある。さらに、ある特定の生理活性材料、特に、天然増殖因子および合成増殖因子の製造費用が高価であることを考えれば、これは費用対効果の大きい解決策ではない。
【0010】
前もって作られたコーティングシステムはまた前記の欠点に加えて、対象となるレシピエントから抽出されたものでも(自家移植片)、適合ドナーから抽出されたものでも(同種異系移植片)、移植片および移植材料と使用するのに容易に合わせることができない。移植材料を送達するのに現在利用可能な選択肢は、一般に、材料を関心対象の領域に直接注射することを伴うか、または材料は挿入前に骨移植片または骨移植片代替品に注入される。しかしながら、どちらの場合でも、典型的には、関心対象の領域に材料を固定化するシステムは無い。
【0011】
従って、本発明は、関心対象の生理活性材料、例えば、幹細胞および/または治療剤を外科手術用留め具および組織スキャフォールド(本明細書において総称して「縫合糸」と呼ばれる)の中で一体化することによって、このような材料を標的組織部位に長期間、制御送達する当技術分野における必要に対処する。本発明は、このような生理活性分子を捕獲および送達するだけでなく、対象となるレシピエントから抽出された組織および体液(すなわち、自己由来移植材料)でも、選択されたドナー生物から抽出された組織および体液(すなわち、同種異系移植材料、同種移植材料、または異種移植材料)でも、合成材料または細胞培養から生産された材料(組換え移植材料)でも、これらの利用を容易にする独特の配置も提供する。特に、本発明の医療装置構築物、前駆体、キット、および包装システムの態様には、(i)(前もって作られた状態で、遠く離れて製造するのとは対照的に)医療従事者が、患者から抽出された生理活性材料を縫合糸構築物の内部コアに挿入できること;(ii)幹細胞および前駆細胞ならびに関心対象の他の細胞を、有用な他の材料に近接して、および必要な透過性および生分解性を有する外部シースの内部に、関心対象の箇所で固定化できること;ならびに(iii)組み立てられた縫合糸の可撓性全体に影響を及ぼすことなく材料が固定化されるように、生理活性材料を含有する生分解性粒子を内部コア内に組み込むことができることを含めて、現行技術を上回る独特のかつ価値ある利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の詳細な説明および好ましい態様
本発明は、生理活性材料の時期尚早な除去もしくは移動を阻害するために、生理活性材料を含む縫合糸コアの上に保護外部シースまたはフィルムが配置された、縫合糸および縫合糸前駆構築物に関する。適切なシース構造、適切な縫合糸コア構造、前記構造に生物細胞および治療剤を固定化する適切な手段、前記構造に入っている治療ための薬剤の組み合わせ、薬剤を構造およびアセンブリ構造に送達するための方法、本発明の要素に関連する使用方法およびキットおよび包装が、本明細書において詳述される。
【0035】
本明細書に記載のものと類似のまたは同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法、装置、および材料を今から説明する。しかしながら、本発明の材料および方法を説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の分子、組成物、方法、またはプロトコールに限定されず、これらは日常的な実験および最適化によって異なり得ることが理解されるはずである。説明において用いられる専門用語は、特定のバージョンまたは態様を説明しているのにすぎず、本発明の範囲を限定することを目的とせず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるはずである。
【0036】
特別の定めのない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。しかしながら、コンフリクトの場合、定義を含む本明細書は調整される。従って、本発明に関して、以下の定義が適用される。
【0037】
A.本発明の要素:
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に文脈によってはっきりと規定されていない限り複数の指示物を含む。従って、例えば、「1つの分子」についての言及は複数の1つまたは複数の分子および当業者に公知のその同等物についての言及を含む。
【0038】
本発明に関して「医療装置」という用語は、限定的または一時的に導入される装置(例えば、生体内腐食性の縫合糸または組織スキャフォールド)ならびに長期間または恒久的に挿入するための装置(例えば、人工靭帯または人工腱)の両方を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する「医療装置」という用語は、疾患、損傷、またはハンディキャップの診断、予防、モニタリング、治療、または緩和を目的とした、任意の器具、機器、計器、道具、材料、機械、仕掛け、移植片、インビトロ試薬、または成分パーティ(component party)もしくはアクセサリを含む他の類似の物品もしくは関連する物品を指す。この用語は、ヒトまたは他の動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことを目的とし、薬理学的手段、免疫学的手段、または代謝的手段によって、身体において、または身体に対して、その主な目的の作用を果たさないが、このような手段によって、その機能が支援されてもよい、任意の物品をさらに含む。本発明によって意図される医療装置の例示的な実施例には、針、カテーテル(例えば、静脈内カテーテル、尿路カテーテル、および血管カテーテル)、ステント、シャント(例えば、水頭症シャント、透析移植片)、チューブ(例えば、鼓膜切開用チューブ、中耳腔換気用チューブ(tympanostomy tube))、移植片(例えば、乳房移植片、眼内レンズ)、プロテーゼおよび人工器官、ならびにケーブル、リード線、ワイヤー、およびこれらに結合している電極(例えば、ペースメーカーおよび移植可能な除細動器用のリード線、双極RF電極および単極RF電極、血管ガイドワイヤー)が含まれるが、これに限定されない。創傷包帯、縫合糸、ステープル、吻合装置、椎間板(vertebral disk)、骨ピン(bone pin)、縫合アンカー、止血バリア(hemostatic barrier)、クランプ、ネジ、プレート、クリップ、血管移植片、組織接着剤および密封材、組織スキャフォールド、様々なタイプの包帯、骨代替品、靭帯または腱移植片装置、腔内装置、血管支持体、ならびに治療用材料、例えば、治療剤、生理活性分子、および生物細胞または組織を組み込むことによって利益を得ることができる、他の身体と接触する装置などの装置も意図される。
【0039】
本明細書で使用する「縫合糸」という用語は、基端、末端、および長軸方向の軸が設けられた、細長い、概して管状および糸状の医療装置を指す。ここで、長軸方向の軸に沿った長さは、他の任意の軸の長さに等しいか、他の任意の軸の長さの二倍であり、この装置は長軸方向の軸に沿って可撓性がある。典型的には、縫合糸は組織または医療用プロテーゼを接合するのに用いられる。しかしながら、本発明に関して、縫合糸は、治療用材料の組織部位への固定化および送達に、または組織成長のためのスキャフォールドとして有用であり得る。
【0040】
縫合糸に関して「構造特性」という用語は、概して、時期尚早に故障することなく長軸方向、円周方向、もしくは半径方向の引張力に装置が耐えることができる特性、または装置の期待された機能寿命にわたって意図したように装置が機能するのを阻止する、ある水準の降伏に装置が耐えることができる特性を指す。
【0041】
本発明に関して「多孔性」という用語は、本発明のシースまたはコアにおける材料マトリックスの中にある、機能的に関連するサイズの空隙または開口部に関する。シースもしくはコアの中にある開口部、あるいはシースもしくはコアを通過する、またはシースもしくはコアから出て行く開口部に関して、機能的に関連するサイズは、細胞、治療用材料、または他の方法で移動し得る構築物の他の材料の通過を可能にする、または阻害するサイズである。幹細胞および他の生物細胞の場合、1個の細胞が通過できるような機能的に関連するサイズは細胞サイズより大きなサイズであり、典型的には5〜50μmの範囲である。多くの状況では、流れを阻害することが目的とされ、流れを完全に阻止することは必要とされないので、特に、間隙の液体(もしくは細胞担体培地)に、流れを遅らせるのに十分な粘性がある場合、流路が比較的長い、もしくは複雑に入り組んでいる場合、または液体中に存在する他の材料が、流れを妨害するサイズまたは密度のある場合には、さらに大きな直径をした開口部が望ましい結果をもたらす可能性がある。ほとんどの場合、特に、縫合糸および本発明のシースの好ましい態様によく見られるように織物マトリックスを用いた場合、多孔性媒体、例えば、シースの中にある開口部は丸くなく、多くの場合、媒体に加えられるストレスのタイプによって形状が異なる。このような場合、関連する寸法は、通常、開口部を横断する最小の寸法である。
【0042】
バルク媒体(bulk media)の場合の関連する孔、例えば、生物細胞を含む縫合糸のコア内での関連する孔は、治療効果を有するような、媒体内で全量の治療用材料を含むサイズの空隙、または媒体内で生物細胞を含むのに必要なサイズの空隙である。縫合糸コアの場合、関連する空隙は、マルチフィラメントコア内の繊維間の空間、コアとシースとの間の空間、粒子と粒子を有するコアとの間の空間、またはコア内の実際のバルク材料内の空隙(例えば、スポンジ状材料)を含んでもよい。研究から、孔径が100〜500μmの範囲の場合に、幹細胞の増殖および分化に対して利益があることが分かっているが、この範囲外の孔径も本発明において有用である
5。
5 Mygind T, et al., 「Mesenchymal stem cell ingrowth and differentiation on coralline hydroxyapatite scaffolds」, Biomaterials, 28 (6): 1036-1047 (February 2007).
