(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763556
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】液化石油ガスを貯蔵し輸送する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20150723BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20150723BHJP
B63J 2/14 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
B63B25/16 D
B63J2/14 A
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-553970(P2011-553970)
(86)(22)【出願日】2010年5月3日
(65)【公表番号】特表2012-519821(P2012-519821A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】NO2010000166
(87)【国際公開番号】WO2011002299
(87)【国際公開日】20110106
【審査請求日】2011年9月9日
【審判番号】不服2014-5961(P2014-5961/J1)
【審判請求日】2014年4月2日
(31)【優先権主張番号】20092477
(32)【優先日】2009年6月30日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】511162440
【氏名又は名称】バルチラ・オイル・アンド・ガス・システムズ・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】カール・ヨルゲン・ルンメルホフ
【合議体】
【審判長】
渡邊 豊英
【審判官】
渡邊 真
【審判官】
熊倉 強
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭 52− 41384(JP,A)
【文献】
特開2002−274493(JP,A)
【文献】
特開平 6−294497(JP,A)
【文献】
特開2009− 30675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ船荷上で2つの異なるLPGタイプの貨物を有するLPG運搬船上でLPGを貯蔵し輸送する方法であって、
前記LPG運搬船が複数の再液化ユニット(300、400)を有し、該複数の再液化ユニット(300、400)において、蒸発ガスが凝縮され、次いでそれぞれのLPGタイプ用の少なくとも1つの貨物タンク(100)に戻る、LPGを貯蔵し輸送する方法において、
最少で1つが稼働する前記複数の再液化ユニット(300、400)を使用し、第1のLPGタイプからの蒸気を凝縮して、第1の凝縮蒸気を生成するステップと、
前記第1の凝縮蒸気を熱交換器(500)に通過させるステップと、
第2のLPGタイプからの蒸気を前記熱交換器(500)に同時に流して、前記第1の凝縮蒸気との熱交換によって蒸気を凝縮し、第2の凝縮蒸気を生成するステップと、
前記熱交換器から出た前記第1の凝縮蒸気および前記第2の凝縮蒸気を前記それぞれのLPGタイプに戻すステップと、
圧力要件を満たすように、前記再液化ユニット(300、400)からの前記第1の凝縮蒸気を、前記熱交換器(500)の上流または下流で絞るステップと、
気相と液相とに分離するように、前記熱交換器(500)から戻る前記第1のLPGタイプの前記第1の凝縮蒸気を、分離器に通過させるステップと、
液体を前記第1のLPGタイプに戻すステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記圧力要件を満たすように、前記第1の凝縮蒸気を2段階で絞るステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の凝縮蒸気および前記第2の凝縮蒸気が、前記それぞれの貨物タンク(100、200)内に自由に流れ戻ることができるように、前記熱交換器(500)を前記LPG運搬船の高い位置に取り付けるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のLPGタイプ用の少なくとも1つの貨物タンク(200)に戻る自由流が妨害される場合、前記第2のLPGタイプに戻すべき前記第2の凝縮蒸気をポンプで送るステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
