(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーとを含有する第1成分を懸濁重合することによって、前記抗生物活性化合物および前記重合性ビニルモノマーの重合体を含有するコアを形成する第1工程、および、
シェル形成成分を含有する第2成分を界面重合して、前記コアを被覆するシェルを形成する第2工程
を備え、
前記第2工程では、界面重合を、前記第1工程の懸濁重合を開始する時より後に開始する
ことを特徴とする、徐放性粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の徐放性粒子は、抗生物活性化合物を含有するコアと、コアを被覆するシェルとを備えている。
【0014】
シェルは、コアの表面を被覆する膜状に形成されている。
図12〜
図14のTEM写真が参照されるように、シェル(3)は、コア(2)の外周に沿って不均一な厚みで形成されている。また、シェル(3)は、
図12が参照されるように、比較的滑らかな表面を有しており、あるいは、
図13および
図14が参照されるように、
図12のそれに対して相対的に粗い表面を有している。
【0015】
そして、本発明の徐放性粒子は、抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーとを含有する第1成分を懸濁重合することによって、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの重合体を含有するコアを形成する第1工程、および、シェル形成成分を含有する第2成分を界面重合して、シェルを形成する第2工程を備える製造方法により、得ることができる。
【0016】
抗生物活性化合物は、例えば、重合性ビニルモノマーの重合体と相互作用できる官能部分を少なくとも2つ有している。
【0017】
このような官能部分としては、例えば、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、燐酸エステル基、カルボキシル基、エーテル基などの極性官能基、例えば、カルボキシレート結合、フォスフェート結合、尿素結合、炭素−ハロゲン結合などの極性基を含む極性結合、例えば、ベンゼン環、さらには、トリアジン環、イミダゾール環、イソチアゾリン環などの共役ヘテロ環などの共役環状部分などが挙げられる。
【0018】
抗生物活性化合物の分子量は、例えば、200〜600、好ましくは、200〜500である。
【0019】
抗生物活性化合物の分子量が上記範囲を超える場合には、抗生物活性化合物の重合体に対する相溶性が低下する場合がある。一方、抗生物活性化合物の分子量が上記範囲に満たない場合には、懸濁重合中に、抗生物活性化合物が水相に残存してしまい、懸濁重合後に、かかる抗生物活性化合物が析出して、懸濁液が固化する場合がある。
【0020】
また、抗生物活性化合物の融点は、例えば、100℃以下であり、好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、80℃以下である。抗生物活性化合物の融点が上記範囲を超える場合には、抗生物活性化合物がコアに内包されにくく、コア外に析出する場合があり、また、たとえ、抗生物活性化合物がコアに内包された場合でも、抗生物活性化合物がコア外に徐放されない場合がある。
【0021】
具体的には、抗生物活性化合物は、殺菌、抗菌、防腐、防藻、防かび、殺虫などの抗生物活性を有する、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、殺虫剤、除草剤、誘引剤、忌避剤および殺鼠剤などから選択される。これら抗生物活性を有する化合物としては、例えば、ヨウ素系化合物、トリアゾール系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、ジチオール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、パラオキシ安息香酸エステルなどの殺菌防腐防藻防かび剤、例えば、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、アルコキシアミン系化合物、オキサジアジン系化合物などの防蟻剤(殺蟻剤)などが挙げられる。
【0022】
ヨウ素系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0023】
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール)、ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン)(別称:フルシラゾール、1−[[ビス(4−フルオロフェニル)メチルシリル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)などが挙げられる。
【0024】
カルバモイルイミダゾール系化合物としては、例えば、N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド(プロクロラズ)などが挙げられる。
【0025】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
【0026】
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、
4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)などが挙げられる。
【0027】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール(DBNE)などが挙げられる。
【0028】
パラオキシ安息香酸エステルとしては、例えば、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
【0029】
ピレスロイド系化合物としては、例えば、シロバナムシヨケギクより得られるピレトリン、シネリン、ジャスモリンなどが挙げられ、例えば、これらから誘導されるアレスリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、トラロメトリン、シフルトリン((RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル
−(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−
ジメチルシクロプロパンカルボキシラート)、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、フェンバレレートなども挙げられる。
【0030】
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−N
1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N
2−シアノ−N
1−メチルアセトアミジン(アセタミプリド)などが挙げられる。
【0031】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
【0032】
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
【0033】
カーバメート系化合物としては、例えば、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
【0034】
アルコキシアミン系化合物としては、例えば、3−ラウリルオキシプロピリアミンなどが挙げられる。
【0035】
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
【0036】
殺虫剤としては、例えば、ピリプロキシフェンなどが挙げられる。
【0037】
除草剤としては、例えば、ピラクロニル、ペンディメタリン、インダノファンなどが挙げられる。
【0038】
忌避剤としては、例えば、ディートなどが挙げられる。
【0039】
抗生物活性化合物は、例えば、実質的に疎水性であって、具体的には、例えば、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、より具体的には、例えば、室温の溶解度が、質量基準で、1質量部/水100質量部(10000ppm)以下、好ましくは、0.5質量部/水100質量部(5000ppm)以下、さらに好ましくは、0.1質量部/水100質量部(1000ppm)以下であり、容量基準で、例えば、1g/水100mL以下、好ましくは、0.5g/水100mL以下、さらに好ましくは、0.1g/水100mL以下である。
【0040】
抗生物活性化合物の水に対する溶解度が、上記した範囲を超える場合には、重合性ビニルモノマーを含む第1成分を懸濁重合する際に、抗生物活性化合物がコア外(つまり、水相)へ漏出し易く、重合後に、水相に溶解していた抗生物活性化合物が析出するので、抗生物活性化合物を含有するコアを形成することが困難となる場合がある。
【0041】
これら抗生物活性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0042】
なお、上記した抗生物活性化合物は、例えば、製造工程中に、融点が上記範囲外である不純物を適宜の割合で含有していてもよい。具体的には、シフルトリンの異性体I(融点:57℃)と異性体II(融点:74℃)と異性体III(融点:66℃)との混合物は、例えば、不純物である異性体IV(融点102℃)を含有している。
【0043】
重合性ビニルモノマーは、例えば、重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ分子内に有するモノマーである。
【0044】
具体的には、重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族系ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニルモノマー、窒素含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エステルおよび/アクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルなどが挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸などが挙げられる。
【0047】
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0048】
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0049】
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0050】
ハロゲン化ビニルモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。また、ハロゲン化ビニルモノマーとして、ハロゲン化ビニリデンモノマーも挙げられ、具体的には、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0051】
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0052】
重合性ビニルモノマーは、例えば、実質的に疎水性であって、具体的には、例えば、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、より具体的には、室温における溶解度が、例えば、10質量部/水100質量部以下、好ましくは、8質量部/水100質量部以下である。
【0053】
上記した重合性ビニルモノマーのうち、例えば、抗生物活性化合物に対する相溶性が強く、抗生物活性化合物を溶解(相溶)することのできる抗生物活性化合物相溶性モノマー(以下、単に相溶性モノマーという場合がある。)が選択される。
【0054】
これら相溶性モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0055】
相溶性モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの単独使用、または、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーとの併用が挙げられる。
【0056】
具体的には、メタクリル酸メチル(MMA)の単独使用、メタクリル酸メチルとメタクリル酸との併用が挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーおよび(メタ)アクリル酸系モノマーが併用される場合には、(メタ)アクリル酸系モノマーの配合割合は、相溶性モノマー100質量部に対して、例えば、30質量部未満、好ましくは、20質量部以下であり、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上である。
【0058】
