特許第5763617号(P5763617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763617標的化薬物送達用組成物のための潜在的成分を特定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763617
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】標的化薬物送達用組成物のための潜在的成分を特定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/48 20060101AFI20150723BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20150723BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   A61K47/48
   A61K47/34
   A61K33/06
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-502153(P2012-502153)
(86)(22)【出願日】2010年3月23日
(65)【公表番号】特表2012-521437(P2012-521437A)
(43)【公表日】2012年9月13日
(86)【国際出願番号】US2010028224
(87)【国際公開番号】WO2010111212
(87)【国際公開日】20100930
【審査請求日】2013年3月19日
(31)【優先権主張番号】61/163,565
(32)【優先日】2009年3月26日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506298792
【氏名又は名称】ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ロイ ジョセ
(72)【発明者】
【氏名】ドクター ケリー ビクター
(72)【発明者】
【氏名】ハリントン ロジャー イー.
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−533108(JP,A)
【文献】 特表2001−524084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61K 33/06
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性剤の優先的分配のための組成物を調製する方法であって、
送達用リガンドおよび1以上の活性剤を含む溶液を調製する工程と、
前記溶液を、前記溶液の相分離を誘導するための1以上の条件に曝す工程と、
送達用リガンド−活性剤複合体を含む相を単離する工程と
を含み、
前記送達用リガンドはポリエチレングリコール(PEG)を含み、
前記活性剤はマグネシウムイオンを含む化合物を含み、
前記溶液を、前記相分離を誘導するための1以上の条件に曝す工程は、前記溶液をオートクレーブ処理することを含み、前記溶液中の前記活性剤の濃度は、0.8%であり、
前記溶液は、30〜40%の間の前記送達用リガンドを含む方法。
【請求項2】
単離された前記相は、閾値濃度を超える送達用リガンド−活性剤複合体の濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送達用リガンドおよび前記1以上の活性剤は、それらの間の相互作用が主にイオン性であるように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
活性剤の優先的分配のための組成物のための潜在的成分を特定する方法であって、
送達用リガンドおよび1以上の活性剤を含む溶液を調製する工程と、
前記溶液を、前記溶液の相分離を誘導するための1以上の条件に曝す工程と、
1以上の相が送達用リガンド−活性剤複合体を含むかどうかを判定する工程と
を含み、
前記送達用リガンドはポリエチレングリコール(PEG)を含み、
前記活性剤はマグネシウムイオンを含む化合物を含み、
前記溶液を、前記相分離を誘導するための1以上の条件に曝す工程は、前記溶液をオートクレーブ処理することを含み、前記溶液中の前記活性剤の濃度は、0.8%であり、
前記溶液は、30〜40%の間の前記送達用リガンドを含む方法。
【請求項5】
