特許第5763722号(P5763722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763722セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763722
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20150723BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20150723BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20150723BHJP
   C04B 35/48 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C01G25/00
   B01J23/10 A
   C04B35/50
   C04B35/48 Z
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-166336(P2013-166336)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34113(P2015-34113A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2014年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰
(72)【発明者】
【氏名】小西 佳恵
(72)【発明者】
【氏名】田辺 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】須田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】鎮西 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】千葉 明哉
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 光祐
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−219329(JP,A)
【文献】 特開2009−084061(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108457(WO,A1)
【文献】 特開2005−170774(JP,A)
【文献】 特開2008−013423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G25/00−47/00,49/10−99/00
B01J21/00−38/74
C04B35/42−35/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア及びジルコニアの複合酸化物を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物であって、
前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で50%以上であり、
前記セリア−ジルコニア系複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあり、かつ、
大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後のX線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(14/29)値}及び2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(28/29)値}がそれぞれ以下の条件:
I(14/29)値≧0.015
I(28/29)値≦0.08
を満たすものであることを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項2】
前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5μm未満の一次粒子が、該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で40%以下であることを特徴とする請求項1に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項3】
前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が、該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で70%以上であり、かつ、
前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5μm未満の一次粒子が、該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で20%以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項4】
セリア及びジルコニアの複合酸化物を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあるセリア−ジルコニア系固溶体粉末を準備し、該セリア−ジルコニア系固溶体粉末を1500〜3500kgf/cmの圧力で加圧成型する工程と、
前記加圧成型されたセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体を還元条件下で、1400〜1550℃の温度で0.5〜24時間加熱処理する一次還元処理を施す工程と、
前記一次還元処理されたセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体を還元条件下で、1600〜2000℃でかつ前記一次還元処理よりも100℃以上高い温度で0.5〜5時間加熱処理する二次還元処理を施すことにより請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程と、
を含むことを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記二次還元処理の後に、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物に酸化処理を施す工程を更に含むことを特徴とする請求項4に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有していることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な金属酸化物を含有する複合酸化物が排ガス浄化用触媒用の担体や助触媒等として利用されてきた。このような複合酸化物中の金属酸化物としては、雰囲気中の酸素分圧に応じて酸素を吸放出可能である(酸素貯蔵能を持つ)ためセリアが好適に用いられてきた。そして、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物が研究されており、種々のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法が開示されている。
【0003】