抗生物活性化合物および相溶性モノマーは、後述する重合温度(加熱温度)において、好ましくは、重合性ビニルモノマーの重合体と抗生物活性化合物とが相溶するような組み合わせが選択される。
【0059】
また、重合性ビニルモノマーは、架橋性モノマーを相溶性モノマーとして含むこともできる。
【0060】
架橋性モノマーは、徐放性粒子の徐放性を調節するために、必要により配合され、例えば、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。好ましくは、モノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
架橋性モノマーは、架橋性モノマーを含むモノマー混合物(重合性ビニルモノマー)と抗生物活性化合物との相溶性を確保すべく、架橋性モノマーを除く相溶性モノマーの分子構造と類似する分子構造を有するモノマーが選択され、具体的には、例えば、架橋性モノマーを除く相溶性モノマーが(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含む場合には、架橋性モノマーとしてモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが選択される。
【0062】
架橋性モノマーの配合割合は、架橋性モノマーを除く相溶性モノマー100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは、10〜80質量部である。
【0063】
抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーとして、Hansenで定義され、van Krevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compoundが、例えば、2〜8[(J/cm
3)
1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,compoundが、例えば、5.5〜9.5[(J/cm
3)
1/2]である抗生物活性化合物と、溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,polymerが、例えば、5〜7[(J/cm
3)
1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,polymerが、例えば、8〜10[(J/cm
3)
1/2]である重合体を生成する重合性ビニルモノマーとの組合せが選択される。
【0064】
なお、各項δ(δ
pおよびδ
h)の添字compoundおよびpolymerは、抗生物活性化合物および重合体をそれぞれ示す。
【0065】
Hansenで定義され、van Krevelen and Hoftyzer法で算出される溶解度パラメータδの双極子間力項δ
pおよび水素結合力項δ
hは、原子団(化学結合または置換基などを含む)の種類および数に依存し、具体的には、下記式(1)および(2)でそれぞれ示される。
【0067】
(式中、F
pは、分子間力の双極子間力要素(ポーラー・コンポーネント・オブ・ザ・モーラー・アトラクション・ファンクション(polar component of the molar attraction function)、Vはモル体積である。)
【0069】
(式中、E
hは、分子間力の水素結合力の要素(コントリビューション・オブ・ザ・ハイドロジェン・ボンディング・フォーセズ・ツー・ザ・コーヘシヴ・エナジー(contribution of the hydrogen bonding forces to the cohesive energy)、Vはモル体積である。)
上記したF
p、E
hおよびVの数値は、「Properties of Polymers」(3rd Edition、第7章、第189〜225頁、van Krevelen著、ELSEVIER、2003年発行)に、原子団毎に記載されている。
【0070】
なお、置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のF
pおよびE
hは、上記した文献に記載されていないが、関西大学山本秀樹教授によって、次の方法で算出されている。
【0071】
まず、置換基−IのF
pの算出方法について例示する。
【0072】
「Hansen Solubility Parameters, A User’s Handbook」(Charles Hansen著、第347〜483ページのAppendix、CRC Press、2007年発行)に記載されている置換基−Iを含む化合物を無作為に10個選択し、上記した文献に記載される化合物δ
pの数値を、上記式(1)の左辺として代入する。また、上記により選択された10個の化合物のすべての原子団のVの数値、および、置換基−Iを除く原子団のF
pを上記式(2)の右辺に代入する一方、右辺における置換基−IのF
pを未知数とする。
【0073】
そして、化合物のδ
p、すべての原子団のVおよび置換基を除く原子団のF
pが既知数であり、置換基−IのF
pが未知数である方程式を解き、10個の化合物に対応する解(F
p)の平均を、置換基−IのF
pとして算出する。
【0074】
また、置換基>Si<、=N−および≡C−のF
pについても、上記と同様に計算処理することにより、算出される。
【0075】
また、置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のE
hについても、上記と同様に計算処理することにより、それぞれ算出される。
【0076】
上記した計算処理は、プログラムとしてコンピュータに記録され、最適化されている。
【0077】
上記により算出された置換基−I、>Si<、=N−および≡C−のF
pおよびE
hを以下に記載する。
−I F
p:0(J
1/2・cm
3/2・mol
−1)
E
h:0(J・mol
−1)
>Si< F
p:0(J
1/2・cm
3/2・mol
−1)
E
h:0(J・mol
−1)
=N− F
p:800(J
1/2・cm
3/2・mol
−1)
E
h:3000(J・mol
−1)
≡C− F
p:0(J
1/2・cm
3/2・mol
−1)
E
h:0(J・mol
−1)
次に、重合体の一例として、メタクリル酸メチルの重合体であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)を例示し、かかるポリメタクリル酸メチルの溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,PMMAおよび水素結合力項δ
h,PMMAを算出する。
1.単独重合体の双極子間力項δ
pおよび水素結合力項δ
h
(1)ポリメタクリル酸メチルの構造式
ポリメタクリル酸メチルは、下記式(3)で表される。
【0079】
(式中、nは、重合度を示す。)
(2)双極子間力項δ
p,PMMMA
上記式(3)のモノマー単位(−CH
2−C(CH
3)COOCH
3−)において、各原子団に対応するF
pおよびVを以下に記載する。
−CH
3 F
p:0(J
1/2・cm
3/2・mol
−1)
V:33.5(cm
3・mol)
−CH
2− F
p:0(J
1/2・cm
3/2・mol
−1)
V:16.1(cm
3・mol)
>C< F
p:0(J
1/2・cm
3/2・mol
−1)
V:−19.2(cm
3・mol)
−COO− F
p:490(J
1/2・cm
3/2・mol
−1)
V:18(cm
3・mol)
従って、モノマー単位の双極子間力項δ
p,monomer unitは、下記式(4)に示すように、5.98[(J/cm
3)
1/2]と算出される。
【0081】
そして、上記したモノマー単位の双極子間力項δ
p,monomer unitが、モノマー単位の繰り返し構造であるポリメタクリル酸メチルの双極子間力項δ
p,PMMAとされる。
(3)水素結合力項δ
h,PMMA
上記式(3)のモノマー単位(−CH
2−C(CH
3)COOCH
3−)において、各原子団に対応するE
hを以下に記載する。
−CH
3 E
h:0(J・mol
−1)
−CH
2− E
h:0(J・mol
−1)
>C< E
h:0(J・mol
−1)
−COO− E
h:7000(J・mol
−1)
従って、モノマー単位の水素結合力項δ
h,monomer unitは、下記式(5)に示すように、9.25[(J/cm
3)
1/2]と算出される。
【0083】
そして、上記したモノマー単位の水素結合力項δ
h,polymerが、モノマー単位の繰り返し構造であるポリメタクリル酸メチルの水素結合力項δ
h,PMMAとされる。
2.共重合体の双極子間力項δ
pおよび水素結合力項δ
h
次に、共重合体の双極子間力項δ
pおよび水素結合力項δ
hを算出する。
【0084】
各モノマー単位の双極子間力項δ
p,monomer unitに、モノマーの質量比を乗じて、それらを足し合わせることにより、共重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,copolymerを算出する。また、各モノマー単位の水素結合力項δ
h,monomer unitに、モノマーの質量比を乗じて、それらを足し合わせることにより、共重合体の溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,copolymerを算出する。
【0085】
共重合体の一例として、メタクリル酸メチルおよびエチレングリコールジメタクリレートを、質量比70:30(後述する実施例1〜
5、参考例6、実施例7の質量比に相当)で含むモノマーの共重合体であるポリメタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート(PMMA−EGDMA)を挙げて、その溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,PMMA−EGDMAおよび水素結合力項δ
h,PMMA−EGDMAを算出する。(1)双極子間力項δ
p,PMMA−EGDMA
メタクリル酸メチルのモノマー単位の双極子間力項δ
p,MMA unitは、上記で算出したように、5.98[(J/cm
3)
1/2]である。
【0086】
また、エチレングリコールジメタクリレートのモノマー単位の双極子間力項δ
p,EDGMAは、上記と同様に算出することにより、5.37[(J/cm
3)
1/2]である。
【0087】
そして、この共重合体の双極子間力項δ
p,PMMA−EGDMAは、下記式(6)のように算出される。
δ
p,PMMA−EGDMA=(70/100)δ
p、MMA unit+(30/100)δ
p、EGDMA unit
=(70/100)×5.98+(30/100)×5.37
=5.80[(J/cm
3)
1/2] (6)
(2)水素結合力項δ
h,PMMA−EGDMA
メタクリル酸メチルのモノマー単位の水素結合力項δ
h,MMA unitは、9.25[(J/cm
3)
1/2]である。
【0088】
また、エチレングリコールジメタクリレートのモノマー単位の水素結合力項δ
h,EGDMAは、10.42[(J/cm
3)
1/2]である。
【0089】
そして、この共重合体の水素結合力項δ
h,PMMA−EGDMAは、下記式(7)のように算出される。
δ
h,PMMA−EGDMA=(70/100)δ
h,MMA unit+(30/100)δ
h,EGDMA unit
=(70/100)×9.25+(30/100)×10.42
=9.60[(J/cm
3)
1/2] (7)
そして、重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,polymerは、好ましくは、5〜6.5[(J/cm
3)
1/2]であり、重合体の溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,polymerは、好ましくは、9〜10[(J/cm
3)
1/2]である。
【0090】
重合体の双極子間力項δ
p,polymerおよび/または水素結合力項δ
h,polymerが上記範囲に満たないと、重合体の疎水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物との十分な相溶性を得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができた場合でも、抗生物活性化合物が懸濁重合中にコア外へ漏出して、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
【0091】
一方、重合体の双極子間力項δ
p,polymerおよび/または水素結合力項δ
h,polymerが上記範囲を超えると、重合体の親水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物との十分な相溶性が得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができたとしても、懸濁重合における水相との界面自由エネルギーが低くなり、抗生物活性化合物が懸濁重合中にコア外へ漏出して、抗生物活性化合物を十分内包したコアの合成が困難となる場合がある。
