特許第5763536号(P5763536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763536
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】剥離物質
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20150723BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J133/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-523962(P2011-523962)
(86)(22)【出願日】2009年8月19日
(65)【公表番号】特表2012-500325(P2012-500325A)
(43)【公表日】2012年1月5日
(86)【国際出願番号】US2009054322
(87)【国際公開番号】WO2010022154
(87)【国際公開日】20100225
【審査請求日】2012年8月13日
(31)【優先権主張番号】61/089,993
(32)【優先日】2008年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】エムスランダ―,ジェフリー オー.
(72)【発明者】
【氏名】クレメンツ,ジョージ ジェイ.
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−335214(JP,A)
【文献】 特表平11−502560(JP,A)
【文献】 特開2005−247910(JP,A)
【文献】 米国特許第05728469(US,A)
【文献】 国際公開第2008/042650(WO,A1)
【文献】 特開2002−121503(JP,A)
【文献】 特開2005−171030(JP,A)
【文献】 特開2007−099858(JP,A)
【文献】 特開2008−231352(JP,A)
【文献】 特開2009−287005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/02
C09J 133/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧性接着剤層と、
前記感圧性接着剤層に接触している剥離層であって、10〜100重量%の、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1の少なくとも1つとのコポリマーであるポリオレフィンブロックコポリマーを含む、剥離層と、を含み、
記剥層が隆起部又は凹部を形成するために前記剥離層をエンボス加工することで作られた構造化界面を含む、接着剤物品。
【請求項2】
前記剥離層が、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドリニアブロックコポリマーを更に含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項3】
前記ポリオレフィンブロックコポリマーが、120℃の融点を有する、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項4】
構造化表面を有する剥離ライナを製造する方法であって、
10〜100重量%の、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1の少なくとも1つとのコポリマーであるポリオレフィンブロックコポリマーを含む剥離ライナを提供する工程と、
前記剥離ライナの第1の表面をエンボス加工して隆起部及び凹部の少なくとも1つを形成する工程と、を含む、剥離ライナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離物質に関する。例えば、感圧性接着テープ用剥離ライナとして有用な物質。
【背景技術】
【0002】
剥離面は、例えば感圧性接着テープ業界で周知であり、テープの裏側に接着剤が貼り付くことなくロールからテープの巻きを解けるように、剥離面が提供される。また、感圧性接着剤転写テープ又は両面塗布テープ(これらは両方とも、テープの両面が粘着質である)用のキャリアとして機能する剥離コーティングをライナ上に施してもよい。剥離面はまた、感圧性接着フィルムと共に使用するための剥離ライナとして有用である。
【0003】
