(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
N−(4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)−3,3−ジメチルブタンアミドである化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【発明を実施するための形態】
【0009】
【化1】
[式中、
nは、1または2の整数であり、
tは0または1であり、
各R
1は、C
1〜3アルコキシ、C
1〜3アルキル、C
1〜3アルキル−O−C
1〜3アルキルから独立に選択され、
R
2およびR
3は、独立に、C
1〜3アルキル、C
1〜3アルコキシまたはC
3〜6シクロアルキルであり、但し、少なくとも1つはC
1〜3アルコキシであり、
R
4は、C
1〜6アルキル、C
1〜3アルキル−C
3〜6シクロアルキル、C
3〜6ヘテロシクロアルキルである]
または薬学的に許容できるその塩である。
【0010】
本発明は、R
1、R
2およびR
3がそれぞれC
1〜3アルコキシであり、R
4がC
4〜6アルキルであり、nおよびtがそれぞれ1である、式Iの化合物にも関する。
【0011】
本発明は、R
1、R
2およびR
3がそれぞれメトキシであり、R
4が−CH
2−t−ブチルであり、nおよびtがそれぞれ1である、式Iの化合物にも関する。
【0012】
レチガビン等、KCNQファミリーカリウムチャネルの開口薬である知られている化合物と比べて改善された特性を有する新規化合物も望ましい。下記のパラメーターの1つまたは複数の改善が望ましい:半減期、クリアランスおよび選択性、他の薬物治療との相互作用、バイオアベイラビリティ、効能、製剤化能(formulability)、化学安定性、代謝安定性、膜透過性、溶解度、ならびに治療指数。そのようなパラメーターの改善は、1日の必要用量数を低減させることによる投薬計画の改善、複数の薬物治療中の患者への投与の容易性、副作用の低減、治療指数の拡大、耐容性の改善またはコンプライアンスの改善等の改善につながり得る。
【0013】
略語および定義
別段の指示がない限り、本明細書において使用される場合、用語「ハロゲン」および「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0014】
別段の指示がない限り、本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、別段の指定がない限り1から6個までの炭素原子を含有し、直鎖状または分子鎖状部分を有する、飽和一価炭化水素基を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルを含む。
【0015】
別段の指示がない限り、本明細書において使用される場合、用語「シクロアルキル」は、飽和一価炭化水素環状部分を含む。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0016】
別段の指示がない限り、本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ」は「アルキル−O−」を意味し、ここで「アルキル」は上記で定義された通りである。「アルコキシ」基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、アリルオキシおよびO−シクロアルキルを含む。
【0017】
別段の指示がない限り、本明細書において使用される場合、用語ヘテロシクロアルキルは、3から10個の炭素のモノ−シクロアルキル部分を意味し、ここで、少なくとも1個の炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子(heterotom)で置き換えられており、該炭素原子のすべてが環の一部でなくてはならないわけではない。そのようなヘテロシクロアルキル環の例は、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチアジニル、テトラヒドロ−チアジアジニル、モルホリニル、オキセタニル、メチルオキセタニル、テトラヒドロジアジニル、オキサジニル、オキサチアジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、クロマニル、イソクロマニル、ベンゾオキサジニル等を含む。
【0018】
別段の指示がない限り、用語「1つまたは複数の」置換基または「少なくとも1つの」置換基は、本明細書において使用される場合、利用可能な結合部位の数に基づき考えられる1から最大数までの置換基を指す。「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」置換基の例は、末端メチル、例えば、第4の結合部位がメチルからメチルの炭素が末端原子である分子までである3つの利用可能な結合部位上の1から3個の置換基を含む。
【0019】
当業者であれば、R
1、R
2、R
3またはR
4として本明細書において論じられる各基が、結合に利用可能な任意の原子により如何にして式Iの化合物に結合し得るかを理解するであろう。
【0020】
本明細書においては、下記の略語を使用する。
DMF:ジメチルホルムアミド
EtOAc:酢酸エチル
HPLC:高圧液体クロマトグラフィー
LCMS:液体クロマトグラフィー−質量分析
MeCN:アセトニトリル
MeOH:メタノール
MS:質量分析
RT:室温
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
【0021】
本発明の具体的な実施形態を、以下の実施例において示す。
【0022】
式Iの化合物は光学中心を有する場合があり、したがって、異なる鏡像異性およびジアステレオマー配置で生じ得る。本発明は、そのような式Iの化合物のすべての鏡像異性体、ジアステレオマーおよび他の立体異性体、ならびにラセミ化合物およびラセミ混合物およびその立体異性体の他の混合物を含む。
【0023】
式Iの化合物は、その溶媒和物(溶媒の場合の水和物を含む)、異性体、結晶性および非結晶性形態、同形体、多形体、代謝産物、ならびにプロドラッグを含む、式Iの化合物のすべての形態を含む。例えば、式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩は、非溶媒和および溶媒和形態で存在し得る。水を含む溶媒が密接に結合している場合、錯体は湿度とは無関係に明確な化学量論を有することになる。しかしながら、チャネル溶媒和物および吸湿性化合物のように溶媒の結合が弱い場合、溶媒含有量は湿度および乾燥条件に依存することになる。そのような事例では、非化学量論が基準となり、これは、反応混合物からの単離最終化合物であって、乾燥させた際に水を含む残留溶媒が依然として存在している場合、常法に従って生じる。当業者であればそのような溶媒和物が存在することを予測し、構造を同定するために使用されるピークのみを通常は報告し、溶媒ピークを通常は報告しないため、水和物(hyrdate)を含む前記溶媒和物のスペクトルデータを報告する際にピークをもたらさないことは正常である。したがって、式Iの化合物または本発明の化合物に言及する場合、式Iの化合物の、ならびに対応する薬学的に許容できるその塩の、水、異性体、結晶性および非結晶性形態、同形体、鏡像異性体、ジアステレオマー、他の立体異性体多形体、代謝産物ならびにプロドラッグを含む残留溶媒を含むように意味付けられている。
