(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に開示された清掃具において、各凸部(清掃部)はステップの凹部に対する摺動方向(凹部の長手方向、ステップの走行方向)に延びた形状を成すものである。そして、ステップの凹部の清掃中、各凸部の先端は、凹部の底部に押し付けられた状態に維持される。つまり、清掃作業者は、ステップの凹部に対して清掃具の凸部を摺動させている間、凸部の先端全体が常に凹部の底部に押し付けた状態に維持されるよう凸部の姿勢を調整する必要があり、その調整は煩わしい。
【0007】
また、清掃具の凸部はステップの凹部に対する摺動に伴い変形する。特に、摺動方向における凸部の端部での変形は、凸部の凹部に対する摺動抵抗を著しく増大させるくさび効果を発現するため、清掃作業者は、凸部の先端が凹部の底部に押し付けられた状態を維持するのに多大な労力を必要とする。
【0008】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ステップの凹部に挿入された清掃部の姿勢を調整する煩わしさを解消でき、かつ、清掃部のステップの凹部に対する摺動抵抗を低減できる乗客コンベアのステップの清掃具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために本発明の乗客コンベアのステップの清掃具は次のように構成されている。
【0010】
本発明の乗客コンベアのステップの清掃具は、ステップの踏み面に並列して設けられた多数の凹凸のうちの凹部を清掃する乗客コンベアのステップの清掃具において、柄と、前記凹部に挿入される弾性変形可能な清掃部と、前記柄に前記清掃部を取り付ける取付構造部とを備え、前記清掃部は、前記凹部に挿入可能な厚さ寸法に形成された円板部を備え、前記取付構造部は、前記柄に対する前記円板部の円心周りの回転を阻止した状態で前記清掃部を保持するものであり、前記柄に前記清掃部が取り付けられた状態において、前記柄は、前記清掃部に対して前記円板部の厚さ方向に直交する方向に延びて位置することを特徴とする。
【0011】
このように構成された清掃具を用いてステップの凹部を清掃する際、作業者は、清掃部の円板部の厚さ方向とステップの凹部の幅方向(ステップの走行方向に直交する方向)とを一致させた状態で、円板部の周面が凹部の底部に押し付けられるよう凹部に円板部を挿入する。そして、円板部を凹部に対して凹部の長手方向に摺動させることによって、凹部に付着した汚れを円板部で拭きとる。
【0012】
ステップの凹部に対する清掃部の円板部の摺動中、凹部と円板部との間に生じる摺動抵抗によって、円板部の円心周りの柄および清掃部の角度が変化するが、作業者は柄および円板部の角度を戻すことなく、円板部の周面を常に凹部の底部に押し付けた状態に保持できる。これにより、本発明の清掃具は、ステップの凹部に挿入された清掃部の姿勢を調整する煩わしさを解消できる。
【0013】
また、清掃部は、円板部の厚さ方向とステップの凹部の幅方向とを一致させた状態で、その凹部の底部に円板部の周面を押し付けられて使用されるものであるので、その円板部には、ステップの凹部に対する摺動時に、くさび効果を伴う変形が従来よりも生じにくい。これによって、本発明の清掃具は、清掃部のステップの凹部に対する摺動抵抗を、従来よりも低減できる。
【0014】
本発明の乗客コンベアのステップの清掃具は、前述の本発明の乗客コンベアのステップの清掃具において、前記清掃部は、前記円板部の周面に設けられた山形の突起部を備え、前記柄は、前記清掃部に対して前記突起部の突起方向とは反対方向に延びて位置することを特徴とするものであってもよい。
【0015】
このように構成された本発明の清掃具を用いて清掃を行う際、ステップがライザを備えるものである場合に、作業者は、上段側のステップのライザと、下段側のステップの踏み面との境界部に、清掃部の突起部を挿し込むことができる。つまり、本発明の清掃具は、ステップのライザの凹部の清掃を容易化することができる。
【0016】
