特許第5763560号(P5763560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763560枠体、金型装置、および、枠体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763560
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】枠体、金型装置、および、枠体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/14 20060101AFI20150723BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B29C33/14
   B29C45/14
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-12208(P2012-12208)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-151088(P2013-151088A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116596
【氏名又は名称】愛知株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 工
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−240081(JP,A)
【文献】 特開2001−078852(JP,A)
【文献】 特開2011−173268(JP,A)
【文献】 特開2009−090475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
A47C 7/00− 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏方向の開口を形成する枠状の部材であり、表裏一方の面側に所定の取付対象物を取り付けるための取付溝が形成されてなる枠本体と、
前記枠本体の部材が固化される前の状態で透過可能なメッシュ状となっており、前記枠本体に前記開口を塞ぐように張られてなるシート部材と、
前記枠本体の内周面から内側に突出する突出部と、を備えており、
前記突出部は、該突出部が形成される領域に、前記枠本体における内外方向および表裏方向の一方または両方に沿って前記シート部材の端部側を通過させた後、該領域に前記突出部を形成すべく配置した型枠内に、前記枠本体の部材を固化前の状態で充填させて固化させることで、前記シート部材の前記枠本体に張った状態での固定を実現しており、
前記シート部材は、その端部が、前記枠本体における内周面に沿って表面または裏面まで到達している
ことを特徴とする枠体。
【請求項2】
前記シート部材は、前記突出部に到達した端部側が、該端部側を前記枠本体における内外方向に沿って一定距離だけ通過してから、前記枠本体における内周面に沿って表側または裏側に向かうように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の枠体。
【請求項3】
前記突出部は、前記枠本体の内周面から内側に突出する突出片と、該突出片の先端側から前記内周面に沿って延出する延出片と、からなる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の枠体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の枠体を製造するための金型装置であって、
前記枠本体のうち、前記シート部材の端部が到達する面(表面または裏面)側と反対の面側の形状が象られてなる第1型枠と、
前記枠本体のうち、前記シート部材の端部が到達する面(表面または裏面)側の形状であって、該シート部材の端部が位置する領域よりも外側のみの形状が象られてなる第2型枠と、
前記枠本体のうち、前記シート部材の端部が到達する面(表面または裏面)側の形状であって、該シート部材の端部が位置する領域よりも内側のみの形状が象られてなる第3型枠と、を備えており、
前記第1型枠と前記第3型枠との間、および、前記第2型枠と前記第3型枠との間に前記シート部材を挟んだ状態で、前記第1型枠、前記第2型枠および前記第3型枠を組み合わせることにより、これら型枠で囲まれた領域により前記枠本体が象られるように構成されており、
前記第3型枠は、前記第1型枠との間で前記シート部材を挟む面と、前記第2型枠との間で前記シート部材を挟む面との間が、前記シート部材の端部側を位置決めする位置決め部となっており、また、該位置決め部の一部に、前記枠本体における内外方向および表裏方向の一方または両方に向かう凹状部が形成されている
ことを特徴とする金型装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の枠体の製造方法であって、