剥離面及びコーティングに一般的に用いられている材料は、シリコーン組成物であり、その理由は、シリコーン組成物を配合して、「優れた」剥離(即ち、テープの巻きを解くための力が非常に弱い)から「低接着力裏側」剥離(典型的には、巻きを解くのにより大きな力を必要とする)まで様々な水準の剥離を提供できるためである。
【0004】
シリコーン剥離コーティングの主な問題点は、シリコーン剥離コーティングに関連し得る汚染の可能性である。作業員がシリコーン剥離コーティングされたテープ又はライナを取り扱うとき、シリコーンが作業員の手、作業手袋、又は衣類に移動する場合がある。シリコーンは、手から塗布面に更に移動する恐れがあり、塗料が汚染面に接着しにくい、及び表面上のシリコーンが存在する領域が塗料で湿潤しない等の問題を引き起こす。更に、製造プロセス中の汚染を避けるために、電子メーカーは、一般的にシリコーンの使用を避ける。シリコーン剥離物質はまた、コストが高くなる傾向もあり、シリコーンでコーティングされた材料は、再利用が困難である恐れがある。更に、一般的にシリコーンコーティングは、更なる加工工程を必要とし、例えば、一般的に第2の工程で既存の基材上にコーティングされる。これは、製造コストの増加を導く。
【0005】
ポリエチレンも剥離物質として用いられており、剥離ライナ用にクラフト紙上にコーティングされ得る、又は単層フィルム、若しくは高密度ポリエチレン等の基層と共押出される若しくは基層に積層されるポリエチレンを含む多層フィルムとして使用してもよい。高密度ポリエチレンの使用は特定の接着剤に限定されており、また非常に接着力の強い(aggressive)感圧性接着剤には適していないことが見出されている、その理由は、ポリエチレンと接着剤との間の接着が強すぎてライナを除去し始めるのが困難である恐れがあるためである。剥離力が強いため、接着剤及び/又はライナはまた、ライナから接着剤を分離しようとするときに損傷を受ける恐れがある。
【0006】
一部のポリオレフィンポリマー及びランダムポリオレフィンコポリマーも、剥離物質として用いられている。更に、これらのコポリマーは、ポリエチレンとブレンドされている。ポリエチレンをこれらのポリオレフィンコポリマーに付加すると、剥離値が高く、望ましくなくなる。シリコーン剥離層を有しない感圧性接着剤用の制御された剥離ライナが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、感圧性接着剤層と、この感圧性接着剤層に接触している剥離層とを含む接着剤物品を目的とする。剥離層は、ポリオレフィンブロックコポリマーを含む。一般的に、ポリオレフィンブロックコポリマーは、0.9g/cc以下の密度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本出願では、剥離層に有用な材料は、オレフィン性ブロックコポリマーである。好適なアルファ−オレフィンとしては、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一般的に、エチレンとオクテン−1とのコポリマーは、剥離層として、例えばアクリレート系感圧性接着剤と共に用いられている。このコポリマーは、一般的に、オレフィン性ブロックコポリマーと記載される。一般的に、このコポリマーは、0.90グラム/立方センチメートル(g/cc)以下の密度を有する。具体的なコポリマーは、0.89g/cc以下、例えば0.88g/cc以下の密度を有する。幾つかの実施形態では、コポリマーは、0.85g/cc超、例えば0.86g/cc超の密度を有する。かかるオレフィン性ブロックコポリマーは、更に、オレフィン性ブロックコポリマーが感圧性接着剤に隣接して定置された物品の帯電及び放電を低下させる。
【0009】
コポリマーは、一般的に、高融点を有する。幾つかのコポリマーは、約118℃〜約122℃、例えば約120℃の融点を有する。
【0010】
低密度コポリマーは、剥離値を低下させることが見出されており、様々な種類のコポリマーをブレンドすることにより値は変化し得る。好適なコポリマーは、INFUSEという商標名でDow Chemical Company,Midland,Michiganから市販されている。
【0011】
