【文献】
3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects,Earthquake and Tsunami Warning System (ETWS) requirements; Stage 1(Release 9),3GPP TS 22.168 V9.0.0,2008年 6月
【文献】
NTT DoCoMo,Gap analysis on CBS,3GPP TSG-SA WG1#37 S1-070850,2007年 6月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記要求信号により示されている前記状態遷移が、緊急情報を受信できる状態から、緊急情報を受信することはできない状態への状態遷移であり、かつ前記要求信号に含まれている特定の情報要素が、前記二次通知信号の受信は必要であることを示していた場合に、前記決定部は前記状態遷移を拒否することを決定する、請求項1記載の通信装置。
ユーザ装置の通信が緊急呼でも重要呼でもなく、かつユーザ装置が前記二次通知信号を受信する機能を備えていた場合、前記特定の情報要素は、前記二次通知信号の受信が必要であることを示している、請求項2記載の通信装置。
前記決定部が、前記要求信号を送信したユーザ装置が行っている通信の呼種別、通信量、通信速度及び重要度の内の少なくとも1つに応じて、前記状態遷移の許否を決定する、請求項1に記載の通信装置。
前記要求信号の送信可否、送信待ち時間及び再送回数の内の少なくとも1つが、前記UE側通信部から送信される報知信号により示されている、請求項1に記載の通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例によれば、ネットワーク側の制御ノードは、緊急情報が配信されることを予告する一次通知信号の送信を契機として、ユーザ装置が緊急情報を含む二次通知信号を受信できない状態に遷移しないようにする。制御ノードは具体的には無線ネットワーク制御装置や交換局等である。例えば、第3世代方式の移動通信システムにおいて、制御ノードは、セルPCH状態(Cell_PCH)で動作しているユーザ装置が、セルDCH状態(Cell_DCH)に遷移することを禁止する。或いは、制御ノードは、セルDCH状態(Cell_DCH)に遷移することを禁止する代わりに、RRCプロトコル状態によらず二次通知信号を受信できる移動通信システムへ遷移することをユーザ装置に指示してもよい。例えば、制御ノードは、第3世代方式の移動通信システムからLTE方式の移動通信システムに遷移することをユーザ装置に指示してもよい。セルPCH状態(Cell_PCH)からセルDCH状態(Cell_DCH)への状態遷移の禁止又は異なる移動通信システム(異RAT)への遷移を促すことで、そのユーザ装置が二次通知信号を受信できなくなってしまう確率を減らすことができる。
【0013】
1.通信システム
2.動作例
2.1 遷移の要求を拒否する動作例
2.2 セル又はRATの遷移
2.3 要求信号に対する制限
2.4 RRCコネクションリクエストに特定の情報要素を含める動作例
2.5 DLデータ送信を留保する動作例
2.6 報知信号を利用する動作例
2.7 ユーザ装置による自律判断
3.無線ネットワーク制御装置
4.ユーザ装置
<実施例1>
<1.通信システム>
図1は、一実施例において使用することが可能な通信システムを示す。
図1は通信システムに備わる様々なノードのうち実施例に特に関連するものを示している。説明の便宜上、通信システムは、WCDMA方式やGSM方式等の第3世代の移動通信システムであるとするが、本発明は他の通信システム(例えば、第2世代の移動通信システム)にも適用可能である。通信システムは、セルブロードキャストエンティティCBE11、セルブロードキャストセンタCBC12、交換局MME13、無線ネットワーク制御装置RNC14、LTEシステムの基地局eNB15、3Gシステムの基地局BS(又はNodeB)15、ユーザ装置UE16を少なくとも含む。
【0014】
セルブロードキャストエンティティ(Cell Broadcast Entity:CBE)11は、災害時における配信情報を提供する情報元である。具体的には、自治体や政府(例えば、気象庁)等がCBEに該当する。
【0015】
セルブロードキャストセンタ(Cell Broadcast Center:CBC)12は、CBE11から提供された情報に基づいて、実際にユーザ装置に配信する配信情報を作成する。CBC12は、CBE11から提供された情報に基づいて、配信情報を配信する地域又はエリアを決定してもよい。例えば、地震が生じた場合に、津波の危険が懸念される地域が具体的に特定されてもよい。