1以上の相は、閾値濃度を超える送達用リガンド−活性剤複合体の濃度を有する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記送達用リガンドおよび前記1以上の活性剤は、それらの間の相互作用が主にイオン性であるように選択される、請求項又はに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的化薬物送達用組成物のための潜在的成分を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の器官への、治療薬の標的化送達は、非常に難しいが重要であり、飛躍的に発展している実験的生物医学およびトランスレーショナル生物医学の領域である。これまでの薬物送達システムでは、患者が治療薬を投与された後、その薬剤は、全身の血液循環を介して患者のからだ全体に分配される。治療薬が作用する必要がある器官へはその治療薬の少量だけしか到達できないので、その治療薬の高い初期用量が、患者に投与される必要がある。高用量の治療薬を患者に投与することは、その治療薬の全身濃度を上昇させる可能性が高く、これは、患者の健康な器官に対して悪影響を及ぼす可能性がある。標的化送達が成功すれば、薬物毒性の著しい低減、薬物用量の減少、および治療の有効性の増大がもたらされるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、当該技術分野において、特定の器官への、治療薬の標的化送達を可能にする組成物、およびこのような組成物を調製する方法についてのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様では、損傷部位への活性剤の優先的分配のための組成物のための潜在的成分を特定する方法が提供される。このような方法は、送達用リガンドおよび1以上の活性剤を含む溶液を調製する工程と、この溶液を、その溶液の相分離を誘導するための1以上の条件に曝す工程と、1以上の相が、閾値濃度を超えている可能性がある送達用リガンド−活性剤複合体を含むかどうかを判定する工程とを含む。
【0005】
本発明の別の態様では、損傷部位への活性剤の優先的分配のための組成物を調製する方法が提供される。このような方法は、送達用リガンドおよび1以上の活性剤を含む溶液を調製する工程と、この溶液を、その溶液の相分離を誘導するための1以上の条件に曝す工程と、閾値濃度を超えている可能性がある送達用リガンド−活性剤複合体を含む相を単離する工程とを含む。
【0006】
当該送達用リガンドは親水性を有するポリマーを含んでもよく、他方で当該活性剤は、親水性を有する金属イオンを含むことができる。このような金属イオンは、リガンドの特定のヘテロ原子、例えばN、O、およびS原子への静電的引力を介してイオン結合を形成することによって送達用リガンドと複合体を形成することができる。イオン結合の種類は、1以上の金属分子と1以上のリガンド分子上に存在する1以上のサブユニットとの間の電子共有を含めて、様々でありうる。この金属対イオンは、送達用リガンドとの複合体形成に関与してもよい。
【0007】
様々な実施形態のさらなる特徴および利点について、一部は下記に記載され、一部は当該記載から明らかであるか、または様々な実施形態の実施によって知ることができる。様々な実施形態の目的および他の利点は、本願明細書および請求項で具体的に記載された要素および組み合わせによって認識でき、かつ、実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願明細書および添付の請求項について、別段の記載がない限り、本願明細書および請求項において使用される成分の量、物質の割合または比率、反応条件を表す全ての数および他の数値は、用語「約」によって、全ての例において改変されるものとして理解されるはずである。従って、別段の記載がない限り、本願明細書および請求項に記載された数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変わる可能性がある近似値である。請求項の範囲への均等論の適用を制限することを意図することないが、最低限でも、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の値に基づいて、通常の丸め方を適用することによって解釈されなければならない。
【0009】
本発明の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるかに関わらず、特定の実施例に記載された数値は可能な限り正確に報告される。しかし、全ての数値は、各試験の測定値において認められる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。さらに、本願明細書に開示される全ての範囲は、これらに包含されるいずれか、および全ての部分的な範囲を含むものと理解されるはずである。例えば、「1〜10」という範囲は、最小値1と最大値10との間(およびこれらを含む)のうちのいずれか、および全ての部分的な範囲、すなわち、1に等しいか、もしくはこれよりも大きい最小値、および10に等しいか、またはそれ未満の最大値を有するいずれか、および全ての部分的な範囲(例えば、5.5〜10)を含む。
【0010】
本願明細書および添付の請求項において使用される場合、単数形「1つの(a、an)」および「その、当該(the)」には、1つの参照対象にはっきりと明示して制限されていない限り、複数形の参照対象が含まれることに注意されたい。
【0011】
本発明の1つの態様では、損傷部位への活性剤の優先的分配のための組成物のための潜在的成分を特定する方法が提供される。このような方法は、送達用リガンドおよび1以上の活性剤を含む溶液を調製する工程と、この溶液を、その溶液の相分離を誘導するための1以上の条件に曝す工程と、1以上の相が、閾値濃度を超えている可能性がある送達用リガンド−活性剤複合体を含むかどうかを判定する工程とを含む。