凝縮圧力を高め、したがって前記熱交換器(500)の配置により高い融通性を持たせることができるように、前記第2のLPGタイプの蒸気を、前記熱交換器(500)の上流で圧縮するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
電気モータ(1.900)によって前記再液化ユニット(300、400)の往復圧縮機(2.000)を動作させ、可能な場合には、前記電気モータの電力能力を使用するように、前記電気モータの速度を標準よりも上げるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
同じ船荷上の2つの異なるLPGタイプの貨物を有するLPG運搬船上で、LPGを貯蔵し輸送するシステムであって、
該システムは、複数の再液化ユニット(300、400)を有し、該複数の再液化ユニット(300、400)において、蒸発ガスが凝縮され、次いでそれぞれのLPGタイプ用の少なくとも1つの貨物タンク(100)に戻る、LPGを貯蔵し輸送するシステムにおいて、最少で1つが稼働する前記複数の再液化ユニット(300、400)を使用して、第1のLPGタイプからの第1の蒸気を凝縮するように構成され、
熱交換器(500)が第1の凝縮蒸気を通過させるように構成され、前記熱交換器(500)が第2のLPGタイプからの蒸気を前記熱交換器(500)に同時に流して前記蒸気を凝縮し、前記第1の凝縮蒸気との熱交換によって第2の凝縮蒸気を生成するようにさらに構成され、
前記熱交換器が、前記第1の凝縮蒸気および前記第2の凝縮蒸気が前記熱交換器から出て前記それぞれの貨物タイプに戻ることを可能とする出口を有し、
前記再液化ユニット(300、400)からの前記第1の凝縮蒸気が、前記熱交換器(500)の上流のまたは下流で流動ラインに配置された絞り弁(600)を用いて絞られ、
前記熱交換器(500)から戻った前記第1のLPGタイプの前記第1の凝縮蒸気が、分離器を通過し、分離された液体が、前記第1のLPGタイプ用の前記少なくとも1つのタンク(100)に戻ることを特徴とする、システム。
【請求項8】
前記再液化ユニット(400)のうちの一方が、待機動作にあるように構成されること
を特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記熱交換器が、自由流凝縮器(500)であることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記LPGタイプが、それぞれのLPGタイプ用の少なくとも1つの別個のタンク(100、200)で、貨物タンク内に保持されることを特徴とする、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項11】
前記再液化ユニット(300、400)からの前記第1の凝縮蒸気が、2段階で絞られることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記熱交換器(500)が、前記LPG運搬船の高い位置に取り付けられることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のLPGタイプを積載した前記少なくとも1つの貨物タンク(200)に戻る自由流が妨害される場合、前記第2の凝縮蒸気が、配管(7)に位置するポンプ(700)によって送られることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2のLPGタイプの蒸気が、前記熱交換器(500)の上流に配置された圧縮機(800)によって圧縮されることを特徴とする、請求項7から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記再液化ユニット(300、400)の往復圧縮機(2.000)が、電気モータ(1.900)によって動作され、可能な場合には、前記電気モータの速度が標準速度よりも上げられることを特徴とする、請求項7から14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下でLPG運搬船(LPG carrier)と称するタンカ船上で、通常LPGとして知られる液化石油ガスを貯蔵し輸送する方法およびシステムに関し、特に、同じ船荷上の2つの貨物の輸送に関する。