3.抗生物活性化合物の溶解度δの双極子間力項δ
p,compoundおよび水素結合力項δ
h,compound
抗生物活性化合物の溶解度δの双極子間力項δ
p,compoundおよび水素結合力項δ
h,compoundについても、上記したモノマー単位のそれと同様にして算出される。
【0092】
その結果、算出されたIPBC、OIT、シフルトリン、プロピコナゾール、プロクロラズおよびフルシラゾールの各抗生物活性化合物の双極子間力項δ
p,compoundおよび水素結合力項δ
h,compoundを、表1に示す。
【0094】
抗生物活性化合物の溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compoundは、好ましくは、3〜7[(J/cm
3)
1/2]であり、水素結合力項δ
h,compoundは、好ましくは、5.8〜9.5[(J/cm
3)
1/2]である。
【0095】
抗生物活性化合物の双極子間力項δ
p,compoundおよび/または水素結合力項δ
h,compoundが上記範囲に満たないと、抗生物活性化合物の疎水性が過度に高くなり、重合体との十分な相溶性を得ることができない場合がある。
【0096】
一方、抗生物活性化合物の双極子間力項δ
p,compoundおよび/または水素結合力項δ
h,compoundが上記範囲を超えると、抗生物活性化合物の親水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物がコア外へ漏出し易く、抗生物活性化合物を十分に内包したコアの合成が困難となる場合がある。
4.溶解度パラメータの双極子間力項δ
pの差(Δδ
p)および水素結合力項δ
hの差(Δδ
h)
また、溶解度パラメータδにおいて、重合体の双極子間力項δ
p,polymerから抗生物活性化合物の双極子間力項δ
p,compoundを差し引いた値Δδ
p(=δ
p,polymer−δ
p,compound)は、例えば、−2.5〜3.0[(J/cm
3)
1/2]、好ましくは、−1.1〜2.7[(J/cm
3)
1/2]である。
【0097】
また、重合体の水素結合力項δ
h,polymerから抗生物活性化合物の水素結合力項δ
h,compoundを差し引いた値Δδ
h(=δ
h,polymer−δ
h,compound)は、例えば、−1.1〜4.5[(J/cm
3)
1/2]、好ましくは、0〜4.2[(J/cm
3)
1/2]である。
【0098】
Δδ
pおよびΔδ
hが上記した範囲内にあれば、抗生物活性化合物および重合体の優れた相溶性を確保して、優れた徐放性を確保することができる。
【0099】
抗生物活性化合物の双極子間力項δ
p,compoundおよび水素結合力項δ
h,compoundが上記した範囲内であり、かつ、重合体の双極子間力項δ
p,polymerおよび水素結合力項δ
h,polymerが上記した範囲内であれば、抗生物活性化合物は、懸濁重合中、コアから漏出せずに重合体と相溶していると定義される。
【0100】
抗生物活性化合物の重合性ビニルモノマーに対する割合は、質量基準(つまり、抗生物活性化合物の質量部/重合性ビニルモノマーの質量部)で、例えば、10/90〜60/40(つまり、0.11〜1.5)である。
【0101】
とりわけ、抗生物活性化合物が常温(20〜30℃、より具体的には、25℃)で液体の場合には、重合性ビニルモノマーに対する抗生物活性化合物の配合割合は、抗生物活性化合物が重合性ビニルモノマーの重合体に対する可塑剤として作用することから、質量基準で、例えば、1/99〜60/40(つまり、0.01〜1.5)、好ましくは、5/95〜50/50(つまり、0.05〜1.0)である。
【0102】
抗生物活性化合物が常温で固体の場合には、抗生物活性化合物の拡散速度が常温で液体の場合に比べて、徐放速度が遅くなることから、質量基準で、例えば、10/90〜70/30(つまり、0.11〜2.33)、好ましくは、10/90〜60/40(つまり、0.11〜1.5)である。
【0103】
シェル形成成分は、重縮合(縮合重合)または重付加などにより反応する、互いに異なる少なくとも2つの成分であって、例えば、第1シェル形成成分と、第2シェル形成成分とを含有している。
【0104】
第1シェル形成成分は、例えば、実質的に疎水性であって、具体的には、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、より具体的には、例えば、室温の溶解度が、質量基準で、1質量部/水100質量部(10000ppm)以下、好ましくは、0.5質量部/水100質量部(5000ppm)以下、さらに好ましくは、0.1質量部/水100質量部(1000ppm)以下である。
【0105】
第1シェル形成成分は、第2シェル形成成分と重合(反応)することによりシェルを形成する油溶性化合物であって、例えば、ポリイソシアネート、ポリカルボン酸クロライド、ポリスルホン酸クロライドなどが挙げられる。
【0106】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート(芳香族ジイソシアネート)、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート(脂肪族ジイソシアネート)、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート(脂環族ジイソシアネート)、例えば、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート(芳香脂肪族ジイソシアネート)などが挙げられる。
【0107】
また、上記したポリイソシアネートの多量体も挙げられ、具体的には、二量体、三量体(イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、トリマー変性体)、五量体、七量体などが挙げられる。好ましくは、三量体、具体的には、IPDIの三量体が挙げられる。
【0108】
さらに、上記したポリイソシアネートの変性体(多量体を除く)も挙げられ、例えば、
ポリオール変性ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0109】
ポリカルボン酸クロライドとしては、例えば、セバシン酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、トリメシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0110】
ポリスルホン酸クロライドとしては、例えば、ベンゼンスルホニルジクロライドなどが挙げられる。
【0111】
第1シェル形成成分は、単独使用または併用することができる。
【0112】
第1シェル形成成分として、好ましくは、ポリイソシアネート、さらに好ましくは、ポリイソシアネートの多量体が挙げられる。
【0113】
第2シェル形成成分は、界面重合の前には、水相に存在する水溶性化合物である。第2シェル形成成分は、活性水素基含有化合物であって、そのような活性水素基含有化合物としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物であり、具体的には、例えば、ポリアミン、ポリオール、水などが挙げられる。
【0114】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノトルエン、フェニレンジアミン、ピペラジンなどのジアミン、例えば、ジエチレントリアミンなどのトリアミン、例えば、トリエチレンテトラミンなどのテトラアミン、例えば、テトラエチレンペンタミンなどのペンタアミン、例えば、ペンタエチレンヘキサミンなどのヘキサミンなどが挙げられる。好ましくは、トリアミンが挙げられる。
【0115】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール、例えば、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどが挙げられる。
【0116】
第2シェル形成成分は、単独使用または併用することができる。
【0117】
好ましくは、ポリアミンが挙げられる。
【0118】
そして、この製造方法において、第1工程では、まず、第1成分を疎水性溶液として調製する。
【0119】
疎水性溶液は、上記した抗生物活性化合物と重合性ビニルモノマーとを配合することにより調製する。具体的には、溶剤の不存在下、抗生物活性化合物を重合性ビニルモノマーに溶解することにより、疎水性溶液を調製する。
【0120】
また、疎水性溶液には、好ましくは、開始剤を配合する。
【0121】
開始剤は、油溶性のラジカル重合開始剤であって、ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド(10時間半減温度T
1/2:61.6℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減温度T
1/2:65.3℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減温度T
1/2:69.9℃)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(10時間半減温度T
1/2:40.5℃)、ベンゾイルパーオキシド(10時間半減温度T
1/2:73.6℃)などの有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(10時間半減温度T
1/2:60℃)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減温度T
1/2:51℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(10時間半減温度T
1/2:67℃)などのアゾ化合物などが挙げられる。好ましくは、有機過酸化物が挙げられる。
【0122】
開始剤の10時間半減期温度T
1/2は、例えば、40〜90℃、好ましくは、50〜80℃である。開始剤の10時間半減期温度T
1/2は、任意の温度数点における濃度半減時間をプロットして得られたグラフの10時間値の温度とされる。
【0123】
開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.01〜2質量部、好ましくは、0.1〜1質量部である。
【0124】
開始剤は、上記した抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの配合と同時、あるいは、その前後に、配合される。好ましくは、開始剤を、抗生物活性化合物を重合性ビニルモノマーに溶解する時に、同時に溶解する。
【0125】
また、疎水性溶液には、第1シェル形成成分を配合することもできる。つまり、疎水性溶液には、第2成分(シェル形成成分)の一部(第1シェル形成成分の全部または一部)、第1成分とともに含有させることができる。
【0126】
疎水性溶液に配合される第1シェル形成成分の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、5〜80質量部、好ましくは、10〜70質量部、さらに好ましくは、20〜60質量部、とりわけ好ましくは、25〜50質量部である。
【0127】
換言すると、第1シェル形成成分の重合性ビニルモノマーに対する割合は、質量基準で、(つまり、第1シェル形成成分の質量部/重合性ビニルモノマーの質量部)で、例えば、0.05〜0.8、好ましくは、0.1〜0.7、さらに好ましくは、0.2〜0.6、とりわけ好ましくは、0.25〜0.5である。
【0128】
上記範囲に満たない場合には、徐放速度の抑制効果が不十分となる場合があり、さらには、シェルの厚みが不均一とならず、再分散性(後述)が低下する場合がある。
【0129】
一方、上記範囲を超える場合には、徐放性粒子が抗生物活性化合物を放出できず、また、抗生物活性化合物の含有割合が過度に低下して、徐放性粒子が抗生物活性を発現できない場合がある。
【0130】
疎水性溶液の調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、必要に応じて、例えば、30〜100℃に加熱して実施することもできる。好ましくは、開始剤の熱分解を抑制する観点から、加熱することなく、常温で疎水性溶液を調製する。
【0131】
第1工程では、次いで、疎水性溶液を懸濁(水分散)させる。
【0132】
すなわち、疎水性溶液および水を配合し、均一に攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させる。これにより、疎水性溶液が懸濁された懸濁液を得る。
【0133】
懸濁の条件は、特に制限されず、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、例えば、30〜100℃で加熱して実施することもできる。好ましくは、開始剤の熱分解を抑制する観点、および、疎水性溶液に配合される第1シェル形成成分が反応性に起因して水と反応する場合には、その反応を抑制する観点から、加熱することなく、懸濁を実施する。