【0016】
交換局MME13は、一般的にはユーザ装置の呼処理を行い、例えば、加入者情報の管理、移動管理、発着信制御、課金制御、QoS制御等を行う。本実施例における交換局MME13は、配信情報を、CBC12により指定された地域のノード(無線ネットワーク制御装置RNC及び/又は基地局eNB)に転送する。
【0017】
無線ネットワーク制御装置RNC14は、一般的にはユーザ装置の呼処理に関する処理を行う。例えば、第3世代の移動通信システムにおけるユーザ装置に関し、無線リソース制御(Radio Resource Control: RRC)等に関する制御信号の処理、状態管理、接続処理、ハンドオーバ処理、ネットワークの保守管理等を行う。本実施例における無線ネットワーク制御装置RNC14は、配信情報を、CBC12により指定された地域の基地局に転送する。本実施例におけるユーザ装置UE16は、複数のRRCプロトコル状態(通信状態)の内の何れかにおいて動作し、無線ネットワーク制御装置RNC14は、ユーザ装置UE16のRRCプロトコル状態を管理する。具体的には、第3世代方式の移動通信システムにおけるRRCプロトコル状態は、セルDCH状態(Cell_DCH)、セルFACH状態(Cell_FACH)、セルPCH状態(Cell_PCH)及びアイドル状態(IDLE)である。セルDCH状態(Cell_DCH)の場合、上下リンクに対して個別チャネルが設定されており、ユーザデータ及び制御データが双方向に通信される。セルFACH状態(Cell_FACH)の場合、個別チャネルは設定されていないが、共通チャネルを用いてユーザデータ及び制御データを通信することができる。セルPCH状態(Cell_PCH)では、ユーザデータを送受信することはできず、制御信号が間欠的に受信される。アイドル状態(IDLE)では、他の3つの状態とは異なり、RRCコネクションが確立されていない。セルPCH状態(Cell_PCH)及びアイドル状態(IDLE)の場合、ユーザ装置は呼び出しに備えてページングチャネルPICHを間欠的に受信している。RRCコネクションは、ネットワークからの呼び出しに応じて又は発信する場合に確立される。なお、セルDCH状態(Cell_DCH)及びセルFACH状態(Cell_FACH)の場合、ユーザ装置UEは共通トラフィックチャネルCTCHを監視しないが、セルPCH状態(Cell_PCH)及びアイドル状態(IDLE)の場合、ユーザ装置UEは共通トラフィックチャネルCTCHを監視する。ユーザ装置は何れの状態でも共通制御チャネルCCCHを受信することはできるが、セルDCH状態(Cell_DCH)及びセルFACH状態(Cell_FACH)のユーザ装置UEは、共通トラフィックチャネルCTCHで配信される緊急メッセージを受信できない一方、セルPCH状態(Cell_PCH)及びアイドル状態(IDLE)のユーザ装置UEはそのような緊急メッセージを受信できる。この点、RRDプロトコル状態が接続状態(Connected)でもアイドル状態(IDLE)でも緊急の配信情報をユーザ装置UEが受信できるLTE方式の移動通信システムと異なる。
【0018】
LTEシステムの基地局eNB15は、LTE方式の移動通信システムにおける基地局である。基地局eNB15は、ユーザ装置UE16と無線通信を行う場合における無線リソースの割り当て制御等を行う。
【0019】
3Gシステムの基地局BS(又はNodeB)15は、第3世代方式の移動通信システムにおける基地局である。
【0020】
ユーザ装置UE16は、LTE方式及び第3世代方式の双方又は一方の移動通信システムにおいて、ユーザによる無線通信を可能にすることに加えて、ETWSのような配信情報を受信することが可能な適切な如何なる通信装置でもよい。ユーザ装置は、典型的には携帯電話であるが、他の装置でもよい。例えば、ユーザ装置は、情報端末、高機能携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ等でもよい。ユーザ装置UE16は、複数のRRCプロトコル状態(通信状態)の内の何れかにおいて動作する。具体的には、第3世代方式の移動通信システムの場合、RRCプロトコル状態は、セルDCH状態(Cell_DCH)、セルFACH状態(Cell_FACH)、セルPCH状態(Cell_PCH)及びアイドル状態(IDLE)である。LTE方式の移動通信システムの場合、RRCプロトコル状態は、接続状態(Connected)及びアイドル状態(IDLE)である。
【0021】
図1では、図示の簡明化のため、第3世代方式及びLTE方式の移動通信システムしか描かれていないが、他の通信システムが含まれていてもよい。例えば、第2世代方式の移動通信システムや、LTEアドバンスト方式の移動通信システム等が含まれていてもよい。
