特許第5763630号(P5763630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763630
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】配向複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20150723BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20150723BHJP
   D21H 13/40 20060101ALI20150723BHJP
   D21H 13/50 20060101ALI20150723BHJP
   D21H 13/26 20060101ALI20150723BHJP
   D21H 13/36 20060101ALI20150723BHJP
   D21H 13/24 20060101ALI20150723BHJP
   D21H 15/08 20060101ALI20150723BHJP
   D21H 17/35 20060101ALI20150723BHJP
   D21H 17/34 20060101ALI20150723BHJP
   D21J 1/04 20060101ALI20150723BHJP
   D21F 13/10 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C08J5/04CEW
   C08J3/12 A
   D21H13/40
   D21H13/50
   D21H13/26
   D21H13/36 A
   D21H13/24
   D21H15/08
   D21H17/35
   D21H17/34 A
   D21J1/04
   D21F13/10
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-517885(P2012-517885)
(86)(22)【出願日】2010年6月30日
(65)【公表番号】特表2012-532216(P2012-532216A)
(43)【公表日】2012年12月13日
(86)【国際出願番号】US2010040571
(87)【国際公開番号】WO2011002866
(87)【国際公開日】20110106
【審査請求日】2013年6月24日
(31)【優先権主張番号】61/222,754
(32)【優先日】2009年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/222,702
(32)【優先日】2009年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/222,728
(32)【優先日】2009年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/222,743
(32)【優先日】2009年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/222,770
(32)【優先日】2009年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ブーズ ジェイ ディヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ワイシャンペル ジェイムズ イー
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特表平07−503983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04
C08J 3/12
D21F 13/10
D21H 13/24
D21H 13/26
D21H 13/36
D21H 13/40
D21H 13/50
D21H 15/08
D21H 17/34
D21H 17/35
D21J 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーおよび繊維を含む密度Dcの複合物品を作るための方法であって、
ディスクミルを用いて、前記ポリマーから、不規則なマイクロファイバ構造がそこから伸びている不規則な外周を有するフレークを作製するステップであって、前記ポリマーが軟化温度を有するステップと;
− 繊維とポリマーの合計組成に基づいて約1質量%〜約50質量%の繊維と約50質量%〜約99質量%のフレークを水溶液中に共分散して、スラリーを生成するステップと;− 前記スラリーを揺動スクリーンに補給するステップと;
− 水を除去して、Dcより小さいDmという密度を有する整列したマットを提供するステップと;
− 複数の前記整列マットを整列した形で高さ方向に積重ねて、第1のマットを提供するステップと;
− 前記軟化温度より高い温度まで前記第1のマット全体を加熱しながら、Dmの1.1倍超でDcの0.999倍未満の圧縮密度まで前記第1のマットを緻密化して、先行圧密されたマットを提供するステップと;
− 前記先行圧密されたマットの少なくとも一部分を前記軟化温度より低い温度まで冷却して、圧密されたマットを提供するステップと;
− 複数の前記圧密されたマットを高さ方向に積重ねて、未圧密物品を提供するステップと;
− 前記高さを圧縮し、前記軟化温度よりも高い温度まで前記未圧密物品全体を加熱することによって前記未圧密物品を圧密して、圧密物品を提供するステップと;
− 前記軟化温度よりも低い温度まで前記圧密物品の少なくとも一部分を冷却して、前記複合物品を提供するステップと、
を含み、
前記物品が、繊維1グラムあたり、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びアルミニウムを合わせて1353ナノモル未満含有する、方法。
【請求項2】