【0012】
用語「損傷部位」は、本願明細書で使用する場合、器官に供給している血管を漏出させることが公知の生物学的状態に罹患している器官を指す。漏出性の血管は、血液およびタンパク質に富む滲出液などの流体物質の管への異常な流入、またはその管からの異常な漏れを起こしやすい。管の漏出を引き起こすことが公知の生物学的状態としては、急性炎症および慢性炎症などの腫脹を引き起こす状態;ならびに、血管新生を引き起こす状態(癌、ならびに加齢性黄斑変性症および糖尿病性網膜症などの変性疾患)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明の別の態様では、損傷部位への活性剤の優先的分配のための組成物を調製する方法が提供される。このような方法は、送達用リガンドおよび1以上の活性剤を含む溶液を調製する工程と、この溶液を、その溶液の相分離を誘導するための1以上の条件に曝す工程と、閾値濃度を超えている可能性がある送達用リガンド−活性剤複合体を含む相を単離する工程とを含む。
【0014】
送達用リガンドおよび1以上の活性剤を含む溶液は、送達用リガンドおよび1以上の活性剤を生物学的担体(生理食塩水溶液または水など)の中で混合することにより、調製されてもよい。これらの送達用リガンドおよび1以上の活性剤は、それらの間の相互作用が主にイオン性であるように特に選択される。これらの送達用リガンドと活性剤との相互作用は「キレート化」様効果と定義することができ、それは、これらの送達用リガンドと1以上の活性剤との間のイオン的相互作用に基づく。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)全体は非イオン性であるが、PEG鎖上のヘテロ原子上のフリーの非共有電子対は、ポリマーに陰イオン性の特質を与え、陽イオン(Mgなど)に結合できる。
【0015】
初期溶液は、約10〜60%のリガンド、および約0.1%〜約20%の活性剤(体積あたりの重量による%、すなわちリガンドまたは活性剤のg/100ml溶液)を含むことができる。本発明の組成物中での送達用リガンドの濃度は、送達用リガンド中のキレート化部位の数に依存する。この送達用リガンドは、1以上の種類の繰り返しサブユニットから構成され、その繰り返しサブユニットのうちのいくつかは、キレート化部位を含む。より高分子量の送達用リガンドはより多い数のサブユニットから構成され、従ってより高分子量の送達用リガンドは、より低分子量の送達用リガンドよりも多い数のキレート化部位を有する可能性が高い。従って、一般的に、当該組成物中のより高分子量の送達用リガンドの濃度は、同じサブユニットを含むがより低分子量を有する送達用リガンドの濃度よりも低くてもよい。
【0016】
本発明の方法における送達用リガンドとしての使用に適した化合物は、下記の基準を満たしてもよい:(1)送達用リガンドは水溶性である、(2)送達用リガンドは、無傷な血管から迅速に除去され排泄される、(3)送達用リガンドは、血管が損傷を受けている場所で優先的に蓄積する、(4)送達用リガンドは親水性を有する、ならびに(5)送達用リガンドは、陽イオンとのイオン結合に適したキレート化部位を有する。
【0017】
上記のように、当該送達用リガンドは、血管が無傷である場合は、体内から迅速に排泄されうる。従って、適切な送達用リガンドは、3時間未満、2時間未満、または1.5時間未満の半減期を有することができる。送達用リガンドの排泄の速度(または半減期)は、リガンドの分子量に関連し、より高い分子量のリガンドは、より長い半減期を有する。さらに、同じ分子量については、親水性リガンドは、より疎水性のリガンドよりも短い半減期を有する。ほとんど変化せずに尿から排泄されうる親水性リガンドは、排泄の前に何らかの変換が要求されるリガンドよりも、半減期が短い。例えば、糸球体濾過のカットオフ値は24,000Daであるため、24,000Daよりも重い全てのリガンドは、排泄されうる前に、ある程度まで分解される必要があり、これによってその半減期が延びる。送達用リガンドは、24,000Da未満の分子量を有する親水性を有するポリマーから選択されてもよい。
【0018】
当該送達用リガンドは、親水性または両親媒性ポリマーから選択されてもよい。本願明細書で使用される用語「親水性ポリマー」は、水分子への親和性や誘引を示し、鎖状および/または分岐状の構造において互いに結合する繰り返しユニットを含む全ての高分子を意味する。親水性ポリマーは、合成の親水性ポリマーまたは天然に存在する親水性ポリマーから選択されてもよい。
【0019】
天然に存在する親水性の化合物としては下記が挙げられるが、これらに限定されない:コラーゲンおよびその誘導体、フィブロネクチン、アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲンおよびフィブリンなどのタンパク質(コラーゲンが特に好ましい);ポリマンヌロン酸およびポリガラクツロン酸などのカルボキシル化ポリサッカライド;アミノ化ポリサッカライド、特にグリコサミノグリカン、例えば、ヒアルロン酸、キチン、コンドロイチン硫酸A、B、またはC、硫酸ケラチン、ケラタン硫酸およびヘパリン;メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウムおよび活性化ポリサッカライド(デキストランなど)およびデンプン誘導体。