【0002】
さらに、本発明の方法およびシステムは、液化石油ガス用浮体式生産貯蔵積出し船、すなわちLPG FPSOでの使用にも等しく適用可能であり、同様に、液化石油ガス用浮体式貯蔵積出し船、すなわちLPG FSOでの使用にも等しく適用可能である。
【背景技術】
【0003】
上記で定義した「LPG運搬船」との用語はまた、後述したように、LPG FPSOおよびLPG FSOを含むであろう。
【0004】
LPGとは、液体として貯蔵され、輸送される様々な石油ガス等級(grade)または石油ガス生成物の範囲として理解されたい。様々な石油ガスのうち、プロパンおよびブタンが主な例であり、プロパンには、典型的には0%から5%までの任意のエタン濃度が含まれ、ブタンは、ノルマルブタンおよびイソブタンの任意の混合物でよい。さらに、LPGには、少なくともアンモニア、ブタジエン、ブタン−プロパン混合物(任意の混合物)、ブチレン、ジエチルエーテル、プロピレン、塩化ビニルが含まれるものである。
【0005】
LPGのものは、大気圧よりも高い圧力で、または周囲温度よりも低い温度で、またはそれら両方を組み合わせた液体状態で輸送される。本発明は、以下の運搬船に関する。
(1)液化貨物、すなわちLPGを周囲温度よりも低い温度で輸送する、全冷却式(fully refrigerated)LPG運搬船として知られるLPG運搬船、および
(2)液化貨物、すなわちLPGを大気圧よりも高い圧力、かつ周囲温度よりも低い温度で輸送するLPG運搬船。後者は、半冷却/半加圧式(semi−refrigerated/semi−pressurised)として知られている。
【0006】
周囲温度よりも低い温度で貯蔵され、輸送されるLPGは、ある量の蒸気を放出し続ける。貨物タンク内の圧力を維持する通常の方式は、放出された蒸気を抜き出し、次いで液化し、凝縮液として貨物タンクに戻すものである。
【0007】
以下では、凝縮液とは、液化蒸気として理解されるべきであり、この蒸気とは、LPGへの入熱(heat input)によって生成された蒸気および凝縮液を戻す際に生成される任意の蒸気からなる蒸気生成物を意味する。
【0008】
貨物のタイプは、上述のLPG等級(grade)またはLPG生成物の任意のものである。一例として、第1の貨物タイプおよび第2の貨物タイプは、それぞれプロパンおよびブタンでよい。
【0009】
本明細書では、再液化ユニットは、以下では冷却ユニットを意味し、その役目は、蒸気を液化することであり、接頭辞「再(re)」は、液化ガスからの蒸気の液化を表す。貨物タンクは、LPGを保持するように意図された1つまたは複数の液密容器である。待機動作では、例えば、必要時に使用できる状態にあるユニットを使用している。
【0010】
通常は、1回の船荷につき1つから2つの貨物が運搬される。様々なタイプのLPG貨物の中でも、生成物は、典型的にはプロパンおよびブタンでよい。後者は、専用の貨物タンクに分離され、すべての貨物取扱いは、2つの貨物からの液体および蒸気が混じらないような形で取り扱われる。これには、少なくとも以下の貨物取扱い作業のための分離作業が含まれる。
・2つの分離貨物について貨物タンクの圧力および温度を維持すること、
・航行中、貨物を冷却すること、および
・荷積み時に貨物を冷却すること。
【0011】
典型的には、以前から知られている、2つの貨物を取り扱うことが可能なLPG運搬船は、2つの貨物からの蒸気を同時に取り扱うように搭載された3つから4つの再液化ユニットを有する。
【0012】
LPG運搬船の寸法タイプの1つである大型ガス運搬船、すなわちVLGCには、典型的には同一の再液化ユニットが4つ搭載されている。一方、第2の寸法タイプのLPG運搬船である中型ガス運搬船、すなわちMSGCには、典型的には同一の再液化ユニットが3つ搭載されている。どちらの場合も、再液化ユニットは、互いに完全に独立しており、全冷却タイプのものである。