前記ポリマーが、ペルフルオロ(ビニルプロピルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維が、ガラス、黒鉛、炭素;フッ素化黒鉛;アラミド、窒化ホウ素;炭化ケイ素;ポリエステル;およびポリアミドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維が短繊維である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法により製造された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ポリマー複合材料中の配向繊維または部分的配向繊維の異なる形で整列された層を含む複合物品を包含する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー(通常は連続相でかつ場合によりフルオロポリマーを含む)と繊維(例えばガラス繊維、炭素繊維および黒鉛繊維)とを含むかこれらからなる複合物品は、当該技術分野において周知である。マトリクスポリマーに対して繊維を添加することでポリマーの一部の特性を改善することができる。これらの特性には、耐クリープ性、引張り強度および係数、そして曲げ強度および係数が含まれうる。一般に選択される強化用繊維は、ポリマー単独に比べて高い引張り係数および引張り強度を有する。本明細書中に記載されるように、フルオロポリマーがマトリクスポリマーとして使用される場合、結果として得られる複合材料は多くの場合、これらの複合材料を例えば化学的加工業界向けの部品として有用なものにする耐高温性および耐薬品性などのフルオロポリマーの数多くの属性を有している。本発明の目的の1つは、改善された特性を示すこのようなポリマー複合材料の生産方法を提供しかつこの方法により製造された物品を提供することにある。
【0003】
ポリマーと1つまたは複数の繊維の複合材料の生産に関する背景情報は、Polymeric Materials Encyclopedia、Joseph C.Salamone著(1996年7月23日)、ISBN−10:084932470X、ISBN−13:978−0849324703、8327−8343頁の中に見ることができる。
【0004】
2重ベルトプレス積層における一部の背景技術が「Modelling of heat transfer in thermoplastic composites manufacturing:double−belt press lamination」A.Trende、B.T.Astrom、A.Woginger、C.Mayer、M.Neitzel共著、Composites Part A:Applied Science and Manufacturing中、第30巻、第8号、1999年8月、935−943頁中に見られる。
【0005】
公知の関連する方法および物品としては、「フルオロポリマー複合材料の製造方法」という題で1995年11月28日に発行されDeakyneらに付与された米国特許第5,470,409号明細書、「フルオロポリマー複合材料を製造するための先行圧密化方法」という題で1993年8月3日に発行されDeakyneらに付与された米国特許第5,232,975号明細書、「テトラフルオロエチレンポリマーおよび黒鉛繊維から調製される製品及び方法」という題で1979年8月7日に発行されMansureに付与された米国特許第4,163,742号明細書、「構造の圧縮成形」という題で1995年6月27日に発行されChesnaらに付与された米国特許第5,427,731号明細書および、「コンプレッサーバルブ用封止要素」という題で2006年3月14日に発行されSpieglらに付与された米国特許第7,011,111号明細書が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0006】
さらなる公知の関連する方法および物品としては、「ガラス繊維含有不織ポリマーウェブおよびその調製方法」という題で1998年6月2日に発行されMeekerに付与された米国特許第5,759,927号明細書、および「高度に緻密化されたシートの製造方法および装置」という題で1995年10月24日に発行されHeldに付与された米国特許第5,460,764号明細書が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0007】
これらの分野においては、簡略化された製造プロセス;頑強でかつ/または再現性のある製品を生産し得る頑強かつ/または再現性のあるプロセス;密度を増大させた物品を生産するためのプロセス;高密度物品;特に溶剤または水を含むプロセス用の、より少ない金属、より少ない金属性、イオン性または関連する不純物を有する製品を生産するためのプロセス;繊維長を保つ繊維を使用するためのプロセス;有用な体積全体を通して均一な特性を有する製品を生産するためのプロセス;測定方向の如何に関わらず均一かまたは優れている(または1方向で均一かまたは優れている、あるいは2つの直交する方向で均一かまたは優れている)方向特性(例えば引張り強度、圧縮強度または破断伸び)を有する複合製品を生産するためのあらゆるプロセスなどを含む分野(ただしこれらに限定されない)における改善のいずれか1つまたは組合せに対するニーズがなおも存在している。
【0008】
これらの改善は、複合物品が使用される分野例えば半導体製造用機器、航空機部品、自動車の部品、ガスケット、シールなどにおいて求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書中で開示されているのは、ポリマーおよび繊維を含む密度Dcの複合物品を作るための方法であって、
− 不規則なマイクロファイバ構造がそこから伸びている不規則な外周を有するフレークを生成するために前記ポリマーをディスクリファイニングするステップであって、前記ポリマーが軟化温度を有するステップと;
− 繊維とポリマーの合計組成に基づいて約1質量%〜約50質量%の繊維と約50質量%〜約99質量%のフレークを水溶液中に共分散して、スラリーを生成するステップと;
− 前記スラリーを揺動スクリーンに補給して整列した層を提供するステップと;
− 前記層から水を除去して、Dcより小さいDmという密度を有する整列したマットを提供するステップと;
− 複数の前記整列マットを整列した形で高さ方向に積重ねて、第1のマットを提供するステップと;
− 前記軟化温度より高い温度まで前記第1のマット全体を、加熱しながら、Dmの1.1倍超でDcの0.999倍未満の圧縮密度まで前記第1のマットを緻密化して、先行圧密されたマットを提供するステップと;
− 前記先行圧密されたマットの少なくとも一部分を前記軟化温度より低い温度まで冷却して、圧密されたマットを提供するステップと;