本発明の乗客コンベアのステップの清掃具は、前述の本発明の乗客コンベアのステップの清掃具において、前記取付構造部は、平行に延びた第1,第2腕部と、これらの第1,第2腕部のそれぞれの一端部同士を連結する連結部とから構成されたコ字形状の枠体と、前記第1,第2腕部間に前記清掃部の前記円板部を回転不能に保持する保持構造部とを備え、前記保持構造部は、前記第1,第2腕部間に架け渡され、それら第1,第2腕部に対して着脱可能に取り付けられる複数のシャフトと、前記円板部の円心以外の箇所を前記厚さ方向に貫通して設けられ、前記複数のシャフトのそれぞれが個別に挿通される複数の貫通孔とを備えることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
このように構成された本発明の乗客コンベアのステップの清掃具において、清掃部の円板部の円心以外の箇所に設けられた複数の貫通孔のそれぞれに、複数のシャフトのそれぞれが個別に挿通された状態で、それらのシャフトが第1,第2腕部間に架け渡される。これにより、保持構造部は、第1,第2腕部間に清掃部の円板部を回転不能に保持することができる。
【0018】
また、本発明の清掃具において、複数のシャフトは第1,第2腕部に対して取外し可能であり、第1,第2腕部から取り外された状態の複数のシャフトのそれぞれは、清掃部の円板部に設けられた複数の貫通孔のそれぞれから抜き取ることが可能である。これにより、本発明の清掃具は、清掃部の交換が可能である。
【0019】
本発明の乗客コンベアのステップの清掃具は、前述の乗客コンベアのステップの清掃具において、前記保持構造部は、前記第1,第2腕部の両方に設けられ、前記複数のシャフトのそれぞれが挿通される取付孔と、前記複数のシャフトのそれぞれの一端部が全て固着され、前記第1,第2腕部のうちの第1腕部に前記枠体の外側から当接して位置する抜け止め部と、前記複数のシャフトのそれぞれの前記一端部とは反対側の他端部のそれぞれに設けられ、前記第1,第2腕部のうちの第2腕部から前記枠体の外側に突出して位置する雄ネジと、これらの雄ネジに螺合する雌ネジ部材とを備えることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
このように構成された本発明の清掃具においては、第1,第2腕部に清掃部を取り付ける際、作業者は、はじめに第1,第2腕部のうちの第1腕部に設けられた複数の取付孔のそれぞれに、枠体の外側から複数のシャフトのそれぞれの他端部(抜け止め部とは反対側に位置する雄ネジが設けられた端部)を挿通して、第1,第2腕部間に配置する。この状態において、作業者は複数のシャフトのそれぞれの他端部を、清掃部の円板部に設けられた複数の貫通孔のそれぞれに挿通する。
【0021】
その後、作業者は複数のシャフトのそれぞれの他端部を、第1,第2腕部のうちの第2腕部に設けられた複数の取付孔のそれぞれに枠体の内側から挿通し、それらの他端部に設けられた雄ネジを、第2腕部から枠体の外側に突出させる。この状態において、作業者は、雄ネジに雌ネジ部材を螺合させて締め込む。これにより、抜け止め部と雌ネジ部材との間に第1,第2腕部が挟まれた状態となる。この結果、清掃部の円板部に設けられた複数の貫通孔のそれぞれに挿通された状態の複数のシャフトは、第1,第2腕部に対して固定され、第1,第2腕部に対する清掃部の取り付けが完了する。
【0022】
第1,第2腕部から清掃部を取り外す際には、作業者は、はじめに複数のシャフトのそれぞれの雄ネジから雌ネジ部材を取り外す。次に、作業者は、抜け止め部を把持し、この抜け止め部を第1腕部から離れる方向に移動させることによって、第1,第2腕部の両方に設けられた複数の取付孔のそれぞれ、および、清掃部の円板部に設けられた複数の貫通孔のそれぞれから、複数のシャフトのそれぞれを抜く。この結果、第1,第2腕部からの清掃部の取外しが完了する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の乗客コンベアのステップの清掃具は、前述のように、ステップの凹部に挿入された清掃部の姿勢を調整する煩わしさを解消でき、かつ、清掃部のステップの凹部に対する摺動抵抗を従来よりも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の乗客コンベアのステップの清掃具の第1実施形態を示す図であって、「(a)」は正面図であり、「(b)」は「(a)」に示す第1実施形態を第1腕部側から見た側面図である。