【0013】
例えばプロパンおよびブタンなどの2つのLPG貨物を運搬するVLGCの典型的な動作方式は、プロパン蒸気を取り扱う2つの再液化ユニットと、ブタン蒸気を取り扱う1つの再液化ユニットとを有し、1つの再液化ユニットは、待機状態にある。プロパンおよびブタンを運搬するMSGCでは、例えば、1つの再液化ユニットが典型的にはプロパン蒸気を取り扱い、1つの再液化ユニットがブタン蒸気を取り扱い、1つの再液化ユニットが待機状態にある。
【0014】
参照および例示の目的で、
図1および
図2は、2つの貨物を運搬するVLGCの典型的な再液化ユニット、および典型的な構成をそれぞれ示し、その第1の貨物タイプは典型的にはプロパンとされ、第2の貨物タイプはブタンとされてよい。
【0015】
図2に示すように、第1の貨物タイプからの少なくとも1つの貨物タンクで蒸発した蒸気は、ライン1を介して流れ、2つの別個の再液化ユニットに流れる前に別個のライン2、3に分配され、そこで蒸気は凝縮され、ライン6を介して貨物タンク100に戻る。第2の貨物タイプからの少なくとも1つのさらなる貨物タンクで蒸発した蒸気は、ライン7を介してさらに別の再液化ユニットに流れ、そこで蒸気は凝縮され、ライン8を介して貨物タンクに戻る。
【0016】
各再液化ユニットは、
図1を参照すると、典型的には、少なくとも1つの圧縮機1.100、1.200を備え、こうした圧縮機は、貨物タンクに連結された蒸気ラインから吸引を行い、蒸気を圧縮し、その圧縮蒸気を、例えば海水、または第2のシステムによって供給される冷媒などの冷却媒体1.300に接して凝縮させる。貨物タンクからの蒸気流は、圧縮機の動作によって制御される。1つの再液化ユニットは、典型的には待機動作状態にある。
【0017】
[実施例]
4つの液密容器AからDを備えた典型的なVLGCを、いくつかの異なる貨物を運搬するように設計し、これら貨物のうち、最も低温の貨物と思われるのはプロパンである。貨物構成への熱漏洩の計算は、例えば総計427kWになり、その場合、各貨物タンク構成への熱漏洩は、
液密容器A:96kW
液密容器B:112kW
液密容器C:112kW
液密容器D:107kW
となる。
【0018】
貨物タンク構成は、貨物タンク、ならびに液密容器外部にあるすべての付随する配管および設備であるとして理解されるできである。
【0019】
したがって、国際船級協会、および液化ガスのばら積運送のための船舶の構造および設備に関する国際規則、すなわちIGCコードによって規定された要件を満たすには、搭載される冷媒総容量は、427kWに十分な余剰量を加えた容量を下回ってはならない。操業公布(operational issue)に基づくと、船主は、典型的には冷媒容量をさらに増大させる追加の要件を有する。
【0020】
その結果、VLGCには、典型的には4つの再液化ユニットが備えられ、各ユニットは通常、220kWを超える再液化容量を有する。典型的には、各ユニットは、毎時2230kgのプロパン蒸気を取り扱うことが可能である。プロパンだけを運搬するVLGCからの蒸発総量は、典型的には3890kg/時に達する。容量は、当然ながら、周囲温度と貨物タイプとの関数となり、それに従って変動する。
【0021】
イソブタンを運搬する同じVLGCでは、熱漏洩総量は240kWとなり、各再液化ユニットは、典型的には340kWの再液化容量を有する。イソブタンだけを運搬するVLGCからの蒸発総量は、典型的には1350kg/時に達する。
【0022】
VLGCが上記貨物の両方を運搬する場合、別個の動作が適用される。イソブタンが液密容器AおよびBに積載され、プロパンが液密容器CおよびDに積載されるとすれば、プロパンおよびイソブタンの蒸気流量はそれぞれ、約1895kg/時および690kg/時となる。かかるシナリオでは、2つの再液化ユニットを動作させ、1つはプロパン用、1つはイソブタン用である。LPG運搬船がプロパンを3つの貨物タンクに有する場合、3つの再液化ユニットを動作させ、2つがプロパン用、1つがイソブタン用となる。
【0023】