【0020】
有用な合成親水性化合物としては下記が挙げられるが、これらに限定されない:ポリアルキレンオキシド、特にポリエチレングリコールおよびポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)コポリマー(ブロックコポリマーおよびランダムコポリマーなど);グリセロール、ポリグリセロール(特に高度分岐ポリグリセロール)、ポリ(メタクリル酸ポリエチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸グリセロール)、ポリ(アクリル酸グリセロール)、ポリ(アクリル酸ポリエチレングリコール)、ポリ(アルキルオキサゾリン)、ホスホリルコリンポリマー、ポリメタクリル酸ナトリウムおよびポリメタクリル酸カリウム、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリアクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸およびポリアクリル酸、1以上のポリアルキレンオキシドで置換されたプロピレングリコールおよびトリメチレングリコール(例えば、モノ−、ジ−およびトリ−ポリオキシエチル化グリセロール、モノ−およびジ−ポリオキシエチル化プロピレングリコール、ならびにモノ−およびジ−ポリオキシエチル化トリメチレングリコール)などのポリオール;ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース;アクリル酸ポリマーならびにその類似体およびコポリマー(例えば、ポリアクリル酸それ自体、ポリメタクリル酸、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸メチルアルキルスルホキシド)、ポリ(アクリル酸メチルアルキルスルホキシド)および上述のうちいずれかのコポリマー)、ならびに/またはさらなるアクリレート化学種(アクリル酸アミノエチルなど)を含むもの、ならびにモノ−2−(アクリルオキシ)−エチルコハク酸エステル;ポリマレイン酸;ポリアクリルアミドそれ自体、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、およびポリ(N−イソプロピル−アクリルアミド)などのポリ(アクリルアミド);ポリ(ビニルアルコール)などのポリ(オレフィンアルコール);ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)およびそのコポリマーなどのポリ(N−ビニルラクタム);ポリ(メチルオキサゾリン)およびポリ(エチルオキサゾリン)などのポリオキサゾリン;ならびにポリビニルアミン。
【0021】
本願明細書で使用される用語「両親媒性ポリマー」とは、極性部分構造および非極性部分構造を生じさせる局所的な電荷量の変化を有する全ての高分子を指す。極性部分構造は、他の極性分子構造(水分子など)への親和性または誘引を示す(親水性)一方で、非極性部分構造は、非極性分子(例えば、脂質、油脂、グリース、脂肪など)への親和性または誘引を示す(親油性)。適した両親媒性ポリマーとしては、ポロキサマー P−188、ポリエーテルエステルコポリマー(ポリエチレングリコールおよびポリブチレンテレフタレートのコポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレンオキシドのコポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブロックコポリマーなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
両親媒性ポリマーはまた、Jeffamine(登録商標)として知られるポリエーテルアミンのファミリーを含む。これらのポリエーテルアミンは、典型的にはプロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、またはその混合物に基づくポリエーテル骨格の末端に結合した一級アミノ基を含む。Jeffamine(登録商標)ファミリーは、モノアミン、ジアミン、トリアミンおよび第二級アミンを含む。Jeffamine(登録商標)は、ハンツマン・コーポレーション(Huntsman Corporation)(本社;テキサス州、ザ ウッドランド)から購入できる。
【0023】
いくつかの実施形態では、当該送達用リガンドは、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでいてもよい。分子量が約200〜24,000DaのPEGが使用されてもよく、またはより好ましくは約1000〜6000Daが、本発明の組成物における送達用リガンドとしての使用に適している。異なる分子量のPEGは、例えば、シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)(米国、ミズーリ州、セントルイス)から得てもよい。