【0043】
医療装置、特に、外科手術用縫合糸は広範囲の材料から作ることができる。本発明の特定の局面において特に関心があるものは、生分解性および生体適合性の材料である。生分解性ポリマーは、ポリエステルファミリー、例えば、ポリグリコリドおよびポリラクチド、ポリオルトエステルファミリー、ポリ酸無水物ファミリー、ポリフォスファーゼンファミリー、およびポリヒドロキシアルカノエートを含んでもよいが、これに限定されない。生体適合性ポリマーのより具体的な例には、[α]-ヒドロキシカルボン酸のポリエステル、例えば、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)およびポリグリコリド(PGA);ポリ-p-ジオキサノン(PDO);ポリカプロラクトン(PCL);ポリビニルアルコール(PVA);ポリエチレンオキシド(PEO);米国特許第6,333,029号および同第6,355,699号に開示されるポリマー;ならびに医療用移植装置の構築において用いられる他の任意の生体吸収性および生体適合性のポリマー、コポリマー、またはポリマーもしくはコポリマーの混合物が含まれる。
【0044】
さらに、医療装置において天然材料、例えば、コラーゲンおよび絹が一般的に用いられる。これらの生体適合材料の一部は、本明細書において参考文献として挙げた特許に列挙したものを含む技術を用いて、生理活性分子、例えば、増殖因子と結合体化することができる。前記生分解性材料はまた、生理活性分子との結合体化に適していてもよく、適していなくてもよい材料も含んでもよい。本発明のある特定の局面は、装置材料との結合体化を必要とすることなく、また化学結合も必要とすることなく、生理活性分子を医療装置構築物または手術装置構築物に組み込むのを可能にし、結果として、医療装置、例えば、外科手術用縫合糸構築物の一部として価値のあるどの生分解性材料および/または生体適合材料でも本発明において有用である。さらに、生体適合性生体吸収性の新材料が開発されているので、これらの少なくとも一部は本発明に関して有用な材料になると予想される。前記の材料は一例として特定したにすぎず、特許請求の範囲においてはっきりと求められない限り、本発明は特定の材料に限定されないことが理解されるはずである。
【0045】
臨床用の骨髄は、典型的には、注射器型装置を用いて対象患者の骨から抽出された吸引液として得られる。多くの場合、寛骨はサイズが大きく、体表面に近接しているために、供給源として用いられる。ある用途では、骨髄はそのまま用いられるが、多くの場合、望ましい骨髄画分を濃縮するために、ある種の分離技術、例えば、遠心分離が用いられる。サイトカイン、例えば、増殖因子を含む生理活性分子が、この分離プロセスの標的になることが多い。幹細胞、前駆細胞、または他の細胞も望ましい標的であり得る。関心対象の細胞および分子はまた、典型的には、脂肪組織(adipose tissue)から、同様に脂肪組織(fat tissue)からも得られ、ならびに体内の様々な体液から得られる。身体のどの組織にも可能性があり、筋肉および神経組織および生殖プロセスに関連する組織も特に関心がある。患者から抽出された材料には、他の供給源を上回るいくつかの利点、例えば、生体適合性が生来よりあること、コストが下がる可能性があること、相乗効果を有し得る広範囲の有用な化合物が得られることがある。現行の手術では、典型的には、注射器による注射によって、骨髄誘導体が、身体の望ましい活動領域に再導入される。多くの場合、材料を領域に保持するために、多孔性保持媒体、例えば、コラーゲンスポンジが用いられる。
【0046】
「細胞」または「生物細胞」という用語は、生物において組織構造を形成するのに有用な生物学的機能、特に、複製を果たすことができる任意の細胞を指す。生物細胞は、対象となる宿主生物に由来する細胞またはドナー生物に由来する細胞を含み得る。生物細胞は、組換え法または遺伝子工学法からの細胞を含み得る。本明細書で使用するこの用語は、幹細胞、前駆細胞、および完全に分化した細胞を含み、以下の1つまたは複数:軟骨細胞;フィブロコンドロサイト;骨細胞;骨芽細胞;破骨細胞;滑膜細胞;骨髄細胞;間葉系細胞;ストローマ細胞;幹細胞;胚性幹細胞;脂肪組織に由来する前駆細胞;末梢血前駆細胞;成人組織から単離された幹細胞;遺伝子形質転換細胞;軟骨細胞および他の細胞の組み合わせ;骨細胞および他の細胞の組み合わせ;滑膜細胞および他の細胞の組み合わせ;骨髄細胞および他の細胞の組み合わせ;間葉系細胞および他の細胞の組み合わせ;ストローマ細胞および他の細胞の組み合わせ;幹細胞および他の細胞の組み合わせ;胚性幹細胞および他の細胞の組み合わせ;成人組織から単離された前駆細胞および他の細胞の組み合わせ;末梢血前駆細胞および他の細胞の組み合わせ;成人組織から単離された幹細胞および他の細胞の組み合わせ;ならびに遺伝子形質転換細胞および他の細胞の組み合わせを含む。他の細胞に治療価値があると見出されたら、これらの細胞の少なくとも一部は本開示の概念において有用であり、特にはっきりと限定されていない限り、このような細胞は、「細胞(cell)」および「細胞(cells)」の意味に含めなければならないと予想される。
【0047】
「幹細胞」という用語は、自己再生能力を有しながら、分化した細胞および組織を形成する様々な能力を保持している未分化細胞の包括的なグループを表す。幹細胞は、全能性、多能性(pluripotent)、または多分化能性(multipotent)でもよい。分化能を失ってしまった誘導幹細胞も生じ、「無能性(nullipotent)」幹細胞と呼ばれる。全能性幹細胞は、胚外組織(すなわち、胎盤)を含む、無傷の生物において見出される全ての細胞および組織を形成する能力を有する細胞である。全能性細胞は非常に初期の胚(8細胞)を含み、無傷の生物を形成する能力を有する。多能性幹細胞は、無傷の生物において見出される全ての組織を形成する能力を有する細胞であるが、無傷の生物を形成することができない。多分化能性細胞は、分化した細胞および組織を形成する能力が限定されている。典型的に、成人の幹細胞は多分化能性幹細胞であり、一部の細胞または組織を形成する能力を有し、老化または損傷した細胞/組織を補充する、前駆幹細胞または分化系列が限定された幹細胞である。さらなる情報はWO08/007082において見られ、この内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0048】
「前駆細胞」という用語は、幹細胞と完全に分化した細胞との間にある細胞分化段階を含む、単能性細胞または多分化能性細胞を指す。
【0049】
「生理活性分子」という用語は、生物、組織、器官、または細胞において、インビボ、インビトロ、またはエクスビボのいずれかで生物学的活性を示すまたは誘導するように、生きている組織または系と相互作用する能力を有する任意の分子を指す。「生理活性分子」という用語は、その前駆型に及ぶ。前駆タンパク質、例えば、BMP前駆体は、典型的には、エンドプロテアーゼ切断を受けるまで不活性である。しかしながら、これは体内で自然に起こるプロセスであるので、本発明は、体内で有用な生物学的プロセスに参加する前駆タンパク質に及ぶ。
【0050】
本発明に関して特に関心があるものは、生物学的機能を誘発または調節する生理活性ペプチドである。本発明に関して使用するのに適した生理活性分子の例示的な実施例には、増殖因子タンパク質、例えば、TGFβ、BMP-2、FGFおよびPDGFが含まれるが、これに限定されない。
【0051】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する「増殖因子」という用語は、様々な内因性の生物学的プロセスおよび細胞プロセス、例えば、細胞周期進行、細胞分化、生殖機能、発生、運動性、接着、ニューロン成長、骨形成、創傷治癒、免疫監視、および細胞アポトーシスを制御または調節する生理活性ポリペプチドの広範囲のクラスを指す。増殖因子は、典型的には、標的細胞表面上にある特定の受容体部位に結合することによって機能する。増殖因子には、サイトカイン、ケモカイン、ポリペプチドホルモン、およびその受容体結合性アンタゴニストが含まれるが、これに限定されない。周知の増殖因子の例には、以下:
・骨形成タンパク質(BMP);
・トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β);
・インターロイキン-17;
・トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α);
・軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP);
・細胞密度シグナル伝達因子(CDS);
・結合組織増殖因子(CTGF);
・上皮細胞増殖因子(EGF);
・エリスロポエチン(EPO);
・線維芽細胞増殖因子(FGF);
・グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);
・顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF);
・顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);
・増殖分化因子(GDF);
・ミオスタチン(GDF-8);
・肝細胞増殖因子(HGF];
・インシュリン様増殖因子(IGF);
・マクロファージ阻害サイトカイン-1(MIC-1);
・胎盤増殖因子(PIGF);
・血小板由来増殖因子(PDGF);
・血小板濃縮物(PRP);
・トロンボポエチン(TPO);
・血管内皮増殖因子(VEGF);
・アクチビンおよびインヒビン;
・コアギュロゲン(Coagulogen);
・フォリトロピン;
・ゴナドトロピンおよびルトロピン;
・ミュラー阻害物質(MIS):抗ミュラー管ホルモン(AMH)、ミューラー阻害因子(MIF)、およびミューラー阻害ホルモン(MIH)とも呼ばれる;
・ノダル(Nodal)およびレフティー(Lefty);ならびに
・ノギン(Noggin)
が含まれるが、これに限定されない。
【0052】
体内の有用な生物学的プロセスを調節する、誘導する、またはこれに参加する分子は、前記で列挙したものを含めて、その特定の構造または機能に従って類別または分類されることが多い。例えば、免疫系細胞によって分泌される免疫調節性タンパク質、例えば、インターロイキンおよびインターフェロンはサイトカインと呼ばれることが多い。調節性分子の他のカテゴリーには、以下が含まれるが、これに限定されない。
-モルフォゲン(例えば、組織および器官の形成および分化を調節または制御する分子);
-ケモカイン(例えば、炎症部位のように、好中球およびT細胞などの白血球において走化性を刺激する、様々な細胞によって生産される任意のサイトカイングループ);
-ホルモン(例えば、血液などの体液中を循環し、通常、生産された場所から遠く離れて、細胞活性に対して特異的で、多くの場合、刺激的な作用を生じる生細胞産物);
-受容体(例えば、内因性物質、例えば、ホルモンおよびリガンドならびに外来材料、例えば、ウイルス粒子の両方を含む特定の化学的実体に対して親和性を有する、細胞表面上に、または細胞内部に存在する分子。刺激剤と、これに対する下流の生理学的応答または薬理学的応答との仲介として機能する);
-受容体結合アゴニスト(例えば、細胞上の特定の受容体と結合し、典型的には内因性結合物質(例えば、ホルモン)によって生じる、同じ反応または活性を開始することができる化学物質);ならびに
-受容体結合アンタゴニスト(例えば、他の化学物質(例えば、ホルモン)の生理学的活性を、これに関連する1つもしくは複数の受容体に結合し、1つもしくは複数の受容体を遮断することによって少なくする化学物質)。
【0053】
しかしながら、体内の様々な調節部分の機能の研究は最先端科学であるので、この分類は発展中でもある。従って、本発明は、調節分子または刺激分子の特定のクラスまたはカテゴリーに限定されない。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する「増殖因子」という用語はまた、エンドプロテアーゼ切断を受けるまで典型的に不活性な前駆型増殖因子、ならびに天然の増殖因子と同じまたは類似の機能の一部または全てを提供する合成型および組換え型も指す。従って、本発明は、結果として生じる分子が、典型的には、野生型または内因性部分に関連する標的細胞の表面上の特定の受容体部位に結合することによって、身体における有用な生物学的プロセスを調節する機能の一部または全てを保持しているのであれば、増殖因子の前駆体、類似体、および機能同等物を含む。
【0055】
本明細書で使用する「治療剤」という用語は、治療能力、具体的には薬学的活性を有する任意の分子、化合物、または組成物を指す。特に有用な治療活性および/または薬学的活性の例には、抗凝固活性、抗接着活性、抗菌活性、抗増殖活性、およびバイオミメティック活性が含まれるが、これに限定されない。
【0056】
「抗菌」という用語は、細菌、真菌、もしくはウイルス病原体または毒素の生物学的機能を制限する、または妨げる能力を有する任意の分子を指す。抗菌は、抗細菌剤、抗生物質、防腐剤、消毒剤、およびその組み合わせも含むことが意図される。
【0057】