動作中の再液化ユニットそれぞれの容量が余剰であるため、これらのユニットの動作は、通常は断続的とされ、例えば12時間動作させ、12時間待機状態とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の主な目的は、異なる貨物タイプのすべての蒸気を適切に管理するために必要となる再液化ユニットの個数を最小限に抑える簡易な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的は、本発明の一態様に従い、LPG運搬船特に、同じ船荷上の2つの異なるLPGタイプの貨物を有するLPG運搬船上でLPGを貯蔵し輸送する方法であって、前記LPG運搬船が再液化ユニットを有し、該再液化ユニットにおいて、蒸発ガスが凝縮され、次いでそれぞれのLPG貨物タイプ用の少なくとも1つの貨物タンクに戻る、LPGを貯蔵し輸送する方法において、
再液化ユニットを、少なくとも一方を稼働させて使用して、第1の貨物タイプからの蒸気を凝縮するステップと、
凝縮蒸気を熱交換器に通過させるステップと、
第2の貨物タイプからの蒸気を熱交換器に同時に流して、凝縮蒸気との熱交換によってその蒸気を凝縮するステップと、
熱交換器から出た凝縮蒸気をそれぞれの貨物タイプに戻すステップと
を含む方法によって、実現される。
【0026】
さらに、本発明は、LPG運搬船、特に、同じ船荷上の2つ異なるLPGタイプの貨物を有するLPG運搬船上でLPGを貯蔵し輸送するシステムであって、該システムは再液化ユニットを有し、該再液化ユニットにおいて、蒸発ガスが凝縮され、次いでそれぞれのLPG貨物タイプ用の少なくとも1つの貨物タンクに戻る、LPGを貯蔵し輸送するシステムであって、
再液化ユニットが、少なくとも一方を稼働させて、第1の貨物タイプからの蒸気を凝縮するように使用され、
凝縮蒸気が熱交換器を通過し、
第2の貨物タイプからの蒸気が熱交換器を同時に流れて、凝縮蒸気との熱交換によって蒸気が凝縮し、
熱交換器から出た凝縮蒸気がそれぞれの貨物タイプに戻る、
システムに関する。
【0027】
提案の方法およびシステムによる利点のいくつかは、稼働させる再液化ユニットの個数を最低限1つのユニットに減少させること、および稼働中の再液化ユニットから出た凝縮蒸気が、熱交換器内の冷媒として使用されることができることである。
【0028】
第1の貨物タイプ用のそれぞれの貨物タンク内の圧力を整合させるために、再液化ユニットからの凝縮蒸気は、熱交換器の上流または下流で絞られることができる。この絞りは、あるいは、2段階で実施してもよい。
【0029】
熱交換器は、凝縮蒸気が、貨物タンク内に自由に流れ戻ることができるように、LPG運搬船の高い位置に取り付けることができる。しかしながら、第2の貨物タイプ用のそれぞれの貨物タンクに戻る自由流が妨害される場合、第2の貨物タイプに戻すべき凝縮蒸気をポンプで送ることができる。
【0030】
高められた凝縮圧力を提供し、したがって熱交換器の配置により高い融通性を持たせることができるように、第2の貨物タイプの蒸気は、熱交換器の上流で圧縮することができる。
【0031】
第1の貨物タイプの凝縮蒸気は、気相と液相とに分離するように、熱交換器から分離器を介して戻すことができ、また、液体を第1の貨物タイプに戻すことができる。稼働している再液化ユニットの吸入圧力をより高めるために、分離した蒸気を排出器に通過させることができる。
【0032】
機械上の稼働時間を最小限に抑えるために、再液化ユニットの往復圧縮機は電気モータによって動作し、可能な場合には、その電力能力(power potential)を使用するように、モータの速度を標準よりも上げる。
【0033】
本発明について、添付の図面に示す好ましい実施形態を参照しながら以下で論じる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】2つの貨物を運搬するVLGCの典型的な従来技術による再液化ユニットを示す概略図である。
【
図2】2つの貨物を運搬するVLGCの典型的な構成を示す概略図である。
【
図3】2つの再液化ユニットを有し、一方は稼働中であり、他方は待機状態にある実施形態を示す概略図である。
【
図4】熱交換器の下流に絞りが配置されている点を除いて、
図3に相当する別の実施形態を示す概略図である。
【
図5】熱交換器の下流にポンプを含む、
図3および
図4の実施形態それぞれの部分概略図である。
【
図6】熱交換器の上流に圧縮機を含む、
図3および
図4の実施形態それぞれの部分概略図である。