【0024】
本願明細書で使用する用語「活性剤」は、標的とされる器官に影響を及ぼして血管を漏出させる生物学的状態の徴候または症候を軽減する化学元素または化合物を指す。種々の実施形態では、当該送達用リガンドおよび活性剤の化学構造は、主にイオン性の相互作用に基づいて送達用リガンドとの複合体を形成することができるように、選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、この活性剤は、金属イオンまたはこのようなイオンを含む化合物から選択されてもよい。適切な活性剤は、一価の金属イオン(カリウムおよびリチウムなど);二価のイオン(マグネシウムおよびカルシウムなど);遷移金属イオン(鉄、亜鉛、および銅など);より複雑なイオンが挙げられるが、これらに限定されない。このような金属イオンは、送達用リガンドの特定のヘテロ原子、例えばN、OおよびS原子などへの静電的引力を介してイオン結合を形成することにより、送達用リガンドと複合体を形成することができる。イオン結合の種類は、1以上の金属分子と1以上のポリマー分子上に存在する1以上のサブユニットとの間の電子共有を含め、様々である可能性がある。この金属対イオンは、送達用リガンドとの複合体の形成に関与してもよい。
【0026】
1つの実施形態では、当該活性剤は、マグネシウム化合物を含む。種々のマグネシウム塩が、マグネシウム化合物の供給源をもたらしうる。適切なマグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムまたはこれらのいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物の中での活性剤の濃度は、体積あたりの重量で約0.1〜約20%の間の範囲であってもよい。これらの化合物は、例えば、シグマアルドリッチ(米国、ミズーリ州、セントルイス)から容易に購入できる。
【0027】
次に、当該溶液は、その溶液の相分離を誘導する1以上の条件に曝される。相分離を誘導する可能性がある適切な条件としては、熱、pHの変化、機械的な力(撹拌を含む)、時間などを挙げてもよいが、これらに限定されない。例えば、PEGおよびマグネシウムを含む溶液をオートクレーブ処理すると、異なる密度を有する2つの液相の形成が導かれる。
【0028】
相が特定の閾値を超える送達用リガンド−活性剤複合体を含有するかどうかは、ある場合には、目によって検出可能である場合がある。目によって検出可能でないならば、相が特定の閾値を超える送達用リガンド−活性剤複合体を含有するかどうかは、分光法、顕微鏡観察、分光測定などの分析方法を使用して、検出することができる。特定の閾値を超える送達用リガンド−活性剤複合体の濃度を有する相がない場合、送達用リガンド−活性剤複合体の最高濃度を有する溶液または相が、さらなる分離を誘導するためのさらなる条件に曝されてもよい。同様に、特定の閾値を超える送達用リガンド−活性剤複合体の濃度を有する相がその溶液の残部から単離された後、次に最も高い濃度を有する溶液または相の残部は、より強制的な条件に曝されてもよい。溶液をいくつもの条件に曝した後でさえも送達用リガンド−活性剤複合体の濃度が閾値レベルを生じない場合、その試験で使用した送達用リガンドおよび活性剤の特定の組み合わせは本発明の組成物には適していない可能性が高い。
【0029】
特定の閾値を超える送達用リガンド−活性剤複合体の濃度を有する相は、溶液の残部から単離される。所望の相は、濾過、微細濾過、遠心分離、超遠心、沈降、傾瀉またはこれらの組み合わせによって単離されてもよい。
【0030】
当該送達用リガンドおよび活性剤に加えて、本発明の組成物は、1以上の薬学的に許容できる担体を含んでいてもよい。本発明の組成物は、とりわけ賦形剤(例えば、溶媒、結合剤、フィラー、崩壊剤、潤滑剤、懸濁剤、界面活性剤、増粘剤、緩衝剤、抗菌剤など)を含んでいてもよい。多くの異なる薬学的に許容できる担体および賦形剤が知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Lippincott Williams & Wilkins;第21版(2005年5月1日)に開示されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、非経口投与用に調製される。非経口投与は、一般に、皮下、筋肉内、または静脈内注射によって特徴づけられる。非経口投与用の本発明の組成物は、液体の溶液、注射前に液体中の溶液にするのに適した固形形態として調製してもよい。
【0032】
本発明は、特定の実施形態を参照して本願明細書に記載されてきたが、これらの実施形態は本発明の原理および応用を説明するものでしかないことが理解されるはずである。従って、説明した実施形態に多数の改変を行ってもよく、請求項によって画定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく他の組み合わせを考案してもよいことが理解されるはずである。