例えば、特開2011−219329号公報(特許文献1)には、セリア及びジルコニアの複合酸化物を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物であって、前記複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜48:52の範囲にあり、且つ、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後のX線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(14/29)値}及び2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(28/29)値}がそれぞれ以下の条件:I(14/29)値≧0.015、I(28/29)値≦0.08を満たすものであることを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法が開示されている。同公報の記載によれば、耐熱性が高く、長時間高温に晒された後においても優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物を提供することが可能となっている。しかしながら、近年は、排ガス浄化用触媒に対する要求特性が益々高まっており、より十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)とより十分に高度な耐熱性とを併せ持ち、高温に長時間晒された後においてもより十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物が求められるようになってきた。
【0004】
また、国際公開第2006/030763号公報(特許文献2)には、セリウム及びジルコニウムを含む複合酸化物であって、(1)酸素放出開始温度が380℃以下であり、かつ、(2)酸素放出量が485μmol/g以上で、更に、(3)400℃での酸素放出量が15μmol/g以上であることを特徴とするセリウム−ジルコニウム系複合酸化物、及び、セリウム原料とジルコニウム原料とを所定の割合で混合して得られる原料混合物を、融点以上の温度下で熔融させた後に、冷却してインゴットを形成し、次いで、所望に応じて粉砕して粉体とし、引き続いて、加熱下で粉体結晶内の歪みを除去した後、さらに微細に粉砕することを特徴とするセリウム−ジルコニウム系複合酸化物の製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示されているセリア−ジルコニア系複合酸化物は、酸素貯蔵材の劣化抑制効果が十分ではなく、高温に長時間晒された後の酸素吸放出機能の発現も必ずしも十分ではなく、耐久性も十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−219329号公報
【特許文献2】国際公開第2006/030763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)と十分に高度な耐熱性とを併せ持ち、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セリア−ジルコニア系複合酸化物に、セリウムとジルコニウムの含有比率が特定の範囲のものでかつ一次粒子として比較的大きな粒子径を有するものの存在割合が高いという特定の条件を満たすセリア及びジルコニアの複合酸化物を用いることにより、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物の酸素貯蔵能と耐熱性とを十分に優れたものとして高次元で両立するとともに、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
また、本発明者らは、セリア−ジルコニア系固溶体粉末におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率をモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲とし、そのセリア−ジルコニア系固溶体粉末を所定の高い圧力で加圧成型した後に所定の温度条件で2段階の還元処理することにより、驚くべきことに得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物の酸素貯蔵能と耐熱性とを十分に優れたものとして両特性の両立を高次元で実現するとともに、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリア及びジルコニアの複合酸化物を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物であって、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で50%以上であり、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあり、かつ、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後のX線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(14/29)値}及び2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(28/29)値}がそれぞれ以下の条件:
I(14/29)値≧0.015
I(28/29)値≦0.08
を満たすものであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあるセリア−ジルコニア系固溶体粉末を準備し、該セリア−ジルコニア系固溶体粉末を1500〜3500kgf/cmの圧力で加圧成型する工程と、前記加圧成型されたセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体を還元条件下で、1400〜1550℃の温度で0.5〜24時間加熱処理する一次還元処理を施す工程と、前記一次還元処理されたセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体を還元条件下で、1600〜2000℃でかつ前記一次還元処理よりも100℃以上高い温度で0.5〜5時間加熱処理する二次還元処理を施すことにより前記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0011】
更に、本発明の排ガス浄化用触媒は、前記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有していることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5μm未満の一次粒子が、該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で40%以下であることが好ましい。
【0013】
更に、前記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が、該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で70%以上であり、かつ、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5μm未満の一次粒子が、該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で20%以下であることが好ましい。
【0014】
前記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、前記二次還元処理の後に、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物に酸化処理を施す工程を更に含むことが好ましい。
【0015】
