(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763653
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】基板の表面を処理する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20150723BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20150723BHJP
B65G 49/06 20060101ALI20150723BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20150723BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20150723BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/68 A
B65G49/06 Z
B08B3/04 B
B08B3/08 A
H01L21/304 643B
【請求項の数】24
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-534595(P2012-534595)
(86)(22)【出願日】2010年7月28日
(65)【公表番号】特表2013-508957(P2013-508957A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2010060985
(87)【国際公開番号】WO2011047894
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】102009050845.7
(32)【優先日】2009年10月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504171628
【氏名又は名称】ゲブリューダー シュミット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141081
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 庸良
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュミット
【審査官】
杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−228467(JP,A)
【文献】
特開2000−153192(JP,A)
【文献】
特表2007−529912(JP,A)
【文献】
特開2004−288746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
B08B 3/04
B08B 3/08
B65G 49/06
H01L 21/304
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な基板の基板表面を基板の下面においてプロセス媒質によって処理する方法であって、プロセス媒質は基板表面に対する除去又はエッチング効果を有し、前記基板は、内部にプロセス媒質を有するタンクの上方を基板の搬送経路の一方から他方へ移動すると共に、水平に配置された方式により、下方からプロセス媒質によって湿潤される、方法において、
上向きの基板上面に対して作用する又はこれに到達するプロセス媒質又はそのガス放出に対する保護として、水又は対応する保護液体により、前記基板上面の全体を湿潤又はカバーし、
前記水又は対応する保護液体を、前記基板が前記タンクの上方を移動する前に前記基板上面に塗布することを特徴とする方法。
【請求項2】
保護液体は、基板下面がプロセス媒質によって湿潤される前に基板上面に塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保護液体は、移動する基板又は基板上面に連続して塗布されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
保護液体は、時間間隔を有するように、基板上面に幾重にも塗布されるか、或いは、新たに塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
保護液体は、基板上面に対して一回塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
保護液体は、基板が塗布装置の下方に位置した際のみにおける塗布の開始により、且つ、基板が依然として塗布装置の下方に位置している際に停止することにより、基板上面に対してのみ塗布されるように制御された状態において基板上面に対して塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
供給される基板の位置を検出し、且つ、これに応じて塗布装置が制御されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