− 複数の前記圧密されたマットを高さ方向に積重ねて、未圧密物品を提供するステップと;
− 高さを圧縮し、前記軟化温度よりも高い温度まで前記未圧密物品全体を加熱することによって前記未圧密物品を圧密して、圧密物品を提供するステップと;
− 前記軟化温度よりも低い温度まで前記圧密物品の少なくとも一部分を冷却して、複合物品を提供するステップと、
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】公知の技術のいくつかのマットを概略的に示す。
図2】本開示に係るマットおよび2つの複合物品の立面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中に開示されているのは、ポリマーおよび繊維を含む密度Dcの複合物品を製造するための方法である。本明細書中で開示されている方法には、約1〜約91質量%の繊維と約9〜約99質量%の前記ポリマーを含むマットを提供するステップが含まれる。マットはDmの密度を有し、Dcより小さく、ここで前記ポリマーは軟化温度を有する。マットは、マットの少なくとも一部分が前記軟化温度より低い温度にある間に、Dmの1.1倍超でDcの0.999倍未満の密度までマットを圧縮することにより緻密化されて、圧縮されたマットを提供する。その後、圧縮されたマットは、Dmの1.1倍超でDcの0.999倍未満の圧密された密度にある間に、前記軟化温度より高い温度まで全体にわたり加熱されて、先行圧密されたマットを提供する。先行圧密されたマットの少なくとも一部分は、前記軟化温度未満の温度まで冷却されて、圧密されたマットを提供する。次のステップは、複数の圧密されたマットを高さ方向に積重ねて、未圧密物品を提供することである。未圧密物品は次に、前記未圧密物品の高さを圧縮し、それを全体に前記軟化温度より高い温度まで加熱することによって圧密されて圧密複合物品を提供する。圧密複合物品の少なくとも一部分は、前記軟化温度より低い温度まで冷却される。
【0012】
一部の実施形態において、本発明は、当該技術分野において公知の要素を新たな方法で組合わせて、1つ以上の予想外または予測不能な結果を、場合によっては予想外または予測不能な結果の組合せを含めて達成することができる。このような技術分野の単一の要素には、全ての開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第5506052号明細書、米国特許第6066395号明細書、米国特許出願公開第20090062426号明細書、米国特許第7094468号明細書、米国特許第7150913号明細書、米国特許第5589055号明細書、米国特許第4420512号明細書、米国特許第4975321号明細書、米国特許第4555446号明細書、米国特許第52272385号明細書、米国特許第4448910号明細書、米国特許第4,455,343号明細書、米国特許出願公開第20070082199号明細書、米国特許第6444187号明細書、米国特許第4,448,911号または米国特許第5236982号明細書またはそれらの組合せが含まれる。
【0013】
複合物品の密度は、ASTM D792−08 押しのけ容積によるプラスチックの密度及び比重(相対密度)の標準試験方法(Standard Test Methods for Density and Specific Gravity (Relative Density) of Plastics by Displacement)により決定可能である。マットの厚みはTAPPI T411 紙、板紙および複合ボードの厚み(Thickness (Caliper) of Paper、Paperboard and Combined Board)により決定可能であり、体積あたりの質量は、TAPPIT411により決定される厚みおよび公知のサイズ(例えば16cm×16cm)の面積を切断しその公知の体積のマットを秤量することによって決定可能である。
【0014】
ポリマーフレークまたは粒子および繊維の典型的マット(図1Aの17または図1Bの17’)または複合物品は、使用されるポリマーおよび繊維の加重密度に一定程度応じて、約0.2g/mL以下から約1.9g/mL以上の密度を有していてよい。繊維と組合わされたポリマーフレークまたは粒子の典型的な圧密マット(図1Cの17’’’)は、それを構成するマットよりも大きい密度を有しているはずであり、使用されるポリマーおよび繊維の加重密度に一定程度応じて、約0.3g/mL〜約2.9g/mLの密度を有していてよい。図1A−Dは先行技術を表わし、本発明の理解を助けている。図1Aは、2枚のプラテン60、62の間にあるポリマー粒子102および繊維101を含むマット17を示している。剥離フィルム61、63を、2枚のプラテン60、62と繊維101およびポリマー粒子102で構成されたマット17の間に設置してもよく、あるいはプラテンを他の形で処理して、プラテンに対するマットの粘着を防止してもよい。例えばプラテンを通して熱が加えられるにつれて、マット17を、プラテンの低い接触圧下におくことができてもよい。ポリマー粒子はポリマーの軟化温度を超えた時点で軟化し、典型的には形状を変える。図1Bは、温度が軟化温度を上回るにつれておよび、層17’の内部で繊維上にビーズ102が形成するにつれて(濡れによってでもよい)得ることのできるマットを例示している。当初のポリマー粒子の全てをその軟化温度より高く加熱する必要はない。ポリマー軟化温度より均一に高い温度で全体に緻密化されたマットについて、密度変化に関して図1Cに示されている通り、プラテン60、62に圧力を加えてマットの高さを減少させて(それを緻密化または圧縮してもよい)、圧密されたマット17’’を提供することができる。図示されているマットは、プラテンの縁部においてすなわち面内方向で比較的拘束されない状態にあり、したがって繊維をポリマーと共にこれらの方向に移動させて、マットの高さ方向に対してより垂直で(高さ方向はZ方向である)かつプラテン表面に対しより平行な配置を繊維に与えることができる。
【0015】
ポリマー・繊維ミックスはあらゆる緻密化ステップ中、面内において拘束されていない状態にあり得ることから、Z方向に対して垂直な圧縮力は全く必要でなく、座屈を発生させずに済む。圧密されたマットは、圧力下で、詳細には軟化温度未満まで、冷却されてもよい。この同じ一連の事象は、加熱されたベルトプレスを用いて、または同様の要領で加熱ゾーンおよびニップロールを用いて、連続的に達成することができる。このプロセスには、ポリマーをいくつかの点で軟化温度より高く加熱するステップが含まれる可能性があり、有意な緻密化が発生する圧力付加の前または後にこれを行なうことができる。複合材料は加圧下で冷却可能である。