請求項4に記載の金型装置のうち、前記第1型枠と前記第3型枠との間、および、前記第2型枠と前記第3型枠との間に前記シート部材を挟んだ状態で、前記第1型枠、前記第2型枠および前記第3型枠を組み合わせた後、これら型枠で囲まれた領域に、前記枠本体の部材を固化前の状態で充填してから固化させることで、前記シート部材が前記枠本体に張った状態で固定された枠体を製造する
ことを特徴とする枠体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏一方の面側に取付対象物を取り付けるための取付溝が形成された枠本体と、枠本体に張られてなるメッシュ状のシート部材と、からなる枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表裏一方の面側に取付対象物を取り付けるための取付溝が形成された枠本体と、この枠本体に張られてなるメッシュ状のシート部材と、を備える枠体として、本願出願人は、シート部材における端部(切断した切取跡)を枠本体の取付溝内に形成し、この端部が取付対象物で覆われるようにすることで、特段の被覆処理などを行うことなく、枠体としての美観が損なわれないようにする技術を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3845049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した技術では、取付対象物が取り付けられる取付溝の内部に、少なからずシート部材における端部が残されてしまい、シート部材の端部が取付対象物に干渉してしまうため、取付溝および取付対象物の加工精度が高くても、必ずしも取付対象物の枠体への取付が精度よく行えるとは限らないという課題があった。
【0005】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、枠体としての美観が大きく損なわれないようにしつつ、枠体への取付対象物の取付を従来よりも精度よく行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため第1の構成(請求項1)に係る枠体は、表裏方向の開口を形成する枠状の部材であり、表裏一方の面側に所定の取付対象物を取り付けるための取付溝が形成されてなる枠本体と、前記枠本体の部材が固化される前の状態で透過可能なメッシュ状となっており、前記枠本体に前記開口を塞ぐように張られてなるシート部材と、前記枠本体の内周面から内側に突出する突出部と、を備えている。そして、前記突出部は、該突出部が形成される領域に、前記枠本体における内外方向および表裏方向の一方または両方に沿って前記シート部材の端部側を通過させた後、該領域に前記突出部を形成すべく配置した型枠内に、前記枠本体の部材を固化前の状態で充填させて固化させることで、前記シート部材の前記枠本体に張った状態での固定を実現しており、前記シート部材は、その端部が、前記枠本体における内周面に沿って表面または裏面まで到達している。
【0007】
このように構成された枠体では、シート部材の端部が本体における内周面に沿って表面または裏面に到達するようにシート部材が固定され、枠本体の内側でシート部材の端部側が隠されるような位置関係となり、この端部側が外部から視認されにくくなるため、これにより美観が損なわれることを防止することができる。
【0008】
また、この構成では、シート部材の端部を、枠本体における内周面に沿って表面または裏面に到達させており、この端部が取付溝から突出する位置関係となっていないため、シート部材の端部が取付対象物に干渉して取付精度を低下させることもない。
【0009】
このように、上記構成では、枠体としての美観が大きく損なわれないようにしつつ、枠体への取付対象物の取付を従来よりも精度よく行うことができる。
なお、上記各構成における突出部は、枠本体における枠状の全周にわたって連続する1つのものとして設けられていてもよいし、枠本体における枠状の全周にわたって所定間隔で複数のものが設けられていてもよい。
【0010】
また、上記構成における取付溝についても同様に、枠本体の全周にわたって形成された1つの連続する溝として構成してもよいし、全周にわたって所定間隔毎に形成された複数の溝として構成してもよい。
【0011】
また、上記構成におけるシート部材は、その端部が、枠本体の内周面に沿って表面または裏面まで到達していればよく、その内周面に沿って表面または裏面に到達する過程で突出部を通過するような位置関係としてもよいし、シート部材の引っ張りに対する強度を高める意味で、はじめに突出部を通過してから内周面に沿って表面または裏面に到達するような位置関係としてもよい。
【0012】
この後者のためには、特に、上記構成を以下に示す第2の構成(請求項2)のようにするとよい。
第2の構成において、前記シート部材は、前記突出部に到達した端部側が、該端部側を前記枠本体における内外方向に沿って一定距離だけ通過してから、前記枠本体における内周面に沿って表側または裏側に向かうように配置されている。
【0013】