なお、本発明におけるI(14/29)値及びI(28/29)値とは、それぞれ、測定対象のセリア−ジルコニア系複合酸化物を大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱した後、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(14/29)値}及び2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(28/29)値}である。前記X線回折測定の方法としては、測定装置として理学電機社製の商品名「RINT2100」を用いて、CuKα線を用い、40KV、30mA、2θ=2°/minの条件で測定する方法を採用する。
【0016】
ここで、2θ=14.5°の回折線は規則相(κ相)の(111)面に帰属する回折線であり、2θ=29°の回折線は規則相の(222)面に帰属する回折線とセリア−ジルコニア固溶体(CZ固溶体)の立方晶相(111)面に帰属する回折線とが重なるため、両者の回折線の強度比であるI(14/29)値を算出することにより規則相の維持率(存在率)を示す指標として規定される。なお、回折線強度を求める際、各回折線強度の値から、バックグラウンド値として2θ=10°〜12°の平均回折線強度を差し引いて計算する。また、完全な規則相には、酸素が完全充填されたκ相(CeZr)と、酸素が完全に抜けたパイロクロア相(CeZr)とがあり、それぞれのPDFカード(κ相はPDF2:01−070−4048、パイロクロア相はPDF2:01−075−2694)から計算したκ相のI(14/29)値は0.04、パイロクロア相のI(14/29)値は0.05である。また、規則相、すなわちセリウムイオンとジルコニウムイオンとにより形成される規則配列構造を有する結晶相は、前記X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14.5°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造(φ’相(κ相と同一の相)型の規則配列相:蛍石構造の中に生ずる超格子構造)である。なお、ここにいう「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
【0017】
また、2θ=28.5°の回折線はCeO単体の(111)面に帰属する回折線であり、2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との両者の回折線の強度比であるI(28/29)値を算出することにより複合酸化物からCeOが分相している程度を示す指標として規定される。
【0018】
なお、本発明の製造方法によって得られるようになった本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明においては、セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で50%以上であることにより、一次粒子として比較的大きな粒子径を有するものの存在割合を高くすることができ、表面積の増加を抑制しつつ粒度分布が揃ったものとなり、例えば高温酸化雰囲気下に晒されたとしても、規則相であるパイロクロア相から立方晶(蛍石構造)への相変態を抑制することができ、酸素貯蔵能(OSC)の低下を抑制することができたものと推察する。また、複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあっては、セリアの分相が抑制されることによる複合酸化物の安定性向上効果が、前記のジルコニウムリッチ組成となったことによる酸素貯蔵能の低下を上回るため、複合酸化物の耐熱性が向上し、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能が発揮されるようになると本発明者らは推察する。
【0019】
また、本発明においては、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあるセリア−ジルコニア系固溶体粉末を、1500〜3500kgf/cmの圧力で加圧成型した後、還元条件下1400〜1550℃の温度で0.5〜24時間加熱処理する一次還元処理を施し、次いで還元条件下1600〜2000℃でかつ前記一次還元処理よりも100℃以上高い温度で0.5〜5時間加熱処理する二次還元処理を施している。このように還元前の複合酸化物を所定の高い圧力で成型することで、粉体内の粒界が制御され、粒子同士の接触性が増すため、還元処理時に結晶成長がより進行しやすくなり、同時にイオンの再配列も容易となるため、規則相がより生成しやすくなる。また、粒子が緻密に充填されることになるため、粒子同士の接触確率が比較的均一となり、粒成長の進行程度が揃うため、結晶としての安定性も向上する。そのため、このように所定の圧力で成型された複合酸化物を所定の温度及び時間で還元処理することにより、その後の高温耐久試験時において粒子の過剰な粒成長及び結晶相の転移が十分に抑制され、前述のセリアの分相が抑制されることによる複合酸化物の安定性向上効果と相俟って、結果として長時間高温に晒された後においても高い酸素貯蔵能が保持されるようになると本発明者らは推察する。また、加圧成型後のセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体を、より高温の処理温度で2段階の還元処理をすることで、セリア−ジルコニア系複合酸化物における一次粒子として比較的大きな粒子径を有するものの存在割合を高くすることができ、表面積の増加を抑制しつつ粒度分布が揃ったものとなり、本発明の複合酸化物が高温酸化雰囲気下に晒されたとしても、規則相であるパイロクロア相から立方晶(蛍石構造)への相変態を抑制することができ、酸素貯蔵能(OSC)の低下を抑制することができるようになるものと推察する。更に、還元処理を特定温度、特定時間の2段階処理とすることにより、先ず一次還元処理によりセリアの分相を抑制しつつ、効率的に規則相を生成することができ、次いで二次還元処理により一次粒子の粒成長を促進することができることから、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)と十分に高度な耐熱性とを併せ持ち、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮されるようになると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)と十分に高度な耐熱性とを併せ持ち、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物について説明する。すなわち、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリア及びジルコニアの複合酸化物を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物であって、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で50%以上であり、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあり、かつ、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後のX線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(14/29)値}及び2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比{I(28/29)値}がそれぞれ以下の条件:
I(14/29)値≧0.015
I(28/29)値≦0.08
を満たすものである。
【0023】