保護液体は、噴霧ノズルにより、二次元的に分布したプロファイルを有するように基板上面に対して塗布されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
保護液体は、前記基板上面の全体をカバーするために、点状の方式で基板上面に対して塗布された後、流れることを特徴とする請求項1〜3、6及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
基板下面がプロセス媒質によって湿潤された際に、少なくとも10℃の温度上昇を伴う発熱反応が発生し、且つ、保護液体の層が基板上面に対して形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記保護液体が少なくとも1mmの厚みを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基板下面がプロセス媒質によって湿潤された際に、温度上昇は無視され、且つ、基板上面上の保護液体の層の厚さは、50μm〜200μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
基板がプロセス媒質の表面に浮いた状態で、基板下面はその内部にプロセス媒質を有するタンク内のプロセス媒質の液体レベルに接触することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基板はプロセス媒質による処理の後に洗い流され、保護液体も基板上面から洗い流されるか又は除去されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
保護液体は、水よりも大きな粘度を有する液体、PEG又は燐酸であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
貫通孔又は穿孔を有する基板が処理されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
いくつかの塗布装置が、基板の連続的通過経路を横断する方向において互いに隣接した状態で配置され、且つ、基板は、列をなして互いに前後に連続的通過経路上に導入され、且つ、それぞれ個別に、1つの塗布装置の真下において連続することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
その内部にプロセス媒質を有するタンクの上方におけるプロセス媒質による基板下面の処理のために搬送される基板の連続的通過経路の上方において、少なくとも1つの塗布装置が、水又は対応する保護液体を上向きの基板上面に塗布するために設けられ、
前記基板は、内部にプロセス媒質を有するタンクの上方を基板の搬送経路の一方から他方へ移動し、
前記水又は対応する保護液体は、前記基板が前記タンクの上方を移動する前に前記基板上面に塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法を実行する装置。
【請求項19】
塗布装置は、その内部にプロセス媒質を有するタンクから基板の搬送経路の上流の方向に離れて配置されることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
塗布装置は、基板の搬送経路の上流の方向にのみタンクから離れて配置されることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
少なくとも1つの塗布装置が、その内部にプロセス媒質を有するタンクの上方に配置され、更なる塗布装置がタンクから基板の搬送経路の上流の方向に離れて配置されることを特徴とする請求項18〜20の何れか一項に記載の装置。
【請求項22】
塗布装置は、塗布装置よりも高いところに位置した供給タンクに対して接続されることを特徴とする請求項18〜21の何れか一項に記載の装置。
【請求項23】
塗布装置の単一の列が、個々の塗布装置が互いに距離をおいた状態で、基板の連続的通過経路を横断する方向において設けられていることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
基板の連続的通過経路に沿って観察した際に、接近する基板の検出と、通過する基板の検出とのために、基板センサが塗布装置の上流に設けられることを特徴とする請求項18〜23のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に従って基板表面を処理する方法と、この方法を実行するのに適した装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、一側において平坦な基板を処理する、更に正確には、基板下面、即ち、下向きの基板表面を処理する方法について開示している。この方法を適用すると、基板の下方における吸引による抽出にも拘わらず、特定の状況において、直接的な接触を通じて、基板上面が、反応ガス又はプロセス媒質からのガス放出の影響をわずかに被る可能性がある。更には、基板の搬送速度、プロセス媒質又は化学薬品の混合物、及び基板表面の状態に応じて、プロセス媒質の望ましくない縁部の回り込み(edge wraparound)が生じる可能性がある。