【0024】
本発明の化合物は、完全非結晶から完全結晶までの範囲にわたる固体状態の連続で存在し得る。用語「非結晶」は、材料が分子レベルで長距離秩序を欠く状態を指し、温度に応じて固体または液体の物理的特性を呈し得る。典型的には、そのような材料は、特有のX線回折パターンを生じさせず、固体の特性を呈しながら、より正式には液体として記述される。加熱すると、状態変化、典型的には二次(「ガラス転移」)を特徴とする固体から液体特性への変化が生じる。用語「結晶性」は、材料が分子レベルで規則正しい内部構造を有し、特有のX線回折パターンに明確なピークを与える固相を指す。そのような材料は、十分に加熱すると、液体の特性も呈するが、固体から液体への変化は、相変化、典型的には一次(「融点」)を特徴とする。
【0025】
本発明の化合物は、適切な条件にさらされている場合、中間状態(中間相または液晶)で存在することもある。中間状態は、真の結晶状態と真の液体状態(溶融または溶液のいずれか)との間の中間体である。温度変化の結果として発生するメソモルフィズムは「サーモトロピック」として記述され、水または別の溶媒等の第二の成分の添加によって生じるものは「リオトロピック」として記述される。リオトロピック中間相を形成する可能性を有する化合物は「両親媒性」として記述され、イオン(−COO
−Na
+、−COO
−K
+または−SO
3−Na
+等)または非イオン(−N
−N
+(CH
3)
3等)極性頭部基を保有する分子からなる。さらなる情報については、Crystals and the Polarizing Microscope、N.H.HartshorneおよびA.Stuart著、第4版(Edward Arnold、1970)を参照されたい。
【0026】
本発明の化合物は、以後定義する通りのすべての多形およびその晶癖、プロドラッグおよびその異性体(光学、幾何および互変異性体を含む)を含む以上に定義した通りの式Iの化合物、ならびに式Iの同位体標識化合物を含む。
【0027】
示されている通り、式Iの化合物のいわゆる「プロドラッグ」も本発明の範囲内である。故に、それ自体は薬理活性をほとんどまたは全く有し得ない式Iの化合物のある特定の誘導体は、体内または体表面に投与すると、例えば加水分解開裂によって、所望の活性を有する式Iの化合物に変換することができる。そのような誘導体を、「プロドラッグ」と称する。プロドラッグの使用に関するさらなる情報は、例えば、Pro−drugs as Novel Delivery Systems、第14巻、ACS Symposium Series(T.HiguchiおよびW.Stella)において見ることができる。Bioreversible Carriers in Drug Design、Pergamon Press、1987(E.B.Roche編、American Pharmaceutical Association)も参照されたい。
【0028】
例えば、本発明に従うプロドラッグは、式Iの化合物中に存在する適切な官能基を、例えばDesign of Prodrugs、H.Bundgaard著(Elsevier、1985)において記述されている通りの「プロ部分」として当業者に知られているある特定の部分で置き換えることによって生成することができる。
【0029】
本発明に従うプロドラッグのいくつかの例は、
(i)式Iの化合物がカルボン酸官能基(−COOH)を含有する場合、そのエステル、例えば、式Iの化合物のカルボン酸官能基の水素が、(C
1〜C
8)アルキルによって置き換えられている化合物、
(ii)式Iの化合物がアルコール官能基(−OH)を含有する場合、そのエーテル、例えば、式Iの化合物のアルコール官能基の水素が、(C
1〜C
6)アルカノイルオキシメチルによって置き換えられている化合物、および
(iii)式Iの化合物が第一級または第二級アミノ官能基(−NH
2または−NHR、ここでRはHではない)を含有する場合、そのアミド、例えば、場合によって、式Iの化合物のアミノ官能基の一方または両方の水素が、(C
1〜C
10)アルカノイルによって置き換えられている化合物
を含む。
【0030】
上述の例および他のプロドラッグ型の例に従う置き換え基のさらなる例は、前述の参考文献において見ることができる。
【0031】
その上、式Iのある特定の化合物は、それ自体が式Iの他の化合物のプロドラッグとして作用し得る。
【0032】
式Iの化合物の代謝産物、すなわち、薬物の投与時にインビボで形成される化合物も本発明の範囲内に含まれる。本発明に従う代謝産物のいくつかの例は、
(i)式Iの化合物がメチル基を含有する場合、そのヒドロキシメチル誘導体(−CH
3→−CH
2OH)、
(ii)式Iの化合物がアルコキシ基を含有する場合、そのヒドロキシ誘導体(−OR→−OH)、
(iii)式Iの化合物が第三級アミノ基を含有する場合、その第二級アミノ誘導体(−NR
1R
2→−NHR
1または−NHR
2)、
(iv)式Iの化合物が第二級アミノ基を含有する場合、その第一級誘導体(−NHR
1→−NH
2)、
(v)式Iの化合物がフェニル部分を含有する場合、そのフェノール誘導体(−Ph→−PhOH)、および
(vi)式Iの化合物がアミド基を含有する場合、そのカルボン酸誘導体(−CONH
2→COOH)
を含む。
【0033】
1個または複数の不斉炭素原子を含有する式Iの化合物は、2つ以上の立体異性体として存在し得る。式Iの化合物がアルケニルまたはアルケニレン基を含有する場合、幾何シス/トランス(またはZ/E)異性体が考えられる。構造異性体が低エネルギー障壁を介して相互変換可能である場合、互変異性化(「互変異性」)が生じ得る。これは、例えば、イミノ、ケトもしくはオキシム基を含有する式Iの化合物中ではプロトン互変異性の形態を、または芳香族部分を含有する化合物中ではいわゆる原子価互変異性の形態をとり得る。要するに、単一の化合物が複数種の異性を呈し得るということになる。
【0034】
複数種の異性を呈する化合物およびその1つまたは複数の混合物を含む、式Iの化合物のすべての立体異性体、幾何異性体および互変異性形態が、本発明の範囲内に含まれる。対イオンが光学活性、例えばd−乳酸もしくはl−リジン、またはラセミ、例えばdl−酒石酸もしくはdl−アルギニンである酸付加塩または塩基塩も含まれる。
【0035】
シス/トランス異性体は、当業者によく知られている従来の技術、例えばクロマトグラフィーおよび分別結晶によって分離することができる。
【0036】
個々の鏡像異性体の調製/単離のための従来の技術は、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または、例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体(または塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割を含む。