【0022】
<2.動作例>
<<2.1 遷移の要求を拒否する動作例>>
図2は、
図1に示される通信システムの第3世代の移動通信システムにおいて行われる動作例を示す。
【0023】
ステップS201において、地震のような災害や緊急事態が生じた場合、自治体や気象庁等のようなセルブロードキャストエンティティCBE11は、セルブロードキャストセンタCBC12に対して配信情報の配信を行うように要求する。
【0024】
例えば、地震のような災害が起こった場合、気象庁のような機関(CBE)が、初期微動であるP波(Primary Wave)を検知することで配信情報を作成し、それをセルブロードキャストセンタCBC12に通知する。
【0025】
ステップS203において、セルブロードキャストセンタCBC12は、要求と共に受信した情報に基づいて、ユーザ装置UEに通知する配信情報又はメッセージを作成する。配信情報が特定のエリア又は地域に限定して送信されるべきであった場合、セルブロードキャストセンタCBC12は、配信情報を配信する配信エリアも決定する。
【0026】
ステップS205において、セルブロードキャストセンタCBC12は、無線ネットワーク制御装置14に対して、配信情報の配信を行うように要求する。一例として、配信情報には、災害種別、配信エリア、一次通知情報及び二次通知情報(メッセージ本文)が含まれている。災害種別は、配信情報のメッセージ識別子又はシリアル番号により表現され、複数の配信情報が異なる時間に送信された場合に、最新のものが古いものに上書きされるようにする。配信エリアは、配信情報が特定のエリアに限定して通知されるべきものであった場合に、その特定のエリアを識別する情報である。一次通知情報は、「地震」、「津波」、「地震+津波」等のような最低限の情報を含む。それ以外の詳細な情報は、緊急情報として二次通知信号又はメッセージ本文に含まれる。説明の便宜上、無線ネットワーク制御装置RNC14が受信する情報を「配信情報」とし、ユーザ装置UE16が受信する二次通知信号に「緊急情報」が含まれているとするが、混乱のおそれがない限り、配信情報及び緊急情報は同義語として使用されてよい。
【0027】
ステップS206において、無線ネットワーク制御装置RNC14は、「地震」、「津波」又は「地震+津波」のような最低限の情報部分を含む一次通知信号(Primary Notification)をユーザ装置に一斉に配信する。一次通知信号は、共通制御チャネルCCCHを用いて、ページング信号としてユーザ装置に通知される。一次通知情報は、配信情報の内、最低限の情報部分しか含んでいないので、ユーザ装置UEに迅速に通知することができる。
【0028】
説明の便宜上、ユーザ装置UE16は、アイドル状態(IDLE)又はセルPCH状態(Cell_PCH)で動作しているものとする。この状態のままであるならば、ユーザ装置UE16は、以後に通知される二次通知信号を適切に受信できる。
【0029】
なお、説明の便宜上、無線ネットワーク制御装置RNC14がステップS205以降の処理を行っているものとしているが、このことは本実施例に必須ではなく、無線ネットワーク制御装置RNC14の代わりに交換局MME13や不図示のコアノードがステップS205以降の処理を行ってもよい。
【0030】
ステップS207において、ユーザ装置UE16は、RRCプロトコル状態の状態遷移を求める要求信号を無線ネットワーク制御装置RNC14に送信する。この要求信号は、例えば、ユーザ装置UE16において上りリンクで送信するユーザデータが発生した場合に送信される。或いは、下りリンクのユーザデータが発生した場合に要求信号が送信されてもよい。ユーザ装置UE16がアイドル状態(IDLE)であった場合、ユーザデータを送信するにはRRCコネクションを確立する必要があるので、要求信号は、RRCコネクションを確立することに加えて、アイドル状態(IDLE)からセルDCH状態(Cell_DCH)又はセルFACH状態(Cell_FACH)への状態遷移を求めるものである。ユーザ装置UE16がセルPCH状態(Cell_PCH)であった場合、RRCコネクションは既に確立されているので、要求信号は、
PCH状態(Cell_PCH)からセルDCH状態(Cell_DCH)又はセルFACH状態(Cell_FACH)への状態遷移を求めるものである。一例として、ユーザ装置UE16は、アイドル状態(IDLE)にあり、要求信号で要求する状態遷移は、アイドル状態(IDLE)からセルDCH状態(Cell_DCH)への遷移である。ただし、本実施例はこの状態遷移に限定されず、他の状態遷移が要求されてもよい。例えば、
アイドル状態(IDLE)からセルFACH状態(Cell_FACH)への遷移、