剥離層は、100%のコポリマーを含んでもよい。他の実施形態では、剥離層は、コポリマーと更なるポリマーとのブレンドを含む。幾つかの実施形態では、剥離層は、少なくとも10重量%のコポリマー、例えば20重量%、50重量%のコポリマーを含む。コポリマーとのブレンドにおいて有用である好適なポリマーとしては、例えばEXACTという商標名でExxonから市販されているもの等の非ブロックポリオレフィンコポリマーが挙げられる。ブレンドに有用な他のポリマーとしては、本明細書に参照することにより組み込まれる、米国特許出願第2007−0148474号に記載されているポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー等のシリコーンコポリマー、及び米国特許第6919405号に記載されているもの等のシリコーンポリ尿素ポリマーが挙げられる。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語剥離ライナ、ライナ、及び剥離フィルムは、互換的に用いられる。本明細書に記載される剥離層は、剥離フィルムの一部である。剥離フィルムは、第2の層が存在しない場合、単層自己支持フィルムとしてコポリマーを押出成形することにより調製できる。フィルム厚は、約0.1ミリメートル〜約0.4ミリメートルであってもよいが、フィルム厚は、一般的に、剥離ライナに必要な強度、フィルムの取扱容易性、ライナに必要な可撓性等の検討材料に依存する。
【0013】
剥離フィルムはまた、コポリマーを基材上に押出成形することにより、又はコポリマーを1つ以上の他のポリマーと共押出することにより、多層フィルムを形成して更なる強度及び/又は剛性を提供することにより調製され得る。好適な基材の例としては、紙、織布、不織布等のセルロース性材料、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン等のフィルム、及び金属、セラミック、又はプラスチック等の材料から作製されるシート材料が挙げられる。コポリマーフィルムはまた、適切な積層接着剤を用いて基材に貼着することができる。基材はまた、感圧性接着剤でコーティングされた部分を保持するための剥離面を有するトレイを形成することができるように、熱成形又は真空成形に好適なシート材料であってもよい。
【0014】
基層上のコポリマーフィルムの厚さは、所望の剥離力を提供するのに十分でなければならず、また自己支持シートの場合よりも薄くてもよい。
【0015】
フィルムは、典型的には、マット仕上げ又は平滑仕上げ等の種々の表面を有する冷却ロール上にインフレーションフィルムプロセス又は流延フィルムプロセスを用いて押し出されて、剥離ライナ上にマットな表面又は光沢のある表面を提供する。次いで、フィルムは以下に詳述するように構造化され得る。テフロン(登録商標)又はプラズマコーティング等、冷却ロールを材料で処理又はコーティングして、押出品がロール表面に貼り付くのを防ぐことができる。シリコーンゴムロールもこの目的のために用いることができる。押し出されたフィルムはまた、冷却ロールと平滑ポリエステルフィルムとの間に押し出されて、片側に光沢のある表面、もう片側にマットな表面を提供する、又は2枚のポリエステルライナ間に押し出されて2面の光沢のある表面を提供することができる。更に、流延フィルムプロセスは、幅出しプロセス等の配向工程を含んでもよい。
【0016】
多層フィルムは、既知の共押出プロセスにより調製できる。コポリマーと共押出することができる他のポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、及びこれらの混合物等のポリオレフィン、ナイロン材料、並びにポリエステルが挙げられる。ポリオレフィンとの共押出は、再利用可能な又は再使用可能なライナの作製に特に有用である。
【0017】
多層フィルムの構築では、ポリマー及びコポリマーは、異なる剥離性を示すように、即ち、感圧性接着剤が他の側よりも著しく少ない力である側から剥離するように選択することができる。
【0018】
感圧性接着剤転写テープを作製する典型的なプロセスでは、接着剤組成物は剥離ライナ上にコーティングされる。次いで、接着剤を硬化させて、ライナ上にゲル化したフィルムを形成し、接着剤を有する剥離ライナを大きなロール状に巻く。あるいは、接着剤をあるライナ上にコーティングし、硬化させ、次いで変形前に異なるライナ上に移してもよい。幾つかの実施形態では、接着剤は、コーティング後何らかの硬化を必要としない。次いで、消費者が使用するために、大きなロールを細長く切り、コア上に幅の狭いテープを巻き付けることにより、接着剤でコーティングされたシートを狭いロールに変形させる。
【0019】