【0134】
水の配合割合は、疎水性溶液100質量部に対して、例えば、50〜1500質量部、好ましくは、100〜1000質量部、さらに好ましくは、120〜500質量部である。
【0135】
また、疎水性溶液の懸濁では、例えば、分散剤を配合する。
【0136】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA。部分ケン化ポリビニルアルコールを含む。)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉、ポリアクリル酸およびその塩、スチレンマレイン酸コポリマーおよびその塩などの水溶性ポリマー、例えば、第三燐酸カルシウム、コロイダルシリカ、モンモリロナイト、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、亜鉛華などの無機分散剤などが挙げられる。
【0137】
分散剤のうち、好ましくは、ポリビニルアルコール、第三燐酸カルシウムが挙げられる。第三燐酸カルシウムであれば、得られた徐放性粒子が、懸濁剤として製剤化される場合には、その懸濁剤の再分散性が極めて良好であり、徐放性粒子が、粉剤(後述)または粒剤(後述)として製剤化される場合には、その粉剤または粒剤の水中での再分散性が極めて良好である。
【0138】
分散剤の配合割合は、疎水性溶液100質量部に対して、例えば、0.1〜20質量部、好ましくは、0.5〜10質量部である。
【0139】
また、疎水性溶液を懸濁する時に、上記した分散剤とともに、界面活性剤を併用することもできる。
【0140】
界面活性剤は、懸濁重合中のコアの凝集を有効に防止するために、配合される。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBN)、ラウリル硫酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルアンモニウム、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩などのアニオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン系界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0141】
界面活性剤の配合割合は、疎水性溶液100質量部に対して、例えば、0.0001〜1.0質量部、好ましくは、0.001〜0.1質量部である。
【0142】
分散剤および界面活性剤は、例えば、疎水性溶液および水の配合前または配合後のいずれにおいても、配合することができる。分散剤および界面活性剤は、好ましくは、疎水性溶液と配合する前の水に配合する。これにより、分散剤および界面活性剤の水溶液または分散液を調製する。
【0143】
上記した疎水性溶液の懸濁では、例えば、ホモミクサー、ディスパー、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入分散機などの分散機が用いられる。
【0144】
好ましくは、ホモミクサーが用いられ、その回転数は、例えば、100〜10000rpm、好ましくは、1000〜8000rpmである。
【0145】
次いで、懸濁液を所定温度に昇温することにより、第1成分を懸濁重合する。
【0146】
懸濁重合では、懸濁液の懸濁状態が維持されるように、懸濁液を攪拌しながら、重合性ビニルモノマーが反応(具体的には、ビニル重合)して、重合性ビニルモノマーの重合体が生成される。また、原料となる重合性ビニルモノマーが疎水性相(油相)にあることから、インサイチュ(in situ)重合とされる。
【0147】
懸濁重合を実施するには、まず、懸濁液を、開始剤の10時間半減温度T
1/2より、例えば、1〜30℃、好ましくは、5〜20℃高い温度に昇温する。
【0148】
具体的には、昇温温度(つまり、重合温度)は、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃、さらに好ましくは、50〜70℃である。
【0149】
この懸濁重合の重合温度は、好ましくは、上記した抗生物活性化合物の融点より高く設定されている。
【0150】
そして、昇温中の懸濁液では、所定温度において、開始剤が熱分解することにより、懸濁重合が開始する。
【0151】
懸濁重合が開始する温度(開始温度)T
iは、例えば、上記した開始剤の10時間半減温度T
1/2と下記式(1)の関係にある。
【0152】
T
1/2−10≦T
i≦T
1/2+10 (1)
(式中、T
iは、懸濁重合の開始温度、T
1/2は、開始剤の10時間半減温度を示す。)
懸濁重合時における圧力は、特に限定されず、常圧である。あるいは、例えば、高圧下で実施することもできる。好ましくは、常圧で実施する。
【0153】
また、懸濁重合は、例えば、窒素などの不活性ガス雰囲気下で、実施する。
【0154】
懸濁重合の重合時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上、さらに好ましくは、4時間以上であり、通常、10時間以下である。また、懸濁重合の重合時間は、例えば、3時間未満、さらには、2時間以下に設定することもできる。
【0155】
懸濁重合の重合時間が上記下限値を下回る場合には、重合時間が過度に短くなるため、コアの表面およびそのわずか内側の部分において、残存する重合性ビニルモノマーと第1シェル形成成分とが相溶するように存在し、次の界面重合が、残存する重合性ビニルモノマーの重合とともに進行する。
【0156】
上記した懸濁重合によって、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの重合体を含有するコアを形成する。
【0157】
懸濁重合中、重合性ビニルモノマーの重合体は、例えば、抗生物活性化合物に対して相溶している。つまり、重合体が抗生物活性化合物に溶解されて、重合体の抗生物活性化合物溶液とされており、その抗生物活性化合物溶液が、水相中で懸濁されている。
【0158】
また、重合性ビニルモノマーは、上記した懸濁重合中の重合温度において、例えば、上記したように重合性ビニルモノマーの重合体と抗生物活性化合物とが相溶するような組み合わせが選択されていることから、懸濁重合中に相分離が生じにくく、重合体(反応途中の重合体)が抗生物活性化合物に溶解し、あるいは、重合体(反応途中の重合体)が抗生物活性化合物に対して膨潤した状態で反応が進行し、均一相が形成されたコアを得ることができる。
【0159】
その後、第2成分を界面重合して、第2工程を実施する。
【0160】
すなわち、疎水性溶液に第1シェル形成成分を予め含有させた場合には、コアにおける第1シェル形成成分と、第2シェル形成成分とを、反応させる。また、第2工程における界面重合は、第1工程の懸濁重合の進行に伴って第1重合性ビニルモノマーが減少する時に、開始する。
【0161】
具体的には、第2シェル形成成分を、懸濁重合が進行している懸濁液に添加することにより、界面重合を開始させる。これによって、第2成分の界面重合が、第1工程の懸濁重合が開始する時より後に開始する。
【0162】
第2シェル形成成分の配合割合は、第2シェル形成成分のアミノ基(1級アミノ基および2級アミノ基)に対する、第1シェル形成成分のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/アミノ基)が、例えば、0.4〜1.2、好ましくは、0.6〜1.0、さらに好ましくは、0.7〜0.9となる割合である。
【0163】
また、第2シェル形成成分を、好ましくは、水に希釈して第2シェル形成成分水溶液として調製し、かかる第2シェル形成成分水溶液を、懸濁重合が進行している懸濁液に添加する。
【0164】
あるいは、第1シェル形成成分の乳化液を調製し、調製した乳化液と、第2シェル形成成分(第2シェル形成成分水溶液)とを懸濁液に配合して、それらを反応させることもできる。この場合には、第1シェル形成成分の乳化液を懸濁液に添加して、第1シェル形成成分が、重合体(コア)の表面に付着または吸収された後に、第2シェル形成成分を添加することにより、重合体(コア)の表面で界面重合させる。
【0165】
また、第2シェル形成成分水溶液には、シランカップリング剤を配合することもできる。
【0166】
シランカップリング剤は、例えば、1級アミノ基を少なくとも有するアルコキシシリル化合物であって、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有モノアミンなどが挙げられる。
【0167】
シランカップリング剤の配合割合は、例えば、第1シェル形成成分としてポリイソシアネートが用いられ、第2シェル形成成分としてポリアミンが用いられる場合には、上記したアミノ基に対するイソシアネート基の当量比が変更されることなく、第2シェル形成成分の一部をシランカップリング剤に置換した割合である。
【0168】
シランカップリング剤の配合割合は、第2シェル形成成分100質量部に対して、例えば、0.5〜20質量部、好ましくは2〜10質量部である。
【0169】
界面重合では、コア(重合体)中に存在する第1シェル形成成分と、水相中の第2シェル形成成分とが、重合体粒子の表面で反応する。
【0170】
界面重合は、例えば、第1工程(懸濁重合)の重合温度と同温で実施することができ、あるいは、第1工程(懸濁重合)の重合温度より高い温度で実施することもできる。そのような温度としては、第1工程の重合温度に対して、例えば、1〜20℃高い温度、好ましくは、2〜15℃高い温度、さらに好ましくは、5〜10℃高い温度である。
【0171】
界面重合の重合時間は、例えば、0.1〜8時間、好ましくは、0.5〜6時間、さらに好ましくは、1〜4時間である。
【0172】
界面重合の重合時間が上記範囲内にあれば、界面重合を完全に終了させることができる。
【0173】
界面重合の終了は、第1シェル形成成分がポリイソシアネートである場合には、ポリイソシアネートに由来するイソシアネート基による赤外吸収スペクトルの吸収が消滅したことによって、確認される。
【0174】
また、界面重合の終了は、第2シェル形成成分がポリアミンである場合には、懸濁液のpHが、ポリアミンの添加前の値の近傍まで低下することにより、確認することもできる。
【0175】
第2成分を界面重合して、第2工程を実施することにより、コアを被覆するシェルを形成することができる。
【0176】
界面重合を開始する時に残存する重合性ビニルモノマーは、第1シェル形成成分と相溶するように存在しており、第2工程の界面重合が、残存する重合性ビニルモノマーの重合とともに進行する。
【0177】
そのため、懸濁重合の重合時間が短い場合(具体的には、3時間未満、さらには、2時間以内)には、重合性ビニルモノマーが比較的多量残存するので、第1シェル形成成分は、溶液状態であって、懸濁重合により形成される重合体を含むコアから相分離し、
図14のTEM写真が参照されるように、シェル(3)は、コア(2)の外周に沿って滑らかな表面を有する。そのため、
図5のSEM写真が参照されるように、徐放性粒子は、略球形状に形成される。
【0178】
一方、懸濁重合の重合時間が長い場合(具体的には、3時間以上、さらには、4時間以上)には、重合性ビニルモノマーが比較的少量残存したり、あるいは、実質的に残存しない(実質的に全部懸濁重合した)ので、第1シェル形成成分は、高粘度溶液状態あるいは固相状態で、懸濁重合により形成される重合体を含むコアから相分離する。そのため、
図12および
図13が参照されるように、コア(2)の表面において、第1シェル形成成分が偏在し、コア(2)の表面において不均一に分布するように、相分離する。その結果、界面重合によって形成されるシェル(3)が、コア(2)の外周に沿って不均一な厚みで形成される。
【0179】
そうすると、
図12および
図13のTEM写真と、
図3および
図4のSEM写真とが参照されるように、シェル(2)には、外方に突出する突出部分(4)が形成される。なお、突出部分(4)は、シェル(2)の周方向に沿って間隔を隔てて複数形成されている。
【0180】
そのため、徐放性粒子(1)が懸濁剤として製剤化される場合には、その懸濁剤の再分散性が向上されて、ケーキングの発生を防止することができる。
【0181】
その後、反応後の懸濁液を、例えば、放冷、水冷などによって冷却する。
【0182】
冷却温度は、例えば、室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)である。
【0183】
冷却後、抗生物活性化合物は、室温で液体であれば、コアにおける重合体に対して、相溶している。
【0184】
あるいは、冷却後、抗生物活性化合物は、室温で固体であれば、コアにおける重合体中において、相溶状態が凍結されて、均一な状態を維持している。
【0185】
一方、抗生物活性化合物は、好ましくは、シェルに対して相溶していない。
【0186】
これによって、コアとシェルとを備える徐放性粒子を含む懸濁液を得ることができる。
【0187】
徐放性粒子の粒子径は、特に制限されず、平均粒子径(メジアン径)で、例えば、1μm〜1mm、好ましくは、2μm〜100μmである。