【0037】
代替として、ラセミ体またはラセミ混合物(またはラセミ前駆体)を、適切な光学活性化合物、例えばアルコールと、または、式Iの化合物が酸性もしくは塩基性部分を含有する場合、1−フェニルエチルアミンもしくは酒石酸等の塩基もしくは酸と反応させてよい。得られたジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶によって分離することができ、ジアステレオ異性体の一方または両方を、当業者によく知られている手段によって、対応する純粋な鏡像異性体(複数可)に変換することができる。
【0038】
本発明のキラル化合物(およびそのキラル前駆体)は、0から50体積%まで、典型的には2%から20%までのイソプロパノールと、0から5体積%までのアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンとを含有する炭化水素、典型的にはヘプタンまたはヘキサンからなる移動相を用いる不斉樹脂上でのクロマトグラフィー、典型的にはHPLCを使用して、鏡像異性的に富化された形態で取得することができる。溶離物の濃縮により、富化混合物が得られる。
【0039】
任意のラセミ体が結晶化する場合、2つの異なる種類の結晶が考えられる。第一の種類は、両方の鏡像異性体を含有する1つの均質な形態の結晶が等モル量で生成される、上記で言及したラセミ化合物(真のラセミ体)である。第二の種類は、それぞれ単一の鏡像異性体を含む2つの形態の結晶が等モル量で生成される、ラセミ混合物または集塊である。
【0040】
ラセミ混合物中に存在する結晶形態はいずれも同一の物理的特性を有するが、真のラセミ体と比較して異なる物理的特性を有し得る。ラセミ混合物は、当業者に知られている従来の技術によって分離することができ、例えば、Stereochemistry of Organic Compounds、E.L.ElielおよびS.H.Wilen著(Wiley、1994)を参照されたい。
【0041】
本発明は、1個または複数の原子が、同じ原子番号を有するが、原子質量または質量数が自然界において優勢な原子質量または質量数とは異なる原子によって置き換えられている、式Iの薬学的に許容できる同位体標識化合物をすべて含む。
【0042】
本発明の化合物への包含に適した同位体の例は、
2Hおよび
3H等の水素、
11C、
13Cおよび
14C等の炭素、
36Cl等の塩素、
18F等のフッ素、
123Iおよび
125I等のヨウ素、
13Nおよび
15N等の窒素、
15O、
17Oおよび
18O等の酸素、
32P等のリン、ならびに
35S等の硫黄の同位体を含む。
【0043】
式Iのある特定の同位体標識化合物、例えば放射性同位体を組み込んだものは、薬物および/または基質組織分布研究において有用である。放射性同位体であるトリチウム(
3H)および炭素−14(
14C)は、それらの組み込みの容易性および即時の検出手段を考慮すると、この目的のために特に有用である。
【0044】
重水素(
2H)等のより重い同位体による置換は、より優れた代謝安定性から生じるある特定の治療上の利点、例えばインビボ半減期の増大または必要用量の減少をもたらし得るため、一部の状況において好ましい場合がある。
【0045】
11C、
18F、
15Oおよび
13N等の陽電子放射同位体による置換は、基質受容体占有率を調査するための陽電子放射断層撮影法(PET)研究において有用となり得る。
【0046】
式Iの同位体標識化合物は、概して、当業者に知られている従来の技術によって、または、先に用いた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用し、添付の実施例および調製において記述されているものに類似のプロセスによって調製できる。
【0047】
本発明に従って式Iの化合物を調製する場合、この目的のための特色の最良の組合せを提供する式IIの化合物の形態を常法に従って選択することが当業者に公開されている。そのような特色は、中間体形態の融点、溶解度、処理可能性および収率、ならびに結果として単離時に生成物を精製し得る容易性を含む。
【0048】
本明細書において使用される場合、用語「治療すること」は、そのような用語が当てはまる疾患、障害もしくは状態の、またはそのような疾患、障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状を、回復させ、軽減し、またはその進行を阻害することを指す。本明細書において使用される場合、「治療すること」は、哺乳動物における疾患、障害または状態発生の可能性または発生率を、未処置の対照集団と比較して、または治療前の同じ哺乳動物と比較して、減少させることを指す場合もある。例えば、本明細書において使用される場合、「治療すること」は、疾患、障害または状態を予防することを指す場合があり、疾患、障害もしくは状態の発症を遅延させるもしくは予防すること、または疾患、障害もしくは状態に関連する症状を遅延させるもしくは予防することを含み得る。本明細書において使用される場合、「治療すること」は、疾患、障害もしくは状態の、またはそのような疾患、障害もしくは状態に関連する症状の重症度を、哺乳動物が該疾患、障害または状態に罹患する前に低減させることを指す場合もある。そのような罹患前の疾患、障害または状態の重症度の予防または低減は、投与時には該疾患、障害または状態に罹患していない対象への、本明細書において記述されている通りの本発明の組成物の投与に関係する。本明細書において使用される場合、「治療すること」は、疾患、障害もしくは状態の、またはそのような疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の症状の再発を予防することを指す場合もある。用語「治療」および「治療的に」は、本明細書において使用される場合、「治療すること」が上記で定義されている通り、治療するという行為を指す。
【0049】
本発明の化合物は、神経細胞の興奮性を減退させ、したがって、哺乳類対象、とりわけヒトにおける神経細胞の興奮性の調節異常を特徴とする多種多様な臨床的疾患、障害または状態の治療において価値がある。そのような疾患、障害または状態は、各種のてんかん、疼痛性障害(例えば、糖尿病性神経障害、線維筋痛、片頭痛、ヘルペス後神経痛)および双極性障害(例えば、双極IおよびII型ならびに急速交代型)を含む。本発明の化合物は、例えば、全般性不安障害、パニック障害、PTSDおよび社会不安障害を含む不安障害;抑鬱気分、混合性不安および抑鬱気分、行為障害、ならびに混合性行為障害および抑鬱気分を含む気分適応障害;ADHD、注意欠陥障害または一般的健康状態による他の認知障害を含む注意適応障害;統合失調性感情障害および統合失調症を含む精神病性障害;ならびに、ナルコレプシーおよび夜尿症を含む睡眠障害の治療において有用である。
【0050】