【
図2】
図1に示した第1実施形態に備えられる清掃部の外形を簡略化して示す斜視図である。
【
図3】
図2に示した清掃部がステップの凹部に挿入される様子を示す図である。
【
図4】
図2に示した清掃部を構成する布部材を示す図である。
【
図5】清掃部としてブラシ等の一定の方向性を持った繊維の集合体を用いて清掃対象の面に付着した汚れを拭き取る様子を示す図であり、「(a)」は汚れを拭き取るのに適切な繊維の姿勢を示す図であり、「(b)」は汚れを拭き取るのに不適切な繊維の姿勢を示す図である。
【
図6】
図1に示した第1実施形態に備えられる柄と枠体の組立品を示す図であって、「(a)」はその組立品の正面図であり、「(b)」はその組立品の側面図である。
【
図7】
図1に示した第1実施形態に備えられるシャフトと抜け止め部の組立品の正面図である。
【
図8】
図1に示した第1実施形態によりステップの凹部の清掃が行われる様子を示す図であり、「(a)」は実施形態の柄が寝かされた状態を示す図であり、「(b)」は「(a)」の状態よりも柄が起こされた状態を示す図である。
【
図9】
図1に示した実施形態によりステップの踏み面とライザとの境界部が清掃される様子を示す図である。
【
図10】本発明の乗客コンベアのステップの清掃具の第2実施形態の正面図である。
【
図11】第1,第2実施形態に備えられる清掃部の円板部の形状の別の例を示す図である。
【
図12】第1,第2実施形態に備えられる清掃部の円板部の形状の別の例を示す図である。
【
図13】第1,第2実施形態に備えられる清掃部に芯材が挿入された例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の乗客コンベアのステップの清掃具の第1,第2実施形態について説明する。
【0026】
[第1実施形態]
第1実施形態について
図1〜
図9を用いて説明する。
【0027】
第1実施形態により清掃される乗客コンベアは、例えばエスカレータである。このエスカレータにおいては、一方の乗降口から他方の乗降口の間を、無端状に連結された複数のステップ60(
図8参照)が走行する。それらのステップ60の踏み面70、すなわち乗客が足を載せる面には、ステップ60の走行方向に延びた凹凸61(
図3参照)が、ステップ60の走行方向に直交する方向に多数並んで設けられている。それらの凹凸61は、乗降口の床の縁に設けられた櫛と噛み合うように並んでいて、これにより、ステップ60と乗降口の床との間の隙間に、乗客の履物が挟まれることが防止されている。また、ステップ60はライザ80(
図8参照)を備える。このライザ80には踏み面70の凹凸と噛み合う多数の凹凸が設けられていて、これにより、踏み面70とライザ80との間の隙間に、乗客の履物が挟まれることが防止されている。
【0028】
第1実施形態は、そのステップ60の踏み面70およびライザ80に設けられた凹凸61のうちの凹部62に付着した汚れを清掃するものであり、
図1に示すように、柄1と、汚れの吸着性を有して弾性変形可能な部材であって、凹部62に挿入される複数、例えば13個の清掃部10と、柄1に清掃部10を取り付ける取付構造部20とを備える。
【0029】
清掃部10は、
図2,
図3に示すように、ステップの凹部62に挿入可能な厚さ寸法に形成された円板部11と、この円板部11の周面11aに設けられ、円板部11の径方向に延びた山形の突起部12とを備える。ステップ60の凹部62は、開口部63から底部64に向かって漸次狭まって形成されている。この凹部62の深さ寸法は11mmに設定されていて、凹部62の開口部63の幅寸法は5.5〜5.8mmの範囲で設定されていて、底部64の幅寸法は開口部63よりも10mm短い4.5〜4.8mmの範囲で設定されている。清掃部10の円板部11のうちの凹部62に挿入される部分の厚さは、凹部62の形状に略合致するよう円板部11の周面11aに向かって漸次薄くなっている。突起部12の断面形状も、凹部62の形状に略合致するよう円板部11の断面形状と同様の形状に形成されている。