【0188】
これにより、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーの重合体を含有するコアと、コアを被覆するシェルとを備える徐放性粒子が懸濁された懸濁液を得ることができる。
【0189】
そして、徐放性粒子を含む懸濁液に、必要により、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、微生物増殖抑制剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合する。
【0190】
このようにして得られた徐放性粒子は、そのままの状態(懸濁液)、つまり、懸濁剤として用いてもよく、また、濾過および/または遠心分離などによって固液分離した後に、例えば、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。また、必要により、水洗浄および/または酸洗浄することもできる。さらに、懸濁液をそのまま噴霧乾燥または風乾して、粉剤または粒剤などの剤型に製剤化することもできる。
【0191】
懸濁剤における固形分濃度(徐放性粒子の濃度)は、例えば、1〜50質量%、好ましくは、5〜40質量%である。
【0192】
懸濁剤における抗生物活性化合物の濃度は、例えば、0.5〜40質量%、好ましくは、1〜25質量%である。
【0193】
一方、粉剤は、とりわけ、分散剤として第三燐酸カルシウムが用いられた場合には、流動性に優れている。また、かかる粉剤を、再度、水分散または懸濁させることにより、水分散剤または懸濁剤を再調製することができる。そのため、かかる粉剤は、再水分散性または再懸濁性に優れる。
【0194】
その結果、輸送時には、徐放性粒子を粉剤として調製しておき、使用時には、水分散剤または懸濁剤として調製(再製剤化、再生)することにより、輸送コストを低減でき、さらには、用途を拡大させることができる。
【0195】
そして、上記した製造方法によれば、第2工程では、界面重合を、第1工程の懸濁重合を開始する時より後に開始するので、シェルによって、抗生物活性化合物と重合体とを含有するコアを、確実に被覆することができる。
【0196】
そのため、抗生物活性化合物の放出速度を抑制することにより、優れた徐放性を有し、優れた効力持続効果を発現することのできる、本発明の徐放性粒子を得ることができる。なお、徐放性とは、内包する化合物を緩徐に放出できる性質である。
【0197】
また、第2シェル形成成分水溶液がシランカップリング剤(1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物)を含有する場合には、シェルにおいて、シランカップリング剤に由来するシラノール基が存在し、そのシラノール基が、無機物(具体的には、金属、金属酸化物など)や、有機物(具体的には、紙や木材を形成するセルロースなど)と反応することができる。そのため、徐放性粒子が、塗料、シーラント、接着剤などに添加(配合)されて使用される場合において、徐放性粒子が、上記した無機物または有機物からなる基材と化学結合することができ、長期にわたる抗生物活性を維持することができる。
【0198】
なお、上記した実施形態では、第2工程において、界面重合を第1工程の懸濁重合を開始する時より後に開始している。しかし、界面重合の開始の時期は上記に限定されず、例えば、第2工程における界面重合を、第1工程の懸濁重合を開始する時と同時に開始することもできる。
【0199】
すなわち、上記した実施形態において、第1工程における懸濁液の昇温時に、懸濁液の温度が、懸濁重合の開始温度T
iに到達した時に、第2シェル形成成分(具体的には、第2シェル形成成分水溶液)を懸濁液に添加する。
【0200】
界面重合を、懸濁重合と同時に実施することにより、懸濁重合の重合速度が、界面重合のそれより速い場合には、まず、懸濁重合によって、コアを形成しながら、その表面において、シェルを確実に形成することができる。
【0201】
一方、第2工程において、界面重合を第1工程の懸濁重合を開始する時より後に開始する場合において、懸濁重合が界面重合の開始の時より前に、実質的に終了していれば、第2シェル形成成分(具体的には、ポリアミンなど)の活性水素基(具体的には、アミノ基)に起因するコアの着色(ピンク着色など)を有効に防止することができる。
【0202】
本発明の徐放性粒子の徐放速度は、次に説明する実施例で例示するように、第2工程の界面重合の開始時に重合性ビニルモノマーの残存する割合(つまり、仕込みの重合性ビニルモノマーに対する、残存する重合性ビニルモノマーの割合。以下残存モノマー率という場合がある。)によって、制御される。
【0203】
すなわち、残存モノマー率が100%である場合、すなわち、界面重合と懸濁重合とを同時に実施(開始)すると、徐放性粒子の徐放速度が最も速く、残存モノマー率が実質的に0%である場合、すなわち、界面重合を、懸濁重合の完了(終了)後に実施(開始)すると、徐放性粒子の徐放速度が最も遅い。つまり、界面重合の開始時における、残存モノマー率が、100%から0%に近接すれば、それに応じて、得られる徐放性粒子の徐放速度が遅くなる。
【0204】
また、徐放性粒子の使途によっては、徐放性粒子が溶剤の存在下で存在する場合、あるいは、徐放性粒子が高温で使用される場合など、徐放速度が速くなり易い条件における場合には、抗生物活性化合物を含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える、コアシェル構造の本発明の徐放性粒子が好適に用いられる。
【0205】
さらには、残存モノマー率が実質的に0%である場合には、
図12および
図13のTEM写真と、
図3および
図4のSEM写真とが参照されるように、突出部分(4)が確実に形成されるため、徐放性粒子が、懸濁剤として製剤化される場合には、その懸濁剤の再分散性も優れている。
【実施例】
【0206】
各実施例
、参考例および各比較例で用いる略号の詳細を次に記載する。
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、分子量281、融点:60℃、水への溶解度:150ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compound:3.23[(J/cm
3)
1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,compound:7.83[(J/cm
3)
1/2]、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
OIT:商品名「ケーソン893T」(「ケーソン」は登録商標)、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、分子量213、融点:20℃未満、水への溶解度:300ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compound:5.47[(J/cm
3)
1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,compound:5.87[(J/cm
3)
1/2]、ローム・アンド・ハース社製
プロピコナゾール:1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、分子量342、融点:20℃未満、水への溶解度:110ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compound:6.55[(J/cm
3)
1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,compound:9.44[(J/cm
3)
1/2]、八幸通商社製
フルシラゾール:ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン)、分子量315、融点:54℃、水への溶解度:45ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compound:5.95[(J/cm
3)
1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,compound:6.85[(J/cm
3)
1/2]、エアブラウン社製
プロクロラズ:N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド、分子量375、融点45〜52℃、水への溶解度:55ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compound:7.07[(J/cm
3)
1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,compound:8.31[(J/cm
3)
1/2]、丸善薬品社製
シフルトリン:商品名「プリベントールHS12」(「プリベントール」は登録商標)、(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル−(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、分子量434、水への溶解度:1〜2ppb、異性体I(融点57℃)と異性体II(融点74℃)と異性体III(融点66℃)と異性体IV(融点102℃)との混合物、溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compound:3.46[(J/cm
3)
1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,compound:6.09[(J/cm
3)
1/2]、ランクセス社製
メタクリル酸メチル:商品名「アクリエステルM」(「アクリエステル」は登録商標)、水への溶解度:1.6質量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,monomer unit:6.69[(J/cm
3)
1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,monomer unit:9.78[(J/cm
3)
1/2]、三菱レイヨン社製
メタクリル酸:水への溶解度:8.9質量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,monomer unit:7.13[(J/cm
3)
1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,monomer unit:13.03[(J/cm
3)
1/2]、三菱レイヨン製
エチレングリコールジメタクリレート:商品名「ライトエステルEG」、水への溶解度:5.37ppm、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,monomer unit:5.37[(J/cm
3)
1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δ
h,monomer unit:10.42[(J/cm
3)
1/2]、共栄社化学社製
T−1890:商品名「VESTANAT T 1890/100」(「VESTANAT」は登録商標)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の三量体、第1シェル形成成分、融点110〜120℃、水への溶解度:20ppm、エボニック・インダストリーズ社製
ジラウロイルパーオキシド:商品名「パーロイルL」(「パーロイル」は登録商標)、10時間半減温度T
1/2:61.6℃、日油社製
ジラウリン酸ジブチル錫:化学用試薬、重付加触媒、和光純薬工業社製
PVA−217:商品名「クラレポバール217」、部分鹸化ポリビニルアルコール、クラレ社製
「TCP−10U」:商品名、第三燐酸カルシウム(3[Ca
3(PO
4)
2]・Ca(OH)
2)の10%水懸濁液、松尾薬品産業社製
DBN:商品名「ネオペレックスNo.6パウダー」(「ネオペレックス」は登録商標)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王社製
ペレックスSS−L:商品名(「ペレックス」は登録商標)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、花王社製
ジエチレントリアミン:和光一級試薬、第2シェル形成成分、和光純薬工業社製
実施例1