本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で50%以上であることが必要である。前記範囲の一次粒子の含有量が50%未満では、一次粒子として比較的大きな粒子径を有するものの存在割合を高くすることができず、例えば高温酸化雰囲気下に晒された場合において、規則相であるパイロクロア相から立方晶(蛍石構造)への相変態を抑制する効果が十分でなく、酸素貯蔵能(OSC)の低下の抑制効果が不十分となる傾向にある。なお、前記セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)の一次粒子の粒度分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により求め、CZ複合酸化物粒子の断面を任意に2箇所以上観察し、得られた各観察視野内における結晶粒径について数基準で求め、その分布を評価した平均値である。なお、ここにいう結晶粒径とは、断面が円形でない場合には最小外接円の直径をいう。
【0024】
なお、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が、該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で70%以上であることがより好ましい。このようにすることにより、高温酸化雰囲気に晒される粒子表面の割合が減少し、規則相の相変態割合が低下する傾向にある。
【0025】
また、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が、該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で80%以上であること特に好ましい。このようにすることにより、更に粒子表面の割合が減少し、相変態割合も低下する傾向にある。
【0026】
なお、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5μm未満の一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で40%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。前記範囲の一次粒子の含有量が前記上限を超える場合では、粒子の表面積が増加し、例えば高温酸化雰囲気下に晒された場合において、規則相であるパイロクロア相から立方晶(蛍石構造)への相変態を抑制する効果が十分でなく、酸素貯蔵能(OSC)の低下の抑制効果が不十分となる傾向にある。
【0027】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあることが必要であり、43:57〜48:52の範囲にあることがより好ましく、44:56〜47:53の範囲にあることが特に好ましい。セリウムの含有比率が前記下限未満では、ジルコニウムリッチ組成となったことによる酸素貯蔵能の低下がセリアの分相が抑制されることによる複合酸化物の安定性向上効果を上回るため、高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。他方、セリウムの含有比率が前記上限を超えると、セリアの分相が抑制されることによる複合酸化物の安定性向上効果が得られないため、高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。
【0028】
更に、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、前述のI(14/29)値が0.015以上であることが必要であり、0.030以上であることがより好ましく、0.032以上であることが特に好ましい。前記I(14/29)値が前記下限未満では、規則相の維持率が低く、高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。前述のI(14/29)値の上限は、特に限定されるものではないが、PDFカード(01−075−2694)から計算したパイロクロア相のI(14/29)値が上限という観点から0.05以下が好ましい。
【0029】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前述のI(28/29)値が0.08以下であることが必要であり、0.06以下であることがより好ましく、0.04以下であることが特に好ましい。前記I(28/29)値が前記上限を超えると、セリアの分相が十分に抑制されず、高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。前述のI(28/29)値の下限は、特に限定されるものではなく、より小さい値となることが好ましい。
【0030】
本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとにより規則配列構造を有する結晶相(規則相、パイロクロア相)が形成されている。このような規則相が形成されていることにより、高温に対する耐熱性が向上し、高温に晒された後においても十分に高い酸素吸放出能が発揮されることとなる。また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記X線回折パターンのピーク強度比により求まる全結晶相に対する前記規則相の含有比率が、50〜100%であることが好ましく、80〜100%であることがより好ましい。前記規則相の含有比率が前記下限未満では、複合酸化物の酸素貯蔵材の劣化抑制効果や耐熱性が低下する傾向にある。
【0031】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有していてもよい。このような元素を含有させることで、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を排ガス浄化用触媒の担体として用いた場合に、より高い排ガス浄化能が発揮される傾向にある。このようなセリウム以外の希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、La、Nd、Pr、Y、Scが好ましく、La、Y、Ndがより好ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、Mg、Ca、Baが好ましい。このような電気陰性度の低いセリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、貴金属との相互作用が強いため、酸化雰囲気において酸素を介して貴金属と結合し、貴金属の蒸散やシンタリングを抑制し、排ガス浄化の際の活性点である貴金属の劣化を十分に抑制することができる傾向にある。
【0032】
更に、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有する場合においては、前記元素の含有量が、セリア−ジルコニア系複合酸化物中に1〜20質量%であることが好ましく、3〜7質量%であることがより好ましい。このような元素の含有量が前記下限未満では、得られた複合酸化物に貴金属を担持させた場合に、貴金属との相互作用を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸素貯蔵能が低下してしまう傾向にある。
【0033】
更に、このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物の比表面積としては特に制限されないが、0.01〜20m/gであることが好ましく、0.05〜10m/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満では、貴金属との相互作用が小さくなるとともに、酸素貯蔵能が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子径が小さな粒子が増加し、耐熱性が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0034】
