特許第5763744号(P5763744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5763744CO気相法によってシュウ酸エステルを生成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763744
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】CO気相法によってシュウ酸エステルを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/36 20060101AFI20150723BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20150723BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20150723BHJP
   C07C 69/36 20060101ALI20150723BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   C07C67/36
   B01J23/89 Z
   B01J23/656 Z
   C07C69/36
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-504101(P2013-504101)
(86)(22)【出願日】2011年4月13日
(65)【公表番号】特表2013-528572(P2013-528572A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】CN2011000649
(87)【国際公開番号】WO2011127752
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】201010146999.2
(32)【優先日】2010年4月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】劉俊涛
(72)【発明者】
【氏名】孫鳳侠
(72)【発明者】
【氏名】▲クァイ▼駿
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−279116(JP,A)
【文献】 特開2004−107336(JP,A)
【文献】 特開昭57−142942(JP,A)
【文献】 特開昭57−122042(JP,A)
【文献】 特開2011−236208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/36
C07C 69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法であって、
(c)NOを含有する気相流Vとメタノールと酸素とを超重力回転床炉IIに仕込み、酸化的エステル化反応を経て亜硝酸メチルを含有する流出物VIを生成し;当該流出物VIを分離して得られる亜硝酸メチルの流出物VIIをCOガスIIとともにカップリング反応炉IIに仕込み、触媒IIに接触させて反応させ、シュウ酸ジメチルの流出物VIIIとNOを含有する気相流出物IXとを形成し;この結果得られるシュウ酸ジメチルの流出物VIIIを分離してシュウ酸ジメチル生成物Iを得るステップと、
(d)任意で、リサイクルするために、上記NOを含有する気相流出物IXをステップ(c)に戻して、上記NOを含有する気相流Vと混合するステップとを含み、
上記超重力回転床炉IIのローターは、多孔質充填層を備え、上記触媒IIは、触媒のキャリアの重量に対して単体を基準としたPd含有量が0.01〜1%のPd含有触媒であることを特徴とするCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項2】
上記NOを含有する気相流Vは、ステップ(c)に先立つ以下に示すステップ(a)および(b)にて得られることを特徴とする請求項1に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
(a)窒化酸化物の混合物、炭素数が2〜4のアルカノール、および、空気または酸素を超重力回転床炉Iにまず仕込んで、炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルを有する流出物Iを生成し;当該流出物Iを分離することによって、凝縮できないガス流出物IIと炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルの流出物IIIとを得るステップ。
(b)上記炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルの流出物IIIとCOガスIとをカップリング反応炉Iに仕込み、触媒Iに接触させて反応させ、炭素数2〜4のシュウ酸アルキルの液相流出物IVとNOを含有する気相流Vとを形成し;この形成されたままの炭素数2〜4のシュウ酸アルキルの液相流出物IVを分離して、炭素数2〜4のシュウ酸アルキル生成物IIを得るステップ。
【請求項3】
上記超重力回転床炉Iのローターが多孔質充填層を備え、
上記COガスIIの上記COガスIに対するモル比が5〜300:1であり、
上記触媒Iは、触媒のキャリアの重量に対して単体を基準としたPd含有量が0.01%〜1%のPd含有触媒であることを特徴とする請求項2に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項4】
上記超重力回転床炉IIは、反応温度が20〜100℃であり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、反応接触時間が0.05〜300sであり、上記NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:1〜50:0.01〜0.25であることを特徴とする請求項1に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項5】
上記超重力回転床炉IIは、反応温度が25〜70℃であり、反応圧力が0.05〜1.0MPaであり、反応接触時間が1〜200sであり、上記NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:1〜20:0.1〜0.25であることを特徴とする請求項4に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項6】
上記超重力回転床炉Iは、反応温度が20〜100℃であり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、反応接触時間が0.05〜300sであり、窒化酸化物の混合物、炭素数が2〜4のアルカノール、空気中の酸素または酸素のモル比が1:1〜50:0.2〜0.3であり、
上記超重力回転床炉IIは、反応温度が20〜100℃であり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、反応接触時間が0.05〜300sであり、上記NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:1〜50:0.01〜0.25であることを特徴とする請求項2または3に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成するプロセス。
【請求項7】
