特許第5763664号(P5763664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5763664有機ジカルボン酸、その塩およびそれらの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763664
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】有機ジカルボン酸、その塩およびそれらの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/56 20060101AFI20150723BHJP
   A61K 31/416 20060101ALN20150723BHJP
   A61P 27/12 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   C07D231/56 E
   !A61K31/416
   !A61P27/12
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-538181(P2012-538181)
(86)(22)【出願日】2010年11月12日
(65)【公表番号】特表2013-510802(P2013-510802A)
(43)【公表日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】CN2010078691
(87)【国際公開番号】WO2011057580
(87)【国際公開日】20110519
【審査請求日】2013年8月5日
(31)【優先権主張番号】200910212692.5
(32)【優先日】2009年11月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502041886
【氏名又は名称】▲東▼南大学
【氏名又は名称原語表記】SOUTHEAST UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】512127408
【氏名又は名称】南京医科大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING MEDICAL UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】512127419
【氏名又は名称】浙江莎普▲愛▼思▲薬▼▲業▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG SHAPUAISI PHARMACY LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴウ シャオフー
(72)【発明者】
【氏名】シェン ホン
(72)【発明者】
【氏名】チャン インディ
(72)【発明者】
【氏名】シェン ジェンピン
(72)【発明者】
【氏名】チュ ヤンチン
(72)【発明者】
【氏名】フェン ルーチョン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ジェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン テカン
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−233673(JP,A)
【文献】 特開平05−112463(JP,A)
【文献】 Li Yanyan et al.,Chemical Industry Times,2006年,20(4),p. 38-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ジカルボン酸基を含有する一群の化合物であって、前記化合物の一般構造式は以下に示す通りであり、
【化1】
式中、Rは、水素原子、C1~3アルキル、C1~3アルコキシルまたはハロゲン原子を表す、ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の有機ジカルボン酸基を含有する化合物のジカルボン酸塩であって、前記ジカルボン酸塩は、前記構造式中の前記ジカルボン酸基と一価のカチオンMとの反応を経て形成され、式中、Mは、Na+、K+またはNH4+を表す
ことを特徴とするジカルボン酸塩。
【請求項3】
請求項1に記載の有機ジカルボン酸基を含有する化合物のジカルボン酸塩であって、前記ジカルボン酸塩は、前記構造式中の前記ジカルボン酸基とアミノ酸との反応を経て形成され、式中、Aは、アミノ酸を表し、前記アミノ酸は、リジンまたはヒスチジンであり、前記リジンは、L−リジン、D−リジン、またはL−リジンとD−リジンとからなるラセミ体であり、前記ヒスチジンは、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、またはL−ヒスチジンとD−ヒスチジンとからなるラセミ体である
ことを特徴とするジカルボン酸塩。
【請求項4】
請求項1に記載の有機ジカルボン酸基を含有する化合物を調製するための方法であって、
【化2】
を、アルカリ性条件下でXCH(CO2R’)2と反応させて、
【化3】
を得た後、これを、アルカリ性条件下で加水分解し、酸性化することにより、
【化4】
(式中、Xは、Cl原子、Br原子またはI原子を表し、Rは、水素原子、C1~3アルキル、C1~3アルコキシルまたはハロゲン原子を表し、R’は、C1~4アルキルを表す)、
を得ることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、1.0モルの
【化5】
を、グリコールジメチルエーテル溶媒中の炭酸カリウム2.5モルの存在下に、1.2モルのXCH(CO2R’)2と還流下で反応させ、
【化6】
を得て、これを、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム溶液中に還流下で加水分解し、次いで、希塩酸によってpH約2に酸性化して、最終的に、
【化7】