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル35g、エチレングリコールジメタクリレート15g、T−1890 10gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0207】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水233g、PVA−217の10質量%水溶液40gおよびDBNの5質量%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0208】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0209】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら、70℃に昇温して、3時間、懸濁重合した。
【0210】
その後、界面重合を実施した。具体的には、ジエチレントリアミン1.2gをイオン交換水25gに希釈したジエチレントリアミン水溶液を、上記した懸濁液に添加し、懸濁液を75℃に昇温して、続いて、75℃に維持した。
【0211】
界面重合の開始から4時間経過時に、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却した。
【0212】
これにより、IPBCを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0213】
実施例2
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
疎水性溶液におけるメタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレートおよびT−1890の仕込み量を31.5g、13.5gおよび15gにそれぞれ変更し、界面重合の開始時に添加するジエチレントリアミン水溶液におけるジエチレントリアミンの量を1.8gに変更した以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、IPBCを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0214】
実施例3
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
疎水性溶液におけるメタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレートおよびT−1890の仕込み量を28g、12gおよび20gにそれぞれ変更し、界面重合の開始時に添加するジエチレントリアミン水溶液におけるジエチレントリアミンの量を2.4gに変更した以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、IPBCを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0215】
実施例4
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
疎水性溶液におけるIPBC、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレートおよびT−1890の仕込み量を45g、28g、12gおよび15gにそれぞれ変更し、また、水溶液におけるイオン交換水の仕込み量を133gに変更し、さらに、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)による疎水性溶液の懸濁時の回転数を4000rpmに変更し、さらにまた、界面重合の開始時に添加するジエチレントリアミン水溶液におけるジエチレントリアミンの量を1.8gに変更した以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、IPBCを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0216】
実施例5
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
懸濁重合の重合時間を3時間から2時間に変更した以外は、実施例2と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、IPBCを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0217】
参考例6
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合と界面重合とを同時に開始)
懸濁重合と界面重合と同時に開始し、それらの重合時間を7時間に設定した以外は、実施例2と同様に処理することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0218】
具体的には、懸濁液を70℃に昇温するとともに、ジエチレントリアミン水溶液を添加することにより、界面重合と懸濁重合とを同時に開始した。
【0219】
その後、懸濁液の温度を、75℃に維持した。
【0220】
懸濁重合と界面重合との開始から7時間経過時に、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却した。
【0221】
これにより、IPBCを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0222】
得られた懸濁液は、ピンク色に着色していた。
【0223】
実施例7
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
水溶液において、PVA−217の10質量%水溶液40g、および、DBNの5質量%水溶液200mgに代えて、TCP−10U 40g、および、ペレックスSS−Lの5%水溶液200mgを仕込んだ以外は、実施例2と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、IPBCを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0224】
実施例8
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
200mLのビーカー(1)に、OIT40g、メタクリル酸メチル27g、メタクリル酸4.5g、エチレングリコールジメタクリレート13.5g、T−1890 15gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0225】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水230g、TCP−10U 40gおよびペレックスSS−Lの5質量%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な懸濁液を得た。
【0226】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0227】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら、70℃に昇温して、3時間、懸濁重合した。その後、界面重合を実施した。
【0228】
具体的には、ジエチレントリアミン1.8gをイオン交換水25gに希釈したジエチレントリアミン水溶液を懸濁液に添加し、懸濁液を75℃に昇温し、続いて、温度75℃に維持した。
【0229】
界面重合の開始から4時間経過時に、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却した。
【0230】
これにより、OITを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0231】
実施例9
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
200mLのビーカー(1)に、IPBC25g、メタクリル酸メチル50g、エチレングリコールジメタクリレート10g、T−1890 15gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0232】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水82.7g、TCP−10U 40gおよびペレックスSSLの5質量%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な懸濁液を得た。
【0233】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数4000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0234】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら、70℃に昇温して、3時間、懸濁重合した。
【0235】
その後、界面重合を実施した。具体的には、ジエチレントリアミン1.8gをイオン交換水25gに希釈したジエチレントリアミン水溶液を、上記した懸濁液に添加し、懸濁液を75℃に昇温して、続いて、75℃に維持した。
【0236】
界面重合の開始から4時間経過時に、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却した。
【0237】
これにより、IPBCを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0238】
実施例10
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
200mLのビーカー(1)に、OIT25g、メタクリル酸メチル36g、メタクリル酸6.0g、エチレングリコールジメタクリレート18g、T−1890 15gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0239】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水82.7g、PVA−217の10質量%水溶液40gおよびDBNの5質量%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0240】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3500rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0241】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら、70℃に昇温して、3時間、懸濁重合した。その後、界面重合を実施した。
【0242】
具体的には、ジエチレントリアミン1.8gをイオン交換水25gに希釈したジエチレントリアミン水溶液を懸濁液に添加し、懸濁液を75℃に昇温し、続いて75℃に維
持した。
【0243】
界面重合の開始から4時間経過時に、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却した。
【0244】
これにより、OITを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0245】
実施例11
(プロピコナゾール含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
疎水性溶液において、IPBC25gに代えて、プロピコナゾール25gを仕込んだこと、および、水溶液において、TCP−10U 40g、および、ペレックスSS−Lの5%水溶液200mgに代えて、PVA−217の10質量%水溶液40g、および、DBNの5質量%水溶液200mgを仕込んだこと以外は、実施例9と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、プロピコナゾールを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0246】
実施例12
(フルシラゾール含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
疎水性溶液において、プロピコナゾール25gに代えて、フルシラゾール25gを仕込んだ以外は、実施例11と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、フルシラゾールを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0247】
実施例13
(プロクロラズ含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
疎水性溶液において、プロピコナゾール25gに代えて、プロクロラズ25gを仕込んだ以外は、実施例11と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、プロクロラズを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0248】
実施例14
(シフルトリン含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合の開始後、界面重合を開始)