上記超重力回転床炉Iは、反応温度が30〜70℃であり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、反応接触時間が1〜200sであり、窒化酸化物の混合物、炭素数が2〜4のアルカノール、空気中の酸素または酸素のモル比が1:1〜20:0.22〜0.28であり、
上記超重力回転床炉IIは、反応温度が25〜70℃であり、反応圧力が0.05〜1.0MPaであり、反応接触時間が1〜200sであり、上記NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:1〜20:0.1〜0.25であることを特徴とする請求項6に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成するプロセス。
【請求項8】
上記カップリング反応炉IIは、反応温度が80〜160℃であり、反応接触時間が0.1〜100sであり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、上記COガスIIの上記亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.1〜10:1であることを特徴とする請求項1に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項9】
上記カップリング反応炉IIは、反応温度が90〜150℃であり、反応接触時間が0.5〜50sであり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、上記COガスIIの上記亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.1〜5:1であることを特徴とする請求項8に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項10】
上記カップリング反応炉Iは、反応温度が80〜160℃であり、反応接触時間が0.1s〜100sであり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、上記COガスIの炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルに対するモル比が1.1〜15:1であり、
上記カップリング反応炉IIは、反応温度が80〜160℃であり、反応接触時間が0.1〜100sであり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、上記COガスIIの上記亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.1〜10:1であることを特徴とする請求項2または3に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項11】
上記カップリング反応炉Iは、反応温度が90〜150℃であり、反応接触時間が0.5s〜50sであり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、上記COガスIの炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルに対するモル比が1.1〜10:1であり、
上記カップリング反応炉IIは、反応温度が90〜150℃であり、反応接触時間が0.5〜50sであり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、上記COガスIIの上記亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.1〜5:1であることを特徴とする請求項10に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項12】
上記炭素数が2〜4のアルカノールは、エタノール、プロパノール、およびブタノールから選択されることを特徴とする請求項2,3,,または10に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項13】
上記COガスIIの上記COガスIに対するモル比は、10〜200:1であることを特徴とする請求項2,3,,または10に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項14】
上記触媒Iおよび/または上記触媒IIが、単体を基準として触媒のキャリアの重量の0.01%〜0.8%のPdを含有する触媒であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【請求項15】
上記触媒Iおよび/または上記触媒IIが、単体を基準として触媒のキャリアの重量の0.02%〜0.6%のPdを含有する触媒であることを特徴とする請求項14に記載のCO気相法によってシュウ酸ジメチルを生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、CO気相法によってシュウ酸エステルを生成する方法(プロセス)に関し、特に、COカップリングによって、シュウ酸ジメチル、さらに、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジプロピル、または、シュウ酸ジブチルを生成するプロセスに関し、窒素酸化物または亜硝酸エステルの消費が大幅に低減される。
【0002】
シュウ酸エステルは、有機化学工業において重要な原料であり、ファインケミカル産業分野において、様々な染料、医薬品、重要な溶媒、抽出剤、および様々な中間体を生成するために大規模に使用されている。21世紀になり、シュウ酸エステルは、環境に優しい生分解性の工学プラスチック単量体として、世界的に広く価値が認められている。また、シュウ酸エステルを常温で加水分解することによってシュウ酸が生成され、常温でアミノ分解することによって、高品質かつ持続放出性を有する肥料であるオキサミドが生成される。さらに、シュウ酸エステルは、溶媒としても、医薬品や染料などの中間体を生成するために使用可能であり、例えば、シュウ酸エステルと、脂肪酸エステル、シクロヘキシルアセチルベンゼン、アミノアルコール、および、多数の複素環化合物との各種縮合反応が実施可能である。また、シュウ酸エステルは、医学においてホルモンとして使用されるチミンを合成するためにも使用可能である。さらに、シュウ酸エステルに低圧で水素付加することによって、化学工業における重要な原料であるエチレングリコールが生成される。しかしながら、現在、エチレングリコールの生成は主に石油を用いる経路に依存しており、コストが高い。中国は、毎年莫大な量の輸入エチレングリコールを必要とし、2007年には輸入量が約480万tである。
【0003】
シュウ酸エステルの従来の生成方法では、アルコールでエステル化することによりシュウ酸を使用する。この生成法はコストが高く、多くのエネルギーを消費し、しかも、深刻な汚染を引き起こし、原料を極度に大量に使用する。長年にわたって、低コストで環境に優しいプロセス経路が模索されている。1960年代には、米国のUnocal Corp社のD.F.フェントンが、CO、アルコール、および、酸素を用いて、酸化的カルボニル化反応によってシュウ酸ジアルキルが直接合成可能であることを見出した。それ以来、日本の宇部興産とAmerican Atlantic Richfield Company (ARCO)社とが、この分野における研究開発を継続的に実施している。
【0004】