(Xは、Cl原子、Br原子またはI原子を表し、Rは、水素原子、C1~3アルキル、C1~3アルコキシルまたはハロゲン原子を表し、R’は、C1~4アルキルを表す)、
を得ることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ジカルボン酸、その塩およびそれらの調製方法、ならびに、前記塩のいくつかの典型的化合物の水晶体への酸化障害抵抗活性に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障は、失明につながる最も一般的な眼病の1つである。白内障が原因の失明は、全世界の盲目者の約40%を占める。高齢化社会の到来により、老人性白内障の発症率が徐々に増加し、この結果、白内障は、世界中で一般的かつ頻繁に起きる病気となっている。視力を失った水晶体は、手術によって除去して人工水晶体と交換できるが、このような手術の費用は高く、ある種の危険性に直面する可能性がある。したがって、より多くの患者は、視力の喪失を回避して手術を延期または回避するため、初期段階の時点で水晶体の混濁化の進行を遅らせる薬物療法を必要とする。ベンダザックリジンは、白内障に抵抗するある種の効果を有し、アルドース還元酵素阻害剤として使用した場合には、多糖性白内障(polysaccharide cataract)に対してある種の治癒力も有すると知られているが、この薬物は、眼に対して刺激性であり、その治癒力は、依然として不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、新世代の白内障治療用薬物を開発することは必須である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の目的
本発明は、有機ジカルボン酸、その塩およびそれらの調製方法を提供し、ここでは、それら化合物は、白内障治療用の薬物として使用することができる。
【0005】
技術的解決法
本発明は、2−(1−ベンジル(または置換ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸を設計および合成するものであり、この酸は、有機二価酸として使用すると、卑金属イオン、アンモニウムイオンまたはアミノ酸と反応して、新規な構造を有する一連の有機マロン酸塩が調製される。本目的は、ヒトの白内障を治療するために必要な弱毒性と、低刺激性と、優れた水溶性と、水晶体の有効な酸化防止活性とを満たすことである。本発明は、新規な構造を有する一群のジカルボン酸およびその塩を開示している。2−(1−ベンジル(または置換ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸を有機ジカルボン酸として使用する際、これらの化合物の構造は、式(1)によって示すことができ、
【0006】
【化1】
【0007】
式中、Rは、水素原子、C1~3アルキル基、C1~3アルコキシルまたはハロゲン原子であり、式(1)で示される化合物は、H2Lと略記する。
【0008】
式(1)で示される有機二酸が、カチオンMと反応して塩を形成する場合、この塩は、式(2)によって表すことができ、
2L 式(2)
式中、Mは、一価のカチオン、例えば、Na+、K+、NH4+などを表す。
【0009】
式(1)で示される有機二酸が、アミノ酸と反応して塩を形成する場合、この塩は、式(3)によって表すことができ、
22L 式(3)
式中、Aは、アミノ酸、例えば、リジン(L−リジン、D−リジン、およびL−リジンとD−リジンとからなるラセミ体を含む)、ヒスチジン(L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、およびL−ヒスチジンとD−ヒスチジンとからなるラセミ体を含む)などを表す。
【0010】
本発明の別の目的は、式(1)で示される有機ジカルボン酸の調製方法を提供することであり、この酸は、式(4)で示される反応から得ることができ、
【0011】
【化2】
【0012】
式中、Xは、Cl原子、Br原子またはI原子を表し、Rの定義は、式(1)における定義と同一であり、R’は、C1~4アルキル基を表す。これらの有機二価酸の合成では、1−ベンジル(または置換ベンジル)−1H−インダゾール−3−アルコール(S1と略記する)が、アルカリの存在下に、αハロゲン化マロン酸ジエステルと反応して、2−(1−ベンジル(または置換ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸ジエステル(S2と略記する)が得られる。その後、このエステルをアルカリ性条件下で加水分解し、次いで酸性化した後には、対応する有機二価酸(H2L)が得られる。
【0013】
詳細な合成プロセスは、次の通りである。1.0モルのS1を、グリコールジメチルエーテル溶媒中の炭酸カリウム2.5モルの存在下に、1.2モルのXCH(CO2R’)2と還流下で反応させて、S2を得て、続いて、S2を、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム溶液中に、還流下で加水分解し、次いで、希塩酸によってpH約2に酸性化すると、最終的には、H2Lが得られる。
【0014】
式(1)で示される有機二価酸(H2L)を、対応するアルカリ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などと反応させて、式(2)で示される塩(M2L)を得る。式(1)で示される有機二価酸(H2L)を、対応するアミノ酸、例えば、リジン(L−リジン、D−リジン、およびL−リジンとD−リジンとからなるラセミ体を含む)、ヒスチジン(L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、およびL−ヒスチジンとD−ヒスチジンとからなるラセミ体を含む)または他のアミノ酸と反応させて、式(3)で示される塩(A22L)を生成する。
【0015】
本発明において調製した化合物の構造は、赤外スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、有機質量分析法またはエレクトロスプレーイオン化質量分析法などの、様々な分析方法によって確認した。
【発明の効果】
【0016】
有益な効果