セルPCH状態(Cell_PCH)からセルDCH状態(Cell_DCH)への遷移、及び
セルPCH状態(Cell_PCH)からFACH状態(Cell_FACH)への遷移
等の遷移が行われてもよい。何れにせよ、ユーザデータを送受信できないが二次通知信号を受信できる状態から、ユーザデータを送受信できるが二次通知信号を受信できない状態への遷移が、以下の動作説明の前提である。上述したように、アイドル状態(IDLE)又はセルPCH状態(Cell_PCH)からセルDCH状態(Cell_DCH)又はセルFACH状態(Cell_FACH)へ遷移すると、ユーザデータを送受信できる代わりに、共通トラフィックチャネルCTCHで通知される二次通知信号を受信できなくなってしまう。このような観点から、本動作例では、ステップS206により一次通知信号が一斉に送信された後に、ステップS207において要求信号が送信された場合、無線ネットワーク制御装置RNC14は、状態遷移の許否を決定する。
【0031】
一例として、ステップS209において、無線ネットワーク制御装置RNC14は要求信号により示される状態遷移が所定のものであった場合に、状態遷移を拒否し、そうでなければ許可する。所定の状態遷移とは、制御信号を間欠的に受信する状態(セルPCH状態(Cell_PCH)又はアイドル状態(IDLE))から、ユーザデータを通信することはできるが緊急情報を受信することはできない状態(セルDCH状態(Cell_DCH)又はセルFACH(Cell_FACH))への状態遷移である。本動作例において、これ以外の状態遷移の場合、状態遷移は許可されてもよい。目下の例の場合、要求信号が示す状態遷移は所定の状態遷移に該当するので、ステップS211において、無線ネットワーク制御装置RNC14は、そのような状態遷移を拒否することを示す制御信号をユーザ装置UE16に個別に送信する。なお、本動作例とは別に、所定の状態遷移以外の状態遷移が要求されていた場合(例えば、アイドル状態(IDLE)からセルPCH状態(Cell_PCH)への状態遷移であった場合)、無線ネットワーク制御装置RNC14はそのような状態遷移を許可することを決定し、決定内容を示す制御信号がユーザ装置UE16に個別に送信される(図示せず)。この場合、ユーザ装置UE16は、制御信号に応じて状態遷移を行う(図示せず)。何れにせよ、ユーザ装置UE16は、例えば上りのユーザデータが発生していたとしてもその送信を留保することになる。
【0032】
ステップS213において、無線ネットワーク制御装置RNC14は、報知情報の変更を基地局15に通知する。報知情報の変更通知は、例えば、「SYSTEM INFORMATION CHANGE INDICATION」のようなメッセージにより行われてもよい。
【0033】
ステップS215において、基地局15は、変更後の報知情報を送信する。変更後の報知情報は、ステップS206により通知された一次通知信号の後に送信される二次通知信号のタイミング等を、ユーザ装置に通知するためのものである。報知情報の変更通知のステップS213及び215の手順は、図示のタイミングで行われてもよいし、ページング信号の通知のステップS206と共に行われてもよい。
【0034】
ステップS217において、無線ネットワーク制御装置RNC14は、緊急情報を含む二次通知信号(Secondary Notification)をユーザ装置UE16に一斉に送信する。二次通知信号は、共通トラフィックチャネルCTCHによるBMC-CBSメッセージ(Broadcast Multicast Control-Cell Broadcast Service message)として通知されてもよい。二次通知信号は、「地震」や「津波」等のような最低限の情報しか含んでいない一次通知信号とは異なり、各地の震度や震源地等の詳細な緊急情報を含む。DCH状態(Cell_DCH)及びFACH状態(Cell_FACH)のユーザ装置は二次通知信号を受信できないが、ユーザ装置UE16は、ステップS211により、そのような状態には遷移していないので、ステップS215で受信した報知情報が示すタイミングで二次通知信号を受信することができる。通常、二次通知信号は、所定の時間間隔で複数回送信される。二次通知信号の送信タイミングや送信間隔等は、ステップS215による変更後の報知情報により示されている。なお、そのようなタイミングの情報を使用せずに、ステップS211の後、ユーザ装置UE16は共通トラフィックチャネルCTCHを常時監視することで、二次通知信号を受信することも理論的には可能である。しかしながら、バッテリセービングの観点からは、変更後の報知情報(ステップS215)が示すタイミングで二次通知信号を受信し、それ以外のタイミングでは電力消費を節約することが好ましい。