開発過程については、CO酸化的カップリング法によってシュウ酸エステルを合成するプロセスは、液相法および気相法の2つのプロセスに分割可能である。CO液相法によってシュウ酸エステルを合成する条件は、反応が高圧で実施されるために液相系が設備を腐食しやすく、反応時に使用する触媒が流出しやすいので、比較的厳しい。COカップリング気相法によってシュウ酸エステルを生成する上記方法が、もっとも有利である。中国国外では、宇部興産とイタリアのMontedison社が、気相法に関する研究を1978年から継続的に実施している。その中で、宇部興産は、0.5MPaの反応圧力および80℃〜150℃の温度において触媒を用いてシュウ酸エステルを気相合成する技術を開発した。
【0005】
シュウ酸エステルを合成する反応過程を次に記す。
【0006】
カップリング反応: 2CO+2RONO→2NO+(COOR) …(1)
再生反応: 2ROH+0.5O+2NO →2RONO+HO …(2)
この過程によれば、理論的には、この系は確かにNOもRONO(亜硝酸アルキル)も消費しないが、実際にはステップ(2)の反応時に、RONOが一次生成物として生成される以外に、副反応が起こることが多く、特に希硝酸が副生成物として生成されることが多い。この反応によって、NOガスの消費量は必ず増加する。したがって、シュウ酸エステルを合成する触媒反応が長時間安定して連続的に進行するように、NOを反応系に絶えず補充しなければならない。通常の状況において、NOは、アンモニアの酸化から得られる生成物または硝酸の末端ガスに由来する。ただし、このアンモニアの酸化から得られる生成物または硝酸の末端ガスは、必要なNOまたはNOに加えて、N、Ar、Heなどの非反応性かつ凝縮が困難なガスをさらに含有している。これらのガスが大量にシュウ酸エステルを合成する系に入れば、ガスはシュウ酸エステルを合成する触媒反応に対して非常に不利に作用し、反応を停止させることさえある。反応の成功が保証できるのは、これらの非反応性ガスが反応系から排出される場合に限られる。しかし、N、Ar、Heなどの非反応性かつ凝縮が困難なガスを反応系から排出すると、合成反応系において有用な反応性物質(例えば、NOやRONO)も同時に除去される。この場合、原料は浪費され、環境は汚染される。したがって、NOおよびRONOは効果的に回収されなければならず、また、環境汚染を起こさない処理が実施されなければならない。したがって、窒素酸化物または亜硝酸エステルの低い利用効率を増加させる鍵となる点は、反応過程時(窒素酸化物または亜硝酸エステルを系に導入する反応、および通常の循環反応過程を含む)の副反応(例えば、硝酸の生成反応)の発生を抑制しながら、凝縮できない上記ガスによって除去される素材(窒素酸化物または亜硝酸エステル)の損失をできる限り抑制しなければならないことにあることがわかる。
【0007】
中国特許CN1048098Aは、圧縮と凝縮とを組み合わせた方法を利用してこの課題を解決したが、該特許が要求する動作条件は比較的厳しく、効果は非常に小さい。中国特許CN200510107783.4は、上記CN1048098Aを改良し、NOを使用することによってシュウ酸エステルを合成する新しい生成方法を開示する。まず、主にアルコールを使用して、大量の亜硝酸エステルを吸収する。次に、圧縮と凝縮とを組み合わせた方法を利用して、少量の気相のアルコールと亜硝酸エステルとを、0.1MPa〜10MPaの圧力および−20℃〜100℃の凝縮温度で凝縮して液体にする。これらのアルコール、亜硝酸エステル、および凝縮できないガスを分離した後に、回収済みの凝縮液体をリサイクルし、さらに、凝縮できないガスを排出する。言うまでもなく、この方法には、動作条件が厳しいという問題、さらに操業エネルギーコストが高く窒素酸化物または亜硝酸エステルの利用効率が低いという問題も存在する。
【0008】
超重力技術は、多相性フローの提供および反応過程を向上させる新しい技術である。この技術は20世紀における登場以来、中国国内でも中国国外でも広くその価値が認められている。超重力技術は応用範囲が広く、しかも、小型で、軽量で、消費エネルギーが少なく、操作しやすく、維持しやすく、安全性が高く、信頼性が高く、柔軟であり、さらに、環境に対する適応性が高いという、従来の機器にはない長所があるので、環境保護、材料化学工業、および、生物学などの産業分野における超重力技術の商的応用が嘱望されている。ただし、現在、超重力技術は、主に適用の開発段階にある。また、炭素数が1〜4の亜硝酸アルキルの生成、および、この生成を通じて実施されるシュウ酸エステルの生成における、超重力回転床炉(supergravity rotating bed reactor)の使用については、未だ報告されていない。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明によって解決される技術的問題は、先行技術においては窒素酸化物または亜硝酸エステルの利用効率が低いという問題である。本発明は、窒素酸化物または亜硝酸エステルの利用効率が高いという効果を奏する、CO気相法によってシュウ酸エステルを生成する新しい方法を提供する。
【0010】
上記技術的問題を解決するために、本発明において使用する技術的解決策を次に記載する。
【0011】
CO気相法によってシュウ酸エステルを生成する方法は、
(c)NOを含有する気相流Vとメタノールと酸素とを超重力回転床炉IIに仕込み、酸化的エステル化反応を経て亜硝酸メチルを含有する流出物VIを生成し;流出物VIを分離して得られる亜硝酸メチルの流出物VIIをCOガスIIとともにカップリング反応炉IIに仕込み、触媒IIに接触させて反応させ、シュウ酸ジメチルの流出物VIIIとNOを含有する気相流出物IXとを形成し;この結果得られるシュウ酸ジメチルの流出物VIIIを分離してシュウ酸ジメチル生成物Iを得るステップと、
(d)任意で、リサイクルするために、NOを含有する気相流出物IXをステップ(c)に戻してNOを含有する気相流Vと混合するステップとを含み、
上記超重力回転床炉IIのローターは、多孔質充填層を備え、上記触媒IIは、触媒のキャリアの重量に対して単体を基準としたPd含有量が0.01〜1%のPd含有触媒である。
【0012】
1つの好適な実施形態では、上記NOを含有する気相流Vが、ステップ(c)に先立って、以下に示すステップ(a)および(b)にて得られる。
【0013】
(a)窒化酸化物の混合物、炭素数が2〜4のアルカノール、および、空気または酸素を超重力回転床炉Iにまず仕込んで、炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルを有する流出物Iを生成し;この流出物Iを分離することによって、凝縮できないガス流出物IIと炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルの流出物IIIとを得るステップ。
【0014】
(b)炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルの流出物IIIとCOガスIとをカップリング反応炉Iに仕込み、触媒Iに接触させて反応させ、シュウ酸エステルの液相流出物IVとNOを含有する気相流Vとを形成し;この形成されたままのシュウ酸エステルの液相流出物IVを分離して、シュウ酸エステル生成物IIを得るステップ。
【0015】
上記好適な実施形態に対してさらに好適な実施形態では、上記超重力回転床炉Iのローターが多孔質充填層を備え、上記COガスIIの上記COガスIに対する(COガスII対COIガス)モル比が5〜300:1であり、上記触媒Iが、触媒のキャリアの重量に対して単体を基準としたPd含有量が0.01〜1%のPd含有触媒である。
