特許第5763657号(P5763657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763657PET熱可塑性ポリマー物品、およびそのような物品の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763657
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】PET熱可塑性ポリマー物品、およびそのような物品の作製方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20150723BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150723BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K3/00
   C08K5/098
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-535911(P2012-535911)
(86)(22)【出願日】2010年11月2日
(65)【公表番号】特表2013-509478(P2013-509478A)
(43)【公表日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】FR2010052345
(87)【国際公開番号】WO2011051640
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2012年9月18日
(31)【優先権主張番号】0957675
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パスカル クイレリー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル デモリス
(72)【発明者】
【氏名】エリック ゲントン
【審査官】 福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−064352(JP,A)
【文献】 特開平07−278416(JP,A)
【文献】 特表2008−506012(JP,A)
【文献】 特表2004−518797(JP,A)
【文献】 特開2003−141491(JP,A)
【文献】 特開2001−206955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成型機(1)内で射出成型することによって物品を作製する方法であって、
a)ポリエチレンテレフタレートを含む熱可塑性ポリマー組成物(40、41)をホッパ(31)内へ導入し、少なくとも1つの色素のマスターバッチ(50、51)をタンク(32)内へ導入するステップと、
b)前記熱可塑性ポリマー組成物(40、41)および前記マスターバッチ(50、51)を、前記ホッパ(31)および前記タンク(32)と連通する射出シリンダ(2)内へ、投与装置(30)を介して同時に射出するステップと、
c)前記熱可塑性ポリマー組成物(40、41)および前記マスターバッチ(50、51)に可塑性を与えて、前記射出シリンダ内に溶融プラスチック材料(60、61)を形成するステップと、
d)前記溶融プラスチック材料(60、61)を型(7、71、72)へ移すステップと、
e)前記型(7、71、72)を加圧して、前記成型された物品を形成するステップと、
f)制御された温度で前記型(7、71、72)を固定させ、前記成型された物品を硬化して取り出すステップと、
を含み、
前記ホッパ(31)内へ最初に導入される前記熱可塑性ポリマー組成物(41)は、5%以下のフィラーを含み、残留水の割合が前記組成物の総重量に対して0.02%以下である非溶融混合樹脂の形態にあり、
前記マスターバッチは、ポリブチレンテレフタレートを含み、
前記マスターバッチ(51)だけが、前記色素(複数可)に加えて、少なくとも1つの核形成剤を含有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記核形成剤は、安息香酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、射出成型物品の形態にあるポリエチレンテレフタレート(PET)ベースの熱可塑性ポリマー材料に関する。本発明はまた、そのような物品を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品、特に台所用品は通常、多数の利点があり、特に射出成型することが可能なポリアミドベースの(PA)材料から構成される。しかし、ポリアミド(PA)は、200℃を上回る温度(揚げ物をする条件)を受けると熱酸化のために黄ばみ、また温度を70℃、すなわちPAのガラス転移温度を30℃上回る温度に引き上げる皿洗い機内で着色されるという欠点を有する。実際、ガラス転移温度を30℃上回ると、ポリマーは通常、色素拡散の影響を受けやすくなるのに十分な自由体積を有する。このため、PAは、皿洗い機内に着色性の食材(たとえば、ニンジン、トマト、またはブルーベリー)が存在すると影響を受けやすい。