また、本発明の化合物、組成物および方法によって治療され得る疾患、障害または状態の例は次の通りである:がん患者における鬱病、パーキンソン病患者における鬱病、心筋梗塞後の鬱病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)患者における鬱病、亜症候群性症候性鬱病、不妊女性における鬱病、小児鬱病、大鬱病、単一エピソード鬱病、反復性鬱病、児童虐待により誘発される鬱病、産後鬱病、DSM−IV大鬱病、治療抵抗性大鬱病、重度の鬱病、精神病性鬱病、脳卒中後鬱病、神経因性疼痛、混合エピソードを伴う躁鬱病および鬱病エピソードを伴う躁鬱病を含む躁鬱病、季節性情動障害、双極性鬱病BP I、双極性鬱病BP II、または気分変調を伴う大鬱病を含む鬱病;気分変調;広場恐怖症、社会恐怖症または単純恐怖症を含む恐怖症;神経性無食欲症または神経性過食症を含む摂食障害;アルコール、コカイン、アンフェタミンおよび他の精神刺激薬、モルヒネ、ヘロインおよび他のオピオイドアゴニスト、フェノバルビタールおよび他のバルビツレート、ニコチン、ジアゼパム、ベンゾジアゼピンおよび他の精神活性物質への中毒を含む薬物依存症;パーキンソン病における認知症、神経遮断薬により誘発されるパーキンソニズムまたは遅発性ジスキネジーを含むパーキンソン病;血管障害に関連する頭痛を含む頭痛;離脱症候群;加齢による学習および精神障害;無気力症;双極性障害;慢性疲労症候群;慢性または急性ストレス;行為障害;気分循環性障害;身体化障害、転換性障害、疼痛性障害、心気症、身体醜形障害、未分化障害および身体表現性NOS等の身体表現性障害;失禁;吸入障害;中毒障害;躁病;反抗挑戦性障害;末梢神経障害;心的外傷後ストレス障害;黄体期後期不機嫌性障害;特異的発達障害;SSRI「プープアウト(poop−out)」症候群、または初期の満足な応答後に患者がSSRI療法への満足な応答を維持できないこと;ならびにトゥーレット病を含むチック障害。
【0051】
本発明の化合物は、てんかん、疼痛および認知機能の治療においても有用である。例えば、Cooper EC、Jan LY.Arch Neurol.2003年4月、60(4):496〜500を参照されたい。さらに、本発明の化合物は、双極性障害、鬱病性障害、不安障害、認知障害、疼痛性障害、泌尿生殖器障害およびてんかんを含む中枢神経系障害の治療に有用である。
【0052】
式Iの化合物および薬学的に許容できるその塩は、他の活性な医薬活性成分と組み合わせて、種々の疾患または障害を治療するために有用である。例えば、式Iの化合物および薬学的に許容できるその塩を、抗けいれん薬(例えば、アセタゾールアミド、カルバマゼピン、クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ジバルプロエックスナトリウム、エトスクシミド、エトトイン、フェルバメート、ホスフェニトイン、ガバペンチン、ラモトリギン、レベチラセタム、メフェニトイン、メタルビタール、メトスクシミド、メタゾールアミド、オキシカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、フェンスクシミド、プレガバリン、プリミドン、バルプロ酸ナトリウム、スチリペントール、チアガビン、トピラメート、トリメタジオン、バルプロ酸、ビガバトリン、ゾニサミド)と組み合わせて、てんかん(全身または部分発作障害)、熱性発作、症候性発作および心因発作等の非てんかん発作等、神経伝達の減少によってその治療が容易になる障害を治療することができる。抗けいれん薬および式Iの化合物は異なる機序を有するため、式Iの化合物は、現行の療法が提供しない興奮性の調節異常のさらなる制御に役立つ。これは、とりわけフェニトインおよびカルベマゼピン(carbemazepine)等の旧来の抗てんかん薬の場合にあり得る。Azar NJ、Abou−Khalil BW.Semin Neurol.、2008年7月;28(3):305〜16を参照されたい。
【0053】
式Iの化合物および薬学的に許容できるその塩は、気分安定化合物(例えば、炭酸リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン、カルバマゼピンオキシカルバゼピンおよび非定型(aytipical)抗精神病薬[例えば、クロザピン、クエチアピン、オランザピン、ジプラシドン])と組み合わせて有用な精神治療薬となり、神経伝達を抑制することによってその気分状態の治療が容易になる双極性障害(鬱病エピソード、躁病エピソード、軽躁エピソード、混合性感情エピソード)の治療において使用され得る。式Iの化合物は、好都合なことに、1つまたは複数の他の治療剤、例えば、三環系抗鬱薬(例えば、アミトリプチリン、ドチエピン、ドキセピン、トリミプラミン、ブトリピリン(butripyline)、クロミプラミン、デシプラミン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、ノルトリプチリンまたはプロトリプチリン)、モノアミン酸化酵素阻害剤(例えば、イソカルボキサジド、フェネルジンまたはトラニルシクロプラミン(tranylcyclopramine))もしくは5−HT再取り込み阻害剤(例えば、フルボキサミン、セルトラリン、フルオキセチンまたはパロキセチン)等の異なる抗鬱剤と、および/またはドーパミン作動性抗パーキンソン病剤(例えば、レボドパ、好ましくは、末梢性脱炭酸酵素阻害剤、例えばベンセラジドもしくはカルビドパと、またはドーパミンアゴニスト、例えばブロモクリプチン、リスリドもしくはペルゴリドと組み合わせて)等の抗パーキンソン病剤と併用され得る。本発明は、1つまたは複数の他の治療剤と組み合わせた式(I)の化合物または生理学的に許容できるその塩の使用にまで及ぶことを理解されたい。
【0054】
式Iの化合物および薬学的に許容できるその塩を、5−HT再取り込み阻害剤(例えば、フルボキサミン、セルトラリン、フルオキセチンまたはパロキセチン)または薬学的に許容できるその塩もしくは多形体と組み合わせて、セロトニン作動性神経伝達を調節することによってその治療が容易になる障害を治療することもできる。そのような治療は、高血圧、鬱病、薬物依存症、不安障害(パニック障害、全般性不安障害、広場恐怖症、単純恐怖症および社会恐怖症を含む)、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、回避性人格障害および性的機能不全(早漏を含む)、摂食障害、肥満、群発頭痛、片頭痛、疼痛、アルツハイマー病、強迫性障害、パニック障害、記憶障害(認知症、健忘障害および加齢による記憶障害を含む)、パーキンソン病(パーキンソン病における認知症、神経遮断薬により誘発されるパーキンソニズム、および遅発性ジスキネジーを含む)、内分泌障害(高プロラクチン血症を含む)、血管れん縮(特に脳血管系における)、小脳性運動失調症、胃腸管障害(運動性および分泌の変化が関与する)、慢性発作性片頭痛および頭痛(血管障害に関連する)を含む疾患または障害に関係する。
【0055】