次に、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を製造するための本発明の方法について説明する。
【0035】
本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、セリア及びジルコニアの複合酸化物を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあるセリア−ジルコニア系固溶体粉末を準備し、該セリア−ジルコニア系固溶体粉末を1500〜3500kgf/cmの圧力で加圧成型する工程と、前記加圧成型されたセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体を還元条件下で、1400〜1550℃の温度で0.5〜24時間加熱処理する一次還元処理を施す工程と、前記一次還元処理されたセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体を還元条件下で、1600〜2000℃でかつ前記一次還元処理よりも100℃以上高い温度で0.5〜5時間加熱処理する二次還元処理を施すことにより前記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0036】
本発明にかかるセリア−ジルコニア系固溶体粉末(セリア及びジルコニアを含有する固溶体粉末)は、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])が43:57〜55:45の範囲にあることが必要であり、43:57〜48:52の範囲にあることがより好ましく、44:56〜47:53の範囲にあることが特に好ましい。用いるセリア−ジルコニア系固溶体粉末におけるセリウムの含有比率が前記下限未満では、ジルコニウムリッチ組成となったことによる酸素貯蔵能の低下がセリアの分相が抑制されることによる複合酸化物の安定性向上効果を上回るため、高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。他方、セリウムの含有比率が前記上限を超えると、セリアの分相が抑制されることによる複合酸化物の安定性向上効果が得られないため、高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。
【0037】
このようなセリア−ジルコニア系固溶体粉末としては、規則相を十分に形成させるという観点から、セリアとジルコニアとが原子レベルで混合された固溶体を用いることが好ましい。また、このようなセリアジルコニア系固溶体粉体としては、平均一次粒子径が5〜50nm程度であることが好ましい。セリアジルコニア系固溶体粉体の平均一次粒子径が前記下限未満になると、粉体中のセリアとジルコニアの固溶が十分に進行せず規則相が得られにくくなる傾向にある。他方、セリアジルコニア系固溶体粉体の平均一次粒子径が前記上限を超えると、加圧成型時の一次粒子の接触状態が悪化して還元処理時の粒成長が不十分になる傾向にある。
【0038】
また、このようなセリア−ジルコニア系固溶体粉末を製造する方法は特に制限されず、例えば、いわゆる共沈法を採用して、セリウム及びジルコニウムの含有比率が上記範囲内となるようにして前記固溶体粉末を製造する方法等が挙げられる。前記共沈法としては、例えば、セリウムの塩(例えば、硝酸塩)及びジルコニウムの塩(例えば、硝酸塩)を含有する水溶液を用い、アンモニアの存在下で共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を濾過、洗浄した後に乾燥し、更に焼成後、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕して、前記セリア−ジルコニア系固溶体粉末を得る方法が挙げられる。なお、前記セリウムの塩及びジルコニウムの塩からなる群から選択される少なくとも一種の塩を含有する水溶液は、得られる固溶体粉末中のセリウム及びジルコニウムの含有比率が所定の範囲内となるようにして調製する。また、このような水溶液には、必要に応じて、希土類元素並びにアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素の塩や、界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)等を添加してもよい。
【0039】
次に、各工程について説明する。本発明においては、先ず、前記セリア−ジルコニア系固溶体粉末を1500〜3500kgf/cmの圧力(好ましくは1750〜3000kgf/cmの圧力)で加圧成型する(加圧成型工程)。かかる加圧成型工程における圧力が前記下限未満では、粉体の充填密度が十分に向上しないため、還元処理時における結晶成長が十分に促進されず、結果として得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物における高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。他方、かかる加圧成型工程における圧力が前記上限を超えると、セリアの分相が進行しやすくなり、結果として得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物における高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。なお、このような加圧成型の方法としては特に制限されず、静水圧プレス等の公知の加圧成型方法を適宜採用できる。
【0040】
次に、本発明においては、前記加圧成型されたセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体に対して、還元条件下で、1400〜1550℃(好ましくは1450〜1550℃)の温度で0.5〜24時間(好ましくは1〜10時間)加熱処理する一次還元処理を施す(一次還元処理工程)。かかる一次還元処理の温度が前記下限未満では、規則相の安定性が低く、結果として得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物における高温耐久試験後の酸素貯蔵能が不十分となる。他方、かかる一次還元処理の温度が前記上限を超えると、セリアの分相が起こりやすくなり、酸素貯蔵能が低下する傾向にある。また、かかる一次還元処理の際の加熱時間が下限未満では、規則相の生成が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、セリアの分相が起こりやすくなる傾向にある。
【0041】
また、前記一次還元処理の方法は、還元性雰囲気下で前記固溶体粉末を所定の温度条件で加熱処理することが可能な方法であればよく、特に制限されず、例えば、(i)真空加熱炉内に前記固溶体粉末を設置し、真空引きした後に、炉内に還元性ガスを流入させて炉内の雰囲気を還元性雰囲気として所定の温度条件で加熱して還元処理を施す方法や、(ii)黒鉛製の炉を用いて炉内に前記固溶体粉末を設置し、真空引きした後、所定の温度条件で加熱して炉体や加熱燃料等から発生するCOやHC等の還元性ガスにより炉内の雰囲気を還元性雰囲気として還元処理を施す方法や、(iii)活性炭を充填した坩堝内に前記固溶体粉末を設置し、所定の温度条件で加熱して活性炭等から発生するCOやHC等の還元性ガスにより坩堝内の雰囲気を還元性雰囲気として還元処理を施す方法が挙げられる。
【0042】