本発明に関して、「バイオミメティック」という用語は、表面に、特性、特に、分子結合または生物学的認識特性をもたらし、生物学的材料、例えば、組織、特に細胞の生物学的特性と共通する分子構造、または機能類似体に生物学的材料、例えば、組織、特に細胞の生物学的特性をもたらす分子構造、例えば、アミノ酸配列および炭水化物配列を含むが、これに限定されない表面特性を示す材料を指す。表面は代表例であることが意図される。本発明に関してバイオミメティックという用語は、表面が、模倣している生物学的材料の全ての機能または結合性を再現することを必要としない。模倣される好ましい構造の例には、病原体結合タンパク質および免疫認識配列(例えば、グリカンシグネチャー)が含まれる。粒子部分が、必要なバイオミメティック活性を有するかどうかは、当業者に公知の従来の技法を用いてアッセイすることができる。例えば、内因性宿主組織と比較して、提案されたバイオミメティックの結合活性をアッセイするために、ELISAなどの周知のイムノアッセイ技法を利用することができる。同様に、天然組織と比較して、提案されたバイオミメティックのリスクを評価し、免疫原能をアッセイするために、Meso Scale Discovery(MSD)(Gaithersburg, MD)により入手可能な多重ケモカイン・サイトカインアッセイなどの従来の免疫応答アッセイを利用することができる。
【0058】
「治療用材料」という用語は、以下:治療剤、生理活性分子、幹細胞、前駆細胞、または生物細胞のいずれかを含む任意の組成物を指す。「生理活性溶液」という用語は、生理活性材料を部分的に含む液体組成物を指す。
【0059】
本明細書で使用する「組織」という用語は、生物内で類似機能を果たす相互接続した細胞の集まりと一般に定義される生物組織を指す。ヒト身体および下等多細胞生物、例えば、昆虫を含む全ての動物の体内には、上皮、結合組織、筋肉組織、および神経組織を含む4つの基本的な組織タイプが見られる。これらの組織は器官、構造、および他の身体内容物の全てを構成する。
【0060】
本明細書で使用する「骨」という用語は、脊椎動物の内骨格を一部をなし、身体の様々な器官を動かす、支持する、および防御するように機能し、赤血球および白血球を生産し、無機質を貯蔵する強固な器官を指す。骨を構成する組織タイプの1つが、硬さおよび蜂巣状の三次元内部構造を付与する、骨組織とも呼ばれる鉱化骨組織である。骨に見られる他の組織タイプには、骨髄、骨内膜および骨膜、神経、血管および軟骨が含まれる。
【0061】
軟骨は、関節でつながっている骨が動くための平らな面を提供することができる、コラーゲン繊維および/またはエラスチン繊維からなる高密度結合組織の一種からなる。軟骨は、関節、胸郭、耳、鼻、気管支、および椎間板を含む体内の多くの場所で見られる。3種類の主な軟骨:弾性軟骨、硝子軟骨、および線維軟骨がある。
【0062】
従って、本明細書で使用する「組織」という用語は、皮膚、筋肉、神経、血液、骨、軟骨、腱、靭帯、およびこれからなる、もしくはこれを含む器官を含むが、これに限定されない、全ての生物学的成分を大まかに含む。
【0063】
例えば、「生物組織または細胞から単離された」の中にあるように、本発明に関して「単離された」という用語は、関心対象の治療用材料の構造および機能を保存するやり方で、組織または細胞膜から関心対象の治療用材料を分離する任意のプロセスを指す。本明細書で使用する「単離された」という用語は、例えば、「抽出された」および「収集された」という用語と同義である。
【0064】
本発明において使用するのに適した治療用材料はまた、天然供給源から単離、収集、または抽出されていることに加えて、生物学的供給源に「由来」してもよく、例えば、合成されてもよく、周知の技法および従来の技法に従って、細菌および他の微生物を含む、遺伝子操作された植物および動物によって産生されてもよい。
【0065】
本発明は、特に、基礎をなす孔を塞ぐための表面コーティングとしての、「粘性」材料について言及する。本発明に関して、粘性材料は、高い粘性係数もしくは測定された高い表面張力またはその両方を有する流動可能なまたは柔軟な材料である。ここで、粘性力および表面張力のいずれかまたは両方が孔または間隙空間の中に材料を保持して、孔または空間を塞ぎ、孔または空間に液体が流れないように働く。
【0066】
本発明は、内部コア内での生理活性剤の「固定化」について言及する。本発明に関して「固定化」という用語は、イオン結合または共有結合から吸着または吸収、捕捉、絡み合い、または混入などの単純な物理的捕獲までの任意の数の「捕獲」および「保持」プロセスを含む。特定の固定化プロセスは特に重要でない。むしろ重要なことは、このプロセスによって、高密度の生理活性材料が内部コア全体に分配または分散されることである。
【0067】
B.本発明の例示的な態様:
前記のように、本発明の目的は、生理活性材料、具体的には、治療剤、例えば、抗菌剤(同様に、抗生物質、防腐剤、消毒剤、およびその組み合わせ)、ならびに生理活性分子、例えば、増殖因子を含むが、これに限定されない、幹細胞、前駆細胞および他の生物細胞を、望ましい治療使用の部位、例えば、組織修復または創傷治癒のための部位に送達するのを可能にする、材料、方法、および医療装置構築物を提供することである。本願を限定することを意図しないが、本発明の材料および方法は、医療従事者、具体的には手術チームが、すぐに使用することが必要とされ、保管条件に制限のある場合のある治療用材料、特に、収集された幹細胞を使用するのを可能にする。医療処置の対象となるレシピエントである患者から抽出された材料(本明細書において自家移植片または自己(autogenic)組織と呼ばれる)が特に有用である。医療処置の対象となるレシピエントである患者から抽出された材料の例には、幹細胞、前駆細胞、および他の生物細胞、生理活性分子および他の治療用材料を含むが、これに限定されない。幹細胞、前駆細胞および他の細胞、ならびに生理活性分子は、前記材料が存在する身体の任意の組織から得ることができると意図される。組織には、骨髄、脂肪組織、筋肉組織および神経組織、ならびにこれらの組織に関連する任意の体液を含むが、これに限定されない。または、もしくはさらに、前記細胞および分子は、同種移植材料および異種移植材料、例えば、同種異系移植片、異種移植片(同様にゼノグラフト(zenograft)も)、合成組織模倣物、または遺伝子操作された分子もしくは細胞を含む、他の供給源に由来する材料を部分的に含んでもよく、前記材料は、生理活性分子、ならびに幹細胞、前駆細胞、および他の細胞を含んでもよい。または、本発明において関心対象の細胞および分子は、自家移植片、同種異系移植片、および異種移植片を含めて、ヒトまたは哺乳動物の生殖器系の産物から得られてもよい。
【0068】
本発明は自家移植片の状況において特に価値があり、この場合、関心対象の生理活性材料が手術チームによって抽出され、外科手術用縫合糸または前駆構築物に導入された後に、組み立てられた装置が患者に再導入され、好ましくは、全てが1回の外科的処置の中で行われる。
【0069】
前記のように、本発明の外科手術用縫合糸、糸状の組織スキャフォールド、または前駆構築物の外部シースおよび内部コア成分は多くの代替形態をとることができる。例えば、シースおよびコアは同じ材料または異なる材料から製作されてもよく、材料の混合物またはマトリックスを含んでもよい。ここで、シースおよびコアの要素は連続しているか、または他の方法で接続している。シースまたはコア成分は様々な程度の生分解性を示してもよく、組織内で比較的不活性でもよい。さらに、これらは、例えば、対象となる用途、標的組織部位、および生理活性材料配置の望ましい期間に応じて、組織内で異なる生分解速度を示す異なる材料の混合物またはマトリックスからなってもよい。
【0070】
1つの態様において、外部シースは、急速に吸収される材料のマトリックスおよび吸収性の少ない構造フィラメント材料から構築されてもよい。このような構築物は多くの利点があり、これらは全て個々にまたは組み合わせて本発明の目標とみなすことができ、さらには、移植片および組織スキャフォールドを含む他の手術装置および医療装置にも適用することができる。
【0071】
1.生物細胞がコアに存在する場合、孔の少ない縫合糸シースまたは外面が孔の多い状態に変化することは特に価値がある。孔の多い状態であれば、細胞増殖または生存に必要な分子は、生細胞のある縫合糸または装置の本体に透過できると同時に、細胞が望ましいスキャフォールド配置に保持される。
【0072】
2.縫合糸が取り扱われている、または組織に導入されている間に、急速に吸収される材料および構造フィラメント材料からなるマトリックスは比較的滑らかな表面および孔の少ない表面を示すことができ、次いで、縫合糸が組織に存在すると、縫合糸表面は孔の多い表面に変化することができる。孔の少ない表面は、組織に導入された時に少ない抵抗を示すことができる。孔の少ない表面はまた、組織に導入される前に、不要な分子または生物製剤を捕まえる傾向が少ない可能性のある外面であり得る。さらなる治療価値または抗菌価値のために、縫合糸が組織に配置された後に生じる孔の多い表面は、コア内の分子が縫合糸から拡散する点で有用であり得る。急速に吸収される材料は、少なくとも部分的に、抗菌価値または治療価値のある分子を含んでもよく、これに対して、構造フィラメント材料は、構築物の必要とされる構造特性またはスキャフォールド特性を維持することができる。
【0073】
3.急速に吸収される材料および構造フィラメント材料のマトリックスは、縫合糸を組織に通すプロセスの間に、比較的滑らかな表面を示してもよく、次いで、急速に吸収される材料が消散し始めた後に、縫合糸は、他の表面特性、例えば、表面粗さを示してもよい。粗さが大きいことは、組織内で縫合糸の動きが少なくなり、従って、縫合糸が「のこりぎで切れる(saw)」または切れる傾向が少なくなり、従って、組織に傷あとを残さない点で有用であり得る。表面粗さは、i)高い表面多孔度、ii)構造繊維が向けられる、もしくは織られるやり方、iii)構造繊維を粗い表面にする、さらなる材料または粒子、またはiv)急速に吸収される材料が周囲組織に消散し始めると、表面から突出するように向きが変わる、他の付属品もしくは繊維の要因でもよい。
【0074】
4.急速に吸収される材料および構造フィラメント材料のマトリックスは、縫合糸を組織に通すプロセスの間に、周囲組織に容易に結合しない表面を示してもよく、次いで、急速に吸収される材料が消散し始めた後に、周囲組織に結合する表面特性を有する構造フィラメントまたは他の材料が露出して、縫合糸を所定の位置に固定するという利点をもたらしてもよい。表面特性は、適切な組織結合特性を有する、縫合糸表面上に固定化することができる任意の分子を含んでもよく、レクチンおよびヘパリン化合物などがあるが、これに限定されない。このような化合物をポリマー上に固定化する広範囲の技法が当業者に公知であり、本発明に関して有用である。
【0075】
本発明の外科手術用縫合糸または前駆構築物の外面、スリーブ、またはシースを形成する材料のマトリックスは、典型的には、2種類の合成ポリマー、合成ポリマーおよび天然材料、または2種類の天然材料を含み、これらのいずれかまたは全てが任意で生分解性でもよい。このようなマトリックスは、材料を組み合わせて織物、不織布、またはフィルム状構築物にする当業者に公知の任意の従来方法によって形成することができる。本発明に関して特に価値があるものは、以下の織物構築物である。
i)構造繊維および生分解性の高い繊維が織り合わされている、織物構築物、
ii)構造繊維および生分解性の高い繊維が2層に織り合わされ、外面に生分解性の高い繊維がある、織物構築物、
iii)構造繊維が織られ(または不織布構造として設けられ)、次いで、シース構造内の空隙を満たすように、または大きいスポット(high spot)を少なくするように、生分解性材料がコーティングとして適用されている、織物構築物、あるいは
iv)構造繊維が、柔軟な付属品と共に、または構造繊維マットから突き出ている短いくぎもしくは毛に似た繊維と共に織られ(または不織布構造として設けられ)、次いで、生分解性材料(この場合、典型的には、成形可能な形から固体またはゲルの形に変化することができる材料)が適用され、生分解性材料が固体またはゲルの形に変化すると、前記付属品または短い繊維が表面上に設けられ、表面に保持される、織物構築物。
【0076】
本発明の外科手術用縫合糸または前駆構築物の外面、スリーブ、またはシースを形成する材料のマトリックスはまた、多孔性マトリックスの中に、または外面、内面、もしくはその両方のいずれかに、ある期間にわたる固定化に十分な粘性、表面張力特性、または接着性を示す、エマルジョン、懸濁液、液体、またはゲルを含有する、多孔性の織物、不織布、またはフィルム型の構築物を含んでもよい。組み立てられた装置を、対象とする宿主組織に移植するのに期間が十分にあることが、本発明に関して特に価値がある。宿主組織との相互作用の前に、細胞の複製または分化などがあるが、これに限定されない、ある特定の生物学的活性が装置の境界内で生じるために、さらなる固定化期間が望ましい場合がある。または、もしくはさらに、埋め込まれたまたは含浸された、外面のエマルジョン、懸濁液、液体、またはゲルは、抗菌分子、鎮痛分子、または抗炎症分子を含むが、これに限定されない治療価値のある特定の分子を少なくとも部分的に含んでもよく、組み込んでもよいのに対して、基礎をなす表面は、生理活性材料、例えば、幹細胞を含むが、これに限定されない治療価値のある他の分子または細胞を含有する。表面にある、または表面の近くにある抗菌分子は、縫合糸と共に患者に導入され得る細菌またはウイルスに対処する即時機能をもたらすのに対して、基礎をなす表面の中に保持される生理活性分子は、さらに長期間にわたって拡散するか、または他の方法で放出することができ、感染が抗菌剤によって対処された後でも効果があることが意図される。本発明は、エマルジョン、懸濁液、液体、またはゲルが、生理活性分子と共に潜在的な相乗的治療利益のある材料を含んでもよいことを意図する。このような液体の例には、オレイン酸および/またはリノール酸が含まれるが、これに限定されない。これらの分子は抗菌性で知られており、生理活性ペプチド、例えば、骨形成タンパク質と協力して利益をもたらすと考えられている。