【0016】
ベルトプレス先行圧密マットまたは(減量済みプライ)は、結果として、現在のプラテンプレス先行圧密型/減量用プライ方法に比べて非常に平担な製品をもたらす。プライが非常に平担になることで、成形ステップのために減量済みプライを容易に装填することができる。
【0017】
有意な緻密化とは、所望の密度以下でありなお初期密度の10%以上大きい密度までの緻密化を描写するように意図されている。例えば、マットの初期密度が約0.586g/mLであり、単一のマットまたはこのようなマットの積重ねから作られた複合物品の所望の密度が2.1g/mLである場合には、先行圧密されたマットについての50%緻密化の密度は、0.586+[0.50*(2.1−0.586)]=1.343g/mLである。
【0018】
図1Cの圧密されたマット17’’を上述の通りにさらに圧密して、図1Dのさらに緻密化されたマットすなわち複合物品17’’’を形成することが可能である。さらなる圧密のために使用される装置は、初期緻密化のために使用される装置と同じであっても異なっていてもよい。
【0019】
図2は、配向されたマットおよびこのような配向されたマットを含む2つの複合物品の立面図を示す。図2Aは、配向されたマット2001を示す。明確さを期して、繊維は埋込まれた状態で示されている。座標軸セットx−y−z2002は、マットの高さがz軸に対し平行に配向されるように定義されている。繊維2003は、平均してz軸に対し垂直な1方向に沿って整列されているため、その方向をx軸に一致するように割当てることができる。zおよびx軸に対して垂直であるのは、y軸である。
【0020】
図2A内に示されているマットは、2つの切断面(2006および2007)をz軸に対して平行でかつそれぞれyおよびx軸に対して平行になるように、比較的大きいマットから切断されている。このような切断によって、見る者は、繊維2004をxz面2006を通って比較的円形の断面で切断でき、繊維2005をxz面2006を通って比較的楕円形の断面(または究極的にはほぼ平行四辺形)で切断可能であることを認識することができる。
【0021】
図2Bは、図2Aに対応するマットを積重ねて製造できる配向された複合物品の一部分を示している。複合物品は、マット(例えば2022、2023)が異なる配向を有しうること、例えば各々のz軸は平行(高さ方向の積重ね)であるが、各々の直近の接触したマットの繊維配向が直角である状態の配向を有し得ることを示している。繊維配向を直角にして積重ねられた2つの薄いマットを圧密することにより1つのマットが製造される場合、このようなマットまたは類似のマットを各々のz軸が平行である(高さ方向に積重ねられている)状態に積重ねて、図2Bの複合物品を得ることができる。より厚いマットを得るために繊維配向を平行にして積重ねた2つのマットを圧密することによって1つのマットを製造した場合には、このような圧密されたマットまたは類似のマットを各z軸が平行である(高さ方向に積重ねられている)状態で積重ねて図2Bの複合物品を得ることは明らかに不可能であるという点に留意されたい。
【0022】
図2Cは、図2Aに対応するマット(例えば2031および2032)を積重ねることによって製造可能である配向された複合物品2030の一部分を示す。複数のマットのグループ(2037、2039、2035、ここで複数とは3枚のマットである)分類に留意されたい。一部のマットは平行に配位されており、一部は直角に配位されている。この複合物品は、0、0、0、90、90、90度の配位パターンと呼称できる1つの積重ねパターンを示す。
【0023】
マットは、任意の公知の技術によって調製可能である。例えば製紙プロセスを用いて、繊維をポリマーと混合して混合物またはスラリーを形成することができる。任意の混合手段を使用してよいが、好ましくは、繊維構成成分は、およそ0.001%〜5%の稠度または固体含有量で混合される(例えば99.009〜95部分の水溶液または水に対して0.01〜5部分の固体を含む)。次にスラリーを水で希釈して形成を増強してよく、最終的にこれを凝集剤および排水歩留り助剤化学物質を用いて凝集させてよい。その後、凝集した混合物またはスラリーを製紙機上に置いて、場合によっては繊維を配向を伴ってまたは配向なしで、場合によっては製紙プロセス中のマットの移動方向に配向させて、あるいはこの方向に対して垂直な方向に配向させて、湿潤マットを形成してよい。あるいは、スラリーを減圧注型することによって、または他の方法によってマットを形成してもよい。マットは、例えばベルトプレスを用いて、スラリーを脱水することで形成可能である。ベルトプレスメーカーはBright Technologies、Hopkins、Michiganである。マットは、例えばオーブン内、回転ドラム上または空気移動により乾燥させることができる。利用可能な一部の標準的製紙技術のより詳細な説明については、開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第3,458,329号明細書を参照のこと。
【0024】
緻密化は、1本以上の軸上において、同時または連続的であってよい圧縮または他の公知の方法により実施可能である。軸は、x、yおよびz軸など、互いに直交していてよい。緻密化は、プラテンプレス、加熱式プラテンプレス、高温ローラー、赤外線熱または高温ベルトプレスを用いて実施可能である。
【0025】
マットは、長さ、幅または高さの任意の適切な寸法を有していてよい。マットは、高さが1cm超、または高さが0.8、0.6、0.4、0.2、0.1、0.05または0.01cm未満であり得る。
【0026】
緻密化は、100kPaの低い圧力そして100MPaの高い圧力で、かつ約100kPa〜約100MPaの間隔圧力(interval pressure)で実施可能である。
【0027】
緻密化、加熱、冷却またはこれらの組合せは、約0.1、1、2、5、10、20、100分または多くの時間から、最高約135時間またはそれ以上、実施することができる。緻密化および加熱は、バッチ式、ステップ式、不連続または連続プロセスで行なってよい。
【0028】