このような還元性雰囲気を達成させるために用いる還元性ガスとしては、特に制限されず、CO、HC、H、その他の炭化水素ガス等の還元性ガスを適宜用いることができる。また、このような還元性ガスの中でも、より高温で還元性処理をした場合に炭化ジルコニウム(ZrC)等の複生成物が生成されることを防止するという観点からは、炭素(C)を含まないものを用いることがより好ましい。このような炭素(C)を含まない還元性ガスを用いた場合には、ジルコニウム等の融点に近いより高い温度条件での還元処理が可能となるため、結晶相の構造安定性を十分に向上させることが可能となる。
【0043】
次いで、前記一次還元処理されたセリア−ジルコニア系固溶体粉末成型体に対して、還元条件下で、1600〜2000℃でかつ前記一次還元処理よりも100℃以上高い(好ましくは1650〜1750℃でかつ前記一次還元処理よりも150℃以上高い)温度で0.5〜5時間(好ましくは1〜4時間)加熱処理する二次還元処理を施すことにより前記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を得る(二次還元処理工程)。かかる二次還元処理の温度が前記下限未満では、粒成長が不十分となる傾向にある。他方、前記二次還元処理の温度が前記上限を超えると、還元処理に要するエネルギー(例えば電力)と性能の向上とのバランスが悪くなる。また、前記二次還元処理の温度と一次還元処理の温度の差が100℃未満では、セリアの分相を十分に抑制しながら粒成長させることが難しくなる傾向にある。更に、かかる二次還元処理の際の加熱時間が下限未満では、粒成長が不十分となる傾向にある。他方、前記上限を超えると、十分に粒成長が進み、それ以上の操作が不要となるため経済性が低下する傾向にある。
【0044】
なお、前記二次還元処理の方法及び還元性雰囲気を達成させるために用いる還元性ガスとしては、前記一次還元処理において用いる還元処理の方法及び還元性ガスを用いることができる。
【0045】
本発明においては、前記二次還元処理工程の後に、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物に酸化処理を更に施すことが好ましい(酸化処理工程)。このような酸化処理を施すことにより、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、還元中に失われた酸素が補填され、酸化物粉末としての安定性が向上する傾向にある。
【0046】
このような酸化処理の方法は特に制限されず、例えば、酸化雰囲気(例えば、大気)中において前記セリア−ジルコニア系複合酸化物を加熱処理する方法を好適に採用することができる。また、このような酸化処理の際の加熱温度の条件としては、特に制限されないが、300〜800℃程度であることが好ましい。更に、前記酸化処理の際の加熱時間も特に制限されないが、0.5〜5時間程度であることが好ましい。
【0047】
本発明においては、前記二次還元処理工程又は前記酸化処理工程の後に、前記セリア−ジルコニア系複合酸化物に粉砕処理を更に施すことが好ましい(粉砕工程)。このような粉砕処理を施すことにより、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物を、コージェライトハニカムなどにコートする際の取り扱いが容易になる傾向にある。
【0048】
このような粉砕処理の方法は特に制限されず、例えば、湿式粉砕法、乾式粉砕法、凍結粉砕法などを好適に採用することができる。
【0049】
このように、前記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法を満たすことによって、(1)前記セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で50%以上であり、(2)前記I(14/29)値≧0.015であり、(3)前記I(28/29)値≦0.08であり、の3つの条件を同時に満たす本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物が得られる。
【0050】
なお、セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で70%以上含有する本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を得るためには、加圧成形における圧力が1750〜3000kgf/cm、一次還元処理における温度が1450〜1550℃で時間が1〜10時間、二次還元処理における温度が1650〜1750℃で時間が1〜4時間、前記一次還元処理温度と二次還元処理温度の差が150℃以上の条件を満たしていることが好ましい。
【0051】
以上、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法について説明したが、以下にそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0052】
本発明の排ガス浄化用触媒は、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有するものである。このような本発明の排ガス浄化用触媒は、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)と十分に高度な耐熱性とを併せ持ち、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮される。
【0053】
このような本発明の排ガス浄化用触媒の好適な例としては、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含む担体と、前記担体に担持された貴金属とからなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、銀等が挙げられる。また、このような担体に貴金属を担持させる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、貴金属の塩(硝酸塩、塩化物、酢酸塩等)又は貴金属の錯体を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液に前記セリア−ジルコニア系複合酸化物の粉末(担体)を浸漬し、溶媒を除去した後に焼成する方法を採用してもよい。また、前記担体に担持させる貴金属の量は特に制限されず、目的とする設計等に応じて適宜必要量担持させればよく、0.01質量%以上とすることが好ましい。
【0054】
更に、上記本発明の排ガス浄化用触媒の好適な他の例としては、触媒担体微粒子と、前記触媒担体微粒子に担持された貴金属とからなる第一触媒の周囲に、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を配置してなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような触媒担体微粒子としては特に制限されず、排ガス浄化用触媒の担体に用いることが可能な金属酸化物や金属酸化物複合体からなる担体(例えば、アルミナ粒子、アルミナ/セリアからなる粒子、アルミナ/セリア/ジルコニアからなる粒子等)を適宜用いることができる。また、このような触媒担体微粒子に貴金属を担持させる方法としては、前述の方法を採用することができる。また、前記触媒担体微粒子に担持させる貴金属の量は特に制限されず、目的とする設計等に応じて適宜必要量担持させればよく、0.01質量%以上とすることが好ましい。また、このような第一触媒の周囲に上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を配置する方法は特に制限されず、例えば、第一触媒と上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物とを混合する方法を採用することができる。