【0077】
本発明の外科手術用縫合糸の特に好ましい態様は、フィルム状の、繊維性の、または多孔性の材料を含む織物または不織布の外部シース(またはスリーブ)、ならびに生物細胞および/または生物学的に活性な分子(総称して本明細書において「生理活性材料」と呼ぶ)を含有し、任意で、モノフィラメントもしくはマルチフィラメントポリマー材料またはその組み合わせを含有する内部コアを含む。外部シースは任意で多孔性でもよく、および/または、さらに好ましい配置において、縫合糸の外側へのならびに宿主組織の体液への、コア内の両方の極性液体の、縫合糸に沿ったウィッキングが少ないという利点をもたらす疎水性材料が少なくとも部分的に設けられてもよい。さらに、本発明は、疎水性(同様に、非極性のまたは極性の低い)液体またはゲルが孔に導入された多孔性シースを意図する。この材料は、(a)細胞および治療用材料が縫合糸コアから縫合糸の外部に時期尚早に移動するのを防ぐ障壁として機能し;(b)取り扱い中に、不要な材料が縫合糸コアに侵入するのを少なくし;(c)多孔性縫合糸が組織に通された時に多孔性縫合糸の摩擦を弱める、および縫合糸の取り扱い特性を他の方法で改善することができる。
【0078】
好ましい態様において、本発明の外科手術用縫合糸は、独立した繊維または材料からなる内部コア上に配置された、織り合わされた繊維から構築された外部シースを含む。しかしながら、本発明はまた、単一の織物構築物からなる外部シースおよび内部コアを意図する。ここで、1本の繊維がその長さの一部にシースを含み、別の部分にコアを含んでもよく、このような構築物において、シースとコアを区別するものは、コアが繊維間の空隙に幹細胞および他の治療用材料を保持し、シースが障壁材料、通常、疎水性液体またはゲルを含み、潜在的には、生分解性固体、粘性フィルム、または十分に高い表面張力を有する材料も含むことである。
【0079】
さらに、本発明は、長軸方向の軸に沿った外部シースに対する内部コアの移動が妨げられるように、外部シース材料が内部コア材料に、またはそれ自身に結合している外科手術用縫合糸構築物を意図する。この結合は、縫合糸の半径をまたがる機械的絡み合い、縫合糸の材料の熱による結合もしくは化学結合、または結合材料、例えば、ステープルの導入を含むが、これに限定されない、当業者に公知の任意の数の技法によってもたらすことができる。
【0080】
さらに、本発明は、内径および外径を有する中空の管状の構造の形をした外部シースを意図する。シースは、その長さに沿って、間隔をおいてくびれがあるように構成され、このようなくびれは長軸方向移動または縫合糸内部コア内に保持されている材料の移動を小さくする、または妨げる点まで内径を小さくする。このようなくびれは、外科手術用縫合糸またはシース構築物が最初に形成される前または形成された後に形成されてもよい。好ましい態様において、関心対象の生理活性材料が内部コアに導入された後に、くびれは導入される。くびれは、機械的変形、例えば、圧縮またはねじれ、熱変形、例えば、融解、または生理活性材料に加えて、ある外部刺激の下で遮断を形成する材料の、コアへの導入を含むが、これに限定されない、当業者に公知の任意の数の方法によって形成することができる。圧縮またはねじれの作用を、縫合糸構築物の特定の点に付与する機械装置はまた、機械的に引っ張る力を縫合糸それ自体に付与し、それによって、縫合糸を組み立てるのに必要な力を加えることができる。
【0081】
外部シースが、少なくとも、部分的な流動障壁ならびに保護利益をもたらし、コア内容物を線状の限られた形で拘束することができる、本発明の好ましい1つの態様において、本発明は、縫合糸において実際に使用するには十分に細胞および治療剤を固定化しない材料から内部コアを製作することを意図する。例えば、マルチフィラメントコアを用いて、フィラメント周囲の流路が曲がりくねっているために細胞および治療剤をからませてもよく、フィルムを円筒形に巻いて、もしくは束にして、同様の曲がりくねった路を得てもよく、ならびに/または粘性の液体、発泡体、ゲル、およびエマルジョンを利用してもよい。さらに、本発明は、このような材料およびプロセスの組み合わせを意図する。特に価値があるのは、内部コアに保持されている生理活性材料(例えば、幹細胞または他の前駆細胞)の生物学的機能または保持に対して公知の利益を有するさらなる材料を組み込むことである。
【0082】
1つの態様において、細胞、生理活性分子、および治療上価値のある他の材料を含有する生分解性粒子が縫合糸の内部コアを形成するのに対して、縫合糸フィラメントの織物構造が外部シースを形成する。生分解性粒子は、埋め込まれた、または表面上で発現された生理活性分子、抗菌分子、または治療の上で関心のある他の分子を有するポリマーまたは天然構築物を含んでもよい。粒子は、縫合糸コアへの前記粒子の導入の助けとなり、標的組織への縫合糸の導入プロセスの間に大多数の粒子をコア内に保持できる任意のサイズおよび幾何学的配置でよい。粒子には、その表面に、またはマトリックス内に幹細胞または他の生物細胞を付着させてもよく、幹細胞または他の生物細胞に結合する部分を有してもよい。
【0083】
本発明はまた、縫合糸コア内の結合した構築物もしくは絡み合った構築物として、または多孔性シースの中の流れを妨害する構築物として、ナノワイヤー(同様に、ナノファイバーおよびマイクロファイバー)の使用を意図する。さらに、このようなナノワイヤーは、マルチフィラメント縫合糸構造内で、ある程度の絡み合いを示してもよく、結合した材料または埋め込まれた材料を保持する点で固有の利益を有する。さらに、ナノワイヤーはヒドロゲルを形成するように誘導することができ、縫合糸コアの中にヒドロゲルを含めることも本発明の価値のある局面である。
【0084】
本発明はまた、米国特許出願第2005/0209145号においてStupp et. al.によって記載された生理活性分子結合部分、組織へのこれらの部分の導入、および見込みのある患者から抽出されたその誘導体、またはその同種異系移植片もしくは異種移植片、任意で、部分の添加前または添加後の組織溶液の濃縮、組織に存在する生理活性分子とStuppによって開示された結合部分との結合体化、ナノワイヤーの形成およびマルチフィラメント縫合糸のマトリックスへのナノワイヤー、任意で、組織溶液からの生物細胞の機械的包埋を意図する。従って、ナノワイヤーは、組織成長において有益な生理活性材料の固定化および遅延放出において有益であり、効果的に幹細胞と併用とすることができる。
【0085】
さらに、本発明は、細胞または治療用分子の潜在的な結合部位または結合形成部位である、1つまたは複数の表面分子またはフィルムを有する本発明の外科手術用縫合糸の外部シースおよび/または内部コアを得ることを意図する。結合または結合形成は、化学結合、吸収および/もしくは疎水性相互作用、または当業者に公知の基板材料に対して細胞もしくは分子が結合形成するための他の機構によって生じてもよい。本発明において特に価値があるものは、幹細胞が、ある特定の材料、特に、ポリマー(同様に、プラスチック)に結合する傾向があることである。ヘパリン、ヘパリン誘導体、およびヘパリンを有する組成物もまた、縫合糸シースおよびコアの中で適切な結合表面を生じるために本発明に関して特に価値がある。
【0086】
タンパク質でコーティングされたポリマーコア繊維もまた、細胞の結合および増殖を促進する傾向があるために本発明において特に意図される。Johns Hopkins UniversityのChristopherson, et al.は、幹細胞を付着および増殖させるために、繊維メッシュの中にある、ラミニンでコーティングされたエレクトロスピニングによる(electrospun)ポリエーテルスルホン(PES)に価値があることを証明している
6。
6 Christopherson GT, et al. 「The influence of fiber diameter of electrospun substrates on neural
stem cell differentiation and proliferation」. Biomaterials, 30 (4): 556-564 (2009).
【0087】
潜在的に腐敗しやすい生物学的材料、特に、幹細胞もしくは同種異系材料、または高価な治療剤を本発明に導入するのを容易にするために、本発明は、i)滅菌した包装容器または滅菌可能な包装容器、ii)滅菌した包装容器の中に入れられた、1つまたは複数の縫合糸または他の医療装置からなるキットを提供すること;iii)組み立てられた縫合糸を対象となる宿主組織に導入する前に、幹細胞、他の生物細胞、または治療用材料を、縫合糸またはその前駆構築物の内部コアに導入に導入すること、ならびにiv)縫合糸を対象となる宿主組織に導入するプロセスの間に、内部コア内での細胞または治療剤の保持を促すことを意図する。
【0088】
好ましい1つの態様において、組み立てられた縫合糸を対象となる宿主組織に導入するプロセスの間に、内部コア内での細胞または治療剤の保持を促すことは、流路を介して、生理活性材料、例えば、細胞および治療剤を内部コアに導入し、次いで、浸出を阻害するように流路をさらに制限する工程を伴う。1つの局面において、生理活性材料は外部シースの孔を介して導入され、次いで、障壁として作用する他の材料がシース上に、および孔の中に導入される。他の局面において、生理活性材料が導入された後に、例えば、圧縮、伸長、または他の変形態様によって、典型的には、孔の長さが伸びるが、外部シースを通る材料の流れを制限する寸法として小さな幅が機能する点まで幅が小さくなるように、シースを長軸方向の軸に沿って伸ばすことによって、外部シースにある孔の寸法が操作される。別の好ましい態様において、内部コアを外部シースに入れて、または外部シースの末端に通して導入する前に、生理活性材料が内部コアに導入される。この態様のさらなる詳細を以下に示した。
【0089】
前記のように、キットは、滅菌した包装容器に、生理活性材料もしくは抗菌材料、または洗浄剤、結合剤、もしくはコーティング剤を含むが、これに限定されない、保護材料もしくは他の方法で有用な材料を導入するための設備(例えば、口)を含んでもよい。これらの設備は、医療従事者が、幹細胞または他の生物細胞または治療用分子を含むと考えられている、見込みのあるレシピエントから抽出された包装容器材料に導入できるように構成されている時に特に価値がある。標的薬剤を導入するためのこのような設備は、液体もしくは他の材料を滅菌した包装容器に注入するための領域、または他の方法で導入するための領域を含んでもよいが、これに限定されない。この場合、当業者により予想され得るように、包装容器は再密封可能または自己密封可能である。さらに、キットは、包装容器から過剰な標的薬剤を取り除くための設備を含んでもよく、これらの設備(同様に口)は、皮下針を用いて抽出するための領域、一方向弁、十分な圧力が包装容器に加えられた時に流れを分離し、流出させる変形可能なポリマー、または当業者により予想され得る、他の方向の流れを制限する再密封可能な装置または自己密封可能な装置を含んでもよいが、これに限定されない。適切に設計された口は、本発明のある局面では、材料を導入するための口として、ならびに材料を除去するための口として機能することができる。他の場合では、導入口が包装容器の基端に位置し、排出口が包装容器の末端に位置することが、基端および末端を有する包装容器にとって有利な場合がある。二重口の包装容器には、標的薬剤が包装容器内で十分に分布するのを確実なものとし、結果として、縫合糸または装置の全ての関連部分と接触する確率が高まるフロースルー設計という利点がある。
【0090】
本発明はまた、包装容器から装置が取り出されると、組み立てられた外科手術用縫合糸が、第2の薬剤に関連する保護または治療に有用なある特定の表面特性を示すのに対して、装置の内部が、第1の薬剤に関連する治療に有用なさらなるまたは他の特性を示すように、幹細胞、他の生物細胞、および治療用分子を含むが、これに限定されない1つまたは複数の標的薬剤を外科手術用縫合糸または前駆構築物の一部分に適用し、次いで、その後の工程において、この同じ部分をさらなる標的薬剤または薬剤でコーティングまたは他の方法で被覆するように構成され得るキットを意図する。このような第2の薬剤の例は、抗菌分子および/または疎水性コーティング分子、例えば、脂肪酸、または他の治療剤もしくは保護コーティングを含むが、これに限定されない。本発明の1つの局面として、キットは、i)1つの包装容器区画における材料の連続導入、およびii)包装容器から装置を取り出す前、または取り出している間に異なる材料を適用することができる2つまたはそれ以上の包装容器区画への前記装置の通過を含むが、これに限定されない、材料を連続して適用するための任意の配置を含んでもよい。標的薬剤を適用するための2つまたはそれ以上の区画を有する包装容器の場合、本発明のある局面では、それぞれの区画が、薬剤を導入するための口または薬剤を除去するための口を有してもよい。
【0091】
本発明に関して、医療装置、例えば、外科手術用縫合糸または細長い組織スキャフォールドは、縫合糸の一端が包装容器から引き抜かれて、縫合糸材料が標的薬剤を含む区画を通り抜けるまで、標的薬剤が存在する特定の包装容器区画に縫合糸が曝露されないように包装容器に入れられてもよいが、包装容器に入れられる必要はない。
【0092】
前記のように、外科手術用縫合糸または前駆構築物の外部シースには、非極性液体がマルチフィラメント材料の織物もしくは不織布マトリックスまたは多孔性フィルムの中に埋め込まれてもよい。この非極性液体は、i)装置が縫合糸材料であり、縫合糸材料が最小の摩擦で組織を貫通しなければならない場合、潤滑、ii)生理活性分子と協力して作用する場合、相乗的利益、例えば、様々な増殖因子とオレイン酸との潜在的な相乗作用、ならびにiii)表面張力によって、シート内の材料が外部に時期尚早に漏出するのを防ぐ、さらなる障壁を含めて、いくつかの価値のある特性を提供することができる。