本発明の化合物は、経口、非経口(皮下、静脈内(intraveneous)、筋肉内、胸骨内および注入技術等)、直腸内、鼻腔内または局所経路のいずれかを介して哺乳動物に投与され得る。概して、これらの化合物は、最も望ましくは、1日当たり約1mgから約2000mgまでの範囲にわたる用量でヒトに投与されるが、治療されている対象の体重および状態、ならびに選択された特定の投与経路に応じて、必然的に変動が生じることになる。しかしながら、1日当たり体重1kgにつき約0.1mgから約20mgまでの範囲内にある投薬量レベルが最も望ましく用いられる。それにもかかわらず、治療されている動物の種および前記薬剤に対するその個々の応答、ならびに、選択された医薬製剤の種類、およびそのような投与が行われる期間および間隔に応じて、依然として変動が生じ得る。いくつかの場合において、前述の範囲の下限未満の投薬量レベルが妥当量を超えていることがあり、一方、他の場合において、いかなる有害な副作用も引き起こすことなくさらに大用量が用いられ得るが、但しそのような高い用量レベルは、まず1日を通して投与するための数回の小用量に分けられる。
【0056】
式Iの化合物の薬学的に許容できる塩は、その酸付加塩および塩基塩を含む。
【0057】
適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素/リン酸二水素、ピログルタミン酸塩、サリチル酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、スズ酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびキシノホ酸塩(xinofoate)を含む。
【0058】
適切な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例は、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオールアミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩および亜鉛塩を含む。
【0059】
酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩も形成され得る。
【0060】
適切な塩についての総説は、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、StahlおよびWermuth著(Wiley−VCH、2002)を参照されたい。
【0061】
式Iの化合物の薬学的に許容できる塩は、3つの方法の1つまたは複数によって:
(i)式Iの化合物を所望の酸もしくは塩基と反応させることによって、
(ii)酸もしくは塩基に不安定な保護基を式Iの化合物の適切な前駆体から除去することによって、または、所望の酸もしくは塩基を使用し、適切な環式前駆体、例えばラクトンもしくはラクタムを開環することによって、または
(iii)適切な酸もしくは塩基との反応により、または適切なイオン交換カラムを利用し、式Iの化合物の1種の塩を別の塩に変換することによって、
調製できる。
【0062】
3つの反応はいずれも、典型的には溶液中で行われる。得られた塩を、析出させ、濾過によって収集してよく、または溶媒の蒸発によって回収してもよい。得られた塩におけるイオン化の程度は、完全なイオン化からほぼ非イオン化まで変動し得る。
【0063】
本発明の化合物は、単独で、または薬学的に許容できる担体もしくは賦形剤と組み合わせて、先に示した上記経路のいずれかによって投与することができ、そのような投与は、単回または反復用量で行われ得る。より詳細には、本発明の新規治療剤は、多種多様な異なる剤形で投与され得る、すなわち、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、口内錠、ハードキャンディー剤、散剤、スプレー剤、クリーム剤、膏薬、坐剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、ローション剤、軟膏剤、水性懸濁剤、注射剤、エリキシル剤、シロップ剤等の形態で、種々の薬学的に許容できる不活性担体と組み合わせられてよい。そのような担体は、固体賦形剤または充填剤、無菌水性媒質および種々の非毒性有機溶媒等を含む。その上、経口医薬組成物には、適切に甘味および/または香味付けしてよい。概して、本発明の治療有効化合物は、約5.0重量%から約70重量%の範囲にわたる濃度レベルのそのような剤形で存在する。
【0064】
経口投与では、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチンおよびアカシアのような顆粒化結合剤と一緒になった、デンプン、好ましくはコーン、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸およびある特定の複合ケイ酸塩等の種々の崩壊剤とともに、微結晶性セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムおよびグリシン等の種々の添加剤を含有する錠剤が用いられ得る。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルク等の滑沢剤は、多くの場合、錠剤化目的に極めて有用である。同様の種類の固体組成物は、ゼラチンカプセルにおいて充填剤として用いられてもよく、これに関連して好ましい材料は、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールも含む。水性懸濁剤および/またはエリキシル剤が経口投与に望ましい場合、活性成分を、種々の甘味剤もしくは香味剤、着色物質または色素と、ならびに、そうすることが望ましければ乳化剤および/または懸濁化剤とも、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンおよびその種々の類似の組合せ等の賦形剤と一緒に組み合わせてよい。
【0065】
非経口投与では、ゴマもしくはピーナッツ油のいずれか中、またはプロピレングリコール水溶液中の本発明の化合物の溶液が用いられ得る。必要ならば、水溶液を適切に緩衝化すべきであり(好ましくはpH>8)、液体賦形剤を最初に等張にすべきである。これらの水溶液は、静脈内注射目的に適している。油性溶液は、関節内、筋肉内および皮下注射目的に適している。滅菌条件下におけるこれらすべての溶液の調製は、当業者によく知られている標準的な薬学的技術によって容易に遂行される。加えて、皮膚の炎症状態を治療する際に、本発明の化合物を局所的に投与することも可能であり、これは、好ましくは、標準的な医薬実務に従い、クリーム剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤等によって為され得る。
【0066】
Kv7.2/3チャネル開口活性の生物学的アッセイ