【0035】
なお、送信が留保されていた上りユーザデータは、ステップS217の二次通知信号の受信の後に、ユーザ装置UE16から送信される。
【0036】
<<2.2 セル又はRATの遷移>>
図2に示す例では、緊急情報を含む二次通知信号を受信できる状態で動作しているユーザ装置が、二次通知信号を受信できない状態に遷移することが禁止されていた。本実施例はこの形態に限定されない。例えば、ユーザ装置UE16は、二次通知信号を受信できない状態への遷移を禁止する代わりに、二次通知信号を受信できるセル又は通信システム(RAT)に遷移することが促されてもよい。一次及び二次通知信号は、第3世代方式の移動通信システムだけでなく他の通信システムでも通知されるからである。
【0037】
具体的には、
図2のステップS207において、ユーザ装置UE16は、動作状態の遷移又はRATの遷移(又はセルの遷移)を無線ネットワーク制御装置RNC14に要求する。例えば、第3世代方式の通信システムに在圏しているユーザ装置UE16が、ロングタームエボリューション(LTE)方式の通信システムでも動作することが可能であり、ステップS207の時点でLTE方式の通信システム又はセルに移行可能な場所に位置していたとする。LTE方式の通信システムの場合、ユーザ装置のRRCプロトコル状態は、接続状態(Connected)又はアイドル状態(IDLE)であり、何れの状態でも一次及び二次通知情報を受信することができる。従って、ステップS211において、無線ネットワーク制御装置RNC14は、そのようなユーザ装置UE16に対して、状態遷移の許否の代わりに、第3世代方式の通信システムからLTE方式の通信システム又はセルに移行すべきことを指示してもよい。その場合、ステップS211において、ユーザ装置UE16は、LTE方式の通信システム又はセルに移行し、移行先において、二次通知信号を受信する、あるいは、移行先のLTE方式の通信システムにおいて一次通知信号及び二次通知信号の双方を受信することになる。第3世代方式の通信システムからLTE方式の通信システムへの遷移又は移行は、システム間ハンドオーバにより行われてもよいし、いったん接続を解放して再接続を行うリダイレクト(Redirect)により行われてもよい。
【0038】
<<2.3 要求信号に対する制限>>
図2に示す例では、二次通知信号を受信できる状態のユーザ装置UE16が、ステップS206において一次通知信号を受信した後に、ステップS207において状態遷移等を求める要求信号を送信している。従って、二次通知信号を受信できる状態のユーザ装置UE16の数が非常に多かった場合、或いはネットワーク側の処理能力が十分に多くなかった場合、無線ネットワーク制御装置RNC14は、多数の要求信号に起因して輻輳してしまうことが懸念される。
【0039】
このような観点からは、ユーザ装置UE16による要求信号の送信を、何らかの基準に従って制限することが考えられる。例えば、そのような要求信号の送信の可否、要求信号の送信開始待ち時間(一次通知信号を受信した後の経過時間)及び要求信号の最大再送回数の内の1つ以上が設定されていてもよい。このような設定事項は、例えば、報知情報として一次通知信号とは別にユーザ装置UE16に通知されてもよいし、ステップS206における一次通知信号と共にユーザ装置UE16に通知されてもよい。これらの設定事項を一次通知信号に含めることも理論的には可能であるが、一次通知信号の情報量を少なくして広く速やかに配信する等の観点からは、そのような設定事項は一次通知信号とは別に通知することが好ましい。
【0040】
<<2.4 RRCコネクションリクエストに特定の情報要素を含める動作例>>
ステップS209において、無線ネットワーク制御装置RNC14が、状態遷移の許否を決定する際に、要求信号が示す状態遷移が所定のものであることに加えて、追加的な条件を満たした場合に限って、状態遷移が拒否されてもよい。例えば、要求信号が示す状態遷移が所定のものであることに加えて、要求信号に含まれている特定の情報要素が、二次通知信号の受信を必要とすることを示していた場合に限って、状態遷移が拒否されてもよい。そのような特定の情報要素(Information Element)又はコーズ情報(cause information)は、通信の種別やユーザ装置の能力等に依存して決定されてもよい。例えば、ユーザ装置の通信が緊急呼又は重要呼によるものであった場合、或いはユーザ装置が二次通知信号を受信する機能を備えていなかった場合に、特定の情報要素は、二次通知信号の受信は不要であることを示していていもよい。