本発明は、1種の有機ジカルボン酸、その塩および調製方法を提供し、かつ、水晶体への酸化障害抵抗性を有する、いくつかの典型的な有機ジカルボン酸塩化合物の活性と、既存薬物より低い、眼に対する刺激性と、より良好な治癒力とを開示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態
本発明を下記の実施形態によってさらに説明するが、本発明は、これらの実施形態に制限されるものではない。
【実施例1】
【0018】
2−(1−ベンジル(または置換ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸エステルの調製
12g(0.090mol)の3−ヒドロキシル−インダゾール(J&K Scientific)、3.94g(0.098mol)の水酸化ナトリウムおよび90mLの水を、250mLの三口ビン中に加え、40℃で10分間撹拌し、次いで、0.090molの塩化ベンジル(または置換された塩化ベンジル)を滴下によりその中に加え、この混合物を70℃で2時間、固形物の析出を伴いながら反応させ、ろ過して、ろ過ケーキを水で洗浄し、最終的には、1−ベンジル(または置換ベンジル)−1H−インダゾール−3−アルコールが得られる。
【0019】
40mLのグリコールジメチルエーテル(溶媒)を、100mLの四口ビン中に加え、次いで、1−ベンジル(または置換ベンジル)−1H−インダゾール−3−アルコール(10.5mmol)および3.6g(26.1mmol)の炭酸カリウムを、四口ビン中に入れて混合する。この混合物を室温で10分間撹拌し、続いて、3.0g(12.6mmol)の臭化ジエチルマロン酸塩(J&K Scientific)を滴下により加え、その後、この混合物を加熱して4時間還流させ、溶液が黄色から赤褐色に変化した後にろ過する。そのろ液を濃縮して、カラムクロマトグラフィー(展開剤:石油エーテル(60〜90℃):酢酸エチル=1:1)を施すと、下記の生成物を得ることができる。
【0020】
(1)2−(1−ベンジル−1H−インダゾール−3−オキシル)ジエチルマロン酸塩(S2−1)
収率:39%
IR (KBr, cm-1): 2981 (m), 1768 (s), 1748 (s), 1619 (m), 1235 (s), 744 (m)
EI-MS: 382 [M+]
1HNMR (500MHz, CDCl3), δ (ppm): 1.29〜1.33 (t, 6H, CH2CH3), 4.29〜4.33 (dd, 4H, CH2CH3), 5.34 (s, 2H, CH2C6H5), 5.77 (s, 1H, CH(COOH)2), 7.08〜7.83 (m, 9H, 2Ar)
(2)2−[1−(4−メチル−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]ジエチルマロン酸塩(S2−2)
収率:29%
IR (KBr, cm-1): 2985 (w), 1764 (s), 1743 (s), 1617 (m), 1225 (s), 749 (m)
EI-MS: 396 [M+]
1HNMR (500MHz, CDCl3), δ (ppm): 1.28〜1.31 (t, 6H, CH2CH3), 2.40 (s, 3H, CH2C6H4CH3), 4.29〜4.33 (dd, 4H, CH2CH3), 5.36 (s, 2H, CH2C6H4CH3), 5.79 (s, 1H, CH(COOH)2), 7.02〜7.80 (m, 8H, 2Ar)
(3)2−[1−(3−フッ素−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]ジエチルマロン酸塩(S2−3)
収率:56%
IR (KBr, cm-1): 2983 (w), 1767 (s), 1748 (s), 1618 (m), 1253 (s), 745 (m)
EI-MS: 400 [M+]
1HNMR (500MHz, CDCl3), δ (ppm): 1.28〜1.33 (t, 6H, CH2CH3), 4.27〜4.34 (dd, 4H, CH2CH3), 5.33 (s, 2H, CH2C6H4F), 5.76 (s, 1H, CH(COOH)2), 6.80〜7.83 (m, 8H, 2Ar)
(4)2−[1−(3−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]ジエチルマロン酸塩(S2−4)
収率:51%
IR (KBr, cm-1): 2984 (m), 1735 (s), 1619 (w), 1247 (s), 747 (m)
ESI-MS: 439 [M+Na]+
1HNMR (500MHz, CDCl3), δ (ppm): 1.28〜1.33 (t, 6H, CH2CH3), 4.31〜4.35 (dd, 4H, CH2CH3), 5.29 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 5.76 (s, 1H, CH(COOH)2), 7.02〜7.83 (m, 8H, 2Ar)
(5)2−[1−(4−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]ジエチルマロン酸塩(S2−5)
収率:18%
IR (KBr, cm-1): 2982 (w), 1764 (s), 1740 (s), 1616 (w), 1222 (s), 746 (m)
ESI-MS: 439[M+Na]+
1HNMR (500MHz, CDCl3), δ (ppm): 1.27〜1.34 (t, 6H, CH2CH3), 4.28〜4.32 (dd, 4H, CH2CH3), 5.29 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 5.74 (s, 1H, CH(COOH)2), 7.04〜7.81 (m, 8H, 2Ar)
【実施例2】
【0021】
2−(1−ベンジル(または置換ベンジル)−lH−インダゾール−3−オキシル)マロン酸の調製