プラスミド構築:ヒトKv7.2およびKv7.3クローンは、GeneDynamics(Eugene、OR)から入手した。ヒトKv7.2/pIRESneo3およびヒトKv7.3/pIREShygro3発現ベクターはいずれも、ヒト海馬ライブラリーから増幅させた断片(5’末端付近のNheI部位から終止コドンまで伸長している)と合成オリゴヌクレオチド(開始コドンからBamHI部位へ伸長している)との組合せを使用して構築した。開始および終止コドンの両側に導入されたNheI/BamHI部位を使用し、Kv7.2およびKv7.3の全体の構築を、それぞれpIRESneo3およびpIREShygro3発現ベクター(Clonetech、Mountain View、CA)にサブクローニングした。構築全体の配列を決定して、増幅およびクローニングプロセス中に突然変異が導入されていないことを確認した。出典:Wickendon,ADら、Mol Pharmacol 58(3):591〜600、2000。
【0067】
ヒトKv7.2およびKv7.3電位開口型カリウムチャネルサブユニットを発現しているCHO−K1細胞株の構築
トランスフェクションベクター
ヒトKv7.2/pIRESneo3プラスミドDNA(Kv7.2遺伝子を含有、受託番号NM_172107)。
ヒトKv7.3/pIREShyg3プラスミドDNA(Kv7.3遺伝子を含有、受託番号NM_004519)。
【0068】
細胞株構築:Lipofectamine2000(商標)試薬(InVitrogen、San Diego、CA)を使用し、製造業者の説明書に従って、チャイニーズハムスター卵巣(CHO−K1)細胞に、pIRESneo3プラスミドDNAベクター中のヒト−Kv7.2(Clonetech、Mountain View、CA)およびpIREShygro3プラスミドDNAベクター中のh−Kv7.3 サブユニットをトランスフェクトした。ヒトKv7.2およびKv7.3構築を安定に発現している細胞は、400mg/mlのジェネティシン(Gibco 10131−027番)および400mg/mlのハイグロマイシン−B(Invitrogen 10687−010番)に対するそれらの抵抗性によって同定された。全細胞電圧固定法を使用し、クローンを機能的発現についてスクリーニングした。
【0069】
生物学的アッセイ:化合物が、Kv7.2/7.3チャネル含有CHO−K1細胞において電位依存性K電流を増強することができるかを決定する。平面パッチクランプをイオンワークス(IonWorks)で使用して、0mVにおけるKv7.2/7.3電流のパーセント増強(レチガビンと比較)および化合物の効能(EC
50)を機能的に決定する。内因性活性および/または効能は、化合物の薬理学的有効性をインビボで決定する際に重要となり得る。
【0070】
化合物調製:ApricotパーソナルピペッターでDMSO中に連続希釈物を作製した。次いで、化合物を384ウェルアッセイプレート上で外部緩衝液中に希釈した(最終DMSO濃度=0.3%)。
【0071】
方法:このアッセイで使用した細胞は、Kv7.2/7.3チャネルを発現しているCHO−K1であった。F−12(Gibco 11765−054番)、10%FBS(Invitrogen 16140−071)、1:100グルタマックス(Gibco 35050−061番)、1:100 ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco 15140−122番)、400mg/mlのジェネティシン(Gibco 10131−027番)、400mg/mlのハイグロマイシン−B(Invitrogen 10687−010番)を含有する成長培地中に細胞を維持した。細胞を、T−150フラスコ中、およそ80%の集密まで成長させた。外部記録緩衝液(External recording buffer)は、(単位:mM):NaCl(137)、KCl(4)、MgCl
2(1)、CaCl
2(1.8)、HEPES(10)およびグルコース(10)を含有するものであり、必要ならば、pHをNaOHで7.3に調整し、オスモル濃度をスクロースで300〜305mOsMに調整した。内部緩衝液は、(単位:mM):Kグルコネート(120)、KCl(20)、NaCl(5)、MgCl
2(1)、CaCl
2(2)、HEPES(10)、KF(2)およびNa2ATP(2)を含有するものであった。使用直前、内部緩衝液にNa2ATPを添加し、pHをKOHで7.2に調整した。内部緩衝液のオスモル濃度を290〜295mOsMに調整した。
【0072】
Ca/Mgを含まないPBSで細胞を1回洗浄し、次いで、ヴェルセン(Gibco 15040):0.25%トリプシン−EDTA(Gibco 25200)の50:50混合物でプレートから除去し(4分)、粉砕し(trituate)、約1000rpmで5分間遠心分離し、イオンワークスで記録するために約250万個の細胞/mlで外部緩衝液に再懸濁した。カリウム電流測定は、1ウェル当たり64の開口部があるパッチプレートPPC基板を使用するイオンワークスクワトロ計器(MDS Corp.)を使用して行った。イオンワークスで算出した漏れ電流を、獲得された全電流からデジタル処理で減算した。−80mVから0mVまで(2秒)の段階をつけて導出されたカリウム電流を、濃度を増大させた(1/2対数)未知化合物(7点濃度曲線)の非存在下および存在下で測定した。レチガビンを陽性対照とし、各パッチプレートPPCについてコンパレータを実行した。K電流の最大増加は、外部緩衝液単独ウェルにおいて導出された電流を、化合物処理したウェルにおいて導出された電流から減算する(いずれも0mVで)ことによって決定した。処理条件当たり8ウェルの試料サイズを使用した。各パッチプレートについて6つの化合物を実行することができた。Apricotパーソナルピペッター(Apricot Designs,Inc.)を使用し、384ウェルアッセイプレート中に化合物希釈物を作製した。対照ウェル中のスキャン前対スキャン後の電流減少(約5〜20%)を算出し、化合物処理したウェルから減算した。40Mohm未満のスキャン前シール抵抗または50pA未満の電流を持つウェルを分析から除外した。
【0073】
最大カリウム電流増強を最大レチガビン増強の%として、および各化合物についてのEC
50値を報告した。EC
50値の単位はnMとする。このアッセイによって分析した本発明の化合物は、Kv7.2/3チャネルを開口する際に有意な活性を有し、EC
50値<100uMであることが分かった。
【0074】
安全性試験−挙動観察
ある特定の化合物で処置したラットは、重篤な有害事象、例えば、けいれん、病的鎮静(morbid sedation)等を呈し得ることが認識された。有効用量に比べて十分な安全域でけいれんを引き起こさない化合物を発見するために努力が為された。各試験化合物を、4匹の動物において3つの用量で試験し、試験された最低用量は1mg/kgであり、最高用量は100mg/kgであった。
【0075】
すべての実験は、研究室ガイドライン、例えばNational Research Council Publication、「Guide for the Care and use of Laboratory Animals」を遵守した。Charles River Laboratories製の雄ウィスターハノーバーIGS(CRL:WI[Han])ラットを使用し、投薬開始時に8〜9週齢(200〜250g)であった。0.5%(w/v)メチルセルロースの水溶液であるビヒクル中で各化合物を希釈した。試験化合物をビヒクル中で希釈し、投与まで絶え間なく撹拌し続けた。すべての用量レベルを、1日当たり体重1kgにつき活性薬物部分のmgとして表現する。用量を経口強制飼養によって1日1回投与した。すべての動物の用量体積を、直近の個別体重に基づき10mL/kgとした。