【0093】
前記のように、本発明は、標的薬剤を縫合糸または医療装置の一部分に適用し、その後に、その一部を他の薬剤または材料でコーティングまたは被覆する方法を意図する。この方法は、以下の工程:
i)準備のできた医療装置、例えば、組み立て前の外科手術用縫合糸を、少なくとも1つの標的薬剤を装置に無菌的に通すための口を有する滅菌した包装容器に入れる工程;
ii)任意で、口を介して、標的薬剤と医療装置との結合を容易にする結合剤を導入し、任意で、過剰な結合剤を包装容器から排出させる工程;
iii)口を介して、標的薬剤を包装容器に導入して、準備のできた医療装置と反応させる工程;
iv)医療装置に結合しなかった標的薬剤の部分を、口を介して、包装容器から排出させる工程;
v)任意で、過剰な標的薬剤の希釈および除去の助けとなるように洗浄用材料を包装容器に導入し、その後に、口を介して、洗浄用材料を包装容器から排出させる工程;
vi)口を介して、さらなる標的薬剤、薬剤、もしくはコーティング分子を包装容器に導入する工程、または医療装置が薬剤もしくは分子でコーティングされるように、他の方法で、さらなる標的薬剤、薬剤、またはコーティング分子を包装容器内で放出させる工程
を含む。
【0094】
または、本発明は、標的薬剤を、包装容器の一区画にある縫合糸または医療装置の一部分に適用し、次いで、縫合糸または医療装置の一部分を包装容器の他の区画に動かす方法であって、同じ部分がさらなる薬剤または材料に曝露される方法を意図する。この方法は、以下の工程:
i)準備のできた医療装置を、少なくとも1つの標的薬剤を装置に無菌的に通すための口を有する滅菌した包装容器に入れる工程;
ii)口を介して、標的薬剤を包装容器に導入して、準備のできた医療装置と反応させる工程;
iv)前記装置の薬剤に曝露した部分が、包装容器の他の区画に移動するように誘導する工程であって、装置がさらなる薬剤またはコーティング分子に曝露される工程
を含む。
【0095】
本発明に関して、複数の標的薬剤を外科手術用縫合糸または医療装置に適用するのに適した包装容器は、以下:
i)装置を収容するための容器または貯蔵槽;
ii)第1の薬剤と呼ばれる少なくとも1つの標的薬剤を準備のできた装置に無菌的に通すための、容器または貯蔵槽と連通している口;
iii)さらなる標的薬剤または薬剤(抗菌分子および疎水性コーティング分子を含むが、これに限定されない)を含有する第2の容器または貯蔵槽であって、第2の容器が外部刺激によって、さらなる標的薬剤を放出するように誘導して医療装置と接触させることができ、従って、第1の薬剤に曝露されている医療装置を、後で、第2の薬剤に曝露する、または第2の薬剤でコーティングことができる、第2の容器または貯蔵槽
を含んでもよい。
【0096】
好ましい態様において、包装容器から装置が取り出される時に、装置の表面上で発現されたさらなる最終薬剤は、潤滑性および密封性を有する疎水性液体、特に、脂肪酸、ならびに/または抗菌材料を含む。
【0097】
前記のように、本発明の組み立てられた縫合糸または組織スキャフォールド装置は、モノフィラメントまたはマルチフィラメント材料の形をとってもよい。このようなフィラメントには、一般的に用いられるほぼ円筒形の形状のフィラメント、ならびにフィルム状またはテープ状を含むが、これに限定されない他の断面形状のフィラメントが含まれる。さらに、包装されたキットは、当業者により予想され得るように、縫合糸材料をもつれさせることなく連続して調剤することのできる任意の配置で縫合糸材料を含んでよい。このような調剤システムは、縫合糸材料、ひも、ワイヤー、デンタルフロスおよびテープ、糸および類似の材料を調剤するために当技術分野において現在利用可能なものと類似していてもよい。本発明に関して、包装容器は、1人の患者において、または1つの創傷において使用するのに適した、ある長さの縫合糸材料を含んでもよい。または、包装容器は、縫合糸材料を、複数の別々の長さで、または別々の長さに分離できる連続した長さで含んでもよい。
【0098】
本発明は、縫合糸材料と併用するための包装されたキットに、1つまたは複数の外科手術用縫合針または類似装置を含めることを意図する。針は組織に貫通し、縫合糸材料を組織に通して引っ張るのを容易にし、従って、縫合糸材料を針に通す、または他の方法で縫合糸材料を針に取り付ける必要を小さくするために、包装容器の中にある時に縫合糸材料と一体化していてもよく、縫合糸材料に取り付けられてもよい。本発明のキットに関して、針の鋭い先端部には、尖端保護具、例えば、尖端が容易に貫通できない一片の材料が設けられてもよい。または、針は、包装容器を取り扱っている間に、または包装容器を開封する間に刺創の可能性を小さくするように、包装容器の中に取り付けられてもよい。
【0099】
本発明のキットおよび包装容器は、見込みのある患者、例えば、幹細胞、関心対象の他の生物細胞、および/または治療上価値のある分子(生理活性材料)を含むと推定された患者から抽出された材料を、液体溶液(同様に生理活性溶液)の一部として導入することができる、滅菌した包装容器の中にある領域または滅菌した包装容器の外部にある領域を含んでもよい。この包装容器設計は、当業者により予想され得るように、縫合糸材料が包装容器の中にある時に、または使用のために包装容器から抜き取られる時に、この溶液と物理的に接触するような設計である。さらに、本発明は、縫合糸材料が包装容器の中にある時に、または包装容器から抜き取られる時に、溶液と縫合糸材料との接触を最大限にするように構成された区画に、皮下針または類似の調剤用装置を介して溶液を導入するのを許容するように設計された別個の区画または切り離された区画の形を、生理活性溶液と縫合糸材料が接触する領域が包装容器の中でとってもよく、好ましくは、滅菌された別個の区画または切り離された区画の形をとることを意図する。このような配置は、溶液が包装容器に導入された時に縫合糸材料が溶液とすぐに接触するように、縫合糸材料を含有する拡張可能な領域の形をとってもよい。このような配置はまた、導入された溶液を保持し、縫合糸が包装容器から引き抜かれた時に通過しなければならない、管状のまたは他の形状の部を含んでもよい。縫合糸材料が包装容器の前記領域を通過することによって乱されない非生産的なポケットに、生理活性分子を含有する液体が存在する可能性を最小限にすることが意図される。生理活性分子を含有する液体と縫合糸材料を接触させるために、さらに複雑な機構も当業者により予想され得る。
【0100】
本発明は、滅菌した包装容器の中に入れられた外科手術用縫合糸または前駆構築物が縫合糸材料のリーダー(leader)部位を含んでもよいことを意図する。リーダー部は、生理活性材料を含むことを目的としないが、生理活性材料を含む縫合糸材料の残りと連続している、ある長さの縫合糸材料である。リーダー部はある区画から伸びていてもよく、この区画外にある領域と、縫合糸材料および生理活性分子溶液が接触しており、リーダー部には手でまたは器具でつかんで到達することができ、接触している区画から、縫合糸の生理活性分子でコーティングされた部を抜き取るように引っ張ることができる。さらに、リーダー部は、任意で、例えば、改善した、結び目を保有する特徴を示す材料を用いて、創傷修復において縫合糸の端をより効果的に作ることができるように処理することができ、縫合糸の後端(または末端)は縫合糸の生理活性材料区画の反対側に存在してもよく、後端はリーダー部とほぼ同じ特性を有する。縫合糸材料のリーダー部分、任意で、後端部分は、(a)視覚識別子、例えば、色、濃淡の度合い、質感、およびパターンの違い、ならびに/または(b)1つもしくは複数の物理的特性、例えば、生理活性材料の濃度、結び目を保有する特徴、および取り扱い性の違いによって区別することができる。従って、縫合糸材料は、大量の縫合糸材料が保管されている区画から、例えば、大量の縫合糸材料が保管されている区画と同じでもよく、異なってもよい、生理活性材料を添加することができる区画を通り、任意で、針または他のこのような装置が包装されてもよく、使用時に使用者によって包装容器が都合よく開封され得る包装容器のリーダー区画に入って、縫合糸材料が連続した鎖を形成するように包装容器の中に配置されてもよい。結果として、包装容器は、典型的には、リーダー区画に到達するいくつかの手段によって開封され、この到達は、縫合糸リーダー材料または手術針を露出するために、リーダー区画にある包装を切り取って、または引き裂いて開封するのと同じくらい単純なものでもよい。
【0101】
リーダー材料は、モノフィラメント、マルチフィラメント、またはフィルム型構築物の形をとってもよく、シース材料に加えられた張力とは反対方向の、リーダー材料に加えられた張力によって周囲シースから抜き取るのに十分な引張り強さのある任意の材料でよい。さらに、リーダー材料の末端は、好ましくは、外科手術用縫合糸の内部コアとして機能するのに適したモノフィラメントまたはマルチフィラメント材料の部の基端と連続して接合している。前記のように、リーダー材料は、外部シース内で内部コアが最適に配置されるように、シースからのリーダーの引き抜きを止めることができる点を示すために色でコード化されてもよく、他の方法で図示されてもよい。
【0102】
末端が、以下、末端止め具と呼ぶ縫合糸構築物の長さに沿って他の任意の点の断面積より大きな断面積を有する材料部を含む、外科手術用縫合糸も意図される。この配置の縫合糸はまた、基端に取り付けられた縫合針を有してもよいが、基端に取り付けられた縫合針を有することは必要とされない。前記のように、末端止め具は、任意の様々な材料から、様々な配置で作られてもよい。例えば、末端止め具は縫合糸の任意の部分と同じ材料のものでもよく、縫合糸と接合する異なる材料のものでもよい。末端止め具を有する縫合糸が患者の組織に通して引っ張られたら、末端止め具はサイズが大きいために、組織表面で縫合糸の端を止めるように、および他の方法で固定するように機能してもよく、従って、その点で、結び目を作ろうとする、または他の方法で縫合糸を固定する必要を小さくする。末端止め具はまた、縫合糸を組織に通し、次いで、縫合糸縫合のための力分散プレートとなる末端止め具に通して縫い戻すのを可能にする表面特徴または穴を含んでもよい。末端止め具はまた、以下の特徴:(i)生体適合性であること;(ii)生分解性であること;(iii)増殖因子を含むが、これに限定されない治療用材料を含むこと;(iv)縫合糸からの力を周囲組織に行き渡らせる設計であること;(v)組織内の縫合アンカーまたは人工装具装置として、取り付けられた材料の使用も容易にし得る任意の幾何学的配置を含むことの1つまたは複数を含んでもよい。前記の幾何学的配置には、縫合糸材料を通すことができる穴またはループ、骨、軟骨、または合成装置、ネジ山、拡張型アンカーを通る穴に入れるアンカープラグとしての使用を可能にする配置、ネジ、ピン、ステープルと適合する配置、ならびに当業者により予想され得る他の移植片装置および他の配置が含まれ得るが、これに限定されない。
【0103】
外科手術用縫合糸、具体的には、外部シースまたはそのスリーブは、調剤用注射針(同様に皮下針)、管、または他の類似装置の内部に水力学的に接続されてもよく、または末端で他の方法で機械的に固定されてもよく、次に、生理活性材料を含有し得る貯蔵槽に固定されるか、前記の本発明のキットでは、生理活性材料が導入される包装容器区画に接続される。最も単純な形では、組み立てられた外科手術用縫合糸構築物を形成するために、生理活性材料は、縫合糸内部コア内の長軸方向の空隙に、または中空のある外部シースに注入されてもよい。
【0104】
さらに、本発明は、内部コアが調剤用管の末端を通り、外部で外部シースを含む調剤用管区画を同軸的に通るように配置すること、さらに、調剤用管の基端において、または調剤用管の基端から取り出される点において、外部シースおよび内部コアが単一の実体として引き抜くことができるように2つを配置するか、または接合することを意図する。さらに、本発明は、管の中の液体を内部コアと外部シースとの間の区画に分配できるように、調剤用管の基端にある外部シースおよび内部コアが管から離れた方向に引っ張られ、この動きによって、生理活性材料を含有する内部コアが管の内部から引き抜かれると同時に、シースが調剤用管から引き抜かれて、調剤用管の基端に、外部シースおよび内部コアからなる組み立てられた縫合糸構築物が形成される方法を意図する。流れが調剤用管を通って、このプロセスの間に形成する内部コアおよびシースに入るように、貯蔵槽内の液体に力を加えることができる。任意で、縫合糸構築物は形成した時に、縫合糸構築物を同軸的に含めるのに適した直径の管に引き込められてもよい。この管は、縫合糸構築物形成のためのガイディングスキャフォールド、または縫合糸の損傷もしくは汚染を避ける保護スリーブ、または縫合糸構築物において有用な外部材料をもたらすさらなる手段をもたらす任意の材料の管でよい。前記方法の中間構築物および最終構築物は本発明のさらなる局面である。
【0105】