実施例1から得られたエステル(2.7mmol)を、それぞれ、水酸化カリウム(5.4mmol)0.3gの水溶液10ml中に加え、この混合物を加熱して2時間還流し、続いて、この混合物のpHを、1Mの塩酸によって2に調節し、沈殿した白色固形物をろ過して、少量の水で洗浄すると、乾燥後に下記の化合物を得ることができる。
【0022】
(1)2−(1−ベンジル−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸(H2L1
収率:93%
融点:182〜186℃(分解)
IR (KBr, cm-1): 3033 (m), 2934 (m), 1741 (s), 1620 (m), 1257 (s), 746 (m), 711 (m)
ESI-MS: 325 [M-H]-
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.30 (s, 2H, CH2C6H5), 5.36 (s, 1H, CH(COOH)2), 7.00〜7.73 (m, 9H, 2Ar);
(2)2−[1−(4−メチル−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸(H22
収率:98%
融点:144〜146℃
IR (KBr, cm-1): 3023 (m), 2920 (m), 1755 (s), 1618 (m), 1255 (s), 744 (s), 727 (m)
ESI-MS: 379 [M+K]+
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 2.16 (s, 3H, CH2C6H4CH3), 5.29 (s, 2H, CH2C6H4CH3), 5.46 (s, 1H, CH(COOH)2), 6.97〜7.75 (m, 8H, 2Ar);
(3)2−[1−(3−フッ素−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸(H23
収率:96%
融点:138〜140℃
IR (KBr, cm-1): 3065 (m), 2925 (w), 1732 (s), 1618 (m), 1254 (s), 743 (s)
ESI-MS: 383 [M+K]+, 367 [M+Na]+, 345 [M+H]+
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.41 (s, 2H, CH2C6H4F), 5.49 (s, 1H, CH(COOH)2), 6.82〜7.85 (m, 8H, 2Ar);
(4)2−[1−(3−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸(H24
収率:98%
融点:137〜139℃
IR (KBr, cm-1): 3063 (m), 2940 (m), 1749 (s), 1619 (m), 1247 (s), 745 (s), 725 (m)
ESI-MS: 399 [M+K]+, 361 [M+H]+
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.40 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 5.51(s, 1H, CH(COOH)2), 7.04〜7.85 (m, 8H, 2Ar);
(5)2−[1−(4−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸(H25
収率:88%
融点:114〜116℃
ESI-MS: 399 [M+K]+, 361 [M+H]+
IR (KBr, cm-1): 3064 (m), 2921 (m), 1747 (s), 1619 (m), 1251 (s), 740 (s)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.32 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 5.46 (s, 1H, CH(COOH)2), 7.01〜7.78 (m, 8H, 2Ar)
【実施例3】
【0023】
2−(1−ベンジル(または置換ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸塩の調製
実施例2から得られた2.0mmolの酸を、それぞれ、5mLの水に加え、5分間撹拌し、アルカリ4.0mmolまたはアミノ酸4.0mmolの水溶液5mLを滴下により加え、続いて、この混合物を室温で4時間撹拌し、減圧下で濃縮して水を除去し、次いで、オイル状物質が得られ、その後、20mLの無水アルコールを加え、この混合物を、固形物が沈殿した後にろ過して、ろ過ケーキを2mLの無水アルコールによって洗浄し、次いで、真空乾燥を施すと、最終的には、下記の生成物を得ることができる。
【0024】
(1)2−(1−ベンジル−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二ナトリウム塩(Y1)
収率:75%
IR (KBr, cm-1): 2983 (w), 1643 (s), 1334 (m), 741 (m), 723 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.21 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.33 (s, 2H, CH2C6H5), 7.03〜7.79 (m, 9H, 2Ar)
(2)2−(1−ベンジル−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二カリウム塩(Y2)
収率:86%
IR (KBr, cm-1): 2978 (w), 1639 (s), 1328 (m), 740 (m), 721 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.23 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.35 (s, 2H, CH2C6H5), 6.97〜7.78 (m, 9H, 2Ar)