【0076】
投薬日、投薬前ならびに投薬のおよそ0.5、1〜2および4時間後(HPD)、1日の終わり、ならびに24HPDに、処置動物の臨床兆候を記録した。予定されたすべての臨床観察を、最後の動物に投薬した後に実施した。例えば、Henshall,David Cら、Neuropsychiatric Disease Treatment 2009:5 189〜206を参照されたい。
【0077】
標準的な手順を使用し、1、3、7および24HPDにおける化合物濃度の決定のために血液を収集した。分析前、試料を−20℃以下で貯蔵した。有害事象を引き起こす最低用量を決定する際には、同定される用量について、4匹の動物のうち1匹のみが有害事象を有さなくてはならない。
【0078】
表1は、投薬において見られた挙動観察および内部研究において見られた暴露をまとめ、比較するものである。実施例1は、重篤な有害事象に対して、Kv7開口薬の標準的なレチガビンを上回る明らかな改善を示し、それぞれ69倍対(verses)3,9倍である。
【0080】
一般的合成スキームおよび実用的な実施例
式Iの化合物は、有機化学の分野において知られている合成方法、または当業者によく知られている修飾および誘導体化と一緒に、後述する方法によって調製できる。本明細書において使用される出発材料は、市販されているか、または当技術分野において知られている常法(Compendium of Organic Synthetic Methods、第I〜XII巻(Wiley−Interscience発行)等の標準的な参考図書において開示されている方法等)によって調製できる。好ましい方法は、後述するものを含むがそれらに限定されない。下記のスキームおよび実施例は、式Iの化合物を作製するためのプロセスの例示である。しかしながら、本発明は、本明細書において完全に記述されている通り、かつ請求項において列挙されている通り、下記の実施例の詳細によって限定されることを意図するものではないことを理解されたい。
【0081】
下記の合成シーケンスのいずれかの間、関与する分子のいずれか上にある感応性または反応性基を保護することが必要な、および/または望ましい場合がある。これは、参照により本明細書に組み込まれる、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Chemistry、John Wiley&Sons、1981;T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Chemistry、John Wiley&Sons、1991;ならびにT.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Chemistry、John Wiley&Sons、1999において記載されているもの等の従来の保護基を利用して実現できる。
【0082】
式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩は、本明細書において以下で論じる反応スキームに従って調製できる。別段の指示がない限り、スキーム中の置換基は上記の通り定義される。生成物の単離および精製は、通常の技術を有する化学者に知られている標準的な手順によって遂行される。
【0083】
スキーム、方法および実施例において使用されている種々の符号、上付き文字および下付き文字は、表現の利便性のため、および/またはそれらがスキームに導入される順序を反映させるために使用されるものであって、添付の請求項における符号、上付き文字または下付き文字と一致することを必ずしも意図しないことが、当業者には理解されよう。スキームは、本発明の化合物を合成する上で有用な方法の代表である。該スキームは、本発明の範囲を何ら制約するものではない。
【0084】
式Iの化合物は、当業者に知られている数種の方法によって調製できる。商業的供給源から、または当業者に知られている方法によって取得され得る式IIの置換2−クロロピリミジンから出発する1つのそのような方法が、スキーム1に描写されている。式IIのピリミジンを、当業者に知られている数種の方法によって、具体的には、トリフリック無水物および硝酸テトラメチルアンモニウムにより、塩化メチレン等の溶媒中、−78℃から周囲温度までの範囲にわたる温度でニトロ化して、式IIIの化合物を産出することができる。その後、式IIIの化合物を、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン等のアミン塩基の存在下、DMFまたはTHF等の溶媒中、周囲温度から45℃までの範囲にわたる温度での、式IVのピペリジンによる処理によって、式Vの化合物に変換することができる。水素ガスまたはギ酸アンモニウム等の水素源の存在下、パラジウム炭素等の触媒の存在下、メタノールまたはエタノール等の溶媒中、周囲温度から45℃までにわたる範囲内の温度および大気圧から40psiまでにわたる範囲の圧力で等、当業者に知られている様々な水素化方法を使用して、式Vの化合物を還元し、式VIの化合物にすることができる。得られた式VIの第一級アミンは、当業者に知られている様々な方法を使用してアシル化することができる。トリエチルアミンまたはリン酸カリウム等の塩基の存在下、THF等の溶媒中、ジメチルアミノピリジンを加えてまたは加えずに、周囲温度から80℃までの範囲にわたる温度で、式VIの化合物を酸塩化物で処理することにより、式Iの化合物にアクセスすることができる。代替として、カルボン酸およびアミドカップリング試薬で式VIの化合物を処理することにより、当業者に知られているアミドカップリング条件を介して式Iの化合物に到達してもよい。
【0086】
代替として、式Vの化合物は、式IIの化合物にアミドカップリング反応、続いてニトロ化を受けさせる、スキーム2において強調されている方法を使用し、当業者によって調製することもできる。そのため、式IIの置換2−クロロピリミジンを、THF等の溶媒中、周囲温度から80℃までの範囲にわたる温度および大気圧から20psiまでの範囲にわたる圧力で、式IVのピペリジンで処理することによって、式VIIの化合物に変換することができる。その後、式VIIの化合物を、塩化メチレン等の溶媒中、−78℃から周囲温度までの範囲にわたる温度で、トリフリック無水物および硝酸テトラメチルアンモニウムの組合せによってニトロ化して、式Vの化合物を産出することができ、これを既述の方法によって式Iの化合物に変換することができる。
【0088】
実施例および実験手順:
下記は、本発明の化合物の合成を例証するものである。本発明の範囲内の追加の化合物は、これらの実施例において例証される方法を、単独で、または当技術分野において一般に知られている技術と組み合わせてのいずれかで使用して調製できる。
【0089】