また、要求信号が示す状態遷移が所定のものであることに加えて追加される追加的な条件は、要求信号を送信したユーザ装置が行っている通信状態や通信信号等に基づいて決定されてもよい。例えば、ユーザ装置UE16が行っている通信信号の通信呼の種別が音声通話以外の遅延の要求が厳しくない通信であった場合に、状態遷移、セル又は通信システムの遷移が許可され、そうでなかった場合に遷移が拒否されてもよい。別の例として、通信量又はデータ量が所定の閾値より少なかった場合に、状態遷移、セル又は通信システムの遷移が許可され、そうでなかった場合に遷移が拒否されてもよい。別の例として、ユーザ装置UE16が行っている通信信号の通信速度が所定の閾値より遅かった場合に、状態遷移、セル又は通信システムの遷移が許可され、そうでなかった場合に遷移が拒否されてもよい。別の例として、ユーザ装置UE16が行っている通信信号が重要な通信でなかった場合に、状態遷移、セル又は通信システムの遷移が許可され、重要な通信であった場合には、遷移が拒否されてもよい。これらの状態遷移の可否判断は一例に過ぎず、他の観点から状態遷移の可否が判断されてもよい。
【0041】
<<2.5 DLデータ送信を留保する動作例>>
図2に示す例では、ステップS207においてユーザ装置UE16から要求信号を受信したことに応じて、ステップS211において無線ネットワーク制御装置RNC14が状態遷移を禁止する制御信号をユーザ装置UE16に送信している。しかしながら、ユーザデータを送受信しない状態(アイドル状態(IDLE)又はセルPCH状態(Cell_PCH))を変更しようとする契機は、上りリンクだけでなく、下りリンクにおいても発生する。
【0042】
図3は、アイドル状態(IDLE)又はセルPCH状態(Cell_PCH)の状態にあるユーザ装置UE16に対して、下りリンクのユーザデータが発生した場合の動作例を示す。概して、
図2に示すものと同様であるが、ステップS301及びS303における処理が追加されている点が主に異なる。
【0043】
ステップS301において、アイドル状態(IDLE)又はセルPCH状態(Cell_PCH)のユーザ装置UE16に対して、下りリンクで送信すべきユーザデータが発生している。通常は、ユーザ装置UE16の通信状態を、ユーザデータを送受信できる通信状態(セルDCH状態(Cell_DCH)又はセルFACH状態(Cell_FACH))に変更し、下りのユーザデータが送受信される。しかしながら、ユーザ装置UE16の通信状態を、ユーザデータを送受信できる通信状態(セルDCH状態(Cell_DCH)又はセルFACH状態(Cell_FACH))に変更すると、ユーザ装置UE16は二次通知信号を受信できなくなってしまう。このため、本動作例では、ステップS303において、下りリンクのユーザデータの送信が留保され、そのような状態遷移が禁止される。その結果、ステップS217において、ユーザ装置UE16は、ステップS215で受信した報知情報が示すタイミングで二次通知信号を受信することができる。なお、ステップS303で送信が留保された下りのユーザデータは、ステップS217の二次通知信号の一斉送信の後に、ユーザ装置UE16に送信される。
【0044】
<<2.6 報知信号を利用する動作例>>
図2及び
図3に示す例では、無線ネットワーク制御装置RNC14(又は交換局等)が、ユーザ装置UE16に対して、状態遷移の禁止、セルの遷移又は通信システムの遷移を指示していた。しかしながら、このことは本実施例に必須ではなく、別の方法により、ユーザ装置UE16の状態遷移等を禁止してもよい。
【0045】
図4は、報知信号を利用する動作例を示す。概して、
図2及び
図3に示すものと同様であるが、ステップS401及びS403における処理が主に異なる。
図2のステップS213及びS215に関して言及したように、共通トラフィックチャネルCTCHによりCBSメッセージとして送信される二次通知信号の送信タイミングや送信間隔等は、報知信号としてユーザ装置UE16に通知される。本動作例では、共通制御チャネルCCCHで一次通知信号が送信された後にステップS403において送信される報知信号は、所定の状態遷移を禁止すること又は以後の呼設定(RRCコネクションの確立)を禁止することを示す。ユーザ装置UE16がこのような報知信号を受信すると、以後、ユーザデータが発生したとしても、呼設定を要求する要求信号を送信することはなく、ユーザ装置UE16はアイドル状態(IDLE)又はセルPCH状態(Cell_PCH)に留まる。その結果、ステップS217において、ユーザ装置UE16は、ステップ
S403で受信した報知情報が示すタイミングで二次通知信号を受信することができる。なお、ステップS401及びS403による報知信号の通知は、