(3)2−(1−ベンジル−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二アンモニウム塩(Y3)
収率:75%
IR (KBr, cm-1): 3197 (s), 1593 (s), 1326 (s), 1105 (m), 771 (s), 746 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.22 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.34 (s, 2H, CH2C6H5), 7.03〜7.81(m, 9H, 2Ar)
(4)2−(1−ベンジル−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二ヒスチジン塩(Y4)
収率:92%
IR (KBr, cm-1): 3128 (m), 3026 (m), 1618 (s), 1329 (m), 1259 (w), 744 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 3.10〜3.24 (m, 4H, ヒスチジンの2CH2), 3.89〜3.94 (m, 2H, ヒスチジンの2CHNH2COOH), 5.28 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.34 (s, 2H, CH2C6H5), 7.05〜7.80 (m, 11H, 2Arの9H, および2イミダゾールの2H), 8.27 (s, 2H, 2イミダゾールの2H)
(5)2−(1−ベンジル−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二リシン塩(Y5)
収率:86%
IR (KBr, cm-1): 3031 (s), 2941 (s), 1615 (s), 1325 (m), 741 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 1.30〜1.43 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.60〜1.63 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.78〜1.82 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 2.90〜2.93 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 3.65 (m, 2H, リシンの2CH(NH2)COOH), 5.24 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.36 (s, 2H, CH2C6H5), 7.09〜7.81 (m, 9H, 2Ar)
(6)2−[1−(4−メチル−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二ナトリウム塩(Y6)
収率:76%
IR (KBr, cm-1): 2983 (m), 1621 (s), 1336 (s), 1256 (m), 746 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 2.15 (s,3H, C6H4CH3), 5.22 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.27 (s, 2H, CH2C6H4CH3), 6.97〜7.80 (m, 8H, 2Ar)
(7)2−[1−(4−メチル−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二カリウム塩(Y7)
収率:80%
IR (KBr, cm-1): 2986 (m), 1625 (s), 1338 (m), 1255 (m), 744 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 2.17 (s, 3H, C6H4CH3), 5.25 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.30 (s, 2H, CH2C6H4CH3), 6.99〜7.85 (m, 8H, 2Ar)
(8)2−[1−(4−メチル−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二アンモニウム塩(Y8)
収率:70%
IR (KBr, cm-1): 3330 (s), 2983 (m), 1600 (s), 1331 (m), 746 (m)
11HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 2.13 (s, 3H, C6H4CH3), 5.21 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.28 (s, 2H, CH2C6H4CH3), 6.89〜7.80 (m, 8H, 2Ar)
(9)2−[1−(4−メチル−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二リシン塩(Y9)
収率:88%
IR (KBr, cm-1): 3432 (s), 2930 (s), 1619 (s), 1335 (m), 743 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 1.30〜1.38 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.54〜1.64 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.74〜1.81 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 2.12 (s, 3H, CH2C6H4CH3), 2.86〜2.91 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 3.61〜3.65 (m, 2H, リシンの2CH(NH2)COOH), 5.20 (s, 2H, CH2C6H5CH3), 5.28 (s, 1H, CH (COO-)2), 6.92〜7.76 (m, 8H, 2Ar)