更に、より高い触媒活性を得るという観点からは、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物が高度に分散された状態で前記第一触媒の周囲に配置されていることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で45:55であるセリア−ジルコニア系固溶体粉末を以下のようにして調製した。すなわち、先ず、CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液442gと、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液601gと、含有されるセリウムの1.1倍モル量の過酸化水素を含む200gとを、中和当量に対して1.2倍当量のアンモニアを含有する水溶液1220gに添加し、共沈物を生成し、得られた共沈物を遠心分離、洗浄(イオン交換水)した。次に、得られた共沈物を大気中110℃で10時間以上乾燥した後、400℃で5時間大気中にて焼成してセリウムとジルコニウムとの固溶体(CeO−ZrO固溶体)を得た。その後、前記固溶体を粉砕機(アズワン社製の商品名「ワンダーブレンダー」)を用いて篩で粒径が75μm以下となるように粉砕して、前記セリア−ジルコニア固溶体粉末を得た。
【0057】
次に、得られたセリア−ジルコニア固溶体粉末20gを、ポリエチレン製のバッグ(容量0.05L)に詰め、内部を脱気した後、前記バッグの口を加熱してシールした。続いて、静水圧プレス装置(日機装社製の商品名「CK4−22−60」)を用いて、前記バッグに対して冷間静水圧プレス(CIP)を1500kgf/cmの圧力(成型圧力)で1分間行って成型し、セリア−ジルコニア固溶体粉末の成型体を得た。成型体のサイズは、縦4cm、横4cm、平均厚み7mm、重量約20gとした。
【0058】
次いで、得られた成型体(2枚)を、活性炭70gを充填した紺蝸(内容積:直径8cm、高さ7cm)内に配置し、蓋をした後、高速昇温電気炉に入れ、昇温時間1時間で1000℃まで加熱した後、昇温時間2時間で1400℃(一次還元処理温度)まで加熱して3時間保持し、次いで、昇温時間2時間で1600℃(二次還元処理温度)まで加熱して2時間保持し、その後冷却時間4時間で1000℃まで冷却した後、自然放冷で室温まで冷却して還元処理品を得た。
【0059】
次に、得られた還元処理品を大気中、500℃の温度条件で5時間加熱して酸化し、複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で45:55であるセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は篩で75μm以下に粉砕した。
【0060】
<粒度分布の測定試験>
得られたセリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)の一次粒子の粒度分布を以下のようにして測定した。走査型電子顕微鏡として日本電子株式会社製の商品名「JSM−7000F」を用いて、CZ複合酸化物粒子の断面を任意に2箇所以上観察し、得られた各観察視野内(倍率500倍、240μm×240μmの領域)における結晶粒径について数基準で求め、その分布を評価した平均値である。なお、ここにいう結晶粒径とは、断面が円形でない場合には最小外接円の直径をいう。得られた結果を表1に示す。
【0061】
<X線回折(XRD)測定>
得られたセリア−ジルコニア複合酸化物を大気中1100℃で5時間加熱処理し(高温耐久試験)、処理後のセリア−ジルコニア複合酸化物の結晶相をX線回折法により測定した。なお、X線回折装置として理学電機社製の商品名「RINT−2100」を用いてX線回折パターンを測定し、I(14/29)値及びI(28/29)値を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0062】
<酸素吸放出量の測定試験:OSC評価>
前記耐久試験後のセリア−ジルコニア複合酸化物粉末1gと、Pd(0.25wt%)を担持したPd/Al触媒1gとを乳鉢で物理混合し、加圧成形、粉砕して、直径0.5mm〜1mmのペレット状の排ガス浄化用触媒を得た。
【0063】
得られた触媒0.5gを石英反応管(内容積:直径1.7cm、長さ9.5cm)に充填し、固定床流通反応装置にてリッチガス(CO(2容量%)+N(残量))とリーンガス(O(1容量%)+N(残量))とを3分毎に交互に切り替えて流し、リッチガス雰囲気で生成するCOの量から酸素吸放出量(OSC)を求めた。なお、ガス流量は10L/min、評価温度は600℃とし、分析計としてはベスト測器社製の商品名「Bex5900Csp」を用いた。得られた結果を表1に示す。
【0064】
(実施例2)
実施例1で得られたセリア−ジルコニア固溶体粉末を用い、加圧成型の条件として成型圧力を2000kgf/cmとした以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
実施例1で得られたセリア−ジルコニア固溶体粉末を用い、加圧成型の条件として成型圧力を2000kgf/cm、還元処理の条件として、一次還元処理における昇温時間を3時間、還元処理温度を1500℃、保持時間を3時間とし、二次還元処理における昇温時間が2時間、還元処理温度が1700℃、保持時間が2時間とした以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液の量を423g、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液の量を623gとした以外は、実施例1と同様にして、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57であるセリア−ジルコニア固溶体粉末を得、次いで実施例3と同様にして複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57であるセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0067】
(実施例5)
CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液の量を491g、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液の量を547gとした以外は、実施例1と同様にして、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で50:50であるセリア−ジルコニア固溶体粉末を得、次いで実施例3と同様にして複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で50:50であるセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
(実施例6)
CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液の量を541g、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液の量を492gとした以外は、実施例1と同様にして、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で55:45であるセリア−ジルコニア固溶体粉末を得、次いで実施例3と同様にして複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で55:45であるセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0069】
(実施例7)