いずれの緻密化方法も、加工中に繊維の少なくとも一部を破断する可能性があり、破断するかもしれない。したがって、繊維の長さは、削減され得る。通常、長い繊維長を維持することが有利であるが、この最終目的は、複合物品の他の特性が改善された場合、一部の利用分野については譲歩することが有利であるかもしれない。
【0029】
マットを、ポリマー粒子が存在していてよいドライエアーレイなどの他の手段によって製造してもよい。マットは、ドライニードリングにより緻密化されてもよい。マット技術の一部の態様は、開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第6855298号明細書中に提示されている。
【0030】
本発明のポリマーは、フルオロポリマーであり得、本発明の任意のポリマーは、テトラフルオロエチレン、炭素原子が3〜14個のペルフルオロ(アルコキシアルカン)、例えばペルフルオロ(ビニルプロピルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレンの反復単位またはモノマーまたはそれらの組合せ(コポリマー)を含むことができる。
【0031】
不規則なマイクロファイバ構造がそこから伸びている不規則な外周を有するポリマーフレークを生成するために、ディスクリファイニングを利用してよい。ポリマーフレークは水溶液中に繊維と共分散される。スラリーは、繊維とポリマーの合計組成に基づいて約1質量%〜約50質量%の繊維と約50質量%〜約99質量%のポリマーを含む。スラリーが繊維とポリマーの合計組成に基づいて約20質量%の繊維と約80質量%のポリマーを含むことが好ましい。スラリーは次に、繊維を整列させるため、揺動スクリーンに供給される。その後、水が除去されて、Dcより低いDmという密度を有する整列されたマットを提供する。
【0032】
本発明のポリマーはいずれも、加熱時点で、詳細にはポリマーの融点またはガラス転移温度(Tg)より高い温度で、流動可能であってよい。ポリマーは、詳細には軟化後に、繊維を濡らすことができてよい。任意のモノマー群のコポリマーにおいては、いずれのコモノマーの含有量も、ポリマーの約10質量%から99質量%まで変動可能である。
【0033】
本発明のポリマーはいずれも、熱可塑性、熱硬化性またはそれらの混合物または配合物であり得る。本発明のいずれのポリマーも、架橋性あるいは架橋結合されたものであり得る。本発明の組成物は全て、架橋剤を含むことができる。
【0034】
ポリマーのいずれの反復単位またはモノマーも、ポリマーの0.001〜99.999質量%を構成することができる。
【0035】
ポリマーの軟化温度とは、典型的に破断、チッピングまたは分離なくポリマーが緩慢にただし永続的に変形可能な温度である。軟化温度の例としては、融点、融解範囲の最低温度、融解範囲の最高温度またはガラス転移温度が含まれる。
【0036】
粒子は、小片または部分、またはごく小さな部分または薄片である。粒子は、自由流動性であるかまたは繊維に粘着している可能性がある。粒子のタイプには、フレーク、結晶粒、破片、断片、かけら、チップ、ペレット、小粒、削りくずなどが含まれる。
【0037】
繊維には、ガラス;黒鉛;炭素;フッ素化黒鉛;アラミド例えばポリ(p−フェニレンテレフタルアミド);窒化ホウ素;炭化ケイ素;ポリエステル;およびポリアミドで構成されたものが含まれるがこれらに限定されない。炭素、黒鉛およびフッ素化黒鉛繊維が好ましい繊維である。本開示の繊維は、細断することもできる。
【0038】
繊維の中央長は、繊維を含むマットの中央高さよりも長いかまたは短いかまたはそれと同じであり得る。
【0039】
繊維は、当該技術分野において公知の通りにサイジングされてよい。サイズ剤は、例えばエポキシ樹脂またはポリマー、ウレタン修飾エポキシ樹脂またはポリマー、ポリエステル樹脂またはポリマー、フェノール樹脂またはポリマー、ポリアミド樹脂またはポリマー、ポリウレタン樹脂またはポリマー、ポリカーボネート樹脂またはポリマー、ポリエーテルイミド樹脂またはポリマー、ポリアミドイミド樹脂またはポリマー、ポリスチリルピリジン樹脂またはポリマー、ポリイミド樹脂、ビスマールイミド樹脂またはポリマー、ポリスルホン樹脂またはポリマー、ポリエーテルスルホン樹脂またはポリマー、エポキシ修飾ウレタン樹脂またはポリマー、ポリビニルアルコール樹脂またはポリマー、ポリビニルピロリドン樹脂またはポリマー、樹脂またはポリマーおよびそれらの混合物を含んでいてよい。サイズ剤は、溶剤相溶性または水相溶性を有していてよく、溶剤可溶性または水溶性を有していてよい。公知のサイズ剤であるポリビニルピロリドン(PVP)は、モノマーN−ビニルピロリドンから作られた水溶性ポリマーである。公知のサイズ剤は、米国特許出願公開第20080299852号明細書;米国特許第5,393,822号明細書および7,135,516号明細書中に開示されている。
【0040】
ポリマー・繊維複合材料の生産のための1つのプロセスには、不規則な外周から伸びる幾分か不規則なファイバー構造を有する薄いポリマーフレークを共分散させるステップが含まれる。製紙技術によりマットを製造するのに使用されるフレークまたは水中に共分散したフレークと繊維は、200超から、2000という濾水度試験最大値までのカナダ標準濾水度を有することができる。製紙技術によりマットを製造するのに用いられフレークまたは水中に共分散したフレークと繊維は、1〜13000秒以上の沈降時間を有することができる。沈降時間は、水溶液中で測定されるが、マット内で使用されるべき繊維含有量質量比を用いてよい(すなわち、裸眼で識別可能である底面または上面上の新たな層の形成までに観察された、究極的にマットを形成するためにスクリーンに補給するのに適切な一見して均質なスラリーを形成するのに適したポリマー固体の質量に基づいて1%未満)。沈降時間は、約2秒から約12000秒であり得る。
【0041】
任意の実施形態において、マットから大部分の水を除去して、漏れたマットを形成するステップ;層からさらに水を除去して乾燥マットを形成するステップ;層を乾燥させて、自立性平面マットを形成するステップ;任意にはウェブを熱仮付けして取扱いのための乾燥強度を改善し、前記マットをポリマー溶融温度より高い温度に加熱して異なるマットを形成し、次にポリマーを流動させるのに充分な圧力を前記マットの平面に対して垂直に加えることにより前記マットを先行圧密して、先行圧密されたマットを形成するステップ;およびこのマットを冷却するステップ。水性スラリーは、実質的に他の成分を含まない可能性がある。