【0003】
スパチュラは食材に直接接触する台所用品であるため、黄ばみまたは着色の問題があればそれは、衛生上不十分であることを示すと消費者に捉えられるため、不都合である。このため、ポリアミド(PA)の台所用品の製造者は、着色に関するこれらの問題を克服するために、暗い色を有するラインだけを開発するようになる。
【0004】
したがって、ポリアミドの代わりに、着色または黄ばみを生じない、より安価な材料を用いることが望ましい。
【0005】
代用の材料として、ポリアミドよりはるかに安価で、ポリアミド(融点255℃)と同等の熱抵抗を有する熱可塑性ポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET)が知られている。さらに、このPETのガラス転移温度(80℃)は、皿洗い機内での耐着色性に優れていることを示す。さらに、PETの熱安定性は、PAのものより優れており、高温下での黄ばみを制限する。したがって、明るい色の使用が可能である。
【0006】
スパチュラの作製には必ず射出成型を必要とし、それだけで不定の厚さの形態が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許第2552095号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PETなどの熱可塑性材料の射出成型では、PETは通常、すぐに射出できる顆粒、すなわち溶融混合された顆粒の形態(この形態で市販)で使用される。これらの顆粒は通常、一方ではPET樹脂からなり、他方では、特に離型タイプの射出および核形成に必要な添加剤からなる。PETの溶融混合(プラスチック材料および添加剤を溶融させる混合方法)では、PETを溶融状態に遷移させる。そのため、0.02%未満の残留水分量を得て、溶融状態でのポリマーの加水分解を防止するには、完全な乾燥が必要である。この加水分解は、製品の機械的な特性にとって有害な、分子質量を低減させることを意味する。したがって通常、PETの溶融混合前に、160℃で6時間の乾燥サイクルが必要とされる。これが、PET樹脂がPA樹脂より経済的であるにもかかわらず、PET溶融混合物のコストがPA溶融混合物に対してより高い理由である。
【0009】
この分野では、PETと、核形成剤(たとえば、安息香酸)と、高い分子量を有するポリカプロラクトンおよび不飽和のエポキシド化トリグリセリドと、その存在が暗に溶融混合動作を指すガラス繊維などの充填剤とを含む成型組成物について記載している特許文献1が知られている。特許文献1は成分の混合が押出機上で実行されると教示し、これが溶融混合の実際の定義であるため、この文献は明示的(explicit)でもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の欠点のすべてまたはいくつかを克服するため、ここで本出願人は、PET溶融混合物を使用しないで行うことを可能にする熱可塑性ポリマー組成物を射出成型する方法を開発した。この方法は、変圧器によって通常使用されるタイプの乾燥器で乾燥された簡単な非溶融混合PET樹脂、ならびにポリブチレンテレフタレート(PBT)中に分散されることが有利な色素および少なくとも1つの核形成剤(ならびに任意選択で、射出の成功に必要な添加剤、すなわち離型、結晶化、熱安定化、有機および無機の充填剤)を含むマスターバッチを開始製品として実施する。そのような開始材料を用いて、本出願人は、PET物品の射出成型を可能にする方法を開発した。
【0011】
より具体的には、本発明は、熱可塑性ポリマー材料からなる射出成型物品であって、
− ポリエチレン−テレフタレート(PET)マトリクスと、
− 少なくとも1つの色素および少なくとも1つの核形成剤であり、前記PETマトリクス中に分散される色素および添加剤と
を含み、
前記熱可塑性ポリマー材料は、前記物品の総重量に対して5重量%以下の無機充填剤を含み、
前記物品は、0.2mmから10mmの間で変わる一定でない厚さを有し、少なくとも2つの隣接する領域は、少なくとも10%の厚さの差を有することを特徴とする射出成型物品に関する。
【0012】
本発明では、少なくとも2つの隣接する領域が少なくとも10%の厚さの差を有する物品とは、図4および5に示すもののような物品を意味する。
【0013】
本発明によるポリマーは、ポリマー材料中の核形成剤(ポリマーの結晶化を促進する)の存在のため、部分的に結晶化される。
【0014】
核形成剤の例として、具体的には、タルクおよびシリカなどの無機核形成剤、高分子量カルボン酸などの有機核形成剤、または安息香酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩を挙げることが可能である。イオノマー樹脂も挙げられる。本発明では、安息香酸ナトリウムが使用されることが好ましい。