別の実施形態では、剥離ライナは、グラフィックフィルム等の大判フィルムに有用である。種々の基材が、広告及び宣伝ディスプレー用グラフィックフィルムに用いられる。基材は、アクリル含有フィルム、ポリ(塩化ビニル)含有フィルム、ポリ(フッ化ビニル)含有フィルム、ウレタン含有フィルム、メラミン含有フィルム、ポリビニルブチラール含有フィルム、ポリオレフィン含有フィルム、ポリエステル含有フィルム、及びポリカーボネート含有フィルム等のポリマーシート材料を含んでもよい。グラフィックフィルムでは、フィルムを曲線又は突出部の周りに引き伸ばせるように、又はフィルムを破壊若しくは離層させることなく押し付けて凹部を作製できるように、基材表面上の曲線、凹部、又は突出部に適応するフィルムを有することが望ましい(柔軟性)。また、後に基材表面から離層又は剥離することなく、凹凸のある及び/又は起伏のある表面上に適用できるフィルムを有することも望ましい(ポップアップ)。更に、グラフィックフィルムは画像形成可能であり(即ち、印刷及び/又はグラフィックのための受容面を有する)、野外での用途のために優れた耐候性を示すことが望ましい。接着剤層は、グラフィックフィルム上に存在し、剥離ライナは、グラフィックフィルムの反対側の接着剤上に存在する。
【0020】
接着剤の例としては、感圧性接着剤、感圧性接着剤等の塗布時に感圧性であるホットメルト又は熱活性化接着剤、及びHandbook of Pressure−Sensitive Adhesives,Ed.D.Satas,2nd Edition,Von Nostrand Reinhold,New York,1989に開示されている他の種類のPSAが挙げられる。本発明で特に有用なアクリレート系PSAとしては、米国特許第4,181,752号(Clemensら)及び同第4,418,120号(Kealyら)、国際公開第95/13331号、及びHandbook of Pressure−Sensitive Adhesives,Ed.D.Satas,2nd Editionに記載されているものが挙げられる。
【0021】
一般的に、接着剤層は、剥離ライナを必要とするフィルムに必要である場合があるように、剥離ライナからの剥離強度、例えば11.8グラム/cm(30グラム/インチ)の、228.6cm(90インチ)における180°剥離強度を有する。一般的に、他の用途は、11.8グラム/cm(30グラム/インチ)より高い剥離力を必要とする。例えば、テープ用の低接着力裏材である。他の実施形態は、例えば7.9グラム/cm(20g/インチ)未満等の低剥離値を必要とする。
【0022】
幾つかの実施形態では、接着剤は、(メタ)アクリル酸エステル及び補強コモノマーを含む(メタ)アクリル接着剤である。好適なアクリル酸エステルモノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、n−ブチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましいモノマーとしては、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
有用な補強コモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド、置換アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、イソボルニルアクリレート、酢酸ビニル、及びシクロへキシルアクリレートが挙げられる。好ましいコモノマーとしては、N−ビニルカプロラクタム、N,N−ジメチルアクリルアミド等の置換アクリルアミド、及びイソブチルアクリレートが挙げられる。
【0024】
好適な反応開始剤を用いて、本発明の実施における感圧性接着剤を作製する。反応開始剤の種類及び量は、用いられる重合の種類に影響を与えるのに好適な量で用いられる、例えば、紫外線光重合接着剤では、ベンジルジメチルケタール等の光反応開始剤を、モノマー100部あたり約0.1〜約5部の量で用いることができ、溶媒重合では、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を、モノマー100部あたり約0.1部〜約2部の量で用いることができる。
【0025】
感圧性接着剤はまた、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、ガス、発泡剤、ガラス又は高分子微小球、シリカ、炭酸カルシウム繊維、界面活性剤等の添加剤を含んでもよい。接着剤は、所望の特性に影響を与えるのに十分な量含まれる。
【0026】
感圧性接着剤はまた、エポキシ及びウレタン等の熱硬化性樹脂を含有してもよく、これは、感圧性接着テープが表面に塗布されて熱硬化性接着剤が形成された後に熱硬化し得る。
【0027】
感圧性接着剤は、溶媒重合、電子線、ガンマ線、及び紫外線等の手段による放射線重合、乳化重合等が挙げられる、業界で知られている方法により調製され得る。感圧性接着剤の作製方法は、例えば、米国再発行特許第24,906号(Ulrich)に開示されている。
【0028】