【
図7】
図3と同様であるが、熱交換器の下流に分離器を含む実施形態を示す概略図である。
【
図8】稼働時間が、貨物タンク内の圧力の増大に基づいて、再液化ユニットを断続的に動作させることによる実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
上述し、かつ
図3に示すように、例えば、本発明は、同じ船荷上で液化石油ガス、特に2つの等級の生成物を輸送し貯蔵する方法およびシステムに関する。本発明によって、「従来技術」に比べて、搭載される再液化ユニットの個数を、1つの稼働中ユニットを含めて全体で少なくとも2つのユニットまで減少することを可能にし、なおかつ、国際船級協会、およびIGCコードによって規定された必要余剰分を設ける。船主の冷却義務に関する追加の要件もやはり、カバーされる。通常動作中、2つのユニットのうち一方は、待機動作にある。
【0036】
減少した個数が再液化ユニットの最小限の個数を有するけれども、他の選択肢も可能である。例えば、1つの再液化ユニットを、余剰の回転機械(redundant rotating machinery)と共に使用してもよい。他の構成、例えば3つのユニットを有する構成も適用可能である。
【0037】
本発明を利用する際、再液化ユニットのタイプは重要ではない点に留意されたい。しかしながら、便宜上、再液化ユニットは、従来技術に対応する同じタイプの再液化ユニットとするが、典型的には2倍の容量を有するものとすると仮定する。
【0038】
1つまたは複数の貨物タンク100内に含まれた第1の貨物タイプから蒸発した蒸気は、ライン1を介して再液化ユニット300に流れ、そこで凝縮され、その後、ライン5を介して戻る。凝縮液は、再液化ユニット300から絞り弁600を介して流れ、そこで、圧力が、貨物タンク100内の圧力と整合するように低減される。絞り後、凝縮液、または再液化プラントの工程条件に依存して、混相流体が熱交換器500に入り、そこでこの凝縮液をヒートシンクとして使用する。熱交換器500の出口で、凝縮液は、混相流体の形で流出し、貨物タンク100に戻る。熱交換器500は、好ましくは自由流凝縮器(free flow condenser)である。
【0039】
図面には1つの熱交換器しか示していないが、より多くの熱交換器500を取り付けてもよいことを理解されたい。かかる例では、再液化ユニット300からの凝縮蒸気は、適切な形で分配され、それぞれの熱交換器を通過する。
【0040】
少なくとも1つの貨物タンク200内に含まれた第2の貨物タイプから蒸発した蒸気は、ライン6を介して熱交換器500に流れ、蒸気が凝縮されて、ライン7を介して貨物タンク200に戻る。蒸気の流動は、自然循環によって行われる。凝縮し、且つ戻すように、貨物タンク200からの蒸気を熱交換器500に進ませるために、圧縮機、または例えば排出器などの他の機械的手段は必要でない。
【0041】
第2の貨物タイプに伴うすべての蒸気を凝縮するのに必要となる冷却効率(refrigerant duty)は、第1の貨物タイプに伴うすべての蒸気を取り扱う再液化ユニットの利用可能な予備冷却容量から取られる。したがって、冷却ユニット300からの凝縮液は、第2の貨物タイプからの蒸気を凝縮するために、熱交換器500の冷媒として使用される。
【0042】
熱交換器500は、好ましくは、凝縮蒸気が貨物タンク100、200内に自由に流れ戻ることができるように、LPG運搬船の高い位置に取り付ける。高い位置とは、貨物圧縮機室の上面上とされてもよく、LPG運搬船に沿って延びるパイプラック上とされてもよく、既存の任意のデッキモジュールの高位置上とされてもよく、または専用の高位置構造上とされてもよい。
【0043】
第1の貨物タイプに伴うすべての蒸気の取扱いは、原則として「従来技術」と同一であるが、タンク100に戻る凝縮液が第1に、貨物タンク100に戻る前に、第2の貨物タイプから付随するすべての蒸気を凝縮するために使用されるとの事実によって、増大した蒸気流量と異なる。貨物タンク100の第1の貨物タイプに戻る正味の凝縮液は、貨物タンク100に加えられた熱によって蒸発した正味の貨物蒸気に相当する。
【0044】