この構成では、シート部材の端部側が少なくとも一定距離だけ内外方向に延びた位置関係となっているが、この位置関係であれば、シート部材の端部側が通過する方向とシート部材の引っ張り方向とが近似し(最も角度差が小さくなり)、シート部材が張られている状態においてシート部材の端部側が引き剥がされてしまうような方向の力が加わりにくくなるため、引っ張りによりシート部材が引き剥がされてしまうことを防止するのに好適である。これにより、シート部材と枠本体とをより強固に固定することができる。
【0014】
なお、この構成において、シート部材の端部側が内外方向に通過する距離は、シート部材において発生しうる引っ張り力に応じて距離など、少なくとも必要な強度を確保できる程度の距離があればよい。
【0015】
また、上記各構成における突出部は、枠本体の内周面から内側に突出するものとして、この内周面の表裏方向に沿った一部領域にわたって設けられていればよい。このとき、シート部材の端部が到達している面までにわたって設けられているとよく、このためには、上記各構成を、以下に示すようにするとよい。
【0016】
具体的にいえば、前記突出部は、前記枠本体における内周面に沿って、少なくとも前記シート部材の端部が到達している面(表面または裏面)までにわたって形成されている、といった構成である。
【0017】
この構成であれば、枠本体の表面または裏面までにわたって突出部が形成されていることから、シート部材の端部側が枠本体の内周面に沿って表面または裏面に到達するまで、この突出部の内部を通過することになり、その結果、枠本体の内側に位置するシート部材の端部側までも覆い隠すことができるため、より美観が損なわれることを防止することができる。
【0018】
また、上記各構成における突出部は、シート部材の端部側を固定する機能を有していればよいが、その形状を工夫して別の機能を持たせることとしてもよい。
具体的な例としては、例えば、第3の構成(請求項3)のように、前記突出部は、前記枠本体の内周面から内側に突出する突出片と、該突出片の先端側から前記内周面に沿って延出する延出片と、からなる、ようなものが考えられる。
【0019】
この構成であれば、突出部における突出片と延出片とで形成されるリブ形状により、枠本体を曲げる方向の力に対抗できるようになるため、枠本体の枠としての強度を向上させることができる。
【0020】
なお、この構成における突出部の延出片は、枠本体の強度に寄与できる程度の長さを有していればよいが、枠本体の内周面に沿って表面または裏面にまで到達する長さを有していると、枠本体の内側に位置するシート部材の端部側を覆い隠すことができるため、これによっても美観が損なわれることを防止することができる。
【0021】
また、上記課題を解決するため第4の構成(請求項4)に係る金型装置は、第1〜第3のいずれかの構成に係る枠体を製造するための金型装置であって、前記枠本体のうち、前記シート部材の端部が到達する面(表面または裏面)側と反対の面側の形状が象られてなる第1型枠と、前記枠本体のうち、前記シート部材の端部が到達する面(表面または裏面)側の形状であって、該シート部材の端部が位置する領域よりも外側のみの形状が象られてなる第2型枠と、前記枠本体のうち、前記シート部材の端部が到達する面(表面または裏面)側の形状であって、該シート部材の端部が位置する領域よりも内側のみの形状が象られてなる第3型枠と、を備えている。
【0022】
そして、前記第1型枠と前記第3型枠との間、および、前記第2型枠と前記第3型枠との間に前記シート部材を挟んだ状態で、前記第1型枠、前記第2型枠および前記第3型枠を組み合わせることにより、これら型枠で囲まれた領域により前記枠本体が象られるように構成されており、前記第3型枠は、前記第1型枠との間で前記シート部材を挟む面と、前記第2型枠との間で前記シート部材を挟む面との間が、前記シート部材の端部側を位置決めする位置決め部となっており、また、該位置決め部の一部に、前記枠本体における内外方向および表裏方向の一方または両方に向かう凹状部が形成されている。
【0023】
このように構成された金型装置であれば、上述した各構成に係る枠体を製造するのに適している。
また、上記課題を解決するため第5の構成(請求項5)に係る枠体の製造方法は、第1〜第3のいずれかの構成に係る枠体の製造方法であって、第4の構成に係る金型装置のうち、前記第1型枠と前記第3型枠との間、および、前記第2型枠と前記第3型枠との間に前記シート部材を挟んだ状態で、前記第1型枠、前記第2型枠および前記第3型枠を組み合わせた後、これら型枠で囲まれた領域に、前記枠本体の部材を固化前の状態で充填してから固化させることで、前記シート部材が前記枠本体に張った状態で固定された枠体を製造する。
【0024】
このような製造方法であれば、上述した各構成に係る枠体を製造するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】枠体の構成を示す斜視図
図2】枠体の要部を示す断面図(図1のA−A断面)
図3】金型装置の要部を示す断面図
図4】別の実施形態における枠本体および金型装置の要部を示す断面図(1/4)
図5】別の実施形態における枠本体および金型装置の要部を示す断面図(2/4)
図6】別の実施形態における枠本体および金型装置の要部を示す断面図(3/4)
図7】別の実施形態における枠本体および金型装置の要部を示す断面図(4/4)