【0030】
図5に示すように、清掃部10の構成がブラシ等の一定の方向性を持った繊維の集合体90のようであった場合、繊維の集合体90を用いて清掃対象の面100の汚れ101を拭き取る際、
図5(a)に示すように、繊維の集合体90を清掃対象の面100に対して立たせた状態で、その清掃対象の面100に対して繊維の集合体90を摺動させることで、その繊維の集合体90の先端部91で汚れ101を掻き取ることができ、これによって、清掃対象の面100の汚れ101を効果的に拭き取ることができる。これに対し、
図5(b)に示すように、繊維の集合体90を清掃対象の面100に対して寝かせた状態で、その清掃対象の面100に対して繊維の集合体90を摺動させた場合には、汚れ101を均すことになりやすいため、
図5(a)に示した場合よりも清掃効率が低い。以上に述べたように、清掃部10の構成がブラシ等の一定の方向性を持った繊維の集合体90のようであった場合には、繊維の集合体90を清掃対象の面100に対して立たせた状態で使えるうちは清掃効率が良いが、繊維の集合体90が撓り過ぎたり、弾性が衰えた場合には、清掃効率が低くなるという問題がある。一方、本実施形態の清掃部10は、
図4に示す布部材13のような不織布材を用いており、適度な弾性を維持できることから、裁断によって生じた不織布材繊維の先端部91を清掃対象の面100に対して常に立てた状態、すなわち、
図3に示すように、ステップ60の凹部62の底部64に対して常に立てた状態で保持できることから清掃効率が高い。また、不織布材は繊維が不規則に絡み合っているため、ステップ60の凹部62の側部65,66に対しても、繊維が適度な弾性を保ちながら清掃対象の面100に対して立った状態で接し易いため、ブラシ等の一定の方向性を持った繊維の集合体90よりも高い清掃効果を得ることができる。ただし、不織布材は圧縮されると元の大きさに戻ろうとする力が発生するため、例えばステップ60の凹部62に清掃部10を挿入した際、その清掃部10の厚さがステップ60の凹部62より大きいと清掃部10が圧縮され、元の厚さに戻ろうとする力により大きな摩擦力が生じることになり、これが清掃部10の凹部62に対する摺動抵抗を著しく増大させるくさび効果を発現する原因となり、清掃部10の清掃性能は高いものの、このくさび効果により摺動動作が阻害され、清掃効率を下げることがあった。しかし本実施形態では、清掃部10の円板部11のうちの凹部62に挿入される部分の厚さは、凹部62の形状に略合致するよう円板部11の周面11aに向かって漸次薄くなっており、また突起部12の断面形状も、凹部62の形状に略合致するよう円板部11の断面形状と同様の形状に形成されているので、清掃部10の高い清掃性能を保持したまま、摺動抵抗を著しく増大させることを防止し、くさび効果が発現するのを抑制できるため、清掃効率も落とすことがない。
【0031】
取付構造部20は清掃部10を、柄1に対する円板部11の円心周りの回転を阻止した状態で保持するものである。具体的には、
図1,
図6に示すように、取付構造部20は、平行に延びた第1,第2腕部31,32と、これら第1,第2腕部31,32のそれぞれの一端部同士を連結する連結部33とから構成されたコ字形状の枠体30と、第1,第2腕部31,32間に清掃部10の円板部11を回転不能に保持する保持構造部40とを備える。
【0032】
保持構造部40は、複数のシャフト、例えば2本のシャフト50(
図7参照)と、第1,第2腕部31,32の両方に設けられ、2本のシャフト50のそれぞれが挿通される取付孔54(
図6(b)参照)と、2本のシャフト50のそれぞれの一端部が全て固着され、第1,第2腕部31,32のうちの第1腕部31に枠体30の外側から当接して位置する抜け止め部55(
図1,
図7参照)と、円板部11の円心以外箇所、例えば円心を挟んで位置する2箇所を円板部11の厚さ方向に貫通して設けられ、2本のシャフト50のそれぞれが個別に挿通される2個の貫通孔56(
図2参照)と、2本のシャフト50のそれぞれの抜け止め部55側の一端部とは反対側の他端部のそれぞれに設けられ、第1,第2腕部31,32のうちの第2腕部32から枠体30の外側に突出して位置する雄ネジ53(