(10)2−[1−(3−フルオロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二ナトリウム塩(Y10)
収率:83%
IR (KBr, cm-1): 2927 (w), 1619 (s), 1337 (m), 739 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.22 (s, 1H, CH (COOH)2), 5.34 (s, 2H, CH2C6H4F), 6.77〜7.80 (m, 8H, 2Ar)
(11)2−[1−(3−フルオロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二カリウム塩(Y11)
収率:80%
IR (KBr, cm-1): 2929 (w), 1605 (s), 1331 (m), 741 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.22 (s, 1H, CH (COOH)2), 5.30 (s, 2H, CH2C6H4F), 6.75〜7.80 (m, 8H, 2Ar)
(12)2−[1−(3−フルオロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二アンモニウム塩(Y12)
収率:75%
IR (KBr, cm-1): 3340 (s), 2931 (w), 1641 (s), 1336 (m), 743 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.35 (s, 1H, CH(COOH)2), 5.43 (s, 2H, CH2C6H4F), 6.77〜7.78 (m, 8H, 2Ar)
(13)2−[1−(3−フルオロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二ヒスチジン塩(Y13)
収率:84%
IR (KBr, cm-1): 3154 (s), 3012 (m), 1600 (s), 1331 (m), 1226 (w), 741 (m)
1HNMR(500MHz, D2O), δ (ppm): 3.10〜3.13 (d, 4H, ヒスチジンの2CH2), 3.83〜3.87 (m, 2H, Histidineの2CHNH2COOH), 5.22 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.26 (s, 2H, CH2C6H4F), 6.71〜7.73 (m, 10H, 2Arおよびヒスチジンの2イミダゾールの2H), 8.33 (s, 2H, ヒスチジンの2イミダゾール)
(14)2−[1−(3−フルオロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル)マロン酸二リシン塩(Y14)
収率:85%
IR (KBr, cm-1): 3435 (s), 2931 (s), 1622 (s), 1328 (m), 744 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 1.32〜1.46 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.55〜1.66 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.72〜1.79 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 2.89〜2.93 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 3.55〜3.59 (m, 2H, リシンの2CH(NH2)COOH), 5.25 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.35 (s, 2H, CH2C6H4F), 6.80〜7.87 (m, 8H, 2Ar)
(15)2−[1−(3−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二ナトリウム塩(Y15)
収率:80%
IR (KBr, cm-1): 2937 (w), 1619 (s), 1336 (s), 744 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.22 (s, 1H, CH(COOH)2), 5.26 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 6.94〜7.80 (m, 8H, 2Ar)
(16)2−[1−(3−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二カリウム塩(Y16)
収率:78%
IR (KBr, cm-1): 2940 (w), 1605 (s), 1337 (s), 746 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.39 (s, 1H, CH (COOH)2), 5.43 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 7.08〜7.95 (m, 8H, 2Ar)
(17)2−[1−(3−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二アンモニウム塩(Y17)
収率:71%