【0015】
本発明では、無機充填剤とはミネラル源の任意の不活性物質を意味し、熱可塑性材料に添加され、その機械的、電気的、または熱的特性を実質的に改質することができ、または表面の外観を改善することができる。
【0016】
ポリマーを補強するために従来使用されており、本発明では物品の総重量に対して5重量%に制限される無機充填剤の中では通常、珪灰石およびガラス、ならびに炭素繊維、タルク、ビード(固体または中空)、粘土、およびCaCO3などの高拡散量の無機充填剤の溶融混合物が区別される。
【0017】
本発明による熱可塑性材料のPETマトリクスは、ポリエチレンテレフタレート(PET)に加えて、PETマトリクス内での添加剤および色素の分散を促進するために、第2の熱可塑性樹脂を含むことが有利である。
【0018】
この第2の樹脂は、ポリエステル樹脂であることが有利である。しかし、ポリカーボネートまたはポリアミド樹脂を使用することも可能である。
【0019】
ポリエステル樹脂は、PETに類似の化学構造がPET中で融和性があるため、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であることが特に有利である。さらに、PBTの比較的高い融点(約220℃)は、マトリクスの全体的な融点(約250℃)に影響を与えない。
【0020】
本発明では、融点、または初期状態でガラス転移温度が130℃を上回ることが好ましいという条件で、ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂(具体的には、ポリカーボネートおよびポリアミド樹脂)、ならびにPETおよびPBT以外のポリエステル樹脂を使用することができる。実際には、この部分は、制御温度が140℃である型の中で凝固する。この部分がこの温度で完全に硬化しない場合、取り出すのがますます困難になる。たとえば、分散剤としてポリエチレンを使用すると、ある部分がこの温度で十分なほど硬化しないために型に付着し、または取り出し中に変形し、離型上の問題を招く。
【0021】
PBTが分散剤として使用されるとき、材料の総重量の1から10重量%を占めることが有利である。実際には、本発明者は、そのような量のPBTが、マトリクス内での添加剤および/または色素の分散をさらに改善できることに注目した。PBTの含有量が10%を上回ると、添加剤および色素と溶融混合されたPBTはPETより高価になるため、経済的に不利であり、一方、PBTが1%を下回ると、PBTの量は、何らかの効果を有するには不十分である。
【0022】
本発明による前記熱可塑性材料は、核形成剤に加えて、射出成型のための他の添加剤を含むことが有利である。
【0023】
本発明によって使用できる添加剤(核形成剤以外)として、具体的には、熱安定剤、離型剤、潤滑剤、および無機または有機充填剤を挙げることができる。
【0024】
熱安定剤の例として、具体的には、ヒンダードフェノール系の1次酸化防止剤、および2次芳香族アミン類、2次酸化防止剤(チオエーテル類、チオエステル類、ならびに亜リン酸塩類)を挙げることができる。
【0025】
離型剤の例として、具体的には、シリコーン類、特にシリコーン油を挙げることができる。
【0026】
潤滑剤の例として、具体的には、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸塩、またはパラフィン、ポリエチレン(改質または未改質)、エステル、およびモンタン酸の蝋を挙げることができる。
【0027】
充填剤の例として、具体的には、PTFE、PPS、もしくはPA粉末などの有機充填剤、またはタルク、炭酸カルシウム、珪灰石、硫酸バリウム、カオリン、黒鉛、雲母、シリカ、およびケイ酸塩などの無機充填剤を挙げることができる。
【0028】
本発明によって熱可塑性材料中で使用できる無機または有機色素(可溶性または不溶性)として、具体的には、二酸化チタン、金属イオンの酸化物、水酸化物、および硫化物、アゾ基を有する分子、フタロシアニンおよびアントラキノン系、ならびにカーボンブラックを挙げることができる。
【0029】
本発明による物品は、台所用品、たとえばスパチュラもしくは蓋つまみ、または保存容器(たとえば、チーズ用の大皿容器)の一部分であることが好ましい。
【0030】
最後に、本発明は、射出成型機内で成型することによって物品を作製する方法であって、
a)ポリエチレンテレフタレートを含む熱可塑性ポリマー組成物をホッパ内へ導入し、少なくとも1つの色素のマスターバッチをタンク内へ導入するステップと、
b)熱可塑性ポリマー組成物およびマスターバッチを、前記ホッパおよび前記タンクと連通する射出シリンダ内へ、投与装置を介して同時に射出するステップと、
c)熱可塑性ポリマー組成物およびマスターバッチに可塑性を与えて、射出シリンダ内に均質な溶融プラスチック材料を形成するステップと、
d)溶融プラスチック材料を型へ移すステップと、
e)型を加圧して、成型された物品を形成するステップと、