この結果、基板上面が、影響を受け、且つ、光学的に、或いは、更に不都合なことには、機能的に、劣化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005062527(A1)明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005062528(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、導入部において記述した方法及び対応する装置を提供するという目的に基づいており、この方法及び装置によれば、従来技術の問題点を除去することが可能であり、且つ、具体的には、基板の上向きの基板上面が、特にガス放出の形態におけるプロセス媒質の望ましくない且つ有害な影響に対して晒されることを防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項16の特徴を有する装置とによって実現される。本発明の有利な且つ好ましい構成は、更なる請求項の主題であり、これらについては、後程詳述する。尚、以下の特徴のいくつかは、方法についてのみ、或いは、装置についてのみ、記述されている。しかしながら、これとは無関係に、それらの特徴は、方法と装置の両方に適用可能であるものと解釈されたい。請求項の記述内容は、明示的な引用により、本明細書の内容に包含される。
【0006】
基板表面、即ち、基板下面は、通常、液体のプロセス媒質によって処理される。このようなプロセス媒質は、例えば、太陽電池用のシリコン基板の研磨−エッチング又は縁部絶縁のために、基板表面を除去又はエッチングする効果を有する。この場合に、基板は、従来技術において周知である様々な方法によって実行可能な水平に配置された方式により、下方からのプロセス媒質によって湿潤される。本発明によれば、上方に対向する又は方向付けされた基板上面は、水又はなんらかのその他の対応する保護液体により、大きなエリアにわたって、或いは、場合によっては、有利には、エリアの全体にわたって、湿潤又はカバーされる。これは、基板上面に作用する又はこれに到達するプロセス媒質又はこれからのガス放出に対する保護として機能し、従って、基板上面を、いわば、プロセス媒質又はこれからのガス放出から隔離することができる。即ち、水又は保護液体は、基板上面がプロセス媒質によって損傷しないように、基板上面上に保護層を形成する。保護層又は保護媒質としての水又はなんらかのその他の保護液体などの液体の利点は、液体は、容易に塗布可能であると共に容易に再度除去可能であり、且つ、基板上面の機械的な劣化が、即ち、引っ掻き傷やこれに類似したものが、発生しないという点にある。更には、水又は一般的には保護液体は、有利には、基板上面との間におけるなんらの反応も、なんらかのその他の不都合な劣化もが、まったく発生しないように、選択することができる。最終的に、基板上面から流れ落ちる水又は対応する保護液体がプロセス媒質に流入可能であるとと共に恐らくは実際にプロセス媒質を希釈するように、水又は保護液体をプロセス媒質の選択肢との間において調整することも可能である。但し、少量であるため、プロセス媒質の効果において発生する、一般的には、エッチングの効果において発生する不都合な劣化は、わずかなものに過ぎないか、或いは、さもなければ、まったく発生しない。この観点においては、更に後述することとする。
【0007】
有利には、基板、即ち、基板下面がプロセス媒質によって湿潤される前に、保護液体を基板上面に塗布することができる。具体的には、保護液体の塗布は、場合によっては、基板が、その内部にプロセス媒質を有するタンクの上方を移動する前に、即ち、時間的に明らかにその前に、或いは、搬送経路上において、タンクの約0.5メートル以下だけ上流において、実行される。これにより、まず第1には、流れ落ちる保護液体が、その内部にプロセス媒質を有するタンクに実際に流入することができないという状況が実現される。タンクの上方におけるプロセス媒質による処理が継続する数秒又は数分という通常の時間にわたって、基板上面に対する保護液体の一回の塗布で十分であろう。
【0008】
本発明の更なる構成においては、保護液体は、移動している基板、即ち、その基板上面に対して連続的な方法により、塗布される。これは、有利には、噴霧ノズル又は噴霧パイプの形態における静止した塗布装置により、但し、有利には、わずかな圧力によって、例えば、サージパイプにより、実行することができる。基板上面上における望ましい液体の量又は液体薄膜の厚さについて、供給量を容易に設定することができる。
【0009】
多くの場合に、保護液体は、基板上面に対して1回だけ塗布することで十分であろうが、有利には、保護液体を基板上面に幾重にも又は時間間隔を有するように塗布することも可能であり、或いは、これにより、形成される保護薄膜を更新してもよい。又、これは、例えば、基板が、その内部にプロセス媒質を有するタンクの上方を移動している間に保護液体を塗布することによって実行することもできる。この場合には、可能な限り少ない保護液体がタンクに流入するように、塗布を非常に正確に実行することが可能であり、又は特定の区切られた領域を提供することも可能であり、或いは、基板が再度引き戻されるが、これは、一般には、複雑に過ぎよう。