図1,
図7参照)と、これらの雄ネジ53のそれぞれに螺合する雌ネジ部材である蝶ナット57(
図1参照)とを備える。
【0033】
シャフト50は断面形状が円形に形成されたものであり、抜け止め部55に一端が固着された大径部51と、この大径部51の他端から延びた小径部52とを備える。小径部52には前述の雄ネジ53が設けられている。第2腕部32に設けられる取付孔54の径寸法は、大径部51の径寸法よりも小さい。大径部51の小径部52側の端面51aは、第2腕部32の取付孔54の外周側に位置する第2腕部32の部分に対して枠体30の内側から当接することによって、雄ネジ53に螺合した蝶ナット57が締め込まれた際に第2腕部32が第1腕部31の方向に移動するのを規制する。
【0034】
つまり、2本のシャフト50は、第1,第2腕部31,32のそれぞれに設けられた2個の取付孔54に挿通された状態に保持されることによって、第1,第2腕部31,32間に架け渡されている。また、2本のシャフト50は、取付孔54、抜け止め部55、雄ネジ53、蝶ナット57によって、第1,第2腕部31,32に対して着脱可能に設けられている。
【0035】
保持構造部40においては、清掃部10の円板部11の円心以外の箇所に設けられた2個の貫通孔56のそれぞれに、2本のシャフト50のそれぞれが個別に挿通された状態で、それらのシャフト50が第1,第2腕部31,32間に架け渡される。これにより、保持構造部40は、第1,第2腕部31,32間に清掃部10の円板部11を回転不能に保持することができる。
【0036】
図1に示すように、柄1は枠体30の連結部33に固定されている。枠体30の第1,第2腕部31,32間に清掃部10が保持された状態において、柄1は、清掃部10に対して円板部11の厚さ方向に直交する方向であって、突起部12の突起方向とは反対方向に延びて位置する。
【0037】
このように構成された第1実施形態においては、第1,第2腕部31,32に清掃部10を取り付ける際、作業者は、はじめに第1,第2腕部31,32のうちの第1腕部31に設けられた2個の取付孔54のそれぞれに、枠体30の外側から2本のシャフト50のそれぞれの他端部(抜け止め部55とは反対側に位置する雄ネジ53が設けられた端部)を挿通して、第1,第2腕部31,32間に配置する。この状態において、作業者は2本のシャフト50のそれぞれの他端部を、13個の清掃部10の円板部11のそれぞれに設けられた2個の貫通孔56のそれぞれに挿通する。
【0038】
その後、作業者は2本のシャフト50のそれぞれの他端部を、第1,第2腕部31,32のうちの第2腕部32に設けられた2個の取付孔54のそれぞれに枠体30の内側から挿通し、それらの他端部に設けられた雄ネジ53を、第2腕部32から枠体30の外側に突出させる。この状態において、作業者は、雄ネジ53に蝶ナット57を螺合させて締め込む。これにより、抜け止め部55と蝶ナット57との間に第1,第2腕部31,32が挟まれた状態となる。この結果、清掃部10の円板部11に設けられた2個の貫通孔56のそれぞれに挿通された状態の2本のシャフト50は、第1,第2腕部31,32に対して固定され、第1,第2腕部31,32に対する清掃部10の取り付けが完了する。
【0039】
第1,第2腕部31,32から清掃部10を取り外す際には、作業者は、はじめに2本のシャフト50のそれぞれの雄ネジ53から蝶ナット57を取り外す。次に、作業者は、抜け止め部55を把持し、この抜け止め部55を第1腕部31から離れる方向に移動させることによって、第1,第2腕部31,32の両方に設けられた2個の取付孔54のそれぞれ、および、清掃部10の円板部11に設けられた2個の貫通孔56のそれぞれから、2本のシャフト50のそれぞれを抜く。この結果、第1,第2腕部31,32からの清掃部10の取外しが完了する。
【0040】
このように第1実施形態においては、2本のシャフト50は第1,第2腕部31,32に対して取外し可能であり、第1,第2腕部31,32から取り外された状態の2個のシャフト50のそれぞれは、清掃部10の円板部11に設けられた2個の貫通孔56のそれぞれから抜き取ることが可能である。つまり、第1実施形態においては、清掃部10の交換が可能である。