疎水性溶液において、プロピコナゾール25gに代えて、シフルトリン25gを仕込んだ以外は、実施例11と同様にして、懸濁重合と界面重合とを順次実施することにより、シフルトリンを含有するコアと、それを被覆するシェルとを備える徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0249】
比較例1
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(界面重合の開始後、懸濁重合を開始)
実施例2における懸濁重合および界面重合の順序を逆にした。つまり、まず、界面重合を実施し、その後、懸濁重合を実施した以外は、実施例2と同様にして、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0250】
具体的には、実施例2と同様にして調製した懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、大気雰囲気下、攪拌しながら、昇温した。
【0251】
大気雰囲気下で、懸濁液の温度が50℃に到達した時に、ジエチレントリアミン1.8gをイオン交換水25gに希釈したジエチレントリアミン水溶液を添加して、続いて、懸濁液を50℃に4時間維持して、界面重合を実施した。界面重合の開始から4時間経過時に、T1890のイソシアネート基による赤外吸収スペクトルの吸収が消滅し、界面重合が終了したことを確認した。なお、50℃において、上記処方の懸濁重合は、誘導期が長いため、実質的に開始しないことを確認した。
【0252】
その後、窒素気流下で、懸濁液の温度を、75℃に昇温し懸濁重合を4時間実施し、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0253】
得られた懸濁液は、ピンク色に着色していた。
【0254】
比較例2
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(界面重合の開始後、懸濁重合を開始)
実施例2における懸濁重合および界面重合の順序を逆にした。つまり、まず、界面重合を実施し、その後、懸濁重合を実施し、さらに、界面重合を低温(38℃)で実施した以外は、実施例2と同様にして、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0255】
具体的には、200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル35g、エチレングリコールジメタクリレート13.5g、T−1890 15g、ジラウロイルパーオキシド300mgおよびジラウリン酸ジブチル錫20mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0256】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水260g、PVA−217の10質量%水溶液40gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0257】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0258】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、攪拌しながら昇温して、界面重合、次いで、懸濁重合を実施した。
【0259】
具体的には、大気雰囲気下で、懸濁液を、38℃に昇温して、T−1890のイソシアネート基と水との脱炭酸ウレア化反応(鎖伸長反応)により、二酸化炭素の気泡の発生が観察され、界面重合が開始した。なお、38℃では、上記の処方の懸濁重合は、5時間以内に実質的に開始しないことを確認した。
【0260】
続いて、懸濁液の温度を38℃に維持したところ、界面重合の開始から5時間経過時に、イソシアネート基による赤外吸収スペクトルの吸収が消滅し、界面重合が終了したことを確認した。
【0261】
その後、窒素気流下で、懸濁液を、75℃に昇温して、懸濁重合を4時間実施した。その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0262】
比較例3
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(界面重合の開始後、懸濁重合を開始)
実施例8における懸濁重合および界面重合の順序を逆にした。つまり、まず、懸濁重合を実施し、その後、界面重合を実施した以外は、実施例8と同様にして、OITを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0263】
具体的には、実施例8と同様にして調製した懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、攪拌しながら昇温して、界面重合を実施し、次いで、懸濁重合を実施した。
【0264】
詳しくは、大気雰囲気下で、懸濁液を、50℃に昇温して、ジエチレントリアミン1.8gをイオン交換水25gに希釈したジエチレントリアミン水溶液を添加して、界面重合を開始した。
【0265】
具体的には、大気雰囲気下で、懸濁液を、50℃に昇温して、T−1890のイソシアネート基と水との脱炭酸ウレア化反応(鎖伸長反応)により、二酸化炭素の気泡の
発生が観察され、界面重合が開始した。なお、50℃では、上記の処方の懸濁重合は、4時間以内に実質的に開始しないことを確認した。
【0266】
続いて、懸濁液の温度を50℃に維持したところ、界面重合の開始から4時間経過時に、イソシアネート基による赤外吸収スペクトルの吸収が消滅し、界面重合が終了したことを確認した。
【0267】
その後、窒素気流下で、懸濁液の温度を、75℃に昇温して、懸濁重合を4時間実施した。その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0268】
比較例4
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合)
200mLのビーカー(1)に、IPBC40g、メタクリル酸メチル42g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0269】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、PVA−217の10質量%水溶液20gおよびDBNの5質量%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0270】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0271】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、6時間、懸濁重合を実施した。
【0272】
具体的には、懸濁重合は、懸濁液を、60℃に昇温して、1時間維持し、続いて、70℃に昇温して、3時間維持し、その後、80℃に昇温し、2時間維持することにより、実施した。
【0273】
反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0274】
比較例5
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合)
200mLのビーカー(1)に、OIT40g、メタクリル酸メチル36g、メタクリル酸6.0g、エチレングリコールジメタクリレート18gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0275】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水280g、TCP−10U 20gおよびペレックスSS−Lの5質量%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な懸濁液を得た。
【0276】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0277】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、6時間、懸濁重合を実施した。
【0278】
具体的には、懸濁重合は、懸濁液を、60℃に昇温して、1時間維持し、続いて、70℃に昇温して、3時間維持し、その後、80℃に昇温し、2時間維持することにより、実施した。
【0279】
反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、OITを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0280】
比較例6
(IPBC含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合)
200mLのビーカー(1)に、IPBC25g、メタクリル酸メチル52.5g、エチレングリコールジメタクリレート22.5gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0281】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水109.5g、TCP−10U 40gおよびペレックスSS−Lの5質量%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な懸濁液を得た。
【0282】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3500rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0283】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、6時間、懸濁重合を実施した。
【0284】
具体的には、懸濁重合は、懸濁液を、60℃に昇温して、1時間維持し、続いて、70℃に昇温して、3時間維持し、その後、80℃に昇温し、2時間維持することにより、実施した。
【0285】
反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0286】
比較例7
(OIT含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合)
200mLのビーカー(1)に、OIT25g、メタクリル酸メチル45g、メタクリル酸7.5g、エチレングリコールジメタクリレート22.5gおよびジラウロイルパーオキシド300mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0287】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水109.5g、PVA−217の10質量%水溶液40gおよびDBNの5質量%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0288】
次いで、500mLのビーカー(2)に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させて、懸濁液を調製した。
【0289】
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、6時間、懸濁重合を実施した。
【0290】
具体的には、懸濁重合は、懸濁液を、60℃に昇温して、1時間維持し、続いて、70℃に昇温して、3時間維持し、その後、80℃に昇温し、2時間維持することにより、実施した。
【0291】
反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、OITを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0292】
比較例8
(プロピコナゾール含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合)
疎水性溶液において、IPBC25gに代えて、プロピコナゾール25gを仕込んだこと、および、水溶液において、TCP−10U 40g、および、ペレックスSS−Lの5%水溶液200mgに代えて、PVA−217の10質量%水溶液40g、および、DBNの5質量%水溶液200mgを仕込んだこと以外は、比較例6と同様にして、懸濁重合を実施することにより、プロピコナゾールを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0293】
比較例9
(フルシラゾール含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合)
疎水性溶液において、プロピコナゾール25gに代えて、フルシラゾール25gを仕込んだ以外は、比較例8と同様にして、懸濁重合を実施することにより、フルシラゾールを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0294】