【0010】
代替肢として、保護液体を基板上面に対して1回のみ塗布することが可能であり、且つ、これは、具体的には、基板が、その内部にプロセス媒質を有するタンクの上方に位置する前に行われる。この保護液体は、基板上面上にのみ存在するように制御された方式により、基板上面に対して塗布することができる。これは、基板が塗布装置の下方に位置している際にのみ塗布を開始することによって可能である。同様に、塗布は、基板が依然として塗布装置の下方に位置している際に停止される。好ましくは、供給される基板(adducted substrate)の位置及び調節が基板センサによって検出され、且つ、これに応じて塗布装置が制御される。或いは、この代わりに、基板の位置は、基板のアプリケーションに基づいて算出され、且つ、これを塗布ノズル用の装置の制御装置に対して伝達することができる。この結果、保護液体の層を形成することが可能であり、この層は、基板の縁部から滴り落ちることがなく、従って、基板をプロセス媒質によって処理することができる。
【0011】
前述の相応して設計された塗布装置によれば、本発明の一構成においては、二次元的に分布したプロファイルを有するように、保護液体を基板上面に塗布することができる。この目的のために、二次元的に分布した噴霧ミストを生成するように、例えば、噴霧ノズルとして、或いは、幅の広い水のスクリーンを生成するように、サージパイプとして、対応する塗布装置を設計することができる。これは、第1には、プロセス媒質を有するタンクの上方における移動の前に保護液体によって基板上面をカバーするのに適している。更には、保護液体がプロセス媒質との間になんらの不都合な相互作用をも有していない場合には、保護液体の容易な塗布が可能となる。
【0012】
保護液体の基板上面に対する2次元的に分布した塗布の代替肢として、これは、二次元的に分布したプロファイルにより、即ち、点状に、実行することができる。従って、これは、1つ又はいくつかの塗布装置から、相対的に点状の方式により、保護液体が基板上面上に噴霧又は滴下され、且つ、次いで、流動することを意味している。従って、最終的に、基板表面を、大きなエリアにわたって又はエリアの全体にわたって、カバーすることが可能であり、この場合に、基板上面の既知の特性と保護液体の温度及びその特性が付与された場合に、わずかな割合のみが基板上に溢れて下方のプロセス媒質に流入することができるように、その量を相対的に正確に判定することができる。
【0013】
この方法においては、基板下面がプロセス媒質によって湿潤又は処理される際に、少なくとも10℃の温度上昇を伴う発熱反応が発生するようにしてもよい。これにより、有利には、例えば、水の場合には、0.5mm超、又は1mm超、最大で1.5mmの、且つ、更に大きな粘度を有する保護液体の場合には、更に大きな厚さを有する保護液体の比較的厚い層を基板上面に塗布することができる。この結果、保護液体の相当の部分が、温度上昇の結果として気化することが可能であり、且つ、十分に効果的な保護層が依然として留まることができる。
【0014】
或いは、この代わりに、プロセス媒質による基板下面の処理の際の温度上昇を省略することも可能である。この場合には、例えば、0.2mm未満の、或いは、場合によっては、実際には薄い薄膜に過ぎない0.05mm未満の基板上面上における保護液体の格段に小さな層厚さで十分であろう。但し、保護液体は、この場合にも、前述の厚さを有することも可能である。
【0015】
本発明の更なる構成においては、処理の際に、基板が更に深く浸漬することなしに、基板下面がタンク内のプロセス媒質の液体レベルに接触するようにしてもよい。この結果、基板は、いわば、プロセス媒質の表面上に浮遊することができる。この場合には、保護液体が存在しない場合には、プロセス媒質が、基板の縁部に付着し、且つ、恐らくは、場合によっては、基板上面に到達して、対応する不都合な結果をもたらすリスクが存在することになろう。或いは、この代わりに、基板下面にプロセス媒質を噴霧することも可能であるが、この場合には、上向きに噴霧されたプロセス媒質が基板の外側縁部を上向きに通り過ぎ、且つ、次いで、少なくとも縁部領域内において基板上面上に降下するというリスクが更に大きい。このような下方からのプロセス媒質による基板下面の噴霧の場合には、過剰に塗布された量の保護液体が基板から滴下した場合にも、基板下面に対して噴霧されるプロセス媒質と必ずしも結果的に混合されないため、あまり問題にはならない。次いで、保護液体は、恐らくは、共通収集タンクに流入し、恐らくは、そこで、保護液体を分離することが可能であり、或いは、その代わりに、プロセス媒質は、対応する処理により、望ましい濃度を維持して存在することができる。
【0016】
プロセス媒質による基板の処理の後に、前述の基板を洗い流すことができる。この場合には、保護液体も、基板上面から洗い流すか又は除去してもよい。
【0017】