【0042】
適切なベルトプレスは、例えば、各々全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第3,159,526号明細書、米国特許第3,298,887号明細書、米国特許第4,369,083号明細書、米国特許第5,112,209号明細書、米国特許第5,433,145号明細書、米国特許第5,454,304号明細書、米国特許第5460764号明細書、米国特許第5,520,530号明細書、米国特許第5,546,857号明細書、米国特許第5,555,799号明細書、米国特許第5592874号明細書、米国特許第5759927号明細書、米国特許第5,895,546号明細書において周知である。適切なベルトプレス、詳細には等圧2重ベルトプレスのメーカーは、ドイツのHeld Technologie GmbHである。繊維強化熱可塑性物質のために有用な2重ベルトシステムのメーカーは、オーストリアのBerndorf Band GmbHである。
【0043】
適切なプラテンプレスは、各々全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第5,775,214号明細書、米国特許第5,253,571号明細書、米国特許第5,323,696号明細書および第5,333,541号号明細書において周知である。適切なプレスのメーカーとしては、ドイツのMaschinenfabrik Herbert Meyer GmbH(垂直プレスまたは積層用プレス、例えば圧力が最高20トンで最高673Kの加熱プレートを伴うAPV、Fusing Press AHV−BmまたはAHV−S型)が含まれる。
【0044】
圧縮および加熱の段階を交互適用する適切な方法は、例えば、全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第6,287,410号明細書において公知である。
【0045】
熱を適用する適切な方法としては、マットまたは複合物品を高温表面と接触させること(例えば伝導);高温ガスジェットを使用すること(例えば対流);および放射線を使用すること(例えば赤外線またはマイクロ波放射線);が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
緻密化方法は例えば、全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第6,032,446号明細書において周知である。
【0047】
圧密は、緻密化と同じ条件下で実施され得る。さらに、当該技術分野において公知の通り、軟化温度超の温度または軟化温度未満の温度までの加熱、またはさまざまな組合せでのその両方を、圧密中に、本明細書中に定義されている通りに実施してもよい。したがって、前記方法は第1のマットを提供するステップを含んでいるため、ポリマーと繊維を含む密度Dcの複合物品を製造することが可能である。第1のマットは、薄いマットで構成された物体であってよい。いずれの場合でも、マットは1〜91質量%の繊維「および」9〜99質量%のポリマーを含む。第1のマットは、Dcより低いDmという密度を有する。
【0048】
第1のマットは、第1のマットの少なくとも一部分が前記軟化温度より低い温度にある間に、Dmの1.1倍超でDcの0.999倍未満の密度まで圧縮することによって緻密化される。こうして、圧縮されたマットが提供される。その後、Dmの1.1倍超でDcの0.999倍未満の圧密された密度にある間に、圧縮されたマットはポリマーの軟化温度より高い温度まで全体に加熱される。こうして先行圧密されたマットが提供され、このマットまたはその一部分が次に、ポリマーの前記軟化温度よりも低い温度まで冷却され、圧密されたマットが提供される。
【0049】
複数の圧密されたマットが次に高さ方向に積重ねられて、未圧密物品を提供する。未圧密物品の高さは圧縮され、ポリマーの軟化温度より高い温度まで全体に加熱されて、圧密された複合物品を提供する。圧密された複合物品の少なくとも一部分はポリマーの軟化温度より低い温度まで冷却される。
【0050】
本明細書中に開示されているのは、前記積重ねをポリマーの溶融温度より高い温度まで加熱し、次に、フルオロポリマーを流動させて繊維を前記流れを用いて実質的に層の平面内に配向するのに充分な圧力を、マットが面内方向で拘束されていない間にマットの平面に対して垂直な方向に加えることによって、前記積重ねを先行圧密して、先行圧密されたシートを形成することにより、配向を有する複合物品を製造するための方法である。
【0051】
複合物品は、例えば、ウェハーを保持するためコーターチャンバー内で使用されるスピンチャックなどのチャック、あるいは化学機械研磨(CMP)中にウェハーまたは研磨パッドを保持するためのCMPチャックのために使用することができる。特に好ましいのは、そのz軸を中心として高速で回転させられるチャックであり、この場合、複合材料のx−y平面の強度によりさらに大きな直径またはさらに高い速度の使用が可能となり、より大きいチャックまたはより大きなウェハーまたはより高速の加工またはより頑強な加工が可能である。チャックにおいて同じく好適であるのは、耐変形性を有し、これにより精密加工のためにウェハーを平面位置に保持する複合材料である。複合材料における清浄度(例えば低金属含有量、金属またはイオンの少ないまたは緩慢な溶出)は同様に、スピン、リンスおよび乾燥モジュールおよびチャックを含めた半導体製造用品においても高い評価を受けている。複合材料は、例えばウェハーチャック、サセプターまたはウェハーペデスタルとしても公知である支持構造などの半導体ウェハー用支持構造としても重視されている。半導体製造用品は、例えば、各々全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第7357842号;米国特許出願公開第20090033898号明細書;米国特許第5451784号明細書、米国特許第5824177号明細書、米国特許第5803968号明細書、米国特許第6520843号号明細書において周知である。
【0052】
複合物品は、例えば、全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第7,011,111号明細書において開示されている圧縮弁などの封止要素において有用である。