リーダー部が外部シースの基端から引き抜かれた時に、内部コアがシースの末端を通ってシースの中に引き寄せられ、さらに、このような作用によって、貯蔵槽に含まれている生物細胞および生理活性材料が縫合糸シースの内部コアに導入されるように、内部コア材料の基端は好ましくは外部スリーブシースの末端に配置され、調剤用注射針、管、または他の装置、またはキット包装容器まで伸びている。細胞および生理活性材料は、摩擦力によって内部コアと外部シースとの間の領域に引き寄せられてもよく、および/または内部コア材料は、細胞および生理活性材料を、コア材料に埋め込んだ、吸着した、吸収した、または結合体化した状態で含んでもよく、細胞および生理活性材料は貯蔵槽の中に入れられてもよく、貯蔵槽の中に配置する前にコア材料に適用されてもよい。シースまたはコア材料はまた、その構築物のマトリックス内に、成分間の摩擦が少なくなる、細胞および生理活性材料の保持が増大する、または抗菌性になるという利益をもたらし得る任意の材料が埋め込まれていてもよい。このような埋め込まれた材料の例には、天然材料、例えば、脂肪および油、合成材料、例えば、シリコーンおよびポリマー、公知の縫合糸潤滑剤、ならびにその組み合わせが含まれるが、これに限定されない。
【0106】
本発明は、包装容器貯蔵槽の中の液体に力を加えて、生理活性材料を内部コアの中に動かすことを意図する。本発明に関して、様々な力を用いて、液体および生理活性材料を縫合糸マトリックス中に、または縫合糸マトリックス上に動かすことができる。これらの力には、圧力または圧縮力、重力、遠心力、摩擦力または他の機械的な力、電気的な力、浸透圧による力、および当業者が使用し得る他の任意の力が含まれ得るが、これに限定されない。
【0107】
本発明は、コアをシースに引き込むプロセスの間に、外部シースと内部コアとの間の区画に、または内部コアの中に細胞および生理活性材料を含めることを容易にするために、当業者により容易に予想され得る、切れ目、空隙、またはパターンを内部コアに組み込むこと意図する。このようなパターンの例には、シースおよび縫合糸コアが最終的な組み立て方向になったら、例えば、シースの内径と同じ直径のコア材料の反復(periodic)部に配置されたら、コア材料の長さに沿って細胞および生理活性材料の流れを制限し、水力学的障壁または材料流動障壁を効果的に形成するように設計された配置が含まれ得る。前記のように、内部コアは、複数のフィラメントまたは1つもしくは複数のテープ状フィルムから作られてもよく、テープ状フィルムは縫合糸シースに引き込まれる前には、生理活性材料と接触する表面領域を最大にする外側に広がった配置で示され、次いで、内部コア材料は、必要に応じて、外部シース内に収まるように、ひだが寄せられてより密な配置になる。実際には、このひだを寄せるプロセスそれ自体によって細胞および生理活性材料が捕捉されてもよく、ひだ寄せは、内部コアを無作為に圧縮した結果でもよく、コア材料をねじる、またはコア材料に他の作用を及ぼすことによって達成され得るように、より規則正しく位置合わせした結果でもよい。
【0108】
本発明は、使用前の汚染を阻止するために、外部シースを管または他の包装容器の中に同軸的に含めることを意図する。このような管または保護包装容器は取り扱い前の滅菌に適しており、縫合糸材料を組織に挿入する直前または挿入している間に取り出すことができる。
【0109】
他の配置において、外部シースは、前記のように調剤用管の外側で同軸的に配置され、長軸方向の軸に沿って圧縮状態に保たれ、その結果、長さが短く、直径が大きくなってもよい。これは、シースを、長軸方向の軸に沿って後で伸ばすことができる状態にして形成することによって達成されてもよく、シースを形成し、次いで、長軸方向の軸に沿って圧縮することによって達成されてもよい。このような構築物が長軸方向の軸に沿って伸長されると、構築物は軸を中心にして小さくなり、直径が小さくなる。織物構築物の場合、場合によっては、この動きによって、ぴったりした織物が作り出される。同じ装置が長軸方向の軸に沿って圧縮されると、直径が大きくなる。本発明に関して特に価値があるものは、2:1を超える比、または2:1の比まで、長軸方向の軸に沿って圧縮状態から伸長状態に引き伸ばすことができる縫合糸シースである。例えば、圧縮状態で10cm長の縫合糸シースは、伸長状態では20cm長である。
【0110】
本発明はまた、前記の伸長可能な外部シースが長軸方向の軸に沿って圧縮され、調剤用管、例えば、皮下針、または他の中空材料の調剤用装置もしくは代用物が軸に沿って、縫合糸材料織物シースのコアに通して挿入されるほど十分に直径が大きくなるように、マルチフィラメント縫合糸材料が織られる方法を意図する。または、および、好ましくは、縫合糸材料シースは中空材料の調剤用装置に後で移されるように、前記調剤用管または適切な代用品の外部の上に直接織られる。適切な時に、注射器または他の液体貯蔵槽が皮下針に取り付けられ、生理活性分子が充填される。次いで、調剤用装置の内容物が調剤用管の中に入り、調剤用管から吐出されると同時に、針の吐出し点での織物シースの長さが長くなり、直径が小さくなって、縫合糸コアの中に生理活性材料および他の物質が効果的に捕捉および圧縮されるように、織物縫合糸材料シースは調剤用管から引き抜かれる。次いで、縫合糸構築物は形成した時に、縫合糸構築物を同軸的に含めるのに適した直径の第2の管に引き込まれてもよい。この管は、縫合糸構築物形成のためのガイディングスキャフォールド、縫合糸の損傷もしくは汚染を避ける保護スリーブ、または縫合糸構築物において有用な外部材料をもたらすさらなる手段を提供する任意の材料の管でよい。
【0111】
さらに、本発明は、外科手術用縫合の当業者に公知の付属品配置を用いて、縫合糸シースおよび縫合糸コアの基端が縫合針の末端に同軸的に接合する、および取り付けられるように、基端(同様に、先端または尖端)および末端(同様に、終端、取り付けのための端、場合によっては加締めのための端)を有する縫合針、ならびに外部シースおよび内部コアを有する縫合糸からなるアセンブリを意図する。ここで、縫合糸シースおよび縫合糸コアは、長軸方向の軸に沿って張力によって伸長された時にほぼ同じ長さであり、縫合糸コア材料が、幹細胞および他の生物細胞、生理活性分子、ならびに他の材料を含む治療価値を有する材料に簡単に曝露されるやり方で示されるように、縫合糸シースは、長軸方向の軸に沿って基端に向かって圧縮されているか、または圧縮状態で形成される。このようなアセンブリは、滅菌した包装容器の中に構築物が入れられ、生理活性材料または治療価値を有する他の材料を導入することができる包装容器区画の中に縫合糸コア材料が入れられる前記のキットの一部でもよい。または、キットは、包装容器の中にまたは包装容器の外部に狭窄点を含んでもよく、この直径は縫合針が通過できるが、狭窄を通過するためには縫合糸シースを長軸方向の軸に沿って伸長することが必要であり、これによって、縫合糸構築物の長さに沿って、縫合糸コアおよび埋め込まれた治療用材料が縫合糸シースの中に効果的に入れられる。
【0112】
さらに、本発明は、縫合糸構築物を形成するために長軸方向の軸に沿って伸長される前の、また引っ張られる前の状態にある縫合糸シース材料には、シース材料が縫合針、縫合糸コアに取り付けられる基端または伸長プロセスにおいて末端から離れた点に他の方法で固定される基端、および末端があってもよく、末端は、基端とは反対に相対的に動くのを容易にする性質を持っていてもよいことを意図する。末端の特徴は、前記の末端止め具配置を含む、当業者により容易に予想される任意の機械的配置を含んでもよい。シース末端止め具は、縫合糸の包装または生理活性材料を調剤する器具の中の領域と機械的干渉(mechanical interference)を有してもよく、これによって、末端が所定の位置に留まっている包装または調剤用器具から縫合糸の基端を引き離し、それによって、コア材料の上にシース材料を引き伸ばしながら、生理活性材料を縫合糸の中に調剤することが可能になる。シース末端止め具はまた、縫合糸末端止め具について以前に開示された目的を満たすこともできる。さらに、本発明の局面は、縫合糸コアが、縫合糸コアの末端に、広がった領域であるコア末端止め具を含んでもよいことである。このコア末端止め具は任意の配置または材料でよく、縫合糸末端止め具と同様の特性を有する。本発明の1つの局面は、コアの末端が縫合糸の末端に通らないように、コア末端止め具がシース末端止め具と噛み合う設計であってもよいことである。コア末端止め具は、コア末端止め具とシース末端止め具との間でさらに相対的に動かないように、コア末端止め具がシース末端止め具と機械的にまたは他の方法で係合する設計であってもよい。これを実現するための多くの機構が当業者により予想され得る。最も単純な機構は、コア末端止め具がシース末端止め具の中心の穴の場所にパチンとはまる、締りばめである。シース末端止め具とコア末端止め具が係合することによって、コアから縫合糸の末端に材料が流れないようにする部分的または完全な液圧シールを得ることができる。
【0113】
前記のように、本発明は、フィルムまたはテープ状材料の形をした内部コアの提供を意図する。生理活性分子結合部分を有する、または生理活性分子結合部分を有さない、このフィルムは、生理活性材料(幹細胞および他の生物細胞、生理活性分子、ならびに治療価値のある他の材料)に曝露することができ、次いで、長軸方向の軸を中心にしてねじって、結果として生じる構築物の中に生理活性材料を機械的におよび他の方法で閉じ込める縫合糸コアを形成することができる。次いで、このようなねじれた構築物は、ねじれた形をした構築物を結合するために、当業者に明らかな任意の数のプロセスに供することができる。このようなプロセスには、糊付け、コーティング、部分的もしくは全体的な融解、または機械的ステープリングもしくは他の方法でフィルム層を絡ませることが含まれるが、これに限定されない。このようなフィルム構築物はまた、フィルムをねじる、または機械的に圧縮すると縫合糸構築物が自然に結合するように、片側に細胞および生理活性材料を、反対側に結合材料を設けて形成することもできる。細胞および生理活性材料に曝露されている間にまたは縫合糸に形成される前に、このようなフィルム構築物には結合材料側に剥離紙/フィルムがあってもよい。
【0114】
C.本発明の態様を製造および使用する方法
生理活性分子、例えば、増殖因子が身体の一領域に導入された場合、適切な濃度で存在する場合にのみ、局所組織に治療利益をもたらし得る。このような生理活性分子を標的領域に固定化する手段がなければ、体内の循環系はこの領域から生理活性分子を素早く運び出して、目的の治療利益の一部しか得られない可能性がある。生理活性材料を固定化するための広範囲の技術が提案されており、これらの多くは本発明に関して有用である。
【0115】
TGF-βサイトカインスーパーファミリー(増殖因子)のメンバーと、ヘパリンおよび硫酸ヘパリンを含有する分子との結合は公知である
7。全内容が参照により本明細書に含められる米国特許第6,921,811号において、Zomora, et. al.は、シリル-ヘパリン複合体および生理活性分子がヘパリン活性分子に直接結合している医療装置コーティングを開示する。Zomora特許では、シリル-ヘパリン複合体は疎水結合相互作用を介して医療装置に接着する。Zomoraにより開示される増殖因子を含有するフィルムコーティングの作製は、自己組織化フィルムを利用する本発明の新規の構築物のある局面において有用であり得る。
7 C.C. Rider, 「Heparin/heparin sulphate binding in the TGF-b cytokine superfamily」, Biochem. Soc. Trans. (Great Britain), 34: 458-460 (2006).
【0116】
全内容が参照により本明細書に含められる米国特許出願第2005/0209145号において、Stupp, et. al.は、ファージディスプレイプロセスの増殖因子認識産物を組み込んだペプチド化合物の作製、およびこれらの化合物と標的化増殖因子との結合を開示する。Stupp, et. al.はまた、自己組織化ナノファイバーまたはミセルの作製における、これらの化合物の使用を開示する。Stupp et al.に記載の技法のいくつかは、本発明の構築物における生理活性分子の固定化と併用すると有用であり得る。
【0117】
全内容が参照により本明細書に含められる米国特許第6,835,394号、同第7,217,427号、ならびに米国特許出願第2006/0165810号および同第2007/0218123号において、Discher, et. al.は、ポリマーソーム(polymersome)および関連するカプセル膜の作製および使用を開示する。Discherに記載の技法は、本発明の構築物における生理活性分子の固定化と併用すると有用であり得る。
【0118】
全内容が参照により本明細書に含められる米国特許出願第20080058246号において、Bhaskaran, et. al.は、増殖因子タンパク質および他の化合物の高度の機能を維持しながら、これらの生物学的化合物のポリマー結合体を合成する方法を開示する。これらの技法は、本発明に関して、特に、生理活性分子を本発明の構築物に固定化する手段として有用であり得る。
【0119】
生理活性のあるガラス、セラミック、および組成物は医療装置において有用である
8。特に、銀をドープした生理活性ガラス(AgBG)は、外科手術用縫合糸への有効な抗菌処理として証明されている
9。このタイプの材料は、本発明のシースの内面および外面の両方ならびにコア材料の外面に有用である。
8 Boccaccini, Aldo R et al., Expert Review of Medical Devices, 2 (3): 303-317 (May2005).
9 Pratten, Jonathan et al., 「In Vitro Attachment of Staphylococcus Epidermidis to Surgical Sutures with and without Ag-Containing Bioactive Glass Coating」, Journal of Biomaterials Applications, 19 (1): 47-57 (2004).