更には、この場合には、本発明の更なる態様によれば、貫通孔又は穿孔を有する基板を、基板下面上におけるエッチングプロセスの最中に基板上面に到達するエッチングの影響から、いわば、保護することもできる。これによれば、主には、穿孔の周りの領域が脅かされる。従って、プロセス媒質の縁部の回り込み又は上方からの降下からのみならず、例えば、毛管現象に起因して穿孔を通じて上昇するプロセス媒質からも、基板を保護することができる。
【0018】
水又は純水以外に、適切な保護液体は、相対的に大きな粘度を有するものである。その一例は、水の粘度の2倍から3倍を超える粘度を有するPEGであり、或いは、保護液体として、燐酸の場合には、例えば、最大で3.8倍の粘度を有する。又、燐酸は、特に、水の場合に存在するように、濃度勾配のために、一例として燐酸及びHFを有するエッチング溶液が、穿孔された基板の場合に、毛管現象からのみならず、濃度勾配にも起因して、引っ張り上げられる状況を防止することができる。
【0019】
その他の保護液体は、更に改善された保護効果又は層厚さのために、更に格段に大きな粘度を有することができる。更に大きな粘度によれば、保護液体は、いわば、多少、流れにくくなり、従って、基板上面から容易に流れないという状況が実現される。
【0020】
好ましくは、いくつかの塗布装置が、基板の連続的通過経路を略横断する方向において互いに隣接した状態で設けられる。基板は、好ましくは、列をなして互いに前後に連続的通過経路上に配置することが可能であり、且つ、これらの基板のそれぞれは、1つの塗布装置の真下を通過する。
【0021】
本発明による装置においては、実際に、基板の連続的通過経路の上方において、有利には、ノズルの形態で塗布装置を設けるようにしてもよい。基板は、その内部にプロセス媒質を有するタンクの上流にのみ、タンクの上方にのみ、或いは、タンクの上流及びタンクの上方の両方に、配置することができる。有利には、塗布装置は、互いに並んだ状態にある基板のサイズ、数、及びスループット速度に対して適合させることが可能であり、これにより、保護液体が、基板上面に対して、過剰ではなく望ましい程度にのみ、或いは、わずかに過剰な程度にのみ、塗布されるように、設計される。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つの塗布装置は、その内部にプロセス媒質を有するタンクの上流に配置され、特に好ましくは、塗布装置の単一の列が、基板の連続的通過経路を横断する方向において設けられる。塗布装置は、互いに距離を有しており、具体的には、この距離は、少なくとも基板の幅である。
【0023】
塗布装置に液体を供給するために、塗布装置を、塗布装置よりも高いところに位置する供給タンクに接続可能である。これにより、重力に起因し、連続的な圧力を有する塗布装置への保護液体の流入を得ることができる。
【0024】
本発明の一実施形態においては、接近する基板の検出及び通り過ぎる基板の検出のために、基板の連続的通過経路に沿って観察した際に、塗布装置の上流に、基板センサが設けられる。好ましくは、これらは、光学センサである。
【0025】
これらの及び更なる特徴については、請求項からのみならず、以下の説明及び添付図面からも明らかとなり、個々の特徴は、それぞれ個別に、それ自体により、或いは、本発明の一実施形態における及びその他の分野におけるサブ組合せの形態においては、複数のものにより、実現することが可能であり、且つ、有利であると共に本明細書において保護が主張されている本質的に保護可能な実施形態を構成することができる。本出願の個々の節及び副題への再分割は、本出願において実行されている主張の一般的な有効性を制限するものではない。
【0026】
本発明の例示用の実施形態は、添付図面に概略的に示されており、以下、これらについて詳細に説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】保護薄膜としての水が基板上面に塗布されている際の基板下面の処理のための本発明による装置の側断面図を示す。
【
図3】少ない数の塗布ノズルと、上流の基板センサと、を有する本発明による代替装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明による装置として、側断面における装置11を示しており、装置11は、タンク13を有し、タンク13の内部には、エッチング溶液15がプロセス媒質として存在している。下向きの基板下面21と、上向きの基板上面22と、を有する基板20が、搬送ローラー24から構成された連続的通過経路上を左から右に搬送される。次いで、基板は、タンク13の上方において、搬送ローラー24上を通過する。導入部に記載された独国特許出願公開第102005062527(A1)号及び独国特許出願公開第102005062528(A1)号に開示されているように、第1の可能性によれば、その下部領域によってエッチング溶液15内に達している搬送ローラー24により、エッチング溶液15が基板下面21に塗布されることになる。フレッシュな又は調整されたエッチング溶液15は、供給パイプ16を介してタンク13に導入される。搬送ローラー24による基板下面21の湿潤の代わりに又はこれに加えて、上向きの噴霧ノズル18を有する噴霧パイプ17を設けることもできる。この場合には、エッチング溶液15を基板下面21に噴霧することができる。
【0029】