IR (KBr, cm-1) : 3250 (s), 2942 (m), 1641 (s), 1322 (m), 746 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.23 (s, 1H, CH (COOH)2), 5.33 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 6.76〜7.81 (m, 8H, 2Ar)
(18)2−[1−(3−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二ヒスチジン塩(Y18)
収率:82%
IR (KBr, cm-1) : 3132 (s), 2932 (m), 1640 (s), 1326 (m), 742 (m)
1HNMR (300MHz, D2O), δ (ppm): 3.10 (m, 4H, ヒスチジンの2CH2), 3.81〜3.83 (m, 2H, ヒスチジンの2CHNH2COOH), 5.16 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.22 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 6.86〜7.69 (m, 10H, 2Ar の8Hおよびヒスチジンの2イミダゾールの2H), 8.32 (s, 2H, ヒスチジンの2イミダゾール)
(19)2−[1−(3−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二リシン塩(Y19)
収率:91%
IR (KBr, cm-1): 2934 (m2), 1613 (s),, 1320 (m), 1105 (m), 741 (m4)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 1.26〜1.34 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.49〜1.56 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.72〜1.74 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 2.81〜2.86 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 3.52〜3.62 (m, 2H, リシンの2CH(NH2)COOH), 5.13 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 5.21 (s, 1H, CH(COO-)2), 6.88〜7.76 (m, 8H, 2Ar)
(20)2−[1−(4−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二ナトリウム塩(Y20)
収率:84%
IR (KBr, cm-1): 2980 (w), 1642 (s), 1336 (m), 739 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.16 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 5.22 (s, 1H, CH(COOH)2), 6.92〜7.76 (m, 8H, 2Ar)
(21)2−[1−(4−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二カリウム塩(Y21)
収率:82%
IR (KBr, cm-1): 2982 (w), 1636 (s), 1325 (m), 741 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.18 (s, 1H, CH(COOH)2), 5.24 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 6.99〜7.83 (m, 8H, 2Ar)
(22)2−[1−(4−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二アンモニウム塩(Y22)
収率:78%
IR (KBr, cm-1): 3232 (s), 2985 (w), 1612 (s), 1323 (m), 743 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 5.24 (s, 1H, CH(COOH)2), 5.31 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 7.08〜7.96 (m, 8H, 2Ar)
(23)2−[1−(4−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二ヒスチジン塩(Y23)
収率:94%
IR (KBr, cm-1): 3162 (m), 2978 (m), 1638 (s), 1315 (m), 746 (m)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 3.00〜3.14 (m, 4H, ヒスチジンの2CH2), 3.81〜3.85 (m, 2H, ヒスチジンの2CHNH2COOH), 5.19 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.25 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 6.93〜7.71 (m, 10H, 2Arの8Hおよびヒスチジンの2イミダゾールの2H), 812 (s, 2H, ヒスチジンの2イミダゾール)
(24)2−[1−(4−クロロ−ベンジル)−1H−インダゾール−3−オキシル]マロン酸二リシン塩(Y24)
収率:93%
IR (KBr, cm-1): 2930 (m), 1619 (s), 1316 (m), 1108 (m), 740 (s)