【0120】
材料を結合体化する構築物または方法は、縫合糸シースもしくは縫合糸コアへの生理活性材料の結合を含むが、これに限定されない本発明のある局面において、または本発明の医療装置に結合もしくは埋め込むことができる構築物の作製において有用であり得る。
【0121】
全内容が参照により本明細書に含められる米国特許第6,322,810号において、Alkan-Onyuksel, et. al.は、生物学的に活性のある化合物を組み込んだミセルおよび結晶生成物の作製を開示する。Alkan-Onyuksel特許に記載の方法は、本発明のある局面に、特に、本発明の縫合糸コアの構築物に生理活性分子を固定化する手段として適用可能であり得る。
【0122】
HBPA-1ヘパリンゲル(ヘパリンおよび硫酸ヘパリン)を用いて血管形成を改善することは公知であり、本発明のある局面において有用である。これらのヘパリンゲルは、創傷部位に存在する内因性増殖因子を動員および活性化すると考えられている
10。ヘパリンおよび硫酸ヘパリンと、本発明の縫合糸構築物および長軸方向の組織スキャフォールド装置を使用することも本発明の一局面である。
10 Corral, Claudio J. MD et al., 「Vascular Endothelial Growth Factor Is More Important Than Basic Fibroblastic Growth Factor During Ischemic Wound Healing」, Arch Surg. , 134:200-205 (1999).
【0123】
手術針(同様に手術切開部材)を縫合糸材料に予め取り付けることは当業者に周知である。全内容が参照により本明細書に含められる米国特許第5,226,912号は、取り付けに用いられる技法の一例である。この特許において、Kaplan, et. al.は、手術針-らせん状の編み縫合糸装置を組み合わせた構築物を開示している。この特許はまた、顕微手術に有用な物質、例えば、ヒト増殖因子が溶解した水溶性担体を含めるという概念も開示している。液体担体は水溶性になるために、天然で極性がなければならない。手術針と縫合糸材料を組み合わせるための、この構築物および類似の構築物は、本発明の特定の態様と併用すると有用であるかもしれない。
【0124】
マルチフィラメント編み縫合糸は当技術分野において公知である。全内容が参照により本明細書に含められる米国特許第5,306,289号において、Kaplan, et. al.は編み縫合糸技術を概説しており、特性が改善した編み縫合糸の形成を開示している。Kaplan, et.al.はまた、ピック数が多く、シースヤーン数が多い編み縫合糸の構築物を開示している。ここで、縫合糸は、少なくとも1つの顕微手術に有用な物質、例えば、ヒト増殖因子も含有している。
【0125】
全内容が参照により本明細書に含められる米国特許第5,667,528号において、Colliganは、シースおよびコア構造を有するマルチフィラメント縫合糸を手術切開部材に取り付けるための方法を開示する。Colliganの方法は本発明に関して有用であり、ここで、彼は、ある長さのコア材料を縫合糸から取り出して、コアのないシースを形成するための技法について説明している。次いで、Colliganは、縫合針への取り付け点としてコアのないシースを使用している。
【0126】
全内容が参照により本明細書に含められる米国特許第7,329,271号において、Koyfman, et. al.は、吸収性コアで織られた高強度縫合糸の構築物を開示する。この特許に記載の技法および構築物は、本発明の特定の態様と併用すると有用であるかもしれない。
【0127】
全内容が参照により本明細書に含められる米国特許出願第2007/0170080号および同第2008/0128296号において、Stopek, et. al.は、医療装置に少なくとも1種類の薬剤を導入するための密封された口が設けられた密封可能なパウチを備える医療装置包装容器の構築物を開示している。Stopekにより説明された構築物は、本発明の特定の局面と併用すると有用であるかもしれない。さらに、本発明は、医療装置包装容器システムを改善したものを提供する。
【0128】
以下で、本発明を実施例を参照してさらに詳細に説明する。しかしながら、以下の材料、方法、および実施例は本発明の局面の例示にすぎず、本発明の範囲を限定することを目的としない。従って、本明細書に記載のものと類似のまたは同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができる。
【実施例】
【0129】
実施例1:外科手術用縫合糸キット
前記のように、本発明は、滅菌した包装容器の中に含まれる外科手術用縫合糸および針のキットを提供することを意図する。この例示的な実施例を
図8〜11に図示した。本実施例に関して用いられる縫合糸および針の組み合わせは、フィラメント状内部コア(72)を収容する織物外部シース(71)からなる、
図7Aおよび
図7Bに図示したものと類似している。しかしながら、別の配置、例えば、前記の配置ならびに/または
図5および
図6に図示した配置も良好に合わせることができる。どちらの場合でも、縫合糸(70)の基端(75)は縫合針(73)の末端に取り付けられ、組織を貫通するために鋭い針先端部(基端)には何もない。
【0130】
図7および
図9に関して、外部縫合糸シース(71)は、生分解性ポリヒドロキシアルカノエート材料の織物構築物、例えば、Tepha, Inc.(Lexington, MA)製の織物構築物であるのに対して、内部縫合糸コア(72)は、ヘパリン化合物が吸着した、または他の方法で結合体化した複数のポリグリコール酸フィラメントからなる。織物シース(71)は、包装容器システム、例えば、
図9の包装容器システム(90)に入っている時には、第2の区画(93)の中で圧縮状態に保たれ、外部シースは、長軸方向の軸に沿って、約30mmの伸長した長さから、約6mmの圧縮された長さに圧縮される。圧縮した縫合糸シース材料にはオレイン酸がしみ込んでいてもよく、これは織物構築物の間隙空間を満たし、潤滑剤として、および極性液体が内部コアから外部シースに運ばれるのを、逆に外部シースから内部コアに運ばれるのを防ぐ障壁として機能する。縫合糸シースの末端は分離膜(94)を通り抜け、第1の末端止め具(77)で終わる。第1の末端止め具(77)は一般的に平らなワッシャーディスクの形をとり、典型的には、3mm内径および5mm外径を有し、ディスクは、縫合糸の長軸方向の軸に沿って0.5mm厚であり、ポリ乳酸(PLA)から構築される。縫合糸コアの末端には、シース末端止め具の孔と寸法が一致する第2のPLAコア末端止め具(78)が設けられている。
【0131】
包装容器の中には、針および縫合糸シースの両方が取り付けられている基端(76)から、6mmの圧縮したシースを通り、シースの末端およびシース末端止め具が縫合糸コア長軸方向の軸に沿って自由に動くようにシース末端止め具の穴を通り、包装容器の別個の区画(91)まで伸びる内部縫合糸コア(72)も含まれる。第2の区画は、少なくとも部分的に伸長可能であり、特に、第1の注入口(92)を介して、この区画に、関心対象の生理活性材料(例えば、生物細胞または治療剤のスラリーまたは溶液)が導入された時に少なくとも部分的に伸長可能である。特に好ましい態様において、注入口は、従来の皮下針の再密封可能な入口点として機能する、包装容器壁と一体化したポリマー材料またはエラストマー材料の領域の形をとる(図示せず)。
【0132】
前記のキットは、骨髄から単離された生理活性材料が組み込まれた外科手術用縫合糸または組織スキャフォールドの製作において特に有用である。臨床用の骨髄は、典型的には、注射器型装置を用いて対象患者の骨から抽出された吸引液として得られる。多くの場合、寛骨はサイズが大きく、体表面に近接しているために、供給源として用いられる。ある用途では、骨髄はそのまま用いられるが、本実施例は、従来の分離技術、例えば、遠心分離を用いて単離および分離された望ましい画分(サイトカイン、前駆細胞)の使用を意図する。
【0133】
本実施例の状況では、骨髄を、日常的な外科的処置中に患者の臀部から抽出し、生理活性分子を濃縮するために結果として生じた抽出物を遠心沈殿する。次いで、骨髄からの細胞および分子を、注射器で、第1の注入口(92)を介して包装容器(90)の縫合糸コア区画(91)に注入する。次いで、包装容器の針末端を開封し、針を引き抜き、包装容器の反対方向に引っ張る。このプロセスの間に、針が縫合糸末端止め具から引っ張られるように、包装容器をシース末端止め具の点に保つ。この動きによって縫合糸シース(71)が伸び、縫合糸コア(72)および生物学的材料がシースの中心に引き寄せられる。完全に伸びると、シースおよびコアの末端は一致し、コア末端止め具(78)はシース末端止め具(77)にカチッとはまり、末端は一緒に固定される。縫合糸は包装容器から離れたら、使用する準備ができる。縫合糸コアとシースの間で相対的に動かない(後で、ずれない)ことに加えて、縫合糸の末端にある末端止め具アセンブリの組み合わせは組織アンカーまたは骨アンカーとして機能して、組織または骨の領域を貫通する縫合糸の力を分散してもよく、組織または骨の穴に入れたプラグとして機能してもよく、人工装具装置と連係するように構成されてもよい。または、縫合糸末端を縛った後に、末端止め具アセンブリは機能してもよい。いずれかの選択肢を容易にするために、部材は生体適合性であることが好ましい。ある特定の状況では、部材は生分解性でもある、および/または治療用材料からなることも望ましい場合がある。
【0134】
実施例2:外科手術用縫合糸
本実施例の外科手術用縫合糸は、フィラメント状内部コア(72)を収容する織物外部シース(71)からなる、
図5および
図7に図示した外科手術用縫合糸と類似している。特に、縫合糸は、それぞれ20本のフィラメントの40デニール束および80ピック/インチのピック数を用いた織物ポリエステル(PET)シースを、100本のUHMWポリエチレン(PE)フィラメントの5本の220デニール束からなるコアの上で織ることによって形成した。完成した構築物は約0.7mm直径であった。材料を45cmの縫合糸に切断した。基端を外科手術用縫合針に接続した。内部コアのうち35cmが露出するように、シースを、縫合糸の末端から縫合糸の基端に向けて引っ込めた。コアの直線軸に対して垂直に加えられた剪断運動によって、コア繊維が広がるように誘導した。次いで、構築物を滅菌した。縫合糸コアをフィブロネクチンでコーティングし、次いで、従来の遠心分離法を用いて得られた骨髄吸引液の幹細胞を有する画分に曝露した。次いで、骨髄成分、具体的には、幹細胞および他の生理活性分子が縫合糸コアの中に引き込まれて、シースが構築物の外側で保護特性および保持特性を提供するように、シースをコアの上で引っ張った。次いで、シースの末端とコアの末端との相対位置を固定するために、縫合糸構築物の末端に結び目を作った。
【0135】
実施例3:外科手術用縫合糸
本実施例の外科手術用縫合糸は、フィラメント状内部コア(72)を収容する織物外部シース(71)からなる、
図5および
図7に図示した外科手術用縫合糸と類似している。特に、縫合糸は、それぞれ20本のフィラメントの40デニール束および80ピック/インチのピック数を用いた織物ポリエステル(PET)シースを、100本のUHMWポリエチレンテレフタレート(PE)フィラメントの220デニール束、および48本のポリグリコール酸(PGA)フィラメントの128デニール束からなるコアの上で織ることによって形成した。完成した構築物は0.35〜0.40mm直径であった。材料を40cmの縫合糸に切断した。基端を外科手術用縫合針に接続した。コアのうち31cmが露出するように、シースを、縫合糸の末端から縫合糸の基端に向けて引っ込めた。剪断運動によって、コア繊維が広がるように誘導した。
【0136】
生分解性接着剤を用いて、縫合糸シースの末端を包装容器の内部に固定した。この包装容器は、生物細胞および他の治療用材料を有する液体を導入することができる区画に、露出したコアが存在する、
図8および
図9に図示したものと類似する設計であった。包装容器を密封し、アセンブリを滅菌した。幹細胞を含有する溶液を包装容器の内部に導入した。幹細胞はコアのPGAフィラメントに結合した。縫合糸の基端に取り付けられた縫合針を包装容器から取り出し、シースがコアの上に引き抜かれ、さらに、幹細胞を含有する液体がコア内に閉じ込められるように包装容器から引き抜いた。