更には、これに加えて、独国特許出願公開第102005062527(A1)号に従って、エッチング溶液15から放出されるガスの吸入抽出用の手段をエッチング溶液の表面の上方及び基板の搬送プレーンの下方に設けることもできる。
【0030】
明らかに基板20がタンク13の上方に導入される前に、基板には、基板の上方に配置された塗布ノズル26によって水が噴霧され、この水は、基板上面22上に保護薄膜29を形成する。この場合に、水27による噴霧は、有利には、二次元的に実行することが可能であり、或いは、塗布ノズル26が基板20の幅全体にわたって延在することも可能である。互いに数cmの距離において配置することができる塗布ノズルの代わりに、孔又はスロットを有する前述のサージパイプを使用することもできる。基板20が塗布ノズル26の下方を通過する際に、基板上面22の全体が水27によって噴霧又は湿潤され、且つ、これにより、エリア全体に及ぶ保護薄膜29が形成される。特に、エリア全体にわたって実行される場合には、噴霧の利点は、この場合には、基板上面22の全体が保護薄膜29によってカバーされることが結果的に保証されるという事実にある。水27が単一の場所からのみから放出されるようになっている場合には、一例として、基板上面22上の汚染領域又はこれらに類似した領域が湿潤又はカバーされず、従って、その結果、保護されないという事態が発生することになろう。有利には、塗布ノズル26又はサージパイプには、1つの基板当たりに3つの孔が設けられる。
【0031】
次いで、エッチング溶液15がタンク13の上方において既知の方式によって基板下面21に塗布された場合に、基板上面22は、依然として保護薄膜29によってカバーされており、且つ、従って、効果を有するエッチング溶液15から保護されている。例えば、水27が流れ去るか又はエッチングの際の高温の結果として部分的に気化したために基板上面22の領域が露出するか又は保護薄膜29がもはやここに存在しなくなる状況を防止するために、更なる塗布ノズル26’により、水27を再度塗布することができる。第1に、この追加の塗布ノズル26’は、タンク13の上流の塗布ノズル26のように設計することが可能であり、即ち、かなり二次元的に分布した相対的に微細な噴霧ミストを生成するか又は基板上面22のエリア領域をカバーすることが可能である。
【0032】
但し、エッチング方法の実行の際に保護薄膜29が恐らくはその位置において既に薄くなっているが依然として存在するように塗布ノズル26’を構成する場合には、任意の形態において水27を再供給することで十分である。この結果、保護薄膜29が、いわば、薄くなり過ぎるか又はその位置に存在しなくなるという状況を防止することができる。第2の可能性によるこのような基板上面22への水27の点状塗布の利点は、噴霧を実行する必要がないという点にあり、その理由は、そのような噴霧の際には、水27の一部が基板20からタンク13に必然的に流入するためである。但し、基板20の外側縁部における滴下を防止することはできない。しかしながら、滴下可能なのは、非常にわずかな量のみであり、即ち、非常にわずかな量のみの滴下を回避することは不可能であるが、結果的に、エッチング溶液15の希釈は、ほとんど発生せず、且つ、その結果、エッチング効果は、ほとんど劣化しない。主には、エッチング溶液15が噴霧ノズル18を有する噴霧パイプ17に適用された場合には、水27によって希釈されない方式により、エッチング溶液を供給することができる。
【0033】
図2の拡大図は、第1に、独国特許出願公開第102005062528(A1)号に従ってエッチング溶液15が左側の搬送ローラー24によって基板下面21に塗布される様子を示している。この結果、エッチング溶液15を有するある種の層が基板下面21上に形成され、この層により、下面においてエッチングプロセスが実現される。噴霧ノズル18を有する噴霧パイプ17が右側に示されており、この噴霧ノズルは、エッチング溶液15を基板下面21に対して噴霧する。この場合に、この図は、右側において、噴霧されたエッチング溶液15の一部が、基板20を越えて噴霧されており、且つ、恐らくは、右側に並んだ状態において移動している又は配置された隣接する基板の基板上面22上に落下する可能性がある様子を示している。但し、前述の基板上に存在している水の保護薄膜が、不都合な劣化を防止することができる。
【0034】
更には、この図は、水27の一部が、その左側及び右側において基板20から滴下する様子をも示している。この水27は、タンク13内のエッチング溶液15に流入し、これにより、このエッチング溶液を多少希釈する。但し、この水量は、特にエッチング溶液の量との関係において、非常に小さくなるため、この状況は、実質的に無視することが可能であり、或いは、エッチング溶液15の混合物を調製する際に、相応して考慮しておくことができる。
【0035】
更には、基板下面21に塗布されたエッチング溶液15が必ずしも水27と直接的に混合するわけではないことから、基板上面22に保護薄膜29として水27を相対的に大量に塗布しても、これが必ずしも有害ではないことを
図2から観察することができる。
【0036】