多くの実施形態では、剥離ライナが構造化され、剥離ライナ上の構造を用いて、接着剤上の構造の反転したものを作製することができ、構造化接着剤が生じる。例えば、接着剤の全ての溝部について、剥離ライナは対応する隆起部を有する。隆起部は、ライナの基準面から突出しており、それは各隆起部の底部のライナ表面により画定される。各隆起部の寸法は、接着剤の各溝部の望ましい寸法に一致する。例えば、基準平面における溝部の幅は、ライナ基準平面の隆起部の幅と一致する。基準平面又は接着剤の構造化表面上の実在する壁からの突出部を備える実施形態では、剥離ライナは対応する凹部を備える。剥離ライナ上の構造は、ライナを型押しして構造化表面を形成する、又は表面上に構造を印刷することを含む、多くの既知の方法で製造することができる。
【0029】
構造化接着剤層は、接着剤物品を形成する、接着剤を剥離ライナの構造化表面に接触させることにより製造することができる。接着剤は、例えば、組成物(例えば、溶液中の接着剤組成物、分散液としての組成物、又は熱溶融性組成物)をコーティングする、又は既存の接着剤層を積層することにより、構造化表面に接触することができる。ライナが剥離コーティングでコーティングされた実施形態では、接着剤層は任意の剥離コーティング上に存在する。剥離ライナ上の構造は、接着剤層のある主表面内に構造を付与する。
【0030】
剥離層は、基層上にコーティングされて、剥離ライナを形成することができる。例としては、紙及びプラスチックを含むポリマーフィルムが挙げられる。ライナ基材は、単層又は多層であってよい。具体例としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン(キャスト及び2軸延伸ポリプロピレンを含む)、及び紙(クレーコート紙を含む)が挙げられる。
【0031】
一般に、接着剤の構造化表面は裏材の反対側にある。裏材は、接着剤物品の目的とする用途に依って、いかなる物質であってもよい。例えば、接着剤物品が大判グラフィック(例えば、幅81.3cm(32インチ)を超える)に使用される実施形態では、裏材は、画像を受容するのに好適な物質(例えば、接着剤層の反対側にインクレセプター層を備えるビニル又はポリオレフィン)であってよい。
【0032】
本出願では、接着剤物品は接着剤を基材に接着させる方法において用いられてもよい。このような実施形態では、接着剤の構造化表面は結合基材に適用される。接着剤層の構造化表面は、第2の溝部の実在する壁の主要部が基材に接触しないのに対し、第1の溝部の実在する壁の主要部が基材に接触するように変形する。本出願の目的のために、50%を上回る、溝部の壁を有する接着剤表面が結合基材に接触していた場合、壁の主要部は結合基材に接触していた。
【0033】
接着剤物品は、温度上昇、圧力の適用及び、接着剤の養生により流動を可能にする、のような追加の手段を用いて結合基材に適用されてもよい。幾つかの実施形態では、第1の溝部の主要部が基材に接触した後、第2の溝部の壁の主要部が基材に接触する。
【0034】
幾つかの実施形態では、接着剤物品は、本明細書で記載された構造上に重ねられる、構造化表面上に更に構造を備えてもよい。これらの追加構造は、例えば、米国特許第5,141,790号に見出すことができる。追加構造は、構造化された接着剤表面上に、例えば、基準平面又は接着剤の実在する壁から突出した、接着性又は非接着性突出部を備えてもよい。
【実施例】
【0035】
これらの実施例はあくまで説明を目的としたものであって、添付した特許請求の範囲の限定を目的とするものではない。実施例内の全ての部分、割合、比率等は、別段の定めがある場合を除き、重量による。
【0036】
実施例では以下のポリマーを使用した。
【0037】
ポリマーA:商標名Exact 5181として販売されている非ブロックポリオレフィンコポリマー
ポリマーB:商標名Dow Infuse 9530.05として販売されているポリオレフィンブロックコポリマー(密度=0.887)
ポリマーC:米国特許出願第2007−0148474号に記載されているようなポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー
ポリマーD:商標名Dow Infuse 9500.05として販売されているポリオレフィンブロックコポリマー(密度=0.877)
ポリマーE:商標名Dow Infuse 9507.15として販売されているポリオレフィンブロックコポリマー(密度=0.866)
ポリマーF:商標名Exxon 129.24として販売されている低密度ポリエチレン
【0038】