本発明による機能は、各再液化ユニットが、最も低温に設計された貨物、典型的にはプロパンを満載した船舶を取り扱うように設計され、且つこの貨物容量の幾分かがより高温の貨物、例えばブタンによって占められる場合、使用できる余剰の冷却容量を利用して、より高温の貨物部分を凝縮することができるという事実に基づく。
【0045】
余剰の冷却容量は、より高温の貨物側に加えられた熱をより低温の貨物側に伝導することによって利用され、したがって、2つの別個の構成を動作させる場合よりも高流量の低温蒸気流が循環することによって利用される。
【0046】
本実施例は、VLGCに2つの等級を積載したLPG運搬船の動作を例示している。イソブタンが、2つの貨物タンク、すなわちタンクAおよびBに積載され、プロパンが、他の2つの貨物タンク、すなわちタンクCおよびDに積載される。
【0047】
イソブタンは約690kg/時で熱交換器500の方に自然に流れ、典型的には−3℃の温度で熱交換器に入る。このイソブタン流を冷却し、凝縮するのに必要となる冷却効率総量は、約71kWである。プロパン流を冷却し、凝縮するのに必要となる冷却効率総量は、約219kWである。1つの再液化ユニットは、427kWの冷却総容量を有する。
【0048】
他の寸法のLPG運搬船では、再液化ユニットは他の寸法となる。
【0049】
図4に示すように、絞り弁600は、あるいは熱交換器500の下流に配置する。
【0050】
あるいは、必要であれば、熱交換器500は、貨物タンク100、200に戻る配管よりも低い高さで配置してもよいが、その場合、循環ポンプ700を取り付けなければならず、
図5を参照されたいが、この図では、熱交換器は、配管に対して正しい位置に示されているわけではない。
【0051】
あるいは、凝縮圧力を僅かに高める小型送風機または圧縮機800は、熱交換器500の上流に取り付けられてもよく、したがって、熱交換器500の配置により高い融通性を持たせることが可能となる。
図6を参照されたい。
【0052】
図7に示すように、ライン5を介して熱交換器500から出た混相流体は、分離器900に入り、そこで気相と液相とに分離される。液体は、ライン8を介して流出し、貨物タンク100の第1の貨物タイプに誘導されて戻る。蒸気は、ライン9を介して流出し、ライン1を流れる蒸気と混ざる。この構成によって、各液密容器、および付随する配管に必要となる蒸気取扱い容量が低減する。
【0053】
機械の稼働時間を最小限に抑えるために、再液化ユニットは、断続的に動作させる。この断続的な動作は、貨物タンク内の圧力を高レベルまで増大させ、その後再液化ユニットを始動し、貨物タンクの圧力を低減させることによって行われる。実際の稼働時間は、例えば、周囲温度、貨物内の揮発性成分の量、および海洋状態などのいくつかの要因によって左右される。LPG中の揮発性成分は、典型的にはエタンであり、通常は0から5mol%の間で変動する。より高いエタン濃度も時々生じることがある。
【0054】
図1に示す圧縮機1.100および1.200は一般に、1つの大型往復圧縮機2.000の2つの圧縮段であり、
図8を参照されたい。2つ以上の圧縮段階もやはり一般的であるが、図示してはいない。電気モータ1.900によって、圧縮機を駆動する。
【0055】
往復圧縮機は、所与の圧縮機について、その容積がその設計によって与えられ、したがって、任意の所与の時間で、その最大容積で動作する容積式圧縮機である。稼働時間だけでなく、圧縮仕事量もやはり、周囲温度、および圧縮すべきガスの揮発性成分の量といった条件によって左右されるので、電気モータ1.900は、必ずしもその最大連続出力で稼働させる必要はない。
【0056】
電気モータの電力能力を利用するには、上述の条件によって許される場合、モータ回転数/分(rpm)を通常の回転数/分よりも高く上げることが提案され、これは、電力供給部1.950の周波数を通常よりも高い周波数に増大させることによって行うことになる。容積式圧縮機の容積は、速度に比例して増大し、したがって冷却容量もやはり増大し、したがって稼働時間が低減することになる。
【符号の説明】
【0057】
1、2、3、5、6、7、8、9 ライン
100、200 貨物タンク
300、400 再液化ユニット
500 熱交換器
600 絞り弁
700 循環ポンプ
800 圧縮機
900 分離器
1.100、1.200 圧縮機
1.300 冷却媒体
1.900 電気モータ
1.950 電力供給部
2.000 往復圧縮機