1HNMR (500MHz, D2O), δ (ppm): 1.24〜1.32 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.48〜1.58 (m, 4H, リシンの2H2NC2H4CH2CH2), 1.65〜1.67 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 2.80〜2.85 (m, 4H, リシンの2H2NCH2CH2C2H4), 3.45〜3.53 (m, 2H, リシンの2CH(NH2)COOH), 5.19 (s, 1H, CH(COO-)2), 5.21 (s, 2H, CH2C6H4Cl), 6.95〜7.75 (m, 8H, 2Ar)
【0025】
典型的な化合物の活性
水晶体に対してH22が引き起こす酸化障害にin vitroで抵抗する能力について調査するために、いくつかの典型的な化合物を選択する。この実験については以下に説明する。
【0026】
1.眼水晶体の培養
ラットおよびウサギを屠殺し、それらの眼球を取り出して、500u/mLのペニシリンを含有する食塩水で洗浄し、眼球をその後部から分割して眼球壁および硝子体を取り除き、提靱帯を取り去り、水晶体を取り出して、500u/mLのペニシリンと0.5mg/mLのストレプトマイシンとを含有するPBS溶液によって5分間洗浄する。実験前には、解剖鏡(anatomical lens)を用いて調べることにより、上記水晶体中に混濁化または他の異常状態がないことを確認し、次いで、上記水晶体を、2mLのDMEM/高グルコース(Beijing Thermo Fisher Scientific Biochemical Product Co.,Ltd.の製品)無菌培養液(これは、100u/mLのペニシリンおよび0.1mg/mLのストレプトマイシンを含有する)を含有する滅菌済み12ウェルプレート内に入れ、スクリーニングのために様々な化合物を加え、温度37℃、湿度95%およびCO25%のインキュベーター中で1時間前培養し、続いて、H22とFeCl3とを含有する2mLのDEME培養液を加え(すなわち、各ウェル中に合計4mLの培養液)(各ウェル中のH22の合計濃度は、ウサギに対しては2%、ラットに対しては5%であり、FeCl3の濃度はすべて0.02%である)、同一条件下で24時間培養する。これらの実験は、以下のように数群に分け、バッチで実施し、各バッチには、陰性対照群とモデル群とが備わる。
【0027】
A.陰性対照群:H22を含有しないDMEM培養液。
B.モデル群(酸化障害群):H22およびFeCl3を含有するDMEM培養液。
C.ビタミンC群:モデル群の成分に加えて、ビタミンCをさらに含有する(最終的な濃度は1mmol/L)。
D.ベンダザックリジン(BDL)群(BDLは、Zhejiang Shapuaisi Pharmaceutical Co.Ltd.によって提供され、その純度は98.5%を超えている):モデル群の成分に加えて、BDL(最終的な濃度は0.5mmol/Lである)をさらに含有する。
E.検体群:モデル群の成分に加えて、検体(最終的な濃度は0.5mmol/Lである)をさらに含有する。
【0028】
2.形態観察
24時間の培養後、眼水晶体の混濁化の程度を観察し、12ウェルプレート下の白色下地上に太さの異なる黒色の「+」を有する背景のもとで、写真を撮り、採点して3つの異なるグレードに分ける。
−は、正常で透明な水晶体を示す。
+は、軽度の混濁度(第1の「+」は、わずかに不明瞭であるが依然として明確に視認可能であり、第2の「+」は判然としている)を示し、等級Iである。
++は、中程度の混濁度(第2の「+」は、わずかに不明瞭であるが依然として明確に視認可能であり、第3の「+」は判然としている)を示し、等級IIである。
+++は、水晶体が完全に混濁化している(第3の「+」が明確に視認できない)ことを示し、等級IIIである。
【0029】
3.結果
in vitroでのウサギの眼水晶体に対してH22が引き起こす酸化障害に抵抗する検体化合物の能力についての結果は、表1に示しており、in vitroでのラットの眼水晶体に対してH22によって引き起こされる酸化障害に抵抗する検体化合物の能力についての結果は、表2に示している。
【0030】
表1によれば、in vitroでのウサギの眼水晶体に対してH22が引き起こす酸化障害の阻害効果を示す化合物は、Y4およびY10であり、in vitroでのウサギの眼水晶体に対してH22が引き起こす酸化障害のY1、Y2、Y5およびY19の阻害効果は、顕著ではない。
【0031】
表2によれば、in vitroでのラットの眼水晶体に対してH22が引き起こす酸化障害の阻害効果を示す化合物は、Y1、Y4、Y5、Y14およびY19であり、in vitroでのラットの眼水晶体に対してH22が引き起こす酸化障害のY2およびY10の阻害効果は、顕著ではない。
【0032】
【表1】
【0033】
評価基準
モデル群に対する大量の実験によれば、上記群中の水晶体混濁化の異なる等級のパーセントと、上記モデル群中の水晶体混濁化の異なる等級のパーセントとの比率を定義として利用し、ここでは、わずかな改善(ν)に関しては、++(等級II、III)のパーセントは67%未満にすべきであり、かつ、+(等級I)のパーセントは33%を超えているべきであり、中程度の改善(νν)に関しては、++(等級II、III)のパーセントはさらに低下し、かつ、0(−)のパーセントが出現し、顕著な改善(ννν)に関しては、++(等級II、III)および+(等級I)のパーセントが消え、水晶体は、ほぼ透明である。
【0034】
【表2】
【0035】
評価基準
モデル群に対する膨大な実験によれば、上記群中の水晶体濁度の異なる等級のパーセントと、上記モデル群中の水晶体濁度の異なる等級のパーセントとの比率を定義として利用し、ここでは、わずかな改善(ν)に関しては、++(等級II III)のパーセントは、72%未満にすべきであり、かつ、+(等級I)のパーセントは、20%を超えているべきであり、中程度の改善(νν)に関しては、++(等級II III)のパーセントは、さらに低下し、かつ、0(−)のパーセントが出現し、顕著な改善(ννν)に関しては、++(等級II III)および+(等級I)のパーセントが消え、水晶体は、ほぼ透明である。