【0016】
ここで、上記技術的解決策における上記超重力回転床炉Iの動作条件は、好ましくは、反応温度が20〜100℃であり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、反応接触時間が0.05〜300sであり、窒化酸化物の混合物、炭素数が2〜4のアルカノール、空気中の酸素または酸素のモル比が1:1〜50:0.2〜0.3である。さらに、超重力回転床炉Iのより好ましい動作条件は、反応温度が30〜70℃であり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、反応接触時間が1〜200sであり、窒化酸化物の混合物、炭素数が2〜4のアルカノール、空気中の酸素または酸素のモル比が1:1〜20:0.22〜0.28である。上記超重力回転床炉IIの動作条件は、好ましくは、反応温度が20〜100℃であり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、反応接触時間が0.05〜300sであり、上記NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:1〜50:0.01〜0.25である。さらに、超重力回転床炉IIのより好ましい動作条件は、反応温度が25〜70℃であり、反応圧力が0.05〜1.0MPaであり、反応接触時間が1〜200sであり、上記NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:1〜20:0.1〜0.25である。
【0017】
上記技術的解決策における上記カップリング反応炉Iの動作条件は、好ましくは、反応温度が80〜160℃であり、反応接触時間が0.1〜100sであり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、上記COガスIの、炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルに対するモル比が1.1〜15:1である。さらに、上記カップリング反応炉Iのより好ましい動作条件は、反応温度が90〜150℃であり、反応接触時間が0.5〜50sであり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、上記COガスIの、炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルに対するモル比が1.1〜10:1である。上記カップリング反応炉IIの動作条件は、好ましくは、反応温度が80〜160℃であり、反応接触時間が0.1〜100sであり、反応圧力が−0.05〜2.0MPaであり、上記COガスIIの、上記亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.1〜10:1である。さらに、上記カップリング反応炉IIのより好ましい動作条件は、反応温度が90〜150℃であり、反応接触時間が0.5s〜50sであり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、上記COガスIIの上記亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.1〜5:1である。
【0018】
上記技術的解決策における窒化酸化物の混合物は、好ましくは、アンモニアの酸化から得られる生成物および硝酸の末端ガスから選択されるか、好ましくは、亜硝酸塩を硫酸または硝酸と反応させることによって、もしくは、硝酸を分解することによって得られる。上記窒化酸化物の混合物のより好適な実施形態では、該混合物がアンモニアの酸化から得られる生成物から選択され、炭素数が2〜4のアルカノールがエタノール、プロパノール、および、ブタノールから選択され、上記COガスIIの上記COガスIに対するモル比が好ましくは10〜200:1の範囲である。
【0019】
上記技術的解決策における上記触媒Iおよび上記触媒IIの活性成分はどちらもPdであり、好ましくは、このPdの含有量が単体を基準として触媒のキャリアの重量の0.01〜0.8%の範囲であり、より好ましくは、該含有量が触媒のキャリアの重量の0.02〜0.6%の範囲である。該触媒Iおよび触媒IIは、必要に応じて補助剤およびキャリアをさらに有する。この補助剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または、遷移金属元素の化合物のうちの少なくとも1つから選択され、含有量は、金属単体を基準として触媒の重量の0.01%〜15%、好ましくは1%〜10%である。補助剤は、好ましくは、K、Fe、Bi、Cu、Zr、Ba、Mn、Mg、Ce、および、Snの化合物のうちの少なくとも1つから選択され、その含有量は、金属単体を基準として触媒の重量の0.05%〜10%、好ましくは1%〜7%の範囲である。該キャリアは、アルミナ、モレキュラシーブ(molecular sieve;商品名)、酸化チタン、酸化マグネシウム、および、酸化カルシウムのうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはα−Alから選択される。
【0020】
合成ガスによってエチレングリコールを調製する、2つのステップを含む反応プロセスでは、シュウ酸エステルを生成するCOカップリング経路の選択が非常に重要であることはよく知られている。実用的な産業分野への応用を鑑みると、まずCOカップリングによってシュウ酸ジメチルを生成し、次にシュウ酸ジメチルに水素付加してエチレングリコールを生成する技術的経路の実現可能性が最も高いと、一般的に考えられている。ただし、COカップリング反応過程では、必然的にNOが消費される。したがって、COカップリングによってシュウ酸ジメチルを生成するプロセスへNO原料を補充する際に、一般的な状況下では、メタノール、酸素、および、NOを用いて酸化的エステル化を起こし、次に、圧縮、凝縮、およびアルコール吸収を組み合わせた方法によって非反応性ガスを排気し、さらに、NO反応によって生じる亜硝酸メチルを系に導入して反応させる。ところが、亜硝酸メチルの沸点(−16.5℃)がかなり低く、亜硝酸メチルが常温では気体であるという問題がある。したがって、圧縮、凝縮、および、アルコール吸収を組み合わせた方法を採用すれば、操業エネルギーのコストが高くなり、効果が乏しくなる。しかしながら、例えば本発明の一実施形態では、酸化的エステル化反応炉Iおよびカップリング反応IをNO補充系に組み込み、こうすることによって、エタノール、プロパノール、または、ブタノールが酸素およびNOで最初に酸化的エステル化されて、亜硝酸エチル、亜硝酸プロピル、または、亜硝酸ブチルを生成する。次に、窒化酸化物に原料として導入された非反応性の不活性成分が、単純な分離によって直接排気されるか、または、さらに処理される。この場合、排気ガス中の窒化酸化物または亜硝酸エステルの量は、比較的小さな量を超えないように抑制することができる。次に、亜硝酸エチル(沸点は15℃)、亜硝酸プロピル(沸点は39℃)、または亜硝酸ブチル(沸点は75℃)と、COガスIとが、カップリング反応炉Iに供給されてカップリング反応を起こし、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジプロピル、またはシュウ酸ジブチルを生成する。一方で、この反応によってNOが放出される。この反応によって生じるNO、未反応のCO、新たに補充された酸素、およびメタノールが反応炉IIに仕込まれて、亜硝酸メチルを生成する。