比較例10
(プロクロラズ含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合)
疎水性溶液において、プロピコナゾール25gに代えて、プロクロラズ25gを仕込んだ以外は、比較例8と同様にして、懸濁重合を実施することにより、プロクロラズを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0295】
比較例11
(シフルトリン含有徐放性粒子を含む懸濁剤の製剤化)
(懸濁重合)
疎水性溶液において、プロピコナゾール25gに代えて、シフルトリン25gを仕込んだ以外は、比較例8と同様にして、懸濁重合を実施することにより、シフルトリンを含有する徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0296】
(配合処方)
各実施例
、参考例および各比較例における各成分の処方を表2〜表6に示す。なお、表中、配合処方の数値は、g数を示す。
【0297】
【表2】
【0298】
【表3】
【0299】
【表4】
【0300】
【表5】
【0301】
【表6】
【0302】
(溶解度パラメータδの算出)
1. コアの重合体の溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,polymerおよび水素結合力項δ
h,polymerを、上記に準拠して、算出した。
【0303】
それらの結果を、抗生物活性化合物の溶解度パラメータδの双極子間力項δ
p,compoundおよび水素結合力項δ
h,compoundとともに、表2〜表6に示す。
2. Δδp(=δ
p,polymer−δ
p,compound)およびΔδh(=δ
h,polymer−δ
h,compound)をそれぞれ算出した。
【0304】
それらの結果を、表2〜表6に示す。
【0305】
(評価)
1. メジアン径
各実施例
、参考例および各比較例により得られた懸濁液を、レーザー回析散乱式粒子径分布測定装置LA−920(堀場製作所社製)により測定することにより、徐放性粒子のメジアン径を測定した。その結果を表2〜表6に示す。
2. SEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)観察
室温で5週間以上経過した実施例1〜
5、参考例6、実施例7、8および比較例1、2、4の懸濁液(懸濁剤)を試料台に滴下し、その後、水を留去した後、得られた徐放性粒子を、走査型電子顕微鏡日立TM−100(日立ハイテクノロジーズ社製)で、SEM観察した。
【0306】
実施例1〜
5、参考例6、実施例7、8および比較例1、2、4のSEM写真の画像処理図を、
図1〜11にそれぞれ示す。
【0307】
図1〜5および7から明らかなように、実施例1〜5および7の徐放性粒子の外には、抗生物活性化合物(IPBC)の結晶が認めらない。また、
図8から明らかなように、実施例8の徐放性粒子の外には、抗生物活性化合物(OIT)の存在が認めらない。
【0308】
また、
図6から明らかなように、
参考例6の徐放性粒子の外には、抗生物活性化合物(IPBC)の針状結晶がわずかに認められる。
【0309】
一方、
図9〜
図11から明らかなように、比較例1、2および4の徐放性粒子では、内包(貯蔵)していた抗生物活性化合物(IPBC)が外に放出され、針状結晶として析出していることが認められる。
3 .TEM(透過型電子顕微鏡、Transmission Electron Microscope)観察
実施例2、3、5および比較例1、2の懸濁液(懸濁剤)を、凍結乾燥し、ビスフェノール型液状エポキシ樹脂に分散して、アミンで硬化させた。これをウルトラミクロトームで切断することにより断面を出し、四酸化ルテニウムによって染色、必要により、四酸化オスミウムで再度染色し、これをウルトラミクロトームで超薄切片に切り出して、サンプルを調製した。調製したサンプルを、透過型電子顕微鏡(型番「H−7100」、日立製作所社製)で、TEM観察した。
【0310】
実施例2、3、5および比較例1、2のTEM写真の画像処理図を、
図12〜
図16にそれぞれ示す。なお、図中、白色部分は、超薄切片のサンプルの調製時に、徐放性粒子がエポキシ樹脂から部分的に剥離した剥離部分である。
【0311】
図12〜
図14から明らかなように、実施例2、3および5の徐放性粒子には、コアと、それを被覆するシェルとを備えるコアシェル構造が認められる。
【0312】
一方、
図15および
図16から明らかなように、比較例1および2の徐放性粒子では、界面重合で得られたポリウレアからなるマトリクス中に、懸濁重合により得られたポリメタクリル酸メチルが不均一(島状)に分散しており、海島構造が認められる。すなわち、比較例1および2の徐放性粒子には、コアシェル構造が認められない。
4. 徐放性試験
(1)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例1〜
5、参考例6、実施例7および比較例4)
以下の操作に従って、実施例1〜
5、参考例6、実施例7および比較例4のIPBC含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0313】
すなわち、まず、IPBC濃度10質量%に必要により調整した実施例1〜
5、参考例6、実施例7および比較例4の徐放性粒子の懸濁液と、IPBCが懸濁された、ブランクとしてのIPBC懸濁液(IPBC濃度10質量%)とを、それぞれ用意した。
【0314】
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801の5種Cに相当)を2枚重ねて襞(ひだ)折りした。
【0315】
次いで、その濾紙に、用意した懸濁液0.5mLをゆっくりそれぞれ添加し、その後、風乾した。
【0316】
この濾紙に、定量チューブポンプを用いて、流速20mL/hrで1000mL通水し、得られた濾液のIPBC量および濾紙に残存するIPBC量から、HPLCを用いて、IPBCの徐放率を算出した。なお、各通水量における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
【0317】
実施例1〜3および比較例4の結果を
図17に示し、実施例4
、5、参考例6および実施例7の結果を
図18に示す。
(2)OIT含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例8および比較例3、5)
以下の操作に従って、実施例8および比較例3、5のOIT含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0318】
まず、市販の白色アクリルシリコーンエマルション塗料に、実施例8および比較例3、5で得られた徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)およびブランクとしてのOITを、OIT濃度が、ともに0.2質量%となるように添加し、その後、徐放性粒子の懸濁液が添加された塗料を、イオン交換水で1.5倍に希釈した。
【0319】
次いで、濾紙(東洋濾紙No.2、JIS P 3801の2種に相当)を3.5cmm×3.5cmに切り出して精秤し、上記した塗料に浸漬した。
【0320】
その後、濾紙をガラス瓶に入れ、イオン交換水15mLを加えて、40℃で18時間振とうした。続いて、イオン交換水を採取し、新たにイオン交換水15mLを加えて、40℃で18時間振とうした。その後、上記したイオン交換水の交換操作を2回繰り返した。
【0321】
上記により採取した各回のイオン交換水中のOIT量から、HPLCを用いて、OITの徐放率を算出した。なお、各回数における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
【0322】
実施例8および比較例3、5の結果を、
図19に示す。
(3)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例9および比較例6)
以下の操作に従って、IPBC含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0323】
まず、実施例9および比較例6のそれぞれについて、各IPBC含有量が100mgとなるような量の各徐放性粒子懸濁液を用意した。
【0324】
次いで、円筒濾紙(東洋濾紙No.84、外径×内径×高さ=28×25×100mm)を横方向に切断して、高さ30mmの円筒濾紙3個を用意した。
【0325】
次いで、その濾紙2個に、用意した各懸濁液をゆっくり添加し、その後、風乾した。
残りの濾紙1個には、ブランクとして各IPBC100mgずつを、濾紙底部に精秤した。
【0326】
これらの濾紙に、定量チューブポンプを用いて、流速20mL/hrで1000mL通水し、得られた濾液のIPBC量から、HPLCを用いて、IPBCの徐放率を算出した。なお、各通水量における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
【0327】
実施例9および比較例6の結果を
図20に示す。
(4)OIT含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例10および比較例7)
実施例9および比較例6のIPBC含有徐放性粒子に代えて、実施例10および比較例7のOIT含有徐放性粒子を用い、徐放対照をOITとして徐放率を測定した以外は、上記「(3)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」と同様に操作して、OITの徐放率を算出した。
【0328】
実施例10および比較例7の結果を
図21に示す。
(5)プロピコナゾール含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例11および比較例8)
実施例9および比較例6のIPBC含有徐放性粒子に代えて、実施例11および比較例8のプロピコナゾール含有徐放性粒子を用い、徐放対照をプロピコナゾールとして徐放率を測定した以外は、上記「(3)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」と同様に操作して、プロピコナゾールの徐放率を算出した。
【0329】
実施例11および比較例8の結果を
図22に示す。
(6)フルシラゾール含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例12および比較例9)
実施例9および比較例6のIPBC含有徐放性粒子に代えて、実施例13および比較例9のフルシラゾール含有徐放性粒子を用い、徐放対照をフルシラゾールとして徐放率を測定した以外は、上記「(3)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」と同様に操作して、フルシラゾールの徐放率を算出した。
【0330】
実施例12および比較例9の結果を
図23に示す。
(7)プロクロラズ含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例13および比較例10)
実施例9および比較例6のIPBC含有徐放性粒子に代えて、実施例13および比較例10のプロクロラズ含有徐放性粒子を用い、徐放対照をプロクロラズとして徐放率を測定した以外は、上記「(3)IPBC含有徐放性粒子の徐放性試験」と同様に操作して、プロクロラズの徐放率を算出した。
【0331】
実施例13および比較例10の結果を
図24に示す。
(8)シフルトリン含有徐放性粒子の徐放性試験(実施例14および比較例11)
以下の操作に従って、実施例14および比較例11のシフルトリン含有徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
【0332】
まず、実施例14および比較例11のそれぞれについて、シフルトリンとして100mgを含む各徐放性粒子懸濁液、および、ブランクとしてのシフルトリンの10質量%アセトニトリル溶液1gをそれぞれ用意した。
【0333】
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801の5種Cに相当)を2枚重ねて襞(ひだ)折りした。
【0334】
次いで、その濾紙に、用意した各懸濁液およびブランクのシフルトリンのアセトニトリル溶液をゆっくり添加し、その後、風乾した。
【0335】
その後、この濾紙をガラス瓶に入れ、イオン交換水/メタノール(=50/50(容量比))混合液180mLを加えて、室温で24時間。静置浸漬した。続いて、イオン交換水/メタノール混合物を採取し、新しいイオン交換水/メタノール混合液180mLを加えて24時間、室温で静置浸漬した。その後、上記したイオン交換水/メタノール混合液の交換操作を3回繰り返した。
【0336】
上記により採取した各回のイオン交換水/メタノール混合液から、GCを用いて、シフルトリンの徐放率を算出した。なお、各回数における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
【0337】
実施例14および比較例11の結果を
図25に示す。