ここで、恐らく、基板20の縁部のエリアは、保護薄膜29を有しておらず、即ち、水27が実際に縁部エリア上に溢れておらず、且つ、これらのエリアをカバーしていない場合には、これらのエリアは保護されないことになる。しかしながら、縁部においては、エッチング溶液15によって生成される効果又は損傷は、非常に小さいか又は無視することが可能であり、且つ、従って、前述の縁部のエリアは、保護する必要がない。
【0037】
水の代わりに、例えば、PEG、即ち、ポリエチレングリコールなどのなんらかのその他の液体を保護薄膜として使用することもできる。PEGは、化学的に不活性であり、且つ、望ましくない方式によって基板20と反応することがなく、従って、エッチング溶液15の効果を劣化させることもない。又、燐酸を保護液体として塗布することも可能であり、燐酸は、例えば、太陽電池用のシリコンウエハなどの基板を不都合に劣化させることがない。その相対的に大きな粘度は、主に、基板が前述の穿孔又は貫通孔を有する場合に、好適である。
【0038】
塗布ノズル及び/又はサージパイプの正確な設計、具体的には、それらがエッチング溶液15を有するタンク13の上方に配置されるのか及びそれらの数と、その正確な局所的な構成とは、それぞれのエッチングプロセス又は処理ステップに対して適合させることができる。この目的のために、一例として、運動可能な塗布ノズル及び/又はサージパイプを設けることも可能であり、或いは、原則的に、それぞれ個別に、構造的に設けられた多数のもののうちのいくつかのもののみが使用される。
【0039】
図3には、代替装置111の平面図が示されている。その内部にエッチング溶液115を有するタンク113の上流において、
図1のものに類似した搬送ローラーから構成された連続的通過経路上を4列の基板120が移動しており、これらの搬送ローラーは、この図には示されていない。例えば、6列などのように、更に少ない数の又は更に多くの数の列が存在することも可能である。タンク113の上流には、ノズルパイプ125が、連続的通路経路を横断する方向において延在しており、且つ、4つの塗布ノズル126を有する。これらのノズルには、それぞれ個別に、電磁弁及びノズル開口部が設けられており、これらについては、当業者に周知であり、従って、更なる説明は不要である。塗布ノズル126の幅は、基板120の幅未満である。塗布ノズル126の相互の距離は同一であるが、これは必須ではない。
【0040】
ノズルパイプ125は、流体を伝達する方式によって供給タンク128に接続されており、このノズルパイプを通じて、基板上面122に塗布するための水127が供給される。塗布ノズル126の上方の高さのレベルに供給タンク128を配置することにより、水127は、それぞれ、自動的に又は自主的に、供給タンクから流出し、且つ、塗布ノズル126の電磁弁を開閉することにより、それぞれ、水の流れが変化するか、或いは、水の容積が同一状態に留まる。即ち、特に、相互に相殺するように塗布ノズル126の電磁弁を作動させた場合には、圧力の変動を回避することができる。
【0041】
更には、基板センサ131が設けられている。この場合には、これらは、一例として、ノズルパイプ125に取り付けられているが、ノズルパイプとは別個に支持することもできる。基板センサ131は、基板120の到着、通過、及び離脱を検出する。これらのセンサは、例えば、具体的には、基板120の前部縁の接近と後部縁の離脱を検出する光の関所としての光学センサであってよい。装置111の図示されていない制御装置は、基板センサ131の信号を受信し、且つ、次いで、基板上面が塗布ノズルの下方に位置した場合にのみ基板上面122上への水127の塗布が発生するように、それぞれ、塗布ノズル126又はその弁を作動させることができる。これにより、水127が基板上面122にのみ実際に塗布されることが保証される。これは、この場合に、二次元的に分布した保護薄膜128が形成されるが水が側部縁から溢れて滴り落ちないように、水の量を制限することができるようにするためである。一方、エッチング溶液115は、この結果、タンク113上において水と混合されず、即ち、水によって希釈されない。一方、エッチング溶液115は、自由であることから、基板120の側部縁に対して作用することもできる。水の表面張力に起因して、
図1及び
図2にも示されている水127のクッション又は層が形成される。恐らくは、親水性の基板上面122を有する基板120を使用することも可能であり、これは、この効果を更に向上させるように機能する。但し、水127は、基板上面1222に対して一回のみ塗布される。
【0042】
容易に想起可能である本発明の代替実施形態においては、基板センサ131が省略されており、且つ、装置111の制御装置が、上流において接続されている基板の供給装置のデータから、これらの基板が塗布ノズル126の下方に正確に位置する時点を算出することができる、この結果、高精度に且つ正確に狙いを定めた水127の基板上面122上への塗布を実行することができる。又、更に重要なことには、塗布ノズル126及び基板センサ131は、互いに隣接した状態で設けることも可能であり、この結果、異なる方式で配置された基板の場合にも、それらの上方において最も中央に配置された塗布ノズルにより、水を基板上面上に正確に塗布することができる。