実験は、概して、特に酸素または水分感受性の試薬または中間体が用いられる場合には、不活性雰囲気(窒素またはアルゴン)下で行った。別段の指示がない限り、適切な場合には無水溶媒(概して、Aldrich Chemical Company、Milwaukee、WisconsinのSure−Seal(商標)製品)を含む市販の溶媒および試薬を、概してさらに精製することなく使用した。質量分析データは、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)により報告する。核磁気共鳴(NMR)データの化学シフトは、用いた重水素化溶媒の残存ピークを参照し、100万分の1(ppm、δ)で表す。
【0090】
他の式Iの化合物の合成については具体的に例示されておらず、反応条件(反応の長さおよび温度)は変動し得る。概して、反応に続いて薄層クロマトグラフィーまたは質量分析をし、反応時間が近似するよう、適切な場合にはワークアップに供した。精製は実験間で変動し得、概して、溶媒および溶離液/勾配に使用される溶媒比は、適切な保持時間を提供するように選択した。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
N−(4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)−3,3−ジメチルブタンアミド
【0092】
【化4】
ステップA.2−クロロ−4,6−ジメトキシ−5−ニトロピリミジン:
2−クロロ−4,6−ジメトキシ−5−ニトロピリミジンは、文献(S.A.Shackelfordら、JOC、2003、68、267〜275)において知られており、その中において見られる手順に従って調製した。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 4.11 (s, 6H). LCMS m/z 219.9 (M+1)は報告された値と一致する。
【0093】
ステップB:4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)−5−ニトロピリミジン:
4−メトキシピペリジン(1.31g、11mmol、1当量)を、シリンジを介し、THF(60mL)中の2−クロロ−4,6−ジメトキシ−5−ニトロピリミジン(2.5g、11mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(5.97mL、34mmol、3当量)の混合物に添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、シリンジを介し、さらなる4−メトキシピペリジン(0.6g、5mmol、0.47当量)を添加した。混合物をもう1時間撹拌し、次いで水で希釈し、酢酸エチル(2×)で抽出した。有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。Biotageアイソレーラワン(SiO
2、80g、ヘプタン中0〜80%EtOAc勾配)を使用して粗材料を精製して、2.99g(88%)の4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)−5−ニトロピリミジンを黄色固体として得た。
1H NMR (400MHz, CDCl
3) δ 4.14 (ddd, J=13.2, 7.5, 3.9Hz, 2H) 3.99 (s, 6H) 3.63 (ddd, J=13.2,
8.5, 3.8Hz, 2H) 3.51 (tt, J=7.4, 3.6Hz, 1H) 3.40 (s, 3H) 1.86-1.96 (m, 2H)
1.61-1.70 (m, 2H). LCMS m/z=299.1 (M+1).
【0094】
ステップC:4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−アミン:
窒素下、1LのAtlantis反応器に、20%パラジウム炭素(6.16g、5.79mmol、15重量%)、4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)−5−ニトロピリミジン(41.1g、137.8mmol)およびメタノール(390mL)を添加した。反応器を密閉し、窒素(3×)、次いで水素(3×)でパージした。混合物を50psi(H
2)で3時間水素化した。窒素でパージした後、触媒を濾過によって除去し、濾過ケーキをさらなるメタノール(150mL)ですすいだ。濾液を濃縮して、40.25gの4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−アミンを粘性橙色油として得、これをさらに精製することなく使用した。
1H NMR (400MHz, CDCl
3) δ 4.17-4.29 (m, 2H) 3.92 (s, 6H) 3.39 (s, 3H) 3.34-3.47 (m, 1H) 3.19
(ddd, J=13.0, 9.0, 3.0Hz, 2H) 2.76 (br. s., 2H) 1.87-2.00 (m, 1H) 1.43-1.68 (m,
2H). LCMS m/z=269.1 (M+1).
【0095】
ステップD:実施例1:
酢酸エチル(370mL)中の4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−アミン(36.97g、137.8mmol)、トリエチルアミン(15.25g、21.0mL、150.7mmol)の溶液に、塩化tert−ブチルアセチル(20.26g、21.0mL、150.5mmol、1.1当量)を15分間かけて滴下添加した。得られた懸濁液を室温で終夜撹拌し、次いで水に注ぎ入れ、30分間撹拌し、その後、酢酸エチル(100mL)ですすぎながら分液漏斗に移した。有機抽出物を分離し、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して黄色〜橙色固体を提供し、これを、1:1 ヘプタン:メチルtert−ブチルエーテル(500mL)に溶かし、室温で撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、固体を1:1 ヘプタン:メチルtert−ブチルエーテル(100mL)で洗浄し、乾燥させて、39.76gのN−(4,6−ジメトキシ−2−(4−メトキシピペリジン−1−イル)ピリミジン−5−イル)−3,3−ジメチルブタンアミド、実施例1を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl
3) δ 6.14 (br. s., 1H) 4.23 (ddd, J=14.2, 5.7, 4.5Hz, 2H) 3.87 (s, 6H)
3.40-3.48 (m, 1H) 3.39 (s, 3H) 3.37 (推定ddd、J=13.5、9.2、3.3Hz、2H、一重線により一部不明確) 2.20 (s, 2H) 1.83-1.99 (m,
2H) 1.47-1.61 (m, 2H) 1.10 (s, 9H). MS: (ESI) m/z=367.2 (M+1).