この場合、圧縮および凝縮は不必要となる。従来の圧力または温度をそのまま用いて分離した後、亜硝酸メチルがCOガスIIと混合され、カップリング反応炉IIへ供給されて、反応を継続させる。上記反応によって生じるNOは、反応炉IIの入口に直接入ってリサイクルされる。カップリング反応炉IIはカップリング反応過程の一次反応炉であり、カップリング反応炉Iは、補助機能を実施するNO補充系の反応炉である。CO原料の大部分は反応炉IIを通って反応を起こして、シュウ酸ジメチルを生成する。亜硝酸アルキルの生成のための、酸素とアルコールとを用いた窒化酸化物の上記酸化的エステル化は、反応が素早く進み、一方で、硝酸などを生成する副反応は上記反応に比べてわずかに遅いことが研究によって見出された。NOの酸化的エステル化過程の反応速度は、主に、ガス−液体間の質量輸送に対する抵抗によって影響される。ガス−液体間の質量輸送効率を効果的に増加させれば、Nの生成確率をさらに効果的に抑制することが可能であり、こうすることによって、窒化酸化物または亜硝酸エステルの損失をさらに抑制できる。酸素およびアルコールによる窒化酸化物の酸化的エステル化の特徴点に関する十分な研究に基づいて、本発明の技術的解決策は、さらに、超重力回転床炉を酸化的エステル化の反応炉として使用することを提案する。この超重力回転床炉の使用は、ガス−液体間の質量輸送効率を指数関数的に増加させることができるという超重力回転床炉が持つ卓越した長所をフルに利用し、また、一次反応をさらに効果的に促進して副反応の発生を大幅に阻害して、こうすることによって、NOなどの原料の利用効率を増加させることを目的とするものである。簡単に言えば、本発明は、個々の亜硝酸エステルの沸点の差異を十分に利用し、超重力回転床炉が持つ高効率質量輸送という長所をフルに活用して、その結果、カップリング反応の高収率および高選択性を保証し、その一方で、窒化酸化物または亜硝酸エステルの損失を劇的に削減し、窒化酸化物または亜硝酸エステルの利用効率を増加させ、環境汚染を削減する。
【0021】
例えば、本発明の技術的解決策を使用することによって、窒化酸化物の混合物、炭素数が2〜4のアルカノール、および空気を超重力回転床炉Iにまず仕込んで、炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルを有する流出物Iを生成し;この流出物Iを分離することによって、凝縮できないガス流出物IIと炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルの流出物IIIとを得て;炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルの流出物IIIとCOガスIとをカップリング反応炉Iに仕込み、触媒Iに接触させて反応させ、シュウ酸エステルの液相流出物IVとNOを含有する気相流Vとを形成し;上記NOを含有する気相流Vとメタノールと酸素とを超重力回転床炉IIに仕込み、酸化的エステル化反応を経て亜硝酸メチルを含有する流出物VIを生成し;この流出物VIを分離して得られる亜硝酸メチルの流出物VIIをCOガスIIとともにカップリング反応炉IIに仕込み、触媒IIに接触させて反応させ、シュウ酸ジメチルの流出物VIIIとNOを含有する気相流出物IXとを形成し;任意で、リサイクルするために、上記NOを含有する気相流出物IXと上記NOを含有する気相流Vとを混合する。ここで、上記COガスIIの上記COガスIに対するモル比は10〜200:1の範囲であって、窒化酸化物はアンモニアの酸化から得られる生成物から選択され、炭素数が2〜4のアルカノールは、エタノール、プロパノール、およびブタノールから選択され、上記触媒Iおよび上記触媒IIは、どちらも触媒のキャリアの重量に対して単体を基準としたPd含有量が0.01〜1%であるPd含有触媒から選択される。上記超重力回転床炉IおよびIIのローターは、どちらも多孔質充填層を備えている。上記超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が30〜70℃であり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、反応接触時間が1〜200sであり、窒化酸化物の混合物、炭素数が2〜4のアルカノール、空気中の酸素または酸素のモル比が1:1〜50:0.2〜0.3である。上記超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が25〜70℃であり、反応圧力が0.05〜1.0MPaであり、反応接触時間が1〜200sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:1〜20:0.1〜0.25である。上記カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が90〜150℃であり、反応接触時間が0.5〜50sであり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、COガスIの、炭素数が2〜4の亜硝酸アルキルに対するモル比が1.1〜10:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が90〜150℃であり、反応接触時間が0.5〜50sであり、反応圧力が0.01〜1.0MPaであり、COガスIIの、亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.1〜5:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が98%を超え、好ましくは99%を超えることが可能である。こうすることによって、優れた技術的効果が得られる。
【0022】
本発明のさらなる実証について以下に例示するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0023】
〔発明の詳細な説明〕
(実施例1)
アンモニアの酸化から得られるNOを有する混合ガス(含有量が90体積%のNOおよび含有量が10体積%の窒素)、エタノール、および酸素を超重力回転床炉Iにまず仕込んで、亜硝酸エチルを有する流出物Iを生成し;当該流出物Iを分離することによって、(Nを含有する)凝縮できないガス流出物IIと亜硝酸エチルの流出物IIIとを得て;当該亜硝酸エチルの流出物IIIとCOガスIとをカップリング反応炉Iに仕込み、触媒Iに接触させ、シュウ酸ジエチルの液相流出物IVとNOを含有する気相流Vとを形成し;当該NOを含有する気相流Vとメタノールと酸素とを超重力回転床炉IIに仕込み、酸化的エステル化反応を経て亜硝酸メチルを含有する流出物VIを生成し;当該流出物VIを分離して得られる亜硝酸メチルの流出物VIIをCOガスIIとともにカップリング反応炉IIに仕込み、触媒IIに接触させて反応させ、シュウ酸ジメチルの流出物VIIIとNOを含有する気相流出物IXとを形成し;リサイクルするために、NOを含有する気相流出物IXとNOを含有する気相流Vとを混合する。ここで、COガスIIのCOガスIに対するモル比は150:1であって、触媒Iおよび触媒IIは、どちらも活性成分としてPdを選択し、かつ、その重量組成はどちらも、0.45%Pd+0.40%K+0.22%Fe/α−A1である。