図4に示すようにステップS213及びS215による報知信号の通知と共に行われてもよいし、或いは図示してはいないがそれらは別々に行われてもよい。
【0046】
ステップS401及びS403の情報信号に別に情報要素が含まれていてもよい。例えば、待受を行うセルの優先順位が、二次通知信号を受信できるように設定されている情報要素が、報知信号に含まれていてもよい。上述したように、LTE方式の移動通信システムの場合、RRCプロトコル状態によらず、ユーザ装置は一次及び二次通知信号を受信することができる。従って、第3世代方式の移動通信システムにおいて、一次通知信号が一斉に送信された後の報知信号が示す待ち受けセルの優先度が、LTE方式の移動通信システムのセルの優先度を相対的に高く設定するものであってもよい。この場合、セルの優先度に従って、LTE方式の移動通信システムで待ち受けを行うユーザ装置UE16の数が相対的に多くなり、二次通知信号を適切に受信できるユーザ装置数を数多く確保できるようになる。また、LTE方式の移動通信システムの場合、RRCプロトコル状態によらず、ユーザ装置は一次及び二次通知信号を受信できる。従って、
図1に示されるような、LTE方式の移動通信システム側においては、二次通知信号を報知信号を送信するのと同時に送信してもよい。
【0047】
<2.7 ユーザ装置による自律判断>
上記に示す例では、無線ネットワーク制御装置RNC14(又は交換局等)が、ユーザ装置UE16に対して、状態遷移の禁止、セルの遷移又は通信システムの遷移を通知していた。しかしながら、このことは本実施例に必須ではなく、ユーザ装置UE16が自律的に判断を行ってもよい。
【0048】
図5はそのような場合の動作例を示す。概して、
図4の動作例と同様であるが、ステップS501及びS503が追加されている点が主に異なる。
【0049】
ステップS206において、ユーザ装置UE16は一斉に送信された一次通知信号を受信する。
【0050】
ステップS501において、上りリンクで送信すべきユーザデータが発生したとする。
【0051】
ステップS503において、ユーザ装置は、RRCプロトコル状態の状態遷移を行うか否か又は他セルへの遷移を行うか否かを判断する。一例として、ステップS503において、ユーザ装置UE16は、ステップS501の上りユーザデータの発生に起因して検討する状態遷移が、所定の状態遷移に該当するか否かを判断する。一例として、検討する状態遷移が、所定の状態遷移に該当していた場合、一律に、二次通知信号の受信を要するものと判断されてもよい。所定の状態遷移とは、制御信号を間欠的に受信する状態(セルPCH状態(Cell_PCH)又はアイドル状態(IDLE))から、ユーザデータを通信することはできるが緊急情報を受信することはできない状態(セルDCH状態(Cell_DCH)又はセルFACH(Cell_FACH))への状態遷移である。本動作例において、これ以外の状態遷移の場合、状態遷移を行うように判断されてもよい。所定の状態遷移以外の状態遷移の場合(例えば、アイドル状態(IDLE)からセルPCH状態(Cell_PCH)への状態遷移であった場合)、ユーザ装置UE16はその状態遷移を行う(図示せず)。
【0052】
ユーザ装置UE16は、ステップS503において、検討を要する状態遷移が所定の状態遷移に該当するか否かの判断に加えて又はその代わりに、RRCプロトコル状態によらず二次通知信号を受信できる他のセルに遷移することを決定してもよい。そのような他のセルの具体例は、例えばLTE方式の移動通信システムのセルである。
【0053】
ステップS503において、ユーザ装置は、状態遷移又はセル遷移を行うか否かを判断することに加えて又はその代わりに、二次通知信号の受信の要否を判断してもよい。例えば、ユーザ装置UE16が行っている通信信号の通信呼の種別が音声通話以外の遅延の要求が厳しくない通信であった場合に限って、状態遷移の禁止、セル又は通信システムの遷移が行われてもよい。別の例として、ユーザ装置UE16が行っている通信信号の通信量又はデータ量が所定の閾値より少なかった場合に限って、状態遷移の禁止、セル又は通信システムの遷移を行うことが決定されてもよい。別の例として、ユーザ装置UE16が行っている通信信号の通信速度が所定の閾値より遅かった場合に限って、状態遷移の禁止、セル又は通信システムの遷移を行うことが決定されてもよい。別の例として、ユーザ装置UE16が行っている通信信号が重要な通信でなかった場合に限って、状態遷移の禁止、セル又は通信システムの遷移が行われるように決定されてもよい。これらの状態遷移の可否判断は一例に過ぎず、他の観点から状態遷移の可否が判断されてもよい。
【0054】
<3.無線ネットワーク制御装置>
図6は、