f)制御された温度で型を固定させ、成型された物品を硬化して取り出すステップと
を含み、
ホッパ内へ最初に導入される熱可塑性ポリマー組成物は、5%以下のフィラー(filer)を含み、残留水の割合が前記組成物の総重量に対して0.02%以下である非溶融混合樹脂の形態にあり、
マスターバッチはまた、少なくとも1つの核形成剤を含有することを特徴とする方法に関する。
【0031】
本発明では、マスターバッチとは、着色すべきプラスチック材料と融和性のある高分子物質中の添加剤および色素の高濃度の分散を意味し、添加剤および色素の量は通常、マスターバッチの70重量%を超過しない。核形成剤は、上記で定義したとおりであり、安息香酸ナトリウムが使用されることが好ましい。
【0032】
本発明の方法の有利な実施形態によれば、マスターバッチはまた、マスターバッチの添加剤および色素を分散させる熱可塑性樹脂を含む。この熱可塑性樹脂は、上記で定義したとおりである。
【0033】
この熱可塑性樹脂は、PBTであることが好ましく、物品の総重量の5重量%を占めることが有利である。
【0034】
本発明の方法のマスターバッチ内で使用できる添加剤および色素は、上記で定義したとおりである。
【0035】
本発明の他の利点および特殊な特徴は、非限定的な例として添付の図を参照して提供される以下の説明で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】射出成型に通常使用される射出成型機の概略横断面図である。
図2図1に示した射出成型機を示し、この成型機が従来技術によるPET溶融混合物の射出成型で実施される図である。
図3図1および2に示した射出成型機を示し、この成型機が本発明の方法によるPET樹脂の射出成型で実施される図である。
図4】本発明によって射出成型された物品の一例の長手方向の概略横断面図である。
図5図4に示した物品のK−Kによる横方向の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1から3に示す同じ要素は、同じ参照番号で識別する。
【0038】
図1から3は、熱可塑性ポリマー材料から作られた、具体的にはPETベースの物品の射出成型に通常使用される射出成型機1を示す。射出成型機1は、
− 射出シリンダ2であり、内部で射出スクリュー21が動き、その動きが射出シリンダ22によって制御される、射出シリンダ2と、
− 射出シリンダ22を取り囲む加熱抵抗器23と、
− 前記射出シリンダ2と連通する投与装置30を有する供給デバイス3であり、熱可塑性ポリマー組成物40、41を受け取るホッパ31と、少なくとも1つの色素のマスターバッチ50、51を受け取るタンク32とを備える、供給デバイス3と、
− 少なくとも1つの彫り型70を画定する互いに対向する2つの部分71、72を備える型7であり、型部分の一方72が、ほぼ静止したプラットホーム720に取り付けられ、前記型7の他方の部分71が、玉継ぎ手または機械制御による直接または間接攻撃(attack)で油圧ピストン73によって制御される可動プラットホーム710に取り付けられる、型7と、
− 型70の彫り型と連通させるように前記射出シリンダ2の端部に構成された少なくとも1つの射出ノズル24と
を備える。
【0039】
図2は、従来技術の方法による射出成型機内で成型することによって物品を作製するために使用される異なる出発原料40、50の構成を示す。すぐに射出できるPET顆粒(PET樹脂から構成された溶融混合物および射出の成功に必要な添加剤)からなる熱可塑性組成物40が、ホッパ31内へ導入され、色素50のマスターバッチが、成型機1の供給デバイス3のタンク32内へ導入される。
【0040】
図3は、本発明の方法による射出成型機内で成型することによって物品を作製するために使用される異なる出発原料41、51の構成を示す。非溶融混合PET顆粒(充填剤、色素、および添加剤がなく、湿気含有量が0.02%未満である)からなる熱可塑性組成物41が、ホッパ31内へ導入され、射出の成功に必要な色素および添加剤のマスターバッチ51が、タンク32内へ導入される。
【0041】
本発明者らは、出発原料をホッパ31内へ導入した後の方法の異なるステップについて、次に詳細に説明する。これらのステップは、本発明による方法に対して同一であり、その供給ステップは図3に示し、その従来技術による方法の供給ステップは図2に示す。
【0042】
出発原料を供給デバイス3内へ供給するステップ後、出発原料は、投与装置を介して射出シリンダ2内へ同時に射出される。
【0043】
これらの溶融混合物の混合は、投与装置内で乾燥した状態で実行することができ、シリンダ内の熱可塑性ポリマー組成物およびマスターバッチの混合を実行することができ、この場合、混合投与装置である。
【0044】
混合はまた、シリンダ内で(溶融状態で)実行することができる。
【0045】