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が40℃であり、反応圧力が0.01MPaであり、反応接触時間が50sであり、NO、エタノール、酸素のモル比が1:20:0.25である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が30℃であり、反応圧力が0.01MPaであり、反応接触時間が20sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:5:0.18である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が98℃であり、反応接触時間が3sであり、反応圧力が0.01MPaであり、COガスIの亜硝酸エチルに対するモル比が3:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が120℃であり、反応接触時間が5sであり、反応圧力が0.01MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が3:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.4%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が20ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が890g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が98.2%である。
【0024】
(実施例2)
本実施例では、COガスIIのCOガスIに対するモル比が100:1であり、触媒Iおよび触媒IIは、どちらも活性成分としてPdを選択し、かつその重量組成が、どちらも0.30%Pd+0.2%Bi+0.02%Fe/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。上記炭素数が2〜4のアルカノールはエタノールから選択される。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が70℃であり、反応圧力が0.5MPaであり、反応接触時間が150sであり、NO、エタノール、酸素のモル比が1:20:0.26である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が45℃であり、反応圧力が0.4MPaであり、反応接触時間が30sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:25:0.20である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が150℃であり、反応接触時間が40sであり、反応圧力が0.1MPaであり、COガスIの亜硝酸エチルに対するモル比が5:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が140℃であり、反応接触時間が2sであり、反応圧力が0.2MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が5:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.6%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が25ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が980g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が98.6%である。
【0025】
(実施例3)
本実施例では、COガスIIのCOガスIに対するモル比が150:1であって、触媒Iの重量組成が0.30%Pd+0.2%Bi+0.02%Fe/α−A1であり、触媒IIの重量組成が0.6%Pd+0.2%Cu+0.08%Fe/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。上記炭素数が2〜4のアルカノールはn−ブタノールから選択される。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が50℃であり、反応圧力が−0.02MPaであり、反応接触時間が30sであり、NO、n−ブタノール、酸素のモル比が1:10:0.27である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が60℃であり、反応圧力が0.2MPaであり、反応接触時間が10sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:15:0.20である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が130℃であり、反応接触時間が5sであり、反応圧力が0.3MPaであり、COガスIの亜硝酸ブチルに対するモル比が5:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が130℃であり、反応接触時間が5sであり、反応圧力が0.3MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が2:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.1%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が30ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が1100g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が98.2%である。
【0026】
(実施例4)
本実施例では、COガスIIのCOガスIに対するモル比が30:1であって、触媒Iの重量組成が0.8%Pd+10%Ce+0.003%Zr+0.507%Fe/TiOであり、触媒IIの重量組成が0.6%Pd+0.2%Cu+0.08%Fe/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。上記炭素数が2〜4のアルカノールはn−プロパノールから選択される。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が60℃であり、反応圧力が1.5MPaであり、反応接触時間が5sであり、NO、n−プロパノール、酸素のモル比が1:5:0.25である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が45℃であり、反応圧力が1.5MPaであり、反応接触時間が3sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:3:0.23である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が110℃であり、反応接触時間が2sであり、反応圧力が0.01MPaであり、COガスIの亜硝酸プロピルに対するモル比が8:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が125℃であり、反応接触時間が2sであり、反応圧力が0.03MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.5:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.3%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が12ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が1020g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が98.6%である。