図8】別の実施形態における枠本体の要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)基本構成
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
枠体1は、図1に示すように、表裏方向(同図上下方向)の開口を形成する枠状の枠本体10と、枠本体10に開口を塞ぐように張られてなるメッシュ状のシート部材20と、を備えている。なお、本実施形態における枠体1は、椅子の座面として用いられるものである。
【0027】
これらのうち、枠本体10には、図2に示すように、表裏一方(本実施形態では裏面;以下同様)側に、取付対象物を取り付けるべく開口する取付溝11が形成されている。
なお、本実施形態における取付溝11は、枠本体10の全周にわたって形成された1つの連続する溝として形成されており、ここに取付対象物としての脚部を取り付けることで、脚部に支持された座面を有する椅子が構成される。
【0028】
また、この枠本体10には、開口を取り囲む内周面13に、内側(内周面13を離れる方向)へと突出する突出部30が設けられている。本実施形態において、この突出部30は、枠本体10における枠状の全周にわたって連続する1つのものとして設けられている。
【0029】
また、シート部材20は、突出部30に到達した端部側が、この端部側を枠本体10における内外方向および表裏方向に沿って斜め(図2における左下方向)に通過した後で、枠本体10における内周面13に沿って表側または裏側に向かうように配置されている。そして、シート部材20の端部は、枠本体10における内周面13に沿って表裏一方の面に到達しており、この面に沿って切断されている。なお、枠本体10における内周面13は、表裏一方の面に到達しているシート部材20の切断面と、表裏方向(図2の上下方向)と、で構成される(同図の一点鎖線参照)。
【0030】
なお、シート部材20は、枠本体10を形成する部材が固化される前の状態で透過可能な大きさのメッシュで構成されている。
(2)枠体1の製造方法
上述した枠体1は、以下に示す金型装置2によって製造される。
【0031】
金型装置2は、図3(a)に示すように、第1型枠40、第2型枠50、第3型枠60からなる。
これらのうち、第1型枠40は、枠本体10において、シート部材20の端部が到達する面(本実施形態では裏面;以下同様)側と反対の面(本実施形態では表面;以下同様)側の形状が象られている。
【0032】
また、第2型枠50は、枠本体10において、シート部材20の端部が到達する面側の形状であって、シート部材20の端部が位置する領域よりも外側のみの形状が象られている。
【0033】
そして、第3型枠60は、枠本体10において、シート部材20の端部が到達する面側の形状であって、シート部材20の端部が位置する領域よりも内側のみの形状が象られている。
【0034】
また、第3型枠60においては、第1型枠40との間でシート部材20を挟む面61と、第2型枠50との間でシート部材20を挟む面63との間が、シート部材20の端部側を位置決めする位置決め部65となっており、また、この位置決め部65の一部が、枠本体10における内外方向および表裏方向の一方または両方に向かう凹状部67となっている。この凹状部67は、第1型枠40の一部と共に、枠本体10の突出部30を象る。
【0035】
そして、この金型装置2では、図3(b)に示すように、第1型枠40と第3型枠60との間、および、第2型枠50と第3型枠60との間にシート部材20を挟んで位置決めした状態で、第1型枠40、第2型枠50および第3型枠60を組み合わせることにより、これら型枠で囲まれた領域により枠本体10が象られる。
【0036】
本実施形態では、こうして、第1型枠40、第2型枠50および第3型枠60を組み合わせた後、これら型枠で囲まれた領域に、枠本体10の部材を固化前の状態で充填してから固化させることによって、シート部材20が枠本体10に張った状態で固定された枠体1が製造される。
【0037】
なお、本実施形態においては、枠本体10の部材として樹脂材料が採用されており、各型枠で囲まれた領域への射出成型によって枠体1が製造される。
(3)作用効果
上記実施形態における枠体1では、シート部材20の端部が枠本体10における内周面13に沿って表面または裏面に到達するようにシート部材20が固定され、枠本体10によってその内側にシート部材20の端部側が隠されるような位置関係となり、この端部側が外部から視認しにくくなるため、これにより美観が損なわれることを防止することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、シート部材20の端部を、枠本体10における内周面に沿って表面または裏面に到達させており、この端部が取付溝11から突出する位置関係となっていないため、シート部材20の端部が取付対象物に干渉して取付精度を低下させることもない。
【0039】
このように、上記実施形態では、枠体1としての美観が大きく損なわれないようにしつつ、枠体1への取付対象物の取付を従来よりも精度よく行うことができる。