【0041】
第1実施形態を用いてステップ60の踏み面70の凹部62の清掃を行う際、
図8に示すように、作業者は、清掃部10の円板部11の厚さ方向とステップ60の凹部62の幅方向(ステップ60の走行方向に直交する方向)とを一致させた状態で、円板部11の周面11aが凹部62の底部64に押し付けられるよう凹部62に円板部11を挿入する。そして、円板部11を凹部62に対して凹部62の長手方向(ステップ60の走行方向)に摺動させることによって、凹部62の底部64、側部65,66に付着した汚れを円板部11で拭きとる。
【0042】
ステップ60の凹部62に対する清掃部の円板部11の摺動中、ステップ60の凹部62と円板部11との間に生じる摺動抵抗によって、円板部11の円心周りに柄1および円板部11の角度が
図8(a)の状態から
図8(b)の状態に変化したり、その逆に変化したりするが、作業者は柄1および円板部11の角度を戻すことなく、円板部11の周面11aを常にステップ60の凹部62の底部64に押し付けた状態に保持できる。これにより、第1実施形態は、ステップ60の凹部62に挿入された清掃部10の姿勢を調整する煩わしさを解消できる。
【0043】
また、清掃部10は、円板部11の厚さ方向とステップ60の凹部62の幅方向とを一致させた状態で、その凹部62の底部64に円板部11の周面11aを押し付けられて使用されるものであるので、円板部11には、ステップ60の凹部62に対する円板部11の摺動時に、くさび効果を伴う変形が生じにくい。これによって、第1実施形態は、清掃部10のステップ60の凹部62に対する摺動抵抗を従来よりも低減できる。
【0044】
第1実施形態を用いてステップ60のライザ80の凹部の清掃を行う際、
図9に示すように、作業者は、上段側のステップ60のライザ80と、下段側のステップ60の踏み面70との境界部81に、清掃部10の突起部12を挿し込むことができる。つまり、第1実施形態は、ステップ60のライザ80の凹部の清掃を容易化することができる。
【0045】
なお、前述の第1実施形態は、エスカレータのステップ60を清掃対象としていたが、動く歩道のステップを清掃対象とすることもできる。なお、動く歩道のステップにはライザを備えないものもあり、この場合には、清掃部10は突起部12を備えない円板部11のみのものでよい。
【0046】
[第2実施形態]
第2実施形態について
図10を用いて説明する。この
図10に示すもののうち、
図1に示したものと同等のものに対しては、
図1と同じ符号を付してある。
【0047】
前述の第1実施形態は13個の清掃部10を備えるものであった。その13個は、ステップ60の凹部62の清掃中に生じるシャフト50の撓み量が、清掃の障害にならないことを考慮して設定されたシャフト50の最長寸法に基づき設定されている。
【0048】
これに対し、第2実施形態は、第1実施形態よりも第1,第2腕部31,32間の間隔寸法が、26個の清掃部10を配置可能に設定されたワイド枠体110と、このワイド枠体110における第1,第2腕部31,32間の間隔寸法に対応した2本のロングシャフト111と、第1,第2腕部31,32間において、2本のロングシャフト111の中間部を支持する支持部材120とを備える。
【0049】
ロングシャフト111は、第1実施形態におけるシャフト50の大径部51よりも長い大径部を備えるものであり、この大径部以外はシャフト50と同じ構成である。
【0050】
支持部材120はL字状の部材であり、L字の一辺を成す部位であって連結部33にネジ止めされる取付部121と、L字の他辺を成す部位であって第1,第2腕部31,32と平行に延びて位置する支持部122とを備える。支持部122には、ロングシャフト111が挿通される2個の支持孔(図示してない)が設けられている。
【0051】
第2実施形態は、支持部材120に設けられた支持孔の内周面によって、ステップ60の凹部62の清掃時におけるロングシャフト111の撓みを規制することができる。
【0052】