実施例1で得られたセリア−ジルコニア固溶体粉末を用い、加圧成型の条件として成型圧力を3000kgf/cm、還元処理の条件として、一次還元処理における昇温時間を3時間、還元処理温度を1500℃、保持時間を3時間とし、二次還元処理における昇温時間が2時間、還元処理温度が1700℃、保持時間が2時間とした以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0070】
(実施例8)
CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液の量を472g、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液の量を569gとした以外は、実施例1と同様にして、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で48:52であるセリア−ジルコニア固溶体粉末を得、次いで実施例3と同様にして複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で48:52であるセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0071】
(比較例1)
実施例1で得られたセリア−ジルコニア固溶体粉末を用い、加圧成型を行わず、還元処理の条件として、一次還元処理における昇温時間を3時間、還元処理温度を1500℃、保持時間を3時間とし、二次還元処理における昇温時間が2時間、還元処理温度が1700℃、保持時間が2時間とした以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0072】
(比較例2)
実施例1で得られたセリア−ジルコニア固溶体粉末を用い、加圧成型の条件として成型圧力を500kgf/cm、還元処理の条件として、一次還元処理における昇温時間を2時間、還元処理温度を1400℃、保持時間を5時間とし、二次還元処理を行わず、その後冷却時間4時間で1000℃まで冷却、とした以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0073】
(比較例3)
実施例1で得られたセリア−ジルコニア固溶体粉末を用い、加圧成型の条件として成型圧力を2000kgf/cm、還元処理の条件として、一次還元処理における昇温時間を3時間、還元処理温度を1700℃、保持時間を5時間とし、二次還元処理を行わず、その後冷却時間4時間で1000℃まで冷却、とした以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0074】
(比較例4)
実施例1で得られたセリア−ジルコニア固溶体粉末を用い、加圧成型の条件として成型圧力を4000kgf/cm、還元処理の条件として、一次還元処理における昇温時間を3時間、還元処理温度を1500℃、保持時間を3時間とし、二次還元処理における昇温時間が2時間、還元処理温度が1700℃、保持時間が2時間とした以外は実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0075】
(比較例5)
CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液の量を413g、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液の量を634gとした以外は、実施例1と同様にして、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で42:58であるセリア−ジルコニア固溶体粉末を得、次いで実施例3と同様にして複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で42:58であるセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0076】
(比較例6)
CeO換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液の量を550g、ZrO換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液の量を481gとした以外は、実施例1と同様にして、セリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で56:44であるセリア−ジルコニア固溶体粉末を得、次いで実施例3と同様にして複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で56:44であるセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して、実施例1と同様にして、粒度分布の測定試験、X線回折測定、及び酸素吸放出量の測定試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示した実施例1〜実施例8の結果と比較例1〜比較例6の結果との比較から明らかなように、本発明の製造方法によりセリウムとジルコニウムとの含有比率がモル比([セリウム]:[ジルコニウム])で43:57〜55:45の範囲にあるセリア−ジルコニア系固溶体粉末を用い、加圧成形における圧力が1500〜3500kgf/cm、一次還元処理における温度が1400〜1550℃、二次還元処理における温度が1600〜2000℃の範囲内にある場合には(実施例1〜実施例8)、セリア−ジルコニア系複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が該複合酸化物の全一次粒子に対して粒子数基準で50%以上であり、前記I(14/29)値≧0.015であり、かつ前記I(28/29)値≦0.08の3つの条件を同時に満たす本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物が得られることが確認された。また、得られた本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物(実施例1〜実施例8)によって、酸素貯蔵能及び耐熱性が十分に優れたものになっているとともに、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発現することが確認された。
【0079】
なお、セリア及びジルコニアの複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が複合酸化物の全粒子に対して50%未満の場合(比較例1及び2)は、パイロクロア相の耐熱性が低下し、酸素貯蔵能(OSC)も劣ることが確認された。
【0080】
また、セリア及びジルコニアの複合酸化物におけるCe/Zr比、成型圧力条件が規定の範囲内であっても、2段還元処理を行わなかった場合(比較例4)は、良好な酸素貯蔵能(OSC)が発現しないことが確認された。
【0081】
また、セリア及びジルコニアの複合酸化物における粒子径1.5〜4.5μmの一次粒子が複合酸化物の全粒子に対して規定の範囲内であっても、I(14/29)値又はI(28/29)値が規定の範囲以外の場合(比較例4〜6)は、良好な酸素貯蔵能(OSC)が発現しないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明によれば、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)と十分に高度な耐熱性とを併せ持ち、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【0083】
このように本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、十分に優れた酸素貯蔵能(OSC)と十分に高度な耐熱性とを併せ持つため、排ガス浄化用触媒の担体や助触媒、触媒雰囲気調整材等として好適に利用することが可能である。