(4)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0040】
例えば、上記実施形態において、シート部材20は、突出部30に到達した端部側が、突出部30を斜めに通過してから、枠本体10における内周面に沿って表側または裏側に向かうように配置されている。しかし、このシート部材20は、その端部側が、はじめに突出部30を内外方向に沿って一定距離だけ通過するように配置するとよい。
【0041】
具体的には、図4(a)に示すように、突出部30の裏面(同図下方)側における突出量を表面(同図上方)側よりも少なくすることで内外方向に段差を作り、この段差の分だけ、シート部材20の端部側が内外方向に沿って一定距離だけ通過するように配置することが考えられる。
【0042】
この場合の枠体1を製造する際には、図4(b)に示すように、第3型枠60として、位置決め部65の凹状部67が突出部30の段差を象っているものを採用した金型装置2を用いることが考えられる。
【0043】
また、上記実施形態においては、枠本体10の突出部30が内側に突出するのみの形状となっている構成を例示した。しかし、この突出部30は、図5(a)に示すように、枠本体10の内周面13から内側に突出する突出片31と、突出片31の先端側から内周面13に沿って延出する延出片33と、からなる構成にするとよい。
【0044】
この場合の枠体1を製造する際には、図5(b)に示すように、第3型枠60として、位置決め部65の凹状部67が突出片31と延出片33とを象っているものを採用した金型装置2を用いることが考えられる。
【0045】
この場合、シート部材20の端部側が少なくとも一定距離だけ内外方向に延びた位置関係となるが、この位置関係であれば、シート部材20の端部側が通過する方向とシート部材20の引張方向とが近似し(最も角度差が小さくなり)、シート部材20が張られている状態においてシート部材20の端部側が引きはがされてしまうことを防止するのに好適である。これにより、シート部材20と枠本体10とをより強固に固定することができる。
【0046】
なお、この構成において、シート部材20の端部側が内外方向に通過する距離は、シート部材20において発生しうる引っ張り力に応じて距離など、少なくとも必要な強度を確保できる程度の距離があればよい。
【0047】
また、この場合においては、図6(a)に示すように、延出片33を表裏方向に一定の長さで形成すれば、突出部30における突出片31と延出片33とで形成されるリブ形状により、枠本体10を曲げる方向の力に対抗できるようになるため、枠本体10の枠としての強度を向上させることができる。
【0048】
この場合の枠体1を製造する際には、図6(b)に示すように、第3型枠60として、凹状部67の象っている延出片33が一定の長さとなっているものを採用した金型装置2を用いることが考えられる。
【0049】
この構成においては、突出部30の延出片33は、枠本体10の強度に寄与できる程度の長さだけでなく、枠本体10の内周面13に沿って表面または裏面にまで到達する長さを有するものとすれば、枠本体10の内側に位置するシート部材20の端部側を覆い隠すことができるため、これによっても美観が損なわれることを防止することができる。
【0050】
また、上記実施形態においては、シート部材20の端部が、突出部30に到達し、この突出部30を通過した後で、枠本体10の内周面13に沿って表裏一方の面まで到達するようにされた構成を例示した。しかし、シート部材20の端部は、図7(a)に示すように、まず内周面13に到達した後、この内周面13に沿って形成された突出部30を通過して表裏一方の面まで到達するように構成してもよい。
【0051】
この場合の枠体1を製造する際には、図7(b)に示すように、第3型枠60として、位置決め部65の凹状部67が突出部30を象っているものを採用すると共に、枠体1製造後に第3型枠60の開閉動作を可能ならしめるスライド面72を有する第4型枠70が含まれた金型装置2を用いることが考えられる(図7(c)参照)。
【0052】
また、上記実施形態においては、枠本体10の取付溝11が、枠本体10の全周にわたって形成された1つの連続する溝として構成されているものを例示したが、この取付溝11は、全周にわたって所定間隔毎に形成された複数の溝として構成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、枠本体10の突出部30が、枠本体10における枠状の全周にわたって連続する1つのものとして形成された構成を例示したが、この突出部30は、図8に示すように、枠本体10における枠状の全周にわたって所定間隔で複数のものが形成された構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…枠体、10…枠本体、11…取付溝、13…内周面、20…シート部材、30…突出部、31…突出片、33…延出片、2…金型装置、40…第1型枠、50…第2型枠、60…第3型枠、61…面、63…面、65…位置決め部、67…凹状部、70…第4型枠、72…スライド面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8