【0053】
本発明は、簡略化された製造プロセス;頑強でかつ/または再現性のある製品を生産し得る頑強かつ/または再現性のあるプロセス;高密度物品の生産プロセス;高密度物品;特に溶剤または水を含むプロセス用の、より少ない金属、より少ない金属性、イオン性または関連する不純物を有する製品を生産するためのプロセス;繊維長を保つ繊維を使用するためのプロセス;有用な体積全体を通して均一な特性を有する製品を生産するためのプロセス;測定方向の如何に関わらず均一かまたは優れている(または1方向で均一かまたは優れている、あるいは2つの直交する方向で均一かまたは優れている)方向特性(例えば引張り強度、圧縮強度または破断伸び)を有する複合製品を生産するためのあらゆるプロセスなど(を含むものの、ただしこれらに限定されない)の少なくとも1つまたは組合せにおいて有用である。
【0054】
本発明の複合物品は、例えば半導体製造用機器、航空機部品、自動車部品、ガスケット、シールなどの公知の利用分野のために使用可能である。本発明の物品はスピンディスクであってもよい。
【実施例】
【0055】
以下のものに類似する材料ならびに類似の材料および物品を製造するための方法は、全てその全体が参照により本明細書に援用されている「フルオロポリマー複合材料の製造方法」という題で1995年11月28日に発行されDeakyneらに付与された米国特許第5,470,409号明細書、「フルオロポリマー複合材料を製造するための先行圧密化方法」という題で1993年8月3日に発行されDeakyneらに付与された米国特許第5,232,975号明細書、「構造の圧縮成形」という題で1995年6月27日に発行されChesnaらに付与された米国特許第5,427,731号明細書および、「テトラフルオロエチレンポリマーおよび黒鉛繊維から調製される方法および製品」という題で1979年8月7日に発行されMansureに付与された米国特許第4,163,742号明細書中に詳述されている。
【0056】
以下の実施例では、Teflon(登録商標)PFAはE.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington、Delaware)の登録商標であり、同社から入手可能であり、約99モルパーセントのテトラフルオロエチレンおよび約1モルパーセントのペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)を含有するポリマーを含むことができる。
【0057】
使用された炭素繊維CF1は、ポリアクリロニトリル系であり、約6.0mmの長さ、約5〜7ミクロンの直径、およそ200g/Lの嵩密度、およそ4質量パーセントの水相溶性サイズ剤、ASTM D1505によるおよそ1.8g/cm3の炭素密度、ASTM D4018による少なくとも約500ksi(3450MPa超)の引張り強度と少なくともおよそ31.6Msiの引張り係数を有していた。繊維1グラムあたりのナノモル単位で表わした金属含有量についての繊維の元素分析は、ナトリウムについておよそ170000、カリウムについて770、カルシウムについて180、そしてアルミニウムについて22という結果を示した。
【0058】
類似の繊維CF2はより低い金属含有量を有していた。繊維1グラムあたりのナノモル単位で表わした金属含有量についての繊維の元素分析は、ナトリウムについておよそ830、カリウムについて510、カルシウムについて10未満そしてアルミニウムについて3という結果を示した。引張り強度は500ksi超(3.45GPa超)であり、引張り係数は30Msi超(207GPa超)であり、繊維は、CF1よりも幾分か強度が高いように思われた。サイズ剤レベルは3.8質量%であり、サイズ剤は水溶性として特徴づけされた。
【0059】
物理的特性に関してCF2に類似する繊維CF3は同様に、CF2と類似の金属含有量を有していたが、それでも本質的にサイズ剤を含んでいなかった。
【0060】
1タイプのTeflon(登録商標)PFAペレットPFAP1(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマー、CAS26655−00−5)は、およそ305Cの融点、14g/(10分)のフローレートそしてASTM D3307によるおよそ13.8MPaの引張り降伏強さと25Cでおよそ25MPaそして250Cで12MPaの引張り強度、およびおよそ2.15g/mLの比重を有する。
【0061】
PFAP1由来のPFAフレーク(PFAF1)を、Deakyneにより米国特許第5506052A号明細書中で教示されているように、Andritz Sprout(Muncy、PA)により製造されたタイプのディスクミルを用いて作製した。
【0062】
湿潤マットMw1を、米国特許第5506052A号明細書の方法にしたがって20質量%のCF1と80質量%のPFAF1を用いて作製した。
【0063】
Mw1用いて作製された乾燥マットMd1(Mw1の顕著な圧縮の前)は、およそ16.75インチの幅、18インチ超の長さ、約0.12lb/ft2の坪量を有する。
【0064】
Md1用いて作製された凝集性マット(coherent matte)Mc1(Md1の顕著な圧縮の前)は、およそ0.095インチ(および2.4mm、2400ミクロン)の厚みおよびおよそ同じ坪量を有している。
【0065】
先行圧密物品CAp1−24を、凝集性マットタイプMc1の切断部分からプラテンプレス上で作製した。およそ16.5インチの正方形を切断し、もとの長さ方向を書留めた。直近の1つ(上面または底面マットの場合)または2つ(内部マットの場合)の隣接物に対し各々直交して配位された長さ方向でおよそ24個の正方形を互いに積重ねて、厚み約2.2インチの積重ねを生産した。本質的に周囲温度にある積重ねを、温度制御されたプラテンプレスの中に置き加熱して、積重ね全体にわたる温度が310C(583K、590F)となるようにし、その間積重ねに90psi(4310Pa)未満の圧力で厚み(Z)方向に沿って最小限の圧縮を加え、一方長さおよび幅(xおよびy)方向ではいかなる付加圧力によっても拘束しなかった。完全に加熱した積重ねを次にさらに厚み方向に沿って圧縮し、その間に加熱を終了し冷却を開始した。こうして積重ねを約0.285インチの厚みまで圧密し、物品全体の温度を290C(563K、554F)未満まで低下させた。その後、積重ねの温度およびその上の圧力を周囲条件まで削減して、物品CA1−24を得た。