図1に示されているような無線ネットワーク制御装置RNCの機能ブロック図を示す。ただし、同様な機能が交換局MMEやその他のコアノードに備わっていてもよい。
図6には通信装置に備わる様々な機能部又は処理部のうち実施例に特に関連するものが示されている。無線ネットワーク制御装置RNC14は、網側通信部41、配信情報処理部42、UE側通信部43、状態管理部44、報知情報処理部45及び制御部46を少なくとも有する。
【0055】
網側通信部41は、セルブロードキャストセンタCBCのような上位のノードから配信情報を受信する。配信情報は配信する地域を指定する情報とともに受信されてもよい。
【0056】
配信情報処理部42は、網側通信部41により受信した配信情報から、配信エリアを特定し、一次通知信号及び二次通知信号を抽出又は作成する。
【0057】
UE側通信部43は、ユーザ装置UEに向けて信号を送信する機能と、ユーザ装置UEからの信号を受信する機能とを有する。ユーザ装置に向けて送信する信号は、一次通知信号、二次通知信号、制御信号及びユーザデータ等を含む。ユーザ装置から受信する信号は、制御信号及びユーザデータ等である。
【0058】
状態管理部44は、ユーザ装置UEのRRCプロトコル状態(通信状態)を管理する。具体的には、ユーザ装置UEの現在の通信状態が、所定の複数個の通信状態の内のどれに該当するかを管理している。例えば、所定の複数個の通信状態は、セルDCH状態(Cell_DCH)、セルFACH状態(Cell_FACH)、セルPCH状態(Cell_PCH)及びアイドル状態(IDLE)である。
【0059】
報知情報処理部45は、ユーザ装置UEに送信する報知情報を処理(作成、変更及び編集を含む)する。例えば、無線ネットワーク制御装置RNCが、配信情報を配信することになった場合、報知情報処理部45は、二次通知信号の送信タイミングを示す報知情報を作成し、制御部46の制御の下に、変更後の報知情報をUE側通信部43に渡す。
【0060】
制御部46は、無線ネットワーク制御装置RNCの各機能部を制御する。制御部46は
図2ないし
図5を参照しながら説明した動作のうち無線ネットワーク制御装置RNCに関する部分を無線ネットワーク制御装置RNCが実行できるようにする。
【0061】
<4.ユーザ装置>
図7は、ユーザ装置の機能ブロック図を示す。
図7にはユーザ装置に備わる様々な機能部又は処理部のうち実施例に特に関連するものが示されている。ユーザ装置は、通信部51、状態管理部52及び制御部53を少なくとも有する。
【0062】
通信部51は、無線アクセス装置(Radio Access Network:RAN)からの信号を受信する機能と、無線アクセス装置RANに向けて信号を送信する機能とを有する。無線アクセス装置RANは、基地局BSと無線ネットワーク制御装置RNCとを包含する装置である。無線アクセス装置RANから受信する信号は、配信情報、制御信号及びユーザデータ等を含む。無線アクセス装置RANに向けて送信する信号は、制御信号及びユーザデータ等を含む。
【0063】
状態管理部52は、
図4の状態管理部44と同様に、ユーザ装置UEのRRCプロトコル状態(通信状態)を管理する。具体的には、ユーザ装置UEの現在の通信状態が、所定の複数個の通信状態の内のどれに該当するかを管理している。所定の複数個の通信状態は、第3世代方式の移動通信システムの場合、セルDCH状態(Cell_DCH)、セルFACH状態(Cell_FACH)、セルPCH状態(Cell_PCH)及びアイドル状態(IDLE)である。LTE方式の移動通信システムの場合、接続状態(Connected)及びアイドル状態(IDLE)である。
【0064】
制御部53は、ユーザ装置における動作を制御する。制御部53は
図2及び
図3を参照しながら説明した動作のうちユーザ装置に関する部分をユーザ装置が実行できるようにする。
【0065】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、緊急情報を配信する適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。上記の説明では、一斉に配信される配信情報は、自然災害に関するものであったが、自然災害だけでなく、国際紛争等のような人為的な状況におけるものであってもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に用意されてもよい。以上、通信装置及び通信方法を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0066】
本願は2011年6月30日に出願した日本国特許出願第2011−146220号に基づきその優先権を主張するものであり、同日本国出願の全内容を本願に援用する。