【0027】
(実施例5)
本実施例では、COガスIIのCOガスIに対するモル比が80:1であって、触媒Iの重量組成が0.8%Pd+10%Ce+0.003%Zr+0.507%Fe/TiOであり、触媒IIの重量組成が0.6%Pd+0.2%Cu+0.08%Fe/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。上記炭素数が2〜4のアルカノールはエタノールから選択される。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が30℃であり、反応圧力が1.0MPaであり、反応接触時間が50sであり、NO、エタノール、酸素のモル比が1:8:0.25である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が45℃であり、反応圧力が0.01MPaであり、反応接触時間が0.8sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:6:0.22である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が160℃であり、反応接触時間が120sであり、反応圧力が0.01MPaであり、COガスIの亜硝酸エチルに対するモル比が12:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が125℃であり、反応接触時間が3sであり、反応圧力が0.03MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.3:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.5%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が18ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が920g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が99.1%である。
【0028】
(実施例6)
本実施例では、COガスIIのCOガスIに対するモル比が60:1であって、触媒Iの重量組成が0.11%Pd+0.6%Ba+0.2%Fe/MgOであり、触媒IIの重量組成が0.34%Pd+1.0%K+0.46%Mn/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。上記炭素数が2〜4のアルカノールはエタノールから選択される。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が25℃であり、反応圧力が0.2MPaであり、反応接触時間が15sであり、NO、エタノール。酸素のモル比が1:6:0.26である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が55℃であり、反応圧力が0.05MPaであり、反応接触時間が2.5sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:4:0.18である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が100℃であり、反応接触時間が4sであり、反応圧力が0.01MPaであり、COガスIの亜硝酸エチルに対するモル比が4:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が135℃であり、反応接触時間が2sであり、反応圧力が0.03MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.4:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が98.9%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が25ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が986g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が99.3%である。
【0029】
(実施例7)
本実施例では、COガスIIのCOガスIに対するモル比が120:1であって、触媒Iの重量組成が0.32%Pd+0.25%Fe/α−A1であり、触媒IIの重量組成が0.34%Pd+1.0%K+0.46%Mn/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。上記炭素数が2〜4のアルカノールはn−ブタノールから選択される。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が65℃であり、反応圧力が0.8MPaであり、反応接触時間が100sであり、NO、n−ブタノール、酸素のモル比が1:12:0.24である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が48℃であり、反応圧力が0.1MPaであり、反応接触時間が12sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:8:0.24である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が140℃であり、反応接触時間が80sであり、反応圧力が0.2MPaであり、COガスIの亜硝酸ブチルに対するモル比が10:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が145℃であり、反応接触時間が5sであり、反応圧力が0.03MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.2:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.2%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が5ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が1041g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が98.7%である。
【0030】
(実施例8)