混合スクリューを備える、1.9cm(インチ)のBrabender製研究室用押出成形機を用いて、表1に記載されている材料でフィルムを製造した。実施例を融解させ、15.2cm(6インチ)の平坦な流延押出成形ダイを通して押出して、溶融フィルムを形成した。次いで、フィルムを冷却ロールスタックに通し、最終の完成したフィルムに樹脂を冷却し固化した。次いで、フィルムサンプルを、3M Companyから商標名3M Scotchcal 7725−13として市販されているアクリル接着剤とともに50.8マイクロメートル(2 mil)のPVCフィルムに積層させた。
【0039】
【表1】
【0040】
次いで、2つの条件下、1)5分間静止及び2)5日間66℃(150°F)のオーブン内で老化、でフィルムの接着力を試験した。Ι−Mass試験装置上で1分間当たり228.6cm(90インチ)における180°剥離を用いて剥離試験を実施した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
混合スクリューを備える1.9cm(インチ)のBrabender製研究室用押出成形機を用いて、表3に記載されている材料でフィルムを製造した。実施例を融解させ、15.2cm(6インチ)の平坦な流延押出成形ダイを通して押出して、溶融フィルムを形成した。次いで、フィルムを冷却ロールスタックに通し、最終の完成したフィルムに樹脂を冷却し固化した。次いで、63.5マイクロメートル(2.5mil)の厚さのポリエチレン裏材と、15.45%のブチルアクリレート、64.25%のイソオクチルアクリレート、16.8%のオクタデシルアクリレート、2%のアクリル酸、及び1.5%の置換ベンゾフェノンを含む接着剤層(20.3マイクロメートル(0.8mil)の厚さ)とともに、フィルムサンプルを接着フィルムに積層させた。接着剤を紫外線で架橋した。
【0043】
【表3】
【0044】
次いで、3つの条件下、1)5分間未満、室温(25℃)で静止、及び2)10日間、49℃(120°F)で静止、及び3)2週間、32℃(90°F)及び湿度90%で静止で、フィルムの接着力を試験した。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
比較例C及びDを、表5に詳述する組成物で比較例Aと同様に作製した。
【0047】
【表5】
【0048】
比較例C及びDを、室温(25℃)で24時間老化させた。l−Mass試験装置上で1分間当たり228.6cm(90インチ)における180°剥離を用いて剥離試験を実施した。結果を表6に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
エンボス加工例
商標名Dow Infuse 9100として販売されているポリオレフィンブロックコポリマー(密度=0.877g/cm)の剥離面を用いて剥離ライナを作製した。3層のインフレーションフィルム共押出ラインを用いてライナを製造した:気泡の外側層は、3%のPolyfil ABC5000粘着防止剤化合物を含有するポリオレフィンブロックコポリマーであり;コア層は、ポリプロピレン樹脂(商標名Phillips Sumika HHC007)及びリニア低密度樹脂(商標名Chevron D−143)の80/20ブレンドを含有しており;気泡の内側層は、PP/LLDPE及び4%のPolyfil ABC5000粘着防止剤濃縮物の80/20ブレンドを含有していた。得られた剥離ライナをエンボス加工して、剥離面上にパターンを形成した。次いで、剥離面を感圧性接着剤でコーティングした。次いで、接着剤を剥離ライナから除去した。剥離ライナ上のパターンの分解は最小限であった。接着剤表面はまた、剥離ライナの反転構造を保持していた。
【0051】
比較剥離ライナを、商標名Exact 8201として販売されている非ブロックポリオレフィンコポリマーの剥離面を用いて作製した。3層のインフレーションフィルム共押出ラインを用いてライナを製造した:気泡の外側層は、3%のPolyfil ABC5000粘着防止剤化合物を含有する非ブロックポリオレフィンコポリマーであり;コア層は、ポリプロピレン樹脂(商標名Phillips Sumika HHC007)及びリニア低密度樹脂(商標名Chevron D−143)の80/20ブレンドを含有しており;気泡の内側層は、PP/LLDPE及び4%のPolyfil ABC5000粘着防止剤濃縮物の80/20ブレンドを含有していた。得られた剥離ライナをエンボス加工して、剥離面上にパターンを形成した。次いで、剥離面を感圧性接着剤でコーティングした。次いで、接着剤を剥離ライナから除去した。剥離ライナ上のパターンは分解された。更に、剥離ライナ構造が分解されたために接着剤表面も分解した。
【0052】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。