なお、前述の第1,第2実施形態において、清掃部10は、不織布材を材料として作製されたものであるが、本発明における清掃部はそれに限定されるものではなく、汚れの吸着性を有して弾性変形可能なものであればよい。清掃部の不織布材以外の材料としては、発泡材であってもよい。
【0053】
前述の第1,第2実施形態において、清掃部10の円板部11は、ステップ60の凹部62に挿入される部分の厚さが、凹部62の形状に略合致するよう漸次薄く形成されたものであり、突起部12の形状も円板部11と同様に形成されている。本発明における円板部および突起部の形状は、それに限定されるものではなく、
図11に示す円板部201や
図12に示す円板部202であってもよい。
【0054】
図11に示す円板部201は、ステップ60の凹部62の開口部63の幅寸法5.5〜5.8mmよりも長い厚さ寸法6〜8mmで一定の厚さに形成されたものであり、厚さ方向に圧縮された状態で凹部62に挿入されるものである。この円板部201で凹部62を清掃する際は、清掃部10の円板部11が弾性力により凹部62の側部65,66に押し付けられるので、作業者は円板部201によって側部65,66に付着した汚れを、円板部11の場合よりも効果的に拭き取ることができる。ただし、このような形態をとる場合には清掃部10の弾性力を調整し、摺動抵抗が著しく増大することがないように調整する必要がある。このように弾性力を適切に調整できれば、清掃部10の高い清掃性能を保持したまま、くさび効果が発現するのを抑制できるため、清掃効率も落とすことがないものとすることができる。
【0055】
図12に示す円板部202は、ステップ60の凹部62の開口部63の幅寸法5.5〜5.8mmよりも短く、底部64の幅寸法4.5〜4.8mmよりも長い厚さ寸法5mmで一定の厚さに形成されたものであり、凹部62に挿入されるものである。この円板部202で凹部62を清掃する際は、円板部202が凹部62から受ける摺動抵抗が、前述の円板部11の場合よりも小さいので、作業者は凹部62に対して円板部11を円滑に摺動させることができる。ただし、凹部62の側部65,66の汚れを拭き取る際には、円板部202を矢印B方向に傾けて側部65または側部66に当接させる必要がある。このようにすることで清掃部10の高い清掃性能を保持したまま、くさび効果が発現するのを抑制できるため、清掃効率も落とすことがないものとすることができる。
【0056】
前述の第1,第2実施形態において、清掃部10の円板部11は、
図4に示すように不織布材が清掃部10の側面視形状に切断されて成る布部材13を、複数枚積層した状態で積層方向に加熱圧縮することによって、または、その布部材を複数枚積層して接着した状態で積層方向に加熱圧縮することによって、または、布部材13を積層するのではなく、布部材13を形成するのと同様に、不織布繊維を加熱圧縮した後、ステップ60の凹部62の形状に合致するように研削および裁断して板状に製作されたもの、すなわち、不織布材のみで構成されたものである。本発明において円板部を構成する部材は不織布材のみに限定されるものではなく、
図13に示す円板部203のように、不織布材よりも剛性の高い芯材204を、積層される不織布材の中心に設けてもよい。このように構成された円板部203には、凹部62に対する円板部203の摺動時に、くさび効果を伴う変形が前述の円板部11よりも生じにくい。したがって、円板部203は、円板部203が凹部62から受ける摺動抵抗を、円板部11の場合よりも低減することができる。また、凹部62の幅よりも厚さが厚い場合であっても、凹部62に挿入された際の摺動抵抗に抗して容易に摺動させることができる上、清掃部10の変形を抑えてくさび効果を発現させることがなくなるため、清掃部10の高い清掃性能を保持したまま、くさび効果の発現を抑制でき、清掃効率も落とすことがないものとすることができる。
【0057】
なお、円板部203のうちの凹部62に挿入される部分の形状は、
図13に示すものに限定されるものではなく、凹部62に挿入可能なものであればよい。例えば、凹部62の開口部63に配置される円板部203の厚さ寸法は5.5〜8mmの範囲内で設定され、凹部62の底部64に配置される円板部203の厚さ寸法は4〜4.8mmの範囲内で設定される。