【0137】
実施例4:外科手術用縫合糸
本実施例の外科手術用縫合糸は、フィラメント状内部コア(72)を収容する織物外部シース(71)からなる、
図5および
図7に図示したものと類似している。特に、縫合糸は、それぞれ20本のフィラメントの40デニール束および80ピック/インチのピック数を用いた織物ポリエステル(PET)シースを、100本のUHMWポリエチレンテレフタレート(PE)フィラメントの220デニール束、および48本のポリグリコール酸(PGA)フィラメントの128デニール束からなるコアの上で織ることによって形成した。完成した構築物は0.35〜0.40mm直径であった。材料を40cmの縫合糸に切断した。
【0138】
シースの末端を中空のある3.5mmx7.5mmチタン骨ネジの内周に、締りばめによってネジ末端内部に固定する強固なPETリングを用いて取り付ける。縫合糸コアをネジに通し、コアの末端を、骨ネジの末端と締りばめと形成するような寸法のPE末端止め具に取り付ける。次いで、コアのうち31cmが露出するように、シースおよび骨ネジを縫合糸コアの末端から縫合糸コアの基端に向けて引っ込める。コア繊維を広げて、ポリ-L-リジンでコーティングする。骨ネジ末端に壊れやすい液圧シールを備え、生物学的材料を導入するための密封可能な口を末端に備える5mm直径x30mmプラスチック管の内部に、露出コア部をゆるくまきつける。手術チームは、外科手術の時に、骨髄吸引液または他の生物製剤を含有する液体を生物製剤用管に注入し、次いで、縫合糸の針末端を引っ張ることでコアを縫合糸に引っ張り戻し、それによって、縫合糸の中に生物製剤を捕捉することができる。
【0139】
場合によっては、骨ネジおよび取り付けられた縫合糸は、1つのユニットとして使い捨てドライバーと共に外科手術に供給される。本実施例の構築物はまた、生物製剤用管の構造延長が骨ネジおよび取り付けられたドライバー軸に及んで強固な構築物を作り出すように供給されてもよい。生物製剤が導入された後、コアは、シース、ネジ、およびドライバー軸を通って、コア末端止め具がネジの末端と係合する点まで引き戻され、生物製剤用管は取り除かれ、縫合糸は、外科手術に使用するための従来の縫合糸/アンカー/ドライバーセットのような構成になる。
【0140】
実施例5:外科手術用縫合糸キット
外科手術用縫合糸および針のセットを、滅菌した包装容器、例えば、
図8または
図9に図示した包装容器に封入する。針の基端は尖端を含み、針の末端は縫合糸シースの基端および縫合糸コアの基端に取り付けられる。縫合糸シースは、ポリヒドロキシアルカノエートの織物構築物である。包装容器内で、シースは、長軸方向の軸に沿って、30mmの伸長した長さから6mmの長さまで圧縮される。圧縮された縫合糸シース材料にオレイン酸をしみ込ませる。オレイン酸は、織物構築物の中にある間隙空間を満たし、潤滑剤として、および極性液体がシースの内部から外部へ移動するのを防ぐ障壁として作用する。縫合糸シースの末端で、縫合糸シースは、3mm内径および5mm外径を有する平らなワッシャーディスクからなる末端止め具を通り、これに取り付けられる。このディスクは、縫合糸の長軸方向の軸に沿って0.5mmの厚さがあり、ポリ乳酸(PLA)から構築される。縫合糸コアは、ヘパリン化合物が表面に吸着している、または他の方法で結合体化している、複数のポリグリコール酸フィラメントである。縫合糸コアの末端には、シース末端止め具の穴と寸法が一致するPLAコア末端止め具が取り付けられる。包装容器の中で、縫合糸コアは、針および縫合糸シースの両方に取り付けられた基端から、6mmの圧縮されたシースを通り、シースの末端およびシース末端止め具が縫合糸コアの長軸方向の軸に沿って自由に動くように、シース末端止め具の穴を通って、包装容器の別個の区画まで伸長している。ここで、皮下針を用いた注射によって包装容器壁を通して、治療用材料、生理活性材料、および生物細胞を導入できるように、包装は伸長可能である。皮下針用の再密封可能な入口点を提供するために、ポリマー材料の領域が包装容器壁に設けられる。
【0141】
外科的処置中に、骨髄を患者の臀部から抽出し、生理活性分子を濃縮するために遠心沈殿する。次いで、骨髄からの細胞および分子を、注射器で、包装容器の縫合糸コア区画に注入する。次いで、包装容器の針末端を開封し、針を引き抜き、包装容器の反対方向に引っ張る。このプロセスの間に、針が縫合糸末端止め具から引っ張られるように、包装容器をシース末端止め具の点に保つ。この動きによって縫合糸シースが伸び、縫合糸コアおよび生物学的材料がシース中心に引き寄せられる。完全に伸びた状態で、シースおよびコアの末端は一致し、コア末端止め具はシース末端止め具とパチンとはまり、末端が一緒に固定される。次いで、包装容器を取り外し、縫合糸を使用する準備ができる。縫合糸の末端にある、組み合わされた末端止め具アセンブリは、縫合糸が組織を通って引き抜かれた時に、表面アンカーまたは止め具として機能してもよく、縫合糸の末端が結び付けられた後に切断してもよい。
【0142】
実施例6:多成分シース
0.3mm直径縫合糸は、例えば、
図5および
図7に図示した、織物外部シースおよび線状のマルチフィラメント内部コアから構築される。外部シースは80デニール繊維で織られている。シース繊維の4分の1は50%グリコリドおよび50%dl-ラクチドのコポリマーから作られており、インビボで急速に分解する。残りのシース繊維はポリエステル材料の繊維である。内部コアは、引張り強さをもたらすUHMWポリエチレンフィラメントから作られる。このフィラメントを、幹細胞が埋め込まれた自己組織化ペプチドナノファイバースキャフォールドと混入して、幹細胞を含有する内部コアを得る。シースのコポリマーはインビボに導入されると分解し始め、内部コアと周囲環境とが相互作用する機会を高める。
【0143】
実施例7:織物縫合糸
5番縫合糸(整形外科手術において用いられるような、0.7mm直径を有し、20〜21ゲージに対応する、太い編み縫合糸)は、繊維の向きが縫合糸の直線軸から約22度ずれるように織られた、40デニール繊維ポリグリコール酸シースから構築される。コアもポリグリコール酸繊維を含む。シース繊維の向きが変わって直線軸から約45度ずれるように、30cmの縫合糸材料部を直線軸に沿って圧縮する。この作用によって、織物開口部は、繊維間の直径が20ミクロンより大きな間隙空間(孔)を形成する。この圧縮状態で縫合糸を、生物細胞および他の治療用材料を含む液体を導入するのに適した密封された包装容器に入れる。包装容器は、縫合糸が包装容器から引き抜かれた時に通過しなければならないピンチポイントの形をした設備を含む。ピンチポイントは、直線的な引張力を縫合糸に加え、シース繊維の繊維方向が直線軸から約22度ずれている伸長状態に縫合糸構築物を戻す。これにより、孔領域の大部分は効果的に閉じられ、治療用材料はシースの間隙空間(孔)から押し出され、縫合糸のコア内に治療用材料は拘束される。
【0144】
実施例8:幹細胞固定化
2番縫合糸(直径0.6〜0.6mm、23〜24ゲージに対応する)はNylon 6.6の織物シースから組み立てられ、生体吸収性のPolyglactin910織物シースが、ゆるく織られたNylon 6.6コアを取り巻いている。シースは20cm長の構築物である。コアは、25cm長のリーダー部および20cm長の生理活性部からなる45cm長の部を含む。最初の5cmは縫合糸シースの基端を超えて伸びている。次の20cmを、最初は、縫合糸シース内に配置し、最後の20cm部を、治療用材料を添加するために貯蔵槽内に配置する。縫合糸コアの生理活性部を、鉱油の薄い膜で表面コーティングする。油と導入された液体の間の境界面で薄い膜が形成されるように、ヘパリン化合物に結合している骨形成タンパク質-2(BMP-2)を貯蔵槽に導入する。次いで、貯蔵槽内の液体を、幹細胞を含む液体と交換する。次いで、コアのリーダー部を縫合糸シースの基端から引き抜き、結果として、コアの生理活性部は、幹細胞を含む液体の一部および表面固定化BMPと共に縫合糸シースの中に引き込まれる。ヒートシールによって、シースの2つの末端を止める。
【0145】
実施例9:エレクトロスピニングによるコア
本実施例の外科手術用縫合糸は、フィラメント状内部コア(72)を収容する織物外部シース(71)からなる、
図5および
図7に図示した外科手術用縫合糸と類似している。特に、縫合糸は、それぞれ20本のフィラメントの40デニール束および80ピック/インチのピック数を用いた織物ポリエステル(PET)シースを、100本のUHMWポリエチレン(PE)フィラメントの5つの220デニール束からなるコアの上で織ることによって形成した。完成した構築物は約0.7mm直径であった。材料を45cmの縫合糸に切断した。基端を外科手術用縫合針に接続した。コアのうち35cmが露出するように、シースを、縫合糸の末端から縫合糸の基端に向けて引っ込めた。コアの直線軸に対して垂直に加えられた剪断運動によって、コア繊維が広がるように誘導した。広がったコア繊維を、PLAナノファイバーを生産するエレクトロスピニングユニットの場に配置する。コアの総質量の0.1%未満の質量に相当するPLA材料を蓄積させる。構造繊維間でナノファイバーがランダムに枝分かれしている、結果として生じた露出コアを、線維芽細胞を含有する貯蔵槽に入れる。シースをコアの上で引っ張る。このプロセスでは、コアの中にナノファイバーおよび線維芽細胞が集められる。
【0146】
産業上の利用可能性
本発明は、広範囲の生理活性材料、例えば、治療剤、生理活性分子、ならびに生物細胞(例えば、幹細胞および他の前駆細胞)を、医療装置構築物、例えば、外科手術用縫合糸または糸状の組織スキャフォールドに組み込むための手段を提供する。本発明の原理に従って、生理活性材料は、時間が経つにつれて徐々に放出するのを可能にし、固定化のために、組み込まれた生理活性材料と構築物の外面との化学結合を必ずしも必要としない規定された配置で保持される。これは、生理活性分子の治療特性に悪影響を及ぼさないことが知られているプロセスである。
【0147】
示された独特の設計および方法の結果として、本発明は、手術チームに、患者において使用可能な手術装置または医療装置と関連して、生理活性材料、例えば、患者から抽出された生物学的分子および細胞を容易かつ迅速かつ日常的に利用する手段を提供する。生理活性材料の例には、骨髄および脂肪組織に存在するものが含まれるが、これに限定されない。前記のように、内因性材料は、治療相乗作用をもたらすと証明されている広くかつ複雑な範囲の生理活性分子および細胞からなるので組成の点で有利である。患者由来の材料は、生体適合性であり(対象となるレシピエントに生来あるものであり)、市販の材料よりかなり安価になり得るという明確な利点を有し、合成材料または生物学的に外来の材料に関連する規制問題が課せられないので特に好ましい。
【0148】
示された材料および方法はまた、手術室または他の医療処置環境における操作の効率を高め、保管、調製、および術中の取り扱いの間の医療装置の潜在的な細菌汚染の道を少なくすることができる。本発明の材料および方法から得られる効率によって手術時間が短くなり、その結果として患者の身体へのストレスが少なくなり、それによって、外科的処置の費用が抑えられる可能性がある。
【0149】
本明細書において言及される全ての特許および刊行物はその全体が参照により本明細書に含められる。本明細書には、先行発明に基づいて本発明がこのような刊行物に先行する権利がないと認められると解釈されるものは何もない。
【0150】
本発明は本明細書において、およびその特定の態様に関して詳述されたが、前記の説明は本質的に例示および説明のためのものであり、本発明およびその好ましい態様を例示することを目的することが理解されるはずである。日常的な実験によって、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変化および変更を加えることができると容易に認めるだろう。他の利点および特徴は以下に示される特許請求の範囲から明らかになるだろう。このような特許請求の範囲は、当業者に理解されるように、この妥当な同等物によって決定される。従って、本発明は、前記の説明では規定されず、以下の特許請求の範囲およびその同等物によって規定されることが意図される。