【0066】
CF1に代って炭素繊維CF2およびCF3をそれぞれ置換することにより、CA1−24の場合と同様に、物品CA2−24とCA3−24を作製した。CF3を取込んだ(サイズ剤無し)湿潤マットMw3は、w1およびCF2を取込んだMw2に比べて、加工面および外観が顕著に異なっていた。サイジングした炭素繊維CF2から作製した複合材料は、より優れた引張り強度および外観を示した。
【0067】
加熱式ベルトプレスHBP1またはHBP2を使用して、先行圧密されたマットを作製した。HBP1は、作用幅が約30インチで作用長が約10フィートの連続式デュアルベルトプレスであった。定ギャップの作用高さは調整可能であった。ベルトプレス温度は、複数ゾーン内で調整可能であった。
【0068】
ランBP1において、HBP1の入り口ゾーンを500Fに設定し、内部輸送ゾーンを700Fに設定し、作用長内部の後冷却ゾーンは、このゾーンにおよそ32Fで流入し100F未満で最終冷却ゾーンを退出する水により冷却した。2本のベルトの間のギャップは、プレス内に通された一定長のはんだの退出後の厚みの寸法通り約0.028インチに設定された。両方のベルトに、剥離調合物をコーティングした。高さが約0.095インチの単一のマットシートをプレス内に通して、高さ約0.015インチの先行圧密したマットを連続的に生産した。マットは、毎分12インチでベルトプレス内に補給した。試験BP2では、マットの補給速度を毎分15インチまで上昇させた。
【0069】
試験BP3では、長さを平行に整列させた状態で3枚のマットを連続的かつ同時にベルトプレス内に補給した。2本のベルト間のギャップは、およそ0.084インチであり、先行圧密されたマットの高さはおよそ0.045インチであった。補給速度は毎分12インチであった。試験BP4も同様に、長さを平行に整列させた状態で5枚のマットを連続的かつ同時にベルトプレス内に補給した。2本のベルト間のギャップは、およそ0.10インチであり、先行圧密されたマットの高さはおよそ0.075インチであった。補給速度は毎分12インチであった。
【0070】
各ベルトプレスプロセス(BP1〜4など)に由来する先行圧密されたマットを、別個に複数の部分に切断し、プラテンプレスで作られた材料の場合と同様に互いに直交させて組立て、最終的に以下の通り圧縮した。
【0071】
先行圧密されたマットの積重ねの最終的圧縮を行なって、高さ約6.5インチの最終製品を達成した。
【0072】
1.85g/mLの密度でプラテンプレス上で作製した先行圧密マットは、[16平方インチ上で80トン]により拘束されながら300Cまでの加熱中に膨張してその密度を約1.4g/mLまで低下させることが指摘された。定ギャップベルトプレス上で作製された先行圧密マットは約1.4g/mLの密度を有し、同じ圧力により拘束されながら300Cまでの加熱中に、顕著な膨張を示さなかった。最終的緻密化は、物品プレス内と同一の曝露圧力および温度プロフィール条件下で、定ギャップベルトプレスで作製された再圧密マットの場合、さらに高いものであった。
【0073】
複合物品は、約10ppm/KのXY方向熱膨張係数を有することができ、Z方向での熱膨張係数はXY方向の場合よりも大きいかまたは小さいものであり得る。
【0074】
全ての部分は、別段の指摘のないかぎり、質量部分である。
次に、本発明の態様を示す。
1.ポリマーおよび繊維を含む密度Dcの複合物品を作るための方法であって、
− 前記ポリマーをディスクリファイニングして、不規則なマイクロファイバ構造がそこから伸びている不規則な外周を有するフレークを生成するステップであって、前記ポリマーが軟化温度を有するステップと;
− 繊維とポリマーの合計組成に基づいて約1質量%〜約50質量%の繊維と約50質量%〜約99質量%のフレークを水溶液中に共分散して、スラリーを生成するステップと;− 前記スラリーを揺動スクリーンに補給するステップと;
− 水を除去して、密度を有する整列したマットを提供するステップと;
− 複数の前記整列マットを整列した形で高さ方向に積重ねて、第1のマットを提供するステップと;
− 前記軟化温度より高い温度まで前記第1のマット全体を加熱しながら、Dmの1.1倍超でDcの0.999倍未満の圧縮密度まで前記第1のマットを緻密化して、先行圧密されたマットを提供するステップと;
− 前記先行圧密されたマットの少なくとも一部分を前記軟化温度より低い温度まで冷却して、圧密されたマットを提供するステップと;
− 複数の前記圧密されたマットを高さ方向に積重ねて、未圧密物品を提供するステップと;
− 前記高さを圧縮し、前記軟化温度よりも高い温度まで前記未圧密物品全体を加熱することによって前記未圧密物品を圧密して、圧密物品を提供するステップと;
− 前記軟化温度よりも低い温度まで前記圧密物品の少なくとも一部分を冷却して、前記複合物品を提供するステップと、
を含む方法。
2.前記ポリマーが、フルオロポリマー、および、テトラフルオロエチレン、炭素原子3〜14個のペルフルオロ(アルコキシアルカン)の反復単位またはモノマーを含むポリマーからなる群から選択される、上記1に記載の方法。
3.前記ポリマーが、ペルフルオロ(ビニルプロピルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記2に記載の方法。
4.前記スラリーが前記繊維とポリマーの前記合計組成に基づいて約20質量%の繊維と約80質量%のフレークとを含む、上記1に記載の方法。
5.前記繊維が、ガラス、黒鉛、炭素;フッ素化黒鉛;アラミド、窒化ホウ素;炭化ケイ素;ポリエステル;およびポリアミドからなる群から選択される、上記1に記載の方法。
6.前記繊維が短繊維である、上記5に記載の方法。
7.前記加熱しながらの緻密化ステップが、プラテンプレス、加熱式プラテンプレス、高温ローラー、赤外線熱または高温ベルトプレスを用いて実施される、上記1に記載の方法。
8.緻密化または加熱ステップまたはその両方が、バッチ式、ステップ式、不連続または連続プロセスによって行なわれる、上記1に記載の方法。
9.前記加熱しながらの緻密化ステップが、加熱されたベルトプレスを用いて実施される、上記3に記載の方法。
10.上記1、4または5に記載の方法により製造された物品。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C