進めるべき別の方法はまた、ドライブレンドを作製するステップからなることができ、このステップは、マスターバッチおよび非溶融混合樹脂の顆粒を混合することと、次いで顆粒のこの混合物を乾燥器内へ導入し、この混合物をホッパ内へ進めて射出することとを伴う。これにより、投与装置なしで行うことが可能になるが、あまり精度の高くない技法のままであり、さらなる操作を必要とする。
【0046】
次いで、出発原料をシリンダ2内へ射出するこのステップに続いて、熱可塑性ポリマー組成物とマスターバッチを溶融させることによって可塑性を与え、溶融プラスチック材料60、61を得る段階が行われる。この溶融は、シリンダ2を取り囲む加熱抵抗器23によって生じる熱と、顆粒がシリンダ2の前面の方へ動くときに顆粒の摩擦によって生じる熱の作用を組み合わせて実行される。
【0047】
このように得られる溶融プラスチック材料60、61は、次いで、射出スクリュー21に圧力を印加して射出シリンダ22がスクリュー21を前方へ押すことによって、シリンダ2の前面から射出ノズル23を介して型7の彫り型70へ移される。
【0048】
型の彫り型70が溶融プラスチック材料60、61で充填された後、彫り型70は、玉継ぎ手または機械制御による直接または間接攻撃で油圧ピストン73によって制御される可動プラットホーム710に圧力を作用させることによって加圧される。次いで、成型された物品が形成され、冷却によって硬化され、次いで取り出すことができる。
【0049】
図4および5は、本発明によって射出成型された物品の一例、この場合スパチュラを示す。
【0050】
図4は、伸長方向によるスパチュラのプロファイルの変化を示し、図5は、厚さeの方向に、伸長方向に対して横断方向のスパチュラのプロファイルの変化を示し、横断面K−Kの位置(図4に示す)または厚さeが変化する連続体内に、2つの隣接する領域AおよびBを有する。これは、領域AおよびB内に刻まれた直径に対応し、約16.8%の厚さの変化に対応して、3.22mm(領域B)から3.76mm(領域A)まで変わる。
【0051】

製品
熱可塑性ポリマー組成物
− Tergal Industries社から商品名Reseko(商標)で市販されている樹脂、または同じくTergal Industries社から商品名T74F9で市販されている樹脂のいずれかとすることができるPET樹脂41であって、
−− これらの2つの樹脂に対して0.74という固有の粘性を有し、
−− 残留水分量が0.02%未満の樹脂を得るために、変圧器によって通常使用される乾燥器で従来実行される事前の乾燥処理に事前にかけられているPET樹脂41と、
− 商品名Rynite(登録商標)520でDupont社から市販されているすぐに射出できる溶融混合PET顆粒41と、
を含む。
【0052】
マスターバッチ
− ELIAN社から市販されているマスターバッチ51であって、この混合物は(その部分の総重量に対する割合)、
−− いかなる特定の乾燥も必要とせず、80℃で2時間という従来の焼成サイクルで十分である2.94%のPBT(ポリブチレンテレフタレート)と、
−− 添加剤とを含み、添加剤は、
−−− 離型剤として0.72%のシリコーン油と、
−−− 核形成剤として0.6%の安息香酸ナトリウムと、
−−− 0.24%のヒンダードフェノール(CIBA社から市販されているIrgarnox145、含有量0.12%)、およびリン酸塩(Irganox168、CIBA、含有量0.12、熱安定剤として)と、
−−− 有機充填剤として0.6%のPTFE粉末と、
−−− 0.9%の色素(具体的には、酸化鉄)とに分散される、マスターバッチ51と、
− マスターバッチ50であって、
−− 2%のPBTと、
−− 0.9%の色素とを含む、マスターバッチ50と
を含む。
【0053】
【実施例1】
【0054】
(本発明による)
PET樹脂41は、変圧器によって従来使用される乾燥器内で、事前の乾燥処理にかけられる。
【0055】
次いで、図3に示した動作図により、PET樹脂41は、射出成型機1のホッパ31内へ導入される。射出成型機1は、温度が140℃で制御される4つのスパチュラ彫り型70を有する型を備える。
【0056】
次いで、マスターバッチ51がタンク32内へ導入される。
【0057】
次いで、樹脂41とマスターバッチ51は、投与装置30を介してシリンダ2内へ同時に射出される。
【0058】
成型機1の入口での温度は250℃であり、ポリマー組成物41とマスターバッチ51を溶融させることが可能である。
【0059】
溶融プラスチック材料が得られ、温度が280℃で制御された4つの射出ノズル23によって、射出圧力30バールを有する型70へ移される。型の閉鎖圧力は260トンであり、型70内での溶融プラスチック材料の滞留時間はほんの5である。
【0060】
このように得られたスパチュラ残留灰の含有量は、5%未満である。
【実施例2】
【0061】
(比較)
上記のように、PET顆粒40およびマスターバッチ50からスパチュラが準備される。
【0062】
処理条件は、実施例1の条件と同一である。
【0063】
このように得られたスパチュラの残留灰の含有量は、20%程度である。
図1
図2
図3
図4
図5