本実施例では、COガスIIのCOガスIに対するモル比が10:1であって、触媒Iの重量組成が0.41%Pd+0.82%Fe/α−A1であり、触媒IIの重量組成が0.22%Pd+1.0%Mg+2.10%Mn/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。上記炭素数が2〜4のアルカノールはn−プロパノールから選択される。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が48℃であり、反応圧力が1.8MPaであり、反応接触時間が45sであり、NO、n−プロパノール、酸素のモル比が1:30:0.23である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が45℃であり、反応圧力が0.01MPaであり、反応接触時間が3sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:3:0.20である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が150℃であり、反応接触時間が3sであり、反応圧力が0.05MPaであり、COガスIの亜硝酸プロピルに対するモル比が5:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が148℃であり、反応接触時間が6sであり、反応圧力が0.05MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が2:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.4%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が10ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が1011g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が99.0%である。
【0031】
(実施例9)
本実施例では、COガスIIのCOガスIに対するモル比が10:1であって、触媒Iの重量組成が0.12%Pd+0.33%Fe/α−A1であり、触媒IIの重量組成が0.52%Pd+1.5%Mg+2.30%Mn/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。上記炭素数が2〜4のアルカノールはn−ブタノールから選択される。超重力回転床炉Iの動作条件は、反応温度が53℃であり、反応圧力が0.2MPaであり、反応接触時間が18sであり、NO、n−ブタノール、酸素のモル比が1:5:0.20である。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が50℃であり、反応圧力が0.01MPaであり、反応接触時間が4sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:8:0.20である。カップリング反応炉Iの動作条件は、反応温度が95℃であり、反応接触時間が10sであり、反応圧力が0.4MPaであり、COガスIの亜硝酸ブチルに対するモル比が15:1である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が120℃であり、反応接触時間が4.5sであり、反応圧力が0.05MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.33:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.3%であり、排出末端ガス中の窒化酸化物の含有量が6ppmであり、シュウ酸ジメチルの時空間収率が988g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が99.2%である。
【0032】
(実施例10)
本実施例では、NOガスが、体積%が95%のNOおよび体積%が5%の窒素の混合ガスであり、系に供給される窒素が系から排出される窒素と均衡し、超重力回転床炉Iおよびカップリング反応炉Iが設置されず、上記NOガスがNOを含有する気相流出物IXに直接補充されてこれと混合され、触媒IIの重量組成が0.52%Pd+2.0%Mn/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が50℃であり、反応圧力が0.01MPaであり、反応接触時間が4sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:7:0.25である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が122℃であり、反応接触時間が6sであり、反応圧力が0.05MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.2:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が99.0%であり、窒化酸化物が排出末端ガスの0.7%を占め、シュウ酸ジメチルの時空間収率が960g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が98.1%である。
【0033】
(実施例11)
本実施例では、NOガスが、体積%が90%のNOおよび体積%が10%の窒素の混合ガスであり、系に供給される窒素が系から排出される窒素と均衡し、超重力回転床炉Iおよびカップリング反応炉Iが設置されず、NOガスがNOを含有する気相流出物IXに直接補充されてこれと混合され、触媒IIの重量組成が0.32%Pd+2.0%Fe/α−A1であることを除けば、実施例1と同じ過程を実施する。超重力回転床炉IIの動作条件は、反応温度が40℃であり、反応圧力が0.02MPaであり、反応接触時間が2sであり、NOを含有する気相流V中のNOの、メタノールおよび酸素に対するモル比が1:8:0.25である。カップリング反応炉IIの動作条件は、反応温度が130℃であり、反応接触時間が6sであり、反応圧力が0.05MPaであり、COガスIIの亜硝酸メチルの流出物VIIに対するモル比が1.4:1である。これらの条件下における結果は、NOの利用効率が98.5%であり、窒化酸化物が排出末端ガスの0.6%を占め、シュウ酸ジメチルの時空間収率が990g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が99.0%である。
【0034】
(比較例1)
本比較例では、炭素数が2〜4のアルカノールがメタノールに置き換えられることを除けば、実施例6と同じ触媒、条件、および反応用原料を使用する。結果は、NOの利用効率が90.0%であり、窒化酸化物が排出末端ガスの1%を占め、シュウ酸ジメチルの時空間収率が880g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が95.4%である。
【0035】
(比較例2)
本比較例では、超重力回転床炉Iおよび超重力回転床炉IIがどちらも通常の重力固定床反応炉に置き換えられることを除けば、実施例6と同じ触媒、条件、および反応用原料を使用する。結果は、NOの利用効率が89.3%であり、窒化酸化物が排出末端ガスの0.9%を占め、シュウ酸ジメチルの時空間収率が870g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が94.1%である。
【0036】
(比較例3)
本比較例では、超重力回転床炉IIが通常の重力固定床反応炉に置き換えられることを除けば、実施例10と同じ触媒、条件、および反応用原料を使用する。結果は、NOの利用効率が87.1%であり、窒化酸化物が排出末端ガスの1.5%を占め、シュウ酸ジメチルの時空間収率が870g/(h・L)であり、シュウ酸ジメチルの選択性が95.0%である。
【0037】
上記比較の結果によれば、本発明が注